説明

光学的立体造形用樹脂組成物、及び立体造形物

【課題】 速硬化性を有し、得られる立体造形物の機械的特性、耐候性、後加工性が良好な光学的立体造形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の組成物は、1以上のアミド基と2以上のヒドロキシ基とを有するアミドヒドロキシ化合物と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールから選ばれるジオールと、有機ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応して得られ、2以上のラジカル重合性(メタ)アクリロイル基と、1以上のアミド基と、2以上のウレタン基とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、(A)成分以外のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)と、コア成分が、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーン/アクリル系複合ゴムから選ばれる1種以上であるコア/シェル構造のエラストマー粒子(C)と、ラジカル重合開始剤(D)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的立体造形用樹脂組成物、及び立体造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
立体造形物の製造方法として、光学的立体造形用樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の立体造形物を製造する光学的立体造形法(3次元光造形法)が知られている(特許文献1〜10等)。
かかる光学的立体造形法によれば、製造する立体造形物の形状が複雑であっても、簡易にかつ比較的短時間で、所望の立体造形物を製造することができる。
【0003】
従来、ラジカル重合性の光学的立体造形用樹脂組成物として、架橋脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和化合物を含有する組成物(特許文献11)や、特定のウレタン(メタ)アクリレートを含有する組成物(特許文献12)が開示されている。
また、カチオン重合性の光学的立体造形用樹脂組成物として、エネルギー線硬化型カチオン重合性有機化合物とエネルギー線感受性カチオン重合性開始剤とを含有する組成物(特許文献13)や、エラストマー粒子を含有する組成物(特許文献14、15)が開示されている。
【0004】
光学的立体造形用樹脂組成物には、光エネルギー照射により迅速に硬化する速硬化性を有すると共に、得られる立体造形物の機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性、後加工性等が良好であることが必要である。特に、後加工として、立体造形物の一部をなすオスネジやメスネジ等にタップを施すことが多々あり、その際、立体造形物が割れたり、ネジ山が崩れたりしないことが、重要になってきている。
【特許文献1】特開昭56−144478号公報
【特許文献2】特開昭60−247515号公報
【特許文献3】特開昭62−35966号公報
【特許文献4】特開平1−204915号公報
【特許文献5】特開平2−113925号公報
【特許文献6】特開平2−145616号公報
【特許文献7】特開平2−153722号公報
【特許文献8】特開平3−15520号公報
【特許文献9】特開平3−21432号公報
【特許文献10】特開平3−41126号公報
【特許文献11】特開平1−204915号公報
【特許文献12】特開2001−310918号公報
【特許文献13】特開平1−213304号公報
【特許文献14】特開2000−302964号公報
【特許文献15】特開2001−220487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献11〜15に記載の光学的立体造形用樹脂組成物はいずれも、後加工性が良好でなく、立体造形物を損傷等することなく、タップを施すことが難しい。また、特許文献14に記載の組成物は、速硬化性の点でも難がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、速硬化性を有し、得られる立体造形物の機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性、後加工性が良好な光学的立体造形用樹脂組成物、及びこれを用いた立体造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の化学構造を有するウレタン(メタ)アクリレートに、他のラジカル重合性化合物と、特定の構造を持つエラストマー粒子と、ラジカル重合開始剤(光重合開始剤)とを合わせて配合することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、
分子内に1個以上のアミド基と2個以上のヒドロキシ基とを有するアミドヒドロキシ化合物(a1)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれるジオール(a2)と、有機ジイソシアネート化合物(a3)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(a4)とを反応して得られ、
分子内に、2個以上のラジカル重合性(メタ)アクリロイル基と、1個以上のアミド基と、2個以上のウレタン基とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
(A)成分以外のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)と、
コア成分が、アクリル系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体、及びシリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体から選ばれる1種以上であるコア/シェル構造のエラストマー粒子(C)と、
ラジカル重合開始剤(D)とを含有することを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書において、「アクリル系ゴム状重合体」、「シリコーン系ゴム状重合体」には、アクリル系複合ゴム状重合体、シリコーン系複合ゴム状重合体も含まれるものとする。
また、「複合ゴム状重合体」とは2以上のゴム状重合体が全体的又は部分的にミクロレベルで絡みあった、若しくは化学的に結合した状態を指し、個々に独立したゴム状重合体を単純ブレンドしたものは除外される。複合ゴム状重合体は、全体的に完全に均一であっても良いが、サブミクロン又はナノオーダーで独立したドメインを形成していても構わない。
【0010】
本発明の立体造形物は、上記の本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、未硬化時には低粘度であり、速硬化性を有し、得られる立体造形物の機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性、後加工性が良好な光学的立体造形用樹脂組成物を提供することができる。
また、この樹脂組成物を用いることにより、所望の形状や寸法を有し、機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性、後加工性が良好な立体造形物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、特定のウレタン(メタ)アクリレート(A)と、(A)成分以外のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)と、特定のエラストマー粒子(C)と、ラジカル重合開始剤(D)とを含有してなる。
【0013】
「(A)成分」
本発明では、硬化成分として、分子内に、2個以上のラジカル重合性(メタ)アクリロイル基と、1個以上のアミド基と、2個以上のウレタン基とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A)を配合する。(A)成分は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明者は、かかる構造のウレタン(メタ)アクリレート(A)を用いることで、従来にない曲げ強度と引張り強度とを有し、優れた伸度を有する立体造形物が得られることを見出し、これを硬化成分として選定した。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子内に1個以上のアミド基と2個以上のヒドロキシ基(このヒドロキシ基は(a3)成分のNCO基に対して反応性を有する)とを有するアミドヒドロキシ化合物(a1)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれるジオール(a2)と、有機ジイソシアネート化合物(a3)と、ヒドロキシ基(このヒドロキシ基は(a3)成分のNCO基に対して反応性を有する)含有(メタ)アクリレート(a4)とを付加反応させることで得られる。
【0015】
アミドヒドロキシ化合物(a1)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の硬化物の伸度を維持したまま、強度(靭性)を向上させる成分である。
該成分としては特に制限はないが、環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア、若しくは第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物が好ましい。
【0016】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが特に好ましい。
第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、6−アミノ−1−ヘキサノール、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノデカン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びN−メチルエタノールアミンが特に好ましい。
環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア、若しくは第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応は、当モル量の両者を混合し、約80〜100℃で8〜24時間加熱することで実施できる。このようにして得られる(a1)成分の中でも、4−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルブタナミドが特に好ましい。
【0017】
ジオール(a2)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の硬化物の柔軟性と伸度を向上させる成分である。なお、3官能以上のポリオールであると、(A)成分の製造時に架橋・ゲル化しやすいため、かかる恐れのないジオールを用いる。
【0018】
(a2)成分としては、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールから選ばれるジオールを1種又は2種以上用いることができる。これらは市販品を使用でき、その具体例としては、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:6〜20)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:6〜20)、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6〜20)、1−メチルブチレングリコール(繰り返し単位数:6〜20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2〜10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2〜10)ジオール、ポリカーボネートジオール(炭素数4〜6の脂肪族骨格)、フタル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、マレイン酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、フマル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール等が挙げられる。
中でも、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6〜20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2〜10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2〜10)ジオールが特に好ましい。また、質量平均分子量が300〜2000程度のものが好ましい。
【0019】
有機ジイソシアネート化合物(a3)は、他の成分のヒドロキシ基と反応してウレタン基を生成する成分である。
(a3)成分としては特に制限はないが、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、1,2−水添キシレンジイソシアネート、1,4−水添キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシレンジイソシアネート、1,4−水添キシレンジイソシアネートが好ましい。
特に、硬化物の耐候性に優れることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族骨格のものが好ましい。
【0020】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(a4)は、反応で得られるポリウレタン前駆体の末端に付加して、(A)成分にラジカル反応性を付与する成分である。
(a4)成分としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基と、1個のNCO反応性ヒドロキシ基を有するものが好ましく、その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれらのカプロラクトンの付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0021】
(A)成分は、例えば、(a1)成分と、総ヒドロキシ基含有当量で0.9モル当量の(a2)成分とを合成釜内に仕込み、加熱・攪拌下で、2.0モル当量の(a3)成分を滴下することで、前駆体のイソシアネート末端ポリウレタンを得、これに更に1.1〜1.3モル当量の(a4)成分を滴下し、加熱付加することで、得られる。
上記反応における(a1)〜(a4)の使用比率は、モル当量比で、(a3):[(a1)+(a2)]:(a4)=2.0:0.5〜4.0:0.5〜4.0、(a1):(a2)=0.2〜1.0:1.0〜0.2とすることが好ましい。
【0022】
本明細書において、「モル当量」は、使用化合物のモル数と官能基数を乗じた数を意味する。すなわち、「モル当量」は、アミドヒドロキシ化合物(a1)、ジオール(a2)、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(a4)では、分子内のヒドロキシ基数と使用モル数を乗じた数であり、有機ジイソシアネート化合物(a3)では、分子内のNCO基数と使用モル数を乗じた数である。
【0023】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(A)成分の配合量は特に制限はないが、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、15〜75質量部、特に20〜70質量部が好ましい。
(A)成分量が15質量部未満では、得られる立体造形物の機械的強度が不充分となったり、硬化時の体積収縮率が増加する恐れがある。(A)成分量が75質量部超では、希釈作用を有する(B)成分量が少なくなりすぎて、樹脂組成物の液粘度が高くなり、その結果、精密な立体造形物を得るのが難しくなる恐れがある。
【0024】
「(B)成分」
本発明では、硬化成分として、上記(A)成分に加えて、それ以外のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)を配合する。(B)成分は、高粘性となり易い(A)成分の反応性希釈剤として配合される他、得られる立体造形物に高弾性率、耐熱性等を付与するために配合される。
【0025】
(B)成分としては特に制限はないが、各種アルキルモノ又はポリアルコールから誘導されるエステル型モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、及びヘキサ(メタ)アクリレート、モノ及びジ(メタ)アクリルアミド類、(A)成分を除くウレタンポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、アリル化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
(B)成分の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;
酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;
エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;
アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリルモルホリン、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のモノ(メタ)アクリレート;
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(繰り返し単位数:5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールジ(メタ)アクリル酸エステル等のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
(B)成分の具体例としては、上記の他、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0028】
(B)成分の具体例としては、上記の他、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル等のジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス((メタ)アクリロキシポリ(エトキシ)エチル)イソシアヌレート等のポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
(B)成分の具体例としては、上記の他、ペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、N,N'−ビス(アクリロキシエチル)−N"−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等のポリ(メタ)アクリレート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物の3量体や、これらのジイソシアネートとアルキルポリアルコール(例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等)との付加体ポリイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン等に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートやそれらのカプロラクトン付加体等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを付加した(A)成分を除くウレタンポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
(B)成分の具体例としては、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内に複数のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;
フタル酸、フマル酸、マレイン酸等のポリカルボン酸とエチレングリコール、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:2〜14)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:2〜14)、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:2〜14)、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール(OH官能基数:2〜4)から選ばれる2種以上と(メタ)アクリル酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
以上例示した中でも、それ自身が低粘度で希釈作用を有することから、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジメチロールジトリシクロデカンジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリル酸エステル等が好適である。
【0032】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(B)成分の配合量は特に制限はないが、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、85〜25質量部、特に80〜30質量部が好ましい。
(B)成分量が25質量部未満では、樹脂組成物の液粘度が高くなり、その結果、精密な立体造形物を得るのが難しくなる恐れがある。(B)成分量が85質量部超では、(A)成分量が少なくなりすぎて、得られる立体造形物の機械的強度が不充分となったり、硬化時の体積収縮率が増加する恐れがある。
【0033】
「(C)成分」
本発明では、特定のゴム状重合体を幹ポリマー(コア)とし、これにビニル系単量体をグラフトさせたグラフト共重合体である、コア/シェル構造のエラストマー粒子(C)を配合する。
本発明者は、光学的立体造形用樹脂組成物にエラストマー粒子(C)を分散配合することで、得られる立体造形物に対して、タップを施すなどの後加工の際のマイクロクラックの発生を抑制できることを見出している。また、コア/シェル構造のエラストマー粒子(C)を用いることで、エラストマー粒子同士のブロッキングが抑制され、樹脂組成物中へのエラストマー粒子の分散安定性が良好となることを見出している。
【0034】
<コア成分>
本発明では、エラストマー粒子(C)のコアをなすゴム状重合体として、アクリル系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体、及びシリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体から選ばれる1種以上を用いる。
【0035】
{アクリル系ゴム状重合体}
アクリル系ゴム状重合体としては特に制限はないが、2以上のガラス転移温度(Tg)を有するアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム状重合体からなるエラストマー粒子を用いると、より優れた機械的特性を付与できるものとなり、好ましい。中でも、ガラス転移温度がいずれも10℃以下のもの、さらには少なくとも1つのガラス転移温度がn−ブチルアクリレート単独重合体のガラス転移温度より低いものが好ましい。
【0036】
ガラス転移温度は、例えば、動的機械的特性解析装置(DMA)で測定されるTanδの転移点として測定される。一般に単量体から得られた重合体は、固有のガラス転移温度を持ち、単独(単独重合体、又は複数成分のランダム共重合体)では一つの転移点が観測されるが、複数成分の混合物、あるいは複合化された重合体では、夫々に固有の転移点が観測される。例えば、2成分の混合物や複合物では、2つの転移点が観測される。これら2つの転移点は、DMAにより測定されるTanδ曲線では、2つのピークとして観測される。なお、組成比に偏りがある場合や転移温度が近い場合には、夫々のピークが接近する場合があり、ショルダー部分を持つピークとして観測される場合があるが、単独成分の場合に見られる単純な1ピークの曲線とは異なり判別可能である。
【0037】
アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム状重合体は、例えば、1種又は2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を、乳化重合(必要があれば強制乳化重合を採用)、好ましくはソープフリー乳化重合することで得られる。
【0038】
アルキル(メタ)アクリレートとしては特に制限はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
用いる単量体成分には、架橋剤及び/又はグラフト交叉剤として、分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体が、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは0.1〜18質量%以下の範囲で含まれていてもよい。
架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、多官能(メタ)アクリル基変性シリコーン等が挙げられる。グラフト交叉剤としては、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。アリル(メタ)アクリレートは架橋剤としても使用できる。これら架橋剤及び/グラフト交叉剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
単量体成分には、共重合成分として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種ビニル系単量体が、好ましくは30質量%以下の範囲で含まれていてもよい。
【0041】
重合開始剤としては特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸過物と酸化剤・還元剤等とを組み合わせたレドックス系開始剤等等が挙げられる。中でも、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ハイドロパーオキサイドを組み合わせた系が好ましい。
乳化剤としては特に限定されないが、不均化ロジン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸のアルカリ金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸アルカリ金属塩等を1種又は2種以上用いることができる。
【0042】
アクリル系ゴム状重合体の平均粒子径の制御等を目的として、乳化重合で得られるゴム状重合体ラテックスをさらに、酸或いは塩等で肥大化してもよい。
【0043】
{シリコーン系ゴム状重合体}
シリコーン系ゴム状重合体としては特に制限はないが、機械的特性の観点から、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、ジメチルシロキサン単位(主成分)とビニル重合性官能基含有シロキサン単位(副成分)とを含むポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0044】
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上、特に3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体が好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。
具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、及び∂−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、さらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサン等が挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
ポリオルガノシロキサンには、構成成分としてシロキサン系架橋剤が含まれていても良い。シロキサン系架橋剤としては、3官能性又は4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
ポリオルガノシロキサンは、例えば以下のようにして製造することができる。
はじめに、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンとからなるシロキサン混合物に、必要に応じてシロキサン系架橋剤を添加した後、乳化剤及び水を用いて乳化させ、シロキサン混合物ラテックスを得る。
次いで、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して、シロキサン混合物ラテックスを微粒子化する。この工程においては、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布を小さくできることから、特にホモジナイザー等の高圧乳化装置を使用することが好ましい。
次いで、微粒子化したシロキサン混合物ラテックスを、酸触媒の存在下、高温下で重合させる。酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物ラテックスの調製時に添加しておく方法や、シロキサン混合物ラテックスを高温の酸水溶液中に滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサン粒子径の制御のしやすさを考慮すると、シロキサン混合物ラテックスを高温の酸水溶液中に滴下する方法が好ましい。
重合反応が充分に進行した後、反応液を冷却し、さらに苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で中和することで重合を停止させ、ポリオルガノシロキサンが得られる。
【0048】
ポリオルガノシロキサンの製造に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤等が好ましい。その具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系乳化剤が特に好ましい。
酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、及び硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類等が挙げられる。
乳化剤及び酸触媒は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
{シリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体}
シリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体としては特に制限はないが、機械的特性の観点から、シリコーン系ゴム状重合体に、アルキル(メタ)アクリレート系ゴム状重合体を複合化させたものが好ましい。
複合化は、例えば、ポリオルガノシロキサンのラテックス中に、アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することで実施できる。アルキル(メタ)アクリレートは、一括添加、分割添加、又は連続添加することができるが、得られる立体造形物の耐衝撃性を考慮すると、一括添加することが好ましい。重合に際しては、架橋剤及び/又はグラフト交叉剤を用いることができる。
【0050】
アルキル(メタ)アクリレートや架橋剤及び/又はグラフト交叉剤、ラジカル重合開始剤としては特に制限はなく、アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム状重合体の説明で挙げたのと同様のものが使用できる(段落[0038]、[0039]、[0041])。得られる立体造形物の耐衝撃性や光沢性を考慮すると、アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0051】
<シェル成分>
エラストマー粒子(C)は、例えば以下のようにして得られる。
上記のアクリル系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体、及びシリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体から選ばれる少なくとも1種のゴム状重合体のラテックスの存在下に、少なくとも1種の共重合可能なビニル系単量体を添加して、重合を行い、グラフト共重合体のラテックスを得る。
ラテックスの平均粒子径は特に制限はないが、1000nm以下、特に600nm以下が好ましい。平均粒子径が1000nmを超えると、得られる立体造形物の表面平滑性が低下したり、光学的立体造形用樹脂組成物へのエラストマー粒子(C)の分散安定性が低下する恐れがある。
なお、本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA−910)にて測定される50%体積平均粒子径を意味する。
【0052】
得られたグラフト共重合体ラテックスを、硫酸、塩酸、りん酸等の酸や、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の塩等の凝析剤を用いて凝析した後、熱処理等を経て固化し、さらに脱水、洗浄、乾燥等を実施することで、粉末状のエラストマー粒子(C)が得られる。
【0053】
グラフト重合に使用するビニル系単量体としては特に制限はないが、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン置換スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル系単量体、ヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
グラフト重合に際しては、アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム状重合体の説明で挙げたのと同様の架橋剤及び/又はグラフト交叉剤(段落[0039])や、連鎖移動剤を用いることができる。その他、酸化防止剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0054】
グラフト重合は、エラストマー粒子(C)の樹脂組成物中への分散性や、得られる立体造形物の耐衝撃性等を考慮し、1段又は2段以上の多段で実施する。
【0055】
グラフトさせるビニル系単量体の使用量は特に制限はないが、エラストマー粒子(C)100質量部中に占めるビニル系単量体の重合物の割合が5質量部未満となると、得られるエラストマー粒子(C)の樹脂組成物中での分散性が低下し、得られる樹脂組成物の加工性が低下する恐れがあり、50質量部を超えると、得られる立体造形物の機械的特性が低下する恐れがある。したがって、エラストマー粒子(C)100質量部に対して、5〜50質量部とすることが好ましい。
【0056】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(C)成分の配合量は特に制限はないが、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、1〜15質量部、特に3〜10質量部が好ましい。
(C)成分量が1質量部未満では、得られる立体造形物の後加工性が低下し、タップを施すことが困難となる恐れがある。(C)成分量が15質量部超では、樹脂組成物の粘度が高くなり、光学的立体造形の作業性が低下する恐れがある。
【0057】
「(D)成分」
ラジカル重合開始剤(D)は、(A)成分と(B)成分の硬化を促進し、光学的立体造形法にて工業的なスピードで立体造形物を製造するための成分である。
【0058】
ラジカル重合開始剤(D)としては特に制限はないが、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン;
2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;
メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(D)成分の配合量は特に制限はないが、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜15質量部、特に0.1〜10質量部が好ましい。
(D)成分量が0.01質量部未満では、樹脂組成物の硬化性が低下し、立体造形物を製造する際の生産性が低下する恐れがある。(D)成分量が15質量部超では、立体造形物を製造する際の照射光エネルギーが小さい場合、得られる立体造形物に臭気が残る恐れがある。
【0060】
「任意成分」
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、必要に応じて、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することができる。
【0061】
その他、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、連鎖移動剤等の各種添加剤を、用途等に応じて適宜添加することができる。
中でも、紫外線吸収剤は、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化深度を制御するのに有効な成分である。紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、光学的立体造形用樹脂組成物100質量部に対して、0.005〜1質量部、特に0.01〜0.8質量部が好ましい。
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、得られる立体造形物の性能を損なわない範囲で、必要に応じて有機溶剤や水を添加することもできる。
【0062】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は以上のように構成され、硬化成分として、特定のウレタン(メタ)アクリレート(A)と、その他のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)とを併用し、さらに硬化反応に寄与しないコア/シェル構造のエラストマー粒子(C)を配合することを特徴としている。
本発明ではかかる構成を採用することで、速硬化性を有し、得られる立体造形物の機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)及び耐候性が良好で、立体造形物に対して容易にタップを施すことができるなど、立体造形物の後加工性も良好な光学的立体造形用樹脂組成物を実現した。
【0063】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、未硬化時には低粘度であるので、光学的立体造形に供した場合、薄膜を良好に形成することができる。また、光エネルギー照射により迅速に硬化すると共に、硬化時の体積収縮率が小さいという性質も有する。したがって、本発明の組成物を用いることで、所望の形状や寸法を有する立体造形物を精度良く、安定して、かつ効率良く製造することができる。
【0064】
[立体造形物]
本発明の立体造形物は、上記の本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて製造されるものである。立体造形物の構造、形状、大きさ等は、用途に応じて適宜設計することができる。
本発明の立体造形物は、光学的立体造形用樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の立体造形物を製造する光学的立体造形法にて、好ましく製造できる。なお、光学的立体造形法により得られる立体造形物をそのまま製品としても良いし、さらに、光照射や加熱によるポストキュアなどを行い、その機械的特性や形状安定性などを向上させたものを製品としても良い。
【0065】
薄膜を硬化させるために照射する光線としては、Arレーザー、He−Cdレーザー、He−Neレーザー、ArFエキシマレーザー、COレーザー、Nd:YAGレーザー、半導体レーザー、Dyeレーザー等から出射されるレーザー光線や、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯等から出射される紫外線等の活性エネルギー光線が好適である。これらの中でも特にレーザー光線が好適である。レーザー光線によれば、照射エネルギーを高くすることができ、硬化時間を短縮化できることに加えて、ビーム形状を小さくすることができるので、1回の光照射面積を小さくすることができ、造形精度の高い立体造形物を得ることができる。
【0066】
本発明の立体造形物は、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて製造されるものであるので、所望の形状や寸法を有し、機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性、後加工性が良好なものである。
【実施例】
【0067】
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例によって何ら限定されない。なお、下記例中、配合量を示す「部」及び濃度を示す「%」は、質量基準とする。
【0068】
(合成例1〜3)
合成例1〜3ではウレタンアクリレートを合成した。いずれの例においても、残存イソシアネート当量が1%未満となった時点を反応の終点とした。
【0069】
(合成例1) ウレタンアクリレート(A−1)
(1)攪拌機、温度調節器、温度計、及び凝縮器を備えた内容積5Lの三つ口フラスコに、(a3)成分としてイソホロンジイソシアネート1835g(8.3モル当量)、及びジブチル錫ジラウレート0.7gを仕込み、ウォーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2)別途、(a1)成分として4−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルブタナミド193g(1.1モル当量)と、(a2)成分としてポリブチレングリコール(繰り返し単位数:12、平均分子量:865)1200g(1.4モル当量)とを均一に混合溶解させた液を、側管付きの滴下ロートに仕込み、これを上記(1)のフラスコ中の内容物に対して滴下した。この際、上記(1)のフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保持し、4時間かけて等速滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して反応させた。
(3)別途、(a4)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート1335g(11.5モル当量)とハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gとを均一に混合溶解させた液を、別の滴下ロートに仕込んだ。この内容物を、(2)のフラスコ内容物を75℃まで降温させた後、フラスコ内温を55〜65℃に保持しながら2時間かけて等速滴下し、さらにフラスコ内容物の温度を75〜85℃に保持し、4時間反応させることで、無色透明のウレタンアクリレート(A−1)を得た。
【0070】
(合成例2) ウレタンアクリレート(A−2)
(1)イソホロンジイソシアネートの代わりに、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート1850g(7.0モル当量)を用いた以外は、合成例1(1)と同様の操作を行った。
(2)4−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルブタナミドの量を245g(1.4モル当量)とし、ポリブチレングリコールの量を1530g(1.8モル当量)とした以外は合成例1(2)と同様の操作を行った。
(3)2−ヒドロキシエチルアクリレートの量を885g(7.6モル当量)とし、滴下終了後のフラスコ内容物の温度を70〜80℃に保持した以外は、合成例1(3)と同様の操作を行い、無色透明のウレタンアクリレート(A−2)を得た。
【0071】
(合成例3) ウレタンアクリレート(E−1)
(1)イソホロンジイソシアネートの代わりに、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート1190g(4.5モル当量)を用い、ジブチル錫ジラウレートの量を0.45gとした以外は、合成例1(1)と同様の操作を行った。
(2)4−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルブタナミドを用いず、ポリブチレングリコールの量を1767g(2.0モル当量)とした以外は、合成例1(2)と同様の操作を行った。
(3)2−ヒドロキシエチルアクリレートの量を570g(4.9モル当量)とし、ハイドロキノンモノメチルエーテルの量を1.7gとした以外は、合成例2(3)と同様の操作を行い、無色透明のアミド基を有しない比較用のウレタンアクリレート(E−1)を得た。
【0072】
(合成例4〜8)
合成例4〜8では、エラストマー粒子を合成した。
なお、グラフト共重合体のラテックス、及び最終的に得られた粉末状のエラストマー粒子の平均粒子径、エラストマー粒子のガラス転移点(Tg)は、下記方法にて測定した。
<平均粒子径>
ラテックスを蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA−910)にて、50%体積平均粒子径を測定した。粉末状のエラストマー粒子についても同様に測定した。
<ガラス転移点>
粉末状のエラストマー粒子を、3mm厚み×10mm幅×12mm長さの試片に成形し、これに対して、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製「DMA983」)にて、昇温速度2℃/minの条件でTanδ曲線を測定し、そのピークからガラス転移温度を求めた。
【0073】
(合成例4) エラストマー粒子(C−1)
(1)2−エチルヘキシルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート量に対して0.2%に相当する量のアリルメタクリレート、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムを固形分として0.2部、水40部を、ホモミキサーで12000rpm、5分間予備分散し、さらにホモジナイザーを用いて圧力20MPaで強制乳化し、プレエマルジョンを得た。
(2)コンデンサー及び撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、上記プレエマルジョンと水120部を仕込み、次いで、プレエマルジョン中の2−エチルヘキシルアクリレート量に対して0.5%に相当する量のターシャリブチルハイドロパーオキサイドを仕込み、窒素気流200ml/minでフラスコ内を50分間置換した。その後、50℃まで昇温し、硫酸第1鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部、ロンガリット0.02部、及び蒸留水5部の混合液を投入し、100分間保持して、1段目の重合反応を完了した。
(3)次いで、系内を60℃に調温し、先ほど調製したものと同じ配合のプレエマルジョンを系内に一括投入し、さらにアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸を固形分として0.1部、及び今回投入したプレエマルジョン中の2−エチルヘキシルアクリレート量に対して0.5%に相当する量のターシャリブチルパーオキサイドを添加混合し、攪拌しながら系内を60℃に調温した。次いで、ロンガリット0.02部及び蒸留水5部の混合液を投入し、100分間保持して、2段目の重合反応を完了し、ゴム状重合体を得た。
(4)さらに系内の温度を55℃に調温し、n−ブチルアクリレート65部、n−ブチルアクリレート量に対して0.5%に相当する量のアリルメタクリレート、及びn−ブチルアクリレート量に対して0.5%に相当する量のイソプロピルベンゼンパーオキサイドの混合液を系内に一括して仕込み、5分間保持した。次いで、ロンガリット0.1部及び蒸留水10部の混合液を投入して、3段目の重合反応を開始した。その後、65℃で100分間保持し、3段目の重合反応を完了し、アクリル系ゴム状重合体ラテックス(R−1)を得た。
(5)得られたラテックス(R−1)の温度を65℃に保持したまま、メチルメタクリレート14.5部及びブチルアクリレート0.5部、並びに、これら2つの単量体の合計量に対して0.5%に相当する量のイソプロピルベンゼンパーオキサイドの混合物を、25分間かけて系中に滴下した。その後150分間保持してグラフト重合を完了し、アクリルゴム系グラフト共重合体ラテックス(G−1)を得た。ラテックスの平均粒子径は250nmであった。
(6)得られたラテックス(G−1)を、塩化カルシウムを1.5%含む熱水200部中に滴下して凝固し、これを分離、洗浄した後、75℃で16時間乾燥し、粉末状のコア/シェル構造のエラストマー粒子(アクリルゴム系グラフト共重合体)(C−1)を得た。エラストマー粒子(C−1)の平均粒子径は220μm、ガラス転移点はゴム部(コア部)が−58℃及び−29℃、グラフト部(シェル部)が81℃であった。
【0074】
(合成例5) エラストマー粒子(C−2)
(1)5Lフラスコに、純水88部、ブチルアクリレート5部、アリルメタクリレート0.125部、ジ2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.01部を仕込み、窒素雰囲気中、250rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。次に、予め調製した過硫酸カリウム0.10部、純水5.2部の混合液を一括投入し、60分間保持し、1段目の乳化重合を行った。
(2)次に、ブチルアクリレート65部、アリルメタクリレート1.625部、ジ2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.6部、純水34.0部の混合液を、180分かけて滴下し、その後1時間保持し、2段目の乳化重合を行い、アクリル系ゴム状重合体ラテックス(R−2)を得た。
(3)得られたラテックス(R−2)に、メチルメタクリレート29.4部、エチルアクリレート0.6部、ジ2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を、100分かけて滴下し、その後1時間保持して乳化重合を完了し、アクリルゴム系グラフト共重合体ラテックス(G−2)を得た。ラテックスの平均粒子径は250nmであった。
(4)得られたラテックス(G−2)に対して、合成例4(6)と同様の操作を行い、粉末状のコア/シェル構造のエラストマー粒子(アクリルゴム系グラフト共重合体)(C−2)を得た。エラストマー粒子(C−2)の平均粒子径は200μm、ガラス転移点はゴム部(コア部)が−23℃、グラフト部(シェル部)が83℃であった。
【0075】
(合成例6) エラストマー粒子(C−3)
(1)テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン97.5部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸をそれぞれ0.67部溶解した蒸留水200部に、上記シロキサン混合物100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備撹拌した後、ホモジナイザーにより20MPaの圧力で乳化分散させ、オルガノシロキサンラテックスを得た。
この混合液を、コンデンサー及び撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに移し、混合撹拌しながら80℃で5時間加熱した後、20℃で静置し、8時間後に、水酸化ナトリウム水溶液にてこのラテックスのpHを7.4に中和して重合を完結させ、ポリオルガノシロキサンラテックスを得た。ポリオルガノシロキサンの平均粒子径は200nmであった。
(2)得られたラテックスを固形分換算で10部採取し、撹拌機を備えたセパラブルフラスコに入れ、ラウリル硫酸ナトリウム0.4部(固形分換算)及び蒸留水120部を加え、窒素置換後50℃に昇温し、n−ブチルアクリレート77.4部、アリルメタクリレート1.6部、及びtert−ブチルヒドロペルオキシド0.2部の混合液を仕込み、30分間撹拌し、この混合液をポリオルガノシロキサン粒子に浸透させた。
次いで、硫酸第1鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.18部、及び蒸留水5部の混合液を仕込み、ラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で90分間保持して重合を完了させ、シリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体ラテックス(R−3)を得た。
(3)このラテックス(R−3)に、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.08部とメチルメタクリレート11部の混合液を、65℃で30分間に渡り滴下し、その後65℃で2時間保持し、複合ゴム状重合体へのグラフト重合を完了させ、グラフト共重合体ラテックス(G−3)を得た。ラテックスの平均粒子径は250nmであった。
(4)得られたラテックス(G−3)に対して、合成例4(6)と同様の操作を行い、粉末状のコア/シェル構造のエラストマー粒子(シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体)(C−3)を得た。エラストマー粒子(C−3)の平均粒子径は220μm、ガラス転移点はゴム部(コア部)が−114℃及び−25℃、グラフト部(シェル部)が78℃であった。
【0076】
(合成例7) エラストマー粒子(F−1)
(1)第一単量体として下記各成分を70Lオートクレーブに仕込み、昇温し、43℃になった時点で、下記レドックス系開始剤を添加して反応を開始し、その後さらに60℃まで昇温した。
第一単量体:
1,3−ブタジエン 23.6部
スチレン 1.25部
ジビニルベンゼン 0.2部
p−メンタンハイドロパーオキサイド 0.1部
ピロリン酸ナトリウム 0.5部
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1部
脱イオン水 70部
レドックス系開始剤:
硫酸第一鉄 0.003部
デキストローズ 0.3部
脱イオン水 5部
重合開始から3時間後に下記開始剤を添加し、その直後から下記第二単量体、脱イオン水、乳化剤を12時間で連続滴下した。
開始剤:
p−メンタンハイドロパーオキサイド 0.2部
第二単量体:
1,3−ブタジエン 70.8部
スチレン 3.75部
ジビニルベンゼン 0.6部
乳化剤、脱イオン水:
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2部
脱イオン水 75部
重合開始から27時間反応させて、ブタジエン系ゴム状重合体ラテックス(R−4)を得た。ラテックスの平均粒子径は225nmであった。
(2)このラテックス(R−4)を固形分として75部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を、窒素置換したフラスコ内に仕込み、内温を70℃に保持した。次いで、メチルメタクリレート6.25部、エチルアクリレート1.25部、及び両単量体の合計量に対して0.3%に相当する量のクメンハイドロキシパーオキサイドの混合物を1時間かけて滴下し、その後1時間保持した(1段目のグラフト重合)。
(3)次いで、スチレン12.5部、及びこのスチレンの量に対して0.3%に相当する量のクメンハイドロキシパーオキサイドの混合物を、1時間かけて滴下し、その後3時間保持した(2段目のグラフト重合)。
(4)さらに、メチルメタクリレート5部、及びこのメチルメタクリレートの量に対して0.3%に相当する量のクメンハイドロキシパーオキサイドの混合物を、0.5時間かけて滴下し、その後1時間保持した(3段目のグラフト重合)。
以上の重合の完了により、グラフト共重合体ラテックス(G−4)を得た。ラテックスの平均粒子径は245nmであった。
(5)得られたラテックス(G−4)を、ラテックス固形分に対して2.5部の酢酸カルシウムを使用して凝固し、脱水乾燥することにより、粉末状のコア/シェル構造のエラストマー粒子(F−1)(比較用)を得た。エラストマー粒子(F−1)の平均粒子径は200μm、ガラス転移点はゴム部が−64℃、グラフト部が78℃であった。
【0077】
(合成例8) エラストマー粒子(F−2)
(1)オクタメチルシクロテトラシロキサン10部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン10部、n−ブチルアクリレート77.4部、アリルメタクリレート1.6部、及びtert−ブチルヒドロペルオキシド0.2部の混合液を、撹拌機を備えたセパラブルフラスコに仕込み、ラウリル硫酸ナトリウム0.4部(固形分換算)及び蒸留水120部を加え、窒素置換後50℃に昇温した。
その後、硫酸第1鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.18部、及び蒸留水5部の混合液を仕込み、ラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で90分間保持して重合を完了させ、シリコーン/アクリル系共重合ゴムラテックス(R−5)を得た。
(2)このラテックス(R−5)に、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.08部とメチルメタクリレート11部との混合液を、65℃で30分間に渡り滴下し、その後65℃で2時間保持し、共重合ゴムへのグラフト重合を完了させ、グラフト共重合体ラテックス(G−5)を得た。ラテックスの平均粒子径は250nmであった。
(3)得られたラテックス(G−5)に対して、合成例4(6)と同様の操作を行い、粉末状の非コア/シェル構造のエラストマー粒子(シリコーン/アクリル共重合ゴム系グラフト共重合体)(F−2)(比較用)を得た。エラストマー粒子(F−2)の平均粒子径は230μm、ガラス転移点はゴム部が−42℃、グラフト部が78℃であった。
【0078】
(実施例1〜10、比較例1〜7)
表1又は表2に示す割合(単位は「部」)で各成分を混合し、光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を用い、超高速光造形システム(帝人製機株式会社製「SOLIFORM250」)にて、固体レーザー光(出力100mW、波長365nm)を表面に垂直照射し、スライスピッチ(積層厚み)を0.2mm、1層あたりの平均造形時間を2分として、光学的立体造形法により、JIS7113に準ずるダンベル試験片状に造形した。さらに、これをイソプロピルアルコールで洗浄し、付着している未硬化物を除去した後、3kWの紫外線を10分照射してポストキュアを実施し、立体造形物を得た。
【0079】
表中、各略号は以下の化合物を示す。
ACMO:アクリルモルホリン((株)興人製)
HX−220:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン2モル付加物のジアクリル酸エステル(日本化薬(株)製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
OXT−121:1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成(株)製)
セロキサイド2021:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’−4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製)
Irg−184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
UVA:紫外線吸収剤(「TINUVIN 320」、チバ・スペシャル社製)
UVI6990:トリアリルスルホニウムヘキサフルオロフォスホネート塩(ユニオンカーバード社製)
エスカロン#2000:炭酸カルシウム(三共製粉社製)
【0080】
(評価項目及び評価方法)
各例において得られた光学的立体造形用樹脂組成物、及び立体造形物について、以下の評価を行った。
<エラストマー粒子の分散安定性>
光学的立体造形用樹脂組成物をガラス容器内に入れ、室温にて静置した。10日後のエラストマー粒子の分散安定性を目視観察し、下記基準にて評価した。
○:エラストマー粒子が安定分散している。
×:エラストマー粒子が分離若しくは沈降している。
【0081】
<E型粘度>
光学的立体造形用樹脂組成物のE型粘度(25℃)を測定し、下記基準にて評価した。
○:E型粘度(25℃)が300〜2000mPa・sである。
×:E型粘度(25℃)が2000mPa・s超である。
【0082】
<速硬化性>
3kWの紫外線を10分照射してポストキュアを行なった後の立体造形物の硬度(強度)から、光学的立体造形用樹脂組成物の速硬化性を下記基準にて官能評価した。
○:立体造形物は充分に硬化されて、良好な硬度(強度)を有しており、光学的立体造形用樹脂組成物は速硬化性を有する。
×:立体造形物は硬化が不充分なため、硬度(強度)が不充分であり、光学的立体造形用樹脂組成物は速硬化性を有しない。
【0083】
<立体造形物の外観>
立体造形物の外観を目視観察し、下記基準にて評価した。
○:立体造形物の表面平滑性が優れ、寸法精度に優れる。
×:立体造形物の表面平滑性が悪く、寸法精度が良好でない。
【0084】
<立体造形物の機械的特性>
立体造形物の引張特性をJIS K 7113に準拠して測定し、下記基準にて評価した。なお、いずれの評価項目も、充分な機械的特性を有すると考えられる範囲を○とした。
最大点応力(引張強度) ○:40MPa以上、×:それ未満
破断点伸度(引張伸度) ○:10%以上、×:それ未満
ヤング率(弾性率) ○:1500MPa以上、×:それ未満
【0085】
<立体造形物の耐候性>
サンシャインウェーザーメーター(スガ試験機株式会社 WEL−SUN−DCH型)を用い、63℃、降雨ありの条件で、立体造形物の耐候性試験を実施した。所定時間経過後の色変化を目視観察し、1〜5の点数で評価した(5が最良)。
【0086】
<立体造形物の後加工性>
容易にタップを施すことができるかどうかの指標の一つとして、ニッパ(JIS B 4625)を用い、立体造形物に対して5mmの深さまで刃を入れ、切れ目を設けた。この時の破断状態から下記基準にて評価した。
○:ニッパの刃を入れた部分だけが切れる。
×:ニッパの刃を入れた部分だけでなく、他の部分もひび割れる。
【0087】
(結果)
結果を表1、2に合わせて示す。
実施例1〜10では、いずれもエラストマー粒子の分散安定性が良好で、未硬化時には低粘度であり、光エネルギー照射により迅速に硬化する光学的立体造形用樹脂組成物が得られた。また、得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いることで、良好に光学的立体造形を実施することができ、外観や、機械的特性(引張強伸度や引張弾性率)、耐候性が良好で、後加工として容易にタップを施すことが可能な立体造形物が得られた。
【0088】
これに対して、エラストマー粒子(C)を配合しなかった比較例1、2、6では、透明性に優れた光学的立体造形用樹脂組成物が得られ、これを用いた立体造形物は、表面の平滑性に優れていたものの、立体造形物の後加工性が不良であった。炭酸カルシウムを添加した比較例6では、得られた立体造形物の後加工性が悪いことに加えて、立体造形物の伸度も低く、機械的特性に優れた立体造形物を得ることができなかった。
エラストマー粒子(C)の代わりに、ブタジエン系ゴムのグラフト共重合体であるコアシェル構造のエラストマー粒子(F−1)を用いた比較例3では、立体造形物の耐候性が不良であった。
エラストマー粒子(C)の代わりに、シリコーン/アクリル系共重合ゴムのグラフト共重合体である非コアシェル構造のエラストマー粒子(F−2)を用いた比較例4では、立体造形物の機械的特性、後加工性が不良であった。
【0089】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の代わりに、アミド基を含有しないウレタン(メタ)アクリレート(E−1)を用いた比較例5では、機械的特性が不良であった。
ウレタン(メタ)アクリレート(A)及びラジカル重合開始剤(D)を配合しなかった比較例7では、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化性が著しく不良であり、得られた立体造形物は、機械的特性の評価を実施できない程、硬度(強度)が著しく低いものであった。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、実部品として機械製品等に組み込み、性能をチェックするためのモデル、樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型等の用途に利用することができる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデル等の用途に利用することができる。本発明は特に、繰り返し疲労試験用部品の試作、例えば家電製品の嵌合部分の設計、複雑な構造の機械的強度解析企用部品の製造等に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1個以上のアミド基と2個以上のヒドロキシ基とを有するアミドヒドロキシ化合物(a1)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれるジオール(a2)と、有機ジイソシアネート化合物(a3)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(a4)とを反応して得られ、
分子内に、2個以上のラジカル重合性(メタ)アクリロイル基と、1個以上のアミド基と、2個以上のウレタン基とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
(A)成分以外のラジカル重合性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(B)と、
コア成分が、アクリル系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体、及びシリコーン/アクリル系複合ゴム状重合体から選ばれる1種以上であるコア/シェル構造のエラストマー粒子(C)と、
ラジカル重合開始剤(D)とを含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的立体造形用樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする立体造形物。

【公開番号】特開2006−2110(P2006−2110A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182344(P2004−182344)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】