説明

光学積層体、光学積層体の製造方法、偏光板及び画像表示装置

【課題】従来の物理特性や光学特性を保持しつつ、帯電防止性に優れ、かつ、画像表示装置に適用した場合に画像コントラストが高い光学積層体を提供する。
【解決手段】光透過性基材及び上記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体であって、上記樹脂層は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料及びレベリング剤を含有する樹脂層用組成物を用いて形成された層であり、上記共役系高分子導電性材料の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であり、上記レベリング剤の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部である光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、光学積層体の製造方法、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の最表面には、防眩性、反射防止性や帯電防止性等の種々の性能を有する機能層からなる光学積層体が設けられている。
【0003】
このような光学積層体において、帯電による埃等の付着による汚れや、使用時又はディスプレイ製造工程における障害の発生を防ぐために、導電性材料である帯電防止剤を含む樹脂層を設けることが従来より行われている。
【0004】
上記光学積層体に使用される帯電防止剤としては、アンチモンドープした酸化錫(ATO)やスズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物系やカーボン系等の導電性微粒子等の無機系材料(特許文献1、2)が知られている。しかしながら、金属酸化物等の無機系材料は、添加量が多いと光学積層体の光透過率が低下したり、画像表示装置に設置した場合の画面のコントラストが低下するといった問題があった。
【0005】
上記帯電防止剤としてはまた、導電性ポリマーや4級アンモニウム塩系導電材等の有機系材料のものも知られている(特許文献2)。
特許文献3には、分子内にアニオン基及び/又は電子吸引性基を有する可溶化高分子成分と導電性高分子成分とを含む可溶性導電性高分子成分と、ハードコート成分とを含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、分子内の側鎖の末端に不飽和二重結合を有する可溶化高分子成分及び導電性高分子成分を含む可溶性導電性高分子成分と、光硬化性モノマー及び/又は有機溶媒とを含有することを特徴とする導電性高分子溶液が開示されている。
特許文献5又は6には、導電性高分子、ドーパント、並びに、ラジカル重合性基を有するアミド系化合物又はアミン類及びノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤、を含有し、水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの有機導電性材料や帯電防止性樹脂組成物を光学積層体の製造に使用した場合、所望の帯電防止性能を有する光学積層体を得ることはできても、従来の物理特性(ハードコート性等)や光学特性(光透過性、防眩性等)を保持したままで、更に、画像のコントラストが充分に高いものは得られていなかった。
近年、表示画像の品質の更なる向上が求められており、画像のコントラストがより高い光学積層体の実現が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−032845号公報
【特許文献2】特開2006−023350号公報
【特許文献3】特開2005−350622号公報
【特許文献4】特開2006−028439号公報
【特許文献5】特開2008−222850号公報
【特許文献6】特開2008−045116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、従来の物理特性や光学特性を保持しつつ、帯電防止性に優れ、かつ、画像表示装置に適用した場合に画像コントラストが高い光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光透過性基材及び上記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体であって、上記樹脂層は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料及びレベリング剤を含有する樹脂層用組成物を用いて形成された層であり、上記共役系高分子導電性材料の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であり、上記レベリング剤の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部であることを特徴とする光学積層体である。
上記樹脂層用組成物は、更にプロトン性官能基を有する添加剤を含むことが好ましい。
上記プロトン性官能基を有する添加剤は、エポキシアクリレートであることが好ましい。
上記共役系高分子導電性材料は、共役系高分子及びドーパントを含むものであり、上記共役系高分子は、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
上記ドーパントは、アニオン性化合物であることが好ましい。
上記樹脂層用組成物の水分含有量が20質量%以下であることが好ましい。
本発明の光学積層体は、光透過性基材上に防眩層を更に有し、上記防眩層上に樹脂層を有することが好ましい。
【0010】
本発明はまた、光透過性基材、及び、上記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体の製造方法であって、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料、レベリング剤及び溶剤を含有する樹脂層用組成物を用いて樹脂層を形成する工程を有し、上記共役系高分子導電性材料の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であり、上記レベリング剤の含有量が、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部であることを特徴とする光学積層体の製造方法でもある。
本発明の光学積層体の製造方法において、上記樹脂層用組成物の水分含有量が20質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、偏光素子を有する偏光板であって、上記偏光板は、上記偏光素子の表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明はまた、最表面に上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、光透過性基材、及び、上記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体であって、上記樹脂層が特定の成分を特定量含む樹脂層用組成物から形成される層であることを特徴とする光学積層体である。このため、本発明の光学積層体は、従来の物理特性(硬度、ハードコート性等)や光学特性(光透過性、防眩性等)を有しつつ、帯電防止性に優れ、かつ、画像表示装置に適用した場合に画像のコントラストが高いものとすることができる。
具体的には、本発明の光学積層体における樹脂層は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料及びレベリング剤を特定量含む樹脂層用組成物からなる層である。上記樹脂層がこのような特定の成分から形成される層であるため、本発明の光学積層体では、共役系高分子導電性材料の量が少量であっても、高い導電性を示し、優れた帯電防止性を発揮することができる。また、少量であるため、本発明の光学積層体は、高い光透過性を維持することができる。更に、本発明の光学積層体を画像表示装置に適用した場合、表示される画像のコントラストを高くすることができる。
【0013】
本発明の光学積層体は、光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する。
上記樹脂層は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料、及び、レベリング剤を含む樹脂層用組成物により形成される。
上記樹脂層用組成物は共役系高分子導電性材料を含む。帯電防止剤として、上記共役系高分子導電性材料を含むことにより、無機化合物の導電性材料と比較して、光透過性を低下させることなく、所望の帯電防止性を付与し、かつ、コントラストの高い光学積層体を実現することができる。
【0014】
上記共役系高分子導電性材料は、共役系高分子とドーパントとを含むものであることが好ましい。
上記共役系高分子としては、例えば、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリフラン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類及びポリチオフェンビニレン類等を挙げることができる。これらは置換又は非置換のものであってもよい。なかでも、可視光線透過率の高さ等の点で、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。なお、上記共役系高分子は、非置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を高分子中に導入することが好ましい。
【0015】
上記共役系高分子の具体例としては、例えば、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。なかでも、上記共役系高分子としては、可視光線透過率の高さや色味の変化の少なさ、及び、導電性が高い等の点からポリチオフェン類が好ましい。
【0016】
上記ドーパントとしては、例えば、アニオン性化合物が挙げられる。
上記アニオン性化合物としては、アニオン基として、上記ポリチオフェンへの化学酸化ドープが起こりうる官能基を有するものであればよい。なかでも、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。更に、官能基のポリチオフェン成分へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0017】
上記アニオン性化合物としては、具体的には、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。
【0018】
上記アニオン性化合物の重合度としては、特に限定されないが、例えば、モノマー単位が10〜10万であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点から、下限が50、上限が1万であることがより好ましい。
【0019】
本発明の光学積層体において使用する上記共役系高分子導電性材料としては、ポリチオフェン類とドーパントとの錯体(ポリチオフェン/ドーパント錯体)であることがより好ましい。上記ポリチオフェン/ドーパント錯体は、例えば、上記ポリチオフェンの前駆体モノマーを、上記ドーパント、酸化剤、酸化触媒及び溶媒中で酸化重合することで得ることができる。
【0020】
上記酸化剤、酸化触媒としては、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0021】
また、上記溶媒としては特に限定されず、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0022】
上記酸化重合において、上記ポリチオフェンの前駆体モノマーと、ドーパントとの配合比としては特に限定されないが、得られるポリチオフェン/ドーパント錯体に充分な導電性を発現させることができることから、ポリチオフェン1質量部に対して、ドーパントが0.5〜5質量部となる配合比であることが好ましい。
【0023】
また、上記ポリチオフェンとドーパントとの錯体は、市販品を用いることもでき、例えば、Baytron P(商品名、H.C.シュタルク社製)、Orgacon(商品名、アグファ社製)等が挙げられる。
【0024】
上記酸化重合により得られた錯体や上記市販品の多くは、ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散液であるが、本発明においては、有機溶剤分散型ポリチオフェンであることが好ましい。上記ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散体から上記有機溶剤分散型ポリチオフェンを得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)上記ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散体を噴霧乾燥し、得られた乾燥固体を、アミン類及び/又はノニオン性界面活性剤と有機溶媒とに混合し、分散処理する方法。
(2)上記ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散体に沈殿剤を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、アミン類及び/又はノニオン性界面活性剤と、有機溶媒とを加えて分散処理する方法。
(3)上記ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散体に沈殿剤を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、ラジカル重合性基を有するアミド系化合物と、アミン類及び/又はノニオン系界面活性剤と、有機溶媒とを加えて分散処理する方法。
【0025】
上記各方法において、アミン類としては特に限定されず、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のアルキルアミン類;アニリン、ベンジルアミン等の芳香族系アミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類等が挙げられる。
また、上記以外のモルホリン等の含酸素アミン類やピリジン等も用いることができる。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類が分散安定性の点で好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルアミン類が好ましい。
【0026】
上記アミン類の添加量としては、有機溶媒中のポリチオフェン/ドーパント錯体の固形分に対して、5〜300質量%であることが好ましく、10〜200質量%であることがより好ましい。
【0027】
上記ノニオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
また、上記有機溶媒としては、上記ポリチオフェンを溶解しないものであれば特に限定されず、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、エステル類、ニトリル類等が挙げられる。
上記アルコール類としては、水酸基を有するものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のモノアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類等が挙げられる。
上記ケトン類としては、分子中にケトン構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類等のエーテル類等が挙げられる。
上記アミド類としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記スルホキシド類としては特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
上記スルホン類としては特に限定されず、例えば、スルホラン等が挙げられる。
上記エステル類としては特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。
上記ニトリル類としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコール等のアルコール類が取り扱い性と分散安定性の点から好ましい。
【0029】
上記(2)の方法で使用する沈殿剤としては、上記ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分散体を沈殿させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、上述した有機溶媒にアミン類又は上記ポリチオフェン及びドーパント以外の酸類を添加したもの等が挙げられる。
【0030】
上記沈殿剤の調製に用いられる有機溶媒としては、なかでも、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルが、分散安定性が良好となり、生成するゲル状膨潤体の凝集塊の大きさ等の制御が容易となり、有機溶媒に対する分散性を良好にすることができるため好ましい。
【0031】
上記沈殿剤の調製に用いられるアミン類としては、なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアミン類を用いることにより有機溶媒に分散することが容易になる点で好ましい。
また、上記酸類としては特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸類、酢酸、酪酸、シュウ酸、アジピン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸樹脂等のポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸が系に残留した場合の分散安定性の点で好ましい。これら酸類は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記沈殿剤の調製に用いられるアミン類又は酸類の配合量としては特に限定されないが、通常、上記有機溶媒100重量部に対し、0.1〜25重量部程度であることが好ましい。
【0032】
上記(2)の方法において、上記沈殿剤及び上記ゲル状膨潤体を精製する際に使用する有機溶媒の量としては特に限定されず、ゲル状膨潤体が生成するまで添加すればよい。
上記沈殿剤の添加量としては、具体的には、上記ポリチオフェン/ドーパントの合計量(固形分)100質量部に対して、上記沈殿剤中のアミン類又は酸類を好ましくは5〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部、更に好ましくは5〜50質量部添加すればよい。
生成した上記ゲル状膨潤体の分離は、例えば、従来公知のろ過、有機溶媒及び水の蒸発により行うことができる。
【0033】
上記(3)の方法において、上記ラジカル重合性基を有するアミド系化合物としては、分子中にビニル基又は(メタ)アクリル基とアミド基を有する化合物であれば特に限定されずに公知のものを使用することができる。
具体的には、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、3−アクリルアミドフェニルボロン酸等等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0034】
なお、上記各方法で有機溶剤分散型ポリチオフェンを得る際に、分散性を向上させるために水を添加することもできるが、最終的に得られる有機溶剤分散型ポリチオフェン/ドーパント錯体の水分含有量が20重量%程度以下となるように、水添加量を調整するか、水を加えて分散させた後、脱水剤を使用して水を除去する、若しくは、常圧又は減圧で水分を蒸発させることが好ましい。
使用する脱水剤としては特に限定されず、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0035】
上記分散処理としては特に限定されず、例えば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、振とう機等の装置を使用して行うことができる。
なお、高度な処理が必要な場合には、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等の処理を追加してもよい。
【0036】
上記樹脂層用組成物における上記共役系高分子導電性材料の含有量は、後述するバインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部である。上記含有量が0.1質量部未満であると、所望の帯電防止性を付与することができない。1質量部を超えると、光透過率が減少し、所望の高いコントラストを実現することができない。上記共役系高分子導電性材料の含有量は、下限が0.2質量部であることが好ましく、上限が0.7質量部であることが好ましい。
このように上記共役系高分子導電性材料が少量の含有量であるにもかかわらず、本発明の光学積層体が帯電防止性能を発揮しうることから、上記共役系高分子導電性材料は、樹脂層中において、樹脂層全体に分散して存在しているのではなく、樹脂層中の一定の位置に、層状態として存在していることが推測される。ここでいう層状態としては、上記層状態で共役系高分子導電性材料が均一に分散している状態の他、小規模で局在した部分が近接しあうような形態で層状態を形成しているとも推測される。更に、上記共役系高分子導電性材料は、硬度及び帯電防止性を発揮するために、樹脂層中の樹脂層表面側(光透過性基材面とは反対側)寄りであるが、最表面ではない位置に存在することが推測される。
【0037】
上記樹脂層用組成物は、バインダー樹脂を含有する。
本発明の光学積層体において、上記バインダー樹脂としては、上記共役系高分子導電性材料のドーパントと反応しない材料であれば特に限定されないが、ウレタンアクリレートを含有することが好ましい。ウレタンアクリレートを含有することで、帯電防止性に優れ、高いコントラストを有する光学積層体とすることができる。
【0038】
上記ウレタンアクリレートの含有量としては、上記バインダー樹脂を構成する樹脂成分(固形分)中、30〜70質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、本発明の光学積層体の帯電防止性能が不充分となることがある。70質量%を超えると、所望の高いコントラストが得られないおそれがある。上記ウレタンアクリレートの含有量は、下限が35質量%であることがより好ましく、上限が60質量%であることがより好ましい。
【0039】
また、上記ウレタンアクリレートを含有するバインダー樹脂は、更に該ウレタンアクリレート以外の疎水性樹脂を含有することが好ましい。上記疎水性樹脂を更に含有することで、上記樹脂層における共役系高分子導電性材料を表面(光透過性基材と反対側の表面)付近に偏在させることが可能となり、共役系高分子導電性材料の添加量が少量であっても、優れた帯電防止性能を発揮し得るからである。この理由は明確ではないが、極性の低い疎水性の樹脂が上記樹脂層中に多く存在することで、極性の高い共役系高分子導電性材料が表面に局在化しやすくなると考えられる。
なお、本明細書において、「疎水性樹脂」とは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を含有せず、ビニル基、ウレタン基、(メタ)アクリロイル基等の疎水性官能基を有するアクリル酸エステル樹脂を意味する。
【0040】
上記疎水性樹脂としては、具体的には、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアクリルエステルが挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0041】
上記バインダー樹脂中の疎水性樹脂の含有量としては、バインダー樹脂中の樹脂成分(固形分)中20〜70質量%であることが好ましい。上記範囲を外れると、本発明の光学積層体の帯電防止性能が低下することがある。上記疎水性樹脂の含有量は、下限が25質量%であることがより好ましく、上限が60質量%であることがより好ましい。
【0042】
上記ウレタンアクリレート及び疎水性樹脂以外のバインダー樹脂としては、例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。なかでも、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0043】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。
【0044】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0045】
電離放射線硬化型樹脂に混合して使用される溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。
好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及び、ゴム又はエラストマー等が挙げられる。
なかでも、上記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶な樹脂を使用することが好ましい。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0046】
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0047】
上記樹脂層用組成物は、レベリング剤を含有する。
上記レベリング剤を含有することで、上記レベリング剤が上記樹脂層表面へブリードすることにより、塗工乾燥時における上記樹脂層用組成物中の対流ムラや、ベナードセル等の欠陥を防止することができる他、レベリング剤が積極的に樹脂層表面にブリードするので、共役系高分子導電性材料が樹脂層表面にブリードするのを防止できるとともに、上記共役系高分子導電材料を、樹脂層中の適度な位置に好適に配置させることができると推測され、安定かつ好適な帯電防止性能を得ることが出来るものと考えられる。上記レベリング剤としては、上記共役系高分子導電性材料のドーパントと反応しない材料であれば、反応性でも非反応性であっても良く、特に限定されないが、フッ素系及び/又はケイ素系化合物であることが好ましい。
【0048】
上記フッ素系化合物としては、C2d+1(dは1〜21の整数)で表されるパーフルオロアルキル基、−(CFCF−(gは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキレン基、またはF−(−CF(CF)CFO−)e−CF(CF)(ここで、eは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキルエーテル基、ならびに、CF=CFCFCF−、(CFC=C(C)−、および((CFCF)C=C(CF)−等で例示されるパーフルオロアルケニル基を有することが好ましい。
【0049】
上記の官能基を含む化合物であれば、上記フッ素系化合物の構造は特に限定されるものではなく、例えば、含フッ素モノマーの重合体、又は、含フッ素モノマーと非フッ素モノマーの共重合体等を用いることもできる。それらの中でも特に、含フッ素モノマーの単独共重合体、又は、含フッ素モノマーと非フッ素モノマーとの共重合体のいずれかで構成される含フッ素系重合体セグメントと、非フッ素系重合体セグメント、とから成るブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましく用いられる。このような共重合体においては、含フッ素系重合体セグメントが、主に防汚性・撥水撥油性を高める機能を有し、一方、非フッ素系重合体セグメントが、バインダー成分との相溶性を高める、アンカー機能を有する。したがって、このような共重合体を用いた光学積層体においては、繰り返し表面を擦られた場合にもこれらのフッ素系化合物が除去されにくく、また、長期に渡り防汚性などの諸性能を維持できる。
【0050】
上記フッ素系化合物は市販の製品として入手することができ、例えば、日本油脂製モディパーFシリーズ、DIC社製メガファックシリーズ等が好ましく用いられる。
【0051】
上記フッ素系及び/又はケイ素系化合物は、下記一般式、
【0052】
【化1】

【0053】
(式中、Raはメチル基などの炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rbは非置換、もしくはアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、パーフルオロアルキル基、 パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基、または(メタ)アクリロイル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはポリエーテル変性基を示し、各Ra、Rbは互いに同一でも異なっていても良い。また、mは0〜200、nは0〜200の整数である。)
で示される構造を有することが好ましい。
【0054】
上記一般式のような基本骨格を持つポリジメチルシリコーンは、一般に表面張力が低く、撥水性や離型性に優れていることが知られているが、側鎖あるいは末端に種々の官能基を導入することで、更なる効果を付与することができる。例えば、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基、アルコキシ基等を導入することにより反応性を付与でき、上記電離放射線硬化型樹脂組成物との化学反応により共有結合を形成できる。また、パーフルオロアルキル基、 パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキルエーテル基を導入することで、耐油性や潤滑性等を付与でき、さらに、ポリエーテル変性基を導入することで、レベリング性や潤滑性を向上させることができる。
【0055】
このような化合物は、市販の製品として入手することができ、例えば、フルオロアルキル基をもつシリコーンオイルFL100(信越化学工業社製)や、ポリエーテル変性シリコーンオイルTSF4460(商品名、GE東芝シリコーン社製)等、目的に合わせて種々の変性シリコーンオイルを入手できる。
【0056】
上記フッ素系及び/又はケイ素系化合物は下記一般式、
RaSiX4−n
(式中、Raはパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基、またはパーフルオロアルキルエーテル基を含む炭素数3〜1000の炭化水素基を示し、Xはメトキシ基、エトキシ基、もしくはプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、もしくはメトキシエトキシ基等のオキシアルコキシ基、または、クロル基、ブロモ基もしくはヨード基等のハロゲン基等の加水分解性基であり、同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数を示す。)
で示される構造であってもよい。
【0057】
このような加水分解性基を含むことにより、特に無機成分、本発明においてはシリカ成分の水酸基と共有結合や水素結合を形成し易く、密着性を保持できるという効果がある。
このような化合物として、具体的には、TSL8257(GE 東芝シリコーン社製)等のフルオロアルキルシランが挙げられる。
【0058】
上記樹脂層用組成物におけるレベリング剤の含有量は、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部である。0.01質量部未満であると、塗膜の乾燥時に対流ムラが発生したり、レベリング不足を起因とした塗布面の外観不良が引き起こされる等の不具合が生じ、好ましくない。5質量部を超えると、塗膜の硬度が低下する等の不具合が生じ、やはり好ましくない。上記レベリング剤の含有量は、下限が0.1質量部であることが好ましく、上限が2質量部であることが好ましい。
【0059】
上記樹脂層用組成物は、更に、プロトン性官能基を有する添加剤を含むことが好ましい。
上記プロトン性官能基を有する添加剤を含むことにより、上記共役系高分子導電性材料の分散性及び安定性が向上するとともに、帯電防止性に優れた光学積層体とすることができる。これは、プロトン性官能基を有する添加剤が、ドーパントのように振舞うことが可能であるためと推測される。また、上記プロトン性官能基を有する添加剤を含むことにより、耐光性についてもより安定し好ましい。
上記プロトン性官能基を有する添加剤としては、例えば、エポキシアクリレート、ヒドロキシアクリレート、ビニルスルホン酸等を挙げることができる。なかでも、エポキシアクリレートであることが好ましい。
【0060】
上記樹脂層用組成物における上記プロトン性官能基を有する添加剤の含有量は、バインダー樹脂固形分100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上記共役系高分子導電性材料が凝集し、析出するなどのおそれがある他、帯電防止性能が低下するおそれがあり、安定生産が困難になる場合がある。15質量部を超えると、上記共役系高分子導電材料が過度に分散し、この場合も帯電防止性能が低下するおそれがある。上記プロトン性官能基を有する添加剤の含有量は、より好ましくは下限が2質量部であり、上限が10質量部である。
【0061】
なお、上記プロトン性官能基を有する添加剤である上述のエポキシアクリレート等は、架橋反応してハードコート性を発揮するものであり、バインダー樹脂としても機能することができる。この場合、エポキシアクリレート等の含有量は、エポキシアクリレート等を含むバインダー樹脂100質量%中1〜15質量%であることが好ましい。
【0062】
上記樹脂層用組成物は、更に、光重合開始剤を含んでいてもよい。
上記光重合開始剤としては、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・ジャパン社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独で使用するか又は2種以上を併用してもよい。
上記光重合開始剤の添加量は、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0063】
上記樹脂層用組成物はまた、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、紫外線吸収剤、防汚剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、重合禁止剤、粘度調整剤等を挙げることができる。
【0064】
上記樹脂層用組成物は、上述のバインダー樹脂、共役系高分子導電性材料、レベリング剤及び必要に応じて上記プロトン性官能基を有する樹脂やその他の成分を溶媒中に均一に混合して調製することができる。
上記混合は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0065】
上記溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
【0066】
これらの溶媒は、1種を使用するものであっても、複数種を併用するものであってもよいが、なかでも、アルコール系溶媒を全溶媒中5〜70%含むことが好ましく、15〜60%含むことがより好ましい。上述の範囲のアルコール系溶媒を含むことにより、帯電防止性を安定的に得ることができる。
【0067】
上記樹脂層用組成物は、水分含有量が20質量%以下であることが好ましい。上記水分含有量が20質量%を超えると、所望の導電性を付与することができないおそれがある。上記水分含有量は、5質量%以下であることがより好ましい。
【0068】
上記樹脂層を形成する方法としては、上記樹脂層用組成物を塗布して被膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記被膜を硬化して上記樹脂層を形成する方法が挙げられる。
上記塗布して被膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0069】
上記乾燥の方法としては、30〜120℃で3〜120秒間乾燥させる方法が挙げられる。
【0070】
上記被膜の硬化方法は、上記組成物の内容等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、上記組成物が紫外線硬化型のものであれば、被膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。
上記紫外線を照射する場合は、40〜300J/cmの紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0071】
上記樹脂層の厚さは、0.6〜10μmであることが好ましい。0.6μm未満であると、塗膜の硬度が不足するおそれがある。10μmを超えると、樹脂層用組成物を塗布し形成した塗膜での、対流ムラを充分に抑制することができず、帯電防止性に優れた光学積層体が得られないおそれがある。上記厚さは、1〜9μmであることがより好ましい。上記樹脂層の厚さは、光学積層体の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0072】
本発明の光学積層体は、光透過性基材を有する。
上記光透過性基材としては、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、又は、トリアセチルセルロースを挙げることができる。
【0073】
上記光透過性基材の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは下限が30μmであり、上限が200μmである。
上記光透過性基材は、その上に形成する層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、ケン化、酸化処理等の物理的な処理の他、アンカー剤又はプライマー等の塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0074】
本発明の光学積層体は、更に防眩層を有することが好ましい。
上記防眩層を有することにより、外光による反射や、画面のぎらつきを防ぐことができ、視認性を向上させることができる。
本発明の光学積層体は、上記光透過性基材上に防眩層を有し、上記防眩層上に上記樹脂層を有することが好ましい。従来、表面に凹凸形状を有する防眩層の表面に、帯電防止剤を含む帯電防止層を形成してなる光学積層体においては、防眩層による防眩性と帯電防止層による帯電防止性と、光学積層体に本来求められる光透過性とを満たすことは困難であった、しかし、本発明は、上述した構成の樹脂層を防眩層上に有することで、これらの性能を充分に満たすことが可能となる。
【0075】
上記防眩層は、表面に凹凸形状を有する層である。上記凹凸形状は、上記防眩層表面の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の算術平均粗さをRaとした場合に、下記式を満たすことが好ましい。
30μm<Sm<90μm、
2<θa<15、
0.5μm<Ra<1.5μm
上記Sm、θa及びRaは、JIS B 0601−1994に準拠する方法で得られる値であり、例えば、表面粗さ測定器:SE−3400/小坂研究所製等により測定して求めることができる。
【0076】
上記防眩層を形成した場合、上記樹脂層は、表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記樹脂層の凹凸形状は、上記樹脂層表面の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の算術平均粗さをRaとした場合に、下記式を満たすことが好ましい。
Sm:好ましくは30μm<Sm<600μm、
より好ましくは30μm<Sm<90μm
θa:好ましくは0.1<θa<1.2、より好ましくは0.1<θa<0.5
Ra:好ましくは0.02μm<Ra<1.0μm、
より好ましくは0.02μm<Ra<0.20μm
上記Sm、θa及びRaは、JIS B 0601−1994に準拠する方法で得られる値であり、例えば、表面粗さ測定器:SE−3400/小坂研究所製等により測定して求めることができる。
【0077】
上記防眩層の凹凸形状は、防眩剤を含む組成物により形成したもの、樹脂の相分離により形成したもの、エンボス加工により形成したものであってもよい。
なかでも、上記防眩層の凹凸形状は、防眩剤を含む防眩層用組成物により形成したものであることが好ましい。
上記防眩剤は微粒子であり、形状は、真球状、楕円状、不定形など、特に限定されない。また、上記防眩剤として、無機系、有機系の微粒子を使用することができ、好ましくは透明性の微粒子がよい。
有機系微粒子の具体例としては、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、ポリスチレンビーズ(屈折率1.60)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49〜1.53)、アクリル−スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.54〜1.58)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物ビーズ(屈折率1.66)、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物(屈折率1.66)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.57)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.50)、等が挙げられる。上記プラスチックビーズは、その表面に疎水性基を有することが好ましく、例えば、ポリスチレンビーズを挙げることができる。
無機系微粒子としては、不定形シリカ、球状等、ある特定形状を持った無機シリカビーズ等を挙げることができる。
なかでも、上記防眩剤として、アクリル−スチレン共重合体ビーズ及び/又は不定形シリカを使用することが好ましい。
【0078】
上記防眩剤の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましく、3〜8μmであることが好ましい。上記平均粒径は、トルエン5質量%分散液の状態で、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られた値である。
上記防眩剤の含有量は、バインダー樹脂固形分100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0079】
また、上記防眩層は、更に内部散乱粒子を含有するものであることが好ましい。上記内部散乱粒子は、内部ヘイズを付与し、面ギラ(シンチレーション)等を抑制し得るものである。
上記内部散乱粒子としては、防眩層を構成するバインダー樹脂との屈折率の差が比較的大きい有機粒子が挙げられ、例えば、アクリル−スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.54〜1.58)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.60)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物ビーズ(屈折率1.66)、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物(屈折率1.66)、等のプラスチックビーズを挙げることができる。
これらの粒子は、上記防眩剤としての性質と内部散乱粒子としての性質を兼ね備えたものを使用してもよい。
【0080】
上記内部散乱粒子の平均粒径は、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることが好ましい。上記平均粒径は、トルエン5質量%分散液の状態で、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られた値である。
上記内部散乱粒子の添加量は、バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。
【0081】
上記防眩層のバインダー樹脂としては、上述した樹脂層に使用することのできるバインダー樹脂と同様のものを挙げることができる。
【0082】
上記防眩層は、更に、本発明の効果を阻害しない程度に必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、上述した樹脂層に使用できるその他の成分と同様のものを挙げることができる。
【0083】
上記防眩層は、公知の方法により形成するとよい。例えば、バインダー樹脂、防眩剤及びその他の成分を溶剤と混合分散して防眩層用組成物を調製して、公知の方法により形成することができる。上記防眩層用組成物の調製方法と、これを用いて防眩層を形成する方法としては、上述した樹脂層用組成物の調製方法と、樹脂層を形成する方法と同様の方法をそれぞれ挙げることができる。
【0084】
上記防眩層の層厚みは、1〜10μmであることが好ましい。1μm未満であると、防眩性を好適に付与することができないおそれがある。10μmを超えると、カールやクラックなどが生じるおそれがある。
上記層厚みは、光学積層体の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0085】
本発明の光学積層体は、上述した光透過性基材、樹脂層、防眩層の他に、他の任意の層を有していてもよい。上記任意の層としては、防汚層、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層等を挙げることができる。これらの層は、公知の防眩剤、低屈折率剤、高屈折率剤、防汚剤等と樹脂及び溶剤等とを混合して、公知の方法により形成するとよい。
【0086】
本発明の光学積層体は、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、2H以上であることが好ましい。
【0087】
本発明の光学積層体は、表面抵抗値が1012Ω/□以下であることが好ましい。
1012Ω/□を超えると、目的とする帯電防止性能が発現しなくなるおそれがある。上記表面抵抗値は、1011Ω/□以下であることがより好ましい。1010Ω/□以下であることが更に好ましい。
上記表面抵抗値は、表面抵抗値測定器(三菱化学社製、製品番号;Hiresta IP MCP−HT260)にて測定することができる。
【0088】
本発明の光学積層体は、全光線透過率が87%以上であることが好ましい。87%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0089】
本発明の光学積層体は、最表面の飽和帯電圧が1kV以下であることが好ましい。
上記飽和帯電圧が1kV以下であると、表面電荷の影響を受けやすいIPAモードにおいても本発明の光学積層体を特に有効に使用することができる。
上記飽和帯電圧は、0.5kV以下であることがより好ましい。上記飽和帯電圧が0.5kV以下であると、光学積層体の製造工程中における塵付着を防止できるため、製造安定性や歩留まりを向上させることができる。また、上記光学積層体をディスプレイに設置する場合、IPAモードのディスプレイに特に有効に使用することができ、ディスプレイ自体の塵付着を防止するだけでなく、ディスプレイの組み立て作業時等の帯電による塵付着を防止することができる。
上記飽和帯電圧は、スタティックオネストメータH−0110(シシド静電気社製)を用いて、印加電圧10kV、距離20mm、25℃、40%RHの条件下で、JIS L 1094に従い測定することができる。
【0090】
本発明の光学積層体は、ヘイズが50%以下であることが好ましい。ヘイズが50%を超えると、本発明の光学積層体をディスプレイ表面に装着した場合において、コントラストや視認性を損なうおそれがある。上記ヘイズは、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0091】
本発明の光学積層体を製造する方法としては、上記樹脂層用組成物を使用して樹脂層を形成する工程を有する方法が挙げられる。上記樹脂層用組成物は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料、レベリング剤及び溶剤を含有する。
上記樹脂層用組成物において、上記共役系高分子導電性材料の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜1質量部であり、上記レベリング剤の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部である。
このような本発明の光学積層体を製造する方法もまた、本発明の一つである。
上記光透過性基材、上記樹脂層用組成物、及び、上記樹脂層を形成する方法は、上述した通りである。
【0092】
本発明の光学積層体を製造する方法は、具体的には、光透過性基材上に防眩層を形成する工程、及び、上記防眩層上に上記樹脂層を形成する工程を有する方法であることが好ましい。上記防眩層を形成する方法は、上述した通りである。
【0093】
本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、上記光学積層体の、光透過性基材の上記樹脂層が存在する面と反対側の面側を、設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板もまた本発明の一つである。
【0094】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と上記光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。また、粘着剤を使用して接着させてもよい。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤、シリコーン系粘着剤、又は、水系粘着剤等を挙げることができる。
【0095】
本発明の光学積層体及び上記偏光板は、画像表示装置の最表面に備えることができる。このような画像表示装置もまた本発明の一つである。
上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
【0096】
上記非自発光型の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、上記光学積層体又は上記偏光板が形成されてなるものである。
【0097】
本発明の光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の光透過性基材側から照射される。なお、STN型、VA型、IPS型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0098】
上記自発光型画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極及び、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0099】
上記自発光型画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0100】
本発明の光学積層体は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FEDなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0101】
本発明の光学積層体は、上記構成よりなるので、従来の物理特性及び光学特性を有しつつ、かつ、帯電防止性に優れ、画像のコントラストを高くすることができるものである。このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0103】
実施例1、3〜5、比較例1〜4
透明基材(厚み80μmトリアセチルセルロース樹脂フィルム、富士写真フィルム社製、TF80UL)を準備し、該透明基材の片面に、下記表1に示した組成の樹脂層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜を温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、5μm厚み(乾燥時)の樹脂層(帯電防止性ハードコート層)を形成し、各実施例及び比較例に係る光学積層体を作製した。
【0104】
実施例2
透明基材(厚み80μmトリアセチルセルロース樹脂フィルム、富士写真フィルム社製、TF80UL)を準備し、該透明基材の片面に、下記に示した組成の防眩層用組成物を塗布し塗膜を形成した。
(防眩層用組成物)
・アクリル−スチレン共重合体ビーズ(粒径5μm、屈折率1.56) 15質量部
・不定形シリカ(平均粒径1.5μm) 5質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 90質量部
・PMMAポリマー(分子量75000) 10質量部
・イルガキュア184 6質量部
・イルガキュア907 1質量部
・ポリエーテル変性シリコーン 0.025質量部
・トルエン 150質量部
・シクロヘキサノン 80質量部
【0105】
次いで、形成した塗膜を温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が30mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、樹脂のみからなる部分の厚みが3μm(乾燥時)の防眩層を形成した。
更に上記防眩層の上層として、下記表1に示した組成の樹脂層用組成物を塗布し塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜を温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥させ、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、3μm厚み(乾燥時)の樹脂層(帯電防止性ハードコート層)を形成し、実施例2に係る光学積層体を作製した。
なお、実施例2で得られた防眩層及び防眩層の上層に樹脂層を設けた光学積層体の表面粗さ値を、JIS B 0601−1994に準拠する方法で、表面粗さ測定器:SE−3400/小坂研究所製により測定して求めたところ、防眩層の表面粗さ値はSm=55.0μm、θa=7.50、Ra=1.00μmであり、防眩層の上層に樹脂層を設けた光学積層体の表面粗さ値はSm=68.0μm、θa=0.30、Ra=0.09μmであった。
【0106】
【表1】

【0107】
得られた各光学積層体を下記項目について評価した。評価結果を表2に示す。
<表面抵抗値>
得られた光学積層体の、ハードコート層が形成された表面の表面抵抗値について、表面抵抗値測定器(三菱化学社製、製品番号;Hiresta IP MCP−HT260)を使用して測定した。
【0108】
<飽和帯電圧>
各光学積層体の飽和帯電圧について、スタティックオネストメータH−0110(シシド静電気社製)を用いて、印加電圧10kV、距離20mm、25℃、40%RHの条件下で、JIS L 1094に従い測定した。
【0109】
<鉛筆硬度>
各光学積層体を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度HB〜3H)を用いて、JIS K5600−5−4(1999)が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、4.9Nの荷重にて、ハードコート層が形成された表面の鉛筆硬度を測定した。
【0110】
<全光線透過率、ヘイズ>
各光学積層体の全光線透過率及びヘイズについて、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361(全光線透過率)及びJIS K−7136(ヘイズ)に準拠した方法により測定した。
【0111】
<塗工ムラ>
各光学積層体のハードコート層表面の様子を目視にて観察し、塗工ムラがないかどうかを評価した。
【0112】
【表2】

【0113】
表2より、実施例の光学積層体は、帯電防止性、硬度、光学特性の全てに優れ、塗工ムラもないものであった。また、いずれの実施例も全光線透過率が高く、所望の高いコントラストが得られた。
比較例1は、PEDOT/PSS添加量が多すぎるために全光線透過率が低下し、所望の高いコントラストが得られなかった。比較例2は、PEDOT/PSS添加量が少ないため、帯電防止性能が現れなかった。比較例3においては、レベリング剤量が多すぎるために最表面の硬度が低下した。比較例4は、レベリング剤を添加しないため塗工ムラがあり、かつ、添加したPEDOT/PSSが最表面側にブリードアウトしているらしく、鉛筆硬度も低下した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材及び前記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体であって、
前記樹脂層は、バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料及びレベリング剤を含有する樹脂層用組成物を用いて形成された層であり、
前記共役系高分子導電性材料の含有量が、前記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であり、
前記レベリング剤の含有量が、前記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部である
ことを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
樹脂層用組成物は、更にプロトン性官能基を有する添加剤を含む請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
プロトン性官能基を有する添加剤は、エポキシアクリレートである請求項2記載の光学積層体。
【請求項4】
共役系高分子導電性材料は、共役系高分子及びドーパントを含むものであり、
前記共役系高分子は、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1、2又は3記載の光学積層体。
【請求項5】
ドーパントは、アニオン性化合物である請求項4記載の光学積層体。
【請求項6】
樹脂層用組成物の水分含有量が20質量%以下である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体。
【請求項7】
光透過性基材上に防眩層を更に有し、前記防眩層上に樹脂層を有する請求項1、2、3、4、5及び6記載の光学積層体。
【請求項8】
光透過性基材、及び、前記光透過性基材の一方の面に樹脂層を有する光学積層体の製造方法であって、
バインダー樹脂、共役系高分子導電性材料、レベリング剤及び溶剤を含有する樹脂層用組成物を用いて樹脂層を形成する工程を有し、
前記共役系高分子導電性材料の含有量が、前記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であり、
前記レベリング剤の含有量が、前記バインダー樹脂固形分100質量部に対して0.01〜5質量部である
ことを特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項9】
樹脂層用組成物の水分含有量が20質量%以下である請求項8記載の光学積層体の製造方法。
【請求項10】
偏光素子を有する偏光板であって、
前記偏光板は、前記偏光素子の表面に請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項11】
最表面に請求項1、2、3、4、5、6若しくは7記載の光学積層体、又は、請求項10記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2011−31551(P2011−31551A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181801(P2009−181801)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】