説明

光学的に純粋なジヒドロピリミジン化合物類、及びウイルス性疾患の治療及び予防のための医薬調製のためのこれらの使用

【解決手段】本発明は、式(I):


で表わされる光学的に純粋な化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくは水和物、式(I)で表わされる光学的に純粋な化合物の調製プロセス、及び式(I)で表わされる光学的に純粋な化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくは水和物の医薬、特にB型肝炎の治療及び予防のための医薬としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で表わされる光学的に純粋なジヒドロピリミジン化合物、その調製プロセス、該化合物を含む医薬組成物、更に該化合物又は薬学的に許容されるその塩又は水和物の医薬、特にB型肝炎の治療及び予防のための医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる重大な感染症であり、世界中で流行しており、肝硬変及び肝臓ガン発症に密接に関連している。中国はB型肝炎のリスクが高い地域である。1992年〜1995年にかけての中国におけるウイルス性肝炎の血清・疫学的調査の結果によれば、中国の人口の9.7%がB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)のキャリアーであり、約1.3×108人がHBVキャリアーであると見積もられている。中国におけるウイルス性肝炎の疫学的状況の調査によれば、HBの年間罹患率は、1990年の10万人当たり21.9人から2003年には10万人当たり53.3人へと増加し、明らかな増加傾向がうかがえる(非特許文献1)。慢性B型肝炎はヒトの健康に重大な影響を与えるのみならず、家族や社会へ多大な経済的負担を強いることとなり、中国においては公衆衛生上の一重大問題となっている。
【0003】
慢性B型肝炎の治療に有用な薬剤には、主に免疫調整剤とヌクレオチドDNAポリメラーゼ阻害剤(非特許文献2)の二種が挙げられる。前者にはインターフェロン−α2b(IFN−α2b、Intron A(登録商標))及びPEG化インターフェロン−α2a(peg−IFN−α2a、Pegasys(登録商標))が含まれ、後者にはラミブジン(Epivir−HBV(登録商標))、アデフォヴィールジピヴォキシル(Hepsera(登録商標))及びエンテカヴィール(Baraclude(登録商標))が含まれる。比較的に見た場合、B型肝炎治療の臨床応用に使用可能な薬剤は未だ種類量共に少ない。従って、新たな安全且つ効果的な抗ウイルス薬、特に全く新しい作用機序を有する薬剤を継続的に開発することは非常に重要である。
【0004】
ドゥレス(Deres)らは、Bay41−4109及びBay39−5493で表わされる芳香族複素環置換ジヒドロピリミジン(HAP)化合物類が、正常ヌクレオカプシドの生成を妨げることによりHBVの複製を抑制する効果を有する可能性があることを報告している。この種の化合物のコアタンパク質への結合は構造特異的である(非特許文献3)。該HAP化合物類の作用機序の研究によって、HAPはコアタンパク質の113〜143アミノ酸残基に作用することによりヌクレオカプシドを形成するダイマー間の角度を変化させ、これによって不安定な膨潤ヌクレオカプシドが形成され、コアタンパク質の分解が加速されることが示された(非特許文献4)。特許文献1及び2は、2−ピリジル基置換ジヒドロピリミジン化合物及び2−チアゾリル基置換ジヒドロピリミジン化合物をそれぞれ開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wang Xiaojun, Zhang Rongzhen, Hu Yuansheng, et al, Surveillance of Diseases, 2004, 19(8): 290-292
【非特許文献2】Loomba R., Liang T. J., Antivir. Ther. ,2006, 11(1):1-15
【非特許文献3】Deres K., Schroder C. H., Paessens A., et al. Science,2003, 299 (5608) :893-896
【非特許文献4】Hacker H. J., Deres K., Mildenberger M., et al.,Biochem. Pharmacol. 2003, 66(12): 2273-2279
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO99/54326パンフレット
【特許文献2】WO99/54329パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の内容
本発明は、光学的に純粋な式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
1は、水素、(C1〜C4)−アルキル、(C2〜C4)−アルケニル、(C1〜C6)−アシル、アリールアシル又はアリールスルホニルを表し;
2は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、ベンジル、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、(C1〜C6)−アルキルチオ、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル、(C1〜C6)−アシルオキシ、アミノ、(C1〜C6)−アルキルアミノ、(C1〜C6)−ジアルキルアミノ又は(C1〜C6)−アシルアミノから選択される同一又は異なる1以上の置換基で5回まで置換されていてもよい、フェニル、チアゾリル又はイミダゾリルを表し;
3は、フェニル、フリル、チエニル、トリアゾリル、ピリジル又は3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル
〔これら環系は、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アルコキシ、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル及び(C1〜C6)−アルキル
{該アルキルは、6〜10個の炭素原子を有するアリール、ハロゲン又は式−S−R5、NR67、CO−NR89若しくは−A−CH2−R10
(式中、
5はハロゲンで置換されていてもよいフェニルを表し、
6、R7、R8及びR9は同一又は異なって、それぞれ、水素、フェニル、ヒドロキシル置換フェニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アシル又は(C1〜C6)−アルキル(該アルキルは、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル、フェニル又はヒドロキシル置換フェニルで置換されていてもよい)を表し、
AはO、S、SO又はSO2を表し、
10はハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、(C1〜C6)−アルキル及び(C1〜C6)−アルコキシから選択される同一又は異なる1以上の置換基で一置換又は多置換されていてもよいフェニルを表す。)
で表される基で置換されていてもよい。}
から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に一置換又は多置換されていてもよい〕
を表し;
4は、式−OR11又は
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、
11は、水素、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C8)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、O、CO、NH、−NH(C1〜C4)−アルキル、−N((C1〜C4)−アルキル)2、S及びSO2からなる群から選択される1又は2個の同一又は異なるヘテロ鎖単位を含んでいてもよく、且つハロゲン、ニトロ、シアノ、アルコキシ、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アラルキル、ヘテロアリール又は式−NR1516
(式中、R15及びR16は同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又は(C1〜C6)−アルキルを表す)
で表される基で置換されていてもよい。}
を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C16アルコキシカルボニル、アリール、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C8)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C16アルコキシ、C16アルコキシカルボニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アリールC16アルキル、ヘテロアリールで置換されていてもよい。}
から選択される置換基を表す。〕
で表される基を表す。]
で表わされるジヒドロピリミジン化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において(C2〜C6)−アルケニルとは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルケニル、好ましくは3〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルケニルを指し、ビニル、プロペニル、n−ペンテニル、n−ヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書において(C1〜C6)−アシルとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアシル、好ましくは2〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアシルを指し、ホルミル、アセチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書においてアリールとは、通常、5〜14員環の置換若しくは非置換のアリール環系又は縮合二環若しくは三環を含むアリール環系を指し、フェニル及びナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において(C1〜C6)−アルキルとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の基を指し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において(C1〜C6)−アルコキシとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルコキシ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルコキシを指し、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において(C1〜C6)−アルキルチオとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキルチオ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキルチオを指す。
【0018】
本明細書において(C1〜C6)−アルコキシカルボニルとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルコキシカルボニルを指し、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書においてキラルな第1級アミンとは、少なくとも1個のキラル中心を含むR配置又はS配置にある第1級アミンを指し、(R)又は(S)−1−フェニルエチルアミン、(R)又は(S)−1−フェニルプロピルアミン、(R)又は(S)−1−(2−ナフチル)エチルアミン、天然又は非天然のD型又はL型アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の化合物は、立体異性体として存在していてもよい。
【0021】
本発明の化合物は、式(I)の化合物、その異性体であるIa及びその混合物を包含する。R1が水素である場合、異性体I及びIaは、互変異性平衡で存在してもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
本発明の化合物は、塩の形態であってもよい。好ましい薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、臭化水素酸、硝酸等の種々の無機酸と共に形成された塩及びマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、パルミチン酸等の種々の有機酸と共に形成された塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
薬学的に許容される塩としては更に、本発明の化合物のナトリウム塩やカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、及びアンモニア又はエチルアミンや、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、アルギニン、リジン、エチレンジアミン、2−フェニルエチルアミン等の有機アミンと共に形成されたアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の化合物の中には、水又は種々の有機溶媒を用いて結晶化又は再結晶化させることができるものもあり、その場合、種々の溶媒和物が形成され得る。本発明には、これらの化学量論的な溶媒和物及び水和物、更に凍結乾燥を用いて調製した際に生成する不定量の水を含む化合物も包含される。
【0026】
次に定義する式(I)の化合物及びこれらの塩又は水和物が好ましい。
式(I)において、
【0027】
1は、水素、メチル、ホルミル、アセチル、アリールアシル、アリールスルホニルを表し;
【0028】
2は、ハロゲンで5回まで置換されたフェニル、又はフルオロ、クロロ、ブロモ、ベンジル、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルコキシ、アミノ、(C1〜C4)−アシルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で3回まで置換されたチアゾリル、イミダゾリルを表し;
【0029】
3は、フェニル、フリル、チエニル、ピリジル、シクロペンチル又はシクロヘキシル(これら環系は、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシル、メトキシカルボニル及び式−CONHCH2C(CH33、−CONH(CH22OH、−CONHCH265、−CONHC65、−OCH265又は−S−pCl−C64で表される基から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に一置換又は多置換されていてもよい。)
を表し;
【0030】
4は、式−OR11又は
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、
11は、水素、(C1〜C4)−アルケニル又は(C1〜C4)−アルキル
{該基は、ハロゲン、ピリジル、シアノ、フェノキシ、アルコキシ、トリフルオロエチル、ベンジル又は式−NR1516(式中、R15及びR16は、同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又は(C1〜C4)−アルキルを表す)で表される基で任意的に置換されていてもよい}
を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、フルオロ、クロロ、ニトロ、シアノ、アルコキシカルボニル、アリール、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C6)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールで任意的に置換されていてもよい。}
から選択される置換基を表す。)
で表される基を表す。
【0033】
次に定義する式(I)の化合物及びこれらの塩又は水和物が特に好ましい。
式(I)において、
【0034】
1は、水素、メチル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニルを表し;
【0035】
2は、フルオロで5回まで置換されたフェニル、又はフルオロ、クロロ、ブロモ、ベンジル、(C1〜C3)−アルキル、(C1〜C3)−アルコキシ、アミノ、(C1〜C3)−アシルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で2回まで置換されたチアゾリル若しくはイミダゾリルを表し;
【0036】
3は、フェニル、フリル、チエニル、ピリジル、シクロペンチル又はシクロヘキシル
〔これら環系はフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、メトキシカルボニル及び式−CONHCH2C(CH33、−CONH(CH22OH、−CONHCH265、−CONHC65、−OCH265又は−S−pCl−C64で表される基から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に3回まで置換されていてもよい。〕
を表し;
【0037】
4は、式−OR11又は
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、
11は、水素、(C1〜C3)−アルケニル又は(C1〜C4)−アルキル{該基は、ハロゲン、ピリジル、シアノ、フェノキシ、アルコキシ、トリフルオロエチル、ベンジル又は式−NR1516(式中、R15及びR16は同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又はメチルを表す)で表される基で任意的に置換されていてもよい}を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、アルコキシカルボニル、置換又は非置換のフェニル、ナフチル、ベンジル、直鎖又は分岐の(C1〜C3)−ヒドロカルビルから選択される置換基を表す。)
で表される基を表す。
【0040】
次に定義する式(I)の化合物及びこれらの塩又は水和物がその中でも特に好ましい:
式(I)中、
【0041】
1は、水素又はアセチルを表し;
【0042】
2は、フルオロで3回まで置換されたフェニル、又はフルオロ、クロロ、メチル、ベンジル、アミノ、アセチルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で2回まで置換された、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル若しくは2−イミダゾリルを表し;
【0043】
3は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、ニトロ、メトキシ又はメチルから選択される同一又は異なる1以上の置換基で3回まで置換されたフェニルを表し;
【0044】
4は、式−OR11又は
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、
11は、フッ素若しくは塩素原子で置換されていてもよい、3個までの炭素原子を有する線状又は分岐のアルキルを表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル又はフェニルから選択される置換基を表す)
で表される基を表す。
【0047】
式(I)の特に好ましい化合物は、次の化合物である:
1) (R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド、
2) エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
3) トリフルオロエチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
4) (R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド、
5) エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
6) (S,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド及び
7) エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【0048】
本発明において、式(I)の化合物は、次の方法により調製してもよい:
1)塩基若しくは酸の存在下若しくは非存在下、適切な不活性溶媒中、式(II):
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、R2は上と同義である)のアミジン又はその塩を、式(III):
【0051】
【化8】

【0052】
(式中、R3は上と同義である)のアルデヒド及び式(IV):
【0053】
【化9】

【0054】
(式中、R12、R13、R14は上と同義である)の化合物と反応させることによって式(V):
【0055】
【化10】

【0056】
の化合物を得るか、或いは
塩基若しくは酸の存在下若しくは非存在下、適切な不活性溶媒中、20〜150℃の温度で、式(VI)又は(VII):
【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R3、R12、R13、R14は上と同義である)の化合物を式(II)の化合物と反応させるか、或いは
アンモニウム塩の存在下、式(III)のアルデヒドを式(IV)の化合物及び式(VIII):
【0059】
【化12】

【0060】
(式中、R2は上と同義であり、R’はC1〜C4アルキルである)のイミノエーテルと反応させ、
2)適切な溶媒中、式(V)の化合物をアシル化することによって式(IX):
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、R1は(C1〜C6)−アシル、アリールアシル又はアリールスルホニルであり、R2、R3、R12、R13、R14は上と同義である)の化合物を得、
3)酸性又は塩基性条件下、適切な溶媒中、式(IX)の化合物をニトロシル化した後、ナトリウムアルコキシドR11ONaと反応させることによって式(I):
【0063】
【化14】

【0064】
(式中、R1は水素であり、R2、R3、R4、R11は上と同義である)の化合物を得る。
【0065】
本発明の方法を次の反応スキームを用いて例示する。
【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
1.反応スキームA、B及びCのいずれに関しても、反応段階1)における適切な溶媒は不活性有機溶媒のいずれかである。この溶媒としては、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジオキサン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、更には氷酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ピリジン及びヘキサメチルホスファミドが挙げられる。
【0069】
反応温度は比較的広い範囲内で変化させてもよい。通常、反応は20〜150℃の温度で実施されるが、好ましくは溶媒の沸点で実施される。
【0070】
反応は常圧下又は高圧下で実施することができる。通常、反応は、常圧下で実施される。
【0071】
反応は塩基又は酸の存在下又は非存在下で実施してもよいが、本発明においては、酢酸、ギ酸等の比較的弱い酸の存在下で実施することが好ましい。
【0072】
出発物質である式(II)のアミジンには知られているが化合物もあるが、対応するシアノ化合物から文献記載の知られている方法に従い調製することもできる(ダイアナ、G.D.(Diana, G. D.)、ヤリンスキー、A(Yarinsky, A.)、ザレイ、E.S.(Zalay, E. S.)ら、J.Med.Chem.、1969、12(9):791〜793;ガリジパチ、R.S.(Garigipati, R. S.)、Tetrahedron.Lett.、1990、31(14):1969〜1972;ボーア、R.J.(Boere, R. J.)、オークレー、R.T.(Oakley, R. T.)、リード、R.V.(Read, R. V.)、J.Organometal.Chem.、1987、331:161〜167;ジャドキンス、B.D.(Judkins, B. D.)、アレン、D.G.(Allen, D. G.)、クック、T.A.(Cook, T. A.)、Synth.Commun.、1996、26(23):4351〜4367;トマージ、R.A.(Tommasi, R. A.)、マッキア、W.M.(Macchia, W. M.)、パーカー、D.T.(Parker, D. T.)、Tetrahedron.Lett.、1998、39:5947〜5950参照)。
【0073】
出発物質である式(III)のアルデヒドは知られているが、文献記載の知られている方法に従い調製することもできる(T.D.ハリス(T. D. Harris)及びG.P.ロス(G. P. Roth)、J.Org.Chem.1979,44,146;DE2165260号、1972年7月;DE2401665号、1974年7月;ミジャノ(Mijano)ら、CA1963,59,13929c;E.アドラー(E. Adler)、H.D.ベッカー(H. D. Bccker)、Chem.Scand.1961,15,849;E.P.パパドポウロス(E. P. Papadopoulos)、M.マーディン(M. Mardin)、Ch.イシドリディス(Ch. Issidoridis)、J.Org.Chem.Soc.1956,78,2543参照)。
【0074】
出発物質である式(IV)CH3COCH2CONHR12の化合物は、塩基の存在下又は非存在下、不活性溶媒中、分子内にキラル中心を有する第1級アミンR12NH2をジケテン若しくはジケテンアセトン付加体と反応させることにより調製される。通常、反応は、50〜150℃、好ましくは80〜100℃で実施される。
【0075】
出発物質である式(VI)の化合物又は式(VII)の化合物は、文献記載の知られている方法に従い、不活性溶媒中、酸若しくは塩基の添加又は非添加条件下で、式(IV)CH3COCH2CONHR12の化合物を式(III)のアルデヒドと反応させることによって調製することができる(G.ジョーンズ(G. Jones)、「クネーフェナーゲル縮合」、Organic Reaction、第XV巻、p.204〜(1967)参照)。
【0076】
出発物質である式(VIII)のイミノエーテルは知られているが、文献記載の知られている方法に従い調製することもできる(S.A.グルックマン(S. A. Glckman)、A.C.コープ(A. C. Cope)、J.Am.Chem.Soc.1945,67,1017参照)。
【0077】
2.反応段階2)におけるアシル化に適切な溶媒は非プロトン性有機溶媒のいずれかである。好ましい溶媒としては、ジオキサンやエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、及びジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ピリジン、ヘキサメチルホスファミドが挙げられる。
【0078】
反応温度は比較的広い範囲内で変化させてもよい。通常、反応は−20〜100℃の温度で実施されるが、好ましくは室温で実施される。
【0079】
反応は、通常、塩基性条件下で実施される。適切な塩基はとしては、炭酸カリウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム等の無機塩基、及びトリエチルアミンやピリジン、ヘキサヒドロピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、モルホリン等の有機塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
3.段階3)におけるニトロシル化生成物は、通常、酸性条件下、例えば、酢酸、塩酸若しくは硫酸の存在下で亜硝酸ナトリウムと反応させることによるか、又は塩基性条件下、例えば、酢酸ナトリウム、ピリジン、ヘキサヒドロピリジン若しくはN,N−ジメチルアミノピリジンの存在下でNO2BF4若しくはNOBF4と反応させることによって調製される。
【0081】
ニトロシル化反応に適切な溶媒は任意の不活性有機溶媒である。好ましい溶媒としては、ジオキサン、エチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタン、ニトロメタン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、氷酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン及びヘキサメチルホスファミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
反応は通常、不活性ガスの保護下に、−50〜50℃、好ましくは0℃の温度で実施される。
【0083】
通常はニトロシル化生成物は精製せず、そのままナトリウムアルコキシドR11ONaと反応させることによって生成物を得る。ナトリウムアルコキシドは、対応するアルコールを金属ナトリウムと反応させることによって調製することができる。
【0084】
式(I)の化合物の調製に関する更なる詳細な情報については実施例を参照されたい。
【0085】
本発明の化合物の抗ウイルス効果を、セルズ(Sells)ら(M.A.セルズ(M. A. Sells)、M.L.チェン(M. L. Chen)、G.Proc.Natl.Acad.Sci.1987,84,1005〜1009)及びコルバら(B.E.コルバ(B. E. Korba)、J.L.ゲリン(J. L. Gerin)、AntiviralResearch、1992、19、55〜70)により記載された方法に従い測定した。
【0086】
96穴マイクロタイタープレートを用いて抗ウイルス試験を実施した。プレートの1段目は対照用として増殖培地及びHepG2.2.15細胞のみを含むものとした。
【0087】
まず最初に、試験化合物の原液(50mmol)をDMSOに溶解させ、更にHepG2.2.15細胞用増殖培地で希釈した。通常の方法にて、マイクロタイタープレートの2段目の各穴に、本発明の化合物を試験濃度100μg/mL(第1試験濃度)になるように吸引して移し、次いで、2%ウシ胎児血清(25μL)添加増殖培地で1回につき2倍、最大210倍まで希釈した。
【0088】
次いで、HepG2.2.15細胞の2%ウシ胎児血清添加増殖培地中懸濁液(5×104cells/mL)225μLを96穴マイクロタイタープレートの各穴に添加した。
【0089】
試験混合物を、37℃、5%CO2の条件下で4日間培養した。次いで、上清を吸引除去し、新たに調製した培地225μLを各穴に添加した。本発明の化合物を再び25μLの溶液として添加した。得られた混合物を更に4日間培養した。
【0090】
抗ウイルス効果の測定のために上清を回収する前に、光学顕微鏡法又は生化学的検査法(例えばアラマー・ブルー(Alamar Blue)染色又はトリパン・ブルー(Trypan Blue)染色)を用いてHepG2.2.15細胞の細胞毒性の変化を調査した。
【0091】
その後、上清を回収し、ナイロン膜で覆った96穴ドットブロット装置に減圧吸引した(製造業者より提供された使用説明書に従い使用)。
【0092】
細胞毒性の測定
HepG2.2.15細胞内における細胞毒性の物質誘発性の変化又は細胞抑制の変化は、例えば光学顕微鏡法を用いて測定することが可能であり、これは細胞の形態変化に表れた。HepG2.2.15細胞におけるこのような物質誘発性の変化、例えば、細胞融解、空胞の形成又は細胞形態の変化は、未処理の細胞と比較すると明らかであった。観察された細胞の病理学的変化を指標とすると、8日後の顕微鏡観察において細胞の病理学的変化が認められた。完全な破壊を4で表し、75%を3で表し、50%を2で表し、25%を1で表し、病理学的変化が認められないものを0で表した。細胞の病理学的変化の程度の平均値及び各種濃度における抑制率を算出した。リード及びメンチ(Reed & Muench)の方法に従い、50%毒性濃度(TC50)及び最大無毒性濃度(TC0)を算出した。
【0093】
TC50とは、細胞の50%が、対応する対照細胞と類似の形態にある場合の本発明の化合物の濃度を指す。
【0094】
抗ウイルス活性の測定
上清をドットブロット装置(上述)のナイロン膜に移した後、HepG2.2.15細胞の上清を変性(1.5M NaCl/0.5M NaOH)、中和(3M NaCl/0.5M Tris−HCl、pH7.5)及び洗浄(2×SSC)した。次いで、濾過膜を120℃で2〜4時間維持することによってDNAを濾過膜上にベーキングした。
【0095】
DNAハイブリダイゼーション
通常の方法にて、ナイロン濾過膜上で処理したHepG2.2.15細胞のウイルスDNAは非放射性のジゴキシゲニン標識B型肝炎特異的DNAプローブを用いて検出した。その際は、製造業者より提供された使用説明書に従い、その都度ジゴキシゲニンによるプローブの標識、精製及びハイブリダイゼーションを行った。
【0096】
具体的には、5×SSC、1×ブロッキング剤、0.1%N−ラウロイルサルコシン、0.02%SDS及びマゴイ精子DNA100μgを用いてプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行った。60℃で30分間プレハイブリダイゼーションを行った後、ジゴキシゲニン標識した変性HBV特異的DNA20〜40ng/mLを用いて特異的ハイブリダイゼーション(60℃、14時間)を行った。次いで、濾過膜を洗浄した後、ジゴキシゲニン抗体でHBV DNAを検出した。
【0097】
製造業者より提供された使用説明書に従い、ジゴキシゲニン標識DNAの免疫学的検出を行った。
【0098】
具体的には、膜を洗浄し、ブロッキング剤を用いてプレハイブリダイゼーションを行い(製造業者より提供された使用説明書に従う)、次いで、予めアルカリホスファターゼに結合させた抗DIG抗体を30分間ハイブリダイズさせた。洗浄後、アルカリホスファターゼ基質であるCSPDを添加し、濾過膜と一緒に5分間培養し、次いでこれをプラスチックフィルムで覆った後、更に37℃で15分間培養した。濾過膜にX線を照射し、膜上のB型肝炎特異的DNAの化学発光シグナル(シグナル強度に応じて10分間〜2時間培養)を検出し、それによって50%阻止濃度(IC50)を算出した。
【0099】
50%阻止濃度(IC50)とは、本発明の化合物が未処理の試料と比較したときにB型肝炎に特異的なバンドを50%低減させる濃度を指す。
【0100】
本発明の化合物は、比較的高い抗ウイルス効果を示す。予期せぬことに、この種の化合物はB型肝炎ウイルス(HBV)に対する抗ウイルス活性を示し、従ってウイルスに起因する種々の疾患、特にHBVウイルス感染に起因する急性疾患及び永続的慢性疾患の治療への使用に適している。HBVに起因する慢性ウイルス性疾患は、重症度の異なる種々の症候群を引き起こす可能性がある。知られているように、慢性HBV感染は、肝硬変及び(又は)肝細胞癌に繋がる場合がある。
【0101】
本発明の化合物によって治療することができる適応症の例としては、感染性肝炎を引き起こす可能性があるB型肝炎ウイルス感染症等の急性及び慢性ウイルス感染症が挙げられ、特に好ましくは慢性B型肝炎ウイルス感染症及び急性B型肝炎肝炎ウイルス感染症である。
【0102】
本発明の化合物を含む医薬組成物は次の経路:経口、スプレーによる吸入、経腸、経鼻、経膣、局所、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、クモ膜下腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内等への注射又は輸液)又は移植されたリザーバーを用いた投与のいずれかによって投与してもよく、経口、筋肉内、腹腔内又は静脈内への注射による投与経路が好ましい。
【0103】
本発明の化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物は、単位投与形態で投与してもよい。投与形態は、液体形態又は固体形態であってもよい。液体形態としては、完全な溶液、コロイド、微粒子、乳化液、懸濁液が挙げられる。他の形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、滴下剤、エアゾール、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、坐剤、注射用凍結乾燥粉末、クラスレート、植込錠、パッチ、リニメント剤等が挙げられる。
【0104】
本発明の医薬組成物は、慣用の担体を更に含んでいてもよく、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清蛋白等の血清蛋白、リン酸塩等の緩衝剤、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物油脂肪酸の部分グリセリンエステル混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩等の塩又は電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ミツロウ、ラノリン等が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物中の担体の量は、1重量%〜98重量%であってもよく、通常は約80重量%である。簡便さからは、局所麻酔剤、殺菌剤、緩衝剤等を担体に直接溶解させてもよい。
【0105】
経口錠剤及びカプセル剤は補形剤、例えば結合剤(糖蜜、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填剤(ラクトース、スクロース、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、アミノ酢酸等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、サポナイト、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(ポテトスターチ等)又は許容される湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)を含んでいてもよい。錠剤は、薬剤学において知られている方法を用いるてコーティングしてもよい。
【0106】
経口液剤は、水及び油の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤又はエリキシル剤として製造してもよい。或いは使用前に水又は他の適切な媒体を添加する乾燥製品として製造してもよい。この液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤(ソルビトール、セルロースメチルエーテル、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、食用硬化油脂等)、乳化剤(レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、アラビアゴム等)又は非水性担体(食用油が含まれる場合もある)(アーモンド油等)、グリース(グリセリン、エチレングリコール、エタノール等)、殺菌剤(p−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、ソルビン酸等)を含んでいてもよい。所望により、矯味剤又は着色剤を添加してもよい。
【0107】
坐剤は、カカオ脂や他のグリセリド等の従来の坐剤基剤を含んでいてもよい。
【0108】
非経口投与の場合、液体投与形態は、通常、当該化合物及び滅菌された担体から製造される。好ましい担体は水である。選択された担体及び薬剤濃度に応じて、化合物を担体中に溶解させてもよいし、或いは懸濁液にしてもよい。注射液を製造する場合は、まず化合物を水に溶解させた後、これを濾過して滅菌してから瓶又はアンプルに詰めて密封する。
【0109】
皮膚への局所適用の場合本発明の化合物は、有効成分の1種以上が担体中に懸濁又は溶解した適切な軟膏、ローション又はクリーム形態に製造してもよい。軟膏に使用される担体としては、これらに限定されないが、鉱油、液状ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス及び水が挙げられる。ローション及びクリームに使用される担体としては、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ツイーン60、セチルエステルワックス、ヘキサデシレン芳香族アルコール、2−オクチルドデカノール、ベンザノール及び水が挙げられる。
【0110】
上述の製剤中に、式(I)の活性化合物は、混合物の総重量を基準として約0.1〜99.5重量%、好ましくは約0.5〜95重量%の濃度で存在する。
【0111】
上述の製剤は、式(I)の化合物以外に他の医薬活性化合物を更に含んでいてもよい。
【0112】
一般にヒト医学又は獣医学的において、本発明の活性化合物の24時間毎の総投与量が体重1kg当たり約0.5〜500mg、好ましくは1〜100mgであると有利であることがわかっている。適切であれば、単回投与量の薬剤を複数回投与することによって所望の効果を達成する。単回投与量中の活性化合物の量は体重1kg当たり好ましくは約1〜80mg、より好ましくは1〜50mgである。しかしながら、この投与量は治療対象者のタイプ及び体重、疾患の性質及び重症度、製剤の種類及び投与方法、並びに投与期間及び間隔に応じて変化させてもよい。
【実施例】
【0113】
発明を実施するための具体的なモデル
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明はこれらによっていかなる限定を受けるとは解釈されない。
【0114】
化合物の融点を、RY−1融点測定装置を用いて、温度計の較正を行わずに測定した。質量スペクトルを、Micromass ZabSpec高解像度質量分光器(解像度1000)を用いて測定した。1H−NMRを、超伝導磁石を備えたJNM−ECA−400NMR分光計を用いて測定した。使用した周波数は、1H−NMRで400MHz、13C−NMRで100MHzである。
【0115】
実施例
〔実施例1〕
(R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミドの調製
【0116】
【化17】

【0117】
段階1
(R)−α−メチルベンジルアミン(6.06g、50mmol)及びジケテンアセトン付加体(7.11g、50mmol)を250mLの一口丸底フラスコに装入した。次いでN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)及びトリエチルアミン(6.01g、60mmol)を添加し、80〜100℃で2時間反応させた。反応停止後、水(200mL)を添加した。次いで反応混合物を4N塩酸で中和して中性にし、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮することにより化合物1(9.33g、収率91%)を得た。
【0118】
段階2
化合物1(4.5g、22.05mmol)、2−クロロ−4−フルオロベンズアルデヒド(3.5g、22.05mmol)、2−チアゾールホルムアミジン酢酸塩(4.5g、22.05mmol)及び無水酢酸ナトリウム(1.0g、22.05mmol)を無水エタノール100mLに添加し、還流下で16時間反応させた。反応混合物を濃縮することにより溶媒を除去した後、得られた固体を酢酸エチル(40mL)及び水(40mL)に添加して層分離させた。得られた水相を酢酸エチル(20mL)で2回抽出した。次いで、有機相を合一して塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮して、フラッシュカラムクロマトグラフィーで分離することによって黄色を帯びた微細針状固体(化合物2)(2.93g、収率45%)を得た。融点224〜226℃;1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.30-1.34(3H,m); 2.01(3H,s); 4.84-4.88(1H,m); 5.97(1H,s); 7.03-7.05(2H ,m); 7.12-7.24(4H ,m);7.36-7.39(1H ,m);7.49-7.53(1H ,m);7.87-7.88(1H,d);7.93-7.96(1H,m); 8.17-8.19(1H,d);9.35(1H,s);MS(EI) 454.0(M+)
【0119】
〔実施例2〕
エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレートの調製
【0120】
【化18】

【0121】
化合物2(0.91g、2mmol)を無水N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.3g、3mmol)を添加し、塩化アセチル(0.16mL、2.4mmol)を滴下して、室温で6時間反応させた。反応混合物に水(20mL)を添加した後、反応混合物を酢酸エチル(15mL)で6回抽出した。得られた有機相を塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで分離することにより化合物3(0.746g、収率75%)を得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.23-1.41(3H,m); 1.98(3H,s); 2.17 (3H,s); 4.96-5.0(1H,m); 6.59(1H,s); 7.07-7.42(8H ,m); 7.98-7.99(1H,d);8.02-8.03(1H,d) 8.63-8.64(1H,d);MS(EI) 496.1(M+)
【0122】
窒素保護下、化合物3(0.5g、1mmol)を25mLの三口丸底フラスコに装入し、これを酢酸(5mL)で溶解させた後、氷浴で冷却した。次いで、亜硝酸ナトリウム(0.14g、2mmol)を0℃で添加して6時間反応させた。反応混合物に水(30mL)を添加した後、反応混合物を速やかに冷ジクロロメタン15mLで3回抽出した。有機相を塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮することによって生成物0.521gを得た。これを精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0123】
上述の生成物(0.521g)を無水エタノール(15mL)に添加し、氷浴で冷却した。次いで、ナトリウムエトキシド(0.135g)を添加することにより0℃で50分間反応させた。反応停止後、水(15mL)を添加した後、4N塩酸を用いて反応混合物を中和して中性にし、濃縮し、酢酸エチル及び水を添加して層分離させた。得られた水相を更に酢酸エチル(10mL)で3回抽出した後、有機相を合一し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離することにより化合物4(0.296g、収率78%)を得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.01-1.07(3H,m); 2.46(3H,s); 3.90 -3.95(2H,m); 5.99(1H,s); 7.17-7.22(1H ,m); 7.90-7.91(1H,d);7.97- 7.98(1H,d); 9.96(1H,s);MS(EI) 379.0(M+)
[a]D=-54.6(c=1% ,CH3OH)
【0124】
〔実施例3〕
トリフルオロエチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレートの調製
【0125】
【化19】

【0126】
ナトリウムエトキシドの代わりにナトリウムトリフルオロエトキシドを用いることを除いて実施例2の方法に従い、黄色非晶質固体である化合物5(0.296g、収率78%)を得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 4.60-4.64 (2H,m); 6.01(1H,s); 7.16-7.21(1H ,m); 7.34-7.43(2H,m);7.92-7.93 (1H, d);7.98-7.99(1H,d);10.23(1H,s); MS(EI)432.1(M+)
[α]D= -80.1 (c=1% ,CH3OH)
【0127】
〔実施例4〕
(R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミドの調製
【0128】
【化20】

【0129】
2−クロロ−4−フルオロベンズアルデヒド(1.58g、10mmol)及び化合物1(2.04g、10mmol)をエタノール(40mL)に溶解させ、室温で2日間撹拌した後、2,4,6−トリフルオロベンズアミジン酢酸塩(2.34g、10mmol)を添加し、還流させながら一夜反応させた。反応生成物を蒸発させることにより溶媒を除去した後、酢酸エチル及び水を添加して層分離させた。得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離することによって混合物4.7gを得た。この混合物を酢酸エチルに溶解させて固体の化合物6を析出させ、次いでこれを50%エタノールで再結晶することによって無色の微細針状固体2.2gを得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.3-1.33(3H,m); 1.97(3H,s); 4.81-4.88 (1H,m); 5.96(1H,s); 7.04-7.39(9H ,m); 7.57-7.61(1H,m);8.11-8.13 (1H,d);9.25(1H,s);MS(EI) 501(M+)
【0130】
〔実施例5〕
エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレートの調製
【0131】
【化21】

【0132】
実施例2の方法に従い化合物6を反応させることによって化合物7を無色の微細針状結晶として調製した。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6)δ 1.39-1.41(3H,d,J=7.0); 2.07(3H,s); 2.10 (3H,s);4.95-4.99(1H,m); 6.47(1H,s); 7.08-7.30(8H,m); 7.45-7.51 (2H, m);8.70-8.72 (1H,d,J=8.12);MS(EI) 543(M+)
【0133】
化合物7を反応させることによって化合物8を無色の微細針状結晶として調製した。融点162〜165℃;1H-NMR (400MHz,DMSO-d6)δ 1.02-1.05(3H,t, J=7.0 Hz); 2.32(3H,s); 3.92-3.96(2H,m,J=7.0Hz); 5.97(1H,s); 7.21-7.45(5H,m); 9.86(1H,s); MS(EI) 426(M+);[α]D=-92.38(c=1%、メタノール)
【0134】
〔実施例6〕
(S,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミドの調製
【0135】
【化22】

【0136】
実施例1の方法に従い(S)−α−メチルベンジルアミン(6.1g、50mmol)を反応させることによって化合物9(9.6g、収率95%)を得た。
【0137】
化合物9(2.9g、14.2mmol)及び2−クロロ−4−フルオロベンズアルデヒド2.2g(14.2mmol)を無水エタノール(50mL)に溶解させた後、酢酸及びヘキサヒドロピリジンをそれぞれ7滴ずつ添加し、室温で24時間反応させた。反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離することによって化合物10(4.1g)を白色固体として得、これを酢酸エチル/石油エーテルで再結晶させた。1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 1.42-1.44(3H,d); 2.45(3H,s); 5.18-5.21 (1H, m); 6.07-6.09(1H,d); 6.72-6.76(1H ,m); 7.12-7.47(9H,m);7.75 (1H,s)
【0138】
化合物10(3.4g、10mmol)、5−チアゾールホルムアミジン酢酸塩(1.9g、10mmol)及び酢酸ナトリウム(1.0g、12mmol)を無水エタノール(50mL)に溶解させ、還流下で20時間反応させた。反応混合物を濃縮して溶媒を除去した後、得られた固体を酢酸エチル及び水に添加して層分離させた。得られた水相を更に酢酸エチルで抽出し、得られた有機相を合一して塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離することによって黄色を帯びた固体(化合物11)(1.9g、収率41%)を得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.22-1.25(3H,m); 2.11(3H,s); 4.85-4.88(1H,m); 5.96(1H,s); 7.14- 7.43(8H ,m); 8.10-8.12(1H,d);8.49(1H,s);9.09(1H,s);9.17(1H,s);MS(EI) 454.0(M+)
【0139】
〔実施例7〕
エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレートの調製
【0140】
【化23】

【0141】
実施例2の方法に従い化合物11を反応させることによって化合物12を黄色の発泡体状固体として得た。1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 1.34-1.36(3H,d); 2.08(3H,s); 2.18 (3H,s); 4.97-5.01(1H,m); 6.56(1H,s); 7.11-7.37(7H ,m); 7.50-7.53 (1H,dd);7.93(1H,s); 8.72-8.74(1H,d);9.23(1H,s); MS(EI) 496.1(M+)
【0142】
化合物12を反応させることによって化合物13を調製した。1H-NMR (400MHz,DMSO-d6)δ 1.0-1.06(3H,t,J=7.0Hz); 2.44(3H,s); 3.92-3.94(2H,m,J=7.0Hz); 5.93(1H,s); 7.36-7.39(3H,m); 8.54(1H,s); 9.11(1H,s); 9.60(1H,s); MS(EI) 379.0(M+);[α]D=-65.0(c=1%、メタノール)
【0143】
〔実施例8〕
化合物の細胞毒性及び抗ウイルス活性の測定
本発明による化合物の細胞毒性及び抗ウイルス活性を上述した方法に従い測定し、結果を表1に示した。
【0144】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に純粋な式(I):
【化1】

[式中、
1は、水素、(C1〜C4)−アルキル、(C2〜C4)−アルケニル、(C1〜C6)−アシル、アリールアシル又はアリールスルホニルを表し;
2は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、ベンジル、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、(C1〜C6)−アルキルチオ、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル、(C1〜C6)−アシルオキシ、アミノ、(C1〜C6)−アルキルアミノ、(C1〜C6)−ジアルキルアミノ又は(C1〜C6)−アシルアミノから選択される同一又は異なる1以上の置換基で置換されていてもよい、フェニル、チアゾリル又はイミダゾリルを表し;
3は、フェニル、フリル、チエニル、トリアゾリル、ピリジル又は3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル
〔これら環系は、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アルコキシ、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル及び(C1〜C6)−アルキル
{該アルキルは、6〜10個の炭素原子を有するアリール、ハロゲン又は式−S−R5、NR67、CO−NR89若しくは−A−CH2−R10
(式中、
5はハロゲンで置換されていてもよいフェニルを表し、
6、R7、R8及びR9は、同一又は異なって、それぞれ、水素、フェニル、ヒドロキシル置換フェニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アシル又は(C1〜C6)−アルキル(該アルキルは、ヒドロキシル、(C1〜C6)−アルコキシカルボニル、フェニル又はヒドロキシル置換フェニルで置換されていてもよい。)を表し、
Aは、O、S、SO又はSO2を表し、
10は、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、(C1〜C6)−アルキル及び(C1〜C6)−アルコキシから選択される同一又は異なる1以上の置換基で一置換又は多置換されていてもよいフェニルを表す。)
で表される基で置換されていてもよい。}
から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に一置換又は多置換されていてもよい。〕
を表し;
4は、式−OR11又は
【化2】

〔式中、
11は、水素、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C8)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、O、CO、NH、−NH(C1〜C4)−アルキル、−N((C1〜C4)−アルキル)2、S及びSO2からなる群から選択される1又は2個の同一又は異なるヘテロ鎖単位を含んでいてもよく、且つハロゲン、ニトロ、シアノ、C16アルコキシ、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アリールC16アルキル、ヘテロアリール又は式−NR1516(式中、R15及びR16は同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又は(C1〜C6)−アルキルを表す。)で表される基で置換されていてもよい。}
を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C16アルコキシカルボニル、アリール、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C8)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C16アルコキシ、C16アルコキシカルボニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アラルキル、ヘテロアリールで置換されていてもよい。}
から選択される置換基を表す。〕
で表される基を表す。]
で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項2】
請求項1に係る光学的に純粋な式(I)で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物において、式(I)中、
1は水素、メチル、ホルミル、アセチル、アリールアシル、アリールスルホニルを表し;
2はハロゲンで5回まで置換されていてもよいフェニル、又はフルオロ、クロロ、ブロモ、ベンジル、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルコキシ、アミノ、(C1〜C4)−アシルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で3回まで置換されたチアゾリル若しくはイミダゾリルを表し;
3はフェニル、フリル、チエニル、ピリジル、シクロペンチル又はシクロヘキシル
〔これら環系はハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシル、メトキシカルボニル及び式−CONHCH2C(CH33、−CONH(CH22OH、−CONHCH265、−CONHC65、−OCH265又は−S−pCl−C64で表される基から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に一置換又は多置換されていてもよい。〕
を表し;
4は、式−OR11又は
【化3】

〔式中、
11は、水素、(C1〜C4)−アルケニル又は(C1〜C4)−アルキル
{該基は、ハロゲン、ピリジル、シアノ、フェノキシ、アルコキシ、トリフルオロエチル、ベンジル又は式−NR1516(式中、R15及びR16は同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又は(C1〜C4)−アルキルを表す。)で表される基で任意的に置換されていてもよい。}
を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、フルオロ、クロロ、ニトロ、シアノ、アルコキシカルボニル、アリール、直鎖、分岐又は環式の飽和又は不飽和の(C1〜C6)−ヒドロカルビル
{該ヒドロカルビルは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、6〜10個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールで任意的に置換されていてもよい。}
から選択される置換基を表す。〕
で表される基を表す、
化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項3】
請求項1に係る光学的に純粋な式(I)で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物において、式(I)中、
1は、水素、メチル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニルを表し;
2は、フルオロで5回まで置換されたフェニル、又はフルオロ、クロロ、ブロモ、ベンジル、(C1〜C3)−アルキル、(C1〜C3)−アルコキシ、アミノ、(C1〜C3)−アシルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で2回まで置換されたチアゾリル若しくはイミダゾリルを表し;
3は、フェニル、フリル、チエニル、ピリジル、シクロペンチル又はシクロヘキシル
〔これら環系は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルスルホニル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、メトキシカルボニル及び式−CONHCH2C(CH33、−CONH(CH22OH、−CONHCH265、−CONHC65、−OCH265又は−S−pCl−C64で表される基から選択される同一又は異なる1以上の置換基で任意的に3回まで置換されていてもよい。〕
を表し;
4は、式−OR11又は
【化4】

(式中、
11は水素、(C1〜C3)−アルケニル又は(C1〜C4)−アルキル
{該基は、ハロゲン、ピリジル、シアノ、フェノキシ、アルコキシ、トリフルオロエチル、ベンジル又は式−NR1516(式中、R15及びR16は同一又は異なって、それぞれ、水素、ベンジル又はメチルを表す。)で表される基で任意的に置換されていてもよい。}
を表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、アルコキシカルボニル、置換又は非置換のフェニル、ナフチル、ベンジル、直鎖又は分岐の(C1〜C3)−ヒドロカルビルから選択される置換基を表す。)
で表される基を表す、
化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項4】
請求項1に係る光学的に純粋な式(I)で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物において、
式(I)中、
1は、水素又はアセチルを表し;
2は、フルオロで3回まで置換されたフェニル又はフルオロ、クロロ、メチル、ベンジル、アミノ、アセチルアミノから選択される同一若しくは異なる1以上の置換基で2回まで置換された2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル若しくは2−イミダゾリルを表し;
3は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、ニトロ、メトキシ又はメチルから選択される同一又は異なる1以上の置換基で3回まで置換されていてもよいフェニルを表し;
4は、式−OR11又は
【化5】

(式中、
11は、フッ素若しくは塩素原子で置換されていてもよいアルキルであって、3個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを表し、
12、R13及びR14は、異なって、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル又はフェニルから選択される置換基を表す。)
で表される基を表す、化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に係る光学的に純粋な式(I)で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物において、式(I)中、R2は2個又は3個のフッ素原子で置換されたフェニル;又はフルオロ、クロロ、メチル、アミノ及びアセチルアミノから選択される置換基で置換された、2−チアゾリル、4−チアゾリル若しくは5−チアゾリル;又はメチル及びベンジルから選択される置換基で置換された2−イミダゾリルを表す、化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項6】
1)(R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド、
2)エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
3)トリフルオロエチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
4)(R,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド、
5)エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレート、
6)(S,R)−N−(1−フェニルエチル)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド及び
7)エチル(R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(5−チアゾリル)−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシレートからなる群から選択される、請求項1に係る光学的に純粋な式(I)で表わされる化合物又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項7】
1)塩基若しくは酸の存在下若しくは非存在下、適切な不活性溶媒中、式(II):
【化6】

(式中、R2は上と同義である)のアミジン又はその塩を、式(III):
【化7】

(式中、R3は上と同義である)のアルデヒド及び式(IV):
CH3COCH2CONHCR121314(IV)
(式中、R12、R13、R14は上と同義である)の化合物と反応させることによって式(V):
【化8】

の化合物を得るか、或いは
塩基若しくは酸の存在下若しくは非存在下、適切な不活性溶媒中、20〜150℃の温度で、式(VI)又は(VII):
【化9】

(式中、R3、R12、R13、R14は上と同義である)の化合物を式(II)の化合物と反応させるか、或いは
アンモニウム塩の存在下、式(III)のアルデヒドを式(IV)の化合物及び式(VIII):
【化10】

(式中、R2は上と同義であり、R’はC1〜C4アルキルである)のイミノエーテルと反応させる段階と、
2)適切な溶媒中、式(V)の化合物をアシル化することによって式(IX):
【化11】

(式中、R1は(C1〜C6)−アシル、アリールアシル又はアリールスルホニルであり、R2、R3、R12、R13及びR14は上と同義である)の化合物を得る段階と、
3)酸性又は塩基性条件下、適切な溶媒中、式(IX)の化合物をニトロシル化した後、ナトリウムアルコキシドR11ONaと反応させることによって式(I):
【化12】

(式中、R1は水素であり、R2、R3、R4及びR11は上と同義である)の光学的に純粋な化合物を得る段階とを含む、請求項1〜6のいずれか一項に係る光学的に純粋な化合物の調製プロセス。

【請求項8】
請求項7に定義される式(IV)の化合物CH3COCH2CONHCR121314(IV)の調製プロセスであって、塩基の存在下又は非存在下、不活性溶媒中、キラルな第1級アミンR121314CNH2(式中、R12、R13及びR14は上と同義である)とジケテン若しくはジケテンアセトン付加体とを反応させることを含むプロセス。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に係る光学的に純粋な式(I)の化合物、可能な異性体のいずれか、又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に係る光学的に純粋な式(I)の化合物、可能な異性体のいずれか、又はこれらの薬学的に許容される塩若しくは水和物の、急性又は慢性B型肝炎等の急性又は慢性ウイルス性疾患の治療のための医薬の調製のための使用。

【公表番号】特表2009−542730(P2009−542730A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518703(P2009−518703)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002099
【国際公開番号】WO2008/009210
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509011569)ペキン モリキュール サイエンス アンド テクノロジー シーオー.,エルティーディー (1)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING MOLECULE SCIENCE AND TECHNOLOGY CO.,LTD
【Fターム(参考)】