説明

光学用ポリエテルフィルム

【課題】 透明性に優れ、他の透明部材と密着させた際に干渉縞が発生することがなく、帯電防止性能や傷付き防止性に優れた光学用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度が少なくとも片方の表面において0.7個/m以上であり、表面固有抵抗が5×1012Ω以下であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルムであり、共押出によりセキソウされた構造を有するフィルムであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の透明性を備えた光学用途に用いられる板ガラスや透明樹脂のフィルム、シートおよび成形物の透明部材と密着して使用されるときに問題となる干渉縞の発生を防止し、埃などの付着が問題になりやすいフィルムやシート、例えばタッチパネルの透明導電性フィルム、バックライトユニットの拡散板、反射板やプリズムシート、さらにプラズマディスプレーの電磁波遮蔽性フィルムなどの用途のフィルム基材として使用される光学用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明部材同士が密着する際に発生する干渉縞を防止することは、光学用途では重要な課題である。その対策としては、両者の間に生じる間隔を一定以上に広げることや、光を散乱さること、またそれらを複合した方法等が取られている。従来発生する干渉縞などの発生を防止するフィルムおよびシートは、透明部材と密着する表面を粗面化処理したものが用いられ、多くの場合、光散乱性を有する粒子を含有した透明樹脂層をコートしたフィルムが開示されている。例えば、特許文献1には、粒子を含む透明樹脂を梨地様に処理したコートロールを用いて塗布する方法が開示されている。また、特許文献2には、紫外線硬化樹脂と球状有機粒子を用いた、光透過性に優れた干渉縞防止シートが開示されている。しかしながら、いずれの例も、塗布層の塗布工程や乾燥工程が必要であり生産性向上に限界あり、安全衛生管理にも注意が必要である。
【0003】
一方、フィルムを粗面化する方法として、従来、不活性粒子をフィルム中に含有させる方法があるが、干渉縞発生防止可能な大きな表面突起を形成するには、大きな粒子を用いることが必要となる。一方、ポリエステルフィルムは、静電気を帯びやすいため、空気中の埃を吸着しやすい。そのため、光学上の欠点を発生し、部品として使用された装置の品質を低下させてしまうことがある。例えば、特許文献3には、平均粒子径が10μmの大きな粒子を用いたフィルムが開示されているが、帯電防止性能については全く考慮されていない。
【0004】
また、特許文献1によれば、透明導電層をフィルムの表面に設けることで帯電防止を行っているが、フィルム基材の帯電防止性は考慮されていない。なお、ポリエステルフィルム基材の帯電防止性を改良する方法については、多くの文献が開示されているが、干渉縞発生の防止と帯電防止性との双方を同時に改良するについては開示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平09−272183号公報
【特許文献2】特開平11−227088号公報
【特許文献3】特開2002−37898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、透明性に優れ、他の透明部材と密着させた際に干渉縞が発生することがなく、帯電防止性能や傷付き防止性に優れた光学用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度が少なくとも片方の表面において0.7個/m以上であり、表面固有抵抗が5×1012Ω以下であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のようなグリコールとのエステルを主たる成分とするポリエステルである。当該ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接重合させて得られるほか、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によっても得られる。当該ポリエステルの代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ボリブチレンテレフタレート等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の40モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、ジオール成分の40モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよく、またそれらの混合物であってもよい。
【0010】
本発明におけるポリエステルフィルムの少なくとも片方の表面における、二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度が0.7個/mm以上であり、好ましくは0.8個/mm以上である。二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度が0.7個/mm未満では、透明部材と接触したときに発生する干渉縞を抑制することはできない。また、二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度の上限の値は、通常20である。当該突起密度が20を超えると、フィルムの透明性が低下する。
【0011】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片方の表面に5次以上の干渉縞を有する突起を設けるために、通常、不活性粒子を含有する。用いる不活性粒子はポリエステルと非相溶の有機粒子や無機粒子が用いられる、これらの不活性粒子の5%熱分解温度(不活性ガス雰囲気中、10℃/分の昇温速度で加熱した時の重量減少が5%に達した時の温度)は、280℃以上が好ましく、さらに好ましくは290℃以上である。不活性粒子の5%熱分解温度が280℃未満では、熱劣化によりフィルムが黄色または茶色を帯びてしまうことがある。具体的な不活性粒子の例としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等の有機質微粒子および炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ガラス等の無機質微粒子で単体もしくは混合体が挙げられる。これらの中でも、フィルムの延伸工程で適度に粒子が変形する有機粒子が好ましい。
【0012】
また不活性粒子の粒子変形度は、1.5〜10の範囲が好ましく、さらに好ましくは2.0〜8.0、特に好ましくは2.0〜5.0の範囲である。粒子変形度が1.5未満では、フィルムの延伸時に粒子周りにボイドが発生しやすい傾向があり、透明性の低下やフィルムからの粒子脱落が起こることがある。一方、粒子変形度が8を超えると、フィルム表面に形成される突起高さが小さくなり、干渉縞の発生を防止できない場合がある。
【0013】
また、不活性粒子の含有量は、好ましくは0.02〜2重量%であり、さらに好ましくは0.05〜1.5重量%である。0.02重量%未満では、干渉縞防止性に劣る傾向がある。一方、含有量が2重量%を超えると、フィルムの透明性が低下する傾向がある。
【0014】
さらに用いる不活性粒子の平均粒径は、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは8〜40μmである。平均粒径が5μm未満の不活性粒子では、干渉縞防止性に劣る傾向がある。一方、50μmを超える不活性粒子では、製膜性に劣る傾向があり、フィルムに光学上の欠陥を生じることがある。
【0015】
また、不活性粒子の粒子径分布において、70μm以上の粗大粒子が実質的にゼロであることが好ましく、さらに好ましくは50μm以上の粗大粒子が実質ゼロであることが好ましい。70μm以上の粗大粒子が存在するとフィルム中に異物起因の光学上の欠陥を生じることがある。70μm以上の粗大粒子が実質的にゼロにするには、単分散性粒子を用いたり、分級した不活性粒子を用いたり、ポリエステルの溶融押出し工程で適切なフィルターを設けたりする方法がある。
【0016】
また、干渉縞防止の突起を形成するために用いる不活性粒子のフィルムの厚み方向の分布については、透明部材と接触する表面より0.5μm以内には実質存在しないことが好ましい。さらに好ましくは1μm以内、特に好ましくは2μm以内には実質存在しないことである。表面より0.5μm以内に該不活性粒子が存在すると、製膜工程または加工工程での摩擦で粒子が脱落し、汚れやフィルムの傷または相手部材の傷の発生原因となることがある。
【0017】
干渉縞防止の突起を形成するために用いる不活性粒子を表面より0.5μm以内に実質存在しないようにするためには、フィルムを共押出し積層フィルムとし、内層に不活性粒子を含有させ、表層には実質的に粒子を含有させずに表層の厚みを通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、20μm以下にする。表層の厚みが20μmを超えると干渉縞防止性能に劣る傾向がある。
【0018】
本発明の帯電防止の塗布層を除くフィルム構成は、単層または積層のどちらの構成もとることができる。好ましくは共押出しの積層の構成とし、内層に表面突起を形成するための不活性粒子を含有させることが好ましく、その場合の層構成としては、例えばA層/B層、A層/B層/A’層、A層/B層/C層の形態をとることができる。ここでA層とB層(C層)の違いは、用いるポリエステル樹脂の種類または含有する不活性粒子の種類や濃度が異なることを意味する。またA層とA’層の違いは層の厚みが異なることを意味する。
【0019】
また、本発明のフィルムのヘーズ値は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。ヘーズ値が10%を超えると、透明性が低下する傾向があり、光学用として実用的でない場合がある。
【0020】
さらに本発明におけるポリエステルフィルムの表面固有抵抗は、5×1012Ω以下であり、好ましくは1×1012Ω以下、さらに好ましくは5×1011Ω以下、特に好ましくは1×1011Ω以下である。表面固有抵抗が5×1012Ωを超える場合には、フィルムの巻き取りや巻き返しのときに静電気が発生しフィルムに静電気がたまり、放電による表面欠陥が発生する、また埃がフィルム表面に付着する問題を引き起こす。
【0021】
表面固有抵抗を5×1012Ω以下のポリエステルフィルムを得るには、延伸前のポリエステルシートに特定の配合の塗布液を塗布したのち延伸して帯電防止性を有する塗布層を設ける方法と、フィルム中に帯電防止剤を含有させる方法がある。前者の方法の塗布液としては、例えば特開2004−137413号公報で開示されているような4級アンモニウム塩基を有する高分子化合物を使用したものがあり、これを利用することが好ましい。塗布液成分として使用する4級アンモニウム塩基を有する高分子化合物としては、例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。また、4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0022】
さらに塗布層中には、必要に応じて上記以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0023】
そのほか塗布層には、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0024】
次に後者の方法の帯電防止剤の例としては、特開2002−225173号公報に記載されているように以下の化合物が挙げられる。
【0025】
第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物などのカチオン系のもの、硫化油、硫酸化アミド油、硫酸化エステル油、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系のもの、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪アミンまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、アルキルジエタノールアミンの脂肪酸エステル等の非イオン系のもの、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが挙げられる。なかでも帯電防止性能と透明性の観点でアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸リチウム、アルキルベンゼンスルホン酸リチウムなどが好ましい。
【0026】
また帯電防止層はフィルムの両面に設けることが好ましい、片面ではフィルムに帯電した静電気が逃げにくい傾向がある。また、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の添加剤を層中に含有してもよい。
【0027】
次に本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
【0028】
(1)帯電防止剤を含有するフィルムの製造方法
あらかじめ帯電防止剤を含有した乾燥したポリエステルを押出機に供給し、ポリエステルの融点以上の温度に加熱してそれぞれ溶融させる。次いで、Tダイから溶融シートとして押出し、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転位温度未満にまで急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させてもよい。そして、ロール延伸機を用いて、未延伸フィルムをその長手方向に延伸(縦延伸)することにより一軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、(原料レジンのガラス転移温度(Tg)より10℃低い温度からTgより40℃高い温度までの範囲内で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.0〜6.0倍である。さらに、縦延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。その後、テンターに導きテンター延伸機を用いて、一軸延伸フィルムをその幅方向に延伸(横延伸)することにより二軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)から50℃高い温度までの温度範囲で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.5〜6.0倍である。さらに、横延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段以上に分けて行ってもよい。また縦と横を同時に行う同時二軸延伸を行ってもよい。そして二軸延伸フィルムを熱処理することによりフィルムが製造される。このときの熱処理温度は、130〜250℃である。二軸延伸フィルムを熱処理するときには、二軸延伸フィルムに対して20%以内の弛緩を行ってもよい。
【0029】
(2)帯電防止の塗布層を設けたフィルムの製造方法
ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかに塗布する。これらの中では、一軸延伸フィルムに塗布した後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層乾燥を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、塗布後に延伸を行うために薄膜の塗布が容易であり透明性に優れる、また塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温であるために塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、透明性、帯電防止性に優れ、他の透明部材と密着しても干渉縞が発生しなく、また傷付き防止性に優れたポリエステルフィルムが提供され、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および本発明で用いた測定法および用語の定義は次のとおりである。
【0032】
(1)平均粒径
電子顕微鏡を用いて粒子を観察して最大径と最小径を求め、その平均を不活性粒子1個の粒径とした。フィルム中の少なくとも100個の不活性粒子についてこれを行う。粒子群の平均粒径は、これらの粒子の重量平均径とする。
【0033】
(2)粒子変形度
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、フィルム厚み方向にミクロトームで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡にて観察した。粒子毎に最大径と最小径を求め最大径が平均粒径の±10%に入る少なくとも50個の粒子について、最大径と最小径の比を算出し、その相加平均を変形度とする。
【0034】
(3)表面固有抵抗
横河ヒューレットパッカード社製の内側電極50mm径、外側電極70mm径の同心円型電極である16008Aを23℃、50%RHの雰囲気下で試料に設置し、100Vの電圧を印加し、同社製の高抵抗計である4329Aで試料の表面固有抵抗を測定する。
【0035】
(4)二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度
フィルム表面にアルミニウムを蒸着し、ニコンオプチフォト干渉顕微鏡を用い、二光束法にて測定する。測定波長は0.54μmで5次以上の干渉縞を示す突起個数を100mmの面積にわたって測定し、1mm面積あたりの突起個数を求める。
【0036】
(5)帯電防止性
宍戸商会社のスタチックオネストメーター(商品名)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下で試料上2cmの高さにある放電電極に10kVの電圧をかけてフィルムを帯電させ、帯電量が飽和した後に放電を中止する。次いで、試料上2cmの位置にある電位計で試料の電荷減衰性を測定し、その半減期から下記基準で判定する。
○:半減期が3秒以下であり、帯電防止性に優れる
△:半減期が3秒を超え 6秒以下であり、帯電防止性はややよい
×:半減期6秒を超え、帯電防止性に劣る
【0037】
(6)干渉縞防止性
表面粗さRa(小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定、ただし、カットオフ値は80μm、測定長は2.5mm)が8nmであり、厚さが0.2mmのポリエステルフィルムの表面に、試料フィルムの評価する表面を重ね、5mm角のアクリル棒を45°の角度で100gの荷重で上から押し付けて20mm移動させ、蛍光灯下で干渉縞が発生するかどうか観察し、干渉縞防止性を以下のように評価する。
○:アクリル棒を押し付けて、20mm移動してもリング状の干渉縞は観察されない
△:20mm移動中にわずかにリング状干渉縞が観察されるが、3分後には消える
×:20mm移動中に、明瞭なリングの干渉縞が観察され、3分後になっても消えない
【0038】
(7)傷付き防止性
大平理化工業(株)製のラビングテスターを用いて、JIS K6718に規定された、厚み2mmのメタクリル樹脂板を往復運動するプレートに両面粘着テープで固定する。次に5cm×5cmのガーゼを24枚重ね、クッションとした試験フィルムを貼り付けたプレートを置く。そして、プレートを含めた治具の自重380gの荷重がかかった状態で試験フィルムとメタクリル板とがこすられる状態で10回往復運動をさせる。その後、メタクリル板の表面に発生した、長さ5mm以上の傷を蛍光灯下で目視観察する。1試料につき3回試験を行い、傷の本数の平均値を求め、以下のように評価する。
○:傷の本数が1以下であり、傷つき防止性に優れる
△:傷の本数が1を超え3以下であり、傷付き防止性がやや良い
×:傷の本数が3を越え、傷付き防止性が不良
【0039】
以下の例において用いた原料は、以下のようにして調整した。
(原料の調整)
・ポリエステルa
常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0040】
・ポリエステルb
常法の重縮合で合成された極限粘度0.68、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂に平均粒径13μm、5%熱分解温度が290℃の架橋アクリル有機粒子を練り込み2.0重量%含有させたものである。
【0041】
・ポリエステルc
常法の重縮合で合成された極限粘度0.68、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂に平均粒径1.7μm、5%熱分解温度が292℃の架橋アクリル有機粒子を練り込み2.0重量%含有させたものである。
【0042】
・ポリエステルd
常法の重縮合で合成された極限粘度0.68、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを練り込み1.5重量%含有させたものである。
【0043】
・塗布液X
主鎖にピロリジウム環を有するポリマーである第一工業製薬社製シャロールDC303P 40部、メトキシメチロール 20部、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル共重合体 40部からなる、主に水を媒体とする塗布液である。
【実施例1】
【0044】
ポリエステルaが92.5重量%とポリエステルbが7.5重量%の混合物をベント付き2軸押出機に供給し、溶融温度280℃で溶融した後、ギヤポンプフィルター(50μmの粒子捕集率が75%のフィルターを用いた)を介してダイを通してキャスティングドラムに引き取り未延伸フィルムを得た。かくして得られた未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃で3.7倍延伸した後、塗布液Xを縦延伸フィルムの両面に塗布し、テンターに導き95℃で横方向に4.0倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、230℃で5秒間幅方向に3%弛緩させながら熱固定し、下記表1に記載した厚みのポリエステルフィルムを得た。
【実施例2】
【0045】
ポリエステルaが92.5重量%とポリエステルbが7.5重量%の混合物をベント付き2軸押出機(メイン)に供給し、ポリエステルdを別のベント付き2軸押出機(サブ)に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、フィルム表裏を構成する層を形成するため2つに分流し、それぞれのサブ押出機の溶融ポリマーと、メイン押出機からの溶融ポリマーとをギヤポンプフィルター(粒子を含有する溶融ポリマーを含むメイン押出し機のフィルターは50μmの粒子捕集率が75%のフィルターを用いた)を介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り、2種3層の未延伸フィルムを得た。かくして得られた未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃で3.7倍延伸した後、テンターに導き95℃で横方向に4.0倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、230℃で5秒間幅方向に3%弛緩させながら熱固定し、表1に記載した厚み構成のポリエステルフィルムを得た。なお、表1の層構成で、A層/B層/A層と記載されているフィルムは、3層から構成されたフィルムであり、A層がサブ押出機からの樹脂で構成され、B層はメイン押出機からの樹脂で構成された内層を表す。
【実施例3】
【0046】
ポリエステルaをベント付き2軸押出機(サブ)に供給して溶融温度280℃で溶融し、フィードブロックで分流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り、2種3層の未延伸フィルムを得た。次にフィルム温度83℃で3.7倍延伸した後、塗布液Xを縦延伸フィルムの両面に塗布し、テンターに導き95℃で横方向に4.0倍延伸して二軸配向フィルムを得えた。その後、熱固定して、表1に記載した厚み構成のフィルムを得たほかは実施例2と同じ条件とした。
【0047】
(比較例1)
ポリエステルaをベント付き2軸押出機(メイン)に供給し、ポリエステルaが60重量%とポリエステルcが40重量%の混合物をベント付き2軸押出機(サブ)に供給して表1に記載した厚み構成のフィルムを得たほかは実施例3と同じ条件とした。
【0048】
(比較例2)
塗布液Xを塗布しなかったほかは実施例3と同じ条件とした。
以上得られた結果をまとめて表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜3のフィルムは、透明性、干渉縞防止性や帯電防止性に優れる。特に実施例2と3は、傷付き防止性も良好である。一方、比較例1のフィルムは、平均粒子径の小さい不活性粒子を用いたため、5次以上の干渉縞を有する突起密度が小さく、干渉縞防止性を示さなかった。比較例2のフィルムは、帯電防止剤を含有する表層がなく、また帯電防止性に効果のある塗布液がフィルム表面に塗布されていないため、帯電防止性能が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフィルムは、例えば、光学用途で用いられるベースフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二光束干渉法で観察される5次以上の干渉縞を有する突起の密度が少なくとも片方の表面において0.7個/m以上であり、表面固有抵抗が5×1012Ω以下であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−76212(P2006−76212A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264461(P2004−264461)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】