説明

光学系付属品、それを用いた分光光度計

【課題】円二色性を十分な精度で測定のできる光学系付属品、およびそれを用いた分光高度計を提供すること。
【解決手段】 ダブルビーム型分光光度計の試料室に着脱自在な、円二色性を測定するための光学系付属品110であって、該光学系付属品110は、一方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第1の偏光子112aと、他方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第2の偏光子112bと、第1および第2の偏光子112a,112bからの直線偏光を互いに逆向きの円偏光とする4分の1波長板114と、該4分の1波長板からの左右円偏光が照射される試料を保持する試料保持手段118とを備え、前記4分の1波長板114を透過した光が試料保持手段118に保持される試料の略同一点に照射するように、前記第1、第2の偏光子、および前記4分の1波長板を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルビーム型の分光光度計用の光学系付属品、およびそれを用いた分光光度計、特に該装置による円二色性測定の測定方式の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物の光学活性の測定を利用してその絶対配置を決定することは重要なことである。例えば、光学活性アミン類、アルコール類は食品・薬物などに広く利用される有用な化合物であるが、これらの絶対構造を決定することは化学・生物学・薬物の分野において非常に重要である。しかし、これらの化合物は、顕著な発色団を持たず、円二色性(CD)を持たない、もしくは非常に小さいものであることが少なくない。
一方、亜鉛ポルフィリン二量体はそれ自体では円二色性を持たないが、上記アミンやアルコールと混合すると配位化合物を形成し、アミンやアルコールのキラリティーと相関した配位化合物のキラリティーが生じる。しかもこの配位化合物のキラリティーは元のアミンやアルコール類のキラリティーよりも大きなものとなり、かつ分裂幅があまり大きくない励起子タイプの円二色性を示す性質がある。特許文献1、2にはこの性質を利用して、従来円二色性測定では難しいとされていたアミン類、アルコール類のキラリティーを高感度に測定する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−220392号公報
【特許文献2】特開2004−264049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
円二色性の測定強度は通常の吸光度と比較して1000分の1程度であることが一般的であり、円二色性の測定のためには専用の特別な装置が必要であった。しかし、専用装置は相当に高価であること、円二色性しか測定できないこと、を考えあわせると円二色性の測定を日常的に行なわないユーザーにとって、わざわざこの装置を設備しなければならないことは経済的負担が過重であった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的はより汎用的で安価な分光光度計に比較的簡単な付属品を取り付けることにより、円二色性を十分な精度で測定することのできる光学系付属品、およびそれを用いた分光光度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる光学系付属品は、光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計の試料室に着脱自在な、円二色性を測定するための光学系付属品である。
そして、上記目的を達成するため、本発明にかかる第1の光学系付属品は、前記一方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第1の偏光子と、他方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第2の偏光子と、第1および第2の偏光子からの直線偏光を互いに逆向きの円偏光とする4分の1波長板と、該4分の1波長板からの左右円偏光が照射される試料を保持する試料保持手段とを備え、前記4分の1波長板を透過した光が試料保持手段に保持される試料の略同一点に照射するように、前記第1、第2の偏光子、および前記4分の1波長板を配置したことを特徴とする。
また、本発明にかかる第2の光学系付属品は、前記試料室内の一方の光束の光路上に設置される試料を保持する第1の試料保持手段と、他方の光束の光路上に設置される試料を保持する第2の試料保持手段と、各試料保持手段の光照射側に設置され、左円偏光および右円偏光を生成する左円偏光生成手段および右円偏光生成手段とを備えている。ここで、左円偏光生成手段および右円偏光生成手段は各々偏光子と4分の1波長板とを含み、前記左円偏光生成手段と右円偏光生成手段とは、その配置位置が入れ替え可能に構成され、前記第1の試料保持手段側に左円偏光、第2の試料保持手段側に右円偏光を照射する第1の照射状態と、前記第1の試料保持手段側に右円偏光、第2の試料保持手段側に左円偏光を照射する第2の照射状態と、を切替可能であることを特徴とする。
また、本発明にかかる第3の光学系付属品は、前記一方の光束を測定側光束、他方の光束を参照側光束として利用するものであって、該光学系付属品は、前記測定光側光束の光路上に配置され、生成する円偏光の向きが切替可能な切替型円偏光生成手段と、該切替型円偏光生成手段からの円偏光が照射される試料を保持する試料保持手段と、を備え、前記切替型円偏光生成手段は、偏光子と4分の1波長板とを備え、偏光子の偏光方向と前記4分の1波長板の軸の方向との角度を相対的に変更できるように構成されたことを特徴とする。
上記の第3の光学系付属品において、前記光学系付属品は、前記試料室内の参照側光束の光路上に、ダミーの光学系を設けることが好適である。
また、本発明にかかる第1の分光光度計は、光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計と、上記第2の光学系付属品と、を備えた円二色性の測定を行う分光光度計であって、検出強度差演算手段と、記憶手段と、円二色性算出手段とを備えることを特徴とする。
ここで、検出強度差演算手段は、前記光検出手段にて検出した第1の試料保持手段側からの試料の透過光の強度と、第2の試料保持手段側からの試料の透過光の強度との差もしくは商を求める。記憶手段は、前記第1および第2の試料保持手段に円二色性の測定対象となる同一の試料を設置したときの前記第1の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差および前記第2の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差、前記第1および第2の試料保持手段に同一のブランク試料を設置したときの前記第1の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差および前記第2の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差を記憶する。円二色性算出手段は、記憶手段に記憶された、円二色性の測定対象となる試料を設置したときの第1の照射状態および第2の照射状態での検出強度差と、ブランク試料を設置したときの第1の照射状態および第2の状態での検出強度差とから前記測定対象となる試料の円二色性を算出する。
また、本発明にかかる第2の分光光度計は、光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計と、上記第3の光学系付属品と、を備えた円二色性の測定を行う分光光度計であって、検出強度差演算手段と、記憶手段と、円二色性算出手段とを備えることを特徴とする。
ここで検出強度差演算手段は、前記光検出手段にて検出した測定側光束の強度と、参照側光束の強度との差もしくは商を求める。記憶手段は前記測定側光束の光路上の試料保持手段に保持された試料に右円偏光を照射したときの検出強度差演算手段にて求めた検出強度差と、該試料に左円偏光を照射したときの検出強度演算手段にて求めた検出強度差とを記憶する。円二色性算出手段は、該記憶手段にて記憶された検出強度差から試料の円二色性を算出する。
【発明の効果】
【0005】
本発明にかかる光学系付属品、およびそれを用いた分光光度計によれば、汎用のダブルビーム型分光光度計を用いても十分な精度で円二色性を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明にかかる光学系付属品は、図1に一例として示したダブルビーム型の分光光度計に適用されるものである。なお、本発明にかかる光学系付属品はここに示す構成の分光光度計に限らず、その他の構成のダブルビーム型の分光光度計に適用することができる。
図1に示した分光光度計10は、光出射手段12と、該光出射手段12から放射された光を2光束に分割する光分割手段14と、該2つの光束が導入され、試料の設置場所となる試料室16と、試料室16内から出射した2つの光束をそれぞれ検出する光検出手段18と、光検出手段18により検出した信号を処理するデータ処理系20と、を備える。
【0007】
光出射手段12は光源22と、波長走査のための分光器24とを備える。光出射手段12から出射された光は、光分割手段14としてのビームスプリッタ26へ入射する。ビームスプリッタ26へ入射した光はその一部が透過し、試料室16の入射窓30aへ向い、また一部は反射してミラー28を介し試料室16の入射窓30bへ向う。入射窓30aから試料室16に入射した光束は、試料室16内を通り、出射窓32aから試料室16外へ出射する。同様に入射窓30bから試料室16に入射した光束は、試料室16内を通り、出射窓32bから試料室16外へ出射する。ここで、試料室16内の上記2つの光束の光路上には、それぞれ試料(もしくは参照試料)34a,34bが設けられる。出射窓32a,32bから出射した光はそれぞれ検出器36a,36b(光検出手段18)によって検出される。検出器36a,36bで検出された信号はコンピュータ等で構成されたデータ処理系20に送られ、各種データ処理が施される。
【0008】
本発明にかかる光学系付属品は、上で示したような分光光度計10の試料室16への取り付け、取り外しが可能で、通常の分光光度計の試料室に取り付けることで簡便に円二色性(CD)を測定することを可能とするものである。このため、本発明の光学系付属品は以下に説明するような原理を利用した構成をとっている。
【0009】
4分の1波長板は、所定の波長の光に対し90度(1/4周期)の位相差を与える働きを有する。直線偏光の単色光に対し、4分の1波長板をその光軸が単色光の偏光方向と45度になるように設置する。その4分の1波長板に直線偏光の単色光を通すと、該単色光は円偏光となる。ここで、4分の1波長板がちょうど90度の位相差を与える、つまり厳密な意味での円偏光を生成するのは、その4分の1波長板の適応波長のみにおいてである。つまり、その適応波長からはずれた光は一般には楕円偏光となる。しかし、適応波長を含むある波長範囲(例えば、±50nm)の光であれば、十分円偏光に近い楕円偏光となり、実質的には円偏光とみなすことができる。そこで、このことを利用することで、使用する4分の1波長板の適用波長を含む所定波長領域において、測定対象物のCDスペクトルを測定することができる。
【0010】
具体的には、分光光度計の試料室内の光路上に偏光子、4分の1波長板、試料セルを設置し、偏光子の偏光方向と4分の1波長板の光軸が45度になるように設置する。ここで、4分の1波長板は、測定対象物が円二色性を示す中心波長に近いものを用いる。この状態で、測定対象物が円二色性を示す波長領域で測定すると、この測定対象物の左もしくは右円偏光に対する吸収スペクトルが測定される。左円偏光か右円偏光かは、偏光子と4分の1波長板の軸の位置関係で決まる。次に、4分の1波長板を90度回転し、偏光子と光軸が−45度になるようにする。そして同様に測定を行うと、今後は先ほどと逆の円偏光に対する吸収スペクトルが得られる。このようにして得られた左右円偏光に対する吸収スペクトルの差を求めると、これが測定対象物のCDスペクトルとなる。
【0011】
このため、本発明にかかる光学系付属品を備えた分光光度計は、広い波長領域でCDスペクトルを測定する必要のない(つまり、比較的狭い波長領域での測定で十分な)測定対象物に対して、十分精度のよい測定を行うことができる。好適な測定対象物としては、例えば従来技術に述べたようなキラルなアミン類、アルコール類化合物と亜鉛ポリフィリン二量体との配位化合物が挙げられる。つまり、この配位置化合物は、可視域(430nm付近)で、比較的波長幅が狭く、強い励起子カップリング型分裂するCDバンドを与える。よって、4分の1波長板として、その適用波長が430nm付近のものを使用することで十分に信頼性の高い測定を行うことができる。
【0012】
以上が本発明にて採用する測定の原理であるが、CDは吸光度と比較して1/1000程度の強度であることが一般的であり、上記のように差として算出する場合、目的とするCDスペクトルは様々な原因による誤差にうもれて、正しく得られないことが少なくない。この誤差をより小さく抑えることが重要なポイントとなるため、その工夫を施した実施形態を以下に記載する。
【0013】
<第一実施形態>
図2は本発明の第一実施形態にかかる光学系付属品の概略構成図である。図2(a)がその正面図、図2(b)がその斜視図である。
図2の光学系付属品110は、第1の光束(入射窓30aから入射した光束)の光路上に設置される第1の偏光子112aと、第2の光束(入射窓30bから入射した光束)の光路上に設置される第2の偏光子112bと、第1の偏光子および第2の偏光子からの直線偏光を互いに逆向きの円偏光(左円偏光、右円偏光)にする4分の1波長板114と、4分の1波長板114からの左右円偏光が照射される試料(セル116)を保持する試料保持手段(セルホルダ118)とを備える。ここで、第1の偏光子112aと第2の偏光子112bは、互いに直交した偏光方向を持つように配置され、4分の1波長板114を透過した第1、第2の光束が互いに逆向きの円偏光となるようにしている。
【0014】
入射窓30aから入射した第1の光束は、ミラー120a,ミラー122aを介して第1の偏光子112aへと向う。第1の偏光子112aを透過した第1の光束は直線偏光とされ、4分の1波長板114へと向う。ここで、4分の1波長板114の軸(進相軸)の方向(0度とする)に対し、第1の偏光子112の偏光方向は+45度(光束の進行方向からみて、時計周りを正、反時計周りを負とした)にとっている。同様に入射窓30bから入射した第2の光束は、ミラー120b,ミラー122bを介して第2の偏光子112bへと向う。第1の偏光子112bを透過した第2の光束は直線偏光とされ、4分の1波長板114へと向う。4分の1波長板114の軸の方向に対し、第2の偏光子112bの偏光方向は−45度(光束の進行方向からみて、時計周りを正、反時計周りを負とした)にとっている。このように第1の偏光子112aと第2の偏光子112bの偏光方向が互いに直交するようにとっているため、4分の1波長板114を透過した第1の光束、第2の光束は互いに逆向きの円偏光となる。
【0015】
4分の1波長板114を透過した第1および第2の光束は、セルホルダ118に保持されたセル116の略同一部位に照射される。そして、セル116を透過した第1の光束はミラー124a,ミラー126aを介して試料室16の出射窓32bから試料室16外に出射する。同様に試料セル114を透過した第2の光束はミラー124b、ミラー126bを介して試料室の出射窓32bから試料室16外に出射する。
出射窓32bから出射した第1の光束は検出器36bによって検出され、その検出信号がデータ処理系20へと送られる。同様に出射窓32aから出射した第2の光束は検出器36aによって検出され、その検出信号がデータ処理系20へと送られる。データ処理系20では、これらの検出信号から、セル116に入れられた試料の左右円偏光に対する各吸収スペクトルを求め、各吸収スペクトルから円二色性スペクトルを算出する。円二色性の測定に際しては、試料セルに光学不活性な溶媒を入れたブランク測定を行い、このブランク測定で得たスペクトルデータをバックグラウンドデータとして用いる。
【0016】
このように第一実施形態では、右円偏光と左円偏光をほぼ同時に試料に照射して測定を行っているため、測定中に試料を動かす必要がなく、試料を動かすことに起因する誤差が生じる心配がない。また、右円偏光と左円偏光の照射部位がほぼ同一であり、試料セル中の試料の濃度ムラによる測定誤差を低く抑えることができる。また、光学系が対称に設置されており、測定に左円偏光および右円偏光のみを用いているため検出器(例えば、フィトマルチプライヤ等)の偏光特性の影響を受けにくい。
【0017】
<第二実施形態>
図3は第二実施形態にかかる光学系付属品を組み込んだ分光光度計の概略構成図である。図3に示した光学系付属品210は、試料室16内の第1、第2の光束の光路上に設置される試料(セル212a、212b)を保持する第1および第2の試料保持手段(セルホルダ)214a,214bと、第1および第2の試料保持手段手段214a,214bの光照射側に設置される左円偏光生成手段216a、右円偏光生成手段216bとを備えている。ここで、左円偏光生成手段216aは、偏光子218aと4分の1波長板220aとの組み合わせで構成され、偏光子218aの偏光方向と4分の1波長板220aの軸とを45°の角度に設定しておく。同じく右円偏光生成手段216bは、偏光子218bと4分の1波長板220bとの組み合わせで構成される。ただし、偏光子218bの軸と4分の1波長板220bの軸との角度を−45°に設定しておく。つまり、左円偏光生成手段216a、右円偏光生成手段216bの偏光子の偏光方向は互いに直交しており、左円偏光生成手段216a、右円偏光生成手段216bを透過した光はそれぞれ逆向きの円偏光となる。よって、セル212aに照射される円偏光の向きと、セル212bに照射される円偏光の向きは互いに逆向きとなる。
【0018】
さらに、左円偏光生成手段216aと右円偏光生成手段216bとの配置位置は交換可能に構成されており、左円偏光生成手段216aと右円偏光生成手段216bとを入れ替えることにより、各セル212a,212bに照射される円偏光の向きは入れ替える前と逆向きになる。以下、セル212a(第1の光束の光路上に設置される)に左円偏光、セル212bに右円偏光を照射する状態を第1の照射状態と呼び、セル212aに右円偏光、セル212bに左円偏光を照射する状態を第2の照射状態と呼ぶ。図3では第1の照射状態を示している。なお、本実施形態の光学系付属品210を用いた分光光度計では、第1および第2の試料保持手段に保持される各セル212a,212bには同一の試料(もしくはブランク測定の場合、同一の溶媒等)を封入して測定を行うことを前提としている。
【0019】
第1の照射状態において、試料室16の入射窓30aから入射した第1の光束は、左円偏光生成手段216aを透過して左円偏光とされ、試料保持手段214aに保持されたセル212aに照射される。セル212aを透過した第1の光束は出射窓32aから試料室16外へ出射し、光検出手段18の検出器36aにて検出される。同様に試料室16の入射窓30bから入射した第2の光束は、右円偏光生成手段216bを透過して右円偏光とされ、試料保持手段214bに保持されたセル212bに照射される。セル212bを透過した第2の光束は出射窓32bから試料室16外へ出射し、光検出手段18の検出器36bにて検出される。
【0020】
また、第2の照射状態において、試料室16の入射窓30aから入射した第1の光束は、右円偏光生成手段216bを透過して右円偏光とされ、試料保持手段214aに保持されたセル212aに照射される(図4(b)、(d)参照)。セル212aを透過した第1の光束は出射窓32aから試料室16外へ出射し、光検出手段18の検出器36aにて検出される。同様に試料室16の入射窓30bから入射した第2の光束は左円偏光生成手段216bを透過して左円偏光とされ、試料保持手段214bに保持されたセル212bに照射される。セル212bを透過した第2の光束は出射窓32bから試料室16外へ出射し、光検出手段18の検出器36bにて検出される。
【0021】
検出器36a,36bでの検出信号はデータ処理系20に送られ、記憶手段220に記憶され、各種データ処理が行われる。データ処理系20の検出強度差演算手段222では検出器36aから得られる透過光の強度と、検出器36bから得られる透過光の強度との差(もしくは商)を求める。求めた検出強度差は記憶手段220に記憶される。
【0022】
円二色性算出手段224では、記憶手段220に記憶された、円二色性の測定対象となる試料をセル212a,212bに入れたとき(サンプル測定)の第1の照射状態および第2の照射状態での検出強度差と、ブランク試料をセル212a,212bに入れた場合(ブランク測定)の第1の照射状態および第2の状態での検出強度差とから、測定対象となる試料の円二色性を算出する。具体的にはサンプル測定での第1の照射状態における検出強度差と、第2の照射状態における検出強度差との差分をとり、その差分の2分の1を求めることで、サンプル測定値を求める。同様にブランク測定での第1の照射状態における検出強度差と、第2の照射状態における検出強度差との差分をとり、その差分の2分の1を求めることで、バックグラウンド測定値を求める。サンプル測定値からバックグラウンド測定値を引くことで、測定対象となる試料の円二色性スペクトルを算出する。このような測定方法をとることにより、下記に示すように設置する光学系に起因する光吸収による偽信号を除去した円二色性スペクトルを得ることができる。
次に上記の光学系付属品を備えた分光光度計による円二色測定の測定手順について説明する。
【0023】
<ブランク測定>
図4(a),(b)に示すように、セル212a、セル212bにブランク試料として同一の溶媒(測定対象となる試料を溶かす溶媒)を入れ、試料保持手段214a,214bにそれぞれ設置する。
図4(a)ではセル212aの前段に左円偏光生成手段216a、セル212bの前段に右円偏光生成手段216bを設置し(第1の照射状態)、セル212a,セル212bをそれぞれ透過した光の強度を検出器36a,36bで検出する。検出強度差演算手段222では検出器36aで検出した透過光強度の対数(吸光度)から、検出器36bで検出した透過光強度の対数(吸光度)を減算し、検出強度差Bを求め、記憶手段220に記憶する。
【0024】
次に図4(b)に示すように、左円偏光生成手段216aと右円偏光生成手段216bとを入れ替えて、つまり、セル212aの前段に右円偏光生成手段216b、セル212bの前段に左円偏光生成手段216aを設置し(第2の照射状態)、このときのセル212a、212bをそれぞれ透過した光の強度を検出器36a,36bで検出する。検出強度差演算手段222では検出器36aで検出した光強度の対数(吸光度)から、検出器36bで検出した光強度の対数(吸光度)を減算し、検出強度差Bを求め、記憶手段220に記憶する。
円二色性算出手段224では、上記の検出強度差B、Bとの差の2分の1を計算し、バックグラウンド測定値Bを求め、記憶手段220に記憶する。
【0025】
ここで、左円偏光生成手段216a,右円偏光生成手段216bを光が透過したときに生ずる光吸収(吸光度)をそれぞれD,Dとし、左右円偏光がセル212a,212b内の溶媒(ブランク試料)を透過したときに生ずる光吸収(吸光度)をそれぞれZ,Zとし、 セル212a、212b自体が持つ光吸収(吸光度)をそれぞれC、Cとする。検出器36a,36bの検出感度は偏光に依存しないとすると、上記の検出強度差B、Bはそれぞれ、
=(D+C+Z)−(D+C+Z),
=(D+C+Z)−(D+C+Z),
と表される。
とBとの差の2分の1であるバックグラウンド測定値B(=(B−B)/2)を求めると、
B=(D−D)+(Z−Z),
となる。ここで、溶媒(ブランク試料)は円二色性を有しないもの(Z=Z)を用いるため、
B=(D−D),
となる。この式から分かるように、セル212a、212b自体による光吸収(吸光度)の違いはバックグラウンド測定値Bの式からキャンセルされており、測定値Bは左右円偏光生成手段を構成する光学系の光吸収の差を表している。
【0026】
<サンプル測定>
次に図4(c),(d)に示すように、セル212a、セル212bに円二色性の測定対象となる試料(ブランク測定で用いた溶媒に同一サンプルを溶かしたもの)を入れ、試料保持手段214a,214bにそれぞれ設置する。
図4(b)ではセル212aの前段に左円偏光生成手段216a、セル212bの前段に右円偏光生成手段216bを設置し(第1の照射状態)、セル212a,セル212bをそれぞれ透過した光の強度を検出器36a,36bで検出する。検出強度差演算手段222では検出器36aで検出した透過光強度の対数(吸光度)から、検出器36bで検出した透過光強度の対数(吸光度)を減算し、検出強度差Sを求め、記憶手段220に記憶する。
【0027】
次に図4(d)に示すように、左円偏光生成手段216aと右円偏光生成手段216bとを入れ替えて、つまり、セル212aの前段に右円偏光生成手段216b、セル212bの前段に左円偏光生成手段216aを設置し(第2の照射状態)、このときのセル212a、212bをそれぞれ透過した光の強度を検出器36a,36bで検出する。検出強度差演算手段222では検出器36aで検出した光強度の対数(吸光度)から、検出器36bで検出した光強度の対数(吸光度)を減算し、検出強度差Sを求め、記憶手段220に記憶する。
円二色性算出手段224では、上記の検出強度差S、Sとの差の2分の1を計算し、サンプル測定値S(=(S−S)/2)を求め、記憶手段220に記憶する。
【0028】
ここで、左円偏光生成手段216a,右円偏光生成手段216bを光が透過したときに生ずる光吸収(吸光度)をそれぞれD,Dとし、左右円偏光がセル212a,212b内のサンプルを透過したときに生ずる光吸収(吸光度)をそれぞれZ,Zとし、セル212a、212b自体による光吸収(吸光度)をそれぞれC、Cとする。 ここで検出器36a,36bの検出感度は偏光に依存しないとすると、検出強度差S、Sはそれぞれ、
=(D+C+Z)−(D+C+Z),
=(D+C+Z)−(D+C+Z
と表される。そして、SとSとの差の2分の1であるサンプル測定値S(=(S−S)/2)を求めると、
S=(D−D)+(Z−Z
となる。この式から分かるように、セル212a、212b自体が持つ光吸収(吸光度)の違いはサンプル測定値Sの式からキャンセルされている。
上記サンプル測定値Sからバックグラウンド測定値Bを引くと、
S−B=(Z−Z
となり、サンプルの円二色性が求められる。この式から明らかなように、セルの持つ光吸収の違い、左右円偏光生成手段の持つ光吸収の違いに由来する偽信号を除去した、円二色性の値を得ることができていることが分かる。このため、通常小さな強度しか示さない円二色性を十分信頼できる精度で測定することが可能となる。
以上のように、第二実施形態にかかる光学系付属品を組み込んだ分光光度計によれば、汎用のダブルビーム型分光光度計を用いても十分な精度で円二色性を測定することができる。
【0029】
<第三実施形態>
図5は第三実施形態にかかる光学系付属品を組み込んだ分光光度計の概略構成図である。本実施形態では、一方の光束(図5の第1光束)を測定側光束、他方の光束(図5の第2光束)を参照側光束として用いる。図5の光学系付属品310は、測定光側光束の光路上に配置され、生成する円偏光の向きが切替可能な切替型円偏光生成手段312aと、該切替型円偏光生成手段312aからの円偏光が照射される試料(セル314a)を保持する試料保持手段(セルホルダ316a)と、を備える。
【0030】
切替型円偏光生成手段312aは、偏光子318aと4分の1波長板320aとを備え、偏光子318aの偏光方向と4分の1波長板320aの軸の方向との角度を相対的に変更できるように構成されている。例えば、図6に示すように4分の1波長板320aは,取っ手を有するホルダ322に保持されており、該ホルダ322は4分の1波長板320aの進相軸方位を、偏光子の偏光軸に対して、+45度(図6(a))、0度(図6(b))、−45度(図6(c))に切替ができるように、光軸を中心として回転可能に構成されている。また、ホルダ322は上記の角度位置で固定されるよう構成されている。4分の1波長板の軸方位を0度、+45度、−45度とすることで、切替型円偏光生成手段312aを透過する光はそれぞれ、直線偏光、左円偏光、右円偏光となる。ここでは、偏光子の偏光方向を固定して4分の1波長板の軸方位を変更する構成を示したが、4分の1波長板の軸方位を固定して偏光子の軸方位を変更する構成でもかまわない。ただし、光源、分光器などに由来する光の偏光特性を考慮すると、偏光子の軸方位を固定する構成の方が好ましい。
【0031】
また、図5に示すように本実施形態では第2の光束を参照側光束として用いており、試料室16内の第2光束の光路上にはダミーの光学系324が設置される。ダミーの光学系を設置しないで測定を行ってもよいが、バランスを取るために第1の光束の光路上に設置される光学系と対応する光学系(切替型円偏光生成手段312b(偏光子318b、4分の1波長板320b)、試料保持手段316b、セル314b)を設置することが好適である。ただし、セル314bにセル314aに入れる試料と同一な試料を入れたとき、セル314bに照射する光は直線偏光となるように、ダミー光学系324の切替型円偏光生成手段312bの4分の1波長板320bの軸方位を0度に設定しておく。
【0032】
試料室16の入射窓30aから入射した第1の光束は、切替型円偏光生成手段312aにより左円偏光(もしくは右円偏光)とされ、セル314aに照射される。セル314aを透過した第1の光束は出射窓32aから試料室16外へ出射し、光検出手段18の検出器36aにて検出される。同様に試料室の入射窓30bから入射した第2の光束は、ダミー光学系324を通り、出射窓32bから試料室の外へ出射し、検出器36bにて検出される。
検出器36a,36bにて検出された検出信号はデータ処理系20に送られ、記憶手段326に記憶され、各種データ処理が行われる。データ処理系20の検出強度差演算手段328では検出器36aから得られる透過光の強度と、検出器36bから得られる透過光の強度との差(もしくは商)を求める。求めた検出強度差は記憶手段326に記憶される。上記の測定を、切替型円偏光生成手段312aの4分の1波長板320aの方位を切り替えることで、セル314aに照射する円偏光の向きを変えて実行する。
【0033】
円二色性算出手段330では、記憶手段326に記憶された、セル314aに左円偏光を照射したときの検出強度差、セル314aに右円偏光を照射したときの検出強度差とから試料の円二色性を算出する。つまり、左円偏光を照射したときの検出強度差から右円偏光を照射したときの検出強度差を減算して円二色性スペクトルを求める。また、セル314a(及びダミー光学系のセル314b)にブランク試料(測定対象の試料を溶解する溶媒等)を入れたブランク測定を行った場合には、左円偏光を照射したときの検出強度差から右円偏光を照射したときの検出強度差を減算して求めたものをバックグラウンドスペクトル(ベースライン)として用い、セルに試料を入れて測定して求めたスペクトルからバックグラウンドスペクトルを減算して円二色性スペクトルを求める。
以上のように、本実施形態の光学系付属品を用いた分光光度計によれば、一方の光束を参照光として用いることで、試料の円二色性を十分な精度で測定することが可能となる。
【0034】
次に本発明にかかる装置を用いたキラル化合物絶対配置決定方法について説明する。この決定方法は、亜鉛ポルフィリン2量体とキラル化合物とを含む試料溶液について円二色性を測定し、コットン効果の効果の符号から前記キラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法であって、ダブルビーム型分光光度計に上記の第一から第三実施形態の光学系付属品を装着した装置によって、亜鉛ポルフィリン2量体とキラル化合物とを含む試料溶液の円二色性を測定することを特徴とする。
【0035】
試料溶液の円二色スペクトル(CDスペクトル)は、通常二つのピーク、即ち一つの極大値と一つの極小値を示す。より長波長側のピークを「第1コットン効果」といい、より短波長側のピークを「第2コットン効果」という。斉誘起の機構は、亜鉛ポルフィリン2量体のポルフィリン環同士のねじれにより説明される。つまり、配位子であるキラル化合物のαまたはβ炭素に結合している最も大きな置換基と、キラル化合物が配位していないポルフィリン環(フリーのポルフィリン環)に結合したメチル基以上にバルキーな置換基との間に立体障害が生じることにより、ポルフィリンの配向にねじれが生じ、ポルフィリン間の励起子相互作用(エキシトンインターラクション)に基づく円二色性があらわれるものと理解できる。CDエキシトン・キラリテイー法によると、二つの相互に作用する電子遷移モーメントが手前から奥側に向かって時計回りに並ぶと正のキラリティーを創出し、反時計回りに並ぶと負のキラリティーを創出する。例えば、絶対配置がSであるキラル化合物がポルフィリン2量体に配位すると、手前から奥側に向かって時計回りにねじれるので、第1コットン効果の符号は「正」となる。一方、絶対配置がRであるキラル化合物がポルフィリン2量体に配位すると、手前から奥側に向かって反時計回りにねじれるので、第1コットン効果の符号は「負」となる。本発明の方法では、ポルフィリン2量体に測定対象であるキラル化合物を配位させたときに得られるCDスペクトルのコットン効果の符号によって、前記キラル化合物の絶対配置を決定することができる。
【0036】
上記の方法では、円二色性の測定を、ダブルビーム型分光光度計に上記の第一から第三実施形態の光学系付属品を装着した装置によって行っているため、円二色性測定の専用装置を使用する場合よりも、簡便かつ経済的にキラル化合物の絶対配置を決定することができる。
また、上記の方法の測定対象となるキラル化合物としては、ジアミン、モノアミン、モノアルコール、およびアミノアルコールからなる群から選択される一種の化合物であることが好適である。
【実施例1】
【0037】
以下に上記の第三実施形態の装置を用いて測定を行った例について説明する。
試料として、ビス亜鉛ポルフィリン二量体にR-(+)-1-ナフチルエチルアミンを配位させた配位化合物のジクロロメタン溶液を用いた。
ブランク測定としては、測定側の光路上に設置されるセル、参照側(ダミー光学系)の光路上に設置されるセルの両方にジクロロメタンをセットし、切替型円偏光生成手段の4分の1波長板の軸を偏光子に対し+45度の角度に設定して、左円偏光における吸収スペクトルの測定を行った。その後、偏光子に対し4分の1波長板を−45度の角度に回転させて、右円偏光での吸収スペクトルを測定した。こうして得られた左と右の円偏光における吸収スペクトルの差をベースラインとした。
【0038】
次に測定側の光路上に設置されるセル、参照側(ダミー光学系)の光路上に設置されるセルの両方のセルに試料(ビス亜鉛ポルフィリン二量体にR-(+)-1-ナフチルエチルアミンを配位させた配位化合物のジクロロメタン溶液)をセットし、ベースライン測定と同じ測定を行った。得られたスペクトルからベースラインを差し引いてCDスペクトルを得た。得られたスペクトルは図7に示したものであり、専用のCD測定装置で測定して得られるものと基本的に同一であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ダブルビーム型の分光光度計の概略構成図
【図2】本発明にかかる第1実施形態の光学系付属品の概略構成図
【図3】本発明にかかる第2実施形態の光学系付属品を取り付けた分光光度計の概略構成図
【図4】第2実施形態の装置を用いた円二色性測定の説明図
【図5】本発明にかかる第3実施形態の光学系付属品を取り付けた分光光度計の概略構成図
【図6】第3実施形態の光学系付属品の左右円偏光切替機構の説明図
【図7】円二色性スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0040】
10 分光光度計
12 光出射手段
14 光分割手段
16 試料室
18 光検出手段
20 データ処理系
110 第1実施形態の光学系付属品
112a,b 偏光子
114 4分の1波長板
118 試料保持手段
210 第2実施形態の光学系付属品
214a 第1の試料保持手段
214b 第2の試料保持手段
216a 左円変更生成手段
216b 右円偏光生成手段
310 第3実施形態の光学系付属品
312a 切替型円偏光生成手段
316a 試料保持手段
324 ダミー光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計の試料室に着脱自在な、円二色性を測定するための光学系付属品であって、
該光学系付属品は、前記一方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第1の偏光子と、他方の光束の光路上に設置され、該光束を直線偏光とする第2の偏光子と、第1および第2の偏光子からの直線偏光を互いに逆向きの円偏光とする4分の1波長板と、該4分の1波長板からの左右円偏光が照射される試料を保持する試料保持手段とを備え、前記4分の1波長板を透過した光が試料保持手段に保持される試料の略同一点に照射するように、前記第1、第2の偏光子、および前記4分の1波長板を配置した光学系付属品。
【請求項2】
光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計の試料室に着脱自在な、円二色性を測定するための光学系付属品であって、
該光学系付属品は、前記試料室内の一方の光束の光路上に設置される試料を保持する第1の試料保持手段と、他方の光束の光路上に設置される試料を保持する第2の試料保持手段と、各試料保持手段の光照射側に設置され、左円偏光および右円偏光を生成する左円偏光生成手段および右円偏光生成手段とを備え、
左円偏光生成手段および右円偏光生成手段は各々偏光子と4分の1波長板とを含み、
前記左円偏光生成手段と右円偏光生成手段とは、その配置位置が入れ替え可能に構成され、前記第1の試料保持手段側に左円偏光、第2の試料保持手段側に右円偏光を照射する第1の照射状態と、前記第1の試料保持手段側に右円偏光、第2の試料保持手段側に左円偏光を照射する第2の照射状態と、を切替可能な光学系付属品。
【請求項3】
光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計の試料室に着脱自在な、試料の円二色性を測定するための光学系付属品であって、
前記一方の光束を測定側光束、他方の光束を参照側光束とし、
該光学系付属品は、前記測定光側光束の光路上に配置され、生成する円偏光の向きが切替可能な切替型円偏光生成手段と、該切替型円偏光生成手段からの円偏光が照射される試料を保持する試料保持手段と、を備え、
前記切替型円偏光生成手段は、偏光子と4分の1波長板とを備え、偏光子の偏光方向と前記4分の1波長板の軸の方向との角度を相対的に変更できるように構成された光学系付属品。
【請求項4】
請求項3に記載の光学系付属品において、
前記光学系付属品は、前記試料室内の参照側光束の光路上に、ダミーの光学系を設けた光学系付属品。
【請求項5】
光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計と、請求項2に記載の光学系付属品と、を備え、円二色性の測定を行う分光光度計であって、
前記光検出手段にて検出した第1の試料保持手段側からの試料の透過光の強度と、第2の試料保持手段側からの試料の透過光の強度との差もしくは商を求める検出強度差演算手段と、
前記第1および第2の試料保持手段に円二色性の測定対象となる同一の試料を設置したときの前記第1の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差および前記第2の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差、前記第1および第2の試料保持手段に同一のブランク試料を設置したときの前記第1の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差および前記第2の照射状態での前記検出強度差演算手段にて求めた検出強度差を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された、円二色性の測定対象となる試料を設置したときの第1の照射状態および第2の照射状態での検出強度差と、ブランク試料を設置したときの第1の照射状態および第2の状態での検出強度差とから前記測定対象となる試料の円二色性を算出する円二色性算出手段と、を備えた分光光度計。
【請求項6】
光出射手段から放射された光を二つの光束に分割し、該二つの光束を試料室に導入し、該試料室から出射した二つの光束をそれぞれ光検出手段で検出するダブルビーム型分光光度計と、請求項3または4に記載の光学系付属品と、を備え、円二色性の測定を行う分光光度計であって、
前記光検出手段にて検出した測定側光束の強度と、参照側光束の強度との差もしくは商を求める検出強度差演算手段と、
前記測定側光束の光路上の試料保持手段に保持された試料に右円偏光を照射したときの検出強度差演算手段にて求めた検出強度差と、該試料に左円偏光を照射したときの検出強度演算手段にて求めた検出強度差とを記憶する記憶手段と、
該記憶手段にて記憶された検出強度差から試料の円二色性を算出する円二色性算出手段と、を備えた分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101280(P2007−101280A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289531(P2005−289531)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】