説明

光学的情報読取装置

【課題】照明光源を消灯可能として消費電力を抑えることができ、且つ装置の使用が予想される適切な時期に消灯状態から迅速かつ自動的に復帰し得る構成を、ハードウェア構成の複雑化を伴うことなく実現する。
【解決手段】光学的情報読取装置1では、点灯制御手段によって照明光源20が消灯状態に制御されているときに、センサ制御手段が受光センサ26を作動させており、信号監視手段は、照明光源20の消灯状態のときに受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視している。そして、点灯制御手段は、照明光源20の消灯状態のときに信号監視手段によって所定の信号変化状態が検出された場合に照明光源20を点灯状態に切り替えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読み取る光学的情報読取装置では、照明光を照射する照明光源が用いられるものが多い。この種の光学的情報読取装置では、例えば読み取りの開始操作を行うためのスイッチが設けられており、このスイッチが操作されたときに照明光源を点灯して情報コードに照明光を照射している。そして、照明光を照射した状態で情報コードを撮像し、得られた撮像画像に基づいて情報コードのデコードを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−37026号公報
【特許文献2】特開平5−292261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような照明光源を備えた光学的情報読取装置では、照明光源の駆動に起因する消費電力の増大が問題となっており、このような問題を解決するため、読み取りが行われないときに照明光源を消灯する技術が提供されている。例えば、特許文献1の技術では、CCDイメージセンサ(5)が定期的に撮像動作を行っており、イメージセンサ(5)の走査に同期させて投光光源(2)を点灯し、イメージセンサ(5)の走査後に行われるデコード処理の際には投光光源(2)を消灯している。しかしながら、特許文献1の技術では、情報コードの読み取りを行わない場合であっても定期的に撮像動作が行われ、この撮像動作に合わせて投光光源(2)が点灯されるため、待機時の消費電力の増大が避けられないという問題がある。
【0005】
一方、関連技術として、特許文献2のようなものも提供されている。この特許文献2では、走査モードと休眠モードとに切り替え可能なレーザ走査装置が提供されており、このレーザ走査装置では、走査モードのときに復号が成功した場合には走査モードを継続しており、走査モードにおいて走査装置が所定時間使用されない場合には、走査モードから低消費電力の休眠モードに切り替えている。一方、休眠モードでは、物体センサ回路(30)によって物体の近接を監視しており、物体センサ回路(30)が物体を検出した場合に、再び走査モードに復帰させている。この構成では、休眠モード中の消費電力を低減するという効果は得られるが、休眠モードからの自動的な復帰のために別途物体センサ回路(30)が必要となるため、装置構成の大型化、部品点数の増大が避けられない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、照明光源によって情報コードを照射可能な光学的情報読取装置において、照明光源を消灯可能として消費電力を抑えることができ、且つ装置の使用が予想される適切な時期に消灯状態から迅速かつ自動的に復帰し得る構成をハードウェア構成の複雑化を伴うことなく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、
情報コードに対して照明光を照射する照明光源と、
複数の受光素子によって前記情報コードからの反射光を受光する受光センサと、
前記受光センサの複数の受光素子から出力される出力信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
前記照明光源の点灯及び消灯を制御可能に構成され、所定の消灯条件が成立したときに前記照明光源を消灯状態に切り替える点灯制御手段と、
前記受光センサの駆動を制御するセンサ制御手段と、
を備えた光学的情報読取装置であって、
前記センサ制御手段は、前記点灯制御手段によって前記照明光源が前記消灯状態に制御されているときに前記受光センサを作動させており、
更に、前記消灯状態のときに前記受光センサからの前記出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視する信号監視手段を備え、
前記点灯制御手段は、前記消灯状態のときに前記信号監視手段によって前記所定の信号変化状態が検出された場合に前記照明光源を点灯状態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、点灯制御手段によって照明光源が消灯状態に制御されているときに、センサ制御手段が受光センサを作動させており、信号監視手段は、照明光源の消灯状態のときに受光センサからの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視している。そして、点灯制御手段は、照明光源の消灯状態のときに信号監視手段によって所定の信号変化状態が検出された場合に照明光源を点灯状態に切り替えている。
【0009】
この構成では、照明光源が不要となる時期に点灯制御手段によって照明光源を消灯し、消費電力を抑えることができる。また、照明光源が消灯状態のときであっても、センサ制御手段による受光センサの作動により、受光センサから出力信号を発生させることができ、照明光源の消灯状態のときに受光センサからの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを信号監視手段によって監視することができる。そして、受光センサからの出力信号が所定の信号変化状態となった場合(即ち、光学的情報読取装置が使用者等によって動かされた可能性があり、光学的情報読取装置の使用が予想される場合)には、点灯制御手段によって照明光源を点灯状態に自動的に切り替えることができる。従って、使用者が読み取り操作を開始しようとして光学的情報読取装置を動かした際に、迅速に点灯状態に復帰させることができ、且つ、例えば、スイッチが無い場合においても本案によって、消灯状態から復帰させるときの使用者の負担を軽減することができる。
【0010】
請求項2の発明では、受光センサが、センサ制御手段によって作動制御がなされているときに、複数の受光素子からの信号波形を複数回繰り返し出力するように構成されている。更に、信号監視手段は、消灯状態のときに複数の受光素子から複数回繰り返し出力される信号波形に基づいて所定の波形変化が発生したか否かを判定する変化判定手段を備えている。そして、点灯制御手段は、消灯状態のときに変化判定手段によって所定の波形変化が発生したと判定された場合に照明光源を点灯状態に切り替えている。
【0011】
この構成では、消灯状態のときに、受光センサの複数の受光素子から異なるタイミングで信号を取得し、信号波形を生成することができる。このような構成を前提として、複数回繰り返し出力される信号波形に基づいて所定の波形変化が生じたか否かを判定するようにすれば、例えば単一の受光素子によって受光状態を判断する場合等と比較してノイズ等の影響を受けにくくなり、受光センサへの光の入射状態が変化しているか否かをより正確に判断し易くなる。
【0012】
請求項3の発明では、変化判定手段が、消灯状態のとき、複数の受光素子から信号波形が出力される各回毎に、その出力された信号波形を、当該信号波形の前に複数の受光素子から出力された過去の信号波形と比較し、当該信号波形と過去の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0013】
この構成では、複数の受光素子から出力された信号波形を、当該信号波形の前に出力された過去の信号波形と比較して波形変化を判断することができるため、固定された基準と比較して波形変化を判断する場合等と比較して、より実環境を反映した判断が可能となる。特に、検出された信号波形を、過去の実際の信号波形と比較することができるため、受光センサへの光の入射状態がその過去の信号波形のときの入射状態から変化したか否かを判断することができる。従って、過去の信号波形のときから受光センサが移動されたか否か(即ち、光学的情報読取装置が移動されたか否か)をより正確に判断し易くなり、光学的情報読取装置が把持された使用直前状態等をより確実に検出して点灯状態に移行することができる。
【0014】
請求項4の発明では、デコード手段において、受光センサにおける複数の受光素子からの信号波形を二値化する二値化部と、二値化部によって信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード部とが設けられている。更に、信号監視手段は、二値化部によって二値化される前の信号波形をAD変換するAD変換部を有しており、変化判定手段は、消灯状態のとき、AD変換部によって信号波形がAD変換される毎に、その変換されたデジタル信号を、当該デジタル信号の前にAD変換された過去のデジタル信号と比較し、当該デジタル信号と過去のデジタル信号との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0015】
この構成では、二値化部による二値化信号の生成処理とは関係なく、二値化処理と並行して、「所定の波形変化が発生したか否か」を判断することができる。従って、二値化処理に制約を受けることなく独立して波形変化を判断することができる。また、二値化した上で波形変化の判断処理を行う構成等と比較して波形変化の判断処理を迅速に行いやすくなる。
【0016】
請求項5の発明では、変化判定手段が、消灯状態のときに、複数の受光素子から出力される信号波形における所定の複数位置の信号レベルと、当該信号波形の前に複数の受光素子から出力された過去の信号波形における所定の複数位置に対応する各位置の信号レベルとを比較し、信号レベル差が閾値を超える変化が所定個数生じたか否かを判定している。また、点灯制御手段は、変化判定手段によって所定個数を超える変化が生じたと判定された場合に照明光源を点灯状態に切り替えている。
【0017】
この構成では、消灯状態のときに、複数の受光素子における所定の複数位置の現在及び過去の信号波形を比較し、所定個数を超える位置で信号レベルの変化が生じたか否かを判定することができる。従って、時間の経過に伴い、受光センサの複数の位置で受光レベルの変化が生じているか否かをより客観的に評価することができる。そして、このような複数位置の客観的な評価に基づいて変化が確認される場合に照明光源を点灯状態に切り替えるようにすれば、ノイズ等の影響をより抑え、変化の生じた蓋然性の高いタイミング(即ち、使用者によって把持された蓋然性の高いタイミング)で照明光源を駆動することができる。
【0018】
請求項6の発明では、変化判定手段が、消灯状態のときに、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形を、当該信号波形が出力される直前の回に複数の受光素子から出力された信号波形と比較し、当該信号波形と直前の回の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0019】
受光センサの周囲環境が次第に変化するような場合など、装置が載置された状態であっても信号波形に緩やかな変化が生じる場合には、検出された信号波形が、比較対象となる信号波形が検出された時期から相当回数前であって時間が経ち過ぎていると、信号波形の変化が大きくなりやすく、誤検出が生じやすくなる。しかしながら、上記構成によれば、信号波形に緩やかな変化が生じる場合であっても誤検出が生じにくくなる。一方、信号波形に緩やかな変化が生じる場合であっても、装置が載置された状態から把持された状態に変化すると、受光センサに入射する光に急激に変化が生じることになる。上記構成では、このような場合の信号波形の変化については確実に検出することができ、その結果、入射光に急激な変化が生じた適切な時期に照明光源を駆動できるようになる。
【0020】
請求項7の発明では、変化判定手段が記憶手段を備えており、この記憶手段は、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形の内、点灯制御手段によって照明光源が消灯状態に切り替えられた直後の回に出力された信号波形を記憶している。また、変化判定手段は、消灯状態のときに、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形を、直後の回に複数の受光素子から出力された信号波形と比較し、当該信号波形と直後の回の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0021】
このようにすると、照明光源が消灯状態に切り替えられた直後の回の信号波形を基準として信号波形の変化をより敏感に検出することができ、信号波形の変化が推測される場合に迅速に点灯状態に復帰させやすくなる。
【0022】
請求項8の発明では、デコード手段において、受光センサにおける複数の受光素子からの信号波形を二値化する二値化部と、二値化部によって信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード部とが設けられている。更にデコード手段は、点灯制御手段によって照明光源が消灯状態に制御されているときにデコード部によるデコード処理を中止すると共に少なくとも二値化部の電源をオフ状態とし、信号監視手段によって所定の信号状態が検出された場合にデコード部によるデコード処理を開始可能とすると共に二値化部の電源をオン状態とするように構成されている。
【0023】
この構成によれば、照明光源が消灯状態に制御され、情報コードが読み取られない状況下において、デコード処理を中止し且つ二値化部の電源をオフ状態とすることができ、その結果、より一層の省電力化を図ることができる。一方、受光センサからの出力信号が所定の信号変化状態となり(すなわち、光学的情報読取装置が使用者等によって動かされた可能性が高く)、光学的情報読取装置の使用が予想される場合には、デコード部によるデコード処理が開始可能となり、且つ二値化部の電源がオン状態に維持されるため、情報コードの読み取りに応じて当該情報コードを迅速にデコードできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図3】図3は、消灯状態における受光センサからの出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。
【図4】図4は、消灯状態において受光センサから繰り返し出力される出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。
【図5】図5は、所定時期(n番目の時期)における所定複数素子(所定複数位置)での検出結果と、その前回(n−1番目の時期)における所定複数素子(所定複数位置)での検出結果と、それら所定複数位置の各々において今回と前回の電位の差が基準閾値Vs以上となったか否の判断結果を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図面を参照しつつ説明する。
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図であり、まず、図1等を参照して本実施形態に係る光学的情報読取装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、バーコード等の情報コードBを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、図示しないケースによって外郭が構成され、このケース内に各種電子部品が収容された構成をなしている。
【0026】
この光学的情報読取装置1は、主に、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等の光学系と、ローパスフィルタ31、二値化回路33、A/D変換回路34、制御回路40、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系などから構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいはケース(図示略)内に内装されている。
【0027】
光学系は、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等から構成されている。
照明光源20は、例えば、赤色のLEDと、このLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等を備え、赤色の照明光Lfを照射する構成をなしている。本実施形態では、受光センサ26を挟んだ両側に照明光源20が設けられており、ケースに形成された読取口(図示略)を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rとしては、例えば、樹脂材料、金属材料、紙等の様々な物体などが挙げられ、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、このような読取対象物Rにおいて、印刷、ダイレクトマーキングなどによる加工、或いは表示装置による表示等によって示された情報コードを読み取るように構成されている。なお、以下の説明では、情報コードとしてバーコードBを例示して説明するが、QRコード、データマトリックコード、マキシコードなどの二次元コードに置き換えてもよい。
【0028】
受光センサ26は、読取対象物Rや情報コードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサ、或いは2次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。この受光センサ26は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光面26aで受光し得るように図略のプリント配線板に実装されている。また、受光センサ26は、制御回路40から設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が入力される構成をなしており、制御回路40からの各パルスの入力と同期させて各受光素子の信号が順番に出力される構成となっている。
【0029】
なお、以下の説明では、受光センサ26がラインセンサとして構成される例を代表例として説明する。この代表例では、例えば、受光センサ26の各受光素子において、受光量が大きいほど高い電位の受光信号が出力されるようになっている。
【0030】
光学フィルタ28は、照明光Lfに対応する所定周波数帯の光を通過させ、当該所定周波数帯以外の光を抑制する機能を有している。また、結像レンズ27は、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとによって構成されており、本実施形態では、ケースに形成された読取口(図示略)に入射する反射光Lrを集光し、受光センサ26の受光面26aに情報コードBのコード画像を結像するように構成されている。
【0031】
マイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40及びメモリ(図示略)を中心として構成され、前述した光学系によって撮像された情報コードBの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。なお、上記メモリ(図示略)は、半導体メモリ装置であり、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリのうちのRAMには、画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域などが確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源20、受光センサ26等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0032】
制御回路40は、光学的情報読取装置1全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるものであり、情報処理機能を有している。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)が接続されており、本実施形態の場合、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。また、通信インタフェース48には、光学的情報読取装置1の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどを接続できるようになっている。
【0033】
ローパスフィルタ回路31は、受光センサ26の出力側に設けられ、受光センサ26から出力される受光信号を入力信号として、当該受光信号の高周波成分を除去する機能を有している。このローパスフィルタ回路31は、公知のローパスフィルタとして構成されており、予め規定されたカットオフ周波数以下の周波数の信号を減衰させずに通過させ、カットオフ周波数を超える高周波領域の信号については、入力信号の周波数が高くなるほど、フィルタを通った出力信号が抑制(減衰)される構成をなしている。
【0034】
ローパスフィルタ回路31は、例えば非反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタ(オペアンプを用いた公知のローパスフィルタ)によって構成することができる。或いは、オペアンプを用いない公知のCRフィルタであってもよい(この場合、受光センサ26とローパスフィルタ回路31との間に別途増幅回路を設けることが望ましい)。
【0035】
二値化回路33は、「二値化部」の一例に相当するものであり、受光センサ26における複数の受光素子からの信号波形を二値化する機能(より詳しくはローパスフィルタ回路31から出力された信号を二値データに変換する機能)を有している。この二値化回路は、例えば、ローパスフィルタ回路31からの出力信号(高周波ノイズが除去された受光信号)を設定された閾値と比較して、閾値以上の場合には、Hレベル信号を出力し、閾値未満の場合にはLレベル信号を出力する。なお、二値化回路33から出力される信号は、情報コードBのパターンデータとして、制御回路40設けられた又は制御回路40に接続されたメモリ(図示略)に蓄積されるようになっている。
【0036】
A/D変換回路34は、「AD変換部」の一例に相当するものであり、二値化回路33によって二値化される前の信号波形(即ち、ローパスフィルタ31から出力された信号波形)をAD変換し、制御回路40に入力するように機能している。なお、A/D変換回路34は、制御回路40を主体とするマイクロコンピュータの一部として構成されていてもよく、別部品として構成されていてもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、商用電源或いは電池などから供給される電力に基づいて電源電圧を発生させる電源回路なども設けられている。
【0038】
(読取処理)
次に、本実施形態に係る光学的情報読取装置1で行われる読取処理について図2等を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態に係る光学的情報読取装置1にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。図3は、消灯状態における受光センサからの出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。図4は、消灯状態において受光センサから繰り返し出力される出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。図5は、所定時期(n番目の時期)における所定複数素子(所定複数位置)での検出結果と、その前回(n−1番目の時期)における所定複数素子(所定複数位置)での検出結果と、それら所定複数位置の各々において今回と前回の電位の差が基準閾値Vs以上となったか否の判断結果を例示する説明図である。
【0039】
図2に示す読取処理は、例えば電源投入、或いは、外部装置(外部コンピュータ等)からの指示等をトリガとして制御回路40によって実行されるものであり、まず、照明光源20を点灯する処理を行う(S1)。そして、制御回路40内又は制御回路40外に設けられたタイマによって時間計測を開始する(S2)。その後、情報コード(図2の例ではバーコード)が検出されたか否かを判断する(S3)。本実施形態では、読取処理の開始後、受光センサ26による撮像が所定の短時間毎に繰り返し行われるようになっており、S3では、S3の直前に撮像された撮像画像において、バーコードを確認することができるか否かを判断する。なお、ラインセンサでの撮像画像においてバーコードが存在するか否かの確認は、公知の方法で行うことができ、例えば、二値化回路33によって二値化されたデータが、予定されたバーコードに対応する所定条件を満たすデータであるか否か(例えば、明色領域の個数が所定の個数条件を満たすか否か、暗色領域の個数が所定の個数条件を満たすか否か、明色領域或いは暗色領域の幅が所定の幅条件を満たすか否か等)を確認することで行うことができる。
【0040】
S3でバーコードが検出された場合には、S3にてYesに進み、S3で検出と判断された撮像画像に基づいて、公知のデコード処理を行う(S4)。
なお、本実施形態では、二値化回路33及び制御回路40が「デコード手段」の一例に相当し、受光センサ26の複数の受光素子から出力される出力信号に基づいてデコード処理を行うように機能する。また、制御回路40は「デコード部」の一例に相当し、二値化回路33(二値化部)によって信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行うように機能している。
【0041】
S4でデコード処理を行った後には、S4でのデコード処理が成功したか否かを判断し(S5)、S4のデコード処理が成功した場合には、S5にてYesに進み、デコード結果を出力する(S6)。このS6の処理では、例えばS4で解読されたデータを、通信インタフェース48を介して外部コンピュータなどに出力する。また、S5において、デコード処理が失敗したと判断された場合には、S5においてNoに進み、デコード処理を再び行う(S4)。なお、S4のデコード処理が所定回数失敗した場合に、エラー報知等を行ったり、S3の処理に戻るようにしてもよい。
【0042】
一方、S3でバーコードが検出されなかった場合には、S2で計測が開始されたタイマの時間Tが所定時間(図2の例では5秒)以上経過しているか否かを判断し(S7)、経過していなければS7でYesに進み、S3に戻って再びバーコードが検出されたか否かを判断する。
【0043】
本実施形態では、受光センサ26による出力タイミングが、センサ制御手段に相当する制御回路40によって制御されるようになっており、制御回路40によって受光センサ26の作動制御がなされているときには、受光センサ26を構成する複数の受光素子からの信号波形が所定の短時間毎に複数回繰り返し出力されるようになっている。そして、S3及びS7では、バーコードが検出されるか、タイマの時間が5秒以上となるまでは、S3でNo、S7でYesの処理が繰り返され、この期間中は、受光センサ26から受光信号が出力される毎に、S3の判断処理を行うことになる。
【0044】
S7の判断処理においてNoと判断される場合(即ち、S2のタイマスタートから5秒以上経過してもバーコードが検出されなかった場合)には、照明光源20を消灯する制御を行う(S8)。そして、その消灯制御後に、波形観察処理を行う(S9)。
なお、本実施形態では、制御回路40が「点灯制御手段」の一例に相当し、照明光源20の点灯及び消灯を制御可能に構成され、所定の消灯条件が成立したときに照明光源20を消灯状態に切り替えるように機能する。なお、図2の例では、「S1での照明光源20の点灯後、一定時間(図2では5秒)以上バーコードが検出されなかった場合」を「所定の消灯条件」として例示している。
【0045】
本実施形態に係る光学的情報読取装置1において、センサ制御手段に相当する制御回路40は、S8で照明光源20が消灯された後(即ち、点灯制御手段によって照明光源20が消灯状態に制御されているとき)にも、受光センサ26を作動させており、受光センサ26によって所定の短時間T1毎に画像を撮像し、その撮像結果を出力している(図5も参照)。S9では、このような受光センサ26での受光波形を観察し、評価する処理を行っている。
【0046】
本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、ライン状に構成される受光センサ26から信号が出力される各回毎に、そのライン状に配列された各受光素子からの信号が時間t1〜tzの間で順次出力されるようになっている。例えば、2000程度の受光素子が一列で配列されて受光センサ26が構成されており、図3に示すように、受光センサ26の列方向一端に配置された受光素子の信号が時間t1で出力され、その一端側から配列順に受光素子からの信号が出力されるようになっている。そして、最後の受光素子(列方向他端の受光素子)からの信号が時間tzで出力されるようになっている。図3の波形は、2000程度の各受光素子から順次出力された信号を時系列で示しており、一端の受光素子からの出力時間が最も早いt1となっており、他端の受光素子からの出力時間が最も遅いtzとなっている。
【0047】
消灯状態において受光センサ26を構成する複数の受光素子から上記のような信号波形が出力される各回毎に、S9の処理では、その出力された信号波形を、当該信号波形の前にこれら複数の受光素子から出力された過去の信号波形と比較し、当該信号波形と過去の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。具体的には、S8以降の消灯状態のときに、複数の受光素子から出力される信号波形の所定の複数位置(P1〜P32)の信号レベルと、当該信号波形の直前回に複数の受光素子から出力された過去の信号波形(具体的には、当該信号波形の直前回の信号波形)における前記複数位置(P1〜P32)に対応する各位置の信号レベルとを比較し、信号レベル差が閾値Vsを超える変化が所定個数Ps以上生じたか否かを判定している。なお、図3に示すように、複数の受光素子における信号レベルを比較する位置は、例えば、2000程度配列された受光素子における所定間隔おきの32位置程度とすることができ、図2のS10では、これら32位置において、前回と今回とで信号レベル差(図3の例では電位の差)が閾値Vs以上となっている位置の数がPs以上となっているか否かを判断している。
【0048】
図4、図5では、S9、S10での観察、判断処理での具体例を示しており、S9で観察対象となる今回の信号波形をW(n)とし、その直前の回に受光センサ26から出力された信号波形をW(n−1)としている。そして、各位置Pm(m=1〜32)毎に、信号レベル差がVs以上となっているか否かを判断している。例えば、図5の例では、今回の信号波形Wnにおける位置P1(図3も参照)の信号レベル(電位)V1(n)と前回の信号波形W(n−1)における同位置(即ち同一の受光素子)P1の信号レベルV1(n−1)とを比較しており、その差がVs未満となっている場合を例示している(従って、Vs以上の変化が生じておらず、×となっている)。また、位置P1の受光素子から所定距離を隔てた受光素子の位置P2(図3も参照)についても同様であり、今回の信号波形Wnにおける位置P2の信号レベル(電位)V2(n)と前回の信号波形W(n−1)における同位置(即ち同一の受光素子)P2の信号レベルV2(n−1)とを比較しており、その差がVs以上となっている(即ち、Vs以上の変化が生じており、○となっている)。S9では、今回の信号波形W(n)と前回の信号波形W(n−1)についてのこのような比較を、位置P3、P4、P5についても同様に行い、予定された位置P32まで32位置について行う。そして、これら32位置において前回と今回とでVs以上の変化が生じた位置がPs個(例えば12個)未満である場合には、S10にてNoに進み、再びS9の処理を行う。前回と今回とでVs以上の変化が生じた位置がPs個(例えば12個)以上となるまでは、受光センサ26から信号波形が出力される毎にこのようなS9、S10の処理が繰り返されることになる。
【0049】
一方、上記32位置において前回と今回とでVs以上の変化が生じた位置がPs個(例えば12個)以上である場合には、S10にてYesに進み、S1に戻って照明光源20を点灯してS1以降の処理を行う。
【0050】
なお、本実施形態では、A/D変換回路34及び制御回路40が「信号監視手段」の一例に相当し、消灯状態のときに受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視するように機能している。
【0051】
また、S10の処理を実行する制御回路40は、「変化判定手段」の一例に相当し、消灯状態のときに複数の受光素子から複数回繰り返し出力される信号波形に基づいて所定の波形変化が発生したか否かを判定するように機能しており、具体的には、消灯状態において受光センサ26の全受光素子からの信号波形がAD変換回路34によってAD変換される毎に、その変換されたデジタル信号を、当該デジタル信号の直前回の全受光素子からの信号がAD変換されてなる過去のデジタル信号と比較し、当該デジタル信号と過去のデジタル信号との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0052】
そして、点灯制御手段に相当する制御回路40は、消灯状態のときに信号監視手段によって所定の信号変化状態が検出された場合に、S1にて照明光源20を点灯状態に切り替えており、具体的には、S8以降の消灯状態のときに変化判定手段によって所定の波形変化が発生したと判定された場合(より詳しくは、前回と今回の信号波形においてPs以上の位置でVs以上の信号レベル差(電位差)が生じたと判定され、S10にてYesとなった場合)に照明光源20を点灯状態に切り替えている。
【0053】
また、デコード手段に相当する二値化回路33及び制御回路40では、照明光源20が消灯状態に制御されているとき(S8以降、S10でYesとなるまでの間)に制御回路40でのデコード処理を中止し且つ二値化回路33の電源をオフ状態としており、信号監視手段によって上記所定の信号状態が検出された場合(即ち、S10にてYesとなった場合)に、二値化回路33の電源をオン状態とし、且つS3でYesとなることを条件として制御回路40によるデコード処理を開始するようにしている。
【0054】
(第1実施形態の主な効果)
第1実施形態に係る光学的情報読取装置1では、点灯制御手段によって照明光源20が消灯状態に制御されているときに、センサ制御手段が受光センサ26を作動させており、信号監視手段は、照明光源20の消灯状態のときに受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視している。そして、点灯制御手段は、照明光源20の消灯状態のときに信号監視手段によって所定の信号変化状態が検出された場合に照明光源20を点灯状態に切り替えている。
【0055】
この構成では、照明光源20が不要となる時期に点灯制御手段によって照明光源20を消灯し、消費電力を抑えることができる。また、照明光源20が消灯状態のときであっても、センサ制御手段による受光センサ26の作動により、受光センサ26から出力信号を発生させることができ、照明光源20の消灯状態のときに受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを信号監視手段によって監視することができる。そして、受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となった場合(即ち、光学的情報読取装置1が使用者等によって動かされた可能性があり、光学的情報読取装置1の使用が予想される場合)には、点灯制御手段によって照明光源20を点灯状態に自動的に切り替えることができる。従って、使用者が読み取り操作を開始しようとして光学的情報読取装置1を動かした際に、迅速に点灯状態に復帰させることができ、且つ消灯状態から復帰させるときの使用者の負担を軽減することができる。
【0056】
特に、本実施形態の光学的情報読取装置1では、特別なトリガスイッチが設けられておらず、部品点数の削減、小型化を図ることができるが、このようにトリガスイッチを省略した構成では、読取操作を行わないときの省電力モードへの移行或いは省電力モードからの復帰が問題となる。これに対し、本実施形態の光学的情報読取装置1では、特別なセンサなどを設けずに、読み取りに必須となる受光センサ26を利用して使用時であるか不使用時であるかを判断し、照明光源20の点灯、消灯を自動で制御している。従って、ハードウェア構成の複雑化を伴うことなく、装置の不使用が予想される時期に自動的に消灯状態とすることができ、装置の使用が予想される時期に消灯状態から迅速かつ自動的に復帰し得る利便性の高い構成を実現できる。
【0057】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、受光センサ26が、センサ制御手段によって作動制御がなされているときに、複数の受光素子からの信号波形を複数回繰り返し出力するように構成されている。更に、信号監視手段は、消灯状態のときに複数の受光素子から複数回繰り返し出力される信号波形に基づいて所定の波形変化が発生したか否かを判定する変化判定手段を備えている。そして、点灯制御手段は、消灯状態のときに変化判定手段によって所定の波形変化が発生したと判定された場合に照明光源20を点灯状態に切り替えている。
【0058】
この構成では、消灯状態のときに、受光センサ26の複数の受光素子から異なるタイミングで信号を取得し、信号波形を生成することができる。このような構成を前提として、複数回繰り返し出力される信号波形に基づいて所定の波形変化が生じたか否かを判定するようにすれば、例えば単一の受光素子によって受光状態を判断する場合等と比較してノイズ等の影響を受けにくくなり、受光センサ26への光の入射状態が変化しているか否かをより正確に判断し易くなる。
【0059】
また、第1実施形態に係る光学的情報読取装置1では、消灯状態のとき、複数の受光素子から信号波形が出力される各回毎に、その出力された信号波形を、当該信号波形の前に複数の受光素子から出力された過去の信号波形と比較し、当該信号波形と過去の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0060】
この構成では、複数の受光素子から出力された信号波形を、当該信号波形の前に出力された過去の信号波形と比較して波形変化を判断することができるため、固定された基準と比較して波形変化を判断する場合等と比較して、より実環境を反映した判断が可能となる。特に、検出された信号波形を、過去の実際の信号波形と比較することができるため、受光センサへの光の入射状態がその過去の信号波形のときの入射状態から変化したか否かを判断することができる。従って、過去の信号波形のときから受光センサ26が移動されたか否か(即ち、光学的情報読取装置1が移動されたか否か)をより正確に判断し易くなり、光学的情報読取装置1が把持された使用直前状態等をより確実に検出して点灯状態に移行することができる。
【0061】
また、第1実施形態に係る光学的情報読取装置1では、受光センサ26における複数の受光素子からの信号波形を二値化する二値化回路33(二値化部)と、二値化回路33によって信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行う制御回路40(デコード部)とが設けられている。更に、信号監視手段は、二値化回路33によって二値化される前の信号波形をAD変換するA/D変換回路34(AD変換部)を有しており、変化判定手段に相当する制御回路40は、消灯状態のとき、AD変換回路34によって信号波形がAD変換される毎に、その変換されたデジタル信号を、当該デジタル信号の前にAD変換された過去のデジタル信号と比較し、当該デジタル信号と過去のデジタル信号との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0062】
この構成では、二値化回路33による二値化信号の生成処理とは関係なく、二値化処理と並行して、「所定の波形変化が発生したか否か」を判断することができる。従って、二値化処理に制約を受けることなく独立して自由度高く波形変化を判断することができる。また、二値化した上で波形変化の判断処理を行う構成等と比較して波形変化の判断処理を迅速に行いやすくなる。
【0063】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、変化判定手段に相当する制御回路40は消灯状態のときに、複数の受光素子から出力される信号波形における所定の複数位置の信号レベルと、当該信号波形の前に複数の受光素子から出力された過去の信号波形における所定の複数位置に対応する各位置の信号レベルとを比較し、信号レベル差が閾値を超える変化が所定個数生じたか否かを判定している。また、点灯制御手段に相当する制御回路40は、所定個数を超える変化が生じたと判定された場合に照明光源20を点灯状態に切り替えている。
【0064】
この構成では、消灯状態のときに、複数の受光素子における所定の複数位置の現在及び過去の信号波形を比較し、所定個数を超える位置で信号レベルの変化が生じたか否かを判定することができる。従って、時間の経過に伴い、受光センサ26の複数の位置で受光レベルの変化が生じているか否かをより客観的に評価することができる。そして、このように、複数位置の客観的な評価に基づいて変化が確認される場合に照明光源20を点灯状態に切り替えるようにすれば、ノイズ等の影響をより抑え、変化の生じた蓋然性の高いタイミング(即ち、使用者によって把持された蓋然性の高いタイミング)で照明光源20を駆動することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、変化判定手段に相当する制御回路40が、消灯状態のときに、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形を、当該信号波形が出力される直前の回に複数の受光素子から出力された信号波形と比較し、当該信号波形と直前の回の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定している。
【0066】
受光センサの周囲環境が次第に変化するような場合など、装置が載置された状態であっても信号波形に緩やかな変化が生じる場合には、検出された信号波形が、比較対象となる信号波形が検出された時期から相当回数前であって時間が経ち過ぎていると、信号波形の変化が大きくなりやすく、語検出が生じやすくなる。しかしながら、上記構成によれば、信号波形に緩やかな変化が生じる場合であっても誤検出が生じにくくなる。一方、信号波形に緩やかな変化が生じる場合であっても、装置が載置された状態から把持された状態に変化すると、受光センサに入射する光に急激に変化が生じることになる。上記構成では、このような場合の信号波形の変化については確実に検出することができ、その結果、入射光に急激な変化が生じた適切な時期に照明光源20を駆動できるようになる。
【0067】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、点灯制御手段によって照明光源20が消灯状態に制御されているときに制御回路40(デコード部)によるデコード処理を中止すると共に少なくとも二値化回路33(二値化部)の電源をオフ状態としている。一方、信号監視手段によって所定の信号状態が検出された場合に制御回路40(デコード部)によるデコード処理を開始可能とすると共に二値化回路33(二値化部)の電源をオン状態としている。
【0068】
この構成によれば、照明光源20が消灯状態に制御され、情報コードが読み取られない状況下において、デコード処理を中止し且つ二値化回路33(二値化部)の電源をオフ状態とすることができる。その結果、より一層の省電力化を図ることができる。一方、受光センサ26からの出力信号が所定の信号変化状態となり(すなわち、光学的情報読取装置1が使用者等によって動かされた可能性が高く)、光学的情報読取装置1の使用が予想される場合には、制御回路40(デコード部)によるデコード処理が開始可能となり、且つ二値化回路33(二値化部)の電源がオン状態に維持されるため、情報コードの読み取りに応じて当該情報コードを迅速にデコードできるようになる。
【0069】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
第1実施形態の例(図2の例)では、「S1での照明光源20の点灯後、一定時間(図2では5秒)以上バーコードが検出されなかった場合」を「所定の消灯条件」として例示しているが、一定時間の例は5秒に限られず、これよりも長くても、短くてもよい。また、他の条件であってもよい。例えば、S1での点灯後、S3の判断処理において所定回数を超えてNoとなった場合(即ち、バーコードが検出されなかった場合)を「所定の消灯条件」とし、このような場合にS8以降の処理を行うようにしてもよい。
【0071】
上記実施形態では、S9の波形観察処理において、S9の対象となる信号波形(今回の信号波形)をその直前回の信号波形と比較したが、このような構成に限られない。例えば、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形の内、点灯制御手段によって照明光源20が消灯状態に切り替えられた直後の回に出力された信号波形(即ち、S8が行われた後に最初に出力される受光センサ26からの信号波形)を図示しないメモリ(記憶手段)記憶するようにしてもよい。そして、S8以降の消灯状態のときには、複数の受光素子から複数回繰り返して出力される信号波形を、S9の処理が行われる毎に、そのメモリに記憶される信号波形(前記直後の回に複数の受光素子から出力された信号波形)と比較し、当該信号波形と直後の回の信号波形との間で所定の波形変化が発生したか否かを判定するようにしてもよい。なお、S9、S10で比較対象となる今回の信号波形と前記直後の回の信号波形との比較は、第1実施形態のS9、S10で行われた比較(今回の信号波形とその直前の回の信号波形との比較)と同様に行うことができ、例えば、2000程度配列された受光素子における所定間隔おきの32位置(図3参照)において、前記直後の回と今回とで信号レベル差(電位の差)が閾値Vs以上となっている位置の数がPs以上となっているか否かを判断するようにすればよい。
このようにすると、照明光源20が消灯状態に切り替えられた直後の回の信号波形を基準として信号波形の変化をより敏感に検出することができ、信号波形の変化が推測される場合に迅速に点灯状態に復帰させやすくなる。
【符号の説明】
【0072】
1…光学的情報読取装置
20…照明光源
26…受光センサ
33…二値化回路(デコード手段、二値化部)
34…A/D変換回路(信号監視手段、A/D変換部)
40…制御回路(デコード手段、点灯制御手段、センサ制御手段、信号監視手段、変化判定手段、デコード部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードに対して照明光を照射する照明光源と、
複数の受光素子によって前記情報コードからの反射光を受光する受光センサと、
前記受光センサの複数の受光素子から出力される出力信号に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
前記照明光源の点灯及び消灯を制御可能に構成され、所定の消灯条件が成立したときに前記照明光源を消灯状態に切り替える点灯制御手段と、
前記受光センサの駆動を制御するセンサ制御手段と、
を備えた光学的情報読取装置であって、
前記センサ制御手段は、前記点灯制御手段によって前記照明光源が前記消灯状態に制御されているときに前記受光センサを作動させており、
更に、前記消灯状態のときに前記受光センサからの前記出力信号が所定の信号変化状態となったか否かを監視する信号監視手段を備え、
前記点灯制御手段は、前記消灯状態のときに前記信号監視手段によって前記所定の信号変化状態が検出された場合に前記照明光源を点灯状態に切り替えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記受光センサは、前記センサ制御手段によって作動制御がなされているときに、前記複数の受光素子からの信号波形を複数回繰り返し出力するように構成されており、
前記信号監視手段は、前記消灯状態のときに前記複数の受光素子から複数回繰り返し出力される前記信号波形に基づいて所定の波形変化が発生したか否かを判定する変化判定手段を備え、
前記点灯制御手段は、前記消灯状態のときに前記変化判定手段によって前記所定の波形変化が発生したと判定された場合に前記照明光源を点灯状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記変化判定手段は、前記消灯状態のとき、前記複数の受光素子から前記信号波形が出力される各回毎に、その出力された信号波形を、当該信号波形の前に前記複数の受光素子から出力された過去の信号波形と比較し、当該信号波形と前記過去の信号波形との間で前記所定の波形変化が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記デコード手段は、
前記受光センサにおける前記複数の受光素子からの前記信号波形を二値化する二値化部と、
前記二値化部によって前記信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード部と、
を備え、
前記信号監視手段は、前記二値化部によって二値化される前の前記信号波形をAD変換するAD変換部を有し、
前記変化判定手段は、前記消灯状態のとき、前記AD変換部によって前記信号波形がAD変換される毎に、その変換されたデジタル信号を、当該デジタル信号の前にAD変換された過去のデジタル信号と比較し、当該デジタル信号と前記過去のデジタル信号との間で前記所定の波形変化が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記変化判定手段は、前記消灯状態のときに、前記複数の受光素子から出力される前記信号波形における所定の複数位置の信号レベルと、当該信号波形の前に前記複数の受光素子から出力された過去の信号波形における前記所定の複数位置に対応する各位置の信号レベルとを比較し、信号レベル差が閾値を超える変化が所定個数生じたか否かを判定し、
前記点灯制御手段は、前記変化判定手段によって前記所定個数を超える変化が生じたと判定された場合に前記照明光源を前記点灯状態に切り替えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記変化判定手段は、前記消灯状態のときに、前記複数の受光素子から複数回繰り返して出力される前記信号波形を、当該信号波形が出力される直前の回に前記複数の受光素子から出力された信号波形と比較し、当該信号波形と前記直前の回の信号波形との間で前記所定の波形変化が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記変化判定手段は、
前記複数の受光素子から複数回繰り返して出力される前記信号波形の内、前記点灯制御手段によって前記照明光源が前記消灯状態に切り替えられた直後の回に出力された信号波形を記憶する記憶手段を備え、
前記消灯状態のときに、前記複数の受光素子から複数回繰り返して出力される前記信号波形を、前記直後の回に前記複数の受光素子から出力された信号波形と比較し、当該信号波形と前記直後の回の信号波形との間で前記所定の波形変化が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記デコード手段は、
前記受光センサにおける前記複数の受光素子からの前記信号波形を二値化する二値化部と、
前記二値化部によって前記信号波形を二値化して得られる二値化信号に基づいてデコード処理を行うデコード部と、
を備え、
前記点灯制御手段によって前記照明光源が前記消灯状態に制御されているときに前記デコード部によるデコード処理を中止すると共に少なくとも前記二値化部の電源をオフ状態とし、前記信号監視手段によって前記所定の信号状態が検出された場合に前記デコード部によるデコード処理を開始可能とすると共に前記二値化部の電源をオン状態とすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−146120(P2012−146120A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3866(P2011−3866)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】