説明

光学素子、およびその製造方法、表示装置、ならびに太陽電池

【課題】優れた転写性を有する光学素子を提供する。
【解決手段】光学素子は、表面を有する基体と、表面に可視光の波長以下のピッチで配列された複数の構造体とを備える。複数の構造体は、ポリシラザン化合物を含む形状転写材料に原盤の凹凸形状を転写し、凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学素子、およびその製造方法、それを備えた表示装置、ならびに太陽電池に関する。詳しくは、原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写して作製される光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高い光透過性と低い光反射性とを両立させた光学機能体として、車両用ガラスの視認性向上、光センサーや光学レンズなどの感度向上、採光窓や太陽電池の光取り込み効率向上、ディスプレイデバイスの視認性向上などを目的として、ガラス表面やフィルム表面に反射防止構造を設ける技術が利用されている。
【0003】
このような反射防止構造に関する技術としては、ガラス表面やフィルム表面に微細形状を形成する技術が知られている。微細形状を形成する技術としては、多孔質膜を利用する技術(例えば特許文献1、2参照)、ナノ周期の凹凸構造を利用する技術(例えば特許文献3、4参照)などが用いられている。
【0004】
近年、微細構造体を用いた反射防止膜の形成方法としては種々のものが検討されているが、高温で被成形材料に金型(モールドともいう。)の形状を転写する、いわゆる熱ナノインプリント法が広く用いられている。被成形材料としては、PC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメチルメタアクリレート)などの熱可塑性樹脂が一般的に用いられている。このように熱可塑性樹脂を用いて微細構造体を形成する技術は、さまざまな構造を比較的容易に設計できる利点を有している。
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂を用いて微細構造体を形成すると、擦過性や耐紫外線性、耐水性、耐温度サイクル性などの耐久性が低下してしまうという問題がある。そこで、この問題を解決すべく、被成形材料として、ガラスに代表される酸化物により微細構造体を形成する技術が検討されており、ガラス融点付近での高温高圧印加による転写技術が提案されている。例えば特許文献5には、無機材料により微細構造体を形成する技術として、溶融させたガラスをモールドに押し付けて形状を転写する技術が報告されている。
【0006】
しかしながら、無機材料、特にガラスを用いた場合には、異なる材料同士での熱膨張係数の違いや、型からの転写性が低い点に問題がある。昇温、冷却サイクルに時間がかかり、短いとクラックなどの破損が生じる。また、従来熱転写に用いるガラスは低融点ガラスを用いることが多く、低融点化のために添加するアルカリ成分や無機材料が耐候性、光透過性、耐薬品性などを悪化させる。また、溶融粘度を下げにくいため、形状の転写性が低い。
【0007】
そこで、上述の問題点を解決すべく、室温にて無機材料を転写する技術が検討されている。例えば特許文献6には、スピンオングラス(Spin On Glass、以下SOGと称する。)材料の塗布膜に型を押し付けて、形状を転写する技術が報告されている。
【0008】
SOG材料に使用されているものは、シロキサンの化学構造により、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー(MSQ)、水素化シルセスキオキサンポリマー(HSQ)、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー(HOSP)などに分類できる。
【0009】
市販材料としては、ハネウエル社製のものとして、シリカガラスとして第1世代無機SOG(無機SOG−1という)、HSQとして第2世代無機SOG(無機SOG−2という)(T−11/T−12/T−14)、アルキルシロキサンポリマーとして第1世代有機SOG(有機SOG−1という)、MSQ(T−18)とHOSP(T−24)として第2世代有機SOG(有機SOG−2という)などがある。
【0010】
東京応化株式会社製のものとして、OCD T−2 Si−5900−SGなどのOCDシリーズを挙げることができる。これらには、更に添加剤(ガラス質形成剤、有機バインダーなど)を加えて変性調製(変形)も可能である。
【0011】
ダウコーニング社製のものとして、HSQである商品名FOXを挙げることができる。これは、H2(SiO)3の籠型構造高分子であり、このポリマーを使用した場合には、低温プリベーク後、型押しすることにより被加工材料表面に微細SiO2パターンを形成することができる。なお、SOGとは、これらの溶液と形成される膜の総称である(例えば特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−215542号公報
【0013】
【特許文献2】特開2005−221911号公報
【0014】
【特許文献3】特開2006−178147号公報
【0015】
【特許文献4】特開2007−322572号公報
【0016】
【特許文献5】特許第2751131号公報
【0017】
【特許文献6】特許第4208447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、微細構造体を形成するための被成形材料として、SOG材料を用いる技術が報告されている。しかしながら、従来、SOG材料には溶媒が多量に含まれており、溶媒が除去されると、速やかに硬化反応が進み形状の転写性が乏しくなるという問題がある。また、形状転写できたとしても膜の粘度が高いため、設計どおりの転写ができないという問題もある。微細構造体がナノ微細構造体である場合には、転写性が顕著に低下する。
【0019】
したがって、この発明の目的は、転写性に優れた光学素子、およびその製造方法、それを備えた表示装置、ならびに太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写する工程と、
凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、複数の構造体を表面に有する光学素子を形成する工程と
を備え、
形状転写材料は、ポリシラザン化合物を含み、
複数の構造体は、可視光の波長以下のピッチで配列されている光学素子の製造方法である。
【0021】
第2の発明は、
原盤の凹凸形状を形状転写材料に密着させる工程と、
原盤を密着させた状態で形状転写材料を硬化し、原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写することにより、複数の構造体を表面に有する光学素子を形成する工程と
を備え、
形状転写材料は、ポリシラザン化合物を含み、
複数の構造体は、可視光の波長以下のピッチで配列されている光学素子の製造方法である。
【0022】
第3の発明は、
表面を有する基体と、
表面に可視光の波長以下のピッチで配列された複数の構造体と
を備え、
複数の構造体は、
ポリシラザン化合物を含む形状転写材料に原盤の凹凸形状を転写し、凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより得られる光学素子である。
【0023】
第4の発明は、
表面を有する基体と、
表面に可視光の波長以下のピッチで配列された複数の構造体と
を備え、
複数の構造体は、
ポリシラザン化合物を含む形状転写材料に原盤の凹凸形状を密着させ、原盤を密着させた状態で形状転写材料を硬化し、原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写させることにより得られる光学素子である。
【0024】
第1および第2の発明では、ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンまたはその変性物であることが好ましい。また、形状転写材料が、金属酸化物を主成分とする粒子をさらに含み、金属酸化物が、珪素、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0025】
第1の発明では、硬化の工程では、熱および水蒸気による処理により、凹凸形状が転写された形状転写材料の一部または全部を酸化することが好ましい。また、転写の工程では、形状転写材料に対して基体を密着させた状態にて、形状転写材料に対して原盤の凹凸形状を転写し、硬化の工程では、凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、基体上に複数の構造体を直接形成することが好ましい。また、転写の工程では、形状転写材料と基体との間に接着材を介在させて、形状転写材料に対して原盤の凹凸形状を転写し、硬化の工程では、凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、基体上に複数の構造体を接着材を介して形成することが好ましい。この接着材は、ポリシラザン化合物、シロキサン結合を有する化合物、または珪酸アルカリ塩を含んでいることが好ましい。また、形状転写材料および接着材は、金属酸化物を主成分とする粒子をさらに含み、金属酸化物が、珪素、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0026】
第2の発明では、密着の工程では、基体の一主面と原盤の凹凸形状との間に形状転写材料が介在されるようにして、原盤の凹凸形状を形状転写材料に密着させ、転写の工程では、原盤を密着させた状態で形状転写材料を硬化させることにより、基体上に複数の構造体を直接形成することが好ましい。また、密着の工程では、基体の一主面と原盤の凹凸形状との間に形状転写材料と接着材とが介在されるようにして、原盤の凹凸形状を形状転写材料に密着させ、転写の工程では、原盤を密着させた状態で形状転写材料を硬化させることにより、基体上に複数の構造体を接着材を介して形成することが好ましい。この接着材は、ポリシラザン化合物、シロキサン結合を有する化合物、または珪酸アルカリ塩を含んでいることが好ましい。また、形状転写材料および接着材は、金属酸化物を主成分とする粒子をさらに含み、金属酸化物が、珪素、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0027】
第1の発明では、微細構造体は、エネルギー線を用いて形状転写材料を硬化させることで転写処理が施されることが好ましい。また、転写の工程では、原盤を溶解および/または膨潤させることにより、原盤を形状転写材料から除去することが好ましい。この原盤は、基体と、基体上に形成された微細形状層とを備え、転写の工程では、基体を溶解するとともに、微細形状層を膨潤させることにより、原盤を形状転写材料から除去することが好ましい。
【0028】
第2の発明では、転写の工程は、原盤を密着させた状態で形状転写材料を硬化させ工程と、原盤を溶解および/または膨潤させることにより、原盤を形状転写材料から除去する工程とを備えることが好ましい。第3または第4の発明では、構造体と基体との間に接着材をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、この発明によれば、優れた転写性を有する光学素子の製造方法を実現することができる。この製造方法により光学素子を製造することで、優れた反射防止特性を有する光学素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の概観を示す斜視図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2A〜図2Eは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図3】図3A〜図3Fは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図4】図4A〜図4Fは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図5】図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学素子の概観を示す斜視図である。図5Bは、本発明の第2の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施形態に係る表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第5の実施形態に係る表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第6の実施形態に係る半導体パッケージの一構成例を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第7の実施形態に係る太陽電池の一構成例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第8の実施形態に係る太陽電池モジュールの一構成例を示す断面図である。
【図12】図12は、硬化時間の違いによるIRスペクトルの一例を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例6、比較例1の光学素子の分光特性を示すグラフである。
【図14】図14A〜図14Cは、実施例6の転写用光学素子、複製原盤、および光学素子のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(光学素子の第1の例)
2.第2の実施形態(光学素子の第2の例)
3.第3の実施形態(光学素子の第3の例)
4.第4の実施形態(表示装置に対する第1の適用例)
5.第5の実施形態(表示装置に対する第2の適用例)
6.第6の実施形態(半導体素子パッケージに対する適用例)
7.第7の実施形態(太陽電池に対する適用例)
8.第8の実施形態(太陽電池モジュールに対する適用例)
【0032】
<1.第1の実施形態>
[光学素子の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の概観を示す斜視図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。光学素子1は、両主面(第1の主面および第2の主面)を有し、両主面のうちの少なくとも一方の面に、凸状である複数の構造体2aを備える。具体的には、光学素子1は、両主面を有する基体3と、この基体3の少なくとも一方の面に設けられた微細形状層2とを備える。また、光学素子1は、必要に応じて、基体3と微細形状層2との間に接着層4をさらに備えるようにしてもよい。なお、図1Aおよび図1Bでは、光学素子1が基体3の一方の面にのみ複数の構造体2aを備える例が示されている。
【0033】
(基体)
基体3の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。また、基体3は、上述したように第1の主面および第2の主面からなる両主面を有する。これらの主面の形状は平面形状に限定されるものではなく、光学素子1の用途に応じて曲面形状および多角形状などとしてもよい。曲面形状としては、例えば、球面状、自由曲面状、放物面状などが挙げられる。
【0034】
基体3は、透明性を有する透明基体であり、例えば、ガラスなどの無機材料、高分子樹脂材料などの有機材料、またはそれらのハイブリッド材料を主成分としている。ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。高分子樹脂材料しては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0035】
(微細形状層)
反射防止層である微細形状層2の表面には、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下のピッチで複数の構造体2aが配列されている。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜360nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。
【0036】
複数の構造体2aは、例えば、微細形状層2の表面に2次元配列されている。2次元配列の配列形態として、例えば、三角形、四角形、六角形または八角形などの多角形の格子状が挙げられる。また、配列形態は周期構造に限定されるものではなく、ランダム構造をなすようにしてもよい。2次元配列される構造体2aの形状としては、例えば、円柱状、円錐状、頂部に曲率Rが付された円錐状、切頭円錐状、多角錐、針状などを挙げることができる。微細形状層2は、ガラスなどの無機材料、またはガラスなどの無機材料と高分子樹脂材料とからなるハイブリッド材料を主成分として含んでいることが好ましい。微細形状層2を形成するための材料としては、低粘度を有し、かつ、ガラス化する材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ポリシラザン化合物を用いることが好ましい。ポリシラザン化合物としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン(以下PHPSと称する。)またはその変性物を用いることができ、両者を混合して用いるようにしてもよい。
【0037】
PHPSとしては、例えば、以下の一般式(1)で示す基本構造を有しているものを用いることができる。
−SiR1R2−NR3 ・・・(1)
(但し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアミノ基、アルキルシリル基、またはアルコキシ基である。)
【0038】
微細形状層2の平均膜厚は、構造部分を平滑化した平滑面換算で0.05μm以上が好ましい。また、微細形状層2がPHPS単体を主成分とする場合には、微細形状層2の平均膜厚は、1μm以下であることが好ましい。1μmを超えると、形状転写用材料を硬化した際に、微細形状層2が収縮して微細形状層2にクラックが発生する傾向があるからである。微細形状層2の膜厚を1μmを超えて厚くする場合には、酸化物微粒子および/またはポリマーを形状転写材料にさらに含有させ、微細形状層2をハイブリッド層とすることが好ましい。このようにすることで、微細形状層2の膜厚が1μmを超える場合であっても、微細形状層2にクラックが発生することを抑制できる。但し、ポリマー成分が多くなると、高温焼成時に微細形状層2が褐変もしくは白濁し、透明性が低下する傾向があるため、ポリマーの含有量を適宜調製することが好ましい。
【0039】
微細形状層2に添加する酸化物微粒子としては、例えば、金属の酸化物を主成分とするものを用いることができ、単一のみならず2種以上の酸化物粒子を微細形状層2に含有させるようにしてもよい。金属の酸化物としては、例えば、TiO2、ZrO2、ITO、GZO、CeO2、Al23、TiO2などを用いることができる。微細形状層2に添加するポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂を用いることができる。
【0040】
形状転写用材料の粘度は、3000cPs以下が好ましく、1000cPs以下がさらに好ましく、500cPs以下が最も好ましい。
【0041】
PHPSは多くの高分子樹脂材料と任意の混合比で混合することができ、被着物に合わせて高分子樹脂材料を選定することが好ましい。高分子樹脂材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂などのエネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの硬化型樹脂を用いることができる。高温処理が不要な場合には、樹脂量が90質量部でも耐擦過性向上の効果が得られる。高分子樹脂材料に対して、開始剤、硬化剤および反応性希釈剤などを適宜添加して使用してもよい。
【0042】
紫外線硬化材料は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等からなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチルアクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0043】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0044】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0045】
熱可塑性を有し、透明な樹脂としてはエポキシ樹脂が良く、シロキサン結合、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを含んでも良い。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、DPP(ジ−n−ペンチルフタレート)型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやビニルシクロヘキセンジエポキサイド等の脂環式エポキシ樹脂、TGPS(トリグリシドキシフェニルシラン)や3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の含ケイ素エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を1個有するグリシジルエーテル等が挙げられる。また上記エポキシ樹脂の核水添化物も使用できる。
【0046】
(接着層)
接着層4は、例えば、紫外線硬化型樹脂などのエネルギー線硬化型樹脂、ポリシラザン化合物、シロキサン結合を有する化合物、および珪酸アルカリ塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。また、接着層4が酸化物微粒子および/またはポリマーをさらに含有するようにしてもよい。酸化物微粒子および/またはポリマーとしては、上述の微細形状層2に含有させるものと同様にものを用いることができる。
【0047】
[光学素子の製造方法]
次に、図2A〜図4Fを参照しながら、上述の構成を有する光学素子の製造方法の一例について説明する。
【0048】
(レジスト成膜工程)
まず、図2Aに示すように、原盤(第1の原盤)11の表面にレジスト層12を形成する。原盤11としては、例えば、板状、円筒状、または円柱状のガラス原盤などを用いることができる。レジスト層12の材料としては、例えば、有機系レジストまたは無機系レジストを用いることができる。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、タングステンやモリブデンなどの1種または2種以上の遷移金属からなる金属酸化物を用いることができる。
【0049】
(露光工程)
次に、図2Bに示すように、原盤11のレジスト層12に対して、レーザー光または電子線などの露光ビーム13を照射する。これにより、露光ビーム13の軌跡に応じた潜像12aが、例えば可視光波長以下の微細ピッチでレジスト層12のほぼ全面にわたって形成される。この潜像12aは、例えば、原盤表面において、光学素子1の構造体2aの配置パターンに対応した露光パターンを形成する。
【0050】
(現像工程)
次に、例えば、原盤11を回転させながら、レジスト層12上に現像液を滴下して、図2Cに示すように、レジスト層12を現像処理する。図示するように、レジスト層12をポジ型のレジスト材料により形成した場合には、露光ビーム13で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)12aに応じたパターンがレジスト層12に形成される。
【0051】
(エッチング工程)
次に、原盤11の表面上に形成されたレジスト層12のパターン(レジストパターン)をマスクとして、原盤11の表面をエッチング処理する。これにより、図2Dに示すように、凹状を有する複数の構造体11aが原盤11の表面に形成される。次に、図2Eに示すように、O2アッシングなどによりレジスト層12を除去する。これにより、目的とする原盤11が得られる。
【0052】
(転写用原盤の形成工程)
次に、図3Aに示すように、原盤11の凹凸面上に形状転写用材料21aを塗布する。なお、後述する基体22(図3B参照)の一主面、または原盤11の凹凸面と基体22の一主面との両面に対して、形状転写材料21aを塗布するようにしてもよい。塗布方法としては、液体状の材料を塗布面上にほぼ均一に塗布可能な方法であればよく特に限定されるものではないが、例示するならば、スピンコート法、ロールコート法、リバースコート法、ブレードコート法、スプレー法、ディッピング法、ラミナーフローコーティング法などを挙げることができる。次に、図3Bに示すように、原盤11の凹凸面と基体22とを形状転写用材料21を介して重ね合わせる。基体22の材料としては、例えば、光学素子1の基体3と同様のものを用いることができ、後述する転写原盤23(図3D参照)に対して可撓性を付与する観点からすると、プラスチックなどの高分子材料を用いることが好ましい。形状転写用材料21としては、例えば、紫外線硬化型樹脂などの感光性樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂など高分子樹脂材料を用いることができる。次に、原盤11の凹凸面と基体22との間に介在された形状転写用材料21に対して、紫外線などの光照射、電子線照射、または加熱処理などを施す。これにより、形状転写用材料21aが硬化し、転写用微細形状層21が得られる。次に、図3Cに示すように、基体22と微細形状層22との積層体を、原盤11から剥離する。これにより、図3Dに示すように、転写用原盤(第2の原盤)23が得られる。
【0053】
(複製原盤の作製)
次に、図3Eに示すように、転写用原盤23の凹凸面上に形状転写用材料31aを塗布する。なお、後述する基体32(図3F参照)の一主面、または転写用原盤23の凹凸面と基体32の一主面との両面に対して、形状転写用材料31aを塗布するようにしてもよい。形状転写用材料31aおよびその塗布方法としては、例えば、上述の形状転写用材料21aおよびその塗布方法として例示したものを用いることができる。次に、図3Fに示すように、転写用原盤23と基体32とを、形状転写用材料31aを介して重ね合わせる。基体32の材料としては、例えば、上述の基体32の材料として例示したものを用いることができる。次に、転写用原盤11の凹凸面と基体32との間に介在された形状転写用材料31aに対して、紫外線などの光照射、電子線照射、または加熱処理などを施す。これにより、形状転写用材料31aが硬化し、転写用微細形状層31が得られる。次に、図4Aに示すように、基体32と転写用微細形状層32との積層体を、転写用原盤33から剥離する。これにより、図4Bに示すように、複製原盤(第3の原盤)33が得られる。
【0054】
複製原盤33を作製する際に、紫外線硬化型樹脂などの形状転写用材料31aにフッ素含有モノマー(FA−108:共栄社化学株式会社製)、シリコーン離型剤などを添加することが好ましい。後工程において光学素子1の複製原盤33からの離型性が向上するからである。また、シリコーンを用いる場合には不要であるが、離型剤を添加するとより離型性が向上する。複製原盤を溶解除去する場合には塗布する必要は無い。また、離型性の向上の観点から、金属膜または酸化物膜などを真空蒸着法または真空スパッタ法などの成膜方法で、複製原盤33の凹凸面に成膜することが好ましい。これらの金属膜または酸化物膜の膜厚は、例えば5nm〜10nm程度の範囲に選ばれる。
【0055】
(光学素子の作製工程)
次に、図4Cに示すように、複製原盤33の凹凸面上に形状転写用材料2cを塗布する。なお、基体3の一主面、または転写用原盤33の凹凸面と基体3の一主面との両面に対して、形状転写用材料2cを塗布するようにしてもよい。形状転写用材料2cおよびその塗布方法としては、例えば、上述の形状転写用材料21aおよびその塗布方法として例示したものを用いることができる。次に、図4Dに示すように、転写用原盤33と基体3とを、形状転写用材料2cを介して重ね合わせる。この際、必要に応じて、基体3と形状転写用材料2cとの間に、接着層4をさらに介在させるようにしてもよい。このように接着層4を介在させた場合、接着層4が紫外線硬化型樹脂などのエネルギー線硬化型樹脂を含んでいる場合には、接着層4に対して紫外線などのエネルギー線を照射させることが好ましい。これにより、基体3と微細形状層2とが接着層4により貼り合わされ、基体3と微細形状層2とを積層体として複製原盤33から剥離可能となる。次に、基体3と微細形状層2とからなる積層体を複製原盤33から剥離する。これにより、複製原盤33の凹凸形状が転写された微細形状層2が基体3上に形成される。次に、微細形状層2の一部または全部を酸化することにより、微細形状層2を硬化させる。以上により、図4Fに示す光学素子1が得られる。
【0056】
(変形例)
上述の第1の実施形態では、形状転写用材料2cに複製原盤33の凹凸形状を転写した後、凹凸形状が転写された形状転写材料2cを硬化することにより、複製原盤から光学素子1を作製する場合を例として説明したが、光学素子1の作製方法はこの例に限定されるものではない。例えば、以下のようにして複製原盤33から光学素子1を作製するようにしてもよい。
【0057】
まず、複製原盤33の凹凸面上に形状転写用材料2cを塗布する。なお、上述の第1の実施形態と同様に、基体3の一主面、または転写用原盤33の凹凸面と基体3の一主面との両面に対して、形状転写用材料2cを塗布するようにしてもよい。次に、複製原盤33と基体3とを、形状転写用材料2cを介して重ね合わせる。この際、必要に応じて、基体3と形状転写用材料2cとの間に、接着層4をさらに介在させるようにしてもよい。次に、複製原盤33の凹凸面に形状転写用材料を密着させた状態において、形状転写用材料2cを硬化させることにより、微細形状層2が形成される。次に、基体3と微細形状層2とからなる積層体を複製原盤33から剥離する。これにより、目的とする光学素子1が得られる。
【0058】
上述したように、第1の実施形態では、周期凹凸構造を基体表面に転写することで、比較的穏やかな条件で、速やかに角度依存性が少ない反射防止膜を形成することができる。したがって、形成材料と基材に無機材料を用いることによって、耐候性が高い反射防止膜を安価に製造することができるようになる。
【0059】
従来の反射防止構造としては、多層膜や微細形状付与などが挙げられるが、多層膜では光の入射角度依存性が大きく、低反射率と広角度での反射防止効果が両立できない。また、多孔質や周期凹凸構造を付与する反射防止膜では微細構造を形成するのが高温、高圧が必要であるなど複雑な工程を含むため、簡略化できない。
【0060】
従来、生産性向上を目的とした技術として、SOG材料などの前躯体を塗布して無機転化処理を施す技術が提案されている。しかしながら、この技術では、高粘度溶液ではナノからサブマイクロメートルの構造を転写する際に、転写性が悪い、もしくは残留溶媒による微小な気泡が発生することに起因する光散乱で透過率が低下するといった問題がある。
【0061】
これに対して、第1の実施形態に係る光学素子の製造方法では、耐紫外線性、耐水性、耐擦過性などの耐久性を有する微細構造体を、転写法を用いてさまざまな微細形状で高効率で製造できるようになる。また、耐擦過性のみを付与したい場合は、接着層に樹脂を用いることもできるが、その際は基板と微細構造形成材料の屈折率を考慮して、屈折率が近いものを採用したり、膜厚方向に傾斜組成を付与したりできる。
【0062】
比較的低温で低粘度の溶液を用いて形状を転写するプロセスを用いることで、微細形状を形成する際の高温処理が不要になり、熱転写では転写困難な形状の設計が可能になる。高温での転写が無い場合、可とう性を有する樹脂などで型を作製し、繰り返し使用できるために、生産性が向上する。型に追従性を付与できるため、曲面や凹凸形状表面にも低反射膜の形成が可能となる。
【0063】
転写型に用いる材料は有機材料でも無機材料でも問わないが、形状の転写性、生産性を考慮すると有機材料が好ましい。また、残留溶媒や反応時に発生するガスを逃がすために、基材を用いる場合には、ガスの透過性が高いフィルムを用いることがより好ましい。転写型はできれば再利用するが、溶解させて除去してもよい。
【0064】
<2.第2の実施形態>
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学素子の概観を示す斜視図である。図5Bは、本発明の第2の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。
【0065】
第2の実施形態に係る光学素子1は、凹状を有する複数の構造体3が基体表面に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。この構造体3の形状は、第1の実施形態における構造体3の凸形状を反転して凹形状としたものである。この第2の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0066】
この第2の実施形態では、第1の実施形態における凸状の構造体2aの形状を反転して凹状の構造体2aとしているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
<3.第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光学素子の一構成例を示す斜視図である。図6に示すように、第3の実施形態に係る光学素子1は、複数の構造体2aが1次元元配列されている点において、第1の実施形態とは異なっている。このような配列形態を有する光学素子1としては、例えば、ワイヤーグリッド偏光板が挙げられる。1次元配列の配置形態としては、例えば、ストライプ状、同心円状などが挙げられる。また、配列形態は周期構造に限定されるものではなく、ランダム構造をなすようにしてもよい。1次元配列される構造体2aの形状としては、例えば、微細形状層2の表面にて一方向に延在された柱状形状が挙げられる。このような柱状形状としては、プリズム形状、レンチキュラー形状、トロイダル形状などが挙げられる。
【0068】
<4.第4の実施形態>
[液晶表示装置の構成]
図7は、本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す。図7に示すように、この液晶表示装置は、光を出射するバックライト53と、バックライト53から出射された光を時間的空間的に変調して画像を表示する液晶パネル51とを備える。液晶パネル51の両面にはそれぞれ、偏光子51a、51bが設けられている。液晶パネル51の表示面側に設けられた偏光子51bには、光学素子1が設けられている。本発明では、光学素子1が一主面に設けられた偏光子51bを反射防止機能付き偏光子52と称する。
以下、液晶表示装置を構成するバックライト53、液晶パネル51、偏光子51a、51b、および光学素子1について順次説明する。
【0069】
(バックライト)
バックライト53としては、例えば直下型バックライト、エッジ型バックライト、平面光源型バックライトを用いることができる。バックライト53は、例えば、光源、反射板、光学フィルムなどを備える。光源としては、例えば、冷陰極蛍光管(Cold Cathode Fluorescent Lamp:CCFL)、熱陰極蛍光管(Hot Cathode Fluorescent Lamp:HCFL)、有機エレクトロルミネッセンス(Organic ElectroLuminescence:OEL)、無機エレクトロルミネッセンス(IEL:Inorganic ElectroLuminescence)および発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などが用いられる。
【0070】
(液晶パネル)
液晶パネル51としては、例えば、ツイステッドネマチック(Twisted Nematic:TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(Super Twisted Nematic:STN)モード、垂直配向(Vertically Aligned:VA)モード、水平配列(In-Plane Switching:IPS)モード、光学補償ベンド配向(Optically Compensated Birefringence:OCB)モード、強誘電性(Ferroelectric Liquid Crystal:FLC)モード、高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal:PDLC)モード、相転移型ゲスト・ホスト(Phase Change Guest Host:PCGH)モードなどの表示モードのものを用いることができる。
【0071】
(偏光子)
液晶パネル51の両面には、例えば偏光子51a、51bがその透過軸が互いに直交するようにして設けられる。偏光子51a、51bは、入射する光のうち直交する偏光成分の一方のみを通過させ、他方を吸収により遮へいするものである。偏光子51a、51bとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸させたものを用いることができる。偏光子51a、51bの両面には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの保護層を設けることが好ましい。このように保護層を設ける場合、光学素子1の基体3が保護層を兼ねる構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、反射防止機能付き偏光子52を薄型化できるからである。
【0072】
(光学素子)
光学素子1は、上述の第1または第2の実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
【0073】
第4の実施形態によれば、液晶表示装置の表示面に光学素子1を設けているので、液晶表示装置の表示面の反射防止機能を向上することができる。したがって、液晶表示装置の視認性を向上することができる。
【0074】
<5.第5の実施形態>
[液晶表示装置の構成]
図8は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す。図8に示すように、この液晶表示装置は、液晶パネル51の前面側に前面部材54を備え、液晶パネル51の前面、前面部材54の前面および裏面の少なくとも1つの面に、光学素子1を備える点において、第3の実施形態のものとは異なっている。図7では、液晶パネル51の前面、ならびに前面部材54の前面および裏面のすべての面に、光学素子1を備える例が示されている。液晶パネル51と前面部材54との間には、例えば空気層が形成されている。上述の第3の実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。なお、本発明において、前面とは表示面となる側の面、すなわち観察者側となる面を示し、裏面とは表示面と反対となる側の面を示す。
【0075】
前面部材54は、液晶パネル51の前面(観察者側)に機械的、熱的、および耐候的保護や、意匠性を目的として用いるフロントパネルなどである。前面部材54は、例えば、シート状、フィルム状、または板状を有する。前面部材54の材料としては、例えば、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)などを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、透明性を有する材料であれば用いることができる。
【0076】
第5の実施形態によれば、第4の実施形態と同様に、液晶表示装置の視認性を向上することができる。
【0077】
<6.第6の実施形態>
図9は、本発明の第6の実施形態に係る半導体素子パッケージの一構成例を示す断面図である。図9に示すように、半導体素子パッケージ61は、パッケージ62と、このパッケージ62内の所定位置に実装される半導体素子64とを備える。パッケージ62は、その開口窓を覆うように固着されたカバーガラス63を備える。半導体素子64としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)イメージセンサ素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ素子などを用いることができる。カバーガラス63としては、上述の第1〜第3の実施形態に係る光学素子のいずれかのものを用いることができる。
【0078】
<7.第7の実施形態>
図10は、本発明の第7の実施形態に係る太陽電池の一構成例を示す断面図である。
図10に示すように、光電変換装置である太陽電池71は、基体72上に、透明導電膜73、p型アモルファスシリコン層74、i型アモルファスシリコン層75、n型アモルファスシリコン層76、裏面電極77を、この順序で順次積層した構成を有している。基体72は、太陽光が入射する入射面側に設けられている。基体72としては、上述の第1〜第3の実施形態に係る光学素子のいずれかのものを用いることができる。
【0079】
<8.第8の実施形態>
図11は、本発明の第8の実施形態に係る太陽電池モジュールの一構成例を示す断面図である。図11に示すように、光電変換装置である太陽電池モジュール81は、透明樹脂層83と、この透明樹脂層内設けられた複数の太陽電池セル82と、透明樹脂層83の周囲に設けられた外枠84とを備える。透明樹脂層83の一主面には、受光ガラス86が設けられている。また、必要に応じて、受光ガラス86上に機能層87がさらに設けられた構成としてもよい。透明樹脂層83の他主面には、耐候性バリアフィルム88が設けられている。また、透明樹脂層83の他主面側(裏面側)には、取り出し端子85が設けられ、この取り出し端子85は太陽電池セル82に対して接続されている。
【0080】
機能層87としては、例えば、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防眩層、防湿層、粘着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層などが挙げられ、これらは1層単独で、または2層以上を任意に組み合わせて用いることができる。この太陽電池モジュール81は、特に太陽光照射での発熱による太陽電池の発電効率低下を低減するために、熱線遮断層を有することが好ましい。受光ガラス86としては、例えば上述の第1〜第3の実施形態に係る光学素子のいずれかのものを用いることができ、複数の構造体は受光ガラスの表面、裏面または両面に設けられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラス原盤の表面に以下のようにしてレジストを着膜した。すなわち、シンナーでフォトレジストを1/10に希釈し、この希釈レジストをディップによりガラスロール原盤の円柱面上に厚さ130nm程度に塗布することにより、レジストを着膜した。次に、記録媒体としてのガラス原盤をロール原盤露光装置に搬送し、レジストを露光することにより、1つの螺旋状に連なるとともに、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジストにパターニングされた。
【0083】
具体的には、六方格子パターンが形成されるべき領域に対して、前記ガラスロール原盤表面まで露光するパワー0.50mW/mのレーザー光を照射し凹形状の準六方格子パターンを形成した。なお、トラック列の列方向のレジスト厚さは120nm程度、トラックの延在方向のレジスト厚さは100nm程度であった。
【0084】
次に、ガラスロール原盤上のレジストに現像処理を施して、露光した部分のレジストを溶解させて現像を行った。具体的には、図示しない現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつガラスロール原盤の表面に現像液を滴下してその表面のレジストを現像した。これにより、レジスト層が準六方格子パターンに開口しているレジストガラス原盤が得られた。
【0085】
次に、ロールプラズマエッチングを用い、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している準六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はフォトレジストがマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が得られた。このときのパターンでのエッチング量(深さ)はエッチング時間によって変化させた。最後に、O2アッシングにより完全にフォトレジストを除去することにより、凹形状の六方格子パターンのモスアイガラスロールマスタ(原盤)が得られた。列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0086】
上記モスアイガラスロールマスタと紫外線硬化型樹脂を塗布したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを密着させ、紫外線を照射し硬化させてから剥離することにより、転写用光学素子(転写用原盤)を作製した。
【0087】
次に、作製した転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、紫外線硬化型樹脂を転写用光学素子上に塗布し、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム(厚さ80μm)を上方から密着させ、紫外線を照射し硬化させてから剥離することで、複製原盤を作製した。
【0088】
次に、作製した複製原盤の凹凸面に、形状転写用材料としてPHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板の一主面にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、紫外線硬化型樹脂(東洋合成工業株式会社製、商品名:PAK−01)を介して接合させた。次に、紫外線硬化型樹脂に対して紫外線を照射することにより、形状転写用材料としてのPHPSとガラス基板の一主面とを貼り合わせた。次に、これを75℃60%RHで3時間保持し、PHPSを硬化させた後に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0089】
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、作製した複製原盤の凹凸面に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、紫外線硬化型樹脂(東洋合成工業株式会社製、商品名:PAK−01)を介して接合させた。次に、紫外線硬化型樹脂に対して紫外線を照射することにより、形状転写用材料としてのPHPSとガラス基板の一主面とを貼り合わせた。次に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0090】
(実施例3)
実施例1と同様にして微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、紫外線硬化型樹脂を光学素子上に塗布し、PVA(ポリビニルアルコール)フィルム(厚さ75μm)を上方から密着させ、紫外線を照射し硬化させてから剥離することで、複製原盤を作製した。
【0091】
次に、作製した複製原盤の凹凸面に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、紫外線硬化型樹脂(PAK−01:東洋合成工業株式会社)を介して接合させた。次に、紫外線硬化型樹脂に対して紫外線を照射することにより、形状転写用材料としてのPHPSとガラス基板の一主面とを貼り合わせた。次に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0092】
(実施例4)
まず、実施例1と同様にして転写用光学素子の複製原盤を作製した。次に、作製した複製原盤の凹凸面に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、紫外線硬化型樹脂(PAK−01:東洋合成工業株式会社)を介して接合させた。次に、紫外線硬化型樹脂に対して紫外線を照射することにより、形状転写用材料としてのPHPSとガラス基板の一主面とを貼り合わせた。次に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0093】
(実施例5)
まず、実施例1と同様にして微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、紫外線硬化型樹脂を転写用光学素子上に塗布し、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚さ75μm)を上方から密着させ、紫外線を照射し硬化させてから剥離することで、転写用光学素子の複製原盤を作製した。
【0094】
次に、作製した複製原盤に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、紫外線硬化型樹脂(東洋合成工業株式会社製、商品名:PAK−01)を介して接合させた。次に、紫外線硬化型樹脂に対して紫外線を照射することにより、形状転写用材料としてのPHPSとガラス基板の一主面とを貼り合わせた。次に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0095】
(実施例6)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、作製した複製原盤に、作製したPHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、乾燥させたもの同士を、PHPSを介して貼り合わせた。次に、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0096】
(実施例7)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、作製した複製原盤の凹凸面に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、ガラス基板を密着させた。次に、30℃で12時間乾燥させた後、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0097】
(実施例8)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、ガラス基板にPHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、複製原盤を気泡が入らないように注意して密着させた。次に、30℃で12時間乾燥させた後、複製原盤からガラス基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がガラス基板上に形成された。次に、このガラス基板を75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0098】
(実施例9)
形状転写用材料として、PHPSとTiO2ナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0099】
(実施例10)
形状転写用材料として、PHPSとZrO2ナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0100】
(実施例11)
形状転写用材料として、PHPSとITO(InドープされたSnO)のナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0101】
(実施例12)
形状転写用材料として、PHPSとGZO(GaドープされたZnO)のナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0102】
(実施例13)
形状転写用材料として、PHPSとCeO2のナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0103】
(実施例14)
形状転写用材料として、PHPSとGZO(GaドープされたZnO)とAl23のナノ粒子とを質量比2000:1:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0104】
(実施例15)
形状転写用材料と接着材料として、PHPSとTiO2ナノ粒子とを質量比1000:1で混合したものを用いた以外は、実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0105】
(実施例16)
まず、実施例1と同様にして微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、転写用光学素子上にシリコーン樹脂(信越シリコーン社製、商品名:KE−12、硬化剤:CAT−RM、質量比100:1)を気泡が入らないよう均一に塗布し、樹脂側を下にして硬化させて、硬化後の厚さ10mmのシリコーン樹脂からなる複製原盤を得た。次に、この複製原盤を用いる以外は実施例6と同様にして光学素子を得た。
【0106】
(実施例17)
まず、実施例1と同様にして微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、三酢酸セルロース(TAC)(和光純薬製)10質量部、および1,2−ジクロロメタン89質量部に、可塑剤としてフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(和光純薬製)を1質量部加え、透明な溶液を調製し、この溶液を気泡が入らないようにして均一に転写用光学素子表面に塗布した。次に、室温で24時間送風乾燥し、膜厚50μmのTACフィルムを得た。次に、このTACフィルムを転写用光学素子から剥離して複製原盤を得た。
【0107】
次に、作製した複製原盤に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、両者を密着させ乾燥させた。次に、複製原盤を密着させた状態で、75℃60%RHの環境下にて3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。次に、これをシクロヘキサノンで洗浄して、TACフィルムである複製原盤を溶解し、複製原盤をPHPSからなる微細形状層から除去した。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0108】
(実施例18)
まず、実施例1と同様にして微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、ポリビニルアルコール(シグマアルドリッチ社製)10質量部、および水89質量部に、可塑剤としてグリセロール(和光純薬製)を1質量部加え、透明な溶液を調製した。次に、2−プロパノール(和光純薬)を複製原盤の表面に塗布し、濡れ性を改善したのちに、調製した溶液を気泡が入らないよう均一に複製原盤に塗布した。次に、室温で24時間送風乾燥し、乾燥後の膜厚50μmのPVAフィルムを得た。次に、このPVAフィルムを剥離して複製原盤を得た。
【0109】
次に、作製した複製原盤に、PHPS(AZエレクトロニックマテリアル社製、商品名:アクアミカ)を塗布し、同様にガラス基板にもPHPSを塗布し、両者を密着させ乾燥させた。次に、複製原盤を密着させた状態で、75℃60%RHの環境化にて3時間保持し、PHPSからなる微細形状層をシリカ化し、硬化させた。次に、これを沸騰水中で洗浄してPVAフィルムである複製原盤を溶解し、複製原盤をPHPSからなる微細形状層から除去した。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0110】
(実施例19)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、ガラス基板の代わりにPMMA(ポリメチルメタクリレート)製基板(厚さ2mm)を用い、形状転写用材料としてPHPSとポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(BR80:三菱レイヨン)を質量比50:50で混合したものを用いて、以下のようにして光学素子を作製した。
【0111】
まず、複製原盤に形状転写用材料を塗布し、同様にPMMA基板にも形状転写用材料を塗布したのち、複製原盤とPMMA基板とを密着させた。次に、30℃で12時間乾燥させて、複製原盤の微細形状を形状転写用材料に転写した後、複製原盤からPMMA基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がPMMA基板上に形成された。次に、このPMMA基板を75℃60%RHの環境下で3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0112】
(実施例20)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、ガラス板の代わりにPC(ポリカーボネート)基板(厚さ2mm)を用い、形状転写用材料としてPHPSとPC樹脂(三菱ガス化学製、商品名:ユーピロン)とを質量比50:50で混合したものを用いて、以下のようにして光学素子を作製した。
【0113】
まず、複製原盤に形状転写用材料を塗布し、同様にPC基板にも形状転写用材料を塗布したのち、複製原盤とPC基板とを密着させた。次に、30℃で12時間乾燥させて、複製原盤の微細形状を転写した後、複製原盤からPC基板と微細形状層とからなる積層体を剥離した。これにより、複製原盤の凹凸形状が転写された微細形状層がPC基板上に形成された。次に、このPC基板を75℃60%RHの環境下に3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0114】
(実施例21)
まず、実施例1と同様にして複製原盤を作製した。次に、形状転写用材料および接着用材料として、PHPSと紫外線硬化型樹脂(PAK−01)とを質量比50:50で混合したものを用い、密着乾燥後、紫外線を照射して硬化させた後、複製原盤を剥離し、転移された微細構造を75℃60%RHで3時間硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0115】
(実施例22)
形状転写用材料および接着用材料として、PHPSと紫外線硬化型樹脂(PAK−01)とを質量比10:90で混合したものを用いた以外は、実施例21と同様にして光学素子を得た。
【0116】
(実施例23)
形状転写用材料および接着用材料として、PHPSとPMMA樹脂とを質量比90:10で混合したものを用い、ガラス板に密着させた。30℃で12時間乾燥させた後、複製原盤を剥離した。次に、転移された微細構造を75℃60%RHで3時間硬化させた。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0117】
(実施例24)
形状転写用材料および接着用材料として、PHPSとPMMA樹脂とを質量比80:20で混合したものを用いた以外は、実施例23と同様にして光学素子を得た。
【0118】
(実施例25)
形状転写用材料および接着用材料として、PHPSとPMMA樹脂とを質量比50:50で混合したものを用いた以外は、実施例23と同様にして光学素子を得た。
【0119】
(実施例26)
形状転写用材料および接着用材料として、PHPSとPMMA樹脂とを質量比10:90で混合したものを用いた以外は、実施例23と同様にして光学素子を得た。
【0120】
(実施例27)
PMMAの濃度を調整することで、形状転写用材料および接着用材料の粘度3000cPsに調整した以外は実施例26と同様にして光学素子を得た。
【0121】
(実施例28)
PMMAの濃度を調整することで、形状転写用材料および接着用材料の粘度1000cPsに調整した以外は実施例26と同様にして光学素子を得た。
【0122】
(実施例29)
PMMAの濃度を調整することで、形状転写用材料および接着用材料の粘度500cPsに調整した以外は実施例26と同様にして光学素子を得た。
【0123】
(実施例30)
PMMAの濃度を調整することで、形状転写用材料および接着用材料の粘度30cPsに調整した以外は実施例26と同様にして光学素子を得た。
【0124】
(実施例31)
形状転写用材料として、PHPSの代わりにMHPS(メチル化ヒドロポリシラザン:AZエレクトロニックマテリアル、アクアミカ)を用いたこと、および接着用材料として、紫外線光学樹脂の代わりにMHPSを用いたこと以外は実施例2と同様にして光学素子を得た。
【0125】
(実施例32)
転写用光学素子としてワイヤーグリッド偏光板(MOXTEK社製、商品名:PPL03C)を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、紫外線硬化型樹脂をワイヤーグリッド偏光板上に塗布し、TACフィルム(厚さ80μm)を上方から密着させ、紫外線を照射し硬化させてから剥離することで、ワイヤーグリッド偏光板の複製原盤を作製した。次に、PHPSが塗布された複製原盤とガラス基板同士を、PHPSを接着材として貼り合わせた。次に、これを75℃60%RHで3時間保持し、微細形状層をシリカ化し、硬化させた。次に、シリカ化された形状に斜方蒸着によりアルミニウム皮膜を形成し、ワイヤーグリッド偏光板を作製した。
【0126】
(比較例1)
実施例1と同様にして転写用光学素子を作製し、この転写用光学素子を光学素子とした。
【0127】
(比較例2)
まず、実施例1と同様にして、微細形状を表面に有する転写用光学素子を作製した。次に、この転写用光学素子を型として使用し、複製原盤を作製した。具体的には、紫外線硬化型樹脂を転写用光学素子の微細形状上に塗布し、PETフィルムを上方から密着させたのち、紫外線を照射し硬化させてから剥離することで、転写用光学素子の複製原盤を作製した。
【0128】
次に、SOG材料としてHSQ(ダウコーニング社製、商品名:FOX)を準備し、HSQをガラス基板にコートし、50℃でプリベークしてHSQの粘度を下げたのち、上記複製原盤を押し付けて温度を下げて、HSQからなる微細形状層を硬化させた。次に、ガラス基板と微細形状層とからなる積層体を複製原盤から剥離した。これにより、目的とする光学素子が得られた。
【0129】
(粘度の測定方法)
回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE−550L)を用いて、25℃での粘度を測定した。
【0130】
(硬化進行度の評価方法)
硬化の進行度については、赤外吸収分光測定(ATR、Nicolet社製)を用いて測定した。図12は、硬化時間の違いによるIRスペクトルの一例を示す。
【0131】
(反射特性の評価)
日本分光の評価装置(V−550)を用いて、5度入射時の正反射方向での反射率を測定した。測定した反射率の基づき、下記の基準で反射特性を評価した。その結果を表2に示す。また、図13に、実施例6、比較例1の光学素子の分光特性を示す。
良好:波長帯域350〜800nmにおける平均反射率が1%以内である。
不良:波長帯域350〜800nmにおける平均反射率が1%を超える。
また、実施例1〜32の光学素子では、波長帯域350nm〜800nmにおける平均透過率が90%以上であった。
【0132】
(形状の転写性)
走査電子顕微鏡(SEM)により光学素子表面の微細形状を観察した。図14A〜図14Cは、実施例6の転写用光学素子、複製原盤、および光学素子のSEM写真を示す。
【0133】
(硬度評価)
擦過性を評価するために鉛筆硬度を測定した。測定は、JISK5600−5−4 1990準拠して行った。測定結果に基づき、以下の基準で鉛筆硬度を評価した。その結果を表2に示す。
良:鉛筆硬度がH以上である。
不良:鉛筆硬度がH未満である。
【0134】
(総合評価)
上記光学評価、および硬度評価を用いて、以下の基準で光学素子を総合評価した。
良:光学評価、および硬度評価の両方が「良」である。その結果を表2に示す。
可:光学評価のみ「良」である
不可:上記評価結果以外である。
なお、実施例32、比較例1は評価対象から除外した。
【0135】
表1は、実施例1〜32、比較例1〜2の光学素子の構成を示す。
【表1】

【0136】
表2は、実施例1〜32、比較例1〜2の光学素子の評価結果を示す。
【表2】

【0137】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0138】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0139】
また、上述の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0140】
また、上述の実施形態では、モスアイ、およびサブミクロンオーダーのワイヤーグリッドなどに対して本発明を適用する場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、予めホトリソグラフで設計されたナノチャネル、マイクロレンズ、量子ドット、およびホログラムなどの各種デバイスに対しても本発明を適用可能である。
【0141】
また、上述の実施形態では、光ナノインプリントにより転写用光学素子を作製する場合を例として説明したが、転写用光学素子の作製方法はこの例に限定されるおのではなく、熱ナノインプリントなどにより転写用光学素子を作製するようにしてもよい。
【0142】
また、上述の実施形態では、本発明を液晶表示装置に適用する場合を例として説明したが、本発明は液晶表示装置以外の各種表示装置に対しても適用可能である。例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種表示装置に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 光学素子
2 微細形状層
2a 構造体
3 基体
4 接着層
11 原盤
11a 構造体
12 レジスト層
12a 潜像
13 露光ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写する工程と、
上記凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、複数の構造体を表面に有する光学素子を形成する工程と
を備え、
上記形状転写材料は、ポリシラザン化合物を含み、
上記複数の構造体は、可視光の波長以下のピッチで配列されている光学素子の製造方法。
【請求項2】
原盤の凹凸形状を形状転写材料に密着させる工程と、
上記原盤を密着させた状態で上記形状転写材料を硬化し、原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写することにより、複数の構造体を表面に有する光学素子を形成する工程と
を備え、
上記形状転写材料は、ポリシラザン化合物を含み、
上記複数の構造体は、可視光の波長以下のピッチで配列されている光学素子の製造方法。
【請求項3】
上記ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンまたはその変性物である請求項1または2記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
上記形状転写材料が、金属酸化物を主成分とする粒子をさらに含み、
上記金属酸化物が、珪素、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項1または2記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
上記硬化の工程では、熱処理により、上記凹凸形状が転写された形状転写材料の一部または全部を酸化する請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
上記転写の工程では、形状転写材料に対して基体を密着させた状態にて、上記形状転写材料に対して上記原盤の凹凸形状を転写し、
上記硬化の工程では、上記凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、上記基体上に複数の構造体を直接形成する請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
上記転写の工程では、形状転写材料と基体との間に接着材を介在させて、上記形状転写材料に対して上記原盤の凹凸形状を転写し、
上記硬化の工程では、上記凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより、上記基体上に複数の構造体を上記接着材を介して形成する請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
上記密着の工程では、基体の一主面と原盤の凹凸形状との間に形状転写材料が介在されるようにして、上記原盤の凹凸形状を上記形状転写材料に密着させ、
上記転写の工程では、上記原盤を密着させた状態で上記形状転写材料を硬化させることにより、上記基体上に複数の構造体を直接形成する請求項2記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
上記密着の工程では、基体の一主面と原盤の凹凸形状との間に形状転写材料と接着材とが介在されるようにして、上記原盤の凹凸形状を上記形状転写材料に密着させ、
上記転写の工程では、上記原盤を密着させた状態で上記形状転写材料を硬化させることにより、上記基体上に複数の構造体を上記接着材を介して形成する請求項2記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
上記接着材は、ポリシラザン化合物、シロキサン結合を有する化合物、または珪酸アルカリ塩を含んでいる請求項7または9記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
上記形状転写材料および上記接着材は、金属酸化物を主成分とする粒子をさらに含み、
上記金属酸化物が、珪素、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項7または8記載の光学素子の製造方法。
【請求項12】
上記微細構造体は、エネルギー線を用いて形状転写材料を硬化させることで転写処理が施される請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項13】
上記転写の工程では、上記原盤を溶解および/または膨潤させることにより、上記原盤を上記形状転写材料から除去する請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項14】
上記原盤は、基体と、上記基体上に形成された微細形状層とを備え、
上記転写の工程では、上記基体を溶解するとともに、上記微細形状層を膨潤させることにより、上記原盤を上記形状転写材料から除去する請求項13記載の光学素子の製造方法。
【請求項15】
上記転写の工程は、
上記原盤を密着させた状態で上記形状転写材料を硬化させ工程と、
上記原盤を溶解および/または膨潤させることにより、上記原盤を上記形状転写材料から除去する工程と
を備える請求項2記載の光学素子の製造方法。
【請求項16】
表面を有する基体と、
上記表面に可視光の波長以下のピッチで配列された複数の構造体と
を備え、
上記複数の構造体は、
ポリシラザン化合物を含む形状転写材料に原盤の凹凸形状を転写し、上記凹凸形状が転写された形状転写材料を硬化することにより得られる光学素子。
【請求項17】
表面を有する基体と、
上記表面に可視光の波長以下のピッチで配列された複数の構造体と
を備え、
上記複数の構造体は、
ポリシラザン化合物を含む形状転写材料に原盤の凹凸形状を密着させ、上記原盤を密着させた状態で上記形状転写材料を硬化し、上記原盤の凹凸形状を形状転写材料に転写させることにより得られる光学素子。
【請求項18】
上記構造体と上記基体との間に接着材をさらに備える請求項16または17記載の光学素子。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の光学素子を備える表示装置。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の光学素子を備える太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−221470(P2011−221470A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93592(P2010−93592)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】