説明

光学素子、光学素子の製造方法、及び光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法

【課題】ハンドリングが容易な光学素子、その製造方法、及びそのような光学素子を用いた光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】光導波路を有するスライダ上に光源が設けられた光アシスト磁気記録ヘッドに用いられる光学素子であって、把持部と、ミラー部とを有する。把持部は、棒状部材からなる。ミラー部は、把持部の一部に設けられ、光源からの光を光導波路に向けて反射させる反射面が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学素子、当該光学素子の製造方法、及び当該光学素子を用いた光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)に用いられる磁気記録方式は、記録密度を高くしようとすると磁気ビットの間隔が狭くなり、超常磁性効果等により極性が不安定となる。このため、高い保磁力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁場も大きくなる。ここで、記録ヘッドによって発生する磁場は飽和磁束密度によって上限が決まるが、その値は材料限界に近付いており飛躍的な増大が望めないという実情がある。そこで、記録時に磁気ビットを局所的に加熱して磁気軟化を生じさせて、保磁力が小さくなった状態で記録し、その後、加熱を止めて自然冷却することにより、記録された磁気ビットの安定性を保証する記録方式が提案されている。この方式は、「熱アシスト磁気記録方式」と呼ばれている。
【0003】
熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱が瞬間的に行われることが望ましい。また、加熱する機構と高速で回転する記録媒体とが接触することは許されない。そのため、加熱は微小スポットのレーザ光を記録媒体に照射して行われることが一般的である。加熱に光を用いるこの方式は、「光アシスト磁気記録方式」と呼ばれている。
【0004】
光アシスト磁気記録方式では、記録媒体を加熱するための光スポットを如何に微小に形成するかが記録密度を向上させる上で重要なポイントとなる。この点に関しては、近接場光を用いて数十nmのスポットサイズを実現する方向に固まってきた。
【0005】
近接場光を発生させる手法としては、光アシスト磁気記録ヘッドのスライダに光導波路を半導体集積回路製造プロセスを用いて磁気記録再生部(磁気ヘッド部)と共に積層させ、光導波路の記録媒体側の出射端近辺にプラズモンプローブを形成し、プラズモンプローブに光導波路からの光を照射することにより近接場光を発生させる方式が主流となりつつある。
【0006】
半導体レーザ(LD:Laser Diode)などの光源からの光を光導波路に結合させるための伝送光学系の方式としては、LDから出射した光を光導波路入射面に向けて偏向すると共に集光して光導波路に光を結合させる機能を有する光学素子をスライダ上に配置する方式がある。
【0007】
たとえば、特許文献1に記載の光アシスト磁気ヘッドでは、表面反射型の偏向ミラーにより、LDから出射した光を90°偏向させて、光導波路に照射している。このような表面反射ミラーを用いることにより、LDをスライダに横置きすることが可能となり、ヘッドの薄型化が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−60408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光アシスト磁気記録ヘッドに光学素子を用いる場合、その光学素子は微小であり、ハンドリングが困難になるという問題がある。
【0010】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、ハンドリングが容易な光学素子、その製造方法、及びそのような光学素子を用いた光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載の光学素子は、光導波路を有するスライダ上に光源が設けられた光アシスト磁気記録ヘッドに用いられる光学素子であって、把持部と、ミラー部とを有する。把持部は、棒状部材からなる。ミラー部は、把持部の一部に設けられ、光源からの光を光導波路に向けて反射させる反射面が形成されている。
また、請求項2記載の光学素子は、請求項1記載の光学素子であって、把持部はスライダに設けられた係合部に係合される。
また、請求項3記載の光学素子は、請求項1又は2記載の光学素子であって、ミラー部は、光が出射される出射端を含む光源の出射面に当接する当接面を有する。
また、請求項4記載の光学素子は、請求項1から3のいずれかに記載の光学素子であって、把持部は内周面を有する円筒形状であり、ミラー部の反射面は、内周面の1/4からなる曲面である。
また、請求項5記載の光学素子は、請求項4記載の光学素子であって、把持部の外径の中心と反射面の径方向の中心とが同軸上にある。
また、請求項6記載の光学素子の製造方法は、請求項5に記載の光学素子を製造方法するための方法である。光学素子の製造方法は、切削工程と、ミラー部形成工程とを有する。切削工程は、円筒形状の棒状部材の一部を、当該棒状部材の軸方向に直交する第1の方向に切削することで、全周の1/2を残す。ミラー部形成工程は、切削工程で残った部分を、軸方向及び第1の方向と直交する第2の方向に切削し、全周の1/4を残すことにより、棒状部材の内周面を反射面とするミラー部を形成する。
また、請求項7記載の光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、載置工程と、位置決め工程と、固定工程とを有する。載置工程は、光導波路を有するスライダに対して光源を載置する。位置決め工程は、スライダに予め形成された係合部に対して光学素子の把持部を係合させ、且つ光が出射される出射端を含む光源の出射面に対して光学素子のミラー部に設けられた当接面を突き当てることにより、光学素子の位置決めを行う。固定工程は、位置決めされた状態で光源に対して光学素子を固定する。
【発明の効果】
【0012】
光学素子に把持部を形成することにより、ミラー部自体は微小であっても光学素子自体のサイズを比較的大きくすることができる。従って、光学素子のハンドリングが容易となる。
【0013】
また、円筒形状の棒状部材の一部を切削し、全周の1/4を残すことにより、把持部とミラー部を有する光学素子を製造することができる。すなわち、ハンドリングが容易な光学素子を製造することができる。
【0014】
また、上記光学素子を用いることにより、光アシスト磁気記録ヘッドの組み立てが容易となる。更に、光学素子の把持部をスライダに予め形成された係合部に対して係合させ、且つ光源の出射面に対して上記光学素子のミラー部に設けられた当接面を突き当てることにより、スライダ及び光源部に対する光学素子の位置決めを行うことができる。よって、スライダ及び光源部に対する光学素子の位置調整が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る情報記録装置を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る光アシスト磁気記録ヘッドを示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る光アシスト磁気記録ヘッドを示す断面図である。
【図4A】実施形態に係る光アシスト磁気記録ヘッドの別構成を示す断面図である。
【図4B】実施形態に係るスライダの別構成を示す斜視図である。
【図5A】実施形態に係る光学素子を示す斜視図である。
【図5B】実施形態に係る光学素子を示す断面図である。
【図6A】実施形態に係る光学素子の別構成を示す斜視図である。
【図6B】実施形態に係る光学素子の別構成を示す断面図である。
【図7】実施形態に係る光学素子の製造工程を示すフローチャートである。
【図8A】図7のフローチャートの説明を補足する図である。
【図8B】図7のフローチャートの説明を補足する図である。
【図8C】図7のフローチャートの説明を補足する図である。
【図9】実施形態に係る光学素子の製造に用いられる金型を示す図である。
【図10】実施形態に係る光学素子の製造に用いられる金型を示す図である。
【図11】実施形態に係る光学素子の製造に用いられる金型を示す図である。
【図12】実施形態に係る光アシスト磁気記録ヘッドの組み立て手順を示すフローチャートである。
【図13】図12のフローチャートの説明を補足する図である。
【図14】図12のフローチャートの説明を補足する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[情報記録装置の構成]
図1に示すように、光アシスト磁気記録ヘッドを搭載した光アシスト磁気記録装置(たとえばハードディスク装置、以下「情報記録装置1」という場合がある)は、たとえば、記録用の複数枚の回転可能なディスク(磁気記録媒体)3と、ヘッド支持部5と、トラッキング用アクチュエータ7と、光アシスト磁気記録ヘッド4(以下、「光ヘッド4」という場合がある)と、図示しない駆動装置と、を筐体2内に備えている。なお、ディスク3は1枚であってもよい。ヘッド支持部5は、支軸6を支点として矢印Aの方向(トラッキング方向)に回動可能に設けられている。トラッキング用アクチュエータ7は、ヘッド支持部5に取り付けられている。光ヘッド4は、ヘッド支持部5の先端に取り付けられている。図示しない駆動装置は、ディスク3を矢印Bの方向に回転させる。情報記録装置1は、光ヘッド4がディスク3の上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。
【0017】
[光アシスト磁気記録ヘッド]
次に、図2から図6Bを参照して、光ヘッド4の概略構成例を説明する。図2は、光ヘッド4の斜視図である。図3は光ヘッド4の断面図(D−D断面)である。図5Aは、光学素子30の斜視図である。図5Bは、光学素子30の断面図(E−E断面)である。
【0018】
光ヘッド4は、ディスク3に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドである。図2に示すように、光ヘッド4は、スライダ10と、光源部20と、光学素子30とを有する。情報記録装置1は、ディスク3を矢印C方向(図3参照)に移動させ、光ヘッド4がディスク3上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。なお、本実施形態では、ディスク3の回転方向(矢印C方向)をy方向、光ヘッド4の厚み方向をz方向、y方向及びz方向の双方に直交する方向をx方向として説明する。
【0019】
(スライダ)
スライダ10は、たとえば、AlTiC等の材料で形成される方形状の基板である。図3に示すように、スライダ10は、ディスク3と対向する下面10aと、下面10aに対してz方向の反対側に位置する上面10bと、側面10cとを有する。
【0020】
スライダ10には、磁気ヘッド部13が形成される。磁気ヘッド部13は、光導波路14と、図示しない磁気記録部と、図示しない磁気情報再生部と、図示しない電極とを有する。本実施形態において、磁気ヘッド部13はスライダ10と一体に形成されているが、別体で形成されたものをスライダ10の側面10cに取り付けることでもよい。
【0021】
また、図3に示すように、磁気ヘッド部13には、x方向に溝部16が形成されている。溝部16には、光学素子30の把持部31(後述)が係合される。本実施形態では、溝部16の形状としてV字型を用いている。本実施形態における溝部16は、「係合部」の一例である。溝部16に把持部31(後述)が係合されることにより、細かな位置調整を行わなくともスライダ10に対する光学素子30の位置決めを行うことができる。
【0022】
光導波路14は、光学素子30によって導かれた光源部20からの光を導光し、ディスク3に向けて出射するための経路を形成している。光導波路14は、入射端14aと、出射端14bとを有する。入射端14aには、光源部20からの光が入射する。入射端14aは、溝部16の底に設けられる。出射端14bからは、光導波路14内を通過した光が出射する。出射端14bは、スライダ10の下面10aと略同一面上にある磁気ヘッド部13の下面に設けられる。光導波路14は、下部クラッド層、コア層、上部クラッド層(いずれも図示しない)を、光が伝播する方向とは直交する厚み方向に沿って、この順番に積層させたものである。コア層は、各クラッド層(例えば、SiOで形成)よりも屈折率の高い素材(例えば、Ta)で形成されている。これにより、光導波路14に導かれた光は、コア層と、各クラッド層との間で全反射しながらディスク3に向かって伝播する。
【0023】
光導波路14の出射端14b近傍には、近接場光発生素子としてのプラズモンプローブ15が配置される。
【0024】
光学素子30により導かれた光源部20からの光は、入射端14aから光導波路14に入射し、出射端14bに向かって光導波路14内を進む。出射端14bに設けられているプラズモンプローブ15は、光学素子30により導かれた光を近接場光に変換し、ディスク3に向けて出射する。
【0025】
なお、図示しない磁気記録部は、ディスク3の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う。図示しない磁気情報再生部は、ディスク3に記録されている磁気情報の読み取りを行う。図示しない電極は、スライダ10の上面10bに形成される。電極は、所定のパターン形状を有し、光源部20と接続されることにより、光源部20に駆動電力を供給する。
【0026】
また、スライダ10は、浮上しながら磁気記録媒体であるディスク3に対して相対的に移動するが、ディスク3に付着したごみやディスク3に欠陥がある場合には、ディスク3と接触する可能性がある。その場合に発生する摩擦を低減するために、スライダ10の材質には耐摩擦性の高い硬質の材料を用いることが好ましい。例えば、Alを含むセラミック材料、AlTiCやジリコニア、又はTiNなどを用いればよい。また、摩擦防止のために、スライダ10のディスク3側の面に、耐摩擦性を増すための表面処理を行ってもよい。例えば、DLC(Diamond Like Carbon)被膜を用いることにより、高い硬度が得られる。
【0027】
(スライダの変形例)
把持部31(後述)を係合することができれば溝部16の形状は、V字型に限られない。たとえは、図4Aに示すように溝部16が角型であってもよい。この場合、入射端14aは、溝部16の底面に設けられる。
【0028】
或いは、図4Bに示すように、把持部31(後述)が係合する部分のみにV字型の溝部16が設けられている構成でもよい。この場合、溝部16が設けられていない部分には、スライダ10の上面10bと同一平面となる平面17が形成されている。なお、図4Bでは、光導波路14の入射端14aの記載を省略している。
【0029】
いずれの変形例であっても、溝部16に把持部31(後述)が係合されることにより、スライダ10に対して光学素子30の位置決めを行うことができる。
【0030】
(光源部)
光源部20は、たとえば半導体レーザを含んで構成されている。光源部20は、光導波路14と略直交する方向に光を出力する。「略直交する方向」とは、光源部20からの光が光学素子30の反射面32a(後述)に入射することができる方向をいう。半導体レーザから出力される光の波長は、可視光から近赤外の波長(波長帯としては、0.6μm〜2μm程度である。また、具体的な波長としては、650nm、780nm、830nm、1310nm、1550nmなどが挙げられる。
【0031】
半導体レーザを構成する材料としては、たとえば、GaAs、AlGaAs、InGaAs、AlGaInP、InAlGaN、InGaN、GaN、GaInNA、GaNAsP、及びAlGaNAsなどの材料のうちのいずれかを用いればよい。そして、発光に必要な層をウェハ上に積層することにより、半導体レーザを作製することができる。
【0032】
光源部20は、スライダ10の上面10bに配置される。光源部20は、出射面20aと、底面20bとを有している。出射面20aには、半導体レーザからの光が光源部20外に出射するための出射端20cが形成されている。光源部20は、出射端20cから光学素子30に向けて光を出力する。
【0033】
(光学素子)
光学素子30は、光源部20からの光を反射・集光させて光導波路14の入射端14aに導くための素子である。光学素子30は、たとえば光学的に透明な樹脂又はガラスで構成されている。図5Aに示すように、本実施形態において、光学素子30は把持部31及びミラー部32を含んで構成されている。
【0034】
把持部31は、光ヘッド4の組み立て時等、光学素子30をハンドリングする際に把持される部分である。本実施形態における把持部31は、内周面を有する円筒形状の棒状部材から形成されている。ミラー部32自体は微小であるが、把持部31を設けることにより光学素子30自体のサイズを比較的大きくすることができる。従って、光学素子30のハンドリング性を確保でき、光ヘッド4の組立も容易となる。
【0035】
ミラー部32は、把持部31を形成する棒状部材の一部(本実施形態では、円筒形状の棒状部材の真ん中部分)に設けられている。ミラー部32は、反射面32a、端面32b及び端面32c(図5B参照)を含んで構成されている。反射面32aは、光源部20からの光を反射・集光させて光導波路14の入射端14aに導く。本実施形態において、反射面32aは、棒状部材の内周面の一部(1/4)からなる曲面となっている。また、本実施形態においては、円筒形状である把持部31の外径の中心と、反射面32aの径方向の中心とが同軸上にある構成となっている。
【0036】
反射面32aは、光源部20からの光を反射・集光させて光導波路14の入射端14aに導くことができればよい。たとえば、反射面32aは楕円など非球面の断面の一部からなるシリンドリカル面でもよい。
【0037】
或いは、反射面32aは、トーリック面やアナモルフィック面であってもよい。このような反射面32aを用いることにより、光導波路14のモードフィールド分布にあった光のスポット形状を形成することができる。よって、光源部20からの光の光導波路14に対する結合効率を向上させることができる。なお、反射面32aは平面であってもよい。
【0038】
反射面32aは、反射効率を上げるためにメッキ処理がなされていてもよい。メッキ処理は、たとえば、無電解ニッケルメッキで表面処理を行って下地を形成した後、金メッキなどの反射効率の高い材料を用いて行われる。
【0039】
本実施形態において、反射面32aは外部に露出している。従って、反射面32aは表面反射ミラーとして機能する。反射面32aが表面反射ミラーであるため、光学素子30内部に光源部20からの光が入射することが無い。よって、光が光学素子30内部を透過することによる光量損失を低減する事ができる。なお、内部に反射面32aを有する光学素子30を用いることも可能である。
【0040】
端面32bは、光学素子30がスライダ10に組み付けられた場合に、光源部20の出射面20aと対向して配置される面である。本実施形態において、光学素子30がスライダ10に組み付けられた場合に、端面32bと出射面20aとは当接するよう構成されている(図3参照)。すなわち、本実施形態における端面32bは、「当接面」の一例である。端面32bと出射面20aとを当接させることにより、細かな位置調整を行わなくとも光源部20に対する光学素子30の位置決めを行うことができる。端面32bは、接着剤等を介して光源部20の出射面20aと接合させることができる。
【0041】
端面32cは、光学素子30がスライダ10に組み付けられた場合に、溝部16内に配置される。
【0042】
なお、スライダ10が図4Bに示すような形状の場合、光学素子30がスライダ10に組み付けられると、端面32cは平面17と当接する。端面32cと平面17とを当接させることにより、スライダ10に対しても光学素子30の位置決めを行うことができる。この場合、端面32cは、接着剤等を介して平面17と接合させることができる。
【0043】
また、端面32b及び端面32cの面積は等しくてもよいし、異なっていてもよい(図3等は面積の等しい例を示している)。
【0044】
(光学素子の変形例)
光学素子30を形成する棒状部材は、ミラー部32を形成することができれば円筒形状に限られない。たとえば、角筒形状、円柱形状、角柱形状等であってもよい。なお、角筒形状の場合、内周面が円筒形状に形成されていることが望ましい。
【0045】
また、図6A及び図6Bに示すように、光学素子30にDカットを設けることも可能である。図6Aは、光学素子30の斜視図である。図6Bは、図6AのF−F断面である。
【0046】
スライダ10(光源部20)に対して光学素子30を組み付けた後、光源部20から照射された光が光導波路14の入射端14aに入るように光学素子30(ミラー部32)の微調整を行う場合がある。この方法としては、たとえば、オートコリメータを用いる。
【0047】
この場合、光学素子30の一部をカット(Dカット)して平面部30aを設ける。平面部30aは、光ヘッド4の上面からオートコリメータで観測する際の反射面となる。
【0048】
光ヘッド4の上面から観測を行う場合、平面部30aは、ミラー部32の端面32bと直交する方向(y方向)に設けられていることが望ましい。なお、平面部30aが設けられた光学素子30を光ヘッド4の側面から撮影し、その撮影結果に基づいて光学素子30の微調整を行うことも可能である。
【0049】
[光学素子30の製造方法]
次に、図7から図11を参照して、本実施形態に係る光学素子30の製造方法について説明を行う。ここでは、図5Aに示す光学素子30を製造する方法について二つの例を述べる。一つ目は、キャピラリー30´を加工して光学素子30を製造する方法である(以下、「第1の方法」という場合がある)。二つ目は、成形により光学素子30を製造する方法である(以下、「第2の方法」という場合がある)。
【0050】
(第1の方法)
第1の方法について図7から図8Cを参照して説明する。図7は、第1の方法を示すフローチャートである。図8Aから図8Cは、キャピラリー30´の斜視図である。図8Aから図8Cにおいては、キャピラリー30´の長手方向をx方向とし、x方向と直交する方向のうち、一方をy方向とし、他方をz方向とする。
【0051】
まず、図8Aに示すように、円筒形状の棒状部材であるキャピラリー30´の一部に対し、ブレードDBを用いて、キャピラリー30´の軸方向であるx方向に直交するy方向に切削する(S10)。ブレードDBによる切削は、ミラー部32を形成しようとする範囲dに対して行う。このようにブレードDBで切削された部分は、図8Bに示すように、キャピラリー30´の全周の1/2だけが残る。本実施形態におけるS10の工程が「切削工程」の一例である。また、本実施形態におけるy方向が「第1の方向」の一例である。
【0052】
次に、ブレードDBに対してS10で切削されたキャピラリー30´を90°回転させる(S11。図8Bの矢印F参照)。そして、図8Cに示すように、S10で切削した範囲dと同じ範囲に対し、ブレードDBを用いてキャピラリー30´の軸方向(x方向)及びy方向(第1の方向)と直交する方向(z方向)に切削する(S12)。このようにブレードDBで切削された部分は、キャピラリー30´の全周の1/4だけが残る。よって、図5Aに示すような、キャピラリー30´の内周面を反射面32aとするミラー部32が形成された光学素子30を製造することができる(S13)。本実施形態におけるS12の工程が「ミラー部形成工程」の一例である。また、本実施形態におけるz方向が「第2の方向」の一例である。なお、第1の方法はキャピラリー30´を用いているため、製造された光学素子30は、円筒形状である把持部31の外径の中心と、反射面32aの径方向の中心とが同軸上にある構成となっている。
【0053】
なお、S11でキャピラリー30´を回転させる代わりに、ブレードDBの位置を変えることでも、ミラー部32を形成することが可能である。
【0054】
(第2の方法)
次に第2の方法について図9から図11を参照して説明する。図9及び図10は、光学素子30を形成するための金型を示す斜視図である。図11は、図9及び図10の金型を組み合わせた場合の断面図(図9におけるG−G断面)である。なお、図11では、別コア52が嵌め込まれる前の状態を示している。
【0055】
図9及び図10に示すように、光学素子30は、金型50及び金型51の2つの金型を嵌合させることにより形成される。金型50及び金型51内には、光学素子30の形状に対応する成形部50a及び成形部51aが形成されている。また、金型50内には、ミラー部32の反射面32aの形状に対応する別コア52が配置される空間部50b(図11参照)が形成されている。
【0056】
別コア52は、所望の反射面32aの形状(曲率)に合わせて交換可能となっている。つまり、異なる別コア52を用いることにより、異なる曲率を有する光学素子30を形成することができる。また、別コアのみを交換するだけでよいため、反射面32aの形状に合わせて金型全体を作成する必要がない。よって、光学素子30の製造にかかる費用を抑えることができる。
【0057】
第2の方法により製造される光学素子30は、プラスチック等の樹脂材料からなる。光学素子30を形成する樹脂材料は、金型50及び金型51を組み合わせた状態で、金型50又は金型51に形成された孔部(図示なし)から流入される。
【0058】
[光ヘッド4の製造方法]
次に、図12から図14を参照して、光ヘッド4の製造方法について説明する。図12は、光ヘッド4の組み立て手順を示すフローチャートである。図13及び図14は、光ヘッド4の断面図である。
【0059】
まず、図13に示すように、スライダ10の上面10bに光源部20を載置する(S30)。本実施形態におけるS30の工程が、「載置工程」の一例である。
【0060】
続いて、光源部20をスライダ10に固定する(S31)。光源部20の固定は、たとえば、はんだ付けにより行われる。この場合、スライダ10の上面10bに形成された電極に予めはんだペーストを塗布しておく。そして、スライダ10に対して光源部20の位置合わせを行ったのち、赤外線や熱風リフロー等により光源部20をスライダ10に対して固定する。
【0061】
次に、図14に示すように、スライダ10の上面10bに光学素子30を載置する(S32)。この際、ミラー部32が形成されている部分に光源部20を嵌め込ませることで光源部20に対する光学素子30の組み付けが容易となる。また、溝部16に光学素子30の把持部31が係合することにより、スライダ10に対して光学素子30の位置決めがなされる。更に、本実施形態では、ミラー部32の端面32bを光源部20の出射面20aに接着剤40を介して当接させることにより、反射面32aと光源部20との位置決めを容易に行うことができる。すなわち、本実施形態におけるS32の工程が、「位置決め工程」の一例である。なお、接着剤40としては、たとえば紫外線硬化特性や熱硬化特性を有するものを使用することが望ましい。
【0062】
S32で位置決めされた状態で、光源部20に対して光学素子30を固定する(S33。固定工程)。たとえば、S32で紫外線硬化特性を有する接着剤40を用いている場合、紫外線を照射することにより、光源部20に対して光学素子30を接着固定する。このようにして、光学素子30の位置決めがなされた光ヘッド4を製造することができる(図2参照)。
【0063】
光源部20からの光を効率よく利用するために、当該光を光導波路14に入射させる際には高い結合効率が求められる。そのため、スライダ10、光源部20及び光学素子30には厳密な位置関係が求められる。つまり、光ヘッド4の製造において、スライダ10、光源部20及び光学素子30の位置決めは重要である。なお、「結合効率」とは、光源部20の出射端20cからの光が光導波路14の入射端14aに結合する割合をいう。
【0064】
本実施形態では、光源部20の出射面20aとミラー部32の端面32bを当接させる例について説明したが、当接させなくともミラー部32の位置決めは可能である。すなわち、溝部16に把持部31を係合させるだけでもある程度の位置決めは可能である。
【0065】
[作用・効果]
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0066】
本実施形態に係る光学素子30は、光導波路14を有するスライダ10上に光源部20が設けられた光アシスト磁気記録ヘッド(光ヘッド4)に用いられる光学素子である。光学素子30は、把持部31と、ミラー部32とを有する。把持部31は、棒状部材からなる。ミラー部32は、把持部31の一部に設けられ、光源部20からの光を光導波路14に向けて反射させる反射面32aが形成されている。
【0067】
このように、光学素子30にミラー部32と共に把持部31を形成することにより、ミラー部32自体が微小であっても光学素子30自体のサイズを比較的大きくすることができる。従って、光学素子30のハンドリングが容易となる。
【0068】
また、本実施形態に係る光学素子30の把持部31はスライダ10に設けられた溝部16(係合部)に係合される。また、ミラー部32は、光が出射される出射端20cを含む光源部20の出射面20aに当接する端面32b(当接面)を有する。
【0069】
このように、把持部31を溝部16に係合させ、且つ端面32bを出射面20aに当接させることにより、スライダ10(光源部20)に対して光学素子30の位置決めを容易に行うことができる。すなわち、スライダ10(光源部20)に対して光学素子30を配置した際の位置調整の手間を省くことができる。
【0070】
また、本実施形態に係る光学素子30の把持部31は、内周面を有する円筒形状であり、ミラー部32の反射面32aは、内周面の1/4からなる曲面で形成されている。また、把持部31の外径の中心と反射面32aの径方向の中心とが同軸上にある。
【0071】
このように、把持部31の外径の中心と反射面32aの径方向の中心とが同軸上にある光学素子30は、既存のキャピラリーの一部を加工するだけで簡易に製造できる。すなわち、ハンドリングが容易な光学素子30を簡易に製造することができる。
【0072】
また、光学素子30の製造方法は、切削工程と、ミラー部形成工程とを有する。切削工程は、円筒形状のキャピラリー30´(棒状部材)の一部を、キャピラリー30´の軸方向に直交する第1の方向に切削することで、全周の1/2を残す。ミラー部形成工程は、切削工程で残った部分を、軸方向及び第1の方向と直交する第2の方向に切削し、全周の1/4を残すことにより、キャピラリー30´の内周面を反射面32aとするミラー部32を形成する。
【0073】
このように、円筒形状のキャピラリー30´の一部を切削し、全周の1/4を残すことにより、把持部31とミラー部32を有するハンドリングが容易な光学素子30を製造することができる。
【0074】
また、光アシスト磁気記録ヘッド(光ヘッド4)の製造方法は、載置工程と、位置決め工程と、固定工程とを有する。載置工程は、光導波路14を有するスライダ10に対して光源部20を載置する。位置決め工程は、スライダ10に予め形成された溝部16(係合部)に対して光学素子30の把持部31を係合させ、且つ光が出射される出射端20cを含む光源部20の出射面20aに対して光学素子30のミラー部32に設けられた端面32b(当接面)を突き当てることにより、光学素子30の位置決めを行う。固定工程は、位置決めされた状態で光源部20に対して光学素子30を固定する。
【0075】
このように、ハンドリングが容易な光学素子30を用いることで光ヘッド4の組み立ても容易となる。更に、このような光学素子30を用いることにより、スライダ10及び光源部20に対する光学素子30の位置決めを容易に行うことができる。よって、スライダ10及び光源部20に対する光学素子30の位置調整が不要となる。
【符号の説明】
【0076】
1 情報記録装置
2 筺体
3 ディスク
4 光アシスト磁気記録ヘッド(光ヘッド)
5 ヘッド支持部
6 支軸
7 トラッキング用アクチュエータ
10 スライダ
10a 下面
10b 上面
10c 側面
13 磁気ヘッド部
14 光導波路
14a 入射端
14b 出射端
15 プラズモンプローブ
16 溝部
20 光源部
20a 出射面
20b 底面
20c 出射端
30 光学素子
31 把持部
32 ミラー部
32a 反射面
32b、32c 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を有するスライダ上に光源が設けられた光アシスト磁気記録ヘッドに用いられる光学素子であって、
棒状部材からなる把持部と、
前記把持部の一部に設けられ、前記光源からの光を前記光導波路に向けて反射させる反射面が形成されたミラー部と、
を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記把持部は前記スライダに設けられた係合部に係合されることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記ミラー部は、光が出射される出射端を含む前記光源の出射面に当接する当接面を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子。
【請求項4】
前記把持部は内周面を有する円筒形状であり、前記ミラー部の反射面は、前記内周面の1/4からなる曲面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学素子。
【請求項5】
前記把持部の外径の中心と前記反射面の径方向の中心とが同軸上にあることを特徴とする請求項4記載の光学素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光学素子の製造方法であって、
円筒形状の棒状部材の一部を、当該棒状部材の軸方向に直交する第1の方向に切削することで、全周の1/2を残す切削工程と、
前記切削工程で残った部分を、前記軸方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に切削し、全周の1/4を残すことにより、前記棒状部材の内周面を反射面とするミラー部を形成するミラー部形成工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
光導波路を有するスライダに対して光源を載置する載置工程と、
前記スライダに予め形成された係合部に対して光学素子の把持部を係合させ、且つ光が出射される出射端を含む前記光源の出射面に対して前記光学素子のミラー部に設けられた当接面を突き当てることにより、前記光学素子の位置決めを行う位置決め工程と、
前記位置決めされた状態で前記光源に対して前記光学素子を固定する固定工程と、
を有することを特徴とする光アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−30256(P2013−30256A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167256(P2011−167256)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】