説明

光学的情報記録媒体及びその製造方法

本発明の光学的情報記録媒体には、基板上に設けられた複数の情報層と、互いに隣接する情報層間に配置された光学分離層とが含まれており、レーザビームの照射により情報の記録または再生が行なわれる。複数の情報層のうち最もレーザビーム入射側に配置された情報層を第1の情報層とし、第1の情報層に接して配置された光学分離層を第1の光学分離層とすると、第1の情報層には、記録層と、第1の情報層の透過率を調整する透過率調整層と、透過率調整層と第1の光学分離層との間に配置された低屈折率層とが含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、レーザビーム等の照射により、複数設けられた情報層に対して光学的に情報を記録、消去、書き換え、再生できる多層構造の光学的情報記録媒体とその製造方法とに関する。
【背景技術】
書き換え可能な媒体として用いられる相変化型の光学的情報記録媒体とは、結晶相と非晶質相との間で可逆的に相変化を起こす記録層を利用して、情報の記録、消去及び書き換えを行うものである。このような記録層に高パワーのレーザビームを照射した後で急冷すると、照射された部分が非晶質相となる。また、記録層の非晶質部分に低パワーのレーザビームを照射した後に徐冷すると、照射された部分が結晶相となる。したがって、相変化型の光学的情報記録媒体では、高パワーレベルと低パワーレベルとの間でパワーを変調させたレーザビームを記録層に照射することによって、記録層を非晶質相または結晶相に自由に変化させることができる。このような光学的情報記録媒体では、非晶質相における反射率と結晶相における反射率との差を利用して情報の記録が行われる。
近年、光学的情報記録媒体の記録密度を向上させるために、さまざまな技術が研究されている。例えば、比較的波長の短い青紫色レーザビームを使用してより小さい記録マークを記録する技術や、レーザビーム入射側に配置された基板を薄くするとともに開口数(NA)が大きいレンズを使用してより小さい記録マークを記録する技術等が研究されている。また、記録層を含む情報層が二つ設けられ、片側から入射したレーザビームを用いて二つの情報層それぞれに対して記録・再生を行う技術も研究されている(例えば、特開2000−36130号公報参照)。
図4には、二つの情報層が設けられた従来の光学的情報記録媒体の構成例が示されている。従来の光学的情報記録媒体101には、第1の基板102と第2の基板106との間に、レーザビーム入射側から順に、第1の情報層103、光学分離層104及び第2の情報層105が設けられている。第1の情報層102には、レーザビーム入射側から順に、保護層1031、記録層1032、保護層1033、反射層1034及び透過率調整層1035が配置されている。
このように、片側から照射されるレーザビームにより二つの情報層に対してそれぞれ記録・再生が行なわれる光学的情報記録媒体101では、レーザビーム入射側に配置されている第1の情報層103を透過したレーザビームを用いて、レーザビーム入射側と反対側に配置された第2の情報層105の記録再生が行われる。
このような光学的情報記録媒体101に記録・再生を行うためには、第1の情報層103はできるだけ高い透過率を有することが好ましい。そこで、第1の情報層103には、透過率を高くするために高屈折率誘電体材料からなる透過率調整層1035が反射層1034に接して設けられている。高屈折率誘電体材料としては、例えばTiO、Nb及びそれらを含む材料等が挙げられる。
以上のような透過率調整層1035を備えた光学的情報記録媒体101は、成膜しやすさの観点から、一般的に下記の工程順に作製される。
(a)第2の基板106上に第2の情報層105を形成する工程
(b)第2の情報層105上に光学分離層104を形成する工程
(c)光学分離層104上に第1の情報層103を形成する工程
(d)第1の情報層103上に第1の基板102を接着する工程
すなわち、従来の光学的情報記録媒体101では、(c)の光学分離層104上に第1の情報層103を形成する際、光学分離層104の上にまず高屈折率誘電体材料を用いて透過率調整層1035を成膜する。
しかしながら、発明者らが、複数の成膜室を有する枚葉式成膜装置で透過率調整層1035を作製したところ、高屈折率誘電体材料を用いて第一の成膜室で透過率調整層1035を成膜する場合、高屈折率誘電体材料が成膜雰囲気に非常に敏感であるため、基材(第2の基板106上に第2の情報層105及び光学分離層104が形成された状態のもの)が含んでいる水分等の影響を受けて成膜レートにばらつきが生じやすいことが明らかになった。この問題を解決する目的で成膜室に基材を投入する最初の部屋であるロードロック室の真空引きを長時間にすると、この成膜レートのばらつきを抑えることができるが、生産性の観点から見ると、真空引きの時間を長くして結果的に成膜タクトが長くなるので好ましくない。
【発明の開示】
本発明の光学的情報記録媒体は、基板と、前記基板上に設けられた複数の情報層と、互いに隣接する情報層間に設けられた光学分離層と、を含み、レーザビームの照射により情報の記録または再生が行なわれる光学的情報記録媒体であって、前記複数の情報層のうち最もレーザビーム入射側に配置された情報層を第1の情報層とし、前記第1の情報層に接して配置された光学分離層を第1の光学分離層とすると、前記第1の情報層は、光学的に互いに異なる二つの状態間を変化しうる記録層と、前記第1の情報層の透過率を調整する透過率調整層と、前記透過率調整層と前記第1の光学分離層との間に配置された低屈折率層と、を含むことを特徴としている。
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法は、光学分離層を介して互いに積層された第1の情報層及び第2の情報層を少なくとも含む光学的情報記録媒体の製造方法であって、
(a)前記第2の情報層を形成する工程と、
(b)前記第2の情報層上に前記光学分離層を形成する工程と、
(c)前記光学分離層上に第1の情報層を形成する工程と、
を含み、前記(c)の工程には、前記光学分離層上に低屈折率層を形成する工程と、前記低屈折率層上に透過率調整層を形成する工程と、記録層を形成する工程と、が含まれることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の光学的情報記録媒体の一実施形態を示す断面図である。
図2は、図1に示す光学的情報記録媒体の構成をより詳細に示す断面図である。
図3は、本発明の光学的情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う記録再生装置の一部構成を概略的に示す説明図である。
図4は、二層の情報層を含む従来の光学的情報記録媒体の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の光学的情報記録媒体は、最もレーザビーム入射側に配置されている第1の情報層において、透過率調整層と第1の光学分離層との間に低屈折率層が設けられている。したがって、透過率調整層の成膜レートのばらつきを抑制できるので、透過率調整層の安定成膜が可能となる。これにより、複数の情報層を有しながらも記録感度が良好で、十分なC/N比の得られる光学的情報記録媒体が提供できる。
本発明の光学的情報記録媒体においては、前記レーザビームに対する前記低屈折率層の屈折率をn1、前記第1の光学分離層の屈折率をn4とすると、n1及びn4が、
|n1−n4|≦0.5
の関係を満たすことが好ましく、
|n1−n4|≦0.1
の関係を満たすことがより好ましい。良好な反射率特性が得られるからである。
本発明の光学的情報記録媒体においては、前記第1の情報層に含まれる前記記録層が、結晶状態と非晶質状態との間を変化しうる材料にて形成されており、前記記録層が結晶状態であるときの前記レーザビームに対する前記第1の情報層の透過率をTc1(%)、前記記録層が非晶質状態であるときの前記レーザビームに対する前記第1の情報層の透過率をTa1(%)とすると、Tc1及びTa1が、
40<Tc1 且つ 40<Ta1
の関係を満たすことが好ましい。レーザビーム入射側から見て第1の情報層よりも奥側に配置された情報層に、十分な光量のレーザビームを到達させることができるからである。
本発明の光学的情報記録媒体においては、前記第1の情報層が、前記記録層と前記透過率調整層との間に配置された反射層をさらに含み、前記レーザビームに対する前記透過率調整層の屈折率をn2、消衰係数をk2とし、前記レーザビームに対する前記反射層の屈折率をn3、消衰係数をk3とすると、
1.0≦(n2−n3)≦3.0
及び
1.0≦(k3−k2)≦4.0
のうち少なくとも何れか一方の関係が成立することが好ましい。反射層に対して屈折率が大きく、且つ消衰係数が小さい透過率調整層に光が閉じ込められて、光の干渉効果が大きくなるため、第1の情報層の透過率を高めることができるからである。
本発明の光学的情報記録媒体においては、前記低屈折率層は、SiO、Al、LaF、ZrSiO及びZrOから選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの材料は、一般的に光学分離層に用いられる材料との屈折率差が小さく、且つ安定な材料だからである。
本発明の光学的情報記録媒体においては、前記低屈折率層の膜厚が1nm以上25nm以下であることが好ましい。低屈折率層を形成することによる全体の成膜タクトの低下を抑制できるからである。
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法によれば、光学分離層上に低屈折率層を形成してから透過率調整層を形成するので、透過率調整層の成膜レートのばらつきが抑制され、透過率調整層の安定成膜が可能となる。これにより、複数の情報層を有しながらも記録感度が良好で、十分なC/N比の得られる光学的情報記録媒体を作製できる。
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法においては、情報の記録または再生の際に用いられるレーザビームに対し、前記(c)の工程にて形成される前記低屈折率層の屈折率をn1、前記光学分離層の屈折率をn4とすると、n1及びn4が、
|n1−n4|≦0.5
の関係を満たすように、前記低屈折率層及び光学分離層が形成されることが好ましい。良好な反射率特性を有する光学的情報記録媒体が作製できるからである。
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法においては、前記(c)の工程において、前記低屈折率層は、SiO、Al、LaF、ZrSiO及びZrOから選ばれる少なくとも一つを含む材料にて形成されることが好ましい。これらの材料は、一般的に光学分離層に用いられる材料との屈折率差が小さく、且つ安定な材料だからである。
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法においては、前記(c)の工程において、前記低屈折率層は、1nm以上25nm以下の膜厚に形成されることが好ましい。低屈折率層を形成することによる全体の成膜タクトの低下を抑制できるからである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明はこれらの図面によって限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の光学的情報記録媒体の一実施形態について説明する。なお、本発明の光学的情報記録媒体は光学分離層によって互いに分離された複数の情報層を含む記録媒体であるが、本実施の形態では、一例として、二つの情報層を含む光学的情報記録媒体について説明する。
図1は、本実施の形態に係るディスク形状の光学的情報記録媒体1(以下、光ディスク1と記載する。)について、積層構成の概略を示す半径方向の断面図である。図1に示すように、光ディスク1には、第1の基板11、第1の情報層12、光学分離層(第1の光学分離層)13、第2の情報層14及び第2の基板15がこの順に積層されている。光学分離層13を介して積層された二つの情報層12,14は、それぞれ記録層(図示せず。)を含んでおり、情報はこれら二つの情報層12,14に記録される。
図2には、光ディスク1における第1の情報層12及び第2の情報層14の具体的な構成例が示されている。光ディスク1には、情報の記録または再生に用いられるレーザビーム2が第1の基板11側から入射する。第1の情報層12は、レーザビーム2の入射側から、下側保護層121、下側界面層122、記録層123、上側保護層124、反射層125、透過率調整層126及び低屈折率層127が順次積層されて形成されている。第2の情報層14は、レーザビーム入射側から、下側保護層141、記録層142、上側保護層143及び反射層144が順次積層されて形成されている。なお、界面層及び保護層の名称において、下側とは、記録層に対してレーザビーム2の入射側に配置されていることを意味し、上側とは、記録層に対してレーザビーム2の入射側とは反対側に配置されていることを意味する。また、第1の情報層12及び第2の情報層14に含まれる各層の形成方法としては、通常、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、レーザスパッタリング法等が適用される。
以下に、光ディスク1に含まれる各層について、詳細に説明する。
光学分離層13及び第1の基板11の材料には、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂等が使用可能である。光学分離層13及び第1の基板11は、複数の樹脂を積層させることにより形成することもできる。また、光学分離層13及び第1の基板11の材料としては、使用するレーザビーム2に対して光吸収が小さいことが好ましく、短波長域において光学的に複屈折率が小さいことが好ましい。また、第1の基板11には、透明で円盤状のポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いてもよい。この場合、第1の基板11は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂によって、第1の情報層12の下側保護層121に貼り合わせることにより形成できる。
第2の基板15は、円盤状の基板である。第2の基板15には、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンまたはPMMA等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。第2の基板15における第2の情報層14側の表面には、必要に応じてレーザビーム2を導くための案内溝が形成されていてもよい。また、第2の基板15において、第2の情報層14側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。第2の基板15の材料としては、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、ポリカーボネートが特に有用である。なお、第2の基板15の厚さは、十分な強度を有し、且つ光ディスク1の厚さが1200μm程度となるよう、400μm〜1300μmの範囲内であることが好ましい。なお、第1の基板11の厚さが600μm程度(NA=0.6にて良好な記録再生が可能な厚さ。)の場合、第2の基板15の厚さは550μm〜650μmの範囲内であることが好ましい。また、第1の基板11の厚さが100μm程度(NA=0.85にて良好な記録再生が可能な厚さ。)の場合、第2の基板15の厚さは1150μm〜1250μmの範囲内であることが好ましい。
以上のような構成によれば、片側からのレーザビーム2の照射であっても、第1の情報層12を透過したレーザビーム2によって第2の情報層14に記録再生することができる。
なお、第1の情報層12及び第2の情報層14のいずれかを、再生専用型の情報層(ROM(Read Only Memory))、あるいは1回のみ書き込み可能な追記型の情報層(WO(Write Once))としてもよい。
レーザビーム2の波長λは、レーザビーム2を集光した際のスポット径が波長λによって決定される(波長λが短いほど、より小さなスポット径に集光可能となる。)。このため、高密度記録の場合、特に450nm以下であることが好ましい。また、波長λが350nm未満の場合、光学分離層13や第1の基板11等による光吸収が大きくなってしまう。これらの理由から、波長λは350nm〜450nmの範囲内であることがより好ましい。
次に、第1の情報層12を構成する各層について詳細に説明する。
下側保護層121は、誘電体材料にて形成される。下側保護層121は、記録層123の酸化、腐食、変形を防止する働きと、光学距離を調整して記録層123の光吸収効率を高める働きと、記録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きくする働きと、を有する。下側保護層121には、例えば、SiOx(ただし、xは0.5〜2.5)、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、Te−O等の酸化物を用いることができる。また、C−N、Si−N、Al−N、Ti−N、Ta−N、Zr−N、Ge−N、Cr−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N等の窒化物を用いることもできる。また、ZnS等の硫化物やSiC等の炭化物を用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。例えば、ZnSとSiOとの混合物であるZnS−SiOは、下側保護層121の材料として特に優れている。ZnS−SiOは、非晶質材料で、屈折率が高く、成膜速度が速く、さらに機械特性及び耐湿性が良好だからである。
下側保護層121の膜厚は、マトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章を参照。)に基づく計算により、記録層123が結晶相である場合とそれが非晶質相である場合との間で反射光量の変化が大きく、且つ第1の情報層12の透過率が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
上側保護層124は、光学距離を調整して記録層123の光吸収率を高める働きと、記録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きくする働きと、を有する。上側保護層124には、例えば、SiO、Al、Bi、Nb、TiO、Ta、ZrO、ZnO等の酸化物を用いることができる。また、C−N、Si−N、Al−N、Ti−N、Ta−N、Zr−N、Ge−N、Cr−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N、Nb−N等の窒化物を用いることもできる。また、ZnS等の硫化物、SiC等の炭化物またはCを用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。上記保護層124に窒化物を用いる場合、上側保護層124は記録層123の結晶化を促進する働きも有する。この場合、Ge−Nを含む材料は反応性スパッタリングで形成しやすく、機械特性・耐湿性に優れているため好ましい。さらにこの中でも、特にGe−Si−N、Ge−Cr−Nといった複合窒化物が好ましい。また、ZnSとSiOとの混合物であるZnS−SiOも、非晶質材料で、屈折率が高く、成膜速度が速く、機械特性及び耐湿性が良好であるため、上側保護層124としても優れた材料である。
上側保護層124の膜厚d5は、上側保護層124の屈折率をn5とした時、(1/64)λ/n5≦d5≦(1/4)λ/n5の範囲内であることが好ましく、(1/64)λ/n5≦d5≦(1/8)λ/n5の範囲内であることがより好ましい。なお、例えば、レーザビーム2の波長λと上側保護層124の屈折率n5とを350nm≦λ≦450nm、1.5≦n5≦3.0とすると、膜厚d5は、2nm≦d5≦75nmの範囲内であることが好ましく、2nm≦d5≦40nmの範囲内であることがより好ましいことになる。膜厚d5をこの範囲内で選ぶことによって、記録層123で発生した熱を効果的に反射層125側に拡散させることができる。
透過率調整層126は誘電体材料からなり、第1の情報層12の透過率を調整する機能を有する。この透過率調整層126によって、記録層123が結晶相である場合の第1の情報層12の透過率Tc(%)と記録層123が非晶質相である場合の第1の情報層12の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。具体的には、透過率調整層126を備える第1の情報層12では、透過率調整層126がない場合に比べて、2%〜10%程度透過率が上昇する。また、透過率調整層126は、記録層123で発生した熱を効果的に拡散させる機能も有する。
透過率調整層126の屈折率n2及び消衰係数k2は、第1の情報層12の透過率Tc及びTaを高める作用をより大きくするため、2.0≦n2、且つk2≦0.1を満たすことが好ましく、2.0≦n2≦3.0、且つk2≦0.05を満たすことがより好ましい。
透過率調整層126の膜厚d2は、(1/32)λ/n2≦d2≦(3/16)λ/n2または(17/32)λ/n2≦d2≦(11/16)λ/n2の範囲内であることが好ましく、(1/16)λ/n2≦d2≦(5/32)λ/n2または(9/16)λ/n2≦d2≦(21/32)λ/n2の範囲内であることがより好ましい。なお、例えば、レーザビーム2の波長λと透過率調整層126の屈折率n2とを350nm≦λ≦450nm、2.0≦n2≦3.0とすると、膜厚d2は3nm≦d2≦40nmまたは60nm≦d2≦130nmの範囲内であることが好ましく、7nm≦d2≦30nmまたは65nm≦d2≦120nmの範囲内であることがより好ましいことになる。膜厚d2をこの範囲内で選ぶことによって、第1の情報層12の透過率Tc及びTaを共に高くすることができる。
透過率調整層126には、例えばTiO、ZrO、ZnO、Nb、Ta、Bi等の酸化物を用いることができる。また、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N等の窒化物を用いることもできる。また、ZnS等の硫化物を用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。これらの中でも、特にTiO及びTiOを主成分とする材料を用いることが好ましい。これらの材料は屈折率が大きく(n2=2.5〜2.8)、消衰係数も小さい(k2=0.0〜0.05)ため、第1の情報層12の透過率を高める作用が大きくなる。また、透過率調整層126には、さらに、SiO、Al、等の酸化物が含まれていてもよい。
低屈折率層127は誘電体からなり、透過率調整層126を成膜する際に、透過率調整層126の成膜がなされる基材(透過率調整層126が成膜される前の状態のもの)に吸着している水分が成膜室へ混入するのを防ぐ機能を有する。高屈折率誘電体材料からなる透過率調整層126をスパッタリングにて形成する際、この高屈折率誘電体材料は成膜雰囲気に非常に敏感である。このため、低屈折率層127が設けられていない場合には、光学分離層13が含んでいる水分等の影響を受けて成膜レートにばらつきが生じやすいが、本実施の形態のように低屈折率層127を設けることにより、成膜レートのばらつきを抑制できる。
なお、低屈折率層127の光学的な役割は必要ないので、低屈折率層127の屈折率n1は、接する光学分離層13の屈折率n4との差が小さいことが好ましく、|n1−n4|≦0.5を満たすことが好ましい。さらに、十分な膜厚の低屈折率層127を設けるためには、屈折率差がより小さい|n1−n4|≦0.1を満たすことがより好ましい。
枚葉式成膜装置では、成膜時間が最も長い部屋に律速して全体の成膜タクトが決定される。低屈折率層127の膜厚d1は、全体の成膜タクトを低下させないために1nm以上25nm以下の範囲内であることが好ましく、5nm以上15nm以下の範囲内であることがより好ましい。膜厚d1をこの範囲内で選ぶことによって、成膜タクトを低屈折率層127に律速させることなく、透過率調整層126成膜時に基材からの酸素が成膜室雰囲気に影響を与えるのを防ぐのに有効な低屈折率層127を設けることができる。
低屈折率層127には、例えばSiO、Al、LaF、ZrSiOまたはZrO等を用いることができる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。これらの中でも、特にSiO及びSiOを含む材料を用いることが好ましい。これらの材料は屈折率が1.4〜1.6であり、一般的に光学分離層13に用いられる材料の屈折率と大きな差がなく、且つ安定な材料であるため、低屈折率層127の材料として適している。
下側界面層122は、繰り返し記録によって下側保護層121と記録層123との間で生じる物質移動を防止する働きを有する。下側界面層122には、例えばC−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N等の窒化物、Cr等の酸化物、もしくはこれらの系を含む窒化酸化物を用いることができる。また、Cを用いることもできる。これらの中でも、Ge−Nを含む材料は反応性スパッタリングで形成しやすく、機械特性・耐湿性に優れた界面層である。この中でも、特にGe−Si−N、Ge−Cr−Nといった複合窒化物が好ましい。界面層が厚いと、第1の情報層12の反射率や吸収率が大きく変化して記録・消去性能に影響を与える。従って、界面層の膜厚は1nm〜10nmの範囲内であることが望ましく、2nm〜5nmの範囲内にあることがより好ましい。
記録層123と上側保護層124との間の界面にさらに上側界面層を配置してもよい。この場合、上側界面層には、下側界面層122について説明した材料を用いることができる。また、下側界面層122と同様の理由により、膜厚は1nm〜10nm(より好ましくは2nm〜5nm)の範囲内であることが好ましい。
上側保護層124と反射層125との間、及び反射層125と透過率調整層126との間には、界面層を配置してもよい。これらの界面層は、特に、高温高湿の環境下や記録時における、上側保護層124と反射層125との間、及び反射層125と透過率調整層126との間の物質移動を防止する働きがある。この場合、界面層には、下側界面層122について説明した材料を用いることができる。また、下側界面層122と同様の理由により、膜厚は1nm〜10nm(より好ましくは2nm〜5nm)の範囲内であることが好ましい。
記録層123は結晶状態と非晶質状態との間で変化しうる物質(相変化材料)を含んでいればよく、例えばTe、InまたはSe等を主成分として含む相変化材料にて形成できる。よく知られた相変化材料の主成分としては、Te−Sb−Ge、Te−Ge、Te−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Sb−Se、Sb−Te、Sb−Se−Te、In−Te、In−Se、In−Se−Tl、In−Sb、In−Sb−Se、In−Se−Te等があげられる。中でも、記録消去の繰り返し特性が良好な材料及びその材料組成を実験によって調べたところ、Ge、Sb、Teの3元素系を主成分とした材料が好ましいことがわかった。また、それぞれの元素の原子量比をGeSbTeと表すと、0.1≦x≦0.6、y≦0.5、0.4≦z≦0.65(ただし、x+y+z=1)で表される組成が特に優れていることもわかった。
本実施の形態の光ディスク1では、記録層123の膜厚は、記録再生の際に必要なレーザ光量を第2の情報層14に到達させるため、なるべく薄くして第1の情報層12の透過率を高くする必要がある。記録層123の膜厚は3nm〜9nmの範囲内であることが好ましく、4nm〜8nmの範囲内であることが好ましい。
反射層125は、記録層123に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、反射層125は、記録層123で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層123を非晶質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、反射層125は、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
反射層125の材料には、例えば、Ag、Au、CuまたはAl等の熱伝導率の高い単体金属を用いることができる。また、これらの金属元素の1つまたは複数を主成分とし、耐湿性の向上または熱伝導率の調整等のために1つまたは複数の他の元素を添加した合金を用いることができる。具体的には、Al−Cr、Al−Ti、Au−Pd、Au−Cr、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Ag−Ru−Au、またはCu−Siといった合金を用いることができる。特にAg合金は、熱伝導率が大きく、光の透過率も高いため、反射層125の材料として好ましい。
反射層125の屈折率n3及び消衰係数k3は、第1の情報層12の透過率をより高くするため、n3≦2.0、且つ1.0≦k3を満たすことが好ましく、0.1≦n3≦1.0、且つ1.5≦k3≦4.0を満たすことがより好ましい。
第1の情報層12の透過率Tc及びTaをできるだけ高くするため、反射層125の膜厚d3は3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。反射層125の膜厚d3を3nm以上とすることにより、十分な熱拡散機能が得られ、且つ第1の情報層12の十分な反射率が得られる。また、反射層125の膜厚d3を15nm以下とすることにより、第1の情報層12の十分な透過率が得られる。
透過率調整層126の屈折率n2、消衰係数k2と、反射層125の屈折率n3、消衰係数k3との間において、1.0≦(n2−n3)≦3.0または1.0≦(k3−k2)≦4.0を満たすことが好ましく、2.0≦(n2−n3)≦3.0または1.5≦(k3−k2)≦3.0を満たすことがより好ましい。この関係を満たす場合には、反射層125に対して屈折率が大きく、且つ消衰係数が小さい透過率調整層126に光が閉じ込められて、光の干渉効果が大きくなるため、第1の情報層12の透過率を高めることができる。例えば、透過率調整層126としてTiO、反射層125としてAg合金を用いた場合、波長405nmにおいて、n2=2.7、k2=0.0、n3=0.2、k3=2.0であり、(n2−n3)=2.5、(k3−k2)=2.0となり、上記関係を満たすことができる。
光学分離層13は、第1の情報層12と第2の情報層14とを光学的に分離する機能に加え、第1の情報層12のフォーカス位置を区別する機能も有している。光学分離層13の厚さは、対物レンズの開口数NAとレーザビーム2の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上であることが必要である。焦光点の強度の基準を無収差の場合の80%を仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)}で近似できる。λ=400nm、NA=0.6の時、ΔZ=0.556μmとなり、±0.6μm以内は焦点深度内となる。そのため、この場合には、光学分離層13の厚さは1.2μm以上であることが必要である。第1の情報層12、との間の距離は、対物レンズを用いてレーザビーム2を集光可能な範囲となるようにすることが望ましい。従って、光学分離層13の厚さの合計は、対物レンズが許容できる公差内(例えば50μm以下)にすることが好ましい。
光学分離層13において、レーザビーム2の入射側の表面には、必要に応じてレーザビーム2を導くための案内溝が形成されていてもよい。
第1の情報層12の透過率Tc及びTaは、記録再生の際に必要なレーザ光量を、レーザビーム2の入射側から見て第1の情報層12の反対側にある情報層に到達させるため、40<Tc1、且つ40<Ta1を満たすことが好ましく、43<Tc1、且つ43<Ta1を満たすことがより好ましい。
第1の情報層12の透過率Tc及びTaは、−5≦(Tc1−Ta1)≦5を満たすことが好ましく、−3≦(Tc1−Ta1)≦3を満たすことがより好ましい。Tc1、Ta1がこの条件を満たすことにより、第2の情報層14の記録再生の際、第1の情報層12の記録層123の状態による透過率の変化の影響が小さく、良好な記録再生特性が得られる。
第1の情報層12の反射率Rc1及びRa1は、Ra1<Rc1を満たすことが好ましい。このことにより、情報が記録されていない初期の状態で反射率が高く、安定に記録再生動作を行うことができる。また、反射率差(Rc1−Ra1)を大きくして良好な記録再生特性が得られるように、Rc1、Ra1は、0.1≦Ra1≦5または4≦Rc1≦15を満たすことが好ましく、0.5≦Ra1≦3または4≦Rc1≦10を満たすことがより好ましい。
次に、第2の情報層14の構成について詳細に説明する。第2の情報層14は、レーザビーム2の入射側から順に配置された下側保護層141、記録層142、上側保護層143及び反射層144にて形成されている。第2の情報層14は、第1の基板11、第1の情報層12及び光学分離層13を透過したレーザビーム2によって記録再生が行われる。
下側保護層141は、下側保護層121と同様に、誘電体材料にて形成される。この下側保護層141は、記録層142の酸化、腐食、変形を防止する働きと、光学距離を調整して記録層142の光吸収効率を高める働きと、及び記録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きくする働きと、を有する。下側保護層141には、例えばSiO(xは、0.5〜2.5)、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、Te−O等の酸化物を用いることができる。また、C−N、Si−N、Al−N、Ti−N、Ta−N、Zr−N、Ge−N、Cr−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N等の窒化物を用いることもできる。また、ZnS等の硫化物やSiC等の炭化物を用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。下側保護層121の場合と同様に、ZnS−SiOは下側保護層141の材料として特に優れている。
下側保護層141の膜厚は、下側保護層121と同様に、例えばマトリクス法に基づく計算により、記録層142の結晶相である場合とそれが非晶質相である場合の反射光量の変化が大きく、且つ第1の情報層12の透過率が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
上側保護層143には、上側保護層124の場合と同様に、光学距離を調整して記録層142の光吸収率を高める働きと、及び記録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きくする働きと、を有する。上側保護層143には、上側保護層124の場合と同様に、例えばSiO、Al、Bi、Nb、TiO、Ta、ZrO、ZnO等の酸化物を用いることができる。また、C−N、Si−N、Al−N、Ti−N、Ta−N、Zr−N、Ge−N、Cr−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−N、Nb−N等の窒化物を用いることもできる。また、ZnS等の硫化物、SiC等の炭化物またはCを用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。上側保護層143に窒化物を用いる場合には、上側保護層124の場合と同様に、記録層123の結晶化を促進する働きがある。この場合、Ge−Nを含む材料は反応性スパッタリングで形成しやすく、機械特性・耐湿性に優れている。この中でも、特にGe−Si−N、Ge−Cr−Nといった複合窒化物が好ましい。また、ZnS−SiOも、上側保護層124の場合と同様に、上側保護層143としても優れた材料である。
記録層142と上側保護層143との間、もしくは記録層142と下側保護層141との間の界面に界面層を配置してもよい。この場合、界面層には、下側界面層122について説明した材料を用いることができる。また、下側界面層122と同様の理由により、膜厚は1nm〜10nm(より好ましくは2nm〜5nm)の範囲内であることが好ましい。
本実施の形態における記録層142の材料は、記録層123の場合と同様に、レーザビーム2の照射によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料からなる。記録層142は、記録層123の場合と同様に、例えばTe、InまたはSe等を主成分とする相変化材料である。よく知られた相変化材料の主成分としては、Te−Sb−Ge、Te−Ge、Te−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Sb−Se、Sb−Te、Sb−Se−Te、In−Te、In−Se、In−Se−Tl、In−Sb、In−Sb−Se、In−Se−Te等があげられる。なかでも記録消去の繰り返し特性が良好な材料及びその材料組成を実験によって調べたところ、Ge、Sb、Teの3元素系を主成分とした構成が好ましいことがわかった。それぞれの元素の原子量比をGeTeと表すと、0.1≦x≦0.6、y≦0.5、0.4≦z≦0.65(ただし、x+y+z=1)で表される組成が特に優れている。
記録層142の膜厚は、第2の情報層14の記録感度を高くするため、6nm〜20nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内においても、記録層142が厚い場合には熱の面内方向への拡散による隣接領域への熱的影響が大きくなり、記録層142が薄い場合には第2の情報層14の反射率が小さくなる。従って、記録層142の膜厚は、9nm〜15nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層144は、反射層125の場合と同様に、記録層142に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、反射層144は、反射層125の場合と同様に、記録層142で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層142を非晶質化し易くするという熱的な機能も有する。さらに、反射層144は、反射層125の場合と同様に、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
反射層144の材料には、反射層125の場合と同様に、例えばAg、Au、CuまたはAl等熱伝導率の高い単体金属を用いることができる。具体的には、Al−Cr、Al−Ti、Au−Pd、Au−Cr、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Ag−Ru−Au、またはCu−Siといった合金を用いることができる。特にAg合金は、熱伝導率が大きく、光の透過率も高いため、反射層144の材料として好ましい。第2の情報層14は、レーザビーム入射側からみて最も奥に位置する情報層である。従って、第2の情報層14は、高い透過率を必要としないため、反射層144の膜厚は、熱拡散機能が十分となる30nm以上であることが好ましい。この範囲内においても、反射層144が200nmより厚い場合には、その熱拡散機能が大きくなりすぎて第2の情報層14の記録感度低下する。従って、反射層144の膜厚は、30nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。
上側保護層143と反射層144との間の界面に金属層を配置してもよい。この場合、金属層には、反射層144について説明した材料を用いることができる。また、膜厚は3nm〜100nm(より好ましくは10nm〜50nm)の範囲内であることが好ましい。
(実施の形態2)
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法の一実施形態について説明する。本実施の形態においては、実施の形態1で説明した光ディスク1(図2参照。)を製造する方法について説明する。
まず、第2の基板15上に第2の情報層14を形成する。具体的には、まず第2の基板15(厚さが例えば1100μm)を用意し、成膜装置内に配置する。
続いて、第2の基板15上に、反射層144を成膜する。反射層144は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(酸素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも一つのガス)との混合ガス雰囲気中で、反射層144を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。この時、第2の基板15にレーザビーム2を導くための案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側の面に反射層144を成膜する。
続いて、反射層144上に、上側保護層143を成膜する。上側保護層143は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、上側保護層143を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、上側保護層143上に、記録層142を成膜する。また、必要に応じて、上側保護層143と記録層142の間に界面層を成膜する。
記録層142は、その組成に応じて、Te、InまたはSe等を主成分とする材料からなるスパッタリングターゲットを、一つの電源を用いて、スパッタリングすることによって形成できる。
スパッタリングの雰囲気ガス(スパッタリングガス)には、Arガス、Krガス、Arガスと反応ガスとの混合ガス、またはKrガスと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。
実施の形態1で説明したように、記録層142の膜厚は6nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、9nm〜15nmの範囲内であることがより好ましい。記録層142の成膜レートは、電源の投入パワーで制御できる。成膜レートを下げすぎた場合には、成膜時間が長くなることに加え、雰囲気中のガスが必要以上に記録層中に混入してしまう。また、成膜レートを上げすぎた場合には、成膜時間を短くできるが、膜厚を正確に制御することが難しくなる。従って、記録層142の成膜レートは、0.1nm/秒〜6nm/秒の範囲内であることが好ましい。
続いて、記録層142上に、下側保護層141を成膜する。下側保護層141は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、下側保護層141を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。また、必要に応じて、記録層142と下側保護層141の間に界面層を成膜する。
このようにして、第2の情報層14を形成する。続いて、第2の情報層14の下側保護層141上に光学分離層13を形成する。光学分離層13は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂を下側保護層141上に塗布してスピンコートした後、樹脂を硬化させることによって形成できる。なお、光学分離層13がレーザビーム2の案内溝を備える場合には、溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂に密着させた後、樹脂を硬化させ、その後、転写用基板(型)をはがすことによって案内溝を形成できる。
なお、下側保護層141を成膜した後、または光学分離層13を形成した後、必要に応じて、記録層142の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。記録層142の結晶化は、レーザビーム2を照射することによって行うことができる。
続いて、光学分離層13上に第1の情報層12を形成する。具体的には、まず、第2の基板15上に第2の情報層14及び光学分離層13が形成された状態のもの(基材)を成膜装置内に配置し、光学分離層13上に低屈折率層127を成膜する。低屈折率層127は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、低屈折率層127を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、低屈折率層127上に、透過率調整層126を成膜する。透過率調整層126は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、透過率調整層126を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、透過率調整層126上に、反射層125を成膜する。反射層125は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、反射層125を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、反射層125上に、上側保護層124を成膜する。上側保護層124は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、上側保護層124を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、上側保護層124上に、記録層123を成膜する。記録層123は、その組成に応じて、Te、InまたはSe等を主成分とする材料からなるスパッタリングターゲットを、一つの電源を用いて、スパッタリングすることによって形成できる。
スパッタリングの雰囲気ガスには、Arガス、Krガス、Arガスと反応ガスとの混合ガス、またはKrガスと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。
実施の形態1で説明したように、記録層123の膜厚は3nm〜9nmの範囲内であることが好ましく、4nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。記録層123の成膜レートは、電源の投入パワーで制御できる。成膜レートを下げすぎた場合には、成膜時間が長くなることに加え、雰囲気中のガスが必要以上に記録層123中に混入してしまう。また、成膜レートを上げすぎた場合には、成膜時間を短くできるが、膜厚を正確に制御することが難しくなる。従って、記録層123の成膜レートは、0.1nm/秒〜6nm/秒の範囲内であることが好ましい。
続いて、記録層123上に、必要に応じて下側界面層122を成膜する。下側界面層122は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、下側界面層122を構成する元素を含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、記録層123上に、または下側界面層122上に、下側保護層121を成膜する。下側保護層121は、上側保護層124と同様の方法で形成できる。これらの保護層を形成する際に用いられるスパッタリングターゲットの組成は、保護層の組成及びスパッタリングガスに応じて選択される。即ち、組成が同一のスパッタリングターゲットを用いてこれらの保護層を形成する場合もあるし、組成が異なるスパッタリングターゲットを用いてこれらの保護層を形成する場合もある。
なお、上側保護層124と反射層125との間、及び反射層125と透過率調整層126との間に、界面層を成膜してもよい。この場合の界面層は、下側界面層122と同様の方法で形成できる(以下の界面層についても同様である。)。
最後に、下側保護層121上に第1の基板11を形成する。第1の基板11は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂を下側保護層121上に塗布してスピンコートした後、樹脂を硬化させることによって形成できる。また、第1の基板11には、透明な円盤状のポリカーボネートまたはアモルファスポリオレフィンまたはPMMA等の樹脂またはガラス等の基板を用いてもよい。この場合、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を下側保護層121上に塗布して、基板を下側保護層121に密着させてスピンコートした後、樹脂を硬化させることによって形成できる。
なお、下側保護層121を成膜した後、または第1の基板11を形成した後、必要に応じて、記録層123の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。記録層123の結晶化は、レーザビーム2を照射することによって行うことができる。以上のようにして、光ディスク1を製造できる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1で説明した光ディスク1に対して情報の記録再生を行う方法について説明する。
まず、本実施の形態における記録再生方法に用いられる記録再生装置について説明する。図3には、本実施の形態の記録再生方法に用いられる記録再生装置3の一部の構成が、模式的に示されている。記録再生装置3は、光ディスク1を回転させるためのスピンドルモータ31と、半導体レーザ33を備える光学ヘッド32と、半導体レーザ33から出射されるレーザビーム2を集光する対物レンズ34とを含んでいる。光ディスク1は実施の形態1で説明した光学的情報記録媒体であり、二つの情報層(第1の情報層12、第2の情報層14)を備えている。なお、第1の情報層12は記録層123を、第2の情報層14は記録層142をそれぞれ備えている。対物レンズ34は、レーザビーム2を情報層(第1の情報層12の場合は記録層123、第2の情報層14の場合は記録層142)上に集光させる。
光ディスク1(第1の情報層12または第2の情報層14)への情報の記録、消去、及び上書き記録は、レーザビーム2のパワーを、高パワーのピークパワー(Pp(mW))と低パワーのバイアスパワー(Pb(mW))とに変調させることによって行う。ピークパワーのレーザビーム2を照射することによって、記録層123または記録層142の局所的な一部分に非晶質相が形成され、その非晶質相が記録マークとなる。記録マーク間では、バイアスパワーのパワーのレーザビーム2、結晶相(消去部分)が形成される。なお、ピークパワーのレーザビーム2を照射する場合には、パルスの列で形成する、いわゆるマルチパルスとするのが一般的である。なお、マルチパルスはピークパワー、バイアスパワーのパワーレベルだけで変調されてもよいし、0mW〜ピークパワーの範囲のパワーレベルによって変調されてもよい。
また、ピークパワー、バイアスパワーのいずれのパワーレベルよりも低く、そのパワーレベルでのレーザビーム2の照射によって記録マークの光学的な状態が影響を受けず、且つ光ディスク1から記録マーク再生のための十分な反射光量が得られるパワーを再生パワー(Pr(mW))とし、再生パワーのレーザビーム2を照射することによって得られる光ディスク1からの信号を検出器で読み取ることにより、情報信号の再生が行われる。
対物レンズ34の開口数(NA)は、レーザビームのスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.1の範囲内(より好ましくは、0.6〜1.0の範囲内)であることが好ましい。レーザビーム2の波長は、450nm以下(より好ましくは、350nm〜450nmの範囲内)であることが好ましい。情報を記録する際の光ディスク1の線速度は、再生光による結晶化が起こりにくく、且つ十分な消去率が得られる3m/秒〜20m/秒の範囲内(より好ましくは、4m/秒〜15m/秒の範囲内)であることが好ましい。
第1の情報層12に対して記録を行う際には、レーザビーム2の焦点を記録層123に合わせ、第1の基板11を透過したレーザビーム2によって記録層123に情報を記録する。再生は、記録層123によって反射され、第1の基板11を透過してきたレーザビーム2を用いて行う。第2の情報層14に対して記録を行う際には、レーザビーム2の焦点を記録層142に合わせ、第1の基板11、第1の情報層12、及び光学分離層13を透過したレーザビーム2によって情報を記録する。再生は、記録層142によって反射され、光学分離層13、第1の情報層12、及び第1の情報層12を透過してきたレーザビーム2を用いて行う。
なお、第2の基板15、光学分離層13にレーザビーム2を導くための案内溝が形成されている場合、情報は、レーザビーム2の入射側から近い方の溝面(グルーブ)に行われてもよいし、遠い方の溝面(ランド)に行われてもよい。グルーブとランドの両方に情報を記録してもよい。
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
実施例1では、低屈折率層を設けた場合の透過率調整層の成膜レートと、低屈折率層を設けない場合の透過率調整層の成膜レートとを比較した。本実施例における成膜レートの測定は以下のようにして行った。
低屈折率層を設けるサンプル及び低屈折率層を設けないサンプルを、それぞれ5つずつ作製した。低屈折率層を設けるサンプル(サンプル1−a,1−b,1−c,1−d,1−e)は、レート測定用基板を用意し、その基板上に、低屈折率層としてSiO(厚さ:10nm)、透過率調整層としてTiO(厚さ:20nm)を順次スパッタリングによって積層することにより形成した。低屈折率層を設けないサンプル(サンプル1−f,1−g,1−h,1−i,1−j)は、レート測定用基板を用意し、その基板上に透過率調整層としてTiO(厚さ:20nm)をスパッタリングによって積層した。各サンプルの膜厚を測定することにより、TiOの成膜レート安定性を検討した。
低屈折率層を設ける場合と設けない場合の膜厚測定結果を表1に示す。なお、TiOの成膜レートは22.0Å/sec付近であるため、成膜レートが22.0Å/secから±1%以内であれば○、±3%以内であれば△、±3%以上であれば×と判定した。

この結果、低屈折率層を設けたサンプル1−a、1−b、1−c、1−d、1−eの場合には、TiOの成膜レートは安定でばらつきが小さく、十分再現性の高い成膜を行うことができた。一方、低屈折率層を設けないサンプル1−f、1−g、1−h、1−i、1−jの場合には、TiOの成膜レートは不安定でばらつきが大きいことがわかった。また、透過率調整層がTiO、低屈折率層がSiOでない場合、例えば透過率調整層がNb、低屈折率層がAlの場合においても同様の結果が認められた。以上の結果から、透過率調整層の成膜レートを安定させるために低屈折率層を設ける構成が有効であることが確認された。
【実施例2】
実施例2では、光ディスク1(図2参照。)の第1の情報層12を作製し、低屈折率層127の屈折率n1及び膜厚d1と第1の情報層12の反射率(Rc1,Rc2)との関係を調べた。具体的には、低屈折率層127の材料、膜厚が異なる第1の情報層12を作製し、第1の情報層12上にさらに第1の基板11を形成したサンプルを作製した。作製したサンプルについて、第1の情報層12の反射率を測定した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板としてポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1100μm、屈折率1.62)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に低屈折率層127、透過率調整層126としてTiO層(厚さ:20nm)、反射層125として、Ag−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、上側保護層124としてZr−Si−Cr−O層(厚さ:10nm)、記録層123としてGeSbTe層(厚さ:6nm)、下側界面層122としてZr−Si−Cr−O層(厚さ:5nm)、下側保護層121としてZnS−SiO層(厚さ:40nm、ZnS:80mol%、SiO:20mol%)を順次スパッタリング法によって積層した。低屈折率層127としては、SiO層、Al層、ZrO層、ZnS−SiO層を用いた。最後に、紫外線硬化型樹脂を下側保護層121上に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ90μm)を下側保護層121に密着させてスピンコートした後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、第1の基板11を形成した。以上のようにして、低屈折率層127の材料及び膜厚が異なる複数の反射率測定用サンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、最初に記録層123が非晶質相である場合の反射率Ra1(%)を測定した。その後、記録層123を結晶化させる初期化工程を行い、記録層123が結晶相である場合の反射率Rc1(%)を測定した。反射率の測定には、図3に示した記録再生装置3を用いた。具体的には、スピンドルモータ31でサンプルを回転させ、波長405nmのレーザビーム2を第1の情報層12の記録層123に集光して照射し、その反射光量を測定することによって行った。
表2に、各サンプルにおける第1の情報層12の反射率(Rc1,Ra1)の測定結果を示す。さらに、表2には、各サンプルにおける低屈折率層の材料、波長405nmのレーザビームに対する低屈折率層127の屈折率n1と光学分離層13の屈折率n4との差の絶対値(|n1−n4|)も示されている。なお、SiO層の波長405nmにおける屈折率n1は1.49、Al層の波長405nmにおける屈折率n1は1.70、ZrO層の波長405nmにおける屈折率n1は2.12、ZnS−SiO層の波長405nmにおける屈折率n1は2.34であった。また、波長405nmにおける透過率調整層126の屈折率n4は1.62であった。さらに、判定については、記録層123が結晶相である場合の第1の情報層12の基板の鏡面部における反射率Rc1が4≦Rc1≦15の範囲内であり、記録層123が非晶質相である場合の第1の情報層12の基板の鏡面部における反射率Ra1が0.1≦Ra1≦5の範囲内であれば○、いずれか一方が範囲外であれば△とした。

この結果、低屈折率層127の材料がSiOで、膜厚d1が1nm〜30nmのサンプル2−a、2−b、2−c、2−d、2−e、2−fで反射率が4≦Rc1≦15、0.1≦Ra1≦5を満たし、より好ましい反射率が得られることがわかった。
また、低屈折率層127の材料がAlで、膜厚d1が1nm〜30nmのサンプル2−g、2−h、2−i、2−j、2−k、2−lで反射率が4≦Rc1≦15、0.1≦Ra1≦5を満たし、より好ましい反射率が得られることがわかった。
また、低屈折率層127の材料がZrOで、膜厚d1が1nm〜25nmのサンプル2−m、2−n、2−o、2−p、2−qで反射率が4≦Rc1≦15、0.1≦Ra1≦5を満たし、より好ましい反射率が得られることがわかった。また、膜厚d1が30nmのサンプル2−rでは、反射率Ra1が5%より大きくなった。
また、低屈折率層127の材料がZnS−SiOで、膜厚d1が1nm〜10nmのサンプル2−s、2−t、2−uで反射率が4≦Rc1≦15、0.1≦Ra1≦5を満たし、より好ましい反射率が得られることがわかった。また、膜厚d1が20〜30nmのサンプル2−v、2−w、2−xでは、反射率Ra1が5%より大きくなった。
また、表2に示すように、低屈折率層127に屈折率n1が大きな材料を用いると、Rc1とRa1が大きくなることがわかった。
以上の結果から、低屈折率層127を全体の成膜タクトを低下させない厚み範囲(1nm〜25nm)で形成した場合に、より好ましい反射率特性(4≦Rc1≦15、0.1≦Ra1≦5)を得るためには、低屈折率層127の屈折率n1と光学分離層13の屈折率n4とが|n1−n4|≦0.5の関係を満たすようにすることが好ましいことが確認された。また、|n1−n4|の値をさらに小さくすれば、膜厚d1が25nmを超えた場合であっても良好な反射率特性が得られることも確認された。
【産業上の利用の可能性】
本発明の光学的情報記録媒体及びその製造方法によれば、情報層が複数設けられた光学的情報記録媒体に含まれる透過率調整層の成膜レートのばらつきを抑制できるので、透過率調整層の安定成膜が可能となる。これにより、複数の情報層を有しながらも記録感度が良好で、十分なC/N比の得られる光学的情報記録媒体が提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた複数の情報層と、互いに隣接する情報層間に設けられた光学分離層と、を含み、レーザビームの照射により情報の記録または再生が行なわれる光学的情報記録媒体であって、
前記複数の情報層のうち最もレーザビーム入射側に配置された情報層を第1の情報層とし、前記第1の情報層に接して配置された光学分離層を第1の光学分離層とすると、前記第1の情報層は、光学的に互いに異なる二つの状態間を変化しうる記録層と、前記第1の情報層の透過率を調整する透過率調整層と、前記透過率調整層と前記第1の光学分離層との間に配置された低屈折率層と、を含むことを特徴とする光学的情報記録媒体。
【請求項2】
前記レーザビームに対する前記低屈折率層の屈折率をn1、前記第1の光学分離層の屈折率をn4とすると、n1及びn4が、
|n1−n4|≦0.5
の関係を満たす請求の範囲1に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項3】
前記n1及びn4が、
|n1−n4|≦0.1
の関係を満たす請求の範囲2に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1の情報層に含まれる前記記録層が、結晶状態と非晶質状態との間を変化しうる材料にて形成されており、
前記記録層が結晶状態であるときの前記レーザビームに対する前記第1の情報層の透過率をTc1(%)、前記記録層が非晶質状態であるときの前記レーザビームに対する前記第1の情報層の透過率をTa1(%)とすると、Tc1及びTa1が、
40<Tc1 且つ 40<Ta1
の関係を満たす請求の範囲1に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1の情報層が、前記記録層と前記透過率調整層との間に配置された反射層をさらに含み、
前記レーザビームに対する前記透過率調整層の屈折率をn2、消衰係数をk2とし、前記レーザビームに対する前記反射層の屈折率をn3、消衰係数をk3とすると、
1.0≦(n2−n3)≦3.0
及び
1.0≦(k3−k2)≦4.0
のうち少なくとも何れか一方の関係が成立する請求の範囲1に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項6】
前記低屈折率層は、SiO、Al、LaF、ZrSiO及びZrOから選ばれる少なくとも一つを含む請求の範囲1に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項7】
前記低屈折率層の膜厚が1nm以上25nm以下である請求の範囲1に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項8】
光学分離層を介して互いに積層された第1の情報層及び第2の情報層を少なくとも含む光学的情報記録媒体の製造方法であって、
(a)前記第2の情報層を形成する工程と、
(b)前記第2の情報層上に前記光学分離層を形成する工程と、
(c)前記光学分離層上に第1の情報層を形成する工程と、
を含み、
前記(c)の工程には、前記光学分離層上に低屈折率層を形成する工程と、前記低屈折率層上に透過率調整層を形成する工程と、記録層を形成する工程と、が含まれることを特徴とする光学的情報記録媒体の製造方法。
【請求項9】
情報の記録または再生の際に用いられるレーザビームに対し、前記(c)の工程にて形成される前記低屈折率層の屈折率をn1、前記光学分離層の屈折率をn4とすると、n1及びn4が、
|n1−n4|≦0.5
の関係を満たすように前記低屈折率層及び光学分離層が形成される請求の範囲8に記載の光学的情報記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記(c)の工程において、前記低屈折率層は、SiO、Al、LaF、ZrSiO及びZrOから選ばれる少なくとも一つを含む材料にて形成される請求の範囲8に記載の光学的情報記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記(c)の工程において、前記低屈折率層は、1nm以上25nm以下の膜厚に形成される請求の範囲8に記載の光学的情報記録媒体の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/034390
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【発行日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542854(P2004−542854)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012937
【国際出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】