説明

光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法

【課題】
抗ウイルス剤等の医薬品原料として重要な光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを製造するための、工業的に実施可能な晶析方法を確立する。
【解決手段】
光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留し、得られた水に置換された混合液より当該化合物の結晶を分離する。この方法を取ることによって、化学純度、光学純度、結晶性状がともに優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を高収率で製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式1で示される光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法に関する。詳しくは、式1で示される光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を得るに際して、該有機溶媒溶液を水共存下で蒸留し、得られた水に置換された混合液より光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を分離取得することを特徴とする、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
本発明の方法によって得られる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンは、HIVやHCVのプロテアーゼ阻害剤等の医薬品原料として重要な中間体であり(例えば、特許文献1,2参照)、L−tert−ロイシンとtert−ブチルイソシアネートとの縮合反応により得られることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。そこで、特許文献3に従いL−tert−ロイシンとtert−ブチルイソシアネートを縮合させ、その反応液から目的物質の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを有機溶媒で抽出し、該抽出液の濃縮物から光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを単離する実験を試みた。しかしながら、縮合反応は定量的に進ものの、得られる濃縮物は水飴状の固形物となり、例えばこの固形物をシリカゲルやアルミナを用いたカラムクロマトによって精製した後、再結晶させようとしても、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンのカラム担体との反応やカルバモイル部位の分解誘起により新たな分解が起こり、結晶状の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを得ることはできなかった。このように、文献記載の方法では、結晶状の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを得ることができないことが判明した。
【0003】
ところで、ほとんどのアミノ酸、またはアミノ酸誘導体は水への溶解性が高いため、一般的にはアミノ酸、またはアミノ酸誘導体を含む水溶液に適当な有機溶媒を加えこれらの物質を優先的に析出させて回収精製する手法がとられる(例えば、特許文献4,5参照)。しかしながら、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンはほとんど水に溶解しないため、通常のアミノ酸のように、その水溶液を調製し貧溶媒となる有機溶媒を加え優先的に析出させ分離回収する精製方法を取ることは困難であった。
一方、水への溶解性が低いアミノ酸誘導体を、該物質を溶解し得る有機溶媒に一旦溶かした後、有機溶媒溶液を酸水溶液、またはアルカリ水溶液で洗浄することにより不純物を除去した後、有機溶媒を留去し水に置換させてアミノ酸アミドの結晶を析出させる方法(例えば、特許文献6参照)もあるが、適用されるアミノ酸誘導体はN−アシルアミノ酸アミドのような比較的安定性の高い物質に限られており、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンのように、分子内にカルバモイルのような分解し易い
構造を有する物質を対象とする場合についてはなんら示されていない。
【0004】
式1で示される光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンは光学活性体であるL−tert−ロイシンとtert−ブチルイソシアネートの縮合により生成させることができる(例えば、特許文献3参照)。本発明で使用するL−tert−ロイシンおよびtert−ブチルイソシアネートは、その製法および品質等に特に制限はない。例えば、従来知られているDL−tert−ロイシンアミドの光学分割手法によりL−tert−ロイシンを得ることができる(例えば、特許文献4,7、非特許文献1,2参照)。また、tert−ブチルイソシアネートも、既知の反応により得ることができる(例えば、非特許文献3,4参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/036404号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/035060号パンフレット
【特許文献3】特開昭60−155967号公報
【特許文献4】特開2001−11034号公報
【特許文献5】特開2001−328970号公報
【特許文献6】国際公開第98/08806号パンフレット
【特許文献7】特開2002−34593号公報
【非特許文献1】Izumiya, J.Biol.Chem.,205,221(1953)
【非特許文献2】Tanabe, Bull.Chem.Soc.Jpn.,41,2178(1968)
【非特許文献3】Hoover, Rothrock, J.Org.Chem.,29,143(1964)
【非特許文献4】Siefken, Justus Liebigs Ann. Chem.,75(91),562(1949)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、性状的に優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を分離取得するための工業的に実施可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から結晶状の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを分離取得するに際して、水存在下で該有機溶媒溶液を蒸留し水溶媒系に置換する方法をとることによって、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの分解を抑え、化学純度、光学純度ともに優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から、結晶状の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを効率的に得るための(1)〜(7)に示す製造方法に関する。
(1)式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を得るに際して、該有機溶媒溶液を水共存下で蒸留し、得られた水に置換された混合液より光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を分離取得することを特徴とする、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【化2】

(2)式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液の有機溶媒が、水との共沸混合物を形成する有機溶媒である、(1)に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
(3)式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留する際、留出分より回収した水を還流させながら行う、(2)に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
(4)式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留する際、30〜70℃の温度で蒸留を行う、(1)に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
(5)水に置換された混合液中に含まれる有機溶媒量が、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンに対して0.1〜10重量倍の範囲となるように蒸留する、(1)に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
(6)水に置換された混合液中に含まれる水の量が、その中に含まれる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンに対して、1〜100倍重量の範囲となるように蒸留する、(1)に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
(7)式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液の有機溶媒が酢酸エチルである、(1)〜(6)の何れかに記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、HIVやHCVのプロテアーゼ阻害剤等の医薬品原料として重要な光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを、簡便な方法で高純度かつ高収率に製造し提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の対象となる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液は、例えば、原料のL−tert−ロイシンを含むアルカリ水溶液に、反応が急激に進まないようにtert−ブチルイソシアネートを少しずつ滴下しながら反応させ、次いで該水溶液に酸を加えて中和した後、生成した光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを該物質可溶の性質を有する有機溶媒で抽出することによって得られる(特許文献3)。
【0010】
このような有機溶媒としては、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機カルボン酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル類等の溶媒が挙げられる。このうち、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの溶解性が高く沸点も比較的低い点で、酢酸エチルが好適に使用できる。
【0011】
上記したように、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンは分子内に不安定なカルバモイル基を有することから、結晶を得るにあたって使用した有機溶媒を除去しようとする場合、できる限り低い温度で蒸留する条件を取る必要がある。それに伴って、有機溶媒中での飽和溶解度も低下することから、蒸留により濃度が若干上昇しただけで光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの急激な析出と凝集が起こり易くなる。この場合、副生塩や未反応の不純物も巻き込む形で結晶が析出してしまうため、得られる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの純度が低下してしまうだけではなく、同時に析出した不純物が介在することによって、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンが凝集固形化し微粒子状の結晶とならない現象を招く。このような光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの急激な析出と凝集を防ぐには、溶媒の留去に連動させ、主要な不純物である塩を析出させないように、水を共存させるような条件下で徐々に溶媒を水に置換させながら、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶成長をはかる方法をとる必要がある。
【0012】
本発明の特徴である、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を蒸留し水系に置換する方法としては以下に示すA、B2法が考えられる。
A.光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液に、あらかじめ有機溶媒に対して同体積以上の水を共存させた状態から有機溶媒を留去させて溶媒を水に置換する方法。
B.光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から有機溶媒を留去させながら、留去した溶媒の体積に応じた水を随時有機溶媒溶液に足して、溶媒を水に置換する方法。
以上の2法のうち、A法は、B法の様に留去した有機溶媒量に見合った水を逐次添加する必要性がない点で簡便ではあるが、蒸留釜の容積を少なくとも倍増させなければならない点で経済的でなく現実的ではない。よって、選択肢としてはB法の方が好ましい。
なお、使用する有機溶媒が水との共沸混合物を形成する場合には、蒸留によって失われた水の分だけ多く水を添加するか、蒸留液より分離回収した水を添加する水の中に追加する上記の変法を採用することができる。
このような蒸留方法を取ることによって、取り扱い易い光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶スラリーが得られるとともに、結晶性状、化学純度、光学純度ともに優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを高い収率で得ることが可能となる。図1にこのような蒸留操作法を行うための装置を模式的に示す。
【0013】
蒸留釜に光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を張り込み、蒸留を行う。蒸留温度は30〜70℃、好ましくは60〜70℃の温度範囲が望ましい。蒸留温度が70℃よりも高いと光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの分解が起こり好ましくない。なお、蒸留時の圧力は、望ましい蒸留温度が得られる圧力を適宜選択すればよい。
【0014】
なお、水への溶媒置換が進に従って蒸留釜中に光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの白色結晶が析出して来るが、その際、結晶性状に優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを晶析させるためには、結晶間での過度の凝集を防ぐため蒸留中の混合液を撹拌混合させる必要がある。混合液は複合渦を形成した状態で撹拌される状態が望ましく、例えば、放射流型翼を用いた撹拌装置の場合では、レイノルズ数が1,000以上となる流動状態で攪拌を続けると性状的に優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を得ることができる。
【0015】
蒸留操作は、水に置換された混合液中に残存する有機溶媒が二層分離を起こさない程度、かつ、塩等の不純物を十分に溶解させることのできる程度まで蒸留し停止させる。残存有機溶媒が至適範囲を超えて存在する場合には、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの晶析が不十分となり収率が低下する。逆に、残存有機溶媒が至適範囲に満たない場合には、未反応の、原料のL−tert−ロイシンやtert−ブチルイソシアネート等が結晶に付着し得られる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの純度が低下する。
例えば、有機溶媒が酢酸エチルである場合には、その中に含まれる酢酸エチルの濃度が0.1〜10%の範囲になったところで溶媒置換操作を終了させればよく、さらには1〜5%の濃度範囲で溶媒置換操作を終了させるのがより好ましい。
【0016】
このようにして、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留することにより、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの白色結晶を含むスラリー混合物が得られる。このスラリー混合物を室温付近まで除冷し、結晶を熟成させた後、必要に応じ結晶を水洗しながら濾過や遠心分離等の通常の手段で結晶を分離し、真空または通風等の通常の方法で乾燥する。これにより、光学純度および化学純度ともに優れた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを高収率で得ることができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例および比較例をもってより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
実施例1
L−tert−ロイシン11g(84mmol)を1規定のNaOH水溶液92mLに溶解した溶液、およびテトラヒドロフラン40mLを300mLのフラスコに取り、攪拌下、tert−ブチルイソシアネート10g(101mmol)を、液温が30℃を超えないようにしながらゆっくりと滴下した後、室温にて2時間反応させた。得られた反応液を各回30mLの酢酸エチルで3回洗浄した後、クエン酸5.9g(31mmol)を添加し中和した。この中和した溶液を各回100mLの酢酸エチルで3回抽出した後、得られた酢酸エチル溶液を各回20mLの水で3回洗浄し、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシン17g(76mmol)を含む酢酸エチル溶液280mLを得た。
次ぎに、図1の装置模式図に従い、200mLのフラスコを蒸留釜に、150mLのガラス容器を留分受器として使用し、上記のようにして得られた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシン17g(76mmol)を含む酢酸エチル溶液280mLと水100mLを蒸留釜に入れ、70℃、20mmHgの減圧条件下、共沸ガスより冷却回収した水を連続的に留分受器より蒸留釜に還流させながら、生じたスラリー混合液中に含まれる酢酸エチル濃度が2wt%に到達するまで蒸留を行った。
次に、このスラリー混合液を25℃まで放冷した後、2時間静置して結晶の熟成を行い、析出した沈殿物を濾取し真空乾燥を行った。その結果、16.6g(72mmol)の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を得た。反応に仕込んだL−tert−ロイシンからの単離収率は86mol%であった。この結晶を液体クロマトグラフィーによって分析した結果、化学純度は99%以上、および光学純度は10%eeであった。
【0018】
比較例1
実施例1と同様の反応操作と抽出操作により取得した光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む酢酸エチル溶液をロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後、真空乾燥させた。光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの回収率は100%であったが、結晶が凝集し、結晶粉末としての回収は不可能であった。また、化学純度も86.9%と低く、不純物を取り除くことは出来なかった。
【0019】
比較例2
実施例1と同様の反応操作と抽出操作により取得した光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む酢酸エチル溶液をロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後、真空乾燥させた。真空乾燥で得られた粗光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンに、水:エタノール=3:1(体積比)の混合溶媒350mLを加えて還流下に溶解させた後に、ゆっくりと室温へ冷却することにより再結晶を行った。析出した結晶はろ過回収し、冷エタノールにて洗浄した。得られた光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの化学純度は99%以上であったが、収量は11.4g(50mmol)であり、反応に仕込んだL−tert−ロイシンからの単離収率は59mol%と光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを再結晶溶媒へ多く損失した。
【0020】
比較例3
実施例1と同様の操作により取得した光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む酢酸エチル溶液を濃縮し、この濃縮物にヘキサン100mLを添加し光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの晶析を試みた。しかしながら、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンが凝集し、結晶の回収は不可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】溶媒置換操作の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液から、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を得るに際して、該有機溶媒溶液を水共存下で蒸留し、得られた水に置換された混合液より光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの結晶を分離取得することを特徴とする、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【化1】

【請求項2】
式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液の有機溶媒が、水との共沸混合物を形成する有機溶媒である、請求項1に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【請求項3】
式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留する際、留出分より回収した水を還流させながら行う、請求項2に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【請求項4】
式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液を水共存下で蒸留する際、30〜70℃の温度で蒸留を行う、請求項1に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【請求項5】
水に置換された混合液中に含まれる有機溶媒量が、光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンに対して0.1〜10重量倍の範囲となるように蒸留する、請求項1に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【請求項6】
水に置換された混合液中に含まれる水の量が、その中に含まれる光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンに対して、1〜100倍重量の範囲となるように蒸留する、請求項1に記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。
【請求項7】
式1で示す光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンを含む有機溶媒溶液の有機溶媒が酢酸エチルである、請求項1〜6の何れかに記載の光学活性N−tert−ブチルカルバモイル−L−tert−ロイシンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−332050(P2007−332050A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163115(P2006−163115)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】