説明

光学積層フィルム、及び長尺光学積層フィルムの製造方法、及び液晶表示装置

【課題】 本発明は、液晶表示装置に使用した場合に、そのコントラスト比を高くすることができる光学積層フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 光学積層フィルム11は、偏光子2と、該偏光子の一方の面に積層された位相差フィルム3と、を備え、偏光2子は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムを有しており、この偏光子2の波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が、0.01〜0.03であり、位相差フィルム3は、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足するフィルムであり、位相差フィルム3の遅相軸方向が、前記偏光子2の吸収軸方向と実質的に直交するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに使用される光学積層フィルム、及びその製造方法、並びに光学積層フィルムを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力等の特徴を活かして、携帯電話、モニタ、テレビ等の様々な用途に利用されている。近年、例えばテレビ用途の液晶表示装置は、画面サイズの大型化が急速に進んでおり、例えば対角サイズ65インチのものが実用化されている。このような市場動向の下、該液晶表示装置に利用される光学フィルムの大型化が急務となっている。
【0003】
液晶表示装置に利用される光学フィルムの1つとして、偏光子と、熱可塑性ポリマーの延伸フィルムで構成された光学補償フィルムと、を積層した光学積層フィルムが知られている(特許文献1)。この偏光子は、通常、ロール状のポリビニルアルコールフィルムを、二色性物質で染色し、長手方向に一軸延伸して作製される。かかる偏光子は、一般に、延伸倍率の高いフィルムほど光学特性が優れていると考えられており、このような偏光子が、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2002−148437号公報
【特許文献2】特開2004−341515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、偏光性能の高い偏光子を得るために、延伸倍率を高くすると、ネッキングによって偏光子の有効幅が狭くなる。そのため、上記大型の液晶表示装置用に適した偏光子を得ることが困難である。
【0005】
また、液晶表示装置は、斜め方向のコントラスト比が低いため、これを改善するために、上記光学補償フィルムが用いられているが、更に、液晶表示装置のコントラスト比をより高くすることができる光学積層フィルムが求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液晶表示装置に使用した場合に、そのコントラスト比を高くすることができる光学積層フィルムを提供することである。さらに、本発明の他の目的は、大型の液晶表示装置にも対応することができる光学積層フィルムを提供することである。また、本発明の他の目的は、該光学積層フィルムの製造方法及び該光学積層フィルムを備える液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学積層フィルムは、偏光子と、該偏光子の一方の面に積層された位相差フィルムと、を備え、偏光子は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムを有しており、この偏光子の波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が、0.01〜0.03であり、位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足するフィルムであり、位相差フィルムの遅相軸方向が、前記偏光子の吸収軸方向と実質的に直交するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記光学積層フィルムは、例えば、次の工程1〜工程3を含む製造方法によって得られた長尺光学積層フィルムを適宜打ち抜くことによって形成される。
工程1:二色性物質を含有する親水性ポリマーの長尺フィルム(A)を延伸し、波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.01〜0.03となる長尺偏光子を作製する工程。
工程2:長尺フィルム(B)を、少なくとも幅方向に延伸して、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足する長尺位相差フィルムを作製する工程。
工程3:工程1で得られた長尺偏光子の一方の面に、工程2で得られた長尺位相差フィルムを積層して、長尺光学積層フィルムを作製する工程。
【0009】
本発明の光学積層フィルムは、面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.01〜0.03の偏光子を有する。かかる光学積層フィルムを液晶表示装置の構成部材として使用した場合、該液晶表示装置の斜め方向の光漏れを低減でき、斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置を提供できる。
【0010】
上記Δnxy[1000]が0.01〜0.03の偏光子は、例えば、上記工程1に示したように、二色性物質を含有する親水性ポリマーの長尺フィルムを延伸することにより、得ることができる。この延伸フィルムのΔnxy[1000]が0.01〜0.03となるようにする方法としては、上記二色性物質の含有量を適宜調整する、上記延伸を低倍率で行う、などの方法が挙げられる。
このうち延伸倍率を低くする方法を採用すれば、延伸フィルムの幅方向の収縮量が小さくなるので、広幅の偏光子を得ることができる。
【0011】
一方、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足する位相差フィルムは、例えば、上記工程2に示したように、長尺フィルムを少なくとも幅方向に延伸することにより作製できる。このため、該位相差フィルムは、広幅となる。よって、上記広幅の偏光子と広幅の位相差フィルムを積層することにより得られる光学積層フィルムは、従来の積層フィルムに比して、大面積に形成することが可能となる。かかる光学積層フィルムは、大型液晶表示装置、例えば、画面サイズが対角70インチ以上の液晶表示装置に対応することができる。
【0012】
1つの好ましい態様において、本発明の光学積層フィルムは、上記偏光子の単体透過率が42%以下であり、且つ、その偏光度が98%以上である。
他の好ましい態様において、本発明の光学積層フィルムは、上記位相差フィルムが、ノルボルネン系ポリマー、又はセルロース系ポリマーを含む延伸フィルムである。
【0013】
他の好ましい態様において、本発明の光学積層フィルムは、上記位相差フィルムのNz係数が1.0〜1.5である。
他の好ましい態様において、本発明の光学積層フィルムは、上記偏光子と位相差フィルムが、接着層を介して積層されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学積層フィルムは、例えば、液晶表示装置に使用した場合、コントラスト比の高い液晶表示装置を構成することができる。また、本発明の光学積層フィルムは、大面積に形成することもできるので、大型の液晶表示装置にも対応することができる。
さらに、本発明の長尺光学積層フィルムによれば、偏光子及び位相差フィルムの積層された幅広の光学積層フィルムを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<用語の意味>
偏光子とは、自然光または偏光から主として直線偏光を透過させる機能を有するフィルムであり、面内において吸収軸方向と直交する方向に透過軸を有するフィルムである。
位相差フィルムとは、その面内及び/又は厚み方向に複屈折(屈折率の異方性)を有するフィルムを言い、例えば、波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上であるものを含む。
「nx」、「ny」とは、フィルムの面内に於いて互いに直交する方向の屈折率をそれぞれ示し(但し、nx≧ny)、「nz」とは、フィルムの厚み方向の屈折率を示す。
「面内の複屈折率(Δnxy[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内の屈折率差をいう。Δnxy[λ]=nx−nyによって求めることができる。
「面内の位相差値(Re[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求めることができる。
「厚み方向の位相差値(Rth[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求めることができる。
「Nz係数」とは、Rth[λ]/Re[λ]から算出される値であり、本発明では、は590nmを基準とする、Rth[590]/Re[590]から算出される値である。Rth[590]及びRe[590]は、上記のとおりである。
「長尺」とは、長さ寸法が、幅寸法よりも十分に大きいことを意味する。その長さ寸法は、通常、幅寸法の2倍以上であり、好ましくは3倍以上である。
「フィルム」とは、一般にシートと呼ばれているものを含む意味である。
【0016】
<光学積層フィルムの概要>
本発明の光学積層フィルムは、偏光子と、該偏光子の一方の面に積層された位相差フィルムと、を備えている。
この偏光子は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムで構成されている。この偏光子は、波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.01〜0.03のものが用いられる。
一方、位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足するフィルムである。この位相差フィルムの遅相軸方向が偏光子の吸収軸方向と実質的に直交するように配置されて、上記位相差フィルムが偏光子の少なくとも一方の面に積層接着されている。
【0017】
1つの実施形態において、図1(a)に示すように、本発明の光学積層フィルム11は、偏光子2の一方の面に位相差フィルム3が積層され、偏光子2の他方の面に透明な保護フィルム4が積層されている。
他の実施形態において、図1(b)に示すように、本発明の光学積層フィルム12は、偏光子2の両面に透明な保護フィルム4,4が積層され、一方の保護フィルム4の一方の面に位相差フィルム3が積層されている。
これら各フィルムの層間は、必要に応じて、接着層を介して接着される(接着層は、図示せず)。また、本発明の光学積層フィルムは、必要に応じて、本発明の位相差フィルム以外の、他の位相差フィルムが積層されていてもよい。さらに、本発明の光学積層フィルムの表面に、防眩層などの任意の層が設けられていてもよい。
本発明の光学積層フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは50μm〜300μmである。
本発明の光学積層フィルムは、1つの使用例として、液晶表示装置に組み込まれる。この場合、本発明の位相差フィルムが積層された側を液晶セルに対面させ(つまり、偏光子と液晶セルの層間に、位相差フィルムが介在するようにして)、光学積層フィルムが液晶セルに貼り合わされる。
【0018】
(偏光子)
本発明の偏光子は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムで構成されている。
上記二色性物質としては、ヨウ素や、ニ色性染料等が挙げられる。該二色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジSおよびファーストブラック等が挙げられる。これらの二色性物質は、1種類でも良いし、2種類以上を併用しても良い。また、二色性物質は、水溶性のものが好ましい。このため、例えば、スルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基を導入した有機染料等を、遊離酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩の状態で用いることが好ましい。
中でも、二色性物質としては、ヨウ素を用いることが好ましい。ヨウ素を用いることで、可視光のほぼ全域に於いて、二色性吸収能を示す偏光子を簡易に得ることができる。
【0019】
上記親水性ポリマーのフィルムとしては、特に限定されず、一般には親水基を有するポリマーを含む樹脂組成物を製膜したフィルムが用いられる。該フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」という)、部分ホルマール化したPVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルム、及びこれらの部分ケン化フィルム等があげられる。また、これらの他にも、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、二色性物質による染色性に優れていることから、PVA系フィルムが好ましい。PVAは、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリマーである。PVA系ポリマーとして、PVAの酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有した変性PVAを用いることもできる。該共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸、これらの誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。また、PVA系ポリマーとして、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基などを含む変性PVA、ポリビニルフルマール、ポリビニルアセタール、エチレン共重合体などを含む変性PVAなども用いることができる。
【0020】
PVA系ポリマーを用いる場合、該ポリマーは、例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。このケン化度や重合度は、耐熱性などが良好であるという点から、高ケン化度で高重合度のPVAを用いることが好ましい。PVAのケン化度は、特に限定されないが、通常、90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98%以上のケン化度のものが用いられる。該ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。PVAの平均重合度についても特に限定されないが、高偏光性能の偏光子を作製できることから、該平均重合度は、通常、500以上であり、好ましくは2,400以上である。平均重合度の上限は、通常、8,000以下、好ましくは5,000以下である。該平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0021】
PVA系フィルムは、PVA系ポリマーを含む樹脂組成物を、水又は/及びDMSOなどの適当な有機溶媒に溶解し、該樹脂溶液をキャスト法等によって適当な基材上に塗工することによって得ることができる。また、PVA系フィルムは、キャスト法の他、押出法などの公知の製膜法で成膜したものを用いてもよい。
上記PVA系ポリマーを含む樹脂組成物には、可塑剤、界面活性剤などの適当な添加剤を配合してもよい。可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これら可塑剤や界面活性剤を添加することにより、染色性及び延伸性に優れたPVA系フィルムを得ることができる。可塑剤及び界面活性剤の添加量は、PVA系ポリマー100質量部に対し、それぞれ1質量部〜10質量部程度である。
【0022】
本発明の偏光子は、上記二色性物質を含有する親水性ポリマーフィルム(好ましくはPVA系フィルム)を延伸することによって得られた延伸フィルムで構成される。かかる二色性物質を含有する延伸フィルムは、例えば、上記親水性ポリマーフィルムを、膨潤し、染色し、延伸するなどの各処理工程を経て得ることができる。
なお、本発明の偏光子の製造方法は、下記の<長尺光学積層フィルムの製造方法>の欄において詳述する。
【0023】
本発明の偏光子は、波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が、0.01〜0.03の範囲内に形成されている。なお、波長1000nmを基準としたのは、偏光子は、通常、可視光領域に吸収を示すため、可視光領域の波長では面内の複屈折率を測定することが難しい場合があり、測定波長を1000nmとすれば、偏光子の面内の複屈折率が正確に特定され得るからである。
かかる偏光子は、Δnxy[1000]が0.01〜0.03の範囲内であるため、これを液晶表示装置に使用した場合、該液晶表示装置の斜め方向の光漏れを低減し、斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。本発明の偏光子が液晶表示装置のコントラスト比を改善できる作用は明確ではないが、本発明者らは、下記のように推定する。
一般に、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムから構成された偏光子は、その面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.03を超えているが、本発明の偏光子は、面内の複屈折率(Δnxy[1000])が、これよりも低く形成されている(Δn[1000]=0.01〜0.03)。このため、本発明の偏光子は、配向したポリマー間に存する二色性物質(ヨウ素が用いられている場合には、ヨウ素錯体)の一部が、ポリマーの配向方向に対して斜め方向に配向し、透過する光のうち、該偏光子の吸収軸に平行な光成分だけでなく、平行でない光成分も吸収するためと推察する。このため、本発明の偏光子は、液晶表示装置に使用した場合、斜め方向の光漏れを低減し、斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
【0024】
本発明の偏光子の面内の複屈折率(Δnxy[1000])は、好ましくは0.01〜0.025であり、より好ましくは0.01〜0.02である。かかるΔnxy[1000]の偏光子は、液晶表示装置のコントラスト比をより改善できる。
本発明の偏光子の波長1000nmにおける面内位相差値(Re[1000])は、好ましくは400nm〜1000nmであり、より好ましくは500nm〜900nmである。
本発明の偏光子の厚みは、適宜設計されるものであるが、好ましくは5μm〜50μmであり、より好ましくは10μm〜40μmである。かかる厚みの偏光子は、比較的薄型であり、更に、上記面内位相差値(Re[1000])の範囲に設定できる。
【0025】
また、本発明の偏光子の単体透過率は、好ましくは42%以下であり、より好ましくは35%〜42%である。本発明の偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上である。
【0026】
本発明の偏光子中の二色性物質(好ましくはヨウ素)の含有量は、好ましくは2.9〜5.5質量%であり、より好ましくは3.2〜5.0質量%である。かかる含有量とすれば、適切な面内の複屈折率を有する偏光子が得られ、液晶表示装置のコントラスト比を改善できる。
【0027】
(位相差フィルム)
本発明の位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足し、好ましくは、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満足するものである。該位相差フィルムは、少なくとも面内の位相差を有し、これを液晶表示装置に用いた場合、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比をより一層高くし得る。
なお、屈折率楕円体がnx>ny≧nzとは、nx>ny>nz又はnx>ny=nzという意味である。この「ny=nz」とは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。nyとnzが実質的に同一である場合とは、例えば、「Rth[590]−Re[590]」が−10nm〜10nmであり、好ましくは−5nm〜5nmである。
【0028】
本発明の位相差フィルムの波長590nmにおける面内位相差値(Re[590])は、好ましくは20nm〜200nmであり、より好ましくは30nm〜150nmである。
本発明の位相差フィルムのNz係数は、好ましくは1.0〜1.5であり、より好ましくは1.1〜1.4である。
本発明の位相差フィルムの厚みは、適宜設計されるものであるが、好ましくは20μm〜200μmである。かかる厚みの位相差フィルムは、上記面内位相差値(Re[590])の範囲に設定できる。
【0029】
本発明の位相差フィルムは、上記偏光子に積層する際、位相差フィルムの遅相軸方向(遅相軸方向とは、面内において屈折率が最大となる方向である)が、偏光子の吸収軸方向と実質的に直交するように配置される。ここで「実質的に直交」とは、位相差フィルムの遅相軸方向と、偏光子の吸収軸方向とのなす角度が、90°±2°を含む意味である。
【0030】
屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足する位相差フィルムは、例えば、未延伸のフィルムを延伸することにより得ることができる。
機械的生産過程では、通常、未延伸の長尺フィルムを延伸して長尺状の位相差フィルムを作製し、これを適宜な寸法に打ち抜く。なお、本明細書において、打ち抜くとは、切り出すという意味を含む。
この場合、未延伸の長尺フィルムを、少なくとも幅方向(TD方向)に延伸することにより、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足し、且つ遅相軸が長手方向(MD方向)と直交する方向に発現した長尺位相差フィルムを得ることができる。
【0031】
上記位相差フィルムを形成するフィルムとしては、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足するフィルムを形成できるものであれば特に限定されない。中でも、上記延伸処理によって、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足し、且つ遅相軸が長手方向(MD方向)と直交する方向に発現した長尺位相差フィルムを得ることができることから、好ましくはノルボルネン系ポリマー、又はセルロース系ポリマーを含有するフィルムが用いられる。
【0032】
上記ノルボルネン系ポリマーは、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーから得ることができる。上記ノルボルネン系ポリマーは、(共)重合体の状態において、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態において、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系ポリマーは、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系ポリマーは、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。該開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。上記ノルボルネン系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
【0033】
上記ノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(a)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加したポリマー、(b)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させたポリマーなどが挙げられる。上記(a)ノルボルネン系モノマーの開環共重合体は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類、及び/又は非共役ジエン類との開環共重合体を水素添加したポリマーを包含する。上記(b)ノルボルネン系モノマーを、付加共重合させたポリマーは、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類及び/又は非共役ジエン類とを付加型共重合させたポリマーを包含する。
【0034】
上記(a)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加したポリマーは、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、当該開環(共)重合体を水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の段落[0035]〜[0037]に記載の方法等が挙げられる。上記(b)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させたポリマーは、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
【0035】
上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000〜500,000である。ただし、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC)法で測定した値をいう。上記ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃〜180℃である。ただし、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により求めた値をいう。重量平均分子量及びガラス転移温度を上記範囲とすることによって、耐熱性、延伸性の良いフィルムを得ることができる。
【0036】
上記セルロース系ポリマーは、好ましくは、アセチル基及び/又はプロピオニル基で置換されたセルロース系ポリマーが用いられる。上記セルロース系ポリマーは、好ましくは、アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が、2.0≦(DSac+DSpr)≦3.0なる関係式を満たすものである。DSac+DSprの下限値は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.6以上である。DSac+DSprの上限値は、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。上記セルロース系フィルムのDSac+DSprをこの範囲とすることにより、表示特性に優れた液晶表示装置を構成できる。上記セルロース系ポリマーは、プロピオニル置換度(DSpr)が、1.0≦DSpr≦3.0なる関係式を満たす。DSprの下限値は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上である。DSprの上限値は、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。なお、アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)は、特開2003−315538号公報の[0016]〜[0019]に記載の方法により求めることができる。
上記セルロース系ポリマーは、アセチル基およびプロピオニル基以外のその他の置換基を有し得る。その他の置換基としては、例えば、プチレート等のエステル基;アルキルエーテル基、アルキレンエーテル基等のエーテル基;等が挙げられる。
上記セルロース系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、20,000〜500,000である。上記セルロース系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃〜170℃である。上記のポリマーであれば、優れた熱安定性を有し、延伸性に優れたフィルムが得られ得る。
【0037】
<長尺光学積層フィルムの製造方法>
本発明の光学積層フィルムは、例えば、長尺状の長尺光学積層フィルムを適宜な寸法に打ち抜くことにより得ることができる。
該長尺光学積層フィルムは、例えば、下記工程1〜工程3を経て作製することができる。なお、本発明の長尺光学積層フィルムの製造は、工程1〜工程3に加えて、他の工程が含まれていてもよい。また、工程1及び工程2の実施順序は、特に限定されず、工程1を先に行ってもよいし、工程2を先に行ってもよいし、工程1及び工程2を同時並行的に行っても良い。
【0038】
(工程1)
工程1は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの長尺フィルム(A)を延伸し、波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.01〜0.03となる長尺偏光子を作製する工程である。
工程1は、好ましくは、未延伸の長尺フィルム(A)を膨潤する膨潤処理、該長尺フィルム(A)に二色性物質を含有させる染色処理、該長尺フィルム(A)のポリマーを架橋する架橋処理、該長尺フィルム(A)を延伸する延伸処理、該長尺フィルム(A)を洗浄する洗浄処理、該長尺フィルム(A)を乾燥する乾燥処理、を含む。
【0039】
上記工程1の具体例について、図2を参照して説明する。図2は、長尺偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
図2に於いて、ロール状に巻かれた長尺フィルム20は、繰り出し部21から繰り出され、純水を含む膨潤浴31、及びヨウ素等を含む染色浴32に浸漬され、速比の異なるロール311、312、321及び322でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理及び染色処理が施される。次に、膨潤処理及び染色処理された長尺フィルム20は、ヨウ化カリウム等を含む第1の架橋浴33及び第2の架橋浴34に浸漬され、速比の異なるロール331、332、341及び342でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理及び最終的な延伸処理が施される。架橋処理された長尺フィルム20は、ロール351および352によって、純水を含む水洗浴35中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルム20は、乾燥手段36で乾燥されることにより、水分率が、例えば10%〜30%に調節され、巻き取り部22にて巻き取られる。
【0040】
(膨潤処理)
膨潤処理は、未延伸の長尺フィルム(A)を膨潤させる工程である。
該長尺フィルム(A)としては、親水性ポリマーを含む樹脂組成物を製膜した長尺状のフィルムが用いられる。該親水性ポリマーのフィルムとしては、上記(偏光子)の欄で述べたものを用いることができ、好ましくは、PVA系フィルムである。
以下、PVA系フィルムからなる長尺フィルム(A)を用いた製法を中心に説明するが、本発明の長尺偏光子は、PVA系フィルムを用いて製造されたものに限られず、他の親水性ポリマーフィルムにも同様に適用できる。
【0041】
上記長尺フィルム(A)は、未延伸のものが用いられ、その厚みは、好ましくは30μm〜100μmである。
長尺フィルム(A)は、ロール形状であってもよく、その巻き長さは、好ましくは300m以上であり、さらに好ましくは1,000〜50,000mである。
PVA系ポリマーを主成分とする長尺フィルム(A)は、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のPVA系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0042】
膨潤処理は、長尺フィルム(A)の表面の汚れを除去すると共に、長尺フィルム(A)を水で膨潤させ、後述する二色性物質の導入ムラを防止するための工程である。
膨潤浴には、水が満たされている。膨潤浴の溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の物質が添加されていてもよい。膨潤浴の液温は、概ね20〜50℃程度、更には30〜40℃程度に加温されていることが好ましい。膨潤浴に長尺フィルム(A)を浸漬する時間は、概ね1〜7分間程度である。膨潤浴及び後述する染色浴などの各浴に於いて使用する水は、純水を用いることが好ましい。
【0043】
(染色処理)
染色処理は、膨潤後の長尺フィルム(A)に二色性物質を含浸(吸着又は接触などとも言われる)させる工程である。
染色浴には、二色性物質を水に溶解させた染色溶液が満たされている。なお、染色溶液には、水と相溶性のある有機溶媒が少し添加されても良い。
本発明に用いられる二色性物質は、上記(偏光子)の欄で述べたものを用いることができ、好ましくは、ヨウ素である。
【0044】
上記染色工程において、Δnxy[1000]が0.01〜0.03の範囲となる長尺偏光子を得るための、染色浴の二色性物質(例えばヨウ素)の添加量は、水100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜0.15質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部〜0.05質量部である。上記長尺偏光子の単体透過率は、二色性物質の添加量を調整することにより、適宜、増加ないし減少させることが可能である。例えば、上記長尺偏光子の単体透過率は、二色性物質の添加量を増加させることにより、低くすることができる。他方、染色浴における二色性物質の添加量を減少させると、上記単体透過率を高くすることができる。
【0045】
さらに、染色浴にヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられ、ヨウ化カリウムが特に好ましい。ヨウ化物の添加量は、水100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜0.5質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜0.3質量部である。ヨウ化カリウムの添加量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の単体透過率を有し、且つ、偏光度が高い偏光子を得ることができる。
【0046】
染色浴への長尺フィルム(A)の浸漬時間は、特に限定されるものではないが、20秒〜1,800秒程度が好ましい。また、染色浴の液温は、20℃〜60℃程度が好ましく、更に、30℃〜50℃程度がより好ましい。染色浴の温度が高すぎると、フィルム(A)が溶融する虞があり、低すぎると染色性が低下するからである。なお、染色工程は、2浴以上の染色浴に分けて行っても良い。
また、この染色浴中で長尺フィルム(A)を長手方向に延伸してもよく、このときの延伸倍率は、1.5〜3.0倍程度である。
【0047】
(架橋処理)
架橋処理は、二色性物質を含浸させた長尺フィルム(A)に、ホウ酸などの架橋剤を含浸させる工程である。架橋浴は、1浴でもよいし、2浴以上でもよい。
架橋浴には、架橋剤を水に溶解した架橋溶液が満たされている。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物等が挙げられる。これらは1種類でも良いし、2種類以上を併用しても良いが、少なくともホウ酸を含むことが好ましい。
架橋浴に於ける架橋剤の添加量は、特に限定されないが、水100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜10質量部であり、より好ましくは1質量部〜7質量部である。
さらに、架橋浴にヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム等)が添加されていてもよく、ヨウ化物の添加量は、水100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜10質量部であり、さらに好ましくは1質量部〜7質量部である。ホウ素化合物やヨウ化物などの添加量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の単体透過率を有し、且つ、偏光度が高い偏光子を得ることができる。
【0048】
架橋浴の液温は、特に限定されないが、20〜70℃の範囲が好ましい。フィルム(A)の浸漬時間は、特に限定されないが、60秒〜1,200秒程度が好ましく、更に、200秒〜400秒程度がより好ましい。
また、この架橋浴で長尺フィルム(A)を延伸してもよく、このときの延伸倍率は、2〜4倍程度である。
【0049】
(延伸処理)
延伸処理は、長尺フィルム(A)を長手方向(MD方向)に一軸延伸する工程である。
延伸処理は、膨潤処理から架橋処理の間の何れかの工程に於いて、又は膨潤処理から洗浄処理から選ばれる2以上の工程に於いて行うことが好ましい。中でも、少なくとも染色処理及び架橋処理と共に延伸処理を施すことが好ましい。
また、膨潤処理から架橋処理の間に、延伸処理を主目的とする工程を別途設けてよい。あるいは、架橋処理の後、延伸処理を主目的とする工程を別途設けてもよい。
【0050】
延伸処理は、未延伸の長尺フィルム(A)(膨潤処理前の長尺フィルム(A))の元長に対して3倍〜5倍程度(なお、2以上の工程に於いて延伸処理が施される場合には、それらを合算した総延伸倍率。以下同じ)に延伸され、好ましくは4倍〜5倍であり、より好ましくは4.2倍〜4.8倍に延伸される。Δnxy[1000]が0.01〜0.03となる長尺偏光子を得るためである。かかる延伸倍率で得られる長尺フィルム(A)は、斜め方向に配向した二色性物質(ヨウ素が用いられている場合には、ヨウ素錯体)を有し、該長尺フィルム(A)を液晶パネルの偏光子として用いることにより、液晶パネルの斜め方向の光漏れを効果的に防ぐことができる。
【0051】
延伸処理に於いて、長尺フィルム(A)のネックイン比(NR)が、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、特に好ましくは35%〜50%となるように延伸される。ネックイン比を50%以下とすることにより、延伸後の長尺フィルム(A)は、比較的幅広のものが得られる。上記のように、延伸倍率を比較的低くする(3倍〜5倍)ことにより、かかるネックイン比の長尺フィルム(A)を作製できる。
なお、本明細書において、ネックイン比(NR)は、未延伸フィルムの幅をWとし、延伸後のフィルムの幅をWとしたとき、次式;NR={(W−W)/W}×100により算出される。上記ネックイン比は、延伸倍率及び/又はロール法延伸が採用される場合にはロール間距離を調整することにより、適宜、増加ないし減少させることが可能である。例えば、延伸倍率及び/又はロール間距離を小さくすると、ネックイン比は小さくなり、延伸倍率及び/又はロール間距離を大きくすると、ネックイン比は大きくなる。
【0052】
上記面内の複屈折率(Δnxy[1000])は、長尺フィルム(A)の延伸倍率及び/又は長尺フィルム中の二色性物質(好ましくはヨウ素)の含有量を変えることにより、適宜な数値に制御することができる。例えば、長尺フィルム(A)の延伸倍率を比較的低くすることにより、Δnxy[1000]が比較的小さい長尺フィルム(A)を得ることができる。一方、長尺フィルム(A)中の二色性物質の含有量を小さくする(すなわち、フィルムの単体透過率を高くする)ことにより、Δnxy[1000]が比較的大きい長尺フィルム(A)を得ることができる。他方、長尺フィルム(A)中の二色性物質の含有量を大きくすることにより、Δnxy[1000]が比較的小さい長尺フィルムを得ることができる。
【0053】
(洗浄処理)
洗浄処理は、上記各工程を経た長尺フィルム(A)に付着しているホウ素などの不要残存物を洗い流す工程である。
上記架橋された長尺フィルム(A)は、架橋浴から引き出された後、洗浄浴に導かれる。
洗浄浴は、一般的には水が用いられ、必要に応じて、適宜な添加剤を添加してもよい。
洗浄浴の液温は、10℃〜60℃程度が好ましく、更に、15℃〜40℃程度がより好ましい。また、洗浄処理の回数は特に限定されることなく複数回実施してもよい。
【0054】
(乾燥処理)
乾燥処理は、洗浄後の長尺フィルム(A)を乾燥する工程である。
上記洗浄された長尺フィルム(A)は、洗浄浴から引き出された後、乾燥手段に導かれる。
乾燥方式としては、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等、適宜な方法を用いることができる。通常は、加熱乾燥が好ましく用いられる。加熱乾燥に於いては、例えば、加熱温度が20〜80℃程度であり、乾燥時間は1〜10分間程度であることが好ましい。
【0055】
上記工程1により得られる長尺偏光子は、上記のように、二色性物質を含有する長尺フィルム(A)を延伸したものである。該長尺偏光子の厚みは、好ましくは5μm〜50μmであり、さらに好ましくは10μm〜40μmである。
【0056】
上記長尺偏光子(長尺フィルム(A))がヨウ素で染色されている場合、長尺偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは、2.9質量%〜5.5質量%であり、より好ましくは、3.2質量%〜5.0質量%である。
【0057】
さらに、上記長尺偏光子は、好ましくはカリウムを含有し得る。長尺偏光子がカリウムを含有する場合、該長尺偏光子のカリウム含有量は、好ましくは0.2質量%〜1.2質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%〜1.2質量%である。カリウム含有量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の単体透過率と偏光度を示す、偏光子を得ることができる。
【0058】
また、上記長尺偏光子は、好ましくは、ホウ素を含有し得る。長尺偏光子がホウ素を含有する場合、該長尺偏光子のホウ素含有量は、好ましくは0.5質量%〜3.0質量%であり、さらに好ましくは1.0質量%〜2.8質量%である。ホウ素含有量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の単体透過率と偏光度を示す、偏光子を得ることができる。
【0059】
なお、上記長尺偏光子は、必要に応じて、その一方の面または両面に、透明性に優れた保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロースフィルム等)を貼り合わせてもよい。
【0060】
(工程2)
工程2は、長尺フィルム(B)を、少なくとも幅方向に延伸して、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足する長尺位相差フィルムを作製する工程である。
該長尺フィルム(B)としては、好ましくは、ノルボルネン系ポリマーフィルム、またはセルロース系ポリマーフィルムが用いられる。該フィルムとしては、上記(位相差フィルム)の欄で述べたものを適宜用いることができる。長尺フィルム(B)は、通常、未延伸のものが用いられるが、若干一軸又は二軸延伸が施されているものでもよい。
長尺フィルム(B)は、ロール形状であってもよく、その巻き長さは、好ましくは300m以上であり、さらに好ましくは1,000〜50,000mである。
【0061】
上記長尺フィルム(B)を延伸する方法としては、少なくとも幅方向(TD方向)に延伸される方法であれば特に限定されず、例えば、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、又は縦横逐次二軸延伸法等が挙げられる。上記長尺フィルム(B)を延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは120℃〜200℃である。また、上記長尺フィルム(B)を延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは1を超え3倍以下である。
かかる延伸処理により、屈折率楕円体がnx>ny≧nzを満足する長尺フィルム(B)が得られ、これを長尺位相差フィルムとして用いることができる。
長尺位相差フィルムは、上記のように、長尺フィルム(B)を少なくとも幅方向に延伸することにより得られるので、長尺フィルム(B)の元幅(延伸前の幅)よりも幅方向の長さが広くなる。従って、屈折率楕円体がnx>ny≧nzを満足し、且つ幅広の長尺位相差フィルムを形成できる。
【0062】
(工程3)
工程3は、上記工程1で得られた長尺偏光子の一方の面に、上記工程2で得られた長尺位相差フィルムを積層して、長尺光学積層フィルムを作製する工程である。
上記長尺偏光子と長尺位相差フィルムの積層は、長尺位相差フィルムの遅相軸方向が、長尺偏光子の吸収軸方向と実質的に直交するように配置される。
上記工程1で得られた長尺偏光子は、その長手方向に対して略平行に、遅相軸方向が発現する。他方、上記工程2で得られた長尺位相差フィルムは、その長手方向に対して略直交に、遅相軸方向が発現する。このため、工程3において、長尺偏光子及び長尺位相差フィルムをそれぞれ長手方向に引き出しながら重ね合わせて積層接着する(いわゆる、ロール・ツゥ・ロールによる接着)ことにより、長尺位相差フィルムの遅相軸方向が、長尺偏光子の吸収軸方向と実質的に直交して積層された上記長尺光学積層フィルムを得ることができる。本発明の長尺光学積層フィルムは、かかる積層法を採用できるので、その生産性が大幅に向上する。
本発明の光学積層フィルムは、上記長尺光学積層フィルムを適宜な形状に打ち抜くことにより作製され得る。
【0063】
なお、上記長尺偏光子と長尺位相差フィルムの層間接着は、好ましくは接着層を介して接着される。本明細書において「接着層」とは、隣り合う部材との面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。上記接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート剤が形成され、その上に接着剤層又は粘着剤層が形成されたような多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0064】
(他の工程)
本発明の製造方法は、上記工程3の後に、次の工程4をさらに含んでいてもよい。
工程4は、上記工程3で得られた長尺光学積層フィルムを長方形状に打ち抜いて、長方形状の光学積層フィルムを作製する工程である。
【0065】
上記長尺光学積層フィルムを長方形状に打ち抜くことにより、長方形状の光学積層フィルムが作製され得る。この加工には、通常、トムソン刃が用いられる。上記長方形状の光学積層フィルムは、例えば、液晶表示装置の構成部材として用いられ、その対角線の長さは、好ましくは70インチ以上であり、さらに好ましくは80インチ以上であり、特に好ましくは100インチ以上である。
上述のように、長尺偏光子及び長尺位相差フィルムは、何れも幅広のフィルムであるため、これらを積層した長尺光学積層フィルムも幅広となる。従って、例えば、対角サイズ70インチ以上の液晶表示装置に対応しうる、大面積且つ長方形状の光学積層フィルムを得ることも可能となる。
【0066】
好ましくは、上記長方形状の光学積層フィルムは、その長辺方向が、積層された偏光子の吸収軸方向と、実質的に平行、又は実質的に直交するように、打ち抜き加工される。特に好ましくは、上記長方形状の光学積層フィルムの長辺方向と、上記積層された偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交となるように打ち抜き加工される。このような長方形状の光学積層フィルムは、好ましくは、液晶セルのバックライト側に配置される。なお、本明細書において「実質的に平行」とは、上記長辺方向と上記吸収軸方向とのなす角度が、0°±2°である場合を包含し、好ましくは0°±1°である。「実質的に直交」とは、上記長辺方向と上記吸収軸方向とのなす角度が、90°±2°である場合を包含し、好ましくは90°±1°である。
【0067】
<光学積層フィルム等の用途>
本発明の光学積層フィルムは、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0068】
好ましくは、上記光学積層フィルムの用途は、テレビである。上記テレビの画面サイズ(長方形状画面の対角線の長さ)は、好ましくは70インチ以上であり、さらに好ましくは80インチ以上であり、特に好ましくは100インチ以上である。
【実施例】
【0069】
本発明について、実施例及び比較例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
【0070】
(1) 偏光子の単体透過率の測定方法:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製、製品名「DOT−3」]を用いて測定した。単体透過率は、JIS Z 8701−1995の2度視野に基づく、三刺激値のY値である。
(2) 偏光子の偏光度の測定方法:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製、製品名「DOT−3」]を用いて、平行透過率(H)と直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より算出した。平行透過率(H)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。上記透過率は、JIS Z 8701−1995の2度視野に基づく、三刺激値のY値である。
(3)偏光子の位相差値(Δnxy[λ])の測定方法:
王子計測機器(株)製の近赤外位相差測定装置、製品名「KOBRA−31X100/IR」を用いて、波長1000nm、23℃で測定した。
(4)各元素(I、K)含有量の測定方法:
直径10mmの円形サンプルを蛍光X線分析で下記条件により測定したX線強度から、あらかじめ標準試料を用いて作成した検量線により各元素含量を求めた。
・分析装置:理学電機工業製、蛍光X線分析装置(XRF)、製品名「ZSX100e」
・対陰極:ロジウム
・分光結晶:フッ化リチウム
・励起光エネルギー:40kV−90mA
・ヨウ素測定線:I−LA
・カリウム測定線:K−KA
・定量法:FP法
・2θ角ピーク:103.078deg(ヨウ素)、136.847deg(カリウム)
・測定時間:40秒
(5)ネックイン比の測定方法:
延伸前のフィルムの幅(W)と延伸後のフィルムの幅(W)をそれぞれ測定し、NR={(W−W)/W}×100から求めた。
(6)位相差フィルムの位相差値(Re[λ]、Rth[λ])の測定方法:
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、波長590nm、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計[アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」]を用いて測定した値を用いた。
(7)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製、製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(8)液晶表示装置のコントラスト比の測定方法:
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製、製品名「EZ Contrast160D」を用いて、表示画面の方位角0°〜360°、極角60°における、白画像および黒画像を表示した場合のXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、液晶パネルの長辺を方位角0°とし、法線方向を極角0°とした。
【0071】
[長尺偏光子(a1)の作製例]
幅3400mm、厚み75μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする長尺フィルム(クラレ(株)製、商品名「VF−PS#7500」)を下記(1)〜(5)条件の5浴に、フィルムの長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して4.5倍、ネックイン比が50%となるように延伸した。この延伸フィルムを60℃の空気循環式乾燥オーブン内で1分間乾燥させて、長尺偏光子(a1)を作製した。このように作製した長尺偏光子(a1)は、幅1700mm、厚み40μmであり、その諸特性は、表1の通りである。
【0072】
(1) 膨潤浴:30℃の純水。
(2) 染色浴:水100質量部に対し、0.038質量部のヨウ素と、水100質量部に対し、0.2質量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液。
(3) 第1の架橋浴:水100質量に対し、3質量部のヨウ化カリウムと、水100質量部に対し、3質量部のホウ酸とを含む、40℃の水溶液。
(4) 第2の架橋浴:水100質量部に対し、5質量部のヨウ化カリウムと、水100質量部に対し、4質量部のホウ酸とを含む、60℃の水溶液。
(5) 水洗浴:水100質量部に対し、3質量部のヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液。
【0073】
[長尺偏光子(a2)の作製例]
染色浴において、ヨウ素の添加量を、水100質量部に対し、0.025質量部としたこと、及び、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して6.0倍、ネックイン比が65%となるように延伸したこと以外は、上記長尺偏光子(a1)と同様の方法で、長尺偏光子(a2)を作製した。このようにして作製した長尺偏光子(a2)は、幅1300mm、厚み25μmであり、その諸特性は、表1の通りである。
【0074】
【表1】

【0075】
[長尺位相差フィルム(b1)の作製例]
ロール状の、ノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルム((株)オプテス製、製品名「ゼオノア ZF14−100」。幅600mm、厚み100μm)を、テンター延伸機を用いて、固定端横一軸延伸法(長手方向を固定し、幅方向に延伸する方法)により、150℃の空気循環式恒温オーブン内で、2.7倍に延伸して、長尺位相差フィルム(b1)を得た。 このように作製した位相差フィルム(b1)は、幅1800mm、厚み35μmであり、その諸特性は、表2の通りである。
【0076】
[長尺位相差フィルム(b2)の作製例]
上記ノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルムに代えて、ロール状の、セルロース系ポリマー(アセチル置換度(DSac)=0.04、プロピオニル置換度(DSpr)=2.76)を含有する高分子フィルム(厚み80μm)を用いたこと以外は、上記長尺位相差フィルム(b1)の作製例と同様にして延伸し、長尺位相差フィルム(b2)を得た。このように作製した位相差フィルム(b2)は、厚み40μmである。
【0077】
[位相差フィルム(b3)の作製例]
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物と2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとを反応されて得られるポリイミド(6FDA/TFMB)をメチルイソブチルケトンに溶解し、15質量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)の表面に、スロットダイコーターにて膜状に均一に流延した。次に、該フィルムを多室型の空気循環式乾燥オーブン内へ投入し、80℃で2分間、135℃で5分間、150℃で10分間と低温から徐々に昇温しながら溶剤を蒸発させて、トリアセチルセルロースフィルムの上にポリイミド層を形成した。このポリイミド層は、対角サイズ40インチの長方形状よりも十分に大きなサイズであり、このポリイミド層を位相差フィルム(b3)として用いた。なお、ポリイミド層(位相差フィルム(b3))を使用する際には、これをトリアセチルセルロースフィルムから剥離した。このように作製した位相差フィルム(b3)の諸特性は、表2の通りである。
【0078】
【表2】

【0079】
[実施例1]
上記長尺偏光子(a1)の一方の面に、上記長尺位相差フィルム(b1)を、ポリビニルアルコール系ポリマー(日本合成化学工業(株)製、製品名「ゴーセファイマーZ200」)を主成分とする水溶性接着剤層(厚み1μm)を介して、積層した。ただし、位相差フィルム(b1)の遅相軸方向が、長尺偏光子(a1)の吸収軸方向と約90°となるように、長尺位相差フィルム(b1)を配置した。
一方、上記長尺偏光子(a1)の他方の面には、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを、同水溶性接着剤層(厚み1μm)を介して積層した。このようにして、幅1700mmの長尺状の光学積層フィルムを作製した。この長尺光学積層フィルムを、トムソン刃にて、対角サイズ40インチの長方形状に打ち抜き、長方形状の光学積層フィルム(x1)を作製した。
【0080】
[実施例2]
位相差フィルム(b1)に代えて、位相差フィルム(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各フィルムを積層し、幅1700mmの長尺光学積層フィルムを作製した。この長尺光学積層フィルムを、トムソン刃にて、対角サイズ40インチの長方形状に打ち抜き、長方形状の光学積層フィルム(x2)を作製した。
【0081】
[比較例]
長尺偏光子(a1)に代えて、上記長尺偏光子(a2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各フィルムを積層し、幅1300mmの長尺光学積層フィルムを作製した。この長尺光学積層フィルムを、トムソン刃にて、対角サイズ40インチの長方形状に打ち抜き、長方形状の光学積層フィルム(x3)を作製した。
【0082】
[実施例1の評価試験]
VAモードの液晶セルを含む、市販の液晶表示装置((株)ソニー製の40インチ液晶テレビ、製品名「BRAVIA KDL−40X1000」)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄し、液晶セルを得た。
得られた液晶セルの視認側に、上記実施例1の光学積層フィルム(x1)を、アクリル系粘着剤層を介して貼り付けた。ただし、この光学積層フィルム(x1)に積層された位相差フィルム(b1)が、液晶セルと対面するように、該光学積層フィルム(x1)を配置した。さらに、光学積層フィルム(x1)に積層された偏光子(a1)の吸収軸方向が、該液晶セルの長辺方向と平行になるように、該光学積層フィルム(x1)を配置した。
一方、上記液晶セルのバックライト側には、上記位相差フィルム(b3)を、アクリル系粘着剤層を介して貼り付けた。さらに、その位相差フィルム(b3)の、液晶セルとの接着面と反対側の面に、アクリル系粘着剤層を介して、市販の偏光板(日東電工社製 商品名「NPF・SEG1224DU」)を貼り合わせた。ただし、この市販の偏光板の吸収軸方向が、該液晶セルの長辺方向と直交するように、該市販の偏光板を配置した。
このようにして作製した液晶パネルを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、実施例1の液晶表示装置(y1)を構成した。
この液晶表示装置(y1)の表示特性を測定したところ、正面方向のコントラスト比が1280、斜め方向のコントラスト比が66であった。
【0083】
[実施例2の評価試験]
実施例1の光学積層フィルム(x1)に代えて、実施例2の光学積層フィルム(x2)を用いたこと以外は、上記実施例1の評価試験と同様にして液晶パネルを作製し、これを組み込んだ液晶表示装置(y2)を作製した。
この液晶表示装置(y2)の表示特性を測定したところ、その正面方向及び斜め方向のコントラスト比の何れも、上記実施例1の液晶表示装置(y1)と同等であった。
【0084】
[比較例の評価試験]
実施例1の光学積層フィルム(x1)に代えて、比較例の光学積層フィルム(x3)を用いたこと以外は、上記実施例1の評価試験と同様にして液晶パネルを作製し、これを組み込んだ液晶表示装置(y3)を作製した。
この液晶表示装置(y3)の表示特性を測定したところ、正面方向のコントラスト比が950、斜め方向のコントラスト比が63であった。
【0085】
以上の結果から、実施例1の光学積層フィルム(x1)及び2の光学積層フィルム(x2)を備える液晶表示装置(y1),(y2)は、コントラスト比に優れていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】長尺光学積層体の一実施形態を示す断面図。
【図2】長尺偏光子の作製工程の一例を示す参考図。
【0087】
11,12…光学積層フィルム、2…偏光子、3…位相差フィルム、4…保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、該偏光子の一方の面に積層された位相差フィルムと、を備え、
前記偏光子は、二色性物質を含有する親水性ポリマーの延伸フィルムを有し、前記偏光子の波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が、0.01〜0.03であり、
前記位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足するフィルムであり、位相差フィルムの遅相軸方向が、前記偏光子の吸収軸方向と実質的に直交するように配置されていることを特徴とする光学積層フィルム。
【請求項2】
前記偏光子の単体透過率が42%以下であり、且つ、その偏光度が98%以上である、請求項1に記載の光学積層フィルム。
【請求項3】
前記位相差フィルムが、ノルボルネン系ポリマー、又はセルロース系ポリマーを含む延伸フィルムである、請求項1または2に記載の光学積層フィルム。
【請求項4】
前記位相差フィルムのNz係数が1.0〜1.5である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項5】
前記偏光子と前記位相差フィルムが、接着層を介して積層されている、請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項6】
次の工程1〜工程3を含む、長尺光学積層フィルムの製造方法。
工程1:二色性物質を含有する親水性ポリマーの長尺フィルム(A)を延伸し、波長1000nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[1000])が0.01〜0.03となる長尺偏光子を作製する工程、
工程2:長尺フィルム(B)を、少なくとも幅方向に延伸して、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足する長尺位相差フィルムを作製する工程、
工程3:工程1で得られた長尺偏光子の一方の面に、工程2で得られた長尺位相差フィルムを積層して、長尺光学積層フィルムを作製する工程。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学積層フィルムを備える液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−281761(P2008−281761A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125744(P2007−125744)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】