光学的情報読取装置
【課題】カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合であっても、ノイズを適切に除去することができ、且つ明色領域及び暗色領域を正確に認識しうる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光学的情報読取装置は、第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段を備えており、センサ駆動回路は、モード切替手段によって第1モードに設定された場合には、受光信号に与える駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、第2モードに設定された場合には、第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更している。受光センサは、センサ駆動回路から第1の周波数の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数に対応する速度で出力し、第2の周波数の駆動信号が出力される場合には、反射光に応じた受光信号を、第2の周波数に対応する速度で出力している。
【解決手段】光学的情報読取装置は、第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段を備えており、センサ駆動回路は、モード切替手段によって第1モードに設定された場合には、受光信号に与える駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、第2モードに設定された場合には、第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更している。受光センサは、センサ駆動回路から第1の周波数の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数に対応する速度で出力し、第2の周波数の駆動信号が出力される場合には、反射光に応じた受光信号を、第2の周波数に対応する速度で出力している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーコードリーダ等の光学的情報読取装置では、一般的に、受光素子を複数配列してなる受光センサ(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ等)が用いられ、この受光センサによってバーコード等の情報コードから反射光を受光すると共に、情報コードの像に応じた受光信号(電気信号)を出力している。そして、その出力された受光信号を二値化回路によって二値化し、その二値データを解読手段によって解読している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−293327公報
【特許文献2】特開平10−320496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光学的情報読取装置では、受光信号に含まれるノイズを如何に除去するかが問題となっている。受光信号に含まれるノイズを除去する技術としては、例えば特許文献1、2のようなものがあり、特許文献1では、ローパスフィルタ等を用いて受光信号から高周波ノイズ成分を除去する技術が開示されている。また、特許文献2では、ローパスフィルタを用いたときの問題点を解消しようとする技術が開示されている。
【0005】
一方、ノイズ除去の方法としては、特定色の照明光を照射する照明光源を設けると共に、この特定色に対応する周波数帯の光を透過させ、他の周波数帯の光を遮断する光学フィルタを併用する構成なども考えられる。この構成によれば、照明光とは周波数が大きく異なる外乱光を良好に除去することができ、受光信号に外乱光に起因するノイズが含まれることを効果的に抑制することができる。
【0006】
また、上記ローパスフィルタを用いた構成も、光学フィルタを用いた構成も、それぞれ特有の利点を有しており、これらを併用する構成とすれば、より効果的なノイズ除去が期待できる。しかしながら、読取対象となる情報コードの表示態様は様々なケースが考えられ、場合によっては、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、ノイズ除去が十分に行われない場合があり得る。例えば、近年の光学的情報読取装置では、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とするニーズが増加しており、このようにカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、カラー表示装置特有の事情から、ノイズ除去が適切になされない場合があった。
【0007】
例えば、赤色の照明光を照射する照明光源を用い、赤色に対応する所定周波数帯以外の光を抑制する光学フィルタを用いる場合、読取対象が紙媒体等に付された明暗コード(例えばバーコード)であれば、明色領域からの赤色の反射光を選択的に透過させることができ、赤色以外の外乱光を効果的に除去することができるため、明色領域と暗色領域のパターンを適切に反映した波形を得ることができる。しかしながら、液晶表示装置などのカラー表示装置に表示される明暗コード(例えばバーコード)を撮像する場合、明色領域から光学フィルタでの透過対象色(ここでは赤色)以外の光が発生するため、明色領域の一部の領域からの光がカットされてしまうという問題があった。
【0008】
例えば、図10のようにR画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)が組み合わされて一つの表示画素Sa(ピクセル)が構成され、このような表示画素Saが複数配列されてなる液晶表示装置の場合、ある表示画素Saで白色を表示するときには、実際には、R画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)をそれぞれ発光させることで視覚的に白色と認識しうる光を発生させている。このような液晶表示装置に表示される明暗コードを撮像する場合、図11(a)のように、R画素Raについては当該R画素Raからの発生する赤色光が光学フィルタFを通過するため、明色領域として認識されることとなる。しかしながら、図11(a)中段、下段に示すように、G画素Ga、B画素Baについては、これら画素からの緑色光、青色光が光学フィルタFによって抑制されるため、受光センサでの受光量が抑えられてしまい、本来明色領域として認識されるべき領域であるはずなのに、暗色領域として誤認識されてしまう。なお、図11(a)上段は、液晶表示装置に表示されるバーコードを例示するものである。また、図11(a)中段は、このようなバーコードをラインセンサによって撮像するときの撮像位置(一点鎖線Lの位置)の一部(暗色バーB1、明色バーW1、暗色バーB2の部分)における表示画素の配列を例示している。また、図11(a)下段は、図11(a)中段の各表示画素Saからの光を受光することで生成される受光信号を概念的に示している。
【0009】
図11(b)では、図11(a)下段の受光信号を二値化した信号を示しており、この二値化信号では、本来的には図11(c)のように一連の明色領域として特定されるべきエリアAR(明色バーW1に相当するエリア)において、一部が暗色領域を示す値(この例ではLレベル)となってしまっている。このような誤認識がなされると、情報コードの各明色領域のサイズを適切に認識できなくなり、情報コード全体のデコード不良を招いてしまうことになる。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードをいずれも読み取ることができ、カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合であっても、ノイズを適切に除去することができ、且つ明色領域及び暗色領域を正確に認識しうる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、前記受光センサに対し、設定された周波数の駆動信号を出力するセンサ駆動回路と、前記受光センサから出力された前記受光信号が入力される構成をなし、規定のカットオフ周波数の以上の周波数の信号を抑制するローパスフィルタ回路と、前記ローパスフィルタ回路から出力される前記受光信号を二値化する二値化手段と、前記二値化手段にて生成された二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段と、を備えている。
そして、前記センサ駆動回路は、前記モード切替手段によって前記第1モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、前記第2モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更する構成をなし、前記受光センサは、前記センサ駆動回路から前記第1の周波数の前記駆動信号が出力される場合に、前記読取対象コードからの前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第1の周波数に対応する速度で出力し、前記第2の周波数の前記駆動信号が出力される場合には、前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第2の周波数に対応する速度で出力する構成をなしている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記カラー表示装置が、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列してなるものであることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記照明手段が、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、前記光学フィルタが、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制することを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記カラー表示装置が、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記第1モード及び前記第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段が設けられ、前記モード切替手段が、前記モード順序規定手段によって規定された順序に従い、前記第1モード及び前記第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われた前記デコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更することを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記第1モード又は前記第2モードにて行われた前記デコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段が設けられ、前記モード順序規定手段が、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1モード及び前記第2モードの内、前記デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタが設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタを介して受光センサによって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部画素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素)からの光が光学フィルタによって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本発明は、第1モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、第2モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更している。そして、第1の周波数の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数に対応する速度で出力し、第2の周波数の駆動信号が出力される場合には、第2の周波数に対応する速度で出力している。
このようにすると、カラー表示装置に表示される情報コードが読取対象とされ、明色パターン領域の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれるような場合に、第2の周波数で受光センサを駆動して、明色パターン領域の波形(明色を示す正常信号と暗色を示すノイズとを含んだ明暗交互信号の波形)の周波数を相対的に高めることができる。これにより、受光信号をローパスフィルタ回路に入力させたときに、明色パターン領域の信号の減衰度合いが大きくなり、当該明色パターン領域の信号に含まれる暗色を示すノイズを効果的に除去することができる。
一方、必要に応じて第1の周波数で受光センサを駆動することができるため、紙媒体に付された情報コードを読み取る場合等、明色パターン領域の誤認識がなされにくい場合(即ち、明色パターン領域の受光信号に暗色を示すノイズが含まれにくい場合)には、駆動周波数を低く抑え、より細かな読み取りに有利な設定とすることができる。
【0018】
請求項2の発明では、読み取りの対象となるカラー表示装置が、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列した構成をなしている。本発明によれば、このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置を読取対象物として当該カラー表示装置に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0019】
請求項3の発明は、照明手段が、赤色の照明光を照射する構成をなし、光学フィルタが、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制している。このようにすると、物体に付された情報コードを読取対象コードとして読み取る場合に、照明光が明色領域にて反射した光(赤色光)を光学フィルタにて選択的に透過させることができ、外乱光を良好に除去できる。一方、カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合、明色パターンを表示する領域においてG画素、B画素からの光が光学フィルタによって抑制され、明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。しかしながら、必要に応じてセンサ駆動信号の周波数を高めることができるため、受光信号の周波数を相対的に高めることができ、明色パターン領域の信号波形に暗色を示すノイズ(G画素、B画素に起因するノイズ)が含まれるような場合に、明色パターン領域の信号のローパスフィルタ回路での減衰度合いを大きくすることができる。従って、明色パターン領域の信号波形に暗色を示すノイズ(G画素、B画素に起因するノイズ)が含まれるような場合であっても、当該ノイズを効果的に除去することができる。
【0020】
請求項4の発明では、携帯端末に設けられたカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとしている。このようにすると、様々な場所で広く用いられる携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【0021】
請求項5の発明では、第1モード及び第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段が設けられている。そして、モード切替手段は、モード順序規定手段によって規定された順序に従い、第1モード及び第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更している。このようにすると、一方のモードでデコード処理が失敗した場合に、迅速且つスムーズに他方のモードに切り替えて、当該他方のモードでデコード処理を再度実行することができ、ユーザに特別な負担を強いることなくデコードの成功確率を効果的に高めることができる。
【0022】
請求項6の発明では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段が設けられ、記憶手段の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定している。デコード処理が前回成功したモードは他方のモードと比較してデコード処理が成功する可能性が高く、このモードを優先的に設定する構成とすれば、デコード処理の成功確率を効果的に高めることができ、読取処理の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置を例示するブロック図である。
【図2】図2は、図1の光学的情報読取装置にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図3】図3(a)は、第1モードのときに出力されるセンサ駆動信号を例示する説明図であり、図3(b)は、第2モードのときに出力されるセンサ駆動信号を例示する説明図である。
【図4】図4は、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合を説明する説明図である。
【図5】図5は、上段にローパスフィルタ回路で変換された明色領域の波形を概念的に示し、下段にその二値データを概念的に示しており、(a)は、第1の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものであり、(b)は、第2の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものである。
【図6】図6は、液晶表示装置に表示されるバーコードを撮像したときの受光信号を例示する波形図であり、(a)は、第1の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものであり、(b)は、第2の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものである。
【図7】図7(a)は、図6(a)の受光信号をローパスフィルタ回路で変換した信号を示す波形図であり、図7(b)は、図7(a)の信号を二値化回路にて二値化した信号を示す波形図である。
【図8】図8(a)は、図6(b)の受光信号をローパスフィルタ回路で変換した信号を示す波形図であり、図8(b)は、図8(a)の信号を二値化回路にて二値化した信号を示す波形図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る光学的情報読取装置にて行われる読取処理を例示するフローチャートである。
【図10】図10は、従来から用いられているカラー表示装置の画素構成を概念的に説明する説明図である。
【図11】図11は、カラー液晶表示装置に表示されるバーコードを読み取るときの問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図面を参照しつつ説明する。
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図であり、まず、図1等を参照して本実施形態に係る光学的情報読取装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、バーコード等の情報コードBを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、図示しないケースによって外郭が構成され、このケース内に各種電子部品が収容された構成をなしている。
【0025】
この光学的情報読取装置1は、主に、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示装置46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池49等の電源系と、から構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいはケース(図示略)内に内装されている。
【0026】
光学系は、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等から構成されている。照明光源20は、「照明手段」の一例に相当するものであり、例えば、赤色のLEDと、このLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等を備え、赤色の照明光Lfを照射する構成をなしている。本実施形態では、受光センサ26を挟んだ両側に照明光源20が設けられており、ケースに形成された読取口(図示略)を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rとしては、例えば、樹脂材料、金属材料、紙等の様々な物体、或いは後述するカラー表示装置などが挙げられ、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、このような読取対象物Rにおいて、印刷、ダイレクトマーキングなどによる加工、或いは表示装置による表示等によって示された情報コード(図1ではバーコード)を「読取対象コード」としている。なお、以下の説明では、情報コードとしてバーコードBを例示して説明するが、QRコード、データマトリックコード、マキシコードなどの二次元コードに置き換えてもよい。
【0027】
受光センサ26は、読取対象物Rや情報コードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサ、或いは2次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。この受光センサ26は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光面26aで受光し得るように図略のプリント配線板に実装されている。また、受光センサ26は、制御回路40から設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が入力される構成をなしており、制御回路40からの各パルスの入力と同期させて各受光素子の信号が順番に出力される構成となっている。
【0028】
なお、以下の説明では、受光センサ26がラインセンサからなる構成を代表例として説明し、この代表例では、受光センサ26の各受光素子において、受光量が大きいほど低い電圧の受光信号が出力されるようになっている。
【0029】
光学フィルタ28は、照明光Lfに対応する所定周波数帯の光を通過させ、当該所定周波数帯以外の光を抑制する機能を有している。具体的には、照明光源20から照射される赤色光の波長が含まれる所定赤色光波長帯の光の通過を許容し、当該所定赤色光波長帯から外れた光(例えば、緑色光、青色光)の通過を遮断する光学的なフィルタとして構成されており、例えば、ケースに形成された読取口(図示略)と結像レンズ27との間に設けられている。これにより、照明光Lfが読取対象物Rで反射した光(反射光Lr)を選択的に受光し、当該反射光Lrの波長から大きく外れた不要な光が受光センサ26に入射することを抑制している。
【0030】
結像レンズ27は、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとによって構成されており、本実施形態では、ケースに形成された読取口(図示略)に入射する反射光Lrを集光し、受光センサ26の受光面26aに情報コードBのコード画像を結像するように構成されている。
【0031】
マイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40及びメモリ35を中心として構成され、前述した光学系によって撮像された情報コードBの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。
【0032】
制御回路40は、光学的情報読取装置1全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるものであり、情報処理機能を有している。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)が接続されており、本実施形態の場合、電源スイッチ41、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示装置46、通信インタフェース48等が接続されている。また、通信インタフェース48には、光学的情報読取装置1の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどを接続できるようになっている。
【0033】
メモリ35は、半導体メモリ装置であり、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、前述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源20、受光センサ26等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0034】
ローパスフィルタ回路31は、受光センサ26の出力側に設けられ、受光センサ26から出力される受光信号を入力信号として、当該受光信号の高周波成分を除去する機能を有している。このローパスフィルタ回路31は、公知のローパスフィルタとして構成されており、予め規定されたカットオフ周波数以下の周波数の信号を減衰させずに通過させ、カットオフ周波数を超える高周波領域の信号については、入力信号の周波数が高くなるほど、フィルタを通った出力信号が抑制(減衰)される構成をなしている。
【0035】
ローパスフィルタ回路31は、反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタ(オペアンプを用いた公知のローパスフィルタ)であってもよく、非反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタであってもよい。或いは、オペアンプを用いない公知のCRフィルタであってもよい(この場合、受光センサ26とローパスフィルタ回路31との間に別途増幅回路を設けることが望ましい。なお、以下の説明では、ローパスフィルタ回路31が、「反転増幅回路として構成される公知ローパスフィルタ」である例を代表例として説明する。
【0036】
二値化回路33は、「二値化手段」の一例に相当するものであり、ローパスフィルタ回路31から出力された信号を二値データに変換する機能を有している。この二値化回路は、ローパスフィルタ回路31からの出力信号(高周波ノイズが除去された受光信号)を設定された閾値と比較して、閾値以上の場合には、Lレベル信号を出力し、閾値未満の場合にはHレベル信号を出力している。なお、二値化回路33から出力される信号は、情報コードBのパターンデータとしてメモリ35に蓄積されるようになっている。
【0037】
電源系は、電源スイッチ41、電池49等により構成されており、制御回路40により管理される電源スイッチ41のオンオフによって、電池49から供給される駆動電圧の導通や遮断が制御されている。なお、電池49は、所定の直流電圧を発生可能な2次電池で、例えば、リチウムイオン電池等がこれに相当する。
【0038】
(読取処理)
次に、本実施形態に係る光学的情報読取装置1で行われる読取処理について図2等を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態に係る光学的情報読取装置1にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【0039】
本実施形態では、例えば、ユーザによる所定操作(例えば操作スイッチ42に対する所定操作)をトリガとして図2に示す読取処理が開始され、まず照明光源20を駆動する処理が行われる(S1)。この処理では、制御回路40から照明光源20に対して光源駆動信号が与えられ、照明光源20から赤色の照明光Lfが照射される。
【0040】
その後、読取モードを第1モードに設定する処理が行われる(S2)。本実施形態では、読取モードを第1モード(駆動信号の周波数をf1に設定するモード)と第2モード(駆動信号の周波数をf2に設定するモード)とに切り替えうる構成をなしており、図2の読取処理開始に伴い、「第2モード」よりも優先させて「第1モード」に設定している。なお、現在設定されているモードが「第1モード」及び「第2モード」のいずれであるかを示すデータは、例えばメモリ35に記録される。
本実施形態では、制御回路40が「モード切替手段」の一例に相当しており、第1モードと第2モードとに設定変更する機能を有している。
【0041】
S2の処理の後には、撮像処理が行われる(S3)。本実施形態では、制御回路40が「センサ駆動回路」の一例に相当しており、S3の処理が開始されると、制御回路40から受光センサ26に対し、設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が出力される。具体的には、現在のモードに応じた周波数のパルス信号を出力しており、第1モードに設定されている場合には、駆動信号の周波数が第1の周波数f1に設定され(図3(a)参照)、第2モードに設定された場合には、駆動信号の周波数が前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数f2に設定されるようになっている(図3(b)参照)。図2の読取処理開始直後(S2の処理直後)には、S2にて読取モードが「第1モード」に設定されるため、図3(a)のように第1の周波数f1に設定されたパルス信号(駆動信号)が出力されることになる。
【0042】
受光センサ26は、読取対象コードにて反射され且つ光学フィルタ28を透過した反射光を各受光素子にて受光しており、各受光素子での受光量に基づいて、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を出力している。具体的には、制御回路40から与えられるパルス信号(駆動信号)に応じて駆動し、制御回路40から各パルスが入力される毎に、一列に配列された各受光素子の各信号を順番に出力している。従って、制御回路40(センサ駆動回路)から図3(a)のように第1の周波数f1のパルス信号(駆動信号)が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号が、第1の周波数f1に対応する速度で出力され、図3(b)のように第2の周波数f2のパルス信号(駆動信号)が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号が、第2の周波数f2に対応する速度で出力されるようになっている。例えば、受光センサ26がN個の受光素子を一列に並べたラインセンサとして構成されている場合には、制御回路40からN個のパルスが入力されることで全受光素子の信号が出力されることになり、第1の周波数f1のときよりも第2の周波数f2のときのほうが短い時間で全受光素子の信号が出力されることになる。
【0043】
S2の処理直後のS3の撮像処理では、読取モードが「第1モード」に設定されており、制御回路40から第1の周波数f1に設定されたパルス信号(駆動信号:図3(a))が出力されるため、全受光素子の受光信号が第1の周波数f1に対応する速度で出力され、第2の周波数f2の場合と比較してやや長めの時間で全受光素子の受光信号が出力されることとなる。
【0044】
受光センサ26から出力される受光信号は、上述のローパスフィルタ回路31にて高周波成分が抑制された後、二値化回路33にて二値データに変換され、メモリ35に記憶されることとなる。
【0045】
S3の撮像処理の後には、デコード処理が行われる(S4)。このデコード処理では、メモリ35に記憶された二値データに基づいて、各明色領域、各暗色領域のサイズ、位置が特定され、公知のデコード方法によって解読が行われる。なお、本実施形態では、制御回路40が「デコード手段」の一例に相当する。
【0046】
S4のデコード処理の後には、S5においてデコード処理が成功したか否かが判断され、成功した場合には(S5:Yes)、そのデコード結果が例えば液晶表示器46(図1)などに出力される(S6)。
【0047】
一方、S4のデコード処理が失敗した場合には、S5にてNoに進み、両モード(第1モード及び第2モード)を実行済みか否かを判断する(S7)。このとき、両モードが実行されていない場合(即ち、第1モードのみが実行され、第2モードが実行されていない場合)には、S7にてNoに進み、読取モードを第2モードに設定する処理を行う(S8)。そして、その設定された第2モードで後述の撮像処理(S3)、デコード処理(S4)を行うことになる。
【0048】
次に、第1モードでデコード処理が失敗し、第2モードに再設定して撮像処理、デコード処理を行う場合について、図4〜図8等を参照して詳述する。
図4は、カラー表示装置に表示されるバーコード(情報コード)を読取対象とする場合を説明する説明図である。また、図5では、上段にローパスフィルタ回路31で変換された明色領域の波形を概念的に示し、下段にその二値データを概念的に示しており、(a)は、第1の周波数f1で受光センサ26が駆動される場合を示し、(b)は、第2の周波数で受光センサ26が駆動される場合を示している。また、図6は、液晶表示装置に表示されるバーコードを撮像したときの受光信号を例示しており、(a)は、第1の周波数f1で受光センサ26が駆動される場合を示し、(b)は、第2の周波数で受光センサ26が駆動される場合を示している。なお、図6(b)は、図6(a)と同一対象を撮像した場合を示しており、図6(a)(b)共に、横軸を時間とし、縦軸を電圧として受光信号の波形を示し、(a)と(b)では、横軸の時間のスケール(1目盛り当たりの時間)を同じとしている。また、図7(a)には、図6(a)の受光信号をローパスフィルタ回路31で変換した信号を示しており、図7(b)には、図7(a)の信号を二値化回路33にて所定の閾値に基づいて二値化した信号を示している。更に、図8(a)には、図6(b)の受光信号をローパスフィルタ回路31で変換した信号を示しており、図8(b)には、図8(a)の信号を二値化回路33にて所定の閾値に基づいて二値化した信号を示している。図7、図8でも、横軸を時間とし、縦軸を電圧として信号波形を示しており、図7(a)(b)、図8(a)(b)は、いずれも横軸の時間のスケール(1目盛り当たりの時間)を同じとしている。
【0049】
第1モードでデコード処理が失敗したときに、第2モードに再設定した上で、再度、撮像処理、デコード処理を行うべき場合としては、例えば図4のように、携帯電話機等の携帯側情報端末(携帯端末)に設けられた液晶表示装置100に表示されるバーコードBを読み取る場合などが考えられる。この液晶表示装置100は、図10と同様に、R画素Ra、G画素Ga、B画素Baの組み合わせによって構成される表示画素Saを複数配列してなるものであり、上述したように光学フィルタ28において、G画素Ga及びB画素Baから発せられる光の通過が、R画素から発せられる光の通過よりも抑制されてしまう(図4も参照)。
【0050】
このような場合、図4下段、図6(a)に示すように、受光センサ26から出力される明色領域の波形(符号WA1参照)において、暗色を示す信号がノイズとして含まれてしまい、ローパスフィルタ回路31に入力させたとしても、当該明色領域の波形の周波数が低いため、図5(a)上段及び図7(a)において符号WA2に示すように、ノイズを減衰させることができず、ノイズの除去が不十分となってしまう。その結果、図5(a)下段及び図7(b)において符号WA3に示すように、明色領域の一部が暗色領域として認識されてしまうことになり、これによりデコード不良が生じることになる。
【0051】
本実施形態では、このようなデコード不良が生じた場合、図2に示すように、S8にて第2モードに設定し、その第2モードにおいてS3の撮像処理を実行している。この第2モードの撮像処理では、制御回路40から受光センサ26に対し、第2の周波数f2に設定されたパルス信号(駆動信号)が与えられることになる(図3(b)参照)。従って、液晶表示装置100に表示されるバーコードB(読取対象コード)から発せられる光に応じた受光信号が、第2の周波数f2に対応する速度で出力され、第1の周波数f1のときよりも短い時間で全受光素子の信号が出力されることになる。
【0052】
図6(a)(b)に示すように、第1の周波数f1のときに、受光センサ26の一部の信号出力に時間T1を要する場合であっても、第2の周波数f2のときにはこれよりも短い時間T2で当該一部の信号出力を行うことができ、第2の周波数f2のときのほうが、受光信号全体として周波数が高められることになる。従って、図6(b)において符号WB1に示すように、明色領域の波形(暗色と認識されるノイズを含んだ波形)の周波数も、第1モードの場合(図6(a)の符号WA1)と比較して高くなり、図5(b)上段及び図8(a)において符号WB2に示すように、当該明色領域の波形においてノイズを減衰させ、ノイズを除去できるようになる。その結果、図5(b)下段及び図8(b)において符号WB3に示すように、二値データにおいて、明色領域となるべき領域が正確に明色領域に相当する値を示すこととなり、ひいては、デコード不良を効果的に解消できることとなる。
【0053】
なお、本実施形態では、制御回路40が、図2の処理を実行するプログラムに基づいて、第1モード及び第2モードの設定順序を定めており、制御回路40及び当該プログラムが「モード順序規定手段」の一例に相当している。そして、「モード切替手段」として機能する制御回路40は、上記プログラムで規定された順序に従い、第1モード(第1の周波数f1の駆動信号を用いるモード)を「先のモード」として設定し、当該第1モードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、第2のモード(第2の周波数f2の駆動信号を用いるモード)に設定変更している。
【0054】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタ28が設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタ28を介して受光センサ26によって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部画素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素)からの光が光学フィルタ28によって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本実施形態では、第1モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数f1に設定し、第2モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数f1よりも大きい第2の周波数f2に設定変更している。そして、第1の周波数f1の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数f1に対応する速度で出力し、第2の周波数f2の駆動信号が出力される場合には、第2の周波数f2に対応する速度で出力している。
このようにすると、カラー表示装置に表示される情報コードが読取対象とされ、明色パターン領域の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれるような場合に、第2の周波数f2で受光センサ26を駆動して、明色パターン領域の波形(明色を示す正常信号と暗色を示すノイズとを含んだ明暗交互信号の波形)の周波数を相対的に高めることができる。これにより、受光信号をローパスフィルタ回路31に入力させたときに、明色パターン領域の信号の減衰度合いが大きくなり、当該明色パターン領域の信号に含まれる暗色を示すノイズを効果的に除去することができる。
一方、必要に応じて第1の周波数f1で受光センサを駆動することができるため、紙媒体に付された情報コードを読み取る場合等、明色パターン領域の誤認識がなされにくい場合(即ち、明色パターン領域の受光信号に暗色を示すノイズが含まれにくい場合)には、駆動周波数を低く抑え、より細かな読み取りに有利な設定とすることができる。
【0055】
また、読み取りの対象となるカラー表示装置が、R画素Ra、Ga画素、Ba画素の組み合わせによって構成される表示画素Saを複数配列した構成をなしている。このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置を読取対象物として当該カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとし、このような情報コードを良好に読み取りうる構成とすることで、ユーザの利便性を高めることができる。
【0056】
具体的には、様々な場所に携帯されて利用される携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを読取対象コードとしており、このような情報コードを良好に読み取りうる構成とすることで、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、第1モード及び第2モードの設定順序を定める「モード順序規定手段」を備えており、この「モード順序規定手段」によって規定された順序に従い、第1モード及び第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更している。このようにすると、一方のモードでデコード処理が失敗した場合に、迅速且つスムーズに他方のモードに切り替えて、当該他方のモードでデコード処理を再度実行することができ、ユーザに特別な負担を強いることなくデコードの成功確率を効果的に高めることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、図9を参照して第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る光学的情報読取装置で行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【0059】
なお、本実施形態では、読取処理における読取モードの設定方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。例えば、図1、図3〜図8に基づく説明は、第1実施形態と同様であるため、適宜これらの図を参照することとする。また、読取処理についても、図9のS21の処理は、図2のS1と同様であり、図9の読取処理で行われる各モードでのS25の撮像処理、S26のデコード処理は、第1実施形態で説明した各モードでのS3の撮像処理、S4のデコード処理とそれぞれ同様である。よってこれらの詳細については説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けてメモリ35(メモリ35は「記憶手段」の一例に相当する)に記憶しており、このメモリ35の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴としている。なお、本実施形態では、図9のプログラム及び制御回路40が「モード順序規定手段」の一例に相当する。
【0061】
具体的には、図9に示すように、S21にて照明光源20を駆動した後、メモリ35の記憶内容を確認し、前回の読取成功モードが「第2モード」か否かを確認する。本実施形態では、メモリ35において前回の成功モードが第1モード及び第2モードのいずれであるかを記憶しており、S22ではこれを参照して判断処理を行う。前回の読取成功モードが第2モードでない場合には、S22にてNoに進み、「第1モード」に設定(又は第1モードの設定を維持)する(S23)。
【0062】
S23にて第1モードに設定された場合には、当該第1モードのときに第1実施形態で行われた撮像処理(S3)、デコード処理(S4)と同様の撮像処理(S25)、デコード処理(S26)を行う。そして、デコード処理が成功した場合には、S27にてYesに進んでデコード結果を出力し(S28)、その成功したモード(第1モード)を前回成功モードとして記憶する(S29)。一方、デコード処理が失敗した場合(例えば、第1実施形態で説明したように液晶表示装置100のバーコードを読取対象コードとしてデコードが失敗したような場合)には、S27にてNoに進み、両モードが実行済みか否かを判断する(S30)。第2モードが実行されていない場合には、S30にてNoに進み、他方の第2モードに設定変更した後(S31)、S23の撮像処理、S26のデコード処理を行う。
【0063】
一方、S22にて前回の読取成功モードが「第2モード」と判断された場合には、S22にてYesに進み、読取モードを「第2モード」に設定する(S24)。そして、第2モードのときに第1実施形態で行われた撮像処理(S3)、デコード処理(S4)と同様の撮像処理(S25)、デコード処理(S26)を行う。そして、デコード処理が成功した場合には、S27にてYesに進んでデコード結果を出力し(S28)、その成功したモード(第2モード)を前回成功モードとして記憶する(S29)。一方、デコード処理が失敗した場合には、S27にてNoに進み、両モードが実行済みか否かを判断する(S30)。この場合、第1モードが実行されていない場合には、S30にてNoに進み、他方の第1モードに設定変更した後(S31)、S23の撮像処理、S26のデコード処理を行う。
【0064】
第2実施形態の光学的情報読取装置では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能なメモリ35(記憶手段)が設けられ、メモリ35(記憶手段)の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定している。デコード処理が前回成功したモードは他方のモードと比較してデコード処理が成功する可能性が高く、このモードを優先的に設定する構成とすれば、デコード処理の成功確率を効果的に高めることができ、読取処理の迅速化を図ることができる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
上記実施形態では、受光センサ26がラインセンサ(一次元センサ)として構成される例を代表例として示したが、二次元センサとして構成される場合であっても同様に適用できる。
【0067】
上記実施形態では、赤色の照明光を発する照明光源20を設け、且つ赤色に相当する所定周波数帯の光を選択的に通過する光学フィルタ28を設けた例を示したが、この構成に限定されない。例えば、他の色(緑色、青色等)の照明光を発する照明光源を設け、当該他の色を選択的に透過する光学フィルタを設けるようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、制御回路40から受光センサ26に与えられるセンサ駆動信号の周波数を2段階に切り替えうる構成を例示したが、3段階以上に切り替えうる構成であってもよい。
【0069】
上記実施形態では、カラー表示装置として液晶表示装置100(図4)を例示したが、ELディスプレイ等の他のカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…光学的情報読取装置
20・・・照明光源(照明手段)
26・・・受光センサ
28・・・光学フィルタ
31・・・ローパスフィルタ回路
33・・・二値化回路(二値化手段)
35・・・メモリ(記憶手段)
40・・・制御回路(センサ駆動回路、デコード手段、モード切替手段、モード順序規定手段)
100・・・カラー表示装置
Ra・・・R画素
Ga・・・G画素
Ba・・・B画素
Sa・・・表示画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーコードリーダ等の光学的情報読取装置では、一般的に、受光素子を複数配列してなる受光センサ(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ等)が用いられ、この受光センサによってバーコード等の情報コードから反射光を受光すると共に、情報コードの像に応じた受光信号(電気信号)を出力している。そして、その出力された受光信号を二値化回路によって二値化し、その二値データを解読手段によって解読している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−293327公報
【特許文献2】特開平10−320496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光学的情報読取装置では、受光信号に含まれるノイズを如何に除去するかが問題となっている。受光信号に含まれるノイズを除去する技術としては、例えば特許文献1、2のようなものがあり、特許文献1では、ローパスフィルタ等を用いて受光信号から高周波ノイズ成分を除去する技術が開示されている。また、特許文献2では、ローパスフィルタを用いたときの問題点を解消しようとする技術が開示されている。
【0005】
一方、ノイズ除去の方法としては、特定色の照明光を照射する照明光源を設けると共に、この特定色に対応する周波数帯の光を透過させ、他の周波数帯の光を遮断する光学フィルタを併用する構成なども考えられる。この構成によれば、照明光とは周波数が大きく異なる外乱光を良好に除去することができ、受光信号に外乱光に起因するノイズが含まれることを効果的に抑制することができる。
【0006】
また、上記ローパスフィルタを用いた構成も、光学フィルタを用いた構成も、それぞれ特有の利点を有しており、これらを併用する構成とすれば、より効果的なノイズ除去が期待できる。しかしながら、読取対象となる情報コードの表示態様は様々なケースが考えられ、場合によっては、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、ノイズ除去が十分に行われない場合があり得る。例えば、近年の光学的情報読取装置では、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とするニーズが増加しており、このようにカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、カラー表示装置特有の事情から、ノイズ除去が適切になされない場合があった。
【0007】
例えば、赤色の照明光を照射する照明光源を用い、赤色に対応する所定周波数帯以外の光を抑制する光学フィルタを用いる場合、読取対象が紙媒体等に付された明暗コード(例えばバーコード)であれば、明色領域からの赤色の反射光を選択的に透過させることができ、赤色以外の外乱光を効果的に除去することができるため、明色領域と暗色領域のパターンを適切に反映した波形を得ることができる。しかしながら、液晶表示装置などのカラー表示装置に表示される明暗コード(例えばバーコード)を撮像する場合、明色領域から光学フィルタでの透過対象色(ここでは赤色)以外の光が発生するため、明色領域の一部の領域からの光がカットされてしまうという問題があった。
【0008】
例えば、図10のようにR画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)が組み合わされて一つの表示画素Sa(ピクセル)が構成され、このような表示画素Saが複数配列されてなる液晶表示装置の場合、ある表示画素Saで白色を表示するときには、実際には、R画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)をそれぞれ発光させることで視覚的に白色と認識しうる光を発生させている。このような液晶表示装置に表示される明暗コードを撮像する場合、図11(a)のように、R画素Raについては当該R画素Raからの発生する赤色光が光学フィルタFを通過するため、明色領域として認識されることとなる。しかしながら、図11(a)中段、下段に示すように、G画素Ga、B画素Baについては、これら画素からの緑色光、青色光が光学フィルタFによって抑制されるため、受光センサでの受光量が抑えられてしまい、本来明色領域として認識されるべき領域であるはずなのに、暗色領域として誤認識されてしまう。なお、図11(a)上段は、液晶表示装置に表示されるバーコードを例示するものである。また、図11(a)中段は、このようなバーコードをラインセンサによって撮像するときの撮像位置(一点鎖線Lの位置)の一部(暗色バーB1、明色バーW1、暗色バーB2の部分)における表示画素の配列を例示している。また、図11(a)下段は、図11(a)中段の各表示画素Saからの光を受光することで生成される受光信号を概念的に示している。
【0009】
図11(b)では、図11(a)下段の受光信号を二値化した信号を示しており、この二値化信号では、本来的には図11(c)のように一連の明色領域として特定されるべきエリアAR(明色バーW1に相当するエリア)において、一部が暗色領域を示す値(この例ではLレベル)となってしまっている。このような誤認識がなされると、情報コードの各明色領域のサイズを適切に認識できなくなり、情報コード全体のデコード不良を招いてしまうことになる。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードをいずれも読み取ることができ、カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合であっても、ノイズを適切に除去することができ、且つ明色領域及び暗色領域を正確に認識しうる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、前記受光センサに対し、設定された周波数の駆動信号を出力するセンサ駆動回路と、前記受光センサから出力された前記受光信号が入力される構成をなし、規定のカットオフ周波数の以上の周波数の信号を抑制するローパスフィルタ回路と、前記ローパスフィルタ回路から出力される前記受光信号を二値化する二値化手段と、前記二値化手段にて生成された二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段と、を備えている。
そして、前記センサ駆動回路は、前記モード切替手段によって前記第1モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、前記第2モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更する構成をなし、前記受光センサは、前記センサ駆動回路から前記第1の周波数の前記駆動信号が出力される場合に、前記読取対象コードからの前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第1の周波数に対応する速度で出力し、前記第2の周波数の前記駆動信号が出力される場合には、前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第2の周波数に対応する速度で出力する構成をなしている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記カラー表示装置が、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列してなるものであることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記照明手段が、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、前記光学フィルタが、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制することを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記カラー表示装置が、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記第1モード及び前記第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段が設けられ、前記モード切替手段が、前記モード順序規定手段によって規定された順序に従い、前記第1モード及び前記第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われた前記デコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更することを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記第1モード又は前記第2モードにて行われた前記デコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段が設けられ、前記モード順序規定手段が、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1モード及び前記第2モードの内、前記デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタが設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタを介して受光センサによって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部画素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素)からの光が光学フィルタによって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本発明は、第1モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、第2モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更している。そして、第1の周波数の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数に対応する速度で出力し、第2の周波数の駆動信号が出力される場合には、第2の周波数に対応する速度で出力している。
このようにすると、カラー表示装置に表示される情報コードが読取対象とされ、明色パターン領域の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれるような場合に、第2の周波数で受光センサを駆動して、明色パターン領域の波形(明色を示す正常信号と暗色を示すノイズとを含んだ明暗交互信号の波形)の周波数を相対的に高めることができる。これにより、受光信号をローパスフィルタ回路に入力させたときに、明色パターン領域の信号の減衰度合いが大きくなり、当該明色パターン領域の信号に含まれる暗色を示すノイズを効果的に除去することができる。
一方、必要に応じて第1の周波数で受光センサを駆動することができるため、紙媒体に付された情報コードを読み取る場合等、明色パターン領域の誤認識がなされにくい場合(即ち、明色パターン領域の受光信号に暗色を示すノイズが含まれにくい場合)には、駆動周波数を低く抑え、より細かな読み取りに有利な設定とすることができる。
【0018】
請求項2の発明では、読み取りの対象となるカラー表示装置が、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列した構成をなしている。本発明によれば、このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置を読取対象物として当該カラー表示装置に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0019】
請求項3の発明は、照明手段が、赤色の照明光を照射する構成をなし、光学フィルタが、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制している。このようにすると、物体に付された情報コードを読取対象コードとして読み取る場合に、照明光が明色領域にて反射した光(赤色光)を光学フィルタにて選択的に透過させることができ、外乱光を良好に除去できる。一方、カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合、明色パターンを表示する領域においてG画素、B画素からの光が光学フィルタによって抑制され、明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。しかしながら、必要に応じてセンサ駆動信号の周波数を高めることができるため、受光信号の周波数を相対的に高めることができ、明色パターン領域の信号波形に暗色を示すノイズ(G画素、B画素に起因するノイズ)が含まれるような場合に、明色パターン領域の信号のローパスフィルタ回路での減衰度合いを大きくすることができる。従って、明色パターン領域の信号波形に暗色を示すノイズ(G画素、B画素に起因するノイズ)が含まれるような場合であっても、当該ノイズを効果的に除去することができる。
【0020】
請求項4の発明では、携帯端末に設けられたカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとしている。このようにすると、様々な場所で広く用いられる携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【0021】
請求項5の発明では、第1モード及び第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段が設けられている。そして、モード切替手段は、モード順序規定手段によって規定された順序に従い、第1モード及び第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更している。このようにすると、一方のモードでデコード処理が失敗した場合に、迅速且つスムーズに他方のモードに切り替えて、当該他方のモードでデコード処理を再度実行することができ、ユーザに特別な負担を強いることなくデコードの成功確率を効果的に高めることができる。
【0022】
請求項6の発明では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段が設けられ、記憶手段の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定している。デコード処理が前回成功したモードは他方のモードと比較してデコード処理が成功する可能性が高く、このモードを優先的に設定する構成とすれば、デコード処理の成功確率を効果的に高めることができ、読取処理の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置を例示するブロック図である。
【図2】図2は、図1の光学的情報読取装置にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図3】図3(a)は、第1モードのときに出力されるセンサ駆動信号を例示する説明図であり、図3(b)は、第2モードのときに出力されるセンサ駆動信号を例示する説明図である。
【図4】図4は、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合を説明する説明図である。
【図5】図5は、上段にローパスフィルタ回路で変換された明色領域の波形を概念的に示し、下段にその二値データを概念的に示しており、(a)は、第1の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものであり、(b)は、第2の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものである。
【図6】図6は、液晶表示装置に表示されるバーコードを撮像したときの受光信号を例示する波形図であり、(a)は、第1の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものであり、(b)は、第2の周波数で受光センサが駆動される場合を示すものである。
【図7】図7(a)は、図6(a)の受光信号をローパスフィルタ回路で変換した信号を示す波形図であり、図7(b)は、図7(a)の信号を二値化回路にて二値化した信号を示す波形図である。
【図8】図8(a)は、図6(b)の受光信号をローパスフィルタ回路で変換した信号を示す波形図であり、図8(b)は、図8(a)の信号を二値化回路にて二値化した信号を示す波形図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る光学的情報読取装置にて行われる読取処理を例示するフローチャートである。
【図10】図10は、従来から用いられているカラー表示装置の画素構成を概念的に説明する説明図である。
【図11】図11は、カラー液晶表示装置に表示されるバーコードを読み取るときの問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図面を参照しつつ説明する。
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図であり、まず、図1等を参照して本実施形態に係る光学的情報読取装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、バーコード等の情報コードBを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、図示しないケースによって外郭が構成され、このケース内に各種電子部品が収容された構成をなしている。
【0025】
この光学的情報読取装置1は、主に、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示装置46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池49等の電源系と、から構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいはケース(図示略)内に内装されている。
【0026】
光学系は、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等から構成されている。照明光源20は、「照明手段」の一例に相当するものであり、例えば、赤色のLEDと、このLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等を備え、赤色の照明光Lfを照射する構成をなしている。本実施形態では、受光センサ26を挟んだ両側に照明光源20が設けられており、ケースに形成された読取口(図示略)を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rとしては、例えば、樹脂材料、金属材料、紙等の様々な物体、或いは後述するカラー表示装置などが挙げられ、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、このような読取対象物Rにおいて、印刷、ダイレクトマーキングなどによる加工、或いは表示装置による表示等によって示された情報コード(図1ではバーコード)を「読取対象コード」としている。なお、以下の説明では、情報コードとしてバーコードBを例示して説明するが、QRコード、データマトリックコード、マキシコードなどの二次元コードに置き換えてもよい。
【0027】
受光センサ26は、読取対象物Rや情報コードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサ、或いは2次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。この受光センサ26は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光面26aで受光し得るように図略のプリント配線板に実装されている。また、受光センサ26は、制御回路40から設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が入力される構成をなしており、制御回路40からの各パルスの入力と同期させて各受光素子の信号が順番に出力される構成となっている。
【0028】
なお、以下の説明では、受光センサ26がラインセンサからなる構成を代表例として説明し、この代表例では、受光センサ26の各受光素子において、受光量が大きいほど低い電圧の受光信号が出力されるようになっている。
【0029】
光学フィルタ28は、照明光Lfに対応する所定周波数帯の光を通過させ、当該所定周波数帯以外の光を抑制する機能を有している。具体的には、照明光源20から照射される赤色光の波長が含まれる所定赤色光波長帯の光の通過を許容し、当該所定赤色光波長帯から外れた光(例えば、緑色光、青色光)の通過を遮断する光学的なフィルタとして構成されており、例えば、ケースに形成された読取口(図示略)と結像レンズ27との間に設けられている。これにより、照明光Lfが読取対象物Rで反射した光(反射光Lr)を選択的に受光し、当該反射光Lrの波長から大きく外れた不要な光が受光センサ26に入射することを抑制している。
【0030】
結像レンズ27は、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとによって構成されており、本実施形態では、ケースに形成された読取口(図示略)に入射する反射光Lrを集光し、受光センサ26の受光面26aに情報コードBのコード画像を結像するように構成されている。
【0031】
マイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40及びメモリ35を中心として構成され、前述した光学系によって撮像された情報コードBの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。
【0032】
制御回路40は、光学的情報読取装置1全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるものであり、情報処理機能を有している。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)が接続されており、本実施形態の場合、電源スイッチ41、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示装置46、通信インタフェース48等が接続されている。また、通信インタフェース48には、光学的情報読取装置1の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどを接続できるようになっている。
【0033】
メモリ35は、半導体メモリ装置であり、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、前述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源20、受光センサ26等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0034】
ローパスフィルタ回路31は、受光センサ26の出力側に設けられ、受光センサ26から出力される受光信号を入力信号として、当該受光信号の高周波成分を除去する機能を有している。このローパスフィルタ回路31は、公知のローパスフィルタとして構成されており、予め規定されたカットオフ周波数以下の周波数の信号を減衰させずに通過させ、カットオフ周波数を超える高周波領域の信号については、入力信号の周波数が高くなるほど、フィルタを通った出力信号が抑制(減衰)される構成をなしている。
【0035】
ローパスフィルタ回路31は、反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタ(オペアンプを用いた公知のローパスフィルタ)であってもよく、非反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタであってもよい。或いは、オペアンプを用いない公知のCRフィルタであってもよい(この場合、受光センサ26とローパスフィルタ回路31との間に別途増幅回路を設けることが望ましい。なお、以下の説明では、ローパスフィルタ回路31が、「反転増幅回路として構成される公知ローパスフィルタ」である例を代表例として説明する。
【0036】
二値化回路33は、「二値化手段」の一例に相当するものであり、ローパスフィルタ回路31から出力された信号を二値データに変換する機能を有している。この二値化回路は、ローパスフィルタ回路31からの出力信号(高周波ノイズが除去された受光信号)を設定された閾値と比較して、閾値以上の場合には、Lレベル信号を出力し、閾値未満の場合にはHレベル信号を出力している。なお、二値化回路33から出力される信号は、情報コードBのパターンデータとしてメモリ35に蓄積されるようになっている。
【0037】
電源系は、電源スイッチ41、電池49等により構成されており、制御回路40により管理される電源スイッチ41のオンオフによって、電池49から供給される駆動電圧の導通や遮断が制御されている。なお、電池49は、所定の直流電圧を発生可能な2次電池で、例えば、リチウムイオン電池等がこれに相当する。
【0038】
(読取処理)
次に、本実施形態に係る光学的情報読取装置1で行われる読取処理について図2等を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態に係る光学的情報読取装置1にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【0039】
本実施形態では、例えば、ユーザによる所定操作(例えば操作スイッチ42に対する所定操作)をトリガとして図2に示す読取処理が開始され、まず照明光源20を駆動する処理が行われる(S1)。この処理では、制御回路40から照明光源20に対して光源駆動信号が与えられ、照明光源20から赤色の照明光Lfが照射される。
【0040】
その後、読取モードを第1モードに設定する処理が行われる(S2)。本実施形態では、読取モードを第1モード(駆動信号の周波数をf1に設定するモード)と第2モード(駆動信号の周波数をf2に設定するモード)とに切り替えうる構成をなしており、図2の読取処理開始に伴い、「第2モード」よりも優先させて「第1モード」に設定している。なお、現在設定されているモードが「第1モード」及び「第2モード」のいずれであるかを示すデータは、例えばメモリ35に記録される。
本実施形態では、制御回路40が「モード切替手段」の一例に相当しており、第1モードと第2モードとに設定変更する機能を有している。
【0041】
S2の処理の後には、撮像処理が行われる(S3)。本実施形態では、制御回路40が「センサ駆動回路」の一例に相当しており、S3の処理が開始されると、制御回路40から受光センサ26に対し、設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が出力される。具体的には、現在のモードに応じた周波数のパルス信号を出力しており、第1モードに設定されている場合には、駆動信号の周波数が第1の周波数f1に設定され(図3(a)参照)、第2モードに設定された場合には、駆動信号の周波数が前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数f2に設定されるようになっている(図3(b)参照)。図2の読取処理開始直後(S2の処理直後)には、S2にて読取モードが「第1モード」に設定されるため、図3(a)のように第1の周波数f1に設定されたパルス信号(駆動信号)が出力されることになる。
【0042】
受光センサ26は、読取対象コードにて反射され且つ光学フィルタ28を透過した反射光を各受光素子にて受光しており、各受光素子での受光量に基づいて、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を出力している。具体的には、制御回路40から与えられるパルス信号(駆動信号)に応じて駆動し、制御回路40から各パルスが入力される毎に、一列に配列された各受光素子の各信号を順番に出力している。従って、制御回路40(センサ駆動回路)から図3(a)のように第1の周波数f1のパルス信号(駆動信号)が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号が、第1の周波数f1に対応する速度で出力され、図3(b)のように第2の周波数f2のパルス信号(駆動信号)が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号が、第2の周波数f2に対応する速度で出力されるようになっている。例えば、受光センサ26がN個の受光素子を一列に並べたラインセンサとして構成されている場合には、制御回路40からN個のパルスが入力されることで全受光素子の信号が出力されることになり、第1の周波数f1のときよりも第2の周波数f2のときのほうが短い時間で全受光素子の信号が出力されることになる。
【0043】
S2の処理直後のS3の撮像処理では、読取モードが「第1モード」に設定されており、制御回路40から第1の周波数f1に設定されたパルス信号(駆動信号:図3(a))が出力されるため、全受光素子の受光信号が第1の周波数f1に対応する速度で出力され、第2の周波数f2の場合と比較してやや長めの時間で全受光素子の受光信号が出力されることとなる。
【0044】
受光センサ26から出力される受光信号は、上述のローパスフィルタ回路31にて高周波成分が抑制された後、二値化回路33にて二値データに変換され、メモリ35に記憶されることとなる。
【0045】
S3の撮像処理の後には、デコード処理が行われる(S4)。このデコード処理では、メモリ35に記憶された二値データに基づいて、各明色領域、各暗色領域のサイズ、位置が特定され、公知のデコード方法によって解読が行われる。なお、本実施形態では、制御回路40が「デコード手段」の一例に相当する。
【0046】
S4のデコード処理の後には、S5においてデコード処理が成功したか否かが判断され、成功した場合には(S5:Yes)、そのデコード結果が例えば液晶表示器46(図1)などに出力される(S6)。
【0047】
一方、S4のデコード処理が失敗した場合には、S5にてNoに進み、両モード(第1モード及び第2モード)を実行済みか否かを判断する(S7)。このとき、両モードが実行されていない場合(即ち、第1モードのみが実行され、第2モードが実行されていない場合)には、S7にてNoに進み、読取モードを第2モードに設定する処理を行う(S8)。そして、その設定された第2モードで後述の撮像処理(S3)、デコード処理(S4)を行うことになる。
【0048】
次に、第1モードでデコード処理が失敗し、第2モードに再設定して撮像処理、デコード処理を行う場合について、図4〜図8等を参照して詳述する。
図4は、カラー表示装置に表示されるバーコード(情報コード)を読取対象とする場合を説明する説明図である。また、図5では、上段にローパスフィルタ回路31で変換された明色領域の波形を概念的に示し、下段にその二値データを概念的に示しており、(a)は、第1の周波数f1で受光センサ26が駆動される場合を示し、(b)は、第2の周波数で受光センサ26が駆動される場合を示している。また、図6は、液晶表示装置に表示されるバーコードを撮像したときの受光信号を例示しており、(a)は、第1の周波数f1で受光センサ26が駆動される場合を示し、(b)は、第2の周波数で受光センサ26が駆動される場合を示している。なお、図6(b)は、図6(a)と同一対象を撮像した場合を示しており、図6(a)(b)共に、横軸を時間とし、縦軸を電圧として受光信号の波形を示し、(a)と(b)では、横軸の時間のスケール(1目盛り当たりの時間)を同じとしている。また、図7(a)には、図6(a)の受光信号をローパスフィルタ回路31で変換した信号を示しており、図7(b)には、図7(a)の信号を二値化回路33にて所定の閾値に基づいて二値化した信号を示している。更に、図8(a)には、図6(b)の受光信号をローパスフィルタ回路31で変換した信号を示しており、図8(b)には、図8(a)の信号を二値化回路33にて所定の閾値に基づいて二値化した信号を示している。図7、図8でも、横軸を時間とし、縦軸を電圧として信号波形を示しており、図7(a)(b)、図8(a)(b)は、いずれも横軸の時間のスケール(1目盛り当たりの時間)を同じとしている。
【0049】
第1モードでデコード処理が失敗したときに、第2モードに再設定した上で、再度、撮像処理、デコード処理を行うべき場合としては、例えば図4のように、携帯電話機等の携帯側情報端末(携帯端末)に設けられた液晶表示装置100に表示されるバーコードBを読み取る場合などが考えられる。この液晶表示装置100は、図10と同様に、R画素Ra、G画素Ga、B画素Baの組み合わせによって構成される表示画素Saを複数配列してなるものであり、上述したように光学フィルタ28において、G画素Ga及びB画素Baから発せられる光の通過が、R画素から発せられる光の通過よりも抑制されてしまう(図4も参照)。
【0050】
このような場合、図4下段、図6(a)に示すように、受光センサ26から出力される明色領域の波形(符号WA1参照)において、暗色を示す信号がノイズとして含まれてしまい、ローパスフィルタ回路31に入力させたとしても、当該明色領域の波形の周波数が低いため、図5(a)上段及び図7(a)において符号WA2に示すように、ノイズを減衰させることができず、ノイズの除去が不十分となってしまう。その結果、図5(a)下段及び図7(b)において符号WA3に示すように、明色領域の一部が暗色領域として認識されてしまうことになり、これによりデコード不良が生じることになる。
【0051】
本実施形態では、このようなデコード不良が生じた場合、図2に示すように、S8にて第2モードに設定し、その第2モードにおいてS3の撮像処理を実行している。この第2モードの撮像処理では、制御回路40から受光センサ26に対し、第2の周波数f2に設定されたパルス信号(駆動信号)が与えられることになる(図3(b)参照)。従って、液晶表示装置100に表示されるバーコードB(読取対象コード)から発せられる光に応じた受光信号が、第2の周波数f2に対応する速度で出力され、第1の周波数f1のときよりも短い時間で全受光素子の信号が出力されることになる。
【0052】
図6(a)(b)に示すように、第1の周波数f1のときに、受光センサ26の一部の信号出力に時間T1を要する場合であっても、第2の周波数f2のときにはこれよりも短い時間T2で当該一部の信号出力を行うことができ、第2の周波数f2のときのほうが、受光信号全体として周波数が高められることになる。従って、図6(b)において符号WB1に示すように、明色領域の波形(暗色と認識されるノイズを含んだ波形)の周波数も、第1モードの場合(図6(a)の符号WA1)と比較して高くなり、図5(b)上段及び図8(a)において符号WB2に示すように、当該明色領域の波形においてノイズを減衰させ、ノイズを除去できるようになる。その結果、図5(b)下段及び図8(b)において符号WB3に示すように、二値データにおいて、明色領域となるべき領域が正確に明色領域に相当する値を示すこととなり、ひいては、デコード不良を効果的に解消できることとなる。
【0053】
なお、本実施形態では、制御回路40が、図2の処理を実行するプログラムに基づいて、第1モード及び第2モードの設定順序を定めており、制御回路40及び当該プログラムが「モード順序規定手段」の一例に相当している。そして、「モード切替手段」として機能する制御回路40は、上記プログラムで規定された順序に従い、第1モード(第1の周波数f1の駆動信号を用いるモード)を「先のモード」として設定し、当該第1モードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、第2のモード(第2の周波数f2の駆動信号を用いるモード)に設定変更している。
【0054】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタ28が設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタ28を介して受光センサ26によって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部画素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素)からの光が光学フィルタ28によって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本実施形態では、第1モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数f1に設定し、第2モードに設定された場合に、駆動信号の周波数を第1の周波数f1よりも大きい第2の周波数f2に設定変更している。そして、第1の周波数f1の駆動信号が出力される場合には、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を、第1の周波数f1に対応する速度で出力し、第2の周波数f2の駆動信号が出力される場合には、第2の周波数f2に対応する速度で出力している。
このようにすると、カラー表示装置に表示される情報コードが読取対象とされ、明色パターン領域の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれるような場合に、第2の周波数f2で受光センサ26を駆動して、明色パターン領域の波形(明色を示す正常信号と暗色を示すノイズとを含んだ明暗交互信号の波形)の周波数を相対的に高めることができる。これにより、受光信号をローパスフィルタ回路31に入力させたときに、明色パターン領域の信号の減衰度合いが大きくなり、当該明色パターン領域の信号に含まれる暗色を示すノイズを効果的に除去することができる。
一方、必要に応じて第1の周波数f1で受光センサを駆動することができるため、紙媒体に付された情報コードを読み取る場合等、明色パターン領域の誤認識がなされにくい場合(即ち、明色パターン領域の受光信号に暗色を示すノイズが含まれにくい場合)には、駆動周波数を低く抑え、より細かな読み取りに有利な設定とすることができる。
【0055】
また、読み取りの対象となるカラー表示装置が、R画素Ra、Ga画素、Ba画素の組み合わせによって構成される表示画素Saを複数配列した構成をなしている。このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置を読取対象物として当該カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとし、このような情報コードを良好に読み取りうる構成とすることで、ユーザの利便性を高めることができる。
【0056】
具体的には、様々な場所に携帯されて利用される携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを読取対象コードとしており、このような情報コードを良好に読み取りうる構成とすることで、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、第1モード及び第2モードの設定順序を定める「モード順序規定手段」を備えており、この「モード順序規定手段」によって規定された順序に従い、第1モード及び第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われたデコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更している。このようにすると、一方のモードでデコード処理が失敗した場合に、迅速且つスムーズに他方のモードに切り替えて、当該他方のモードでデコード処理を再度実行することができ、ユーザに特別な負担を強いることなくデコードの成功確率を効果的に高めることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、図9を参照して第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る光学的情報読取装置で行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【0059】
なお、本実施形態では、読取処理における読取モードの設定方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。例えば、図1、図3〜図8に基づく説明は、第1実施形態と同様であるため、適宜これらの図を参照することとする。また、読取処理についても、図9のS21の処理は、図2のS1と同様であり、図9の読取処理で行われる各モードでのS25の撮像処理、S26のデコード処理は、第1実施形態で説明した各モードでのS3の撮像処理、S4のデコード処理とそれぞれ同様である。よってこれらの詳細については説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けてメモリ35(メモリ35は「記憶手段」の一例に相当する)に記憶しており、このメモリ35の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴としている。なお、本実施形態では、図9のプログラム及び制御回路40が「モード順序規定手段」の一例に相当する。
【0061】
具体的には、図9に示すように、S21にて照明光源20を駆動した後、メモリ35の記憶内容を確認し、前回の読取成功モードが「第2モード」か否かを確認する。本実施形態では、メモリ35において前回の成功モードが第1モード及び第2モードのいずれであるかを記憶しており、S22ではこれを参照して判断処理を行う。前回の読取成功モードが第2モードでない場合には、S22にてNoに進み、「第1モード」に設定(又は第1モードの設定を維持)する(S23)。
【0062】
S23にて第1モードに設定された場合には、当該第1モードのときに第1実施形態で行われた撮像処理(S3)、デコード処理(S4)と同様の撮像処理(S25)、デコード処理(S26)を行う。そして、デコード処理が成功した場合には、S27にてYesに進んでデコード結果を出力し(S28)、その成功したモード(第1モード)を前回成功モードとして記憶する(S29)。一方、デコード処理が失敗した場合(例えば、第1実施形態で説明したように液晶表示装置100のバーコードを読取対象コードとしてデコードが失敗したような場合)には、S27にてNoに進み、両モードが実行済みか否かを判断する(S30)。第2モードが実行されていない場合には、S30にてNoに進み、他方の第2モードに設定変更した後(S31)、S23の撮像処理、S26のデコード処理を行う。
【0063】
一方、S22にて前回の読取成功モードが「第2モード」と判断された場合には、S22にてYesに進み、読取モードを「第2モード」に設定する(S24)。そして、第2モードのときに第1実施形態で行われた撮像処理(S3)、デコード処理(S4)と同様の撮像処理(S25)、デコード処理(S26)を行う。そして、デコード処理が成功した場合には、S27にてYesに進んでデコード結果を出力し(S28)、その成功したモード(第2モード)を前回成功モードとして記憶する(S29)。一方、デコード処理が失敗した場合には、S27にてNoに進み、両モードが実行済みか否かを判断する(S30)。この場合、第1モードが実行されていない場合には、S30にてNoに進み、他方の第1モードに設定変更した後(S31)、S23の撮像処理、S26のデコード処理を行う。
【0064】
第2実施形態の光学的情報読取装置では、第1モード又は第2モードにてデコード処理が行われたときのデコード結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能なメモリ35(記憶手段)が設けられ、メモリ35(記憶手段)の記憶内容に基づき、第1モード及び第2モードの内、デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定している。デコード処理が前回成功したモードは他方のモードと比較してデコード処理が成功する可能性が高く、このモードを優先的に設定する構成とすれば、デコード処理の成功確率を効果的に高めることができ、読取処理の迅速化を図ることができる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
上記実施形態では、受光センサ26がラインセンサ(一次元センサ)として構成される例を代表例として示したが、二次元センサとして構成される場合であっても同様に適用できる。
【0067】
上記実施形態では、赤色の照明光を発する照明光源20を設け、且つ赤色に相当する所定周波数帯の光を選択的に通過する光学フィルタ28を設けた例を示したが、この構成に限定されない。例えば、他の色(緑色、青色等)の照明光を発する照明光源を設け、当該他の色を選択的に透過する光学フィルタを設けるようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、制御回路40から受光センサ26に与えられるセンサ駆動信号の周波数を2段階に切り替えうる構成を例示したが、3段階以上に切り替えうる構成であってもよい。
【0069】
上記実施形態では、カラー表示装置として液晶表示装置100(図4)を例示したが、ELディスプレイ等の他のカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…光学的情報読取装置
20・・・照明光源(照明手段)
26・・・受光センサ
28・・・光学フィルタ
31・・・ローパスフィルタ回路
33・・・二値化回路(二値化手段)
35・・・メモリ(記憶手段)
40・・・制御回路(センサ駆動回路、デコード手段、モード切替手段、モード順序規定手段)
100・・・カラー表示装置
Ra・・・R画素
Ga・・・G画素
Ba・・・B画素
Sa・・・表示画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、
前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、
前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、
前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、
前記受光センサに対し、設定された周波数の駆動信号を出力するセンサ駆動回路と、
前記受光センサから出力された前記受光信号が入力される構成をなし、規定のカットオフ周波数の以上の周波数の信号を抑制するローパスフィルタ回路と、
前記ローパスフィルタ回路から出力される前記受光信号を二値化する二値化手段と、
前記二値化手段にて生成された二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段と、
を備え、
前記センサ駆動回路は、前記モード切替手段によって前記第1モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、前記第2モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更する構成をなし、
前記受光センサは、前記センサ駆動回路から前記第1の周波数の前記駆動信号が出力される場合に、前記読取対象コードからの前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第1の周波数に対応する速度で出力し、前記第2の周波数の前記駆動信号が出力される場合には、前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第2の周波数に対応する速度で出力することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記カラー表示装置は、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記照明手段は、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、
前記光学フィルタは、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するものであることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記カラー表示装置は、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記第1モード及び前記第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段を備え、
前記モード切替手段は、前記モード順序規定手段によって規定された順序に従い、前記第1モード及び前記第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われた前記デコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記第1モード又は前記第2モードにて行われた前記デコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段を備え、
前記モード順序規定手段は、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1モード及び前記第2モードの内、前記デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項1】
カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、
前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、
前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、
前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、
前記受光センサに対し、設定された周波数の駆動信号を出力するセンサ駆動回路と、
前記受光センサから出力された前記受光信号が入力される構成をなし、規定のカットオフ周波数の以上の周波数の信号を抑制するローパスフィルタ回路と、
前記ローパスフィルタ回路から出力される前記受光信号を二値化する二値化手段と、
前記二値化手段にて生成された二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
第1モードと第2モードとに設定変更可能なモード切替手段と、
を備え、
前記センサ駆動回路は、前記モード切替手段によって前記第1モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を第1の周波数に設定し、前記第2モードに設定された場合に、前記駆動信号の周波数を前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定変更する構成をなし、
前記受光センサは、前記センサ駆動回路から前記第1の周波数の前記駆動信号が出力される場合に、前記読取対象コードからの前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第1の周波数に対応する速度で出力し、前記第2の周波数の前記駆動信号が出力される場合には、前記反射光に応じた前記受光信号を、前記第2の周波数に対応する速度で出力することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記カラー表示装置は、R画素、G画素、B画素の組み合わせによって構成される表示画素を複数配列してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記照明手段は、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、
前記光学フィルタは、G画素及びB画素から発せられる光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するものであることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記カラー表示装置は、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記第1モード及び前記第2モードの設定順序を定めるモード順序規定手段を備え、
前記モード切替手段は、前記モード順序規定手段によって規定された順序に従い、前記第1モード及び前記第2モードのいずれか一方を先のモードとして設定し、当該先のモードに設定された状態で行われた前記デコード処理が失敗した場合に、他方に設定変更することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記第1モード又は前記第2モードにて行われた前記デコード処理の結果を当該デコード処理が行われたモードと対応付けて記憶可能な記憶手段を備え、
前記モード順序規定手段は、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1モード及び前記第2モードの内、前記デコード処理が前回成功したモードを優先的に設定することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−28617(P2011−28617A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175197(P2009−175197)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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