説明

光学用シートおよび光学用シートの製造方法

【課題】
本発明では、インラインコート法を用い、易滑性、アンチブロッキング性、帯電防止性、モワレ防止等の機能を付与した、液晶ディスプレイのバックライトユニット用の拡散シート、プリズムシート等の輝度向上シート用原反および拡散シート等の光学用シートを提供せんとするものである。
【解決手段】
プラスチックシート基材の片面に粒子を含有するブロッキング防止層が設けられた光学用シートであって、ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%以上30%以下であり、ブロッキング防止層の厚みが100nm以上1000nm以下である光学用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用シートおよび光学用シートの製造方法に関する。さらに詳しくは、易滑性、ブロッキング防止性を有する液晶ディスプレイのバックライトユニット用の拡散シート、プリズムシート等の光学用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ市場は急激な伸びが予想されており、その中でも液晶ディスプレイでは多種多様な光学用シートを使用している。特に液晶ディスプレイのバックライトユニットでは、光源を均一化、高輝度化を実現するために、拡散シートやプリズムシート等、輝度向上シートとして様々な光学用シートが用いられている。これらの光学用シートには一般に易滑性、ブロッキング防止性、帯電防止性、モワレ防止、導光板への傷つき防止性など様々な理由で、光拡散性や光集光性等の光学特性を有する面の反対面にバックコート層を設けている。一般的にこのバックコート層は数μm〜数十μm前後の無機および/または有機粒子をバインダー樹脂と共に有機溶剤に分散して、ポリエステルなどのプラスチックシート基材に塗布して、乾燥する工程を経て得られている(特許文献1〜3)。また、これらはいわゆるオフラインでのコーティングにより得られている。
【特許文献1】特開2002−098809号公報
【特許文献2】特開2002−243920号公報
【特許文献3】国際公開2003−032074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの光学シートは、製膜したプラスチックシート基材上に塗布液を塗布・乾燥工程を経て、いわゆるオフラインコーティングにより作製されている。更に詳しく説明すると、この方法で光学用シートを作製するには、少なくとも数μm〜数十μmの粒子とバインダー樹脂を有機溶剤に分散した塗布液を作製し、その塗布液をプラスチックシート基材に塗布して、有機溶剤を乾燥・除去する工程により製造している。この方法で得られた光学用シートでは、バックコート層上の粒子の脱離を防止するために、乾燥時のバインダー層の厚みが数μm程度形成されていた。このように、有機溶剤を使用することで環境負荷が高まり、粒子脱落防止のためバインダー層を厚くする必要があった。また、オフラインでコーティングすることで製造工程数が増え、コスト増の要因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の光学用シートは、プラスチックシート基材の片面に粒子を含有するブロッキング防止層が設けられた光学用シートであって、ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%以上30%以下であり、ブロッキング防止層の厚みが100nm以上1000nm以下である光学用シートである。
【0005】
また、本発明の光学用シートの製造方法は、塗布液をプラスチックシート基材の製膜工程中に塗布し、熱処理工程で塗布液を乾燥してブロッキング防止層を形成する上記本発明の光学用シートを製造する方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学用シートによれば、易滑性、ブロッキング防止性を有する光学用シートを提供することができる。また本発明の光学用シートの製造方法によれば、本発明の光学用シートの製造工程数を減らし、かつ製造コストを抑制して製造することが可能となる。また、本発明で得られた光学用シートを用いて光拡散シートを作成すると、これまでオフラインでバックコート層を形成していたものより薄膜化することができ、そのため光が効率的に透過し、その結果、バックライトに搭載した際に正面輝度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明の光学用シートは、プラスチックシート基材の片面に粒子を含有するブロッキング防止層が設けられた光学用シートであって、ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%以上30%以下であり、ブロッキング防止層の厚みが100nm以上1000nm以下である光学用シートである。
【0009】
ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%未満であると、十分な易滑性、ブロッキング防止性等の機能を果たせない可能性があるまた、30%を超えると、粒子をブロッキング防止層中に固定することが難しくなり、脱落してしまう可能性がある。
【0010】
ブロッキング防止層に対する粒子の含有率は、2%以上30%以下が好ましく、3%以上、25%以下であることが更に好ましい。
【0011】
ブロッキング防止層に対する粒子の含有率は、光学用シートの表面および断面を電界放射走査型電子顕微鏡を用いて観察した写真から、粒子の密度とブロッキング防止層の厚みを求め、粒子の平均粒径から下記式を用いて算出する。
・粒子の含有率(%)={N×(4/3)×π×(R/2)}/T×100
ここで、Nは光学用シートの表面から観察した1mmあたりの粒子の個数(粒子密度)、Rは粒子の平均粒子径、Tはブロッキング防止層の厚みを表し、RとTの単位はmmである。ブロッキング防止層の厚みとは、ブロッキング防止層を構成するバインダー樹脂で形成されている部分の厚みのことであり、図1の5で示す部分の厚みのことである。つまり、ブロッキング防止層の厚みには、バインダー樹脂から飛び出している粒子の部分は含まない。
【0012】
ブロッキング防止層の厚みが100nm未満であると、粒子をブロッキング防止層に固定することが困難となり、ブロッキング防止層から脱離する可能性がある。またブロッキング防止層の厚みが1000nmより厚いと、粒子は脱落しにくくなるが、光学用シートの全光線透過率が低下する恐れがあり、またブロッキング防止層を後述するインラインコーティング法で形成することが困難となる。インラインコーティング法では、プラスチックシート基材を横延伸する前にブロッキング防止層を形成する塗布液を塗布して、その後プラスチックシート基材を横延伸する。そのため、横延伸後の厚みが1000nmより厚くなるように、あらかじめ粘度の低い塗布液をそれ以上に厚く塗布しておくことが難しいからである。ブロッキング防止層の厚みは、100nm以上、500nm以下であることが更に好ましい。
【0013】
本発明に係るブロッキング防止層に含有する粒子は、平均粒子径は80nm以上5000nm以下であることが好ましい。平均粒子径が80nmより小さいと、ブロッキング防止層のバインダー樹脂の中に粒子が埋もれてしまい、易滑性、ブロッキング防止性を得られない場合がある。平均粒子径が5000nmより大きいと、水に分散させることが困難となり、インラインコート法でプラスチックシート基材上に塗布した場合、粒子が均一に点在しなくなり、部分的に易滑性、ブロッキング防止性を満足できなくなる場合がある。水に分散可能であり、易滑性、ブロッキング防止性を満足させるためには、平均粒子径が上記範囲であることが好ましい。
【0014】
前記粒子の形状に関して、特に規定は無いが、コストや市販されている粒子の種類等を考慮すると、形状が略球形であることが好ましい。
【0015】
前記粒子は光学用シートの表面に存在することで、易滑性、ブロッキング防止性を満足させることができる。その粒子の種類として易滑性、ブロッキング防止性および導光板への傷つき防止等を考慮すると、シリカ粒子、シリコーン粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリル酸エステル粒子、ポリウレタン粒子、およびナイロン粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るブロッキング防止層を形成するバインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびメラミン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種で形成されていることが好ましい。前記バインダー樹脂は、プラスチックシート基材から粒子の脱落を防止するために、プラスチックシート基材との密着性がよく、またバックライトに積載したときの光効率を上げるために透明であることが必要で、上記樹脂はこれらの特性を満たすことができる。
【0017】
本発明の光学用シートは、ブロッキング防止層を形成した面から光を入射したときの全光線透過率が88%以上であることが好ましい。全光線透過率が低いと、液晶ディスプレイのバックライトに積層する光学用シートとして用いた場合、輝度が低下する場合がある。
【0018】
本発明の光学用シートに用いるプラスチックシート基材の厚さは、特に規定は無いが、プラスチックシート基材が厚くなれば透過率が低下することが考えられるため、好ましくは30μm〜350μmであり、さらに好ましくは50μm〜300μmである。厚みが30μm未満であると、透明性は良好であるが、塗布液をコーティングした後の寸法安定性や取扱い性が低下する場合がある。350μmを超えると、寸法安定性や取扱い性が良好となるが、透明性が低下する場合がある。
【0019】
本発明の光学シートの基材として用いるプラスチックシート基材は、特に限定されるものではないが、ポリエステルフィルムは、安価で透明性、機械的強度に優れており、バックライトユニットからの光や熱に対する十分な耐性を有することから、光学用シートのプラスチックシート基材に用いることが好ましい。
【0020】
本発明の光学用シートのブロッキング防止層は、表面抵抗率が10〜1013Ω/sqであることが好ましい。表面抵抗値が1013Ω/sqより高いと、光学用シートのカット作業時に帯電による付着が問題となる可能性がある。また、光学用シートが帯電することで埃やチリが付着しやすくなり、不純物が表面に存在した状態で液晶ディスプレイのバックライトに積載すると、その部分が欠点となる恐れがある。表面抵抗率が10〜1013Ω/sqとするためには、ブロッキング防止層に帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤としては、たとえば、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩、ホスホン酸エステル塩等を有する帯電防止剤を使用することができる。
【0021】
本発明の光学用シートの熱収縮率について特に規定は無いが、MD、TD方向とも2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。MD方向は縦延伸方向、TD方向は横延伸方向である。熱収縮率の測定についてはJIS C2151に基づいて、MD、TD方向とも幅20mm、長さ150mmの試験片を各々5枚採り、それぞれの中央部に100mmの距離をおいて標点を付ける。150℃に保持された熱風循環式恒温槽に試験片を垂直につるし、30分間加熱した後取り出し、室温に30分間放置してから標点間距離を測定して、次の式によって算出し、その平均値を求める。
・熱収縮率(%)=(L−L)×100/L
:加熱前の標点間距離(mm)
L:加熱後の標点間距離(mm)。
【0022】
本発明の光学用シートの塗布欠点の数は1mあたり10個以下であることが好ましく、5個/m以下であることがさらに好ましい。ここでいう塗布欠点は、塗布液をプラスチックシート基材の製膜工程中に塗布し、乾燥・横延伸工程を経る際に、異物、泡等の混入により横延伸方向に長く伸びた、図2に示したラグビーボールのような略楕円状に形成された、塗布液が抜けたような塗布欠点のことである。ここで長辺aの長さは50μm以上、5mm以下とする。通常、粒子の添加量が多いと、粒子同士が凝集したり、粒子表面の水分散安定剤によりバインダー樹脂が凝集したり、また塗布液の粘度が高くなり気泡を咬み込みやすくなる。また、ブロッキング防止層の厚みを厚くしようとして塗布液の濃度を高くしても塗布液の粘度が高くなり気泡を咬み込み易くなる。そのため、凝集物や気泡が原因となり、略楕円状に形成された塗布欠点が多発することが考えられる。この塗布欠点が多数発生すると光学的に視認され、この塗布欠点が多数ある光学用シートを光拡散シートのプラスチックシート基材として用いた場合、その光拡散シートをバックライトユニットに使用すると、塗布欠点から光が漏れて光学欠点となる恐れが考えられる。そのため、できるだけこの塗布欠点を削減することが好ましい。上述したように、この塗布欠点は粒子の凝集や高粘度により発生する可能性があるため、ブロッキング防止層の厚みや粒子の種類、粒子径、粒子の添加量等に非常に影響を受けやすい。そのため、本明細書で規定している粒子の種類、粒子径、粒子の添加量、ブロッキング防止層の厚みを適正化してプラスチックシート基材の製膜工程中に塗布することにより、易滑性、ブロッキング防止性、モワレ防止、導光板への傷つき防止性、粒子の脱落防止を実現すると共に、略楕円状に形成された塗布欠点の数を削減することが可能となる。
【0023】
本発明の光学用シートを製造するに際して、ブロッキング防止層を設けるのに好ましい方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程中に基材フィルム上にブロッキング防止層を設ける方法が好適である。中でも、生産性、コストを考慮すると製造工程中に、ブロッキング防止層を形成する塗布液を塗布して、熱処理工程で塗布液を乾燥してブロッキング防止層を設ける方法が最も好適である。この方法を用いると、基材フィルムと同時にブロッキング防止層を設けることで工程が簡略化し、結果として生産性の向上やコストの抑制が可能となる。
【0024】
例えば、溶融押出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に塗布液を塗布する。塗布されたフィルムを段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥し、幅方向に2.5〜5倍程度延伸する。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)によって得ることができる。
【0025】
本発明の光学用シートを得るために使用する前記塗布液は、バインダー樹脂、粒子及び水を含み、塗布液に対する水の含有量が50重量%以上であることが好ましい。
塗布液に有機溶剤の含有率が高いと、大気中に放出されないために、回収装置を取り付けたり、有機溶剤の種類によれば、高温の加熱ゾーンを通過する際に発火する恐れがあるため、塗布液は水が主成分であり、含有率は50重量%以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の光学用シートのブロッキング防止層を形成した面とは反対側の面に、バインダー樹脂と粒子とから構成される光拡散層を形成して光拡散シートとすることができる。光拡散層は光の多重屈折作用による拡散性とレンズ効果による集光性を併せ持つ層である。
【0027】
かかる光拡散層の粒子について特に規定はないが、かかる粒子としては、数平均粒子径が0.5μm〜50μmのものが好ましく、1μm~30μmのものが更に好ましく使用される。平均粒子径が0.5μmより小さいと、屈折、反射や散乱する際に波長依存性が大きくなる可能性がある。また、50μmより大きいと、光拡散層中の粒子の充填率が低下して、光拡散層中に粒子の存在しない空間の割合が増えることによって、光抜けが生じ拡散性が低下する場合がある。
【0028】
また、かかる粒子の例としては、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびそれらの共重合体、シリコーン樹脂等の有機粒子やシリカ、酸化チタニウム等の無機粒子および有機−無機の複合材料からなる粒子等を用いることができる。
【0029】
前記バインダー樹脂は、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系およびメラミン系、ウレタン系、イソシアネート系からなる群より選択された1種類以上を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の光拡散フィルムにおける光拡散層は、バインダー樹脂100重量部に対して、粒子の含有量が0.1〜50重量部であることが好ましい。粒子のバインダー樹脂に対する含有量が0.1重量部を下回ると、光拡散層が充分な光拡散性を得られない可能性がある。また、50重量部を超えると、塗液を塗布することが困難となる場合がある。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は全て重量部を示す。
【0032】
(評価項目および評価方法)
得られた光学用シートについて、以下の評価を行なった。
【0033】
(1)粒子密度
日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”を用い、光学用シートのブロッキング防止層を設けた面を観察した写真から求めた。観察倍率は粒子径により任意に選択できるが、1枚の写真中に少なくとも粒子が50個以上、多くとも500個以下となるようにした。粒子密度は観察写真10枚の平均値とした。
【0034】
(2)ブロッキング防止層の厚み
日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”を用い、光学用シートの断面を顕微鏡倍率5000倍〜20000倍で観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の10個の平均値とした。ここで、ブロッキング防止層の厚みとは、ブロッキング防止層を構成するバインダー樹脂で形成されている部分の厚みのことであり、図1の5で示す部分の厚みのことである。つまり、ブロッキング防止層の厚みには、バインダー樹脂から飛び出している粒子の部分は含まない。
【0035】
(3)平均粒子径
日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”を用い、光学用シートのブロッキング防止層の表面を顕微鏡倍率1000倍〜100000倍で観察した写真から求めた。光学用シートのブロッキング防止層の表面に存在する粒子を100個任意に選択し、それらの粒子の直交する2方向から測定した粒子径の平均値を各々の粒子の粒子径とし、さらに100個の粒子径の平均値を平均粒子径とした。
【0036】
(4)粒子の含有率
(1)の粒子密度N(個/mm)、(2)のブロッキング防止層の厚みT(mm)、(3)の平均粒子径R(mm)から下記式を用いて粒子の含有率を算出する。
・粒子の含有率(%)={N×(4/3)×π×(R/2)}/T×100。
【0037】
(5)全光線透過率・ヘイズ
50mm角にカットした光学用シートを、スガ試験機(株)製自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(光源590nm ナトリウムランプ)を用いて、光学用シートのブロッキング防止層を設けた面側から光を入射して測定した。3回測定した平均値を100μm当りに換算し、該サンプルの平均値とした。
【0038】
(6)粒子脱落性
直径10mmの円柱の先端に、黒のベルベットの布を取り付け、円柱の円部位をブロッキング防止層上に置き、その円柱を3kgの力で50mmの長さを5往復擦りつけた。擦りつけた面を日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”を用いて顕微鏡の倍率を100倍〜30000倍で観察し、粒子脱落の有無を以下の基準で評価した。
○:粒子の脱落無し
×:粒子の脱落有り。
【0039】
(7)つき揃え性 A4サイズにカットした光学用シート5枚をブロッキング防止層を設けていない面同士が接しないように重ねた。重ねた5枚の光学用シートの端面が揃わないように不規則に混ぜた。つき揃えを行い、端面が揃うまでのつき揃えの回数を以下の基準で評価した。
○:つき揃え回数1〜2回
△:つき揃え回数3〜4回
×:つき揃え回数5回以上。
【0040】
(8)表面抵抗率
JIS K6911(1995年制定)に基づいて、100mm角にカットした光学用シートを20℃、65%RHの条件下、株式会社アドバンテスト製R8340を用いて、二重リングプローブ法で印加電圧10Vの条件で表面低効率を測定した。
【0041】
(9)表面塗布欠点の評価
本発明の光学用シートを1mの大きさで5枚採取し、図2に示した略楕円状の塗布欠点のうち、長辺が50μm以上、5mm以下である塗布欠点の数を目視により数え、以下の基準で評価した。
◎:塗布欠点の数が5個/m以下
○:塗布欠点の数が6個/m以上、10個/m以下
△:塗布欠点の数が10個/m以上、50個/m以下
×:塗布欠点の数が51個/m以上、もしくは塗布表面にムラがあり評価不可。
【0042】
(10)輝度測定
20インチ直下型バックライトユニットに拡散板(透過率65%)を載せ、その上に本発明の光学用シートに光拡散層を形成した光拡散シートを1枚載せて、色彩輝度計、BM−7(株式会社トプコン製)を用いて、測定角度を0.2°、BM−7とバックライトユニットとの間隔を50cmとして、バックライトユニットにあるランプ上の中央より6箇所、およびそのランプ間の空間の5箇所の輝度を測定して平均値を求めた。
【0043】
求めた輝度の平均値を下記の方法により得られた、オフラインで形成したバックコート層を有する光拡散シートの輝度の平均値を100とした場合の輝度比で評価を行った。
【0044】
オフラインで形成したバックコート層を有する光拡散シートの作成
<バックコート層の塗剤>
アクリディック A−811(大日本インキ工業株式会社製)25部
スノーテック MX−500(綜研化学株式会社製)0.5部
メチルエチルケトン74.5部
上記塗液をメタバー#10を用いて塗布し、乾燥機に入れて100℃、3分間乾燥してオフラインでのバックコート層を形成した。
<光拡散層の塗剤>
アクリディック A−811(大日本インキ工業株式会社製)2.3部
バーノック DN−980(大日本インキ工業株式会社製)
スノーテック MX−500(綜研化学株式会社製)6.5部
スノーテック MX−1500(綜研化学株式会社製)17.0部
メチルエチルケトン57部
上記塗液をメタバー#14を用いて塗布し、乾燥機に入れて100℃、3分間乾燥して目的の光拡散シートを得た。
【0045】
(実施例1)
実質的に粒子を含有しないPETペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給した。押出機で285℃で溶融し、T字型口金によりシート状に押し出した。押し出したシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。
【0046】
この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、この処理面に下記の塗布液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把時しながら予熱ゾーンに導き、100℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に210℃の加熱ゾーンで熱処理を施した後、幅方向に4%弛緩処理し、結晶配向の完了した光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0047】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ペスレジン A−110(ポリエステル系樹脂、高松油脂株式会社製) 90部
バーサTL YE908(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製) 10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
テクポリマー MB20X−5(平均粒子径5μm有機粒子、積水化成品工業株式会社製)10部
・水 2000部。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0049】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製)90部
バーサTL YE908(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
スフェリカスラリー 140P(平均粒子径0.14μmシリカ粒子、触媒化成工業株式会社製)7部
・水 2000部。
【0050】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが300nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0051】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製) 90部
バーサTL YE908(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
シーホスター KE−W30(平均粒子径0.3μmシリカ粒子、日本触媒株式会社製)5部
・水 1000部。
【0052】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが500nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0053】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ペスレジン A−210(ポリエステル系樹脂、高松油脂株式会社製)90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
スフェリカスラリー PA1000J(平均粒子径1.0μmシリカ粒子、触媒化成工業株式会社製)3部
・水 1000部。
【0054】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが500nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0055】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製) 90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
テクポリマー MB20X−5(平均粒子径5μm有機粒子、積水化成品工業株式会社製)3部
・水 2000部。
【0056】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0057】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製) 90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
カタロイド SI−80P(平均粒子径80nm無機粒子、触媒化成工業株式会社製) 20部
・水 2000部。
【0058】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0059】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ハイドラン AP−30(ウレタン系樹脂、大日本インキ工業株式会社製)80部
バーサTL YE908(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)20部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
カタロイド SI−80P(平均粒子径80nm無機粒子、触媒化成工業株式会社製) 20部
シーホスター KE−W30(平均粒子径0.3μmシリカ粒子、日本触媒株式会社製)7部
・水 2000部。
【0060】
(実施例8)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが100nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0061】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ハイドラン AP−30(ウレタン系樹脂、大日本インキ工業株式会社製)80部
バーサTL YE908(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)20部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
スフェリカスラリー 140P(平均粒子径0.14μmシリカ粒子、触媒化成工業株式会社製)5部
・水 2000部。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、粒子の分散状態が悪く、粒子がポリエステルフィルム上に局在化していた。
【0063】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製)90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
ケミスノー MX−1500(平均粒子径15μm有機粒子、綜研化学株式会社製)1部
・水 2000部。
【0064】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0065】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製)90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
スフェリカスラリー 140P(粒子径0.14μmシリカ粒子、触媒化成工業株式会社製)16部
・水 2000部。
【0066】
(比較例3)
実施例1と同様の方法で、塗布液の組成のみを下記のように変更して光学用シートを得た。このとき、基材PETフィルムの厚みが100μm、積層したブロッキング防止層の厚みが150nmとなるように押出機の押出量、塗布液の塗布量を調整した。
【0067】
<塗布液>
・バインダー樹脂
ニカゾール RX7013ED(アクリル系樹脂、日本カーバイド工業株式会社製)90部
バーサTL YE910(スルホン酸アンモニウム塩系帯電防止剤、日本NSC株式会社製)10部
プラスコート RY−2(界面活性剤、互応化学工業株式会社製)0.25部
・粒子
シーホスター KE−W30(粒子径0.3μmシリカ粒子、日本触媒株式会社製)0.2部。
【0068】
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた光学用シートのブロッキング防止層と反対面に、光拡散層を形成し光拡散シートを得た。光拡散層の形成にはアクリディック A−811(大日本インキ工業株式会社製)2.3部、バーノック DN−980(大日本インキ工業株式会社製)、スノーテック MX−500(綜研化学株式会社製)6.5部、スノーテック MX−1500(綜研化学株式会社製)17.0部をメチルエチルケトン57部に溶解、分散させ、得られた塗液をメタバー#14を用いて塗布し、乾燥機に入れて100℃、3分間乾燥して目的の光拡散シートを得た。
【0069】
表1に示すように、実施例1〜8で得られた光学用シートは、透過率が良好で、粒子の脱落もなく、つき揃え性に優れ、帯電防止機能を有し、易滑性、帯電防止性、ブロッキング防止性を十分に満足できるものであった。
対して、比較例1〜3の光学用シートでは、易滑性が不足していたり、粒子の脱落が発生したり、透過率が低いものがあった。
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】光学用シートの断面図
【図2】塗布欠点の模式図
【符号の説明】
【0072】
1 プラスチックシート基材
2 バインダー樹脂層
3 粒子
4 ブロッキング防止層
5 ブロッキング防止層の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシート基材の片面に粒子を含有するブロッキング防止層が設けられ、ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%以上30%以下であり、ブロッキング防止層の厚みが100nm以上1000nm以下である光学用シートを製造する方法であって、塗布液をプラスチックシート基材の製膜工程中に塗布し、熱処理工程で塗布液を乾燥してブロッキング防止層を形成する光学用シートの製造方法。
【請求項2】
前記塗布液が、バインダー樹脂、粒子及び水を含有し、塗布液に対する水の含有量が50重量%以上である請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項3】
プラスチックシート基材の片面に粒子を含有するブロッキング防止層が設けられ、ブロッキング防止層に対する粒子の含有率が1%以上30%以下であり、ブロッキング防止層の厚みが100nm以上1000nm以下である光学用シート。
【請求項4】
前記粒子の数平均粒子径が80nm以上5000nm以下である請求項3に記載の光学用シート。
【請求項5】
前記粒子が、シリカ粒子、シリコーン粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリル酸エステル粒子、ポリウレタン粒子、およびナイロン粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項3又は4に記載の光学用シート。
【請求項6】
前記ブロッキング防止層を構成するバインダー樹脂がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびメラミン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種で形成されている請求項3〜5のいずれかに記載の光学用シート。
【請求項7】
前記ブロッキング防止層を形成している面から光を入射した場合の全光線透過率が88%以上である請求項3〜6のいずれかに記載の光学用シート。
【請求項8】
前記ブロッキング防止層の表面抵抗率が10〜1013Ω/sqである請求項3〜7のいずれかに記載の光学用シート。
【請求項9】
前記光学用シートの表面塗布欠点の数が1mあたり10個以下である請求項3〜8のいずれかに記載の光学用シート。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかに記載の光学用シートのブロッキング防止層が設けられた面とは反対の面に光拡散層が形成され、かつ、光拡散層が少なくともバインダー樹脂と粒子とから構成されていることを特徴とする光拡散シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−209919(P2008−209919A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20548(P2008−20548)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】