説明

光学特性測定装置

【課題】通常環境下でディスプレイ装置の表示部の光学特性を正確に測定することができる光学特性測定装置を提供する。
【解決手段】前記表示部に対向して配置される平面状の背面部10を有する本体部1と、背面部1に形成された開口部11の内部に配置された光学センサー2と、表示部LPと背面部10との距離を一定に保つための支持部3とを備え、開口部11を囲むように配置され、表示部LPの表面と密着し、側部に貫通孔42が形成されている円筒状の遮光部4が備えられている光学特性測定装置A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ディスプレイ装置の光学特性を測定する光学特性測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置の製造工程において、前記ディスプレイ装置の表示部の輝度、色度等の物理量を測定することで、前記表示部の光学特性を測定することが行われている。前記表示部の光学特性の測定には、前記表示部と対向するセンサーを備えた測定装置が用いられる。
【0003】
前記ディスプレイ装置の表示部の光学特性測定を行う場合は、前記センサーに前記表示部からの光のみが入射されるように、外乱となる外部から入射される光(いわゆる、環境光)を遮光する必要がある。環境光を遮光する方法としては、光学特性を測定するときに前記表示部を暗室に配置して測定する方法がある。しかしながら、暗室での測定は手間がかかり、それだけ、製造に時間とコストがかかる。
【0004】
そこで、前記表示部に少なくとも一部を密着させ、前記センサーに環境光が入らないようにする計測器が提案されている(例えば、米国特許第7027140号参照)。従来の計測器について図面を参照して説明する。図12は従来の光学特性測定装置の側面図であり、図13は図12に示す光学特性測定装置の背面図である。図12に示すように、光学特性測定装置Eは、本体91と、本体91の背面部910に形成された開口部911の奥に配置され、表示部の輝度を測定するセンサーである受光素子92と、背面部910の外周部を取り囲むように配置された遮光部93とを備えている。
【0005】
光学特性を測定するディスプレイ装置が液晶表示装置の場合、液晶表示装置は押えて圧力が作用することで、その圧力が作用している部分の近傍での光学特性が変化してしまう。そこで、圧力による光学特性の変化を抑えるため、図12、図13に示す光学特性測定装置E遮光部93は遮光部93からの圧力の光学特性への影響を減らすために、遮光部93が開口部911から離れた位置に形成されている。さらに、遮光部93は緩衝性を有している。緩衝性を有する遮光部93を用いることで、光学特性測定装置Eを表示部に押し当てたことによる遮光部93から表示部へ作用する圧力を低減することが可能である。
【特許文献1】米国特許第7027140号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記ディスプレイ装置の表示部は温度によって光学特性が変化してしまうものが多い。図12、13に示すような光学特性測定装置Eを用いて光学特性を測定する場合、遮光部93に囲まれた空間に放出された熱の逃げ場がなく、遮光部93に囲まれた空間内の空気の温度が上昇してしまい、表示部の表面の温度が大きく上昇し、温度上昇によって光学特性が大きく変化してしまい、表示部の正確な光学特性の測定が困難である。
【0007】
そこで本発明は、通常環境下でディスプレイ装置の表示部の光学特性を正確に測定することができる光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、ディスプレイ装置の表示部の光学特性を測定する光学特性測定装置であって、前記表示部に対向して配置される平面状の背面部を有する本体部と、前記背面部に形成された開口部から入射された光を受光する光学センサーと、前記背面部の周縁部に配置され、前記表示部と前記背面部との距離を一定に保つための支持部とを備え、前記背面部の前記開口部の辺縁部を囲むように配置され、前記光学特性の測定を行うときに前記表示部の表面と密着するの遮光部が備えられており、前記遮光部の側部には、前記光学センサー及び前記表示部の表面に光が照射されない位置に貫通孔が形成されている。
【0009】
この構成によると、遮光部によって外部の光が遮断され、光学センサーに光が入射しないので、通常環境下での表示部の光学特性を正確に測定することができる。また、前記背面部と前記表示部との間の距離を一定に保つので、熱が外部に放出されやすい。さらに、貫通孔が形成されていることで、遮光部の内部の熱を効果的に外部に排出することが可能である。
【0010】
このことにより、前記表示部の表面の温度の上昇を低減することができるので、前記表示部の被測定部の温度変化による光学特性の変化を低減することができ、前記表示部の光学特性を精度良く測定することが可能である。
【0011】
上記構成において、前記遮光部は少なくとも側壁部の内面が光を反射しにくい又は吸収するように形成されていてもよい。
【0012】
上記構成において、前記光学特性の測定は、前記表示部が起立された状態で行われるものであり、前記貫通孔は前記光学測定を行うときに、少なくとも前記遮光部の上部と下部とに形成されていてもよい。この構成によると、前記表示部から発散される熱によって発生する上昇気流が、貫通孔を通過するので、効果的に遮光部内部の熱を効果的に取り除くことが可能である。
【0013】
上記構成において、前記貫通孔には、複数のフィンが前記遮光部の長さ方向に配列されていてもよい。また、前記複数のフィンの少なくとも一部は、前記背面部と平行に形成されていてもよい。
【0014】
上記構成において、前記背面部に近い側に配置されたフィンが、前記遮光部の外壁側から内壁側に向かって、前記背面部から遠ざかるように傾けて配置されていてもよく、前記表示部に近い側に配置されたフィンが、前記遮光部の外壁側から内壁側に向かって、前記背面部に近づくように傾けて配置されていてもよい。
【0015】
この構成によると、前記フィンが傾けて取り付けられていることで、少ないフィン枚数で前記光学センサー及び(又は)表示部に向かって貫通孔に入射する光を遮ることができるので、加工の手間が少なくなる。
【0016】
上記構成において、前記背面部は、前記光学特性の測定が行われるとき、左右の少なくとも一方の端部に配置され、前記背面部と前記表示部との間を通過する光を遮断する遮光壁部を備えているものであってもよい。
【0017】
上記構成において、前記遮光壁部は、前記光学特性の測定が行われるとき、前記表示部と非接触であってもよい。
【0018】
上記構成において、前記支持部は、前記光学特性の測定を行うときの前記背面部と前記表示部との距離が15mm以上となるように形成されていてもよい。
【0019】
上記構成において、前記表示部として、液晶パネル、プラズマパネルを挙げることができる。
【0020】
上記構成において、前記支持部の少なくとも一部が前記遮光部を兼ねていてもよい。これにより、前記光学特性測定装置の構造を簡単にすることができ、それだけ、製造にかかる手間と時間を省くことが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、通常環境下でディスプレイ装置の表示部の光学特性を正確に測定することができる光学特性測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる光学特性測定装置で測定している状態の概略側面図であり、図2は図1に示す光学特性測定装置の背面図であり、図3は図1に示す光学特性測定装置の背面側から見た斜視図である。なお、以下の実施の形態では、光学特性が測定される表示部として液晶表示装置に用いられる液晶パネルを例に説明している。
【0023】
図1に示すように、光学特性測定装置Aは、起立された液晶パネルLPに押し当てられて、液晶パネルLPの光学特性を測定するものである。図1〜図3に示すように、光学特性測定装置Aは、背面が長方形状の本体1と、本体1の背面部10に形成された開口部11の内部に配置された光学特性を測定するセンサーである受光素子2と、長方形状の背面部10の四隅に配置された4本の支持部3と、背面部10の開口部11を囲むように配置された筒状の遮光部4とを備えている。
【0024】
受光素子2は、液晶パネルの光学特性値のひとつである輝度の測定を行うためのセンサーである。なお、液晶パネルの光学特性の測定として、輝度以外の色度、応答速度、コントラスト等を測定するものであってもよい。また、複数のパラメータの測定を行うものであってもよい。
【0025】
本体1の背面部10の四隅に配置された4本の支持部3はすべて同じ長さである。支持部3の先端部は力を分散することができる素材で形成された緩衝部31を備えている。遮光部4は円筒形状の部材であり、光が透過しにくい(例えば、黒色の樹脂材料等)で形成されている。なお、遮光部4の内径は開口部11の内径と略同じ内径である(理由については後述する)。遮光部4の先端部には支持部3と同様、力を分散することができる緩衝部41が形成されている。また、遮光部4には、光学特性測定装置Aが液晶パネルLPに配置されているときに、上部及び下部に貫通する貫通孔42が形成されている。支持部3と遮光部4とは互いに離れて配置されている。
【0026】
本発明にかかる光学特性測定装置Aを用いて、ディスプレイ装置の表示部の一例である液晶パネルの光学特性の測定状態を図面を参照して説明する。
【0027】
光学特性測定装置Aは背面部10を液晶パネルLPと対向させた状態で輝度の測定を行う。光学特性測定装置Aは光学特性測定装置Aは本体1の背面部10が液晶パネルLPと平行となるとともに、背面10と液晶パネルLPとの間が所定の長さを保つように、背面部10の四隅に形成された支持部3にて支持されている。このとき、遮光部4の先端部に形成された緩衝部41が液晶パネルLPの測定対象部分を取り囲むように液晶パネルLPに密着されている。緩衝部41は緩衝部41と液晶パネルLPとの間に隙間が形成されず、遮光部4の筒内部に外部の光が入射するのを抑制している。
【0028】
緩衝部31及び緩衝部41は光学特性測定装置Aが液晶パネルLPに押し当てられるときの力を分散させることができるので、液晶パネルLPに作用する圧力を低減することができる。これにより、液晶パネルLPの表面に傷がつくのを抑制することができるとともに、緩衝部31及び緩衝部41から液晶パネルLPに作用する圧力による液晶パネルLPの輝度の変化を防ぐことができ、より正確な輝度を測定することができる。
【0029】
遮光部4は液晶パネルの輝度が測定される被測定領域を囲むものであり、支持部3に比べて押し付けによる圧力の輝度への影響がでやすい。そこで、遮光部4の先端に備えられた緩衝部41は支持部3の先端に備えられた緩衝部31よりもやわらかい(力を分散しやすい)ものとしたり、厚く形成したりすることで緩衝部41から液晶パネルLPに作用する圧力を低減することが可能である。
【0030】
また、遮光部4の長さを支持部3よりも短く形成しておき、緩衝部31がある程度変形した段階で、緩衝部41が液晶パネルLPと当接するようにしてもよい。このように形成することで、緩衝部41が液晶パネルLPに密着したときに緩衝部41から液晶パネルLPに作用する圧力を小さくすることができる。また、緩衝部31から液晶パネルLPに作用する圧力は大きくなるが、測定対象位置から離れているので、圧力による輝度への影響が出にくく、輝度測定の精度が低下するのを抑えることができる。
【0031】
光学特性測定装置Aの液晶パネルLPへの押し当ては、従来良く知られている方法が用いられる。すなわち、光学特性測定装置Aの自重によるもの、弾性力を有するベルトを用いて液晶パネルLPに捲きつけ、ベルトの弾性力で押し付けるもの、冶具を用いて固定された光学特性測定装置Aを液晶パネルLPに押し付けるもの等、所定の力で液晶パネルLPに押し付けることができる方法を広く採用することができる。
【0032】
光学特性測定装置Aを液晶パネルLPに取り付けたときの外部からの環境光の受光素子への影響について図面を参照して説明する。図5は光学特性測定装置を用いた状態での外部からの環境光の入射状態を示す平面図である。
【0033】
図4に示すように、環境光は本体1の背面部10と液晶パネルLPとの間隙に入射される。環境光の多くは光路O1に示すように、液晶パネルLPの外表面で遮られ遮光部4に遮られて、受光素子2には到達しない。
【0034】
一方で、光路O2に示すように、環境光が遮光部4の貫通孔42に入射される場合がある。しかしながら、図4に示すように、遮光部4の貫通孔42は、外部からの光の入射があった場合でも、入射した光を受光素子2及び(又は)液晶パネルLPの表面に到達させない位置及び形状で形成されている。これにより、環境光が直接受光素子2及び(又は)液晶パネルLPに入射して、受光素子2の測定精度が低下するのを抑制することができる。
【0035】
また、貫通孔42を通過した光が遮光部4の内壁部で反射を繰り返して受光素子2及び(又は)液晶パネルLPの表面に到達するのを抑制するために、遮光部4の少なくとも内壁面は、光が反射しない(反射しにくい)或いは光が吸収されるように形成されている。光の反射を防ぐ或いは光を吸収させる方法としては、遮光部4の内壁面を黒色の樹脂で形成するものを挙げることができる。遮光部4全体を黒色の樹脂で形成してもかまわないし、内壁面にシート状の黒色樹脂を貼り付けてもよく、黒色の樹脂を塗布するようにしてもかまわない。
【0036】
一方で、光路O3のように液晶パネルLPの受光素子2と対向する部分に光が入射された場合、液晶パネルLPの光学フィルム層やガラス層と光学フィルム層の境界では拡散反射されて、光路O3で入射された光の一部が受光素子2に到達する場合がある。光路O3の液晶パネルLPの表面に対する角度θが大きいほど、受光素子2に入射する光の量が多くなる。そこで、角度θが大きくなる横からの光の入射を防ぐために補助遮光部を備えていてもよい。
【0037】
本発明にかかる光学特性測定装置の他の例について図面を参照して説明する。図5は本発明にかかる他の例の背面側から見た斜視図である。図5に示す光学特性測定装置Bは図3に示す光学特性測定装置Aに補助遮光部である遮光壁部5を備えたものである。それ以外の部分は光学特性測定装置Aと同じ構成を有するものであり、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。
【0038】
図5に示すように、光学特性測定装置Bは底部10の端部と開口部11との距離は、液晶パネルLPに取り付けられたときの上下方向に比べて左右方向が短くなっている。よって、左右方向より光路O3をたどって入射される外部光の液晶パネルLPに対する角度は上下方向のそれよりも大きくなり、受光素子2に到達しやすい。そこで、光学特性測定装置Bでは、遮光壁部5が遮光部4の左右両側部を覆うように配置されている。
【0039】
遮光壁部5は背面部10の側端部より支持部3と同じ方向に突出された部材である。遮光壁部5の突出方向の長さは支持部3の長さよりも短い。また、光学特性測定装置Bが液晶パネルLPに押し当てられ、液晶パネルLPの輝度を測定するとき(換言すれば、支持部3の緩衝部31が所定の力で液晶パネルLPに押し当てられているとき)に、遮光壁部5は液晶パネルLPの表面と近接又は接触する程度の長さを持っている。これにより、光学特性測定装置Bが液晶パネルLPに押し当てられた状態のときに左右両側部からの光の入射を抑制することができる。また、光学特性測定装置Bが押し当てられたときに、遮光壁部5が液晶パネルLPに近接又は接触するので、液晶パネルLPの表面が傷つくのを抑制することができる。
【0040】
液晶パネルLPは温度変化によってその光学特性が変化する性質を持っている。液晶パネルLPを表示部とする液晶表示装置は多くの場合バックライトを備えており、そのバックライトからの熱が液晶パネルLPにも伝達される。液晶表示装置の通常使用状態において液晶パネルLPに伝達された熱は、液晶パネルLPの表面より外部に放出されるので、液晶パネルLPの表面の温度上昇は抑制される。しかしながら、光学特性測定装置で液晶パネルLPの光学特性を測定するとき、遮光部4が液晶パネルLPに密着するとともに、本体部1も近接するので、液晶パネルLPの表面から熱が逃げにくい状態になっている。
【0041】
そこで、本発明にかかる光学特性測定装置Bを用いて液晶パネルLPの輝度を測定している状態の液晶パネルLPの表面での熱の移動について図面を参照して説明する。図6は図5に示す光学特性測定装置で液晶パネルの輝度を測定している状態の熱の出入りが表示された側面図である。図6は測定状態での熱の出入りを矢印を用いて表示している。なお、図6に示す例では、光学特性測定装置Bを用いているが、図3に示す光学特性測定装置Aでも同様の熱の出入りが行われる。
【0042】
液晶パネルLPからの熱は表面から空気中に放出される。図6に示すように、光学特性測定装置Bを液晶パネルLPに取り付けた状態のとき液晶パネルLPの表面から放出される熱のうち一部の熱Taが遮光部4の内部の空間Zに放出され、残りの熱Tb(液晶パネルLPからの熱の大半)は囲まれていない空間Yに放出される。
【0043】
熱Taは液晶パネルLPの表面から空間Zに放出されるものであり、熱Taは遮光部4の内部の空間Zに放出されるので、遮光部4の内部の空間Zの内部の空気の温度が上昇する。
【0044】
また、空間Zの内部の空気の温度上昇により、空間Zから液晶パネルLPの表面の遮光部4の緩衝部41で囲まれた表面部Xに熱Tdが伝達される。熱Tdのうち一部の熱Teは液晶パネルLPの沿面方向に拡散される。
【0045】
光学特性測定装置Bと液晶パネルLPの表面との間には、液晶パネルLPより放出される熱によって空気が暖められ上昇気流Fcが発生する。上昇気流Fcによって熱Tbは運ばれるので、液晶パネルLPの温度上昇は熱Tbの影響を受けにくい。また、遮光部4の上下には貫通孔42が形成されており、この貫通孔42を通って上昇気流Fcが空間Zの内部を通過するので、空間Zの内部の空気が入れ替わり、空間Zの熱を外部に放出することが可能である。
【0046】
なお、遮光壁部25は、光学特性測定装置Bを液晶パネルLPに取り付けたときに、光学特性測定装置Bの左右両側部に配置され上下に伸びるものであり、上昇気流Fcの発生及び流れに影響しにくく、液晶パネルLPの温度上昇にも影響しにくい。
【0047】
また、液晶パネルLPより放出された熱Tbの一部は本体1の背面部10で吸収され、背面部10の温度が上昇し、背面部10と液晶パネルLPとで挟まれた空間Yの空気の温度が上昇する。また、液晶パネルLPより背面部10に輻射された熱のうち一部の熱Tfは反射して液晶パネルLPに戻り、液晶パネルLPの表面温度を上げる。
【0048】
光学特性測定装置Bで液晶パネルLPの輝度を測定するときには、以上のような熱の動きが考えられる。液晶パネルLPの熱による輝度への影響を抑えるためには、光学特性測定装置Bを設置したことによる液晶パネルLPの遮光部4で囲まれた表面部Xの表面温度の上昇を抑える必要がある。
【0049】
液晶パネルLPの表面温度を低下させるためには、空間Z内の空気の温度を低くすればよい。空間Z内部の空気の温度上昇を抑えるためには、熱Taの量を減らし、空間Zの空気の量を増やせばよい。熱Taは表面部Xの面積に比例して多くなるものであり、表面部Xの面積を小さくすることで空間Z内の空気へ伝達される熱Taの量を減らすことができる。また、遮光部4の長さを長くする、すなわち、背面部10と液晶パネルLPの距離Lを長くすることで、空間Zの容積を大きくすることが可能であり、空間Z内の空気に伝達される熱Taの体積あたりの熱量を減らすことができ、温度上昇を低減することが可能である。さらに、遮光部4の貫通孔42の断面積を大きくすることで、空間Zを通過する上昇気流Fcの流量が多くなるので、空間Z内部の空気の温度上昇を抑制することが可能である。
【0050】
また、遮光部4の長さを長くすることで上昇気流Fcが吹き付ける面積を大きくすることができ、遮光部4の外表面から多くの熱が外部に放出される。これにより、空間Z内の空気の熱も外部に放出されるので、空間Z内の空気の温度上昇を抑制することが可能である。また、遮光部4の長さを長くすることで、貫通孔42から入射した光が受光素子2及び(又は)液晶パネルLPの表面に到達しにくくなり、測定精度を上げることができる。
【0051】
背面部10で反射される熱Tfを減少させるために、背面部10に熱を反射しにくい部材を取り付けるようにしてもよい。背面部10に輻射された熱Tfの反射を抑制することができ、液晶パネルLPの表面温度の上昇を抑制することができる。なお、背面部10に貼り付けられる部材としては、熱を反射しにくく、放熱しにくい部材であることが好ましい。背面部10に貼り付けられる部材としては、黒色の樹脂材料で形成されたシートや、熱が吸収されやすく、他の部材に移動されやすい放熱シートも用いられる。
【0052】
本発明にかかる光学特性測定装置の具体的な例について実験データをもとに説明する。
(実験1)
本発明にかかる光学特性測定装置を用いたときの液晶パネル表面の温度変化を従来の光学特性測定装置を用いたときと比較した。実験において、貫通孔が形成されていない遮光部4を備えた光学特性測定装置Bである実験試料E1と、貫通孔42が形成されている遮光部4を備えた光学特性測定装置Bである実験試料E2とを用いて実験を行った。また、比較試料V1として、背面部910の外周部を取り囲むように遮光部93が形成され、液晶パネルの被測定部の表面が本体91の背面部910、遮光部93にて覆われる従来の光学特性測定装置E(図12、13参照)を用いて実験を行った。なお液晶パネルと背面部との距離Lはいずれも30mmであり、光学特性測定装置Bの遮光部4は外形20mm、内径15mmの筒状の部材である。
【0053】
実験試料E1を用いた実験では、液晶パネル表面温度は2℃上昇し、輝度の変化率は2.5%であった。また、実験試料E2を用いた実験では、液晶パネル表面温度は1.7℃上昇し、輝度の変化率は2.2%であった。一方、従来の光学特性測定装置Eを用いたときの液晶パネル表面温度は7℃上昇しており、輝度の変化率は8%であった。通常液晶表示装置の表示部の光学特性を測定する光学特性測定装置の確度は、輝度の変化率で2%前後であることが多く、従来の光学特性測定装置を用いる場合、測定精度が大幅に低下することがわかる。一方で、実験試料E1を用いることで、温度変化を抑制し、測定精度を大幅に低下させることなく液晶パネルの光学特性を測定できることがわかる。そして、貫通孔42が形成されている実験試料E2を用いると、実験試料E1を用いた場合に比べてさらに温度上昇を抑えることができ、液晶パネルの光学特性を精度良く測定することが可能である。
【0054】
(実験2)
本発明にかかる光学特性測定装置Bを用いて液晶パネルLPの輝度を測定する場合、液晶パネルLPと本体1の背面部10との距離によって、液晶パネルLPの表面温度が変化することがわかっている。したがって、実験2では、背面部10と液晶パネルLPの距離が5mm、10mm、15mm、20mm、30mmの5パターンで実験を行った。なお、本実験では背面部10と液晶パネルLPの表面の距離と、液晶パネルLPの表面温度との関係を調べるものであるので、遮光部4を取り付けていない状態で実験を行った。
【0055】
図7は液晶パネルと背面部との距離と温度変化との関係を示すグラフである。なお、図7に示すグラフにおいて、横軸は液晶パネルと背面部との距離(mm)、縦軸は液晶パネルの温度変化(℃)である。温度変化とは光学特性測定装置を押し当てない状態での液晶パネルの表面温度と、光学特性測定装置を押し当てたときの温度との差である。
【0056】
図7に示すように、液晶パネルLPと背面部10との距離が開くほど、被測定部の温度変化は小さくなっている。すなわち、液晶パネルLPと背面部10との距離が、5mmのときの温度変化が4.1℃であったのに対し、10mmでは1.5℃、15mmでは1.3℃、20mmでは1℃、30mmでは0.9℃と減少していることがわかる。また、5mm〜15mmまでの間に急激に温度変化しているのに対し、15mmを境に温度変化が小さくなっていることがわかる。よって、本発明にかかる光学特性測定装置Bでは液晶パネルLPに押し当てられたときに、液晶パネルLPの表面と本体1の背面部10との距離が15mm以上になるように製造することで、温度変化を抑えることができ、測定精度の悪化を低減できるとの知見を得た。
【0057】
本発明にかかる光学特性測定装置の他の例を図面を参照して説明する。図8は本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の斜視図であり、図9は図8に示す光学特性測定装置の測定ユニットの断面図である。図8に示す光学特性測定装置は、測定器6と、測定ユニット7とに分離できるものである。測定ユニット7は測定器6の背面部と連結されて測定器6と液晶パネルLPの表面との距離を一定に保つための部材であり、支持部73と、遮光部74と遮光壁部75とを備えている。支持部73、遮光部74及び遮光壁部75は図5に示す支持部3、遮光部4及び遮光壁部5と同様の構成のものであり詳細な説明を省略する。なお遮光部74には、遮光部4と同様に貫通孔742が形成されている。
【0058】
図9に示すように、測定ユニット7の底面部711は、測定器6の底面と当接できるように平面で形成されており、遮光部74の内筒部が測定器6の受光素子と光が入射しないように、連結することができる連結部712を備えている。このように、測定器6と測定ユニット7とを分離させることができるので、これにより、ことなる光学特性値を測定することができる複数の測定器6を取り替えて使うことができる。
【0059】
また、従来用いられてきた光学特性測定装置の背面部と係合できるように測定ユニット7を作製することで、従来の光学特性測定装置で本発明の光学特性測定装置と同様に温度による影響をうけることなく、液晶パネルの光学特性の測定を行うことができる。
【0060】
本発明にかかる光学特性測定装置の他の例を図面を参照して説明する。図10は本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の遮光部の拡大断面図である。図10に示す光学特性測定装置Cは遮光部8が異なる以外は、光学特性測定装置Bと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。光学特性測定装置Cの遮光部8の貫通孔82には、複数のフィン83が背面部10から液晶パネルLPに並んで配置されている。フィン83は、平板状の部材である。フィン83を取り付けることで、貫通孔82に斜めに入射される光がフィン83で遮断されるので、貫通孔82の大きさを大きくしても、受光素子2及び(又は)液晶パネルLPに到達しない。また、フィン83は薄い部材で形成されているので、貫通孔82の開口面積を広くすることが可能であり、それだけ、遮光部8の内部の冷却効果を高めることが可能である。
【0061】
なお、図10に示すように、複数のフィン83のうち、背面10側に近いフィン831を遮光部8の内側に向かって背面側より遠ざかるように配置してもよい。このように配置されることで、受光素子2に向かって傾いて入射される光を遮断する面積を大きくすることができるので、フィンの枚数を減らすことができる。同様に、液晶パネルLP側のフィン832を内側に向かって液晶パネルLPから遠ざかるように取り付けていてもよい。また、フィン83を光の反射しにくい材料或いは光を吸収する材料で形成することで、光が受光素子2及び(又は)液晶パネルLPに入射するのを効果的に抑制することが可能である。
【0062】
上記各実施形態では、4本の支持部を備えているもので説明されているが、それに限定されるものではなく、本体を安定させることができる本数の支持部を備えていればよい。また、遮光壁部の一部又は全体を支持部のかわりとして利用してもよい。このとき、遮光壁部の液晶パネルと接触する部分には緩衝部が形成されていることが好ましい。また、遮光部が支持部の1つとして用いられるようにしてもよい。
【0063】
本発明にかかる光学特性測定装置の他の例を図面を参照して説明する。図11は本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の側面図である。図11に示すように、光学特性測定装置Dは、本体部1dと、遮光部4dとを備えている。光学特性測定装置Dは遮光部4dが支持部として用いられているものである。このように、支持部と遮光部とを共用することで、構造を簡単にすることができ、それだけ、製造にかかる手間と時間を省略することが可能である。なお、遮光部4dには、緩衝部41d及び貫通孔42dが形成されており、貫通孔42dは入射した光が直接液晶パネルLPの表面や開口部11dの奥に配置されている受光素子2に入射しないように形成されていることはいうまでもない。
【0064】
上記各実施形態において、遮光部として円筒形状のものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、開口部に光が入射するのを抑制することができる形状を広く採用することが可能である。
【0065】
上記実施形態の光学特性測定装置では表示部に液晶パネルを用いる液晶表示装置の液晶パネルの光学特性の測定を例に説明しているが、それに限定されるものではなく、熱によって光学特性が変化しやすい表示部を備えたディスプレイ装置の表示部の光学特性を熱による影響を抑えて光学特性の測定を行うことができる。
【0066】
上記実施例では、測定される光学特性の指標として、輝度を例に説明しているが、それに限定されるものではなく、表示部の表示性能を示す指標(例えば、輝度、コントラスト、階調等あるいは、これらのうち複数)を測定するようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光学特性測定装置は、自己発熱或いは近くに熱源を有する表示部の光学特性を測定するときに、熱による光学特性への影響を低減しつつ光学特性を測定することに用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる光学特性測定装置で測定している状態の概略側面図である。
【図2】図1に示す光学特性測定装置の背面図である。
【図3】図1に示す光学特性測定装置の背面側から見た斜視図である。
【図4】光学特性測定装置を用いた状態での外部からの環境光の入射状態を示す平面図である。
【図5】本発明にかかる他の例の背面側から見た斜視図である。
【図6】図5に示す光学特性測定装置で液晶パネルの輝度を測定している状態の熱の出入りが表示された側面図である。
【図7】液晶パネルと背面部との距離と温度変化との関係を示すグラフである。
【図8】本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の斜視図である。
【図9】図8に示す光学特性測定装置の測定ユニットの断面図である。
【図10】本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の遮光部の拡大断面図である。
【図11】本発明にかかる光学特性測定装置の他の例の側面図である。
【図12】従来の光学特性測定装置の側面図である。
【図13】図12に示す光学特性測定装置の背面図である。
【符号の説明】
【0070】
A、B 光学特性測定装置
1 本体
10 背面部
11 開口部
2 受光素子
3 支持部
31 緩衝部
4 遮光部
41 緩衝部
42 貫通孔
5 遮光壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ装置の表示部の光学特性を測定する光学特性測定装置であって、
前記表示部に対向して配置される平面状の背面部を有する本体部と、
前記背面部に形成された開口部から入射された光を受光する光学センサーと、
前記背面部に配置され、前記表示部と前記背面部との距離を一定に保つための支持部とを備え、
前記背面部の前記開口部の辺縁部を囲むように配置され、前記光学特性の測定を行うときに前記表示部の表面と密着する遮光部が備えられており、
前記遮光部の側壁部には、前記光学センサー及び前記表示部の表面に光が照射されない位置に貫通孔が形成されていることを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項2】
前記遮光部は少なくとも側壁部の内面が光を反射しにくい又は吸収するように形成されている請求項に記載の光学特性測定装置。
【請求項3】
前記光学特性の測定は、前記表示部が起立された状態で行われるものであり、
前記貫通孔は前記光学測定を行うときに、少なくとも前記遮光部の上部と下部とに形成されている請求項1又は請求項2に記載の光学特性測定装置。
【請求項4】
前記貫通孔には、複数のフィンが前記遮光部の長さ方向に配列されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記複数のフィンの少なくとも一部は、前記背面部と平行に形成されている請求項4に記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
前記背面部に近い側に配置されたフィンが、前記遮光部の外壁側から内壁側に向かって、前記背面部から遠ざかるように傾けて配置されている請求項4又は請求項5に記載の光学特性測定装置。
【請求項7】
前記表示部に近い側に配置されたフィンが、前記遮光部の外壁側から内壁側に向かって、前記背面部に近づくように傾けて配置されている請求項4から請求項6のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項8】
前記背面部は、前記光学特性の測定が行われるとき、左右の少なくとも一方の端部に配置され、前記背面部と前記表示部との間を通過する光を遮断する遮光壁部を備えている請求項1から請求項7のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項9】
前記遮光壁部は、前記光学特性の測定が行われるとき、前記表示部と非接触である請求項8に記載の光学特性測定装置。
【請求項10】
前記支持部は、前記光学特性の測定を行うときの前記背面部と前記表示部との距離が15mm以上となるように形成されている請求項3から請求項9のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項11】
前記表示部は液晶パネルである請求項1から請求項10のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項12】
前記支持部の少なくとも一部が前記遮光部を兼ねている請求項1から請求項11のいずれかに記載の光学特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−91509(P2010−91509A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263741(P2008−263741)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】