説明

光学的検出装置を含むバイオアッセイシステム、および生体分子を検出する方法

バイオアッセイシステムを開示する。バイオアッセイシステムは、複数の光学的検出装置を含んでいてよく、その各々が光検出器を有する基板、および光検出器上方に形成されるリンカー部位を含み、リンカー部位は、生体分子をリンカー部位に付着させるように処理されている。リンカー部位は、光検出器に近接し、かつ100μm以下の距離だけ光検出器から間隔が置かれる。光検出器は、0.8SIステラジアン以上の立体角の範囲内で生体分子から発生される光を収集する。光学的検出装置は、生体分子に付着する蛍光色素分子を励起するための光源を提供するように、基板上方に形成される励起光源をさらに含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学的検出装置を含むバイオアッセイシステム、ならびに、核酸などの生体分子を検出および分析するためのバイオアッセイシステムの使用に関するものである。より詳細には、本発明は、生体分子を検出および分析するために、いくつかの実施形態においては、多数の蛍光色素分子を並行してモニタリングするのに用いられる少なくとも1万個の光学的検出装置を含むバイオアッセイシステムに関するものである。
【0002】
本出願は、2007年10月25日に出願された米国仮特許出願第60/996016号および2008年3月14日に出願された米国仮特許出願第61/036652号の優先権の利益を主張し、その両者の全体の内容は、全体として参照して本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ヒトゲノム計画(HGP)は、シークエンシングの処理能力の著しい向上を加速し、その結果として、対応するシークエンシングコストを低下させた。13年およびほぼ30億USドルのコストと対照的に、ゲノム当たりのシークエンシングコストは著しく低下し、実際、最近2つの個人ゲノムが完成されている(非特許文献1)。個人ゲノムは、患者と医療関連機関の両方にとって、医療のパラダイムシフトを意味する。疾病の遺伝的危険因子を管理することにより、医療関連機関は、より容易に予防医学を実践できると共に、カスタマイズされた治療を提供できるようになる。多数の完成ゲノムバンクにより、薬物設計および投与は、より効率的となり、これにより誕生したばかりの薬理ゲノム学の分野が推進されることになる。
【0004】
個人向けのカスタマイズ医療を普及するため、アメリカ国立衛生研究所(NIH)国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)は、ゲノム当たりのシークエンシングコストを1,000万USドルから約1,000USドルまで低下させるという基準を定めた。しかしながら、従来の高処理能力キャピラリー電気泳動および自動ゲノムシークエンシング技術は、個人ゲノムシークエンシングに対する増加した需要を満たすことはできない。さらに、既存のシークエンシング法には、複雑かつエラーが起きやすい画像収集および解析のステップが必要とされる。例えば、多くの既存技術では、多重画像を捕捉するためにアレイまたは検出システムが移動することが必要とされる。次いで、その結果得られた画像を、タイル表示し、整列させ、かつ解析しなければならない。画像収集、処理、および解析のステップは、いずれもエラーが起こり易く、追加の時間がかかり、かつ高価な設備を必要とする。反対に、移動する光学装置を含まない既存のシステムは、通常、非常に少ない数の検出ユニットにより制限される。最後に、既存のデバイスでは、検出される分子が対応する検出ユニットにごく接近してセットされず、このことは検出信号の強度を実質的に制限する。
【0005】
したがって、核酸シークエンシングのコストを低減するために、デバイスに対する必要性が存在する。「1,000ドルゲノム」パラダイムに近づくためには、装置は、多数の分子を並行してシークエンシングすることが可能で、設計および製造プロセスが簡略化されると共に、既存の装置および方法の、複雑かつエラーが起きやすい走査および画像解析プロセスの必要性を回避するものでなければならない。さらに、装置は、単一の分子をシークエンシングすることができ、これによりクラスター化シークエンシング法の増幅(例えば、理想的にクローナルなテンプレートのシークエンス間のドリフト)およびシークエンシング(例えば、シークエンシングテンプレート間の段階的シークエンシング反応の位相ずれ)ステップの両方において知られている非同時性の困難を回避できるものでなくてはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マガイア(McGuire)ら、サイエンス(Science),317:1687(2007)
【発明の概要】
【0007】
本発明は、複数の光学的検出装置を含むバイオアッセイシステム、および核酸の検出、例えば、シークエンシングのために、このバイオアッセイシステムを用いる方法を提供する。本発明により提供されるバイオアッセイシステムは、大規模の並行シークエンシング反応が可能である、すなわち、多数の異なる核酸のテンプレートを同時にシークエンシングすることができるものである。各シークエンシング反応では、単一の分子をテンプレートとして用いる(すなわち、単一分子シークエンシング)。提供される装置は、さらに、設計が簡略化されており、現在の装置の、複雑で、高価で、かつエラーが起きやすい走査ステップおよび検出ステップの必要性をなくす。本発明により提供されるシステムの簡略化された設計および機能は、一部においては、検出される核酸が(直接的に、または、例えば、ポリメラーゼ分子により)付着するリンカー部位と、1個またはそれ以上の検出ユニット(例えば、光検出器)との直接的な対応に基づくものであり、また、一部においては、リンカー部位と検出ユニットとの間の短い距離に基づくものである。この核酸と検出ユニットとの間の短い距離は、いくつかの実施形態において、検出の大きい立体角により表される。
【0008】
ある態様において、検出ユニットにて単一の生体分子を同定するためのバイオアッセイシステムが提供される。このバイオアッセイシステムは、その各々が光検出器を備える基板を含む複数の光学的検出装置、および光検出器上方に形成されるリンカー部位を含んでいてよく、リンカー部位は、生体分子がリンカー部位に付着するように処理されており、このうち、リンカー部位は光検出器に近接している。いくつかの実施形態において、リンカー部位は、100μm以下の距離だけ光検出器から間隔が置かれ、光検出器は、0.8SIステラジアン以上の立体角の範囲内で生体分子から発生される光を収集する。光学的検出装置は、生体分子に付着した蛍光色素分子を励起するための光源を提供するように基板上方に形成された励起光源をさらに含んでいてもよい。
【0009】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの核酸を本発明により提供される光学的検出装置のリンカー部位に(直接的に、または、リンカー部位に結合された核酸ポリメラーゼを結合させることにより)連結させ、かつ対応する光検出器上で核酸を検出することにより核酸を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、核酸は、例えば、標識されたプローブへのハイブリダイゼーションにより検出される。いくつかの実施形態では、核酸は、光学的検出装置上で核酸シークエンシングを行うことにより検出される。いくつかの実施形態において、核酸シークエンシングの方法は、塩基伸長シークエンシング、末端標識リン酸シークエンシング、および混合塩基(wobble)シークエンシングから選択される。特定の実施形態では、シークエンシング反応は、塩基伸長シークエンシング反応である。さらなる特定の実施形態では、塩基伸長シークエンシング反応は、封鎖および標識されたヌクレオチドを光学的検出装置に添加するステップをさらに含む。またさらなる特定の実施形態においては、ヌクレオチドは、蛍光標識されている。
【0010】
また、本発明は、別の態様において、サンプル分子を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、標識されたサンプル分子を本発明により提供される光学的検出装置上のリンカー部位に付着させるステップ、および対応する光検出器上でサンプル分子を検出するステップを含む。いくつかの実施形態においては、サンプル分子は、連結分子によりリンカー部位に付着させられる。いくつかの実施形態では、連結分子は、1)サンプル分子を結合させるのに適当な捕捉分子、および2)核酸タグを含む。特定の実施形態では、サンプル分子は、連結分子がリンカー部位にすでに付着している光学的検出装置であって、本発明により提供される光学的検出装置に塗布される。別の実施形態では、サンプル分子が連結分子を結合させるようにしてもよく、次いで、その結合複合体を光学的検出装置に塗布してリンカー部位に付着させるようにする。特定の実施形態では、サンプル分子は、生体分子、例えば、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖、または代謝産物である。
【0011】
以上の概略的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも例示的および説明的なものにすぎず、クレームに係る発明を限定するものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従った光学的検出装置のアレイを含むバイオアッセイシステムを示す平面図である。
【図2】本発明に従った実施形態による光学的検出装置を示す、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図3】本発明に従った光学的検出装置の寸法の詳細を示す断面図である。
【図4】本発明に従った別の実施形態による光学的検出装置を示す、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図5】本発明に従った実施形態によるフィルター層の構造を示す表である。
【図6】本発明に従った装置のリンカー部位上に連結した核酸を示す。
【図7】封鎖および標識されたヌクレオチドを用いた1回の塩基伸長後の装置のリンカー部位上に連結した核酸を示す。
【図8】図7に示した塩基伸長シークエンシング反応の別の実施形態を示す。
【図9】塩基伸長シークエンシングによる並行した数個の核酸の1回のシークエンシングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に従った実施形態について詳細に言及していくが、その例は添付の図面に図示されている。可能な限り、同じまたは類似する部分に言及する際に、図面全体を通して同じ参照番号を用いることにする。
【0014】
1.バイオアッセイシステム
本発明に従ったバイオアッセイシステムは、多数の(例えば、いくつかの実施形態においては、10,000より多い)単一生体分子を並行してモニターするために用いることができる。バイオアッセイシステムは、複数の光学的検出装置を含み得る。各光学的検出装置は、単一分子上の蛍光色素分子の存在を、この蛍光色素分子から発生される光子を検出することにより感知することができる。光学的検出装置を並行して動作させることにより、本発明に従ったバイオアッセイシステムは、例えば、組織サンプル中のゲノムのシークエンスまたは発現される遺伝子のプロファイルを高処理能力で決定することができる。
【0015】
図1を参照すると、本発明に従ったバイオアッセイシステム1が図示されている。バイオアッセイシステム1は、バイオアッセイ基板10および基板10上に形成された複数の光学的検出装置20を含み得る。各光学的検出装置20は、それぞれ独立に動作して、それに付着した単一の生体分子を検出および同定することができる。例えば、一本鎖DNAのシークエンスは、順次に塩基伸長を行い、かつ光学的検出装置20を用いて、伸長された塩基に結合された蛍光色素分子から発生される光を検出することにより決定することができる。基板10上に膨大な数の光学的検出装置20を集積することにより、膨大な数の単一生体分子を並行に検出および同定することができる。設計上の選択に応じて、バイオアッセイシステム1は、基板10上に形成される光学的検出装置20を、少なくとも、例えば、1万(10,000)個以上、25万(250,000)個以上、200万(2,000,000)個以上、さらには1,000万(10,000,000)個以上含むことができる。
【0016】
バイオアッセイシステム1は、基板10に連結されて光学的検出装置20の動作を制御すると共に光学的検出装置20から得たデータを記録するための検出および記録システム2をさらに含んでいてもよい。そのうえ、バイオアッセイシステム1は、励起光源(図示せず)をさらに含んでいてもよい。励起光源は、蛍光色素分子に蛍光を発光させるために励起光を発生することができる。ある実施形態において、励起光源は、光学的検出装置20またはバイオアッセイ基板10から独立していてもよい。別の実施形態では、励起光源は、光学的検出装置20またはバイオアッセイ基板10と一体とすることができる。
【0017】
この特定の実施形態では、図1に示されるように、光学的検出装置20は、上から見たときに円形であってよい。光学的検出装置20は、その他の幾何学的形状、例えば、四角形、多角形、楕円形、および類似の形状であってもよいことは、理解されるべきである。さらに、図1は、複数の光学的検出装置20が正方格子のパターンに配列していることを示している。光学的検出装置20は、その他のパターン、例えば、三角格子のパターン、ハニカム格子のパターン、および類似のパターンであってもよいことは、理解されるべきである。
【0018】
バイオアッセイシステム1の複数の光学的検出装置10は、独立して動作可能であるため、本発明に従った様々な実施形態に基づき、以下、1つの光学的検出装置10についてのみ説明する。1つの光学的検出装置10についてのみ説明するが、バイオアッセイシステム1中の異なる光学的検出装置10は、必ずしも同一ではないと理解される。設計上の選択に応じて、異なるタイプの光学的検出装置10が、本発明に従った異なる実施形態に基づいて構成されてもよい。
【0019】
図2を参照すると、本発明に従ったある実施形態に基づいて、光学的検出装置20の図1の線A−Aに沿った断面図が示されている。図2に示されるように、光学的検出装置20は、基板10上に形成された光検出器210、および光検出器210上方に形成されたリンカー部位220を含んでいる。そのうえ、光学的検出装置20は、基板10上に形成されて光検出器210の動作を制御するのに用いられる制御回路215をさらに含んでいてもよい。制御回路215は、検出および記録システム2からの制御命令を受け取り、かつ検出および記録システム2に検出信号を転送するように、検出および記録システム2に接続されてもよい。いくつかの実施形態において、基板10は、ガラス基板、半導体基板(例えば、シリコン)、またはプラスチック基板とすることができる。いくつかの実施形態において、1個またはそれ以上の制御回路215は、各光検出器210に対応していてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、光検出器210は、単一の光伝導光子検出器または一群の光伝導光子検出器を含んでいてよい。別の実施形態において、光検出器210は、単一の光起電光子検出器または一群の光起電光子検出器を含んでいてよい。別の実施形態において、光検出器210は、単一のフォトダイオードまたは一群のフォトダイオードを含んでいてよい。別の実施形態において、光検出器210は、単一のアバランシェフォトダイオードまたは一群のアバランシェフォトダイオードを含んでいてよい。別の実施形態において、光検出器210は、単一のフォトトランジスタまたは一群のフォトトランジスタを含んでいてよい。
【0021】
ある実施形態において、光学的検出装置20は、光検出器210上方にブラインドシート230をさらに含んでいてもよい。ブラインドシート230は、ピンホール235を含んでいてよい。ある実施形態では、ピンホール235は、円形とすることができ、かつ、1,000nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、または100nm以下の直径D1を有していてよい。ピンホール235は、その他の形状、例えば、楕円形、四角形、および類似の形状であってもよいと理解される。ある実施形態において、ブラインドシート230は、光検出器210に望ましくない光が届くのを阻止するように、不透明な材料から構成されていてよい。それゆえ、所望の光がピンホール235を介して光検出器210に届くようになる。
【0022】
リンカー部位220は、ピンホール235に近接して形成することができる。この図に示されている実施形態において、リンカー部位220は、ピンホール235の内側に形成される。ある実施形態では、ピンホール235に近接して形成されたリンカー部位220は、100μm以下の距離H1だけ光検出器210から間隔が置かれていてよい。別の実施形態においては、距離H1は、75μm以下、50μm以下、25μm以下、15μm以下、10μm以下、5μm以下、または3μm以下であってよい。
【0023】
光学的検出装置20は、光検出器210とブラインドシート230との間にフィルター層240(任意)およびマイクロレンズ250(任意)をさらに含んでいてもよい。図2は、フィルター層240がマイクロレンズ250上方に形成されていることを示すが、フィルター層240は、マイクロレンズ250の下に形成されていてもよいと理解される。いくつかの実施形態において、フィルター層240は、単一の透明層、または異なる屈折率を有する複数の透明副層を含んでいてよい。フィルター層240が複数の副層を含む場合、フィルター層240は、基板10上方に副層を順次堆積することにより形成される。いくつかの実施形態では、比較的高い屈折率を有する副層を、2つの比較的低い屈折率を有する副層で挟むことができる。また、比較的低い屈折率を有する副層を、2つの比較的高い屈折率を有する副層で挟むこともできる。いくつかの実施形態において、フィルター層240は、単一の領域を有する層、または異なる波長範囲に対する異なる透明性を持つ複数の副領域を有する層を含んでいてよい。
【0024】
なお、図2を参照すると、リンカー部位220は、単一の生体分子30をそこに付着させるように処理することができる。ある実施形態において、生体分子30は、一本鎖DNA分子32およびDNA分子32に結合された末端プライマー34を含んでいてよい。生体分子30は、末端連結プライマー34を介してリンカー部位220に付着させることができる。さらに、DNA分子32は、蛍光色素分子36で標識してもよい。第1の波長λ1の励起光により励起されたとき、蛍光色素分子36は、第2の波長λ2の蛍光を発生することができる。いくつかの実施形態において、第1の波長λ1は第2の波長λ2よりも短い。いくつかの実施形態では、例えば、多光子励起において、第1の波長λ1は第2の波長λ2よりも長い。そして、光検出器210は、蛍光色素分子36が付着している塩基のタイプを識別するために、蛍光色素分子36から発生された蛍光を検出し、これによりDNA分子32のシークエンスが順次決定されることになる。
【0025】
図3を参照すると、本発明に従ったある実施形態に基づいて、光学的検出装置20の断面図が示されている。図3に示されるように、ブラインドシート230は、光検出器210上方に形成されると共に、光検出器210から距離H1だけ垂直方向に間隔が置かれている。厚さTを有するブラインドシート230は、半径R1(すなわち、直径D1の半分)を有するピンホール235を含む。この実施形態では、リンカー部位220は、ピンホール235中に形成されて生体分子(図示せず)と結合することができる。
【0026】
蛍光色素分子36がリンカー部位220上方の第1の位置36Aで発見され、かつリンカー部位220から距離H2だけ離れている場合、半径R2を有する光検出器210は、第1の立体角θ1の範囲内で蛍光色素分子36から発生される蛍光を収集することができる。蛍光色素分子36が第2の位置36Bで発見され、かつリンカー部位220にほぼ接触しそうな(すなわち、距離H2が0μmまたは1μm未満に近い)場合、光検出器210は、第2の立体角θ2の範囲内で蛍光色素分子36から発生される蛍光を収集することができる。第2の立体角θ2は、第1の立体角θ1よりも大きく、実質的により強度な信号を提供する。
【0027】
光検出器210がピンホール235を通して蛍光色素分子36から発生される蛍光に曝露されるように、光検出器210の半径R2は、光検出器210の上表面に投影される第2の立体角θ2に対応する半径以上でなければならない。ブラインドシート230(またはリンカー部位220)を光検出器210に近づけることにより(すなわち、距離H1を減らすことにより)、光検出器210は、立体角の範囲内から、より集中した光(すなわち、より強度な光信号)を収集できるようになる。ある実施形態において、ブラインドシート230(またはリンカー部位220)と光検出器210は、小さい距離H1だけ離されており、それゆえ、第2の立体角θ2は、少なくとも0.8SIステラジアンである。
【0028】
図4を参照すると、本発明に従った別の実施形態に基づいて、光学的検出装置20の図1の線A−Aに沿った断面図が示されている。この実施形態では、励起光源40は、光学的検出装置20と一体とされている。図4に示されるように、励起光源40は、光学的検出装置20のブラインドシート230上に形成される。ある実施形態において、励起光源40は、p型およびn型半導体層(410および430)、ならびに層410と層430の接合領域の間の発光層420を含んでいてよい。層410および層430は、電源に接続することができる。層410、層420、および層430に用いられる材料、および/または、材料の物理的および原子構造に応じて、励起光源40は、発光ダイオード(LED)、発光レーザーダイオード(LD)、有機発光ダイオード(OLED)、または高分子発光ダイオード(PLED)とすることができる。例えば、ガリウムヒ素、リン化インジウム、アンチモン化ガリウム、および窒化ガリウムなどの無機材料、または、例えば、ポリ(パラ−フェニレン−ビニレン)骨格を有する共役高分子などの有機材料は、いずれも、光を放つ接合ダイオードを作製するのに用いることが可能な半導体材料の例である。
【0029】
別の実施形態において、励起光源40は、ブラインドシート230を形成していても、ブラインドシート230内に形成されていてもよい。いくつかの実施形態において、光学的検出装置20と一体とされた励起光源40は、1つの波長域または複数の波長域の光を発生することができる。励起光源40は、断続的にまたは連続的に光を発生することができる。励起光源40は、一度に1つの波長域の、または同時にいくつかの波長域の光を発生することができる。
【0030】
図4を再び参照すると、励起光源40は、ピンホール235を露出させるように、その中央部分に空洞450を含んでいてよい。この実施形態では、リンカー部位220は、ピンホール235内に形成されないこともある。より正確に言えば、リンカー部位220は、空洞450内に形成され、かつピンホール235に近接していてよい。励起光源40がブラインドシート230を形成するか、あるいは、ブラインドシート230内に形成される実施形態では、空洞450がピンホール235を形成するか、あるいは、ピンホール235内に形成される。いくつかの実施形態において、ピンホール235は、層410およびブラインドシート230両者の中央部分に、例えば、適当な方法を用いて、層410およびブラインドシート230をエッチングすることにより形成することができる。
【0031】
さらに、励起光源40は、下方の層410上に形成された金属接点415および上方の層430上に形成された金属接点435を介して電源440と接続することができる。電源440は、独立していて、かつ検出および記録システム2により制御されても、あるいは、検出および記録システム2と一体とされていてもよい。
【0032】
励起光源40の発光層420は、図4における発光層420上に描かれた矢印に示されるような水平方向に沿って励起光を空洞450内に放出することができる。この実施形態では、励起光は、ブラインドシート230の上表面と実質的に平行な方向に沿って放出される。したがって、励起光は、光検出器210へ向かう蛍光を妨害し得ない。それゆえ、本発明に従った光学的検出装置20は、従来のデバイスに比べて、より正確に生体分子を同定することが可能である。
【0033】
2.核酸検出
本発明に従ったバイオアッセイシステム(例えば、単一の光学的検出装置または複数のかかる装置を含む)は、分子検出、例えば、核酸シークエンシングに用いるシステムの一部として、またはその方法もしくはプロセスに用いることができる。このバイオアッセイシステム、およびそれを用いる方法またはプロセスは、例えば、分析および診断的用途に有用である。これらの用途は、個人用、公用、商用、または産業用であってよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、バイオアッセイシステムは、核酸の大規模並行シークエンシングに適している。一部において、バイオアッセイシステムのリンカー部位と光検出器との直接的な対応、および/または、リンカー部位と光検出器との近接近(いくつかの実施形態において、大きい立体角として表される)のために、本発明において提供されるバイオアッセイシステムは、高価、複雑、かつエラーが起きやすい走査および解析システム、例えば、移動走査レンズまたは移動デバイスステージおよび後続の画像解析の必要性なしに、核酸をシークエンスするのに用いることができ、それゆえ、エラーとコストが低減される。バイオアッセイシステムは、実質的に信号強度が向上した光信号を検出することができ、このことは単一分子の分析を可能にする。
【0035】
本発明に従ったバイオアッセイシステムは、様々なシークエンシングの手法と共に用いることができ、かつ単一分子をシークエンシングするのに適している。そのうえ、本発明に従った光学的検出装置は、既存のバイオチップ装置に比べて、設計、組み立て、および製造が簡略化されている。例えば、シークエンスされるべき核酸をアレイ上の任意のリンカー部位に付着させることができ、これにより核酸を所定の位置に堆積または合成させるための時間がかかり、かつ高価なロボティクスの利用が回避されることになる。
【0036】
本発明に従ったバイオアッセイシステムは、例えば、全ゲノムシークエンシング、転写プロファイリング、比較転写プロファイリング、または遺伝子同定のための核酸ハイブリダイゼーションまたはシークエンシングを含む生体分子検出に用いる方法およびプロセスにおけるシステムの一部として用いることができる。また、生体分子検出は、結合相互作用、例えば、タンパク質/タンパク質、抗体/抗原、レセプター/リガンド、および核酸/タンパク質の検出および/または測定をも含み得る。これらの応用は、分析的または診断的プロセスおよび方法に有用である。
【0037】
本発明により提供されるシステムでの検出に用いるのに適当な核酸は、いくつかの実施形態において、結合相互作用をアッセイするのに適当な分子、例えば、タンパク質、他の核酸、炭水化物部分、または小分子を本発明により提供される装置上のリンカー部位に付着させる連結分子の一部であってよい。連結分子は、いくつかの実施形態において、結合相互作用についてアッセイされる分子に結合する捕捉分子をさらに含んでいてもよい。連結分子中の核酸は、例えば、直接的なシークエンシングまたはハイブリダイゼーションにより、連結分子の捕捉分子の識別タグとして機能する。
【0038】
本発明により提供される方法は、通常、検出されるべき分子を、本発明により提供される装置のアドレスアレイに付着させるステップを含む。いくつかの実施形態において、アドレスアレイは、複数のピンホール235を有するブラインドシート230を含んでいてよく、また、リンカー部位220は、ピンホール235の内側または周囲に形成されていてもよい。例えば、図1および2を参照されたい。かくして、本発明に従ったバイオアッセイシステムは、何百万もの核酸セグメントを同時に読み取ることが可能である。各セグメントが、例えば、塩基長1,000である場合、単一の装置は、何十億というシークエンス情報の断片を得ることができ、これにより、例えば、全ゲノムシークエンシングおよび再シークエンシングが可能となる。
【0039】
2.1.検出されるべき分子
本発明により提供される方法による検出に適する核酸は、例えば、DNA、RNA、またはPNA(ペプチド核酸)を含めて、任意の核酸を含むことができ、かつ、天然に存在するシークエンスまたは人工のシークエンスを含めて、既知および未知の両方の任意のシークエンスを含むことができる。核酸は、天然由来のもの、組み換え技術により製造されたもの、または化学的に合成されたものであってよい。核酸は、天然に存在するヌクレオチド、自然界に存在しないヌクレオチド類似体、または修飾ヌクレオチドを含んでいてよい。検出されるべき核酸の長さは、実際の応用に応じて変化する。いくつかの実施形態において、核酸は、少なくとも、10個以上、20個以上、50個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、2,000個以上、5,000個以上、10,000個以上、20,000個以上の塩基を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、10〜20個、10〜50個、10〜100個、50〜100個、50〜500個、50〜1,000個、50〜5,000個、500〜2,000個、500〜5,000個、または1,000〜5,000個の塩基であってよい。
【0040】
検出に用いる核酸は、一本鎖であってよい。一本鎖核酸テンプレートは、例えば、加熱またはアルカリまたはその他の化学的処理を含む当該分野で知られた手段により、二本鎖分子から得ることができる。一本鎖核酸テンプレートは、例えば、化学的または生体外合成により製造することも可能である。
【0041】
いくつかの実施形態において、検出されるべき核酸は、その5’末端または3’末端でリンカー部位に付着する。いくつかの実施形態において、核酸は、さらに、核酸の5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端の両方に結合された1個またはそれ以上の末端連結プライマーを含んでいてもよい。特定の実施形態では、末端連結プライマーは、核酸の3’末端に付着する。末端連結プライマーは、検出されるべき核酸を装置上のリンカー部位に付着させるため、および、1個またはそれ以上の検出プライマー、例えば、シークエンシングプライマーの相補配列を提供するため、の両方に用いられ得る。
【0042】
2.1.1.末端連結プライマー
末端連結プライマーは、通常は100個未満のヌクレオチドからなる短い核酸分子である。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーは、少なくとも、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、50個以上、75個以上、90個以上のヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、末端連結プライマーは、8〜25個、10〜20個、10〜30個、または10〜50個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーは、分岐しておらず、一方、別の実施形態では、それらは分岐していてもよい。
【0043】
末端連結プライマーは、検出されるべき核酸をアドレスアレイ上のリンカー部位に付着させるのに用いることができる。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーは、例えば、共有結合(例えば、エステルもしくはチオール結合)、または非共有結合、例えば、抗原/抗体もしくはビオチンアビジン結合により、核酸をアレイ表面に直接的に連結させることができる。例えば、図5、図6、および図7を参照されたい。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーは、例えば、中間分子、例えば、ポリメラーゼを結合させることにより、間接的に核酸をアレイ表面に連結させることができる。例えば、図8を参照されたい。したがって、末端連結プライマーは、修飾ヌクレオチドを含むことができ、あるいは、そうでなければ、当該分野で知られた手段、例えば、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、もしくはエステル結合により、または、例えば、抗体/抗原もしくはビオチン/アビジン結合により、リンカー部位への付着を容易にするために修飾されていることができ、例えば、末端連結プライマーは、抗原部分またはビオチン化ヌクレオチドを含むヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、末端連結プライマーの3’末端にある。いくつかの実施形態では、末端連結プライマーの5’末端が修飾ヌクレオチドを含む。
【0044】
末端連結プライマーは、核酸を検出するのに用いられる1個またはそれ以上のプライマー、例えば、シークエンシングプライマーの相補体としての機能も果たすことができる。いくつかの実施形態において、プライマーは、ハイブリダイゼーションにより核酸を検出するのに用いられ、例えば、プライマーは、検出可能な標識、例えば、蛍光または放射性同位体標識を含んでいる。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーの5’末端は、シークエンシングプライマーの配列相補体を含む。いくつかの実施形態において、シークエンシングプライマーの相補体である末端連結プライマーの配列は、シークエンシングプライマーの3’末端がシークエンスされるべき核酸中の1個目のヌクレオチドに直接的に隣接するような向きに置かれる。
【0045】
例えば、図6は、本発明に従った光学的検出装置20に付着したシークエンスされるべき核酸のある実施形態の図式表示である。一本鎖核酸32、末端連結プライマー34、およびアニールされたシークエンシングプライマー346が、末端連結プライマー34上の修飾ヌクレオチド344を結合させる反応性官能基を持つよう処理されたリンカー部位220に付着する。いくつかの実施形態において、核酸32は、その5’末端によりリンカー部位220に付着でき、かつ末端連結プライマー34は、核酸32の3’末端に付着してシークエンシングプライマー346の相補体として機能し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、末端連結プライマーは、リガーゼ、例えば、DNAリガーゼにより、検出されるべき核酸の末端に添加される。いくつかの実施形態において、末端連結プライマーおよび検出されるべき核酸は、ライゲーション前は両者とも一本鎖である。別の実施形態では、両者は二本鎖である。さらに別の実施形態では、一方が一本鎖で他方が二本鎖である。ライゲーションは当該分野ではよく知られている。例えば、ポロニーシークエンシング法において、シェンデュア(Shendure)ら(サイエンス(Science),309:1728−1732(2005))は、ニュー・イングランド・バイオラボズ(New England Biolabs)(NEB)のクイック・ライゲーション・キット(Quick Ligation kit)を用い、T30末端連結プライマー(32bp)をサンプルDNA断片にライゲートした。ここで、ライゲーション反応溶液は、1× クイック・ライゲーション(Quick Ligation)バッファー中にDNA0.26pmol、T30末端連結プライマー0.8pmol、T4DNAリガーゼ4.0μLを含むものであった。混合後、その反応溶液を約10分間室温でインキュベートしてから、氷上に置いた。サンプルを10分間65℃に加熱することによりライゲーション反応を停止させた。
【0047】
別の実施形態において、末端連結プライマーは、検出されるべき核酸上に合成されてもよい。例えば、末端連結プライマーは、例えば、ターミナルトランスフェラーゼにより付加されるホモポリマーであってよい。例えば、ハリス(Harris)ら(サイエンス(Science),320:106−109(2008))は、ポリA尾部をDNAテンプレートに付加し、ウイルスゲノムの単一分子シークエンシングにおけるポリTシークエンシングプライマーの相補体とした。
【0048】
2.1.2.シークエンシングプライマー
シークエンシングプライマーは、検出されるべき核酸の断片またはそれに関連した末端連結プライマーに相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、シークエンシングプライマーは、少なくとも、8個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、50個以上のヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、シークエンシングプライマーは、8〜25個、10〜20個、10〜30個、または10〜50個のヌクレオチドの長さとすることができる。シークエンシングプライマーは、天然に存在するヌクレオチド、自然界に存在しないヌクレオチド類似体、または修飾ヌクレオチドを含む任意のタイプのヌクレオチドからなっていてよい。特定の実施形態において、シークエンシングプライマーの5’末端は、シークエンシングプライマーが、1個またはそれ以上の末端連結分子を含むシークエンスされるべき核酸とハイブリダイズした後に、アドレスアレイ上のリンカー部位に結合しやすくなるように修飾されていてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、シークエンシングプライマーは、修飾ヌクレオチド、例えば、ロック核酸(LNAs;修飾リボヌクレオチドであり、それは、ポリ核酸中に高められた塩基スタッキング相互作用を提供する)を含んでいる。LNAsの有用性の説明として、ラヴィン(Levin)ら(ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Research),34(20):142(2006))は、LNA−含有プライマーが、対応するロックされていないプライマーに比べて、特異性が改善され、かつより強力な結合を呈したことを示した。プライマー中の異なる位置に3個のLNAヌクレオチド(キャップにおける)を含むMCP1プライマー(5’−cttaaattttcttgaat−3’)の3個の変異体:MCP1−LNA−3’(5’−cttaaattttCtTgaAt−3’);MCP1−LNA−5’(5’−CtTaAattttcttgaat−3’);およびMCP1−LNA−even (5’−ctTaaatTttctTgaat−3’)を作製した。すべてのLNA−置換プライマーは、Tmが高まり、さらにMCP1−LNA−5’プライマーは、特に向上されたシークエンシング精度を示した(フレッド・キュー・サーティ・カウンツ(Phred Q30 counts))。したがって、特定の実施形態において、シークエンシングプライマーは、少なくとも1つのロックされたヌクレオチドを、その5’領域、すなわちシークエンシングプライマーの5’の半分、3分の1、または4分の1に含んでいてよい。
【0050】
シークエンシングプライマーおよび一本鎖サンプル核酸(すなわち、少なくとも1つの末端連結プライマーを含む検出されるべき核酸)は、本発明に従った光学的検出装置に塗布する前に、ハイブリダイズさせることができる。シークエンシングプライマーおよびサンプル核酸は、例えば、5× SSC(または5× SSPE)、0.1%Tween20(または0.1%SDS)、および0.1%BSAバッファーのような塩含有溶液中でサンプル核酸をモル過剰のシークエンシングプライマーと混合することによりハイブリダイズさせることができる。その混合物を少なくとも5分間65℃に加熱し、ゆっくりと室温まで冷却して、プライマー/テンプレートをアニーリングさせる。残存プライマーは、例えば、分子篩を含む適当な手段により除去することができる。
【0051】
末端連結およびシークエンシングプライマーの両方を含むプライマーは、シークエンスの視覚的検査またはコンピュータ利用のプライマー設計を含む適当な手段により設計することが可能である。DNAStar(登録商標)(ディー・エヌ・エイ・スター(DNAStar)社、マジソン(Madison),ウィスコンシン州(WI))、OLIGO 4.0(ナショナル・バイオサイエンシーズ(National Biosciences)社)、Vector NTI(登録商標)(インヴィトロジェン(Invitrogen)社)、Primer Premier 5(プレミエールバイオソフト(Premierbiosoft)社)、およびPrimer3(ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ(Whitehead Institute for Biomedical Research),ケンブリッジ(Cambridge),マサチューセッツ州(MA))を含む多数のソフトウェアパッケージが、プライマー設計をアシストするために利用可能である。プライマーは、例えば、シークエンスされるべき分子、特異性、長さ、所望の融解温度、二次構造、プライマーダイマー、GC含量、バッファー溶液のpHおよびイオン強度、ならびに用いられる酵素(すなわち、ポリメラーゼまたはリガーゼ)を考慮に入れて設計する。例えば、ジョセフ・サムブロック(Joseph Sambrook)およびデイヴィッド・ラッセル(David Russell),モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning):ア・ラボラトリー・マニュアル(A Laboratory Manual),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press);第3版(2001)を参照されたい。
【0052】
2.1.3.アレイ表面への結合
シークエンシングプライマー、および1個またはそれ以上の末端連結プライマーを含むシークエンスされるべき核酸をアニールした後、この複合体を適当なバッファー中で調製し、アドレスアレイの表面に塗布し、結合させる。いくつかの実施形態において、サンプル核酸(検出されるべき核酸および1個またはそれ以上の末端連結プライマー)をリンカー部位に付着させ、その後、シークエンシングまたは検出プライマーを塗布する。別の実施形態では、複合体を、装置に塗布する前にハイブリダイズさせる。1つのサンプル核酸のみが結合するリンカー部位は、有効なアドレスとして知られる。特定の実施形態において、複合体を光学的検出装置に塗布し、そしてサンプル核酸がアドレスアレイ上の任意のリンカー部位に付着する。別の実施形態では、例えば、ロボッティクスまたは液体処理システムを含む適当な手段により、サンプル核酸をアドレスアレイ上の所定のリンカー部位に塗布してもよい。
【0053】
核酸を固相担体に付着させるのに適当な手段は、当該分野においてよく知られている。いくつかの実施形態において、サンプル核酸を、共有結合、例えば、ジスルフィド結合、チオエステル結合、アミド結合、ホスホジエステル結合、もしくはエステル結合により、または非共有結合、例えば、抗体/抗原もしくはビオチン/アビジン結合により、リンカー部位に直接的に付着させることができる。いくつかの実施形態において、サンプル核酸を媒介分子によりリンカー部位に付着させてもよい。いくつかの実施形態において、媒介分子は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼとすることができる。
【0054】
核酸の直接的かつ共有結合的な付着の説明に役立つ実例として、アディーシ(Adeesi)ら(ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Research),28:87(2000))は、プライマーの5’末端を修飾してSH官能基が含まれるようにした。アディーシ(Adeesi)らの手法によれば、核酸は、50μMリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)(NaPi:0.1M NaHPO pH6.5、0.1M NaCl)中で調製することができる。次いで、プライマー溶液約1〜5μLをシラン化スライドガラスの表面に塗布し、室温の調湿ボックス中で約5時間インキュベートして、プライマーをチップ表面に結合させることができる。結合反応が完了した後、PBS溶液を室温で2回5分ずつ振動洗浄し、未結合のDNAを除去する。洗浄後、10mM β−メルカプトエタノールをPBS溶液に添加し、室温下でアドレスアレイ表面をリンスするのに用いて、未結合のDNAのチオール基を不活性化させる。次に、アレイ表面を、例えば、5× SSC 0.1%Tweenで1回、および5× SSCバッファー溶液で1回洗浄する。それゆえ、いくつかの実施形態においては、アディーシ(Adeesi)らが用いた手法を、本発明により提供される方法に用いて、サンプル核酸複合体をリンカー部位に、例えば、シークエンシングプライマーまたはサンプル核酸の5’末端を介して付着させることができる。
【0055】
別の実施形態において、サンプル核酸は、例えば、ビオチン化ヌクレオチドを含んでいてよく、リンカー部位表面上のアビジンに結合する。他の実施形態において、サンプル核酸は、リンカー部位上の抗体(またはその断片)により結合される抗原部分、例えば、BrdUまたはジゴキシゲニンを含んでいてもよい。「抗体」という用語は、例えば、1つもしくはそれ以上のCDR領域;または可変重鎖もしくは可変軽鎖断片を含むイムノグロビン分子の断片を含むと理解されるべきである。抗体は、天然に存在するもの、組み換え体、または合成されたものであってよい。また、抗体は、例えば、ポリクローナルおよびモノクローナル変異体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、抗体は、少なくとも、10M以上、10M以上、10M以上、10M以上の結合定数で、それらの抗原(複数の抗原)に結合する。抗体の構造、機能、および産生は、当該分野においてよく知られている。例えば、ゲイリー・ハワード(Gary Howard)およびマシュー・カサー(Matthew Kasser),メイキング・アンド・ユージング・アンチボディーズ(Making and Using Antibodies):ア・プラクティカル・ハンドブック(A Practical Handbook),シー・アール・シー・プレス(CRC Press);第1版(2006)を参照されたい。
【0056】
さらに別の実施形態において、サンプル核酸を、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼによりリンカー部位に付着させてもよい。例えば、酵素の一次、二次、および三次構造のような酵素機能の入手可能な情報を保つことを考慮に入れなければならないということが、当業者には理解される。例えば、TaqおよびPhi29ポリメラーゼの構造が当該分野において知られており、キム(Kim)ら、ネイチャー(Nature),376:612−616(1995)、およびカムテカー(Kamtekar)ら、モレキュラー・セル(Mol.Cell),16:609−618(2004)をそれぞれ参照されたい。活性を保ちながらポリメラーゼを表面に固定する手段は、当該分野において知られており、例えば、2008年8月21日に公開された米国特許出願公開第2008/0199932号、およびコーラック(Korlach)ら、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ(PNAS),105:1176−1181(2008)に記載されている。図8は、サンプル核酸(すなわち、シークエンスされるべき核酸32、末端連結プライマー34、およびシークエンシングプライマー346)が手段384、例えば、直接的な非共有結合性吸着、抗体、ビオチン、または化学結合、例えば、アミド結合によりリンカー部位220にすでに結合されたポリメラーゼ38を介して、リンカー部位220に結合されている本発明のある実施形態の図式表示である。
【0057】
いくつかの実施形態において、リンカー部位のアルデヒドで修飾された表面は、アルデヒド含有シラン試薬で処理される。アルデヒドは、タンパク質上の1級アミンと反応しやすく、これによりシッフ塩基結合を形成する。多くのタンパク質は、通常、よりよく反応するNH−末端のα−アミンに加えて、それらの表面上にリジンを示すので、それらタンパク質は、様々な配向でスライドに付着することができ、これによりタンパク質の異なる面が溶液中で他のタンパク質または小分子と作用することができるようになる。別の実施形態では、photoNHS(炭素鎖リンカーを有するアジドニトロベンゼン分子に連結されたN−ヒドロキシスクシンイミドカルボキシレート分子)が、装置上のアミンで修飾された表面にUV光活性化により付着する。これらの実施形態では、UV光がアジドニトロベンゼン部分を励起し、窒素を除去することで、反応性に富むナイトレンを生じる。ナイトレンは、装置の表面上のNHと反応しやすく、ヒドラジン結合を形成する。リンカーの他の末端は、NHSカルボキシレートであり、それはポリメラーゼの表面上のリジンと反応してアミド共有結合を生じる。別の実施形態において、NHSカルボキシレート部分を、緩衝条件下で、装置の表面上の1級アミンと反応させる。UV光は、アジドニトロベンゼン部分を活性化し、電子不足基である反応性に富むナイトレンを形成し、ポリメラーゼ上のリジン残基の1級アミンと容易に反応させるために用いられる。これらの方法は、以下の実施例4においてさらに詳細に説明される。
【0058】
2.2.シークエンシングの様式
本発明により提供されるバイオアッセイシステムは、例えば、米国特許第6,946,249号、およびシェンデュア(Shendure)ら、ネイチャー・レビューズ・ジェネティクス(Nat.Rev.Genet.),5:335−44(2004)に概説されているような当該分野で知られた手段により核酸を検出およびシークエンシングするのに用いることができる。いくつかの実施形態において、シークエンシング法は、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼの特異性に依存し、例えば、塩基伸長シークエンシング(単一塩基段階的伸長)、合成による多塩基シークエンシング(例えば、末端標識されたヌクレオチドを用いるシークエンシング)および混合塩基(wobble)シークエンシングを含み、それはライゲーションベースのものである。方法のすべてが、通常は、リンカー部位に(直接的または間接的に)付着することになる少なくとも1つの末端連結プライマーを含む一本鎖サンプル核酸を要する。そして、シークエンシングプライマーでシークエンシングが開始する(リガーゼベースのシークエンシングでは、一般にアンカープライマーと呼び、シークエンシングプライマーに類似した目的を果たす)。
【0059】
全てのシークエンシングの様式に対し、本発明は単一分子を再シークエンスできるという利点を提示する。例えば、シークエンシング読み取りの完了後、シークエンシングプライマーおよび伸長されたヌクレオチドをサンプル核酸から取り去ることができ、装置を洗浄し、そしてシークエンシングを繰り返し行う。様々な実施形態において、再シークエンシングは、同じまたは異なる方法により行うことができる。同一の分子を再シークエンシングすることで、シークエンシングエラーは、シークエンシング読み取り数の指数にしたがって減少することが見込まれる。例えば、単一の読み取りの塩基あたりのエラー率が10−3である場合、2回の読み取り後、これは(10−3、すなわち10−6に減少する。このことは、シークエンシングに用いられる修飾ヌクレオチドが、例えば、擬似の欠失をもたらすそれらの標識または封鎖基を失ってもよいために、単一分子のシークエンシングに特に利点がある。
【0060】
2.2.1.塩基伸長シークエンシング:段階的伸長
いくつかの実施形態において、本発明により提供される光検出装置は、例えば、米国特許第5,302,509号に開示されているような塩基伸長シークエンシングを実行するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、塩基伸長シークエンシングは、図6に示されているように、シークエンスされるべき一本鎖核酸32、シークエンスされるべき核酸32の3’末端につながれた末端連結プライマー34、およびそれにアニールされたシークエンシングプライマー346を含む一部二本鎖のサンプル核酸を、リンカー部位220に付着させることにより開始する。いくつかの実施形態では、続いてポリメラーゼ38および修飾ヌクレオチドを適当なバッファー中で光検出装置に塗布する。いくつかの実施形態において、サンプル核酸複合体を、リンカー部位のポリメラーゼによりリンカー部位に付着させる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、いかなる二次的な伸長をも阻止するための共有結合している検出可能な標識、例えば、蛍光標識、および封鎖基を含む。したがって、単一のヌクレオチドのシークエンシングプライマー346の3’末端への付加の後、シークエンシングが停止する。
【0061】
図7は、塩基伸長シークエンシング反応のある実施形態の第1段階の図式表示である。蛍光封鎖基364を有するヌクレオチド362をDNAポリメラーゼ38によりシークエンシングプライマー346の3’末端に添加する。いくつかの実施形態において、蛍光標識は、封鎖基として機能する。別の実施形態では、それらは分離した部分である。単一のヌクレオチドをシークエンシングプライマー346の3’末端に組み込み、対応する光検出器210を用いて、その標識により同定する。次いで、蛍光標識および封鎖基を、例えば、化学的または酵素溶解により除去して、塩基伸長のさらなるサイクルを可能にする。特定の実施形態では、標識および封鎖基を同時または順次に任意の順序で除去することができる。添加される塩基の順序を編集することにより、1度に1塩基ずつ、3’から5’方向にサンプル核酸のシークエンスを推定する。図9は、いくつかのサンプル核酸の並行した伸長、検出、封鎖解除/標識解除の1サイクルを説明している。
【0062】
一般に、段階的伸長中に添加されるヌクレオチドを見分ける方法は2つある。第1のケースでは、4種のヌクレオチドすべてが同じ検出可能な標識を有するが、所定の順に、一度に1種添加する。伸長されたヌクレオチドのアイデンティティーは、ヌクレオチドが伸長反応に添加される順番により決定される。伸長中に挿入される塩基を見分ける第2のモードでは、4種の異なるヌクレオチドを同時に添加し、各々を異なる検出可能な標識に結合させる。異なる実施形態において、標識の励起または発光スペクトルおよび/または強度はそれぞれ異なり得る。伸長反応に添加されるヌクレオチドのアイデンティティーは、検出された標識の強度および/または波長(すなわち、励起または発光スペクトル)により決定される。これら2つの手法の例が実施例5に提示される。
【0063】
2.2.2.合成によるシークエンシング:多段階伸長
いくつかの実施形態において、合成によるシークエンシングは、例えば、封鎖基を用いずに、多数の連続した伸長反応により進行することができる。これらの実施形態では、重合反応を、ヌクレオシド三リン酸加水分解後のピロリン酸の放出、すなわちβおよびγリン酸複合体の放出を検出することにより観察する。この複合体は、例えば、複合体上の蛍光部分により、直接的に、または、ピロリン酸を化学もしくは生物発光検出システムに結合させることにより、間接的に、検出することが可能である。
【0064】
いくつかの実施形態において、サンプル核酸を、基本的に末端リン酸標識ヌクレオチドを用いることにより連続してシークエンスする。末端リン酸標識ヌクレオチドおよびそれらの使用法の例示的な実施形態は、例えば、米国特許第7,361,466号および2007年6月21日に公開された米国特許出願公開第2007/0141598号に記載されている。簡単に言うと、ヌクレオチドを本発明により提供される装置に塗布し、重合反応中の加水分解時に、標識したピロリン酸を対応する光検出器で検出する。いくつかの実施形態において、4種すべてのヌクレオチドは異なる標識を含み、かつ同時に添加することができる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは区別できない、例えば、同一の標識を含み、所定の順に順次添加する。区別できない標識を持つヌクレオチドの順次的かつ循環的な添加でも、例えば、ホモポリマーのシークエンスにおける多数の連続した重合ステップが可能となる。
【0065】
2.2.3.リガーゼベースのシークエンシング
別の実施形態においては、サンプル核酸は、本発明により提供される光学的検出装置上で、リガーゼベースのシークエンシングによりシークエンスされる。リガーゼベースのシークエンシング法は、例えば、米国特許第5,750,341号、国際公開第06/073504号パンフレット、およびシェンデュア(Shendure)ら、サイエンス(Science),309:1728−1732(2005)に開示されている。シェンデュア(Shendure)らの方法では、例えば、未知の一本鎖DNAサンプルは、両側に2つの末端連結プライマーを配置し、固相担体上に固定することができる。未知のシークエンス中の特定の位置(例えば、特定の末端連結プライマーに近接するn個目の塩基)は、いわゆるアンカープライマー(シークエンシングプライマーに類似するもの)を末端連結プライマーのうちの1つにアニールすること、そして、4個の縮重九量体のプールを混合物に添加することにより調べることができる。4個の九量体は、すべて異なる蛍光標識を有しており、各九量体が異なる塩基のA、C、G、またはTで調べる照会位置を除いて、すべての位置で縮重する。サンプルを洗浄し、蛍光走査し、そして照会塩基を識別する。続いて、アンカープライマーおよびライゲートされた九量体をサンプル核酸から取り去り、装置を洗浄し、このプロセスを繰り返して、異なる位置の照会を行う。有利には、この方法は、非累積的である、すなわち、塩基は、順番に照会が行われる必要がない。それゆえ、エラーが累積的ではない。そのうえ、この方法は、5’または3’からの方向でヌクレオチドの照会を行うことができ、すなわち標準的な5’→3’のDNA合成を必要としない。サンプル核酸の合計約13個の塩基は、通常、この方法によりシークエンスすることができる。
【0066】
2.3.応用
本発明に従ったバイオアッセイシステムは、何百万もの核酸セグメントを同時に検出することができる。各セグメントが、例えば、1,000塩基長であるとすると、単一の装置は、何十億以上もの塩基シークエンスを一度に得ることができる。以下に述べられるのは、本願により提供される装置および方法のさらなる応用である。
【0067】
2.3.1.全ゲノムシークエンシング
本発明に従ったバイオアッセイシステムは、例えば、ウィルス、バクテリア、菌類、真核生物、または脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトの全ゲノムまたは部分ゲノムシークエンシングを行うのに用いることができる。
【0068】
シークエンシングのために、ゲノムDNAは、少なくとも、20個以上、50個以上、100個以上、200個以上、300個以上、500個以上、800個以上、1,200個以上、1,500個以上のヌクレオチドの断片に切断することができる。いくつかの実施形態において、切断されたゲノムDNAは、20〜50個、20〜100個、20〜500個、20〜1,000個、500〜1,200個、または500〜1,500個のヌクレオチド長であってよい。いくつかの実施形態において、シークエンスされるべき核酸は、関連した末端連結プライマーと共に、一本鎖にし、シークエンシングプライマーにアニールし、かつ本発明により提供される装置に塗布して、上述のようなシークエンシングを行う。
【0069】
2.3.2.遺伝子発現プロファイリング
別の実施形態において、本発明に従ったバイオアッセイシステムは、遺伝子発現プロファイリングのためにcDNAをシークエンスするのに用いることができる。例えば、mRNAレベルは、特定のシークエンスが装置上で検出される相対頻度を測定することにより定量化することができる。数百万個のcDNA分子を本発明により提供される装置上で並行してシークエンスすることができる。1つの細胞が平均して350,000個のmRNA分子を含むとすると、細胞あたりのたった1コピーに現れる転写産物でも、100万のシークエンシング反応中に、およそ3回シークエンスされることが見込まれる。したがって、本発明により提供される装置は、単一のコピー数の感度による単一分子シークエンシングに適している。
【0070】
cDNA合成は、当該分野においてよく知られており、通常、任意のmRNAの濃縮を伴う全RNA抽出を含む。cDNAは、例えば、第一鎖合成のための逆転写;残存RNAを除去するためのRNAse処理;DNAポリメラーゼによる第一鎖、および第二鎖合成のランダムヘキサマープライミングを含むステップによりmRNAから生成される。結果として得られるcDNAは、本発明により提供される装置上でシークエンシングを行うのに適している。DNAおよびRNA両者の単離と調製は、当該分野においてよく知られている。例えば、ジョセフ・サムブロック(Joseph Sambrook)およびデイヴィッド・ラッセル(David Russell),モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning):ア・ラボラトリー・マニュアル(A Laboratory Manual),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press);第3版(2001)を参照されたい。
【0071】
いくつかの実施形態において、cDNAは、米国特許第6,812,005号および第7,361,488号に開示されたような方法によりシークエンスすることができる。簡単に言うと、cDNAにアダプターポリ核酸をライゲートし、アダプターを特殊な制限酵素で処理すると、最後に、処理した核酸が、本発明により提供される装置のリンカー部位に付着した相補オリゴヌクレオチドに結合する。特定の実施形態において、アダプター分子は末端連結プライマーである。
【0072】
本発明に従ったいくつかの実施形態において、mRNAのポリA尾部は、適当な末端連結プライマーとなり得、それはポリTシークエンシングプライマーに相補的である。
【0073】
2.3.3.結合相互作用の検出および/または測定
別の実施形態において、バイオアッセイシステムは、例えば、DNA/DNA、RNA/RNA、またはDNA/RNA塩基対合、核酸/タンパク質相互作用、抗原/抗体、レセプター/リガンド結合、および酵素/基質結合を含む様々な結合相互作用を検出するのに用いることができる。通常、サンプル分子は、核酸識別タグ(ID)を含む連結分子に付着させる。いくつかの実施形態において、連結分子は、サンプル分子を結合させる捕捉分子をさらに含む。また、連結分子は、リンカー部位に結合するための手段、例えば、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、もしくはエステル結合のような共有化学結合、または非共有結合、例えば、抗体/抗原もしくはビオチン/アビジン結合を助ける部分を含む。いくつかの実施形態においては、連結分子は、IDタグによりアレイに付着させる。
【0074】
サンプル分子は、本発明に従った装置に塗布され、そのリンカー分子により任意のリンカー部位に、例えば、連結分子上に位置する捕捉分子を結合させることにより、付着させられる。いくつかの実施形態において、サンプル分子およびリンカー分子は、混合して結合させ、そして、本発明により提供される装置に塗布される。いくつかの実施形態においては、まず、リンカー分子は、装置に塗布してリンカー部位に付着させてから、サンプル分子が塗布される。次に、本発明に従った方法により(例えば、ハイブリダイゼーションまたはシークエンシングにより)IDが検出され、関連したサンプル分子を同定する。複数のサンプル分子種は、同一のアレイに付着させることができ、かつ、それらの標識により区別され、さらに、それらの結合相互作用は、その結合する捕捉分子の固有のIDを用いて特徴付けられることができる。それゆえ、いくつかの実施形態において、標識されたサンプル分子を検出する方法は、サンプル分子を本発明に従った装置のリンカー部位に核酸タグを含むリンカー分子により連結させるステップ、IDの核酸シークエンシングを行うステップ、および標識されたサンプル分子を検出するステップを含む。特定の実施形態において、核酸シークエンシングは、塩基伸長シークエンシングである。いくつかの実施形態では、核酸シークエンシングは、リガーゼベースのシークエンシング、または末端リン酸標識ヌクレオチドシークエンシングから選ばれる。
【0075】
ヌクレオチドの「小片」を利用することで、最高で4の異なる捕捉分子を本発明に従ったバイオアッセイシステムに付着させ同定することができる。ここで、nはシークエンスされるIDの長さを表す自然数である。例えば、5個のヌクレオチドは、1,000を超える固有のIDを提供することができ、また、12個のヌクレオチドは、1,600万を超える組み合わせを提供する。例えば、リンカー分子は、本発明に従った装置に付着させられ、それらの位置は、それらの対応するIDタグを検出することにより決定される。そして、リンカー分子は、例えば、1個またはそれ以上の標識されたサンプル分子との結合相互作用を調べるためのプローブとなる。すなわち、1個またはそれ以上のリンカー分子が付着した装置は、プローブアレイとして機能し得るのである。
【0076】
特定の実施形態において、標識されたサンプル分子は、蛍光標識されたものである。リンカー分子の捕捉分子に結合されると、標識されたサンプル分子は、リンカー分子が付着しているリンカー部位に対応する光検出器(複数の光検出器)により検出される。それゆえ、いくつかの実施形態において、本発明に従った方法は、標識されたサンプル分子を本発明に従った装置に塗布するステップ、および標識されたサンプル分子を検出するステップをさらに含んでいてもよい。特定の実施形態では、装置は、そのリンカー部位に付着する核酸タグ(ID)を含むリンカー分子を有する。多数の標識されたサンプル分子は、同時にプローブアレイに塗布され、それらの標識により、例えば、それら蛍光標識の強度および/または波長により、区別されることができる。サンプル分子と標識された照会分子との間の結合相互作用の解離定数は、所定濃度の標識された照会分子における動力学(例えば、結合/解離の比率)および静力学(例えば、任意の所定時間における結合または未結合状態にあるサンプル分子の割合)の両方に基づいて推測することができる。
【0077】
いくつかの実施形態においては、連結分子のIDは、少なくとも、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、40個以上、50個以上、75個以上、90個以上、100個以上、150個以上、200個以上のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、IDは、5〜10個、5〜20個、5〜40個、5〜80個もしくは5〜160個;または、10〜20個もしくは10〜50個;または、20〜35個のヌクレオチド長である。IDは、固有の核酸シークエンス、すなわち検出されるべき核酸を含む。特定の実施形態では、固有の核酸シークエンスは、少なくとも、1個以上、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上、16個以上、20個以上、24個以上、30個以上のヌクレオチド長であってよい。いくつかの実施形態において、固有の核酸シークエンスは、4〜10個、4〜12個、4〜15個もしくは4〜20個;または、10〜20個のヌクレオチド長である。IDは、少なくとも1つの末端連結プライマーを含む、すなわち、IDは、いくつかの実施形態において、例えば、ビオチン化ヌクレオチドを含ませることにより修飾されてリンカー部位に付着するシークエンシングプライマーに相補的なシークエンスを含む。いくつかの実施形態において、IDの末端連結プライマー部分は、固有の核酸シークエンスの3’側である。いくつかの実施形態において、それは、固有の核酸シークエンスの5’側である。さらに別の実施形態では、末端連結プライマーは、固有の核酸シークエンスの3’末端および5’末端の両方に存在する。
【0078】
特定の実施形態において、サンプル分子および捕捉分子は、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、抗原、核酸、ホルモン、有機小分子(例えば、医薬)、もしくはビタミン部分、またはこれらの組み合わせから選択される部分を含む。これらの部分は、天然に存在する(例えば、生化学的に精製された)もの、あるいは、合成の(例えば、化学的に合成された、もしくは組み換え技術により製造された)ものであってよい。さらに、これらの基質は、非天然成分(例えば、非天然アミノ酸、封鎖基もしくは保護基など)を含まない、一部を含む、または全てを含んでいてもよい。特定の実施形態において、サンプル分子または捕捉分子は、タンパク質、例えば、成長因子、ペプチド抗原、抗体、またはレセプターである。
【0079】
核酸をリンカー分子またはリンカー部位にコンジュゲートさせる様々な手法は、例えば、米国特許出願公開第2004/0038331号に概説されているように、当該分野において知られている。公開‘331号は、タンパク質オリゴヌクレオチドコンジュゲート体を固相担体上に形成する方法を開示する。米国特許第4,748,111号は、タンパク質を核酸の3’末端にコンジュゲートさせる一例を提示している。そこでは、まず、末端転移酵素を用いて、リボース残基を分子の3’部分に添加する。そして、過ヨウ素酸塩酸化反応により、核酸上に3’アルデヒド基が生じ、続いて、それがタンパク質のアミド基と共有結合を形成する。タンパク質をIDの3’末端にコンジュゲートさせる場合、リンカー部位への付着は、IDの5’末端によりなされる。
【0080】
いくつかの実施形態において、捕捉分子、例えば、タンパク質は、IDの5’末端に連結される。これらの実施形態では、IDの3’末端またはシークエンシングプライマーの5’末端が捕捉分子をリンカー部位に付着させるために用いられる。例えば、米国特許第6,013,434号は、その連結がオリゴヌクレオチドの5’末端によりなされるオリゴヌクレオチド−ポリアミドコンジュゲート体を開示する。米国特許第6,197,513号は、PNAおよびDNAの両方について、核酸の5’末端によるカルボン酸部分を有する分子、例えば、タンパク質へのコンジュゲート体を開示する。PNAおよびDNA分子は、アリールアミンまたはアミノオキシアセチル部分を含む。米国特許第6,153,737号は、様々な分子をそれにコンジュゲートさせるのに適当な少なくとも1つの2’官能化ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを開示する。
【0081】
2.3.4.さらなる検出方法
2.3.4.1.FRET
いくつかの実施形態において、分子は、本発明により提供される光検出装置上で、時として蛍光共鳴エネルギー移動として知られる、フェルスター(Foerster)共鳴エネルギー移動(FRET)により検出される。当該分野で知られているように、FRETは、励起されたドナー分子がエネルギーをアクセプター分子に無放射的に移動させるときに起こり、それは、通常、光としてエネルギーを放出する。FRETは、例えば、検出される分子の有効励起および発光波長間のより大きなスペクトル分離を提供することにより、バックグラウンド信号を低減するのに有用である。FRETは、しばしば、そのドナーおよびアクセプター分子間の距離の6乗である効率の減衰のために、近接する分子の相互作用を検出するのに用いられる。例えば、チャン(Zhang)ら(ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials),4:826−31(2005))は、FRETにより核酸ハイブリダイゼーションを検出した。そこでは、ビオチン化核酸ターゲットをアビジンでコートされた量子ドットドナーにコンジュゲートさせ、そして、それがCy5−コンジュゲートDNAプローブを励起した。本発明のいくつかの実施形態において、標識された捕捉分子および標識されたサンプル分子は、FRETによる検出のためにドナー/アクセプター(またはその逆)ペアを形成することが可能である。
【0082】
本発明により提供される核酸シークエンシングのいくつかの実施形態において、蛍光標識されたヌクレオチドは、ポリメラーゼまたはリガーゼに付着したドナー発光団に対するアクセプター発光団として機能する。したがって、これらの実施形態では、ポリメラーゼまたはリガーゼ上に位置するドナー発光団は、サンプル核酸に重合、またはライゲートされるヌクレオチド上のアクセプター発光団を励起する。ポリメラーゼに近接しないヌクレオチドは、FRET効率の急速な低下のために励起されない。いくつかの実施形態において、ドナー分子は、例えば、別の蛍光色素分子、例えば、量子ドットである。量子ドット、例えば、半導体量子ドットは、当該分野において知られており、例えば、国際公開第03/003015号パンフレットに記載されている。量子ドットを、例えば、生体分子に結合する手法は、例えば、メドニッツ(Mednitz)ら、ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials),4:235−46(2005)、ならびに2006年3月30日および2008年4月17日にそれぞれ公開された米国特許出願公開第2006/0068506号および第2008/0087843号に概説されているように、当該分野において知られている。いくつかの実施形態では、量子ドットは、DNAポリメラーゼ分子にコンジュゲートされる。それは、以下の実施例3でさらに説明される。酵素をリンカー部位にコンジュゲートさせることについて、すでに上で述べたように、当業者は、蛍光色素分子を、例えば、DNAポリメラーゼまたはリガーゼにコンジュゲートさせるときに、蛍光色素分子をコンジュゲートさせることが酵素の一次、二次、および三次構造に与えるあらゆる影響を軽減することにより酵素機能を保つよう注意を払わなければならないということを、間違いなく理解する。
【0083】
2.3.4.2.多光子励起
いくつかの実施形態では、発色団は、2つまたはそれ以上の光子により励起される。例えば、いくつかの実施形態において、FRETにおけるドナーまたはアクセプター発光団の励起は、2つまたはそれ以上の光子によりなされる。2光子および多光子励起は、例えば、米国特許第6,344,653号および第5,034,613号にさらに記載されている。
【0084】
2.3.4.3.時間分解検出
いくつかの実施形態において、本発明により提供される装置の光源および光検出器は、特有の位相シフトを持つように調節することができる。例えば、2008年2月14日に公開された米国特許出願公開第2008/0037008号に開示されているような当該分野で知られる方法を用いて、本発明により提供される装置上で検出される分子から発生される光を、励起光源からの妨害なしに、対応する光検出器で測定することができる。
【0085】
3.バイオアッセイシステムを用いる生体分子分析サービス
また、本発明は、本発明に従った実施形態によるバイオアッセイシステムを用いる生体分子分析サービスを提供する方法をも提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、分析されるべき生体分子を含むサンプルをサービス要求者からサービス提供者へ提供するステップ、およびサービス要求者がサービス提供者から分析結果を受け取るステップを含み、この結果は、本発明により提供される装置を用いて生成されるものである。いくつかの実施形態において、この方法は、利益のある対価、例えば、サービスごとの個別支払いまたはサービス請負契約のために実行される。さらに、サンプルは、サービス要求者とサービス提供者間で直接的に輸送されても、ベンダーにより仲介されてもよい。いくつかの実施形態において、サービス提供者またはベンダーは、地理的に、アメリカ合衆国外の領域、例えば、別の国に位置していてもよい。
【0086】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、またはその他の文献について、すべての目的そして挙げられた課題のためにそれがその全体として参照として組み入れられるということが、理解されるべきである。参照として組み入れられる文献と本出願との間に何らかの不一致が存在する場合、本出願が優位に立つことになる。
【0087】
本明細書は、本明細書内に引用される参照文献の教示内容を考慮すれば、最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の具体例の説明を提示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、その他多くの実施形態が本発明に包含されるということを容易に認識する。本開示に引用される全ての刊行物および特許は、それらの全体として参照して組み込まれる。参照として組み込まれる材料が本明細書と相反するまたは矛盾する限りにおいては、本明細書は、いかなるそのような材料にも優先し得る。本明細書中のいかなる参照文献の引用も、かかる参照文献が本発明の先行技術であるということの承認ではない。
【0088】
特に示さない限り、クレームを含む本明細書中で用いられる成分、反応条件、およびその他の量を表す数字はいずれも、すべての場合において「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないということが特に示されない限り、数値パラメーターは近似値であり、かつ、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変わり得る。最低限でも、そしてクレームの範囲の均等論の適用を制限しようとするのではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数および通常の丸めの手法を踏まえて解釈されるべきである。
【0089】
特に示さない限り、一連の要素の前に来る「少なくとも」という用語は、その連なりの中のすべての要素に言及するということが理解されなければならない。当業者は、日常的なものにすぎない実験により、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認める、または確認することができる。そのような均等物は、以下のクレームに包含されることが意図されている。
【実施例】
【0090】
実施例1:高処理能力バイオアッセイシステムの構築
以下、バイオアッセイシステム1を製造する方法を図1〜4を参照することにより詳細に述べる。まず、シリコン基板10を、一般のロジックおよび光学デバイスに用いる商用の0.25μm半導体製造プロセスにより基板10の上表面上に形成された複数の光検出器210と共に準備する。光検出器210は、フォトダイオード光子検出器であり、各々が直径24μmおよび露光面積452μmを有する。各光検出器は互いに隣接するように配置され、これにより、光検出器210の512の列および512の行のアレイが基板10上に形成される。
【0091】
複数の制御回路215を、光検出器210が形成されていない基板10の上表面上に形成する。この実施形態では、その対応する光検出器210の動作を制御し、かつ光検出器210と検出および記録システム2との間の情報交換を制御するように、1つの制御回路215は1つの光検出器210に対応する。
【0092】
この実施形態においては、フィルター層240を光検出器210および制御回路215の上表面の上方に形成する。フィルター層240を形成する前に、グローバル平坦化プロセスを光検出器210および制御回路215の上表面に施す。フィルター層240は複数の副層を含む。この実施形態において、フィルター層240は、まず、より高い屈折率を持つ副層を、光検出器210および制御回路215の平坦化された上表面の上方に堆積することにより形成する。次いで、より低い屈折率を持つ副層を、すでに形成されたより高い屈折率を持つ副層上に堆積する。より高い屈折率およびより低い屈折率の副層を次々と堆積していくことにより、多数の副層をそうして堆積していき、フィルター層240を形成する。この実施形態では、フィルター層240は多数の副層を含む。
【0093】
図5を参照すると、フィルター層240の実例の構造を要約する表が示されている。図5において、より小さい番号の付いた副層は、フィルター層240の底表面により近い副層を表し、より大きい番号の付いた副層は、フィルター層240の上表面により近い副層を表す。図5に示されるように、この特定の実施形態において、フィルター層240の奇数番号の副層は、例えば、ニオブ酸化物(Nb)で作製され、それは、より高い屈折率を有するものである。偶数番号の副層は、例えば、シリコン酸化物(SiO)で作製され、それは、より低い屈折率を有するものである。副層は、スパッタリングシステムを用いて形成することができ、その例は、シンクロン社(日本、東京、品川区)製ラジカル支援スパッタリングシリーズの型番:RAS 1100を含む。この実施例における各副層の厚さも、図5の表に提示されている。結果として得られるフィルター層240は、蛍光色素分子Cy5の蛍光に対して透明度が高く、蛍光色素分子Cy5を励起するための外部光源として用いられる波長約633nmのヘリウム−ネオンレーザーから発生される光に対して低い透明性を有している。
【0094】
図2および4を再び参照すると、ピンホール235を有するブラインドシート230をフィルター層240上に形成する。以下、ピンホール235を有するブラインドシート230をフィルター層240または基板10の上方に作製するプロセスを詳細に述べる。
【0095】
まず、フォトレジスト層を、フィルター層240上に(フィルター層240を選択的に光検出器210および制御回路215の上表面上に形成する場合)、または平坦化された光検出器210および制御回路215の上表面上に(フィルター層240を形成しない場合)、例えば、フィルター層240上にレジスト材料をスピンコーティングすることにより形成する。その後、フォトレジスト層を現像してピンホール領域にフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンは、フォトマスクを用いてピンホール領域を覆い、フォトマスクに覆われた領域のみがフィルター層240上または平坦化された光検出器210および制御回路215の上表面上に残るようにフォトレジスト層を露光することで形成する。
【0096】
次いで、金属層を、フォトレジストパターンがすでに形成されたフィルター層240の上方に堆積する。この実施形態において、金属層はクロム(Cr)を含み、これを、マグネトロンスパッタリングプロセスを行うことによりフィルター層240または平坦化された光検出器210および制御回路215の上表面の上方に堆積する。
【0097】
続いて、ピンホール領域上の金属層の部分およびピンホール領域内のフォトレジストパターンを除去し、これによりピンホール235を有するブラインドシート230が形成される。
【0098】
また、ブラインドシート230を、まず、金属層(例えば、Cr)をフィルター層240上に堆積してから、金属層上にマスクを形成することにより形成してもよく、これにより金属層の上表面の一部が露出される。次に、金属層の露出された部分を、フィルター層240が露出するまでエッチングし、これにより金属層上にピンホールが形成される。そして、マスクを金属層から除去し、ピンホール235を有するブラインドシート230をフィルター層240上に形成する。
【0099】
図2および4を再び参照すると、この実施形態では、リンカー部位220を、ピンホール235または空洞450に支持材料を充填することにより形成する。支持材料は、蛍光色素分子36から発生される蛍光に透明なポリマーまたは無機材料とすることができる。
【0100】
図1を再び参照すると、12個の光学的検出装置20だけが示されているが、少なくとも1万個の光学的検出装置20を基板10上に形成できることは理解される。例えば、この実施形態において、各光学的検出装置20は、半径約5μm以下の円形を有しており、それは、約100μmの面積を占めるものであってよい。1インチの2乗(すなわち、2.54cm×2.54cm)の面積を有する基板10の場合、600万個以上の光学的検出装置20を1つの基板10上に作製することが可能である。それら600万個の光学的検出装置20を同時に動作させることにより、生体分子を高処理能力で検出することができる。
【0101】
実施例2:高処理能力バイオアッセイシステムによる生体分子の付着および検出
検出システムをテストするために蛍光色素Cy5で標識された核酸を用いる。Cy5およびビオチンを、60−merオリゴヌクレオチドの3’および5’末端にそれぞれ付着させる。標識およびビオチン化されたDNAをTrisMg(10mM Tris、10mM NaCl、100mM MgCl、pH8.0)バッファー中に溶解し、アドレスアレイ上に堆積し、湿ったチャンバ中でインキュベートする。約30分後、未結合のDNAをTrisバッファーで洗い落とす。
【0102】
ブラインドシート上に形成してもよい635nmの発光ダイオードにより励起光を提供する。各ピクセルからの信号を読み取るために、励起光を約1〜5秒間オンにし、各ピクセルから信号を記録し、このサイクルを100回繰り返す。次いで、各ピクセルの代表的な平均信号および対応する標準偏差を適宜計算する。DNAサンプルの堆積前後の信号を比較し、標準偏差の和の3倍よりも平均信号の差が大きいピクセルを正のピクセルと見なす。すなわち、
(AvgAfter−AvgBefore)>3×(STDAfter+STDBefore
である。
【0103】
実施例3:量子ドットのポリメラーゼへの結合
以下に、官能化量子ドットをポリメラーゼ分子上の1級アミンにコンジュゲートさせる2つの方法を示す。第1の方法はアミンで活性化されたドットを用い、第2の方法はカルボキシルで活性化されたドットを用いる。
【0104】
3.1.アミンEVITAG(登録商標)のDNAポリメラーゼへのコンジュゲート体
アミンEVITAG(登録商標)(例えば、エヴィデント・テクノロジーズ(Evident Technologies)社、カタログ番号:E2−C11−AM2−0620;EVITAG(登録商標)の一連のQD製品は、商標eFluor(登録商標)でイー・バイオサイエンス(eBioscience)社、サンディエゴ(San Diego),カルフォルニア州(CA)からも販売されている)官能化量子ドット(QDs)をBS3(ビス−(スルホスクシンイミジル)スベラート、8−炭素スペーサアームの各末端にアミン反応性N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)エステルを含むホモ二官能性、水溶性架橋剤により活性化する。NHSエステルは、QDsの表面上の1級アミンとpH7〜9で反応して安定したアミド結合を形成し、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド離脱基を放出する。Taq DNAポリメラーゼまたはPhi29DNAポリメラーゼは、NHS−エステル架橋結合のターゲットとして利用できるいくつかの1級アミン(例えば、リジン(K)残基および各ポリペプチドのN末端)を有している。
【0105】
3.1.1.量子ドットの表面活性
EVITAG(登録商標)2.0nmolを25μL 10mM BS3(ビス−(スルホスクシンイミジル)スベラート、ピアース(Pierce)社、品番:21580)および25μL 10× PBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)で活性化し、d−HOで最終体積を250μLにする。30分間インキュベートした後、その溶液を、PD−10カラム(アマシャム・バイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)社、製品コード:17−0851−01)を用いて脱塩し、1× PBSで溶出する。着色された部分は活性化されたQDsを含んでいる。
【0106】
3.1.2.DNAポリメラーゼ結合
pH9.2の0.1M炭酸ナトリウムバッファー中のDNAポリメラーゼ100μgを上記混合物へ添加することにより、ポリメラーゼを結合させる。充分混合した後、そのサンプルを2時間傾斜回転させながら4℃でインキュベートする。
【0107】
3.1.3.QDコンジュゲートポリメラーゼの精製
上記コンジュゲート体を30Kマイクロスピン(Microspin)フィルター(パール・コーポレイション(Pall Corporation)、品番:OD100C33)を用いた6,000rpm、5〜10分間の遠心分離により全容量約200μLに濃縮する。そのコンジュゲート体を30Kマイクロスピン(Microspin)フィルター上にてd−HOで2回洗浄する。
【0108】
次いで、そのコンジュゲート体をスーパーデックス(Superdex)30/75樹脂(ジー・イー・ヘルスケア(GE Healthcare)社、低分子タンパク質およびペプチド用の品番:17−0905−10または17−1044−10)上でサイズ排除により精製する。濃縮した結合混合物をカラムにロードして、それがカラムベッドに入るようにする前に、そのカラムをd−HOで前平衡化する。そのサンプルをブラックライト励起下、d−HOで溶出し、その蛍光画分を収集する。その蛍光画分をプールし、100Kマイクロスピン(Microspin)フィルターを用いた6,000rpm、5〜10分間の遠心分離により全容量約100μLに濃縮する。その精製および濃縮したコンジュゲート体は、4℃で保管することができる。
【0109】
3.2.カルボキシルEVITAG(登録商標)のDNAポリメラーゼへのコンジュゲート
カルボキシルEVITAG(登録商標)(例えば、エヴィデント・テクノロジーズ(Evident Technologies)社、カタログ番号:E2−C11−CB2−0620)官能化QDsを、EDC媒介のスルホ−NHSエステルカップリング反応を利用して活性化させる。そのアミン反応性スルホ−NHSエステルは、例えば、Taq DNAポリメラーゼまたはPhi29 DNAポリメラーゼ上のリジン(K)残基の側鎖における1級アミンと反応する。
【0110】
3.2.1.量子ドットの表面活性化
EVITAG(登録商標)2.0nmolを25mM MES pH5.0 バッファー中に希釈する。用いる直前に、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド、ピアース(Pierce)社、品番:22980)を、低温の25mM MES pH5.0中に、濃度50mg/mLまで溶解する。並行して、pH5.0の25mM MES中のスルホ−NHS(ピアース(Pierce)社、品番:24525)の50mg/mL溶液を同じように調製する。
【0111】
次に、EDC溶液50μLおよびスルホ−NHS溶液50μLをEVITAG(登録商標)溶液に添加する。その混合物を充分に混合し、室温で30分間ゆっくり傾斜回転させながらインキュベートする。そして、その混合物を、PD−10カラム(アマシャム・バイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)社、製品コード:17−0851−01)を用いて、脱塩し、pH9.2の0.1M炭酸ナトリウムバッファーで溶出する。活性化されたQDsを含む着色された部分を収集する。
【0112】
3.2.2.DNAポリメラーゼ結合
pH9.2の0.1M炭酸ナトリウムバッファー中のDNAポリメラーゼ100μgを上記混合物に添加する。充分に混合した後、そのサンプルを2時間傾斜回転させながら4℃でインキュベートする。
【0113】
3.2.3.QD−コンジュゲートポリメラーゼの精製
上記コンジュゲート体を、30Kマイクロスピン(Microspin)フィルター(パール・コーポレイション(Pall Corporation)、品番:OD100C33)を用いた6,000rpm、5〜10分間の遠心分離により全容量約200μLに濃縮する。そのコンジュゲート体を30Kマイクロスピン(Microspin)フィルター上にてd−HOで2回洗浄する。次いで、そのコンジュゲート体をスーパーデックス(Superdex)30/75樹脂を用いてサイズ排除により精製する。
【0114】
手短に言うと、そのカラムをd−HOで前平衡化する。次いで、濃縮した結合混合物をカラムにロードし、カラムベッドに入るようにする。そのカラムをブラックライト励起下、d−HOで溶出し、その蛍光画分を収集する。蛍光画分をプールし、100Kマイクロスピン(Microspin)フィルターを用いた6,000rpm、5〜10分間の遠心分離により全容量約100μLに濃縮する。その精製および濃縮したコンジュゲート体は、4℃で保管することができる。
【0115】
実施例4:ポリメラーゼの装置への連結
酵素、例えば、ポリメラーゼを装置に付着させるためのphotoNHS(炭素鎖リンカーを有するアジドニトロベンゼン分子に連結されたN−ヒドロキシスクシンイミドカルボキシレート分子)を用いる2つの方法を説明する。
【0116】
4.1.UV表面活性化
photoNHSを用いて、UV光での光活性化によりポリメラーゼを装置のアミンで修飾した表面に付着させる。UV光がアジドニトロベンゼン部分を励起し、窒素を除去することで反応性に富むナイトレン基を生じる。ナイトレンは、装置の表面上のNHと反応し、ヒドラジン結合を形成する。リンカーの他の末端は、NHSカルボキシレートであり、それは、ポリメラーゼ上のリジン残基と反応してアミド共有結合を生成する。
【0117】
4.1.1.表面の作製
1mM photoNHS(シグマ(Sigma)社、商品番号:A3407,分子量390.35)の溶液を95%エタノール中で調製する。アミンで修飾した表面を、炭酸塩バッファー(pH9.3)、続いて、95%エタノールで洗浄する。次に、photoNHS溶液をアミンで修飾した表面に塗布する。254〜365nmのUV光を表面に3分間照射し、続いて、95%エタノールで3回リンスする。
【0118】
4.1.2.アミンの末端キャップ
10mM N−アセトキシスクシンイミドの溶液を炭酸塩バッファー(pH9.3)中で調製し、表面に塗布して任意の未反応のアミンを末端キャップする。その装置を優しく振盪しながら室温で2時間インキュベートする。次いで、その表面を炭酸塩バッファー、および蒸留された脱イオン水で3回ずつ洗浄する。
【0119】
4.1.3.DNAポリメラーゼ結合
次に、炭酸塩バッファー(pH9.3)中の1mM DNAポリメラーゼの溶液を表面に塗布し、連続的な優しい振盪の下、室温で2時間インキュベートする。次いで、その表面を炭酸塩バッファーおよびpH7.4 PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で3回ずつ洗浄する。そのポリメラーゼ結合表面は、4℃で保管することができる。
【0120】
4.2.緩衝化表面活性化
別の実施形態においては、photoNHSを緩衝化条件下で活性化し、表面にコンジュゲートすることができる。次いで、UV光を用い、ポリメラーゼの存在下、アジドニトロベンゼン部分を活性化する。同様に、反応性に富むナイトレンが、UV光の下、電子不足基として形成され、ポリメラーゼの表面上の1級アミンと素早く反応し、これにより表面への共有結合が形成される。
【0121】
4.2.1.表面の調製
1mM photoNHS(シグマ(Sigma)社、商品番号:A3407,分子量390.35)の溶液を炭酸塩バッファー(pH9.3)中で調製する。アミンで修飾した表面を、炭酸塩バッファー(pH9.3)でリンスする。そのphotoNHS溶液を、アミンで修飾した表面に塗布し、連続的な優しい振盪の下、2時間インキュベートする。そして、その表面を炭酸塩バッファーで3回リンスする。
【0122】
4.2.2.アミンの末端キャップ
炭酸塩バッファー(pH9.3)中で調製した10mM N−アセトキシスクシンイミド溶液を表面に塗布して未反応のアミン基を末端キャップする。その溶液を連続的な優しい振盪の下、室温で2時間インキュベートしてから、PBSバッファー(pH7.4)で3回リンスする。
【0123】
4.2.3.DNAポリメラーゼ結合
1mM DNAポリメラーゼの溶液をPBSバッファー(pH7.4)中で調製し、末端キャップされた表面に塗布する。UV光(254〜365nm)をその表面に3分間照射する。次に、その表面をPBS(pH7.4)で3回リンスする。そして、そのポリメラーゼ結合表面は、4℃で保管することができる。
【0124】
実施例5:塩基伸長シークエンシングの様式
上述したように、段階的伸長中に添加されるヌクレオチドを識別するための2種の一般的な方法として、同様に標識された4個のヌクレオチドの順次添加、または、異なって標識された4個のヌクレオチドの同時添加がある。これらの様式の各々の例が以下に提示される。
【0125】
5.1.同一の標識を有する4個のヌクレオチドを順次添加する
5.1.1.アデニン(A)分子伸長:封鎖および標識されたアデニンおよび適当なポリメラーゼをシークエンシング反応バッファー溶液(例えば、40mM Tris−HCl pH9、1mM MgCl)に添加する。チミン(T)が、末端連結プライマーの5’末端に隣接するシークエンスされる核酸中のヌクレオチドであるときにのみ、アデニンがシークエンシングプライマーの3’末端に添加されることになる。プライマーの3’末端に最も近い核酸のヌクレオチドがグアニン(G)、シトシン(C)、またはアデニン(A)である場合には、伸長は起こらない。
【0126】
5.1.2.伸長反応洗浄ステップ:伸長反応が完了した後、そのアレイチップを5× SSCおよび0.1%SDSで1回、そして5× SSCで1回洗浄し、アデニンと未反応の溶液を除去する。
【0127】
5.1.3.蛍光検出および記録:リンカー部位の蛍光信号を読み取り、アデニンが伸長されたかを判断するが、それは、シークエンスされる核酸中の対応するチミンを示すものである。
【0128】
5.1.4.保護および蛍光基を除去:検出後、保護および蛍光基を化学的または酵素的切断により除去する。
【0129】
5.1.5.洗浄ステップ:上記アレイチップを5× SSCおよび0.1%SDSで1回、そして5× SSCで1回洗浄して、切断された保護基および標識基を除去する。
【0130】
5.1.6.校正および記録:前の伸長ステップから、保護基および蛍光基の除去の成功を確認する。残留した保護基および蛍光基がある場合、例えば、検出および記録システム2上の検出および分析ソフトウェアが、その位置を記録することになる。シークエンス反応の記録は、保護基および蛍光基の除去が次の洗浄ステップで確認された場合にのみ、進行できる。
【0131】
5.1.7.今回は伸長反応にグアニンを用い、5.1.1〜5.1.6を繰り返す。
【0132】
5.1.8.今回は伸長反応にシトシンを用い、5.1.1〜5.1.6を繰り返す。
【0133】
5.1.9.今回は伸長反応にチミンを用い、5.1.1〜5.1.6を繰り返す。
【0134】
5.1.10.A,G,C,Tを用いる4回毎の伸長反応が1サイクルである。このサイクルを繰り返すことにより、核酸のシークエンスが段階的な形で決定される。
【0135】
5.2.異なる標識を有する4個のヌクレオチドを同時に添加する
5.2.1.塩基伸長反応:4個の封鎖および異なるよう標識されたDNAヌクレオチド(A、G、C、T)および核酸ポリメラーゼをアレイ上のシークエンシングバッファーに添加する。伸長反応はシークエンシングプライマーの3’末端でのみ起こり得る。連結プライマーの5’末端に最も近いシークエンスされる核酸のヌクレオチドに相補的なヌクレオチドは、シークエンシングプライマーの3’末端に添加されることになる。例えば、図6を参照されたい。
【0136】
5.2.2.伸長反応洗浄ステップ:伸長反応が完了した後、そのチップを5× SSCおよび0.1%SDSで1回、そして5× SSCで1回洗浄して、反応溶液中に残った物質を除去する。
【0137】
5.2.3.蛍光検出および記録:各リンカー部位における異なる蛍光信号のそれぞれを検出して、添加されたヌクレオチドを決定する。
【0138】
5.2.4.保護および蛍光基を除去:検出後、保護および蛍光基を化学的または酵素的切断により除去する。
【0139】
5.2.5.洗浄ステップ:上記チップを5× SSCおよび0.1%SDSで1回、そして5× SSCで1回洗浄して、切断された保護および蛍光基を除去する。
【0140】
5.2.6.校正および記録:前のステップから、保護基および蛍光基の除去の成功を確認する。残留した保護基および蛍光基がある場合、例えば、検出および記録システム2上の検出および分析ソフトウェアがその位置を記録することになる。シークエンス反応の記録は、その位置の保護基および蛍光基の除去が次の洗浄ステップで確認された場合にのみ、進行できる。
【0141】
5.2.7.ここでは、5.2.1〜5.2.6を繰り返す。反応サイクルを繰り返して核酸のシークエンスを決定する。
【0142】
実施例6:既知核酸のシークエンシング
既知シークエンスを有する化学的に合成された60merオリゴヌクレオチド:ビオチン−5’−tcag tcag tcag tcag tcag tcag tcag tcag tcag tcag tcag tc ACACGGAGGTTCTA−3’がシークエンシングテンプレートとなる。このシークエンシングテンプレートを14merオリゴヌクレオチドシークエンシングプライマー(5’−TAGAACCTCCGTGT−3’)に結合させる。テンプレートの5’末端を、ビオチン分子を含むように修飾する。テンプレート分子を、ストレプトアビジンを含むリアクター表面に付着させる。シークエンシング反応は、DNAポリメラーゼを用い、15mM DTTを有する1× シークエンシングバッファー中で塩基伸長反応を行う。各伸長反応ステップでは、二次的な伸長の保護(封鎖)基および蛍光標識(例えば、Cy5)を有する1種類のヌクレオチドのみを添加する。シークエンシングプライマーの3’末端に隣接するDNAテンプレートのヌクレオチドが、添加されたヌクレオチドに相補的である場合に、蛍光標識された塩基が添加される。未反応の塩基物質を洗い落とした後、その蛍光信号を検出する。添加された塩基が相補的でない場合は、蛍光信号は検出されないことになる。検出後、保護蛍光基を化学的に除去し、塩含有溶液(例えば、5× SSC;0.1%SDS)を用いて、そのアレイをさらに洗浄し、再び検出して蛍光標識の除去を確認する。除去および洗浄ステップ後に蛍光信号が検出されない位置については、蛍光標識がすでに除去されたものと見なす。そして、次の反応サイクルで得られる蛍光信号は、次の伸長かつシークエンスされたものの信号と見なす。除去および洗浄後に蛍光信号が依然残る位置については、その位置を、ソフトウェアにより不完全な除去反応を有するものとして記録する。この位置からの信号は、次のサイクルにおける除去ステップが確認された場合にのみ、記録され続けることができる。この方法に基づき、4種の反応塩基物質を順次添加し、反応を循環的に行うことができる。したがって、テンプレートのシークエンスが決定される。
【0143】
本発明に従った他の実施形態は、本明細書の検討およびここに開示される本発明の実行から、当業者には明らかとなろう。本明細書および実施例は単に例示的なものと考えられることを意図しており、以下のクレームにより本発明の真の範囲および精神が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の生体分子を同定する装置であって、
光検出器を有する基板、および
前記光検出器の上方に形成されたリンカー部位であって、前記生体分子を該リンカー部位に付着させるように処理されているリンカー部位、
を含み、
前記リンカー部位が前記光検出器に近接し、かつ100μm以下の距離だけ前記光検出器から間隔が置かれている、装置。
【請求項2】
前記基板上方に形成されたブラインドシートをさらに含み、該ブラインドシートが所定の直径を有するピンホールを含み、前記リンカー部位が該ピンホールに近接して形成されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ピンホールが1,000nm以下の直径を有する請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ピンホールが200nm以下の直径を有する請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記基板と前記ブラインドシートとの間に形成されたフィルター層をさらに含む請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記基板と前記ブラインドシートとの間に形成されたマイクロレンズをさらに含む請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記距離が25μm以下である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記距離が6μm以下である請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記光検出器が所定の立体角の範囲内で前記生体分子からの光を収集し、該立体角が0.8SIステラジアン以上である請求項1に記載の装置。
【請求項10】
単一の生体分子を同定する装置であって、
光検出器を有する基板、
前記光検出器の上方に形成されたリンカー部位であって、前記生体分子を該リンカー部位に付着させるように処理されているリンカー部位、および
前記基板の上方に形成された励起光源、
を含み、
前記リンカー部位が前記光検出器に近接し、かつ100μm以下の距離だけ前記光検出器から間隔が置かれている、装置。
【請求項11】
前記励起光源が発光層を含み、該発光層が前記光検出器の表面に平行な水平方向に沿って前記リンカー部位に励起光を放出する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記基板と前記発光層との間に形成されたフィルター層をさらに含む請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記励起光源が、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)、およびレーザーダイオード(LD)から選択される請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記励起光源が、前記生体分子から発生される光の第2の波長範囲に重複しない第1の波長範囲の励起光を提供する請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記距離が25μm以下である請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記距離が6μm以下である請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記光検出器が所定の立体角の範囲内で前記生体分子からの光を収集し、該立体角が0.8SIステラジアン以上である請求項10に記載の装置。
【請求項18】
単一の生体分子を同定する装置であって、
光検出器を有する基板、および
前記光検出器の上方に形成されたリンカー部位であって、前記生体分子を該リンカー部位に付着させるように処理されているリンカー部位、
を含み、
前記光検出器が0.8SIステラジアン以上の立体角の範囲内で前記生体分子から発生される光を収集する、装置。
【請求項19】
前記基板上方に形成されるブラインドシートをさらに含み、該ブラインドシートが所定の直径を有するピンホールを含み、前記リンカー部位が該ピンホールに近接して形成されている請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ピンホールが1,000nm以下の直径を有する請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記ピンホールが200nm以下の直径を有する請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記基板と前記ブラインドシートとの間に形成されたフィルター層をさらに含む請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記基板と前記ブラインドシートとの間に形成されたマイクロレンズをさらに含む請求項19に記載の装置。
【請求項24】
単一の生体分子を同定する装置であって、
光検出器を有する基板、
前記光検出器の上方に形成されたリンカー部位であって、前記生体分子をそれに付着させるように処理されているリンカー部位、および
前記基板の上方に形成される励起光源、
を含み、
前記光検出器が0.8SIステラジアン以上の立体角の範囲内で前記生体分子から発生される光を収集する、装置。
【請求項25】
前記励起光源が前記基板の上方に形成された発光層であり、励起光が前記光検出器の表面に平行な水平方向に沿って前記リンカー部位に放出される請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記基板と前記発光層との間に形成されたフィルター層をさらに含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記励起光源が、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)、およびレーザーダイオード(LD)から選択される請求項24に記載の装置。
【請求項28】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の装置を少なくとも10,000個含む光学的検出システム。
【請求項29】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の装置を少なくとも250,000個含む光学的検出システム。
【請求項30】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の装置を少なくとも2,000,000個含む光学的検出システム。
【請求項31】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の装置を少なくとも10,000,000個含む光学的検出システム。
【請求項32】
核酸をシークエンシングする方法であって、
1つの核酸分子を請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の前記装置の前記リンカー部位に付着させるステップ、および
前記装置上で前記核酸分子の核酸シークエンシングを行うステップ、
を含む方法。
【請求項33】
前記核酸が、前記リンカー部位に付着したポリメラーゼ分子に結合することにより、前記リンカー部位に付着させられる請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸シークエンシングが、標識されたヌクレオチドを前記装置に添加するステップを含む請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ヌクレオチドが蛍光標識されている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヌクレオチドが、それらの末端リン酸上に蛍光標識されている請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記核酸シークエンシングが塩基伸長シークエンシングであり、封鎖および標識されたヌクレオチドを前記装置に添加するステップを含む請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記ヌクレオチドが蛍光標識されている請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ヌクレオチドが、同一の蛍光標識を有しており、順次添加される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ヌクレオチドが、異なる蛍光標識を有しており、同時に添加される請求項38に記載の方法
【請求項41】
前記核酸シークエンシングがリガーゼベースのシークエンシングである請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸が、核酸シークエンシングの前に前記リンカー部位で増幅される請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記核酸のシークエンスが未知である請求項32に記載の方法。
【請求項44】
複数の核酸分子をシークエンシングする方法であって、
複数の核酸分子を請求項28〜請求項31のいずれか1項に記載の前記光学的検出システムの前記リンカー部位に付着させるステップ、および
前記光学的検出システム上で前記核酸分子の核酸シークエンシングを並行して行うステップ、
を含む方法。
【請求項45】
生体分子を検出する方法であって、
1個またはそれ以上の生体分子を請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の前記装置の前記リンカー部位に付着させるステップ、および
前記装置上で前記生体分子を検出するステップ、
を含む方法。
【請求項46】
前記生体分子が標識を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標識が蛍光である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記生体分子が、ポリペプチド、抗体、脂質、ビタミン、低分子量有機分子、および多糖から選ばれた部分を含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記生体分子が、連結分子により前記装置の前記リンカー部位に付着させられる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記連結分子が捕捉分子を含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記捕捉分子がタンパク質である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記捕捉分子が抗体である請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記連結分子が核酸タグを含む請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記装置上で前記連結分子の前記核酸タグを検出するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記核酸タグが核酸シークエンシングにより検出される請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記核酸タグが核酸プローブへのハイブリダイゼーションにより検出される請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記核酸プローブが蛍光標識されている請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記核酸が、フェルスター(Foerster)共鳴エネルギー移動(FRET)により励起される標識で検出される請求項32〜請求項45または請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸が、時間分解蛍光技術により標識で検出される請求項32〜請求項45または請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
複数の生体分子を検出する方法であって、
複数の生体分子を請求項28〜請求項31のいずれか1項に記載の前記光学的検出システムの前記リンカー部位に付着させるステップ、および
前記光学的検出システム上で前記生体分子を並行して検出するステップ、
を含む方法。
【請求項61】
単一の生体分子を同定するのに用いる装置を製造するための方法であって、
基板上に光検出器および制御回路を形成すること、
前記基板上にピンホールを有するブラインドシートを形成すること、ならびに
前記光検出器の上方にかつ前記ピンホールに近接してリンカー部位を形成すること、
を含み、
前記リンカー部位が前記生体分子を前記リンカー部位に付着させるように処理されており、前記リンカー部位が前記光検出器に近接し、かつ100μm以下の距離だけ前記光検出器から間隔が置かれている、方法。
【請求項62】
前記基板と前記ブラインドシートとの間にフィルター層を形成することをさらに含む請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ブラインドシートを形成することが、
前記フィルター層上に不透明層を形成すること、
前記不透明層上にフォトレジスト層を形成すること、
前記フォトレジスト層をパターニングして前記不透明層の一部を露出させること、
前記パターン化されたフォトレジスト層をマスクとして用い前記フィルター層が露出するまで前記不透明層をエッチングすること、および
前記フォトレジスト層を除去すること、
を含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記不透明層が金属を含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
生体分子分析サービスを提供する方法であって、
生体分子を含むサンプルをサービス要求者からサービス提供者へ提供するステップ、
前記サービス要求者が前記サービス提供者から分析結果を受け取るステップ、
を含み、
前記結果が請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の前記装置を用いて生成されたものである、方法。
【請求項66】
前記方法が利益のある対価のために行われる請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記サービス要求者および前記サービス提供者がベンダーにより仲介される請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記分析結果が別の国で生成される請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記分析結果がアメリカ合衆国以外の国で生成される請求項65に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−504223(P2011−504223A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530258(P2010−530258)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/CN2008/072824
【国際公開番号】WO2009/056065
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507084073)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (22)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】