説明

光学用積層フィルム

【課題】光拡散フィルムとして用いたときに優れた光拡散性を備え、しかも、使用環境での高い耐熱性を備える、光学用積層フィルムを提供する。
【解決手段】光拡散層およびそのうえに設けられた密着防止層からなる光学用積層フィルムであって、密着防止層はポリエステルおよびフィラーからなる二軸配向した層であり実質的にボイドを含有せずその表面粗さRzが400〜5000nmであり、光拡散層は密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルおよび光拡散成分からなり、該光拡散成分が表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有する平均粒径0.5〜30μmのフィラーであることを特徴とする光学用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光学部材のベースフィルムとして用いられる、光学用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、液晶表示装置の光学部材であるプリズムレンズシート等のベースフィルムとして用いられている。
近年、液晶表示装置の薄型化が進んでおり、液晶表示装置を構成する光学部材には薄膜化と枚数の削減が求められている。このなか、ベースフィルムとしてそれ自体が光拡散性を備えるポリエステルフィルムが提案されている。
【0003】
例えば特開2001−272508号公報や特開2001−272511号公報では、フィルムの内部に光拡散成分を含有させることで、ベースフィルム自体に光拡散性を付与している。また、特開2002−178472号公報では、フィルムの内部に球状または凸レンズ状の粒子を含有させることで、ベースフィルム自体に光拡散性を付与している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−272508号公報
【特許文献2】特開2001−272511号公報
【特許文献3】特開2002−178472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示装置の光学部材は、液晶表示装置に組み込んで用いられる。しかし、従来の技術によるベースフィルムでは、液晶表示装置の使用環境における熱や湿度によって光学部材の寸法が大きく変化し、光学部材が撓み、その結果光拡散フィルムとして用いたときに液晶表示装置に輝度斑を発生させることがある。
本発明は、光拡散フィルムとして用いたときに優れた光拡散性を備え、しかも、使用環境での高い耐熱性を備える、光学用積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、光拡散層およびそのうえに設けられた密着防止層からなる光学用積層フィルムであって、密着防止層はポリエステルおよびフィラーからなる二軸配向した層であり実質的にボイドを含有せずその表面粗さRzが400〜5000nmであり、光拡散層は密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルおよび光拡散成分からなり、該光拡散成分が表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有する平均粒径0.5〜30μmのフィラーであることを特徴とする、光学用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光拡散フィルムとして用いたときに優れた光拡散性を備え、しかも、使用環境での高い耐熱性を備える、光学用積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光学用積層フィルムは、光拡散層およびそのうえに設けられた密着防止層からなる。以下、密着防止層から説明する。
【0009】
[密着防止層]
密着防止層は、ポリエステルおよびフィラーからなる二軸配向した層である。二軸配向した層でないと熱収縮率が高くなり液晶表示装置のバックライトユニットの光源からの熱によってフィルムが変形したり、バックライトユニットの輝度斑が発生することがある。
【0010】
密着防止層は、実質的にボイドを含有しない。本発明において実質的にボイドを含有しないとは、ボイドを含有しないか、または密着防止層の全光線透過率を低下させない程度のボイドを含有することをいい、例えば、密着防止層をフィルム面に垂直に切断したときのボイドの断面積がフィラーの断面積の好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下であることをいう。密着防止層がボイドを含有すると、ボイド界面での光の反射が多くなり、フィルムの全光線透過率が低下して、輝度が劣ることになる。密着防止層がボイドを含有しないことは、フィルムの断面を走査型顕微鏡(SEM)または透過型顕微鏡(TEM)で500倍〜20000倍の倍率で観察することで確認することができる。
【0011】
密着防止層の表面粗さRzは、400〜5000nm、好ましくは1500〜4500nmである。Rzが400nm未満であると粗さが不足し、液晶表示装置への組み込み工程で他の部材と密着することがあり、密着防止の機能が不足する。他方、Rzが5000nmを超えるとフィルム表面が粗すぎて、フィルム全体の全光線透過率が低下する。この表面粗さRzは、例えば、密着防止層にフィラーを含有させることで得ることができる。
【0012】
密着防止層に用いるポリエステルは、芳香族飽和ポリエステルである。これは、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とからなるポリエステルである。このポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを例示することができる。これらは共重合ポリマーであってもよいが、ホモポリマーであることが好ましい。最も好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーである。
【0013】
密着防止性を得るために密着防止層はフィラーを含有する。密着防止層のフィラーとしては、無機物質からなるフィラーを用いる。無機物質からなるフィラーとしては、例えば、シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子を用いることができる。
【0014】
密着防止層がフィラーを含有する場合、フィラーの含有量は密着防止層の重量を基準として、好ましくは0.05〜10重量%である。この範囲で含有することにより他の部材との密着を防止できる表面粗さを備えるとともに、特に優れた光線透過性を得ることができる。
【0015】
フィラーを含有する場合、フィラーの平均粒径は、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜8μmである。この範囲の平均粒径であることによって、延伸時にフィラーの周辺でのボイドの発生を抑制しながら、光拡散層を支持する強度を得ることができる。
【0016】
本発明では、密着防止層のポリエステルとフィラーとの界面にボイドを形成させないことが好ましく、フィラーとして、表面を酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムで被覆されたフィラー、または塊状粒子を用いることが好ましい。表面を酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムで被覆されたフィラーを用いると、フィラーとポリエステルとの親和性が高く、フィルムの延伸時にフィラー界面におけるボイドの形成を抑制することができる。また、塊状粒子を用いると、フィルムの延伸時に延伸応力によって塊状粒子が崩壊し、界面での剥離が抑制されてボイドを含まない密着防止層を得ることができる。塊状粒子としては、例えば、塊状シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子を挙げることができ、塊状シリカ粒子が特に好ましい。
【0017】
[光拡散層]
光拡散層は、ポリエステルと光拡散成分とからなる。光拡散層のポリエステルとして、密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルを用いる。本発明においては、フィルムの延伸により発生した光拡散層のボイドを、フィルムを熱処理することで消滅させて、ボイドのない光拡散層を得る。融点差が5℃未満であるとフィルムの機械的強度を保ったまま光拡散層のポリエステルを再融解させることができず、延伸時に光拡散成分の周辺に発生するボイドをフィルムの熱処理によっても十分に消滅させることができず、融点差が50℃を超えると耐熱性が不足する。
【0018】
光拡散層に用いる融点の低いポリエステルとして、共重合ポリエステルを用いることができる。例えば、密着防止層のポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、光拡散層のポリエステルとして、共重合ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。共重合成分として、ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸を例示することができる。ジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ビスフェノールAの如き芳香族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0019】
例えば、密着防止層のポリエステルとして、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いる場合には、光拡散層のポリエステルとして、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましい。共重合成分として、ジカルボン酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸を例示することができる。ジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ビスフェノールAの如き芳香族ジオールを挙げることができる。これらは単独または二種以上を使用することができる。
【0020】
表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーは、表面部分の被覆層と中心部分の粒子とからなる。中心部分の粒子として、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、シリコーンの粒子を用いることができ、好ましくは硫酸バリウム、アルミナの粒子、特に好ましくは硫酸バリウムの粒子を用いる。
【0021】
フィラーに被覆層を設ける方法として、例えば、アルコキシドの加水分解法を用いることができる。
フィラーの被覆層の厚みは、好ましくは10〜100nmである。この範囲であることによって、均一な被覆層を設けることができるとともに、ポリエステルとの良好な親和性を得ることができる。
【0022】
本発明では、表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーを用いることにより、フィラー表面とポリエステルとの間で高い親和性を得ることができ、延伸時のボイドの発生量を低く抑えることができ、その結果、光拡散層を完全に溶解させなくてもボイド含有量の少ない積層フィルムを得ることができ、光拡散層のポリエステルの配向を残すことができるため耐熱性に優れる。
【0023】
他方、表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーを用いないと、フィルムの光線透過率を高くするために、光拡散層のポリエステルの配向が無くなる程度にまで熱処理を行い光拡散層のボイドを消滅させる必要がある。
【0024】
表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーの平均粒径は0.5〜30μm、好ましくは1〜20μmである。0.5μm未満であると光拡散性が不足し、30μmを超えると光拡散性は十分だが、全光線透過率が不足し輝度が劣り、フィルムの延伸時に大きなボイドが形成されやすく、熱処理工程でボイドを消滅させてボイドを実質的に含まないフィルムを得ることが困難になる。
【0025】
表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーの屈折率は、表面部分の成分の屈折率と中心部分の成分の屈折率を体積で加重平均することで算出することができる。このようにして算出される表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーの屈折率と光拡散層のポリエステルとの屈折率の差と該フィラーの平均粒径との積(屈折率差×平均粒径(μm))は0.1〜0.5[μm]であることが好ましい。この範囲であると特に良好な光拡散性を得ることができる。
【0026】
表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーとして特に好ましいものは、中心部分が硫酸バリウム粒子またはアルミナ粒子で構成され、表面部分が酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層からなるフィラーである。なお、フィラー全体の屈折率を適正な範囲に調節するために、中心部分の物質と被覆層の物質は異なることが好ましい。
【0027】
[層構成]
本発明の光学用積層フィルムは、光拡散層およびそのうえに設けられた密着防止層からなる。光拡散層と密着防止層との厚み比率は、光拡散層の厚み1に対して、密着防止層の厚みが好ましくは0.2〜5.0、さらに好ましくは0.2〜4.0である。この範囲の厚み比率であることによって、機械的強度を維持しながら、優れた光拡散性を得ることができる。本発明において好ましい構成は、光拡散層の両側に密着防止層を備える構成である。
【0028】
本発明の光学用積層フィルムの総厚みは、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは10〜400μmである。この範囲の総厚みであることによって、光拡散性と密着防止性を備えるとともに延伸性が良好であり、生産性のよい光学用積層フィルムを得ることができる。
【0029】
本発明の光学用積層フィルムの表面には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、プライマー層を塗設したり、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などを施してもよい。これらの処理は、フィルムの製造後に施しても、フィルム製造工程内で施してもよい。
【0030】
[製造方法]
本発明における、表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーは、市販の無機粒子を中心部分の粒子として用いて、公知の方法で製造することができる。例えば、AlやSiのアルコキシドを利用した加水分解法、湿式法、焼成法によって製造することができる。
【0031】
なお、本発明における表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有するフィラーは市販品を用いることもでき、例えば、Sachtleben Chemie GmbH製のHombright Sとして市販されているものを用いることができる。このHombright Sは、硫酸バリウム粒子と該硫酸バリウム粒子を被覆する酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素からなる被覆層とからなるフィラーである。
【0032】
以下、融点をTm、ガラス転移温度をTgと表記する。また、「Tg(密着防止層)」は密着防止層のポリエステルのTg、「Tg(光拡散層)」は光拡散層のポリエステルのTg、「Tm(密着防止層)」は密着防止層のポリエステルのTm、「Tm(光拡散層)」は光拡散層のポリエステルのTmを意味する。
【0033】
密着防止層や光拡散層へのフィラーの添加は、ポリエステルの重合段階で行ってもよく、ポリエステルを重合した後で溶融混練する際に添加してもよい。
例えば、フィラーを粉体の状態で供給する場合、原料であるポリエステル用の押出機と当該押出機に定量的に粉体供給できる供給装置を兼ね備える溶融混錬押出機を用意し、これにポリエステルとフィラーとを供給して溶融混錬し、押出し冷却すればよい。
押出機は、均一な混錬が可能で粒子の分散に効果的な二軸タイプが好ましく、例えばニーディングディスクおよび逆ねじの混錬用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式二軸混錬押出機を用いることができる。
【0034】
本発明において、光拡散層と密着防止層は、共押出法により積層される。本発明の光学用積層フィルムは、例えば以下のようにして製造することができる。
すなわち、光拡散層を構成するポリエステル組成物と、密着防止層を構成するポリエステル組成物とを、両方のポリエステルが溶融した状態で、例えばTm〜(Tm+70)℃の温度で、両者が接するようにダイから押出して未延伸積層フィルムとする。未延伸積層フィルムを、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg(密着防止層)−10)〜(Tg(密着防止層)+70)℃の温度で、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜4.0倍で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg(密着防止層)〜(Tg(密着防止層)+70)℃の温度で、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜4.0倍で延伸する。延伸により得られた二軸配向フィルムを、光拡散層のポリエステルが非晶性である場合には、(Tg(密着防止層)+70)℃〜(Tm(密着防止層)−5)℃の温度範囲で、光拡散層のポリエステルが結晶性である場合には、(Tm(光拡散層)+5)℃〜(Tm(密着防止層)−5)℃の温度範囲で熱固定する。この熱固定工程によって、寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
逐次二軸延伸法にかえて、同時二軸延伸法で延伸してもよい。同時二軸延伸法で延伸すると、延伸が二軸方向に同時に行われるためボイドが発生しにくく好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、物性は以下の方法で測定、評価した。
【0036】
(1)平均粒径
フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解して粒子を分離し、得られた粒子を測定に用いた。平均粒径の測定は島津製作所製「CP−50型Centrifugal Particle Size Analyzer」を用いて行った。この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とした(参照「粒度測定技術」、242〜247頁、日刊工業新聞社、1975年発行)
【0037】
(2)光拡散層のポリエステルの屈折率
溶融押出しする前のポリエステルを板状に成型して、アッベ屈折率計(D線589nm)で測定した。
【0038】
(3)光拡散成分(粒子)の屈折率
光拡散成分の粒子を、屈折率の異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計(D線589nm)によって測定した。
【0039】
(4)ボイド
フィルムを厚み方向にミクロトームで切断し、切断面を(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて観察し、フィラーの断面積に対するボイド断面積の割合を計算した。少なくとも10点について、フィラーの断面積に対するボイド断面積の割合を算出して、その平均により下記の評価基準でボイドを評価した。
○: ボイド断面積が30%以下
△: ボイド断面積が30%超、50%以下
×: ボイド断面積が50%超
【0040】
(5)融点・ガラス転移温度
各層をそれぞれ分離して得たサンプル10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、融点を測定し、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度、示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移温度を測定した。
【0041】
(6)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0042】
(7)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0043】
(8)表面粗さ
小坂研究所社製の表面粗さ測定器SE−3FATを用い、JIS B0601の測定法により、フィルム表面の十点平均粗さRzを求めた。
【0044】
(9)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率を測定した。
【0045】
(10)ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。
【0046】
(11)光拡散性
DIN5036に準じ、(株)村上色彩技術研究所製 自動変角計GP−200を使用し、受光角度5度、20度および70度での輝度値を測定し、下記式より光拡散率を算出して、光拡散性の評価とした。
光拡散率(%)
=(20度での輝度値+70度での輝度値)×100/(5度での輝度値×2)
【0047】
(12)使用環境での耐熱性
液晶表示装置の部材としての使用環境で生じる輝度斑を評価した。ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、大塚電子(株)製輝度計MC−940で、中心点左右にある蛍光管上(a)と、さらに隣接する蛍光管の間の上(b)をそれぞれ3箇所ずつについて輝度(cd/m)を測定した。輝度相対値を下記式で算出して、輝度斑の評価とした。なお、蛍光管同士の間隔が23mmであった。
輝度相対値=輝度(a)/輝度(b)
○: 相対輝度値が1.1以下
△: 相対輝度値が1.1を超え1.2以下
×: 相対輝度値が1.2を超え1.3以下
【0048】
(13)密着防止性
ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、輝点の発生度合に着目して密着度合を観察して、密着防止性の評価とした。
○: どの角度から観察しても、輝点がまったく発生しない。
△: フィルムを斜めから観察して、輝点が一箇所以上発生する。
×: フィルムを正面から観察して、輝点が一箇所以上発生する。
【0049】
(14)被覆層の厚み
樹脂に包埋したサンプルの粒子をミクロトームで切断し、切断面を(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて10000倍で観察して被覆層の厚みを任意に5箇所測り、平均値を算出して被覆層の厚みとした。
【0050】
(15)被覆層を有するフィラーの製造方法
球状の硫酸バリウム粒子として、下記の製品を用意した。
・堺化学社製 B−30(平均粒径1.0μm)
・竹原化学工業社製 W1(平均粒径1.5μm)
・竹原化学工業社製 W6(平均粒径5μm)
・竹原化学工業社製 W10(平均粒径10μm)
・堺化学社製 B−30(平均粒径30μm)
球状のアルミナ粒子として、球状の下記の製品を用意した。
・住友化学工業社製 スミコランダム(平均粒径1.5μm)
・住友化学工業社製 スミコランダム(平均粒径10μm)
【0051】
(15−1)酸化アルミニウムの被覆層を有する粒子の製造方法
球状の硫酸バリウム粒子100gをイソプロピルアルコール2000ml中で攪拌・分散させながら、 トリイソプロポキシアルミニウム50gを添加した。室温下攪拌を続けながら、イソプロピルアルコール/水の混合液1000mlを徐々に滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌・反応を行い、トリイソプロポキシアルミニウムの加水分解反応を完遂させた。純水中で十分に洗浄を行った後、150℃下一昼夜乾燥を行い、酸化アルミニウムの被覆層を有する粒子を得た。得られた粒子の被覆層厚みは20nmであった。
【0052】
(15−2)酸化ケイ素の被覆層を有する粒子の製造方法
球状の硫酸バリウム粒子またはアルミナ粒子の100gをイソプロピルアルコール2000ml中で攪拌・分散させながら、テトライソプロポキシシラン50gを添加した。室温下攪拌を続けながら、イソプロピルアルコール/水の混合液1000mlを徐々に滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌・反応を行い、テトライソプロポキシシランの加水分解反応を完遂させた。純水中で十分に洗浄を行った後、150℃下一昼夜乾燥を行い、酸化ケイ素の被覆層を有する粒子を得た。得られた粒子の被覆層厚みは20nmであった。
【0053】
(15−3)市販品
被覆層を有するフィラーとして、以下のものを用意した。
・Hombright S(Sachtleben Chemie GmbH製)
これは、硫酸バリウム粒子と該硫酸バリウム粒子を被覆する酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素からなる被覆層とからなり、フィラーとしての平均粒径が1.0μm、粒度分布が標準偏差0.5以下、被覆層の厚みが15nmである。
【0054】
[実施例1]
層構成は、密着防止層/光拡散層/密着防止層とした。
密着防止層の組成物として、上記(15−3)の平均粒径1.0μmの表面被覆硫酸バリウムフィラーを、密着防止層の合計重量を基準に4重量%となるように、ポリエチレンテレフタレートに配合し溶融し、光拡散層の組成物として、上記(15−2)の平均粒径10μmの表面被覆硫酸バリウムフィラーをイソフタル酸12モル%が共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートに、光拡散層の合計重量を基準に1.5重量%になるように配合して溶融し、これらを共押出法によって、ダイから押し出してキャスティングドラム上で急冷し、シートを得た。その後75℃で余熱し、延伸温度110℃で縦方向に3.3倍に延伸した。その後、110℃で余熱し、延伸温度130℃にて横方向に3.6倍に延伸した。その後、結晶化ゾーンにて235℃にて熱処理した。なお、熱処理する際に、縦方向1.5%および横方向2.0%に弛緩を入れて、熱収縮率を調整した。評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
密着防止層および光拡散層について、ポリエステル、フィラーの種類とその添加量、光拡散成分の種類とその平均粒子径および添加量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様に製膜して光学用積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
層の構成を2層にし、成分を表1記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1]
密着防止層を設けない他は実施例1同様に製膜してフィルムを得た。密着防止層がないため、光拡散層のボイドを消滅させるのに十分な熱処理(温度235℃での熱処理)をするとフィルムが破断するため安定した製膜ができず、やむを得ず熱処理温度を220℃に下げてフィルムを得た。熱処理が不十分であり、光拡散層にボイドが多く存在し、全光線透過率が劣るフィルムとなった。評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例2]
密着防止層にフィラーを添加しない他は実施例1同様に製膜してフィルムを得た。密着防止層にフィラーを添加しなかったために表面が平坦すぎ、バックライトユニットに組み込んだ際、他の光学部材と密着した。不均一に密着したため、輝度斑が目立った。評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例3]
密着防止層、拡散層に硫酸バリウムフィラーを添加し、実施例1同様に製膜してフィルムを得た。表面をシリカ/アルミナ被覆していない硫酸バリウムを使用したため、光拡散層ポリマーとの親和性が不足していて硫酸バリウムフィラー周辺でボイドが発生し、全光線透過率、拡散度が劣り不適合であった。
【0060】
[比較例4]
密着防止層、拡散層に表面被覆硫酸バリウムフィラーを添加し、実施例1同様に製膜してフィルムを得た。密着防止層中の真球状フィラー周辺にボイドが多数発生し、さらに拡散層の拡散度も不足し全光線透過率も劣っていたため不適合であった。
【0061】
[比較例5]
拡散層に表面被覆していない硫酸バリウムフィラーを添加し、実施例1同様に製膜してフィルムを得た。拡散層中の硫酸バリウムフィラー周辺にボイドが多数発生し、光学特性が劣り不適合であった。
【0062】
【表1】

【0063】
表中、「PET」はポリエチレンテレフタレートを、「IA12PET」はイソフタル酸を12モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを、「IA18PET」はイソフタル酸を18モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の光学用積層フィルムは、液晶表示装置の光学部材のベースフィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散層およびそのうえに設けられた密着防止層からなる光学用積層フィルムであって、密着防止層はポリエステルおよびフィラーからなる二軸配向した層であり実質的にボイドを含有せずその表面粗さRzが400〜5000nmであり、光拡散層は密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルおよび光拡散成分からなり、該光拡散成分が表面に酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層を有する平均粒径0.5〜30μmのフィラーであることを特徴とする、光学用積層フィルム。
【請求項2】
光拡散成分が、硫酸バリウム粒子およびその表面を被覆する酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層からなる粒子であるか、アルミナ粒子およびその表面を被覆する酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの被覆層からなる粒子である、請求項1記載の光学用積層フィルム。

【公開番号】特開2010−117558(P2010−117558A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290795(P2008−290795)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】