説明

光学素子、発光装置、照明装置、及び光学素子の作製方法

【課題】屈折率の高い領域から低い領域へ効率よく光を取り出すことができる光学素子を提供する。または該光学素子を用いた発光装置を提供する。または、該発光装置を用いた高効率な照明装置を提供する。
【解決手段】紫外域から赤外域の間の波長の光が入射される光学素子であって、気泡が内包されている媒質を有し、光が入射される面を光入射面とし、他方の面を光射出面とし、気泡は媒質内において、光入射面から光射出面まで、光が進む方向に沿って数密度が高くなるように分布しており、気泡の直径は、光学素子に入射される光の波長以下である光学素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)を用いた固体発光素子に用いる光学素子に関する。該光学素子を用いる発光装置に関する。該発光装置を用いた照明装置に関する。該光学素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体発光素子(発光素子とも記す)の一例である、有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の有機化合物からの発光を得ることができる。
【0003】
有機EL素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を容易に形成することができ、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0004】
このように有機EL素子は、発光装置や照明装置などへの応用が期待されている。特許文献1では、有機薄膜トランジスタ及び有機EL素子を備えた有機光デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008−122780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体発光素子は、屈折率が大気より高い領域で発光するため、光を大気中に取り出すまでに、屈折率界面において少なからず反射によるロスが生じる。また、屈折率の大きな領域から小さな領域に光が進む際には、全反射が起こる条件がある。そのため、固体発光素子の光取り出し効率は100%にはならないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、屈折率の高い領域から低い領域へ効率よく光を取り出すことができる光学素子を提供することを目的の一とする。または該光学素子を用いた発光装置を提供することを目的の一とする。または、該発光装置を用いた高効率な照明装置を提供することを目的の一とする。または、該光学素子の作製方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは屈折率の高い固体発光素子と、屈折率の低い大気との間に、固体発光素子から大気に向かって屈折率が連続的に低くなる光学素子を設ける構成に想到した。固体発光素子から大気に向かって、屈折率が連続的に低くなると、固体発光素子の発光が直接大気に取り出される場合と比較して、反射を抑制することができ、光の取り出し効率が向上する。
【0009】
固体発光素子から大気に向かって屈折率が連続的に低くなる光学素子は、媒質に気泡を注入することで作製できる。具体的には、光学素子の固体発光素子を設ける側の面から光射出面に向かって、徐々に気泡の数密度が大きくなるように気泡を分布させることで光学素子の見かけの屈折率を、固体発光素子を設ける側の面から光射出面に向かって連続的に低くする。
【0010】
ここで、光学素子の見かけの屈折率とは、光学素子のある部分に含まれる媒質と気泡とによる合成屈折率のことである。合成屈折率は光学素子の一部を見たとき、そこに含まれる気泡と媒質のそれぞれの屈折率と体積比率によって決まる。
【0011】
上記のような構成とすることで、固体発光素子と大気との界面における反射を抑制できるため、光の取り出し効率が向上する。また、光学素子内の屈折率を変化させるために気泡が用いられているため、固体発光素子から大気に向かって屈折率が連続的に低くなり、屈折率の界面は曖昧となる。よって、光学素子内では屈折率の変化による反射はほとんど生じないと見なすことができる。したがって、光学素子内を通過する光は、屈折率の高い領域から、低い領域へと取り出す際の、反射による光の損失を抑制する事ができる。
【0012】
したがって、本発明の一態様は、紫外域から赤外域の間の波長の光が入射される光学素子であって、気泡が内包されている媒質を有し、光が入射される面を光入射面とし、他方の面を光射出面とし、気泡は媒質内において、光入射面から光射出面まで、光が進む方向に沿って数密度が高くなるように分布しており、気泡の直径は、光学素子に入射される光の波長以下である光学素子である。また,気泡の直径が10nm以上10μm以下であると好ましい。
【0013】
本発明の一態様の光学素子は、光入射面から光射出面に向かって気泡の数密度が高くなるように気泡を分布させた基体を有する。そのため、該光学素子の見かけの屈折率は光学素子を構成する媒質と、気泡との合成屈折率によって決定され、光入射面から光射出面に向けて、発光素子の屈折率から大気の屈折率へと徐々に近づくように低くなる。したがって、屈折率の高い固体発光素子の発光領域から、屈折率の低い大気へと光を取り出す際に、屈折率の差の大きな界面がなく、反射を抑制できるため、発光装置の光取り出し効率を向上することができる。
【0014】
また、ここでいう気泡とは、直径が光学素子に入射される光の波長以下であり、光が媒質の中を進む際に、気泡の影響によって屈折や反射等の影響を受けない大きさである。気泡の数密度が増えることによって、媒質に占める大気の比率が高くなり、光学素子の見かけの屈折率が小さくなる。
【0015】
また、本発明の一態様の光学素子は、光射出面の屈折率が1.0より大きく1.1未満であることが好ましい。光射出面となる大気との界面における屈折率が、大気の屈折率1.0に近ければ近いほど、光を大気に取り出す際の反射が抑制されて、固体発光素子の光を効率よく取り出すことのできる光学素子を提供することができる。
【0016】
また、本発明の一態様の光学素子は、光入射面に凹凸の構造を有することが好ましい。このような構成にすることで、固体発光素子からの光の一部が固体発光素子と光学素子の界面で起こる全反射が繰り返され、光学素子に取り出せないといった現象を抑制することができる。したがって、光の取り出し効率が低下する現象を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の一態様の光学素子は、光射出面に凹凸の構造を有することが好ましい。このような構成にすることで、光学素子から大気へと臨界角を超えて入射する光が全反射を繰り返し、光学素子内を光が導波して光の取り出し効率が低下する現象を抑制することができる。さらに、凹凸の構造は半球状の構造であり、半球状の構造の屈折率は、半球の中心から外側に向かって同心円状に低くなると好ましい。同心円状に低くなることで、光が進む方向に沿って屈折率が連続的に低くなるため、さらに光の取り出し効率の高い発光装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明の一態様は、該光学素子と、光学素子の光入射面上の固体発光素子と、を有する発光装置である。光の取り出し効率を向上させる光学素子を備えることで、光の取り出し効率の高い発光装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明の一態様は、固体発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光装置である。
【0020】
また、本発明の一態様は該発光装置を用いた照明装置である。
【0021】
また、本発明の一態様の発光装置に用いる光学素子の作製方法は、媒質を一対の金型の間に流し込み、一対の金型を加熱しながら、一対の金型を圧接してその間の媒質に圧力を加えて、媒質を所望の形状に成型する第1の工程と、媒質を軟化点以上の温度に保ちながら、媒質の下方から第1の周期で気泡を注入する第2の工程と、媒質の上部の金型を冷却する第3の工程と、媒質内の気泡の分布が連続的になるように、媒質の下方から、第1の周期よりも長い第2の周期で気泡を注入する第4の工程と、媒質の下方からの気泡の注入を終了する第5の工程と、媒質の下部の金型を冷却する第6の工程と、を有する作製方法である。
【0022】
上記のような作製方法を用いることで、注入される気泡の数密度が連続的に変わる光学素子を容易に作製することができる。
【0023】
なお、本明細書中において、第1、第2として付される序数詞は区別のために便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0024】
なお、本明細書中において屈折率とは、各物質固有の屈折率のみでなく、例えば、樹脂に気泡が分布した構成等における、ある部分における樹脂と気泡との体積比率から定まる合成屈折率や、見かけの屈折率についても指す場合がある。
【0025】
なお、本明細書中において、光学素子の面とは、厳密に厚さを有さない面を指す訳ではなく、ある程度の厚さと体積を有する場合がある。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、屈折率の高い領域から低い領域へ効率よく光を取り出すことができる光学素子を提供できる。または該光学素子を用いた発光装置を提供できる。該発光装置を用いた高効率な照明装置を提供できる。または、該光学素子の作製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一態様の発光装置及び光学素子を示した図。
【図2】本発明の一態様の発光装置を示した図。
【図3】本発明の一態様の光学素子の作製方法を示した図。
【図4】本発明の一態様の光学素子の作製方法を示した図。
【図5】本発明の一態様の発光装置に用いる光学素子について示した図。
【図6】本発明の一態様の発光装置に用いる光学素子について示した図。
【図7】本発明の一態様の発光装置に用いる固体発光素子を示した図。
【図8】本発明の一態様の発光装置を示した図。
【図9】本発明の一態様の照明装置を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の主旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の光学素子、及び該光学素子を用いた発光装置について図1乃至図2を用いて説明する。
【0030】
図1(A)に示すように、光学素子101の一方の面は固体発光素子103と接し、他方の面は大気と接している。
【0031】
固体発光素子103は、光学素子101と接する透明電極105と、透明電極105上の、透明電極105に向かって光を射出する発光領域107と、発光領域107上の反射電極109と、を有する。
【0032】
固体発光素子103としては、例えば有機EL素子、無機EL素子、LED等をあげることができる。固体発光素子の形状は特に限定されず、多角形の他、円形であってもよい。なお、固体発光素子については、後の実施の形態で詳細を述べる。固体発光素子は高い信頼性が期待できるが、大気より屈折率が高い領域で発光が生じるため、大気に効率よく光を取り出す工夫が求められる。
【0033】
屈折率が異なる媒質を光が通過する場合、その界面で反射が起こり、全ての光を取り出すことが困難である。また、屈折率の高い領域から低い領域の界面では全反射が起こり、光を取り出せない条件がある。
【0034】
光の全反射は、各媒質の屈折率によって決まる臨界角よりも光の入射角が大きい際に起こる。光を射出する媒質と光が入射される媒質との屈折率の差が大きいほど臨界角が小さく、全反射が起こりやすく、また反射される光量も多い。
【0035】
大気の屈折率が1.0程度であるのに対し、一般的に固体発光素子の発光領域は屈折率が1.6〜1.7程度である。また、固体発光素子が光を射出する側に設けられる透明電極の屈折率は一般的に1.7〜2.2程度である。そのため、固体発光素子の発光を、透明電極を介して、大気に取り出そうとすると、反射または全反射によって取り出せない光が多く、光の取り出し効率が低い。
【0036】
そこで、本発明の一態様の光学素子を、固体発光素子と大気との間に設けることによって、屈折率界面に生じる反射を抑制して、光の取り出し効率を向上させる。なお、この先の説明において、反射とは全反射も含めた広い意味における、屈折率の界面において光が取り出せない現象のことを指す。また、本明細書中において光学素子とは、光が透過、または入射された光が方向を変えて射出する素子のことを指し、具体的には、光を透過する基板、レンズ、マイクロレンズアレイ等である。
【0037】
光学素子101は可視光に対する透光性を有する材料からなる。光学素子101の材料としては例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン酸樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、または、ポリ塩化ビニル樹脂などの有機樹脂、またはガラス、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いる事ができる。光学素子101に高屈折率の樹脂を用いると、固体発光素子との界面における屈折率の差が小さくなり、固体発光素子との界面における反射も抑制できるため好ましい。
【0038】
光学素子101には、固体発光素子103と接する一方の面から大気と接する他方の面に向かって気泡の数密度が大きくなるように気泡が分布されている。
【0039】
上述の有機樹脂の屈折率は1.5〜1.6程度であるが、本発明の一態様の光学素子の見かけの屈折率は、有機樹脂に分布している気泡の体積比率によって決定される。光学素子のある部分の見かけの屈折率とは、有機樹脂の屈折率と、有機樹脂中に含まれる気泡の体積比率によって決定される合成屈折率のことを指し、合成屈折率は有機樹脂中に含まれる気泡の体積比が増えるほど低くなり、大気の屈折率へと近づく。
【0040】
光学素子101には、固体発光素子と接する一方の面から大気と接する他方の面に向かって気泡の数密度が大きくなるように気泡が分布しているため、光学素子101の有機樹脂と気泡の合成屈折率は、光学素子の光入射面から光射出面に向かって徐々に低くなっている。
【0041】
光学素子の中で、屈折率が連続的に変化して、大気との界面における屈折率の差が小さくなるため、大気へ光が取り出される際の反射が抑制されて光の取り出し効率が向上する。
【0042】
本実施の形態で示す光学素子101について説明する。光学素子101は発光素子と接する面(光入射面)から大気と接する面(光射出面)に向かって連続的に屈折率が低くなる。ここでは、光学素子内の屈折率の変化を、固体発光素子と平行な5つの面を用いて説明する。図1(B)に光学素子の各面について模式的に示す。
【0043】
図1(B)に示す光学素子101は光射出面である第1の面1001と、光入射面である第5の面1005と、第1の面1001と第5の面1005に挟まれる、第2の面1002、第3の面1003、及び第4の面1004とを有する。
【0044】
光学素子の各面は、第1の面1001から第5の面1005に向かって、順に屈折率が大きくなるように、異なる数密度で気泡が分布されている。光学素子101の各面について及び光学素子101内における光の進み方について説明する。
【0045】
固体発光素子103と接し、光が入射される面である第5の面1005は、気泡の分布が最も少なく、そのため見かけの屈折率が最も高い面である。第5の面1005は、高い屈折率を有する固体発光素子103の発光が入射される面である。そのため、固体発光素子103との屈折率の差がなるべく小さくなるように、できるだけ固体発光素子と近い、高い屈折率を有する面となる方がよい。
【0046】
したがって、第5の面1005には気泡が注入されず、第5の面1005の屈折率は光学素子に用いる有機樹脂の屈折率と等しくなることが好ましい。本実施の形態の光学素子に用いる有機樹脂の屈折率norgは1.5とし、第5の面1005には気泡がないため、第5の面1005の屈折率は1.5である。
【0047】
固体発光素子103と接する光学素子101の第5の面1005と、固体発光素子103との屈折率の差が小さくなることによって、固体発光素子103から光学素子101へと光が入射する際の、界面における反射が抑制されて、光を効率よく光学素子101へ入射させることができる。
【0048】
固体発光素子103からの発光は第5の面1005を通った後、第4の面1004を通る。第4の面1004は第5の面1005よりも屈折率の低い面である。第4の面1004は第5の面1005と同じ有機樹脂からなるが、第5の面1005よりも数密度が高くなるように気泡が分布されている。そのため、第4の面1004は有機樹脂と、分布された気泡との合成屈折率により、見かけの屈折率が第5の面1005よりも低い。
【0049】
第5の面1005と第4の面1004の屈折率の差は、固体発光素子の屈折率や、光学素子に用いる有機樹脂の屈折率、第5の面と第4の面の間の距離等によって適当な値を設定すればよい。
【0050】
光学素子が、光が通過する経路において、屈折率の異なるN個の面(Nは2以上の自然数)を有すると見なした際、大気と接する面を第1の面とし、隣接する面から順に第2の面、第3の面としたときの第kの面(kは自然数)の屈折率nは以下の数式(1)を満たすことが好ましい。数式(1)において、norgは有機樹脂の屈折率を示し、気泡に含まれる大気の屈折率は1.0とした。また、kは2以上N以下の自然数(2≦k≦N)である。
【0051】
【数1】

【0052】
数式(1)を満たすと、光学素子101の各面は、固体発光素子と接する面から大気と接する面に向かって屈折率が低くなり、また、隣接する2面間の屈折率の差は、光学素子のどの隣接する2面間においても、ほぼ等しくなり、各面の間で等間隔に屈折率が変化することを示す。したがって、有機樹脂部材内の各面の屈折率が固体発光素子から大気に向かって連続的に低くなり、全反射が抑制されるため、光の取り出し効率が向上する。
【0053】
なお、本実施の形態では、屈折率の異なる5つの面を用いて光学素子について説明するが、光学素子を構成する屈折率の異なるN個の面はもっと多く、理想的にはN=∞と見なせる程度に各面に気泡が均一に分布されると、各面の屈折率の差が小さくなり、反射が抑制される。
【0054】
また、光学素子が有する屈折率の異なる複数の面は、説明を容易にするために用いるだけであり、実際には、光学素子が含む複数の面に含まれる気泡の数密度は連続的に分布しており、各面の界面は曖昧である。したがって、各面の界面において、反射はほとんど生じることがなく、光学素子内の各面間では光はほとんど損失することなく進む。屈折率界面が曖昧なまま、発光素子の屈折率から大気の屈折率へと徐々に変化して光を取り出すため、本発明の一態様の光学素子は光の取り出し効率を向上することができる。
【0055】
続いて、各面内の気泡と有機樹脂による合成屈折率について説明する。
【0056】
有機樹脂部材の第kの面の屈折率nは以下の数式(2)で示される。ただし、Vakは第kの面に含まれる気泡の体積比率、Vbkは第kの面に含まれる有機樹脂の体積比率、norgは有機樹脂の屈折率である。ただし、Vak+Vbk=1である。また、有機樹脂部材に含まれる気泡の屈折率は1.0とした。
【0057】
【数2】

【0058】
数式(2)を用いて、各面が所望の屈折率となるように、有機樹脂と気泡の体積比を調整することが好ましい。例えば、本実施の形態では、第4の面1004の屈折率nを1.4とするために、数式(2)から、第4の面に含まれる気泡の体積比を決定する。有機樹脂の屈折率norgが1.5であることから、第4の面1004に含まれる気泡の体積比率Va4は0.2とする。
【0059】
また、数式(2)より、各面の屈折率nが数式(1)に示した条件を満たすためには、各面の有機樹脂と気泡の体積比率の関係が以下の数式(3)を満たすとよい。
【0060】
【数3】

【0061】
数式(3)を満たし、各面間の屈折率の差が小さくなるように、各面の有機樹脂と気泡の体積を調節することが好ましい。
【0062】
光学素子101において、第4の面1004を通った光は続いて第3の面1003、第2の面1002へと入射する。
【0063】
第3の面1003は第4の面1004よりも気泡の分布が多く、見かけの屈折率が低い。第3の面1003が数式(3)を満たすように気泡の体積比率を調整して、各面間の屈折率の差を小さくすると、光の取り出し効率が向上する。本実施の形態では第3の面1003の屈折率nは1.3、第3の面1003に含まれる気泡の体積比率Va3は0.4とした。
【0064】
続く、第2の面1002は、さらに気泡の分布を増やすことで、屈折率を低くする。本実施の形態では第2の面1002の屈折率nは1.2、第2の面1002に含まれる気泡の体積比率Va2は0.6とした。
【0065】
続く、第1の面1001は大気との界面であり、光が射出する面である。大気と接する第1の面1001の屈折率nは1.0より大きく1.1未満が好ましい。これは、屈折率が1.0である大気と第1の面1001との屈折率の差を小さくし、第1の面1001と大気との界面における反射を抑制して、光の取り出し効率を向上させるためである。
【0066】
本実施の形態では第1の面1001の屈折率nは1.1、第1の面1001に含まれる気泡の体積比率Va1は0.8とした。
【0067】
以上のように、各面間の屈折率が連続的に変化することで、大気との界面における反射が抑制されて、光の取り出し効率が向上する。また、光学素子内の各面の間では、反射が起こらないため、光の取り出し効率が向上する。
【0068】
大気と接する第1の面はその表面に気泡による空孔が空いていてもよい。有機樹脂部材に対して気泡の直径は十分に小さいため、気泡による空孔が生じていても光学素子の光取り出しにおいては影響がない。
【0069】
光学素子の内部の気泡はなるべく直径が小さいほうがよく、気泡の直径は光の波長以下であることが好ましい。また、同一面内で気泡は均一に分布している方が好ましい。固体発光素子の光は拡散しているため、光はあらゆる方向に進む。光学素子の同一面内において気泡が均一に分布していることで、どの方向に進んだ光も反射や全反射を起こすことなく大気に取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0070】
なお、各面の膜厚については特に限定しないが、各面の膜厚は100μm以下であることが好ましい。また、各面の膜厚は他の面の膜厚と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0071】
上記のように、固体発光素子と接する面から、大気と接する面へ向かって順に屈折率が低くなっていることで、固体発光素子の発光を大気へと取り出す際の、反射による光の損失が抑制されて、光の取り出し効率を向上することができる。
【0072】
本実施の形態で示した発光装置は、気泡が内包されていることで屈折率が固体発光素子から大気に向かって連続的に低くなる光学素子を介して固体発光素子の発光を大気へ取り出す。気泡が内包されていることで、屈折率の変化が緩やかに起こるため、本実施の形態で示した発光装置は、反射が抑制された、光の取り出し効率の高い発光装置である。
【0073】
したがって、屈折率の高い領域から低い領域へ効率よく光を取り出すことができる光学素子を提供できる。
【0074】
<変形例>
本実施の形態の発光装置の変形例を示す。
【0075】
本実施の形態の光学素子は、光射出面に凹凸の構造を有していてもよい。
【0076】
図2に、光射出面に凹凸の構造を有する光学素子について示す。図2(A)は光学素子が半球状の構造を含む発光装置の断面図であり、図2(B)は図2(A)に示した半球状の構造の点線部を拡大した図である。
【0077】
図2(A)に示すとおり、光学素子201は固体発光素子103と接する面(光入射面)から大気と接する面(光射出面)に向かって数密度が大きくなるように気泡が分布されており、見かけの屈折率が光入射面から光射出面に向かって低くなっている。
【0078】
光学素子201の光射出面は半球状の構造を有する。光学素子201が半球状の構造を有することで、光学素子201から大気へと臨界角を超えて射出する光が、全反射して光学素子201内を導波し、光の取り出し効率が低下する現象を抑制することができる。したがって、入射した光の取り出し効率をさらに高めることができる。
【0079】
凹凸の構造としては、例えば半球状の構造や、円錐、三角錐、四角錐、六角錐等の錐体を用いることができる。特に、凹凸の構造の底面を三角形、四角形、六角形とすると、光射出面に対する凹凸の構造充填率を高くすることができるため好ましい。光射出面に対する凹凸の構造の充填率が高くなるほど、固体発光素子の発する光が全反射する条件を満たしがたくなり、光の取り出し効率が高まる効果を奏する。そのため、光射出面に対する凹凸の構造の充填率を高くすることができる図形で構成されることが好ましい。
【0080】
光学素子201には、凹凸の構造として半球状の構造を設けた。半球状の構造とは、頂点を通る断面において円弧を含む。例えば、底面が円形であって、頂点を通る断面が半円であるものは半球状の構造の一態様である。また、底面が多角形であって、頂点を通る断面が円弧(半円等)を含むもの(傘状の構造と言うことができる)も半球状の構造の一態様である。半球状の構造の底面の形が円である場合は、多角形の角の数が多い場合と実質的に同一である。
【0081】
なお、異なる形や異なる大きさの凹凸の構造を配置して、発光装置を構成してもよい。例えば、隣接する大きな半球状の構造の隙間に、小さな半球状の構造を設けて、光の取り出し効率を高めることもできる。
【0082】
また、凹凸の構造は、設計上の微差により、扁平等が生じているものも含む。凹凸の構造と大気との間において、全反射を極力抑制することが可能な形状を採用することができる。
【0083】
光射出面に設ける凹凸の構造の直径は0.1〜10mm程度である。また、光射出面に設ける凹凸の構造は、発光素子の発光領域と重なる部分のみに設けてもよいし、光学素子の全面に設けてもよい。
【0084】
また、凹凸の構造が半球状の構造の場合、図2(B)に示すように、中心から外側に向かって同心円状に気泡の数密度が大きくなるように気泡が分布されていることが好ましい。ここでいう同心円状とは、半球状の構造の発光素子と平行または垂直な断面における円と同心円をなしていることを指す。気泡の分布が同心円状に大きくなることで、半球状の構造は半球の中心から同心円状に屈折率が低くなる。中心から同心円状に屈折率が低くなると、光学素子内を光が進む方向に沿って屈折率が低くなるため、光学素子内での各界面における光の反射が抑制されて、光の取り出し効率が高まる。
【0085】
凹凸の構造の内部の気泡の分布はこれに限らず、固体発光素子から最も離れた面において最も気泡の分布が大きくなる構成としてもよい。
【0086】
他の変形例として、本実施の形態の光学素子は光入射面に凹凸の構造を有していてもよい。光入射面に凹凸の構造を有することで、固体発光素子からの光の一部が固体発光素子と光学素子の界面で起こる全反射が繰り返され、光学素子に取り出せないといった現象を抑制することができる。また、光入射面の凹凸の構造と、光射出面の凹凸の構造の両方を備えていてもよい。図2(C)に光入射面と光射出面の両方に凹凸の構造を設けた構成を示す。
【0087】
光入射面の凹凸の構造は規則的な形状であっても、不規則な形状であっても良い。また、隣接する固体発光素子が備える凹凸の構造と連続する形状であっても、不連続な形状であってもよい。光入射面の凹凸の構造はストライプ状であっても効果を奏するが、マトリクス状の凹凸の構造が好ましい。
【0088】
また、光入射面の凹凸の構造は、凹凸の構造の上を平坦にする層を設けると、固体発光素子が有機EL素子である場合にも、透明電極を平坦に形成でき、透明電極の凹凸に起因する有機ELのリーク電流が抑制でき、高い信頼性が得られるため好ましい。
【0089】
光入射面の凹凸の構造の谷底から頂点までの高さは0.1〜100μm程度であればよく、特に1μm以上であると光の干渉による影響を抑制することができるため好ましい。また、隣接する頂点の間隔は1μm以上100μm程度であると好ましい。凹凸の構造を設けることにより、屈折率の高い高価な材料を用いて半球状の構造を作る必要がなくなり、製造が容易になる。
【0090】
凹凸の構造としては、例えば半球状の構造や、円錐、三角錐、四角錐、六角錐等の錐体を用いることができる。特に、凹凸の構造の底面を三角形、四角形、六角形とすると、凹凸の構造の充填率を高くすることができるため好ましい。凹凸の構造の充填率が高くなるほど、固体発光素子の発する光が全反射する条件を満たしがたくなり、光の取り出し効率が高まる効果を奏する。そのため、凹凸の構造の充填率を高くすることができる図形で構成されることが好ましい。
【0091】
また、光入射面の凹凸の構造は単層であっても、複数の層を積層したものであってもよい。例えば、屈折率が光学素子に用いる媒質の屈折率より高く固体発光素子の屈折率より低く、透光性とバリア性を有する無機材料膜を固体発光素子と光学素子との界面に備える構成とすることが好ましい。例えば酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜を用いることができる。透光性とバリア性を有する無機材料膜は、光の取り出し効率を低下することなく、固体発光素子への不純物の拡散を抑制することができる。例えば、該固体発光素子が有機EL素子である場合にも、水分等の不純物が発光体の内部に浸入する現象を抑制でき、発光装置の信頼性を向上することができる。
【0092】
光射出面と光入射面の凹凸の構造の例について図5及び図6に示す。なお、ここでは、凹凸の構造についてのみ示し、光学素子内部の気泡の分布については省略する。
【0093】
光射出面と固体発光素子側の面の両側に凹凸の構造を有する光学素子の一例について、図5(A−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図5(A−2)に示す。図5(A−1)に示した図形は、別の一例について、図5(B−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図5(B−2)に、一点鎖線GHの断面を図5(B−3)に示す。また別の一例について、図5(C−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図5(C−2)に、一点鎖線GHの断面を図5(C−3)に示す。また、光射出面に設けられた構造が半円柱状である光学素子の一例について、図5(D−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図5(D−2)に示す。
【0094】
また、光射出面に設けられた構造が角錐状である光学素子の一例について、図6(A−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面図を図6(A−2)に示す。別の一例について、図6(B−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面図を図6(B−2)に示す。また別の一例について、図6(C−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面図を図6(C−2)に示す。また、光射出面に設けられた構造が角柱状である光学素子の一例について、図6(D−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図6(D−2)に示す。
【0095】
図5及び図6に示すように、光学素子に設ける凹凸の構造は自由に組み合わせることができる。
【0096】
本実施の形態で示した発光装置は、気泡が内包されることで、見かけの屈折率が固体発光素子から大気に向かって連続的に低くなる光学素子を介して、固体発光素子の発光を大気へ取り出すため、界面における屈折率の差が小さく、反射が抑制された、光の取り出し効率が高い発光装置である。
【0097】
また、該光学素子は光射出面や、光入射面に凹凸の構造を設ける構造としてもよい。これらの構造を設けることで、さらに、界面における全反射が抑制され、光の取り出し効率が高い発光装置となる。
【0098】
したがって、屈折率の高い領域から低い領域へ効率よく光を取り出すことができる光学素子を提供できる。
【0099】
本実施の形態の発光装置は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0100】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の光学素子の作製方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0101】
本実施の形態で示す作製方法で作製する光学素子は、平面状の有機樹脂部材であり、一方の面から他方の面へ向かって見かけの屈折率が徐々に低くなるように気泡が注入された構成である。
【0102】
まず、第1の工程として、図3(A)に示すように、金型301に有機樹脂303を配置し、成型を行う。
【0103】
金型301は、上型301aと下型301bからなる一対の金型301であり、熱プレス機の上熱板305と下熱板307との間にセットされている。熱プレス機の上熱板305及び下熱板307から金型301に熱と圧力を加えることができる。また、上熱板305と下熱板307にはそれぞれ独立の熱源から熱が供給されており、金型301の上型301aと下型301bに異なる熱を与えて、上型と下型を異なる温度とすることができる。
【0104】
有機樹脂303の成型において、まずは、金型301を加熱して有機樹脂303を軟化点以上の温度とする。熱プレス機からは、有機樹脂303を軟化点以上の温度となるように熱を加えればよい。なお、このとき、熱プレス機の上熱板305と下熱板307から均一の熱を加えることで、金型301の上型301aと下型301bの温度は等しく樹脂内が均一で一様に流動性を有するようにすることが好ましい。
【0105】
同時に、熱プレス機から圧力を加えることによって、金型301を圧接する。金型301に加える圧力は、有機樹脂303が金型301に満遍なく広がり、樹脂全体に均一に圧力がかかるようになればよい。
【0106】
有機樹脂303が軟化点以上の温度となると、有機樹脂303は流動性を有し、熱プレス機によって圧接された金型301によって、金型301の形状に適合した形状へ変わる(図3(B)参照)。
【0107】
有機樹脂303の成型が終了しても、熱プレス機には熱と圧力を加えたままにしておき、続く、第2の工程で、下型301bに設けた管309から金型301内の有機樹脂に周期的に気泡を注入する(図3(C)参照)。
【0108】
有機樹脂303に注入する気泡は直径が小さいほうが好ましい。気泡の直径は、10nm以上10μm以下となることが好ましい。これは、気泡の直径が光学素子に入射される光の波長以下であると、光学素子内を光が進む際に、気泡から起因する屈折や反射等が起こらないからである。気泡に対してパルス状(拍節状)に圧力をかけることで、気泡を小さくすることができる。
【0109】
気泡が注入される間、有機樹脂303が軟化点以上の温度を保つように上熱板305及び下熱板307に熱を加える。有機樹脂303が軟化点以上の温度を保ち、流動性を有することで、気泡に含まれる大気の密度が有機樹脂の密度よりも小さいため、下型301bから注入された気泡は、上型301aの付近へと上昇していく(図4(A)参照)。
【0110】
なお、有機樹脂303内に気泡を注入するための圧力は、有機樹脂303を押し出すことができる程度の圧力でよい。この時、熱プレス機には金型301を圧接させるため、圧力をかけたままにしているが、有機樹脂303の成型は終了しているため、熱プレス機から加わる圧力は、そのほとんどが金型301にかかっている。そのため、金型301内の有機樹脂にはほぼ圧力が加わっておらず、有機樹脂303内の圧力は小さいため、気泡を注入するために加える圧力は小さくてよい。
【0111】
気泡を周期的に注入することで、有機樹脂内には一定の間隔で気泡が配置される。気泡を注入する周期は、用いた有機樹脂や、気泡を注入する圧力によって適宜決定することができる。有機樹脂中に気泡が均一に配置されるようであれば、どのような周期であってもよい。
【0112】
続く、第3の工程で、熱プレス機の上熱板305への熱の供給を停止する。
【0113】
上熱板305への熱の供給を停止したことで、有機樹脂303の上側に対する熱の供給がなくなり、有機樹脂303は上側から温度が下がり、軟化点以下の温度となって硬化する。硬化する際には、内部に気泡を内包したまま有機樹脂の上部は硬化する。
【0114】
なお、上熱板305の温度を下げるために、熱の供給を停止し自然冷却を行うだけでなく、さらに、上熱板305を冷却してもよい。上熱板305の降温レートを変えることで、有機樹脂の硬化速度が変わる。
【0115】
また、このとき、熱プレス機の下熱板307には熱を供給し続けて、有機樹脂303の下側は軟化点以上の温度を保つようにしておく。
【0116】
上熱板305への熱の供給を停止し、有機樹脂303の上部が硬化しはじめたら、続く第4の工程として、有機樹脂303に気泡を注入する周期を遅くする。これによって、気泡が分布する密度を異ならせることができる。
【0117】
有機樹脂の上部は温度が軟化点以下に低下し、硬化するため、有機樹脂303の上部には気泡は注入されなくなる。しかし、有機樹脂303の下部は、下熱板307から加わる熱によって軟化点以上の温度を保っているので、注入される周期の遅くなった気泡は、軟化点以上の温度を有する有機樹脂303の下部へと注入される。
【0118】
このように、気泡を注入する周期を変えることによって、有機樹脂303の上部と下部では注入される気泡の数密度を異ならせることができる。なお、気泡を注入する周期については、使用する有機樹脂の密度、軟化点、気泡を注入する圧力、熱プレス機から加わる熱等の条件によって適宜決定される。
【0119】
また、この時、同時に、上熱板の降温レートを変えて、有機樹脂303の硬化速度を変えることによって、光学素子内の気泡の数密度を調整してもよい。有機樹脂が上部から軟化点以下となって硬化していくタイミングに合わせて気泡を注入する周期を変えることで、気泡が分布する密度を異ならせることができる。
【0120】
また、この後、さらに何度か気泡を注入する周期を遅くしていってもよい。有機樹脂303に気泡を注入する周期は樹脂が硬化するタイミングに合わせて、有機樹脂の上面付近に最も多く気泡が分布されるように適宜調整すればよい。
【0121】
注入する周期を連続的に変化させることで、有機樹脂部材の気泡の数密度がさらに連続的に変化し、有機樹脂内の見かけの屈折率が連続的に変化するため、有機樹脂内での反射が抑制されて、光の取り出し効率が向上する(図4(B)参照)。
【0122】
続く、第5の工程として、有機樹脂への気泡の注入を停止する。気泡が有機樹脂303に満遍なく広がったら、気泡の注入を停止して、下型301b付近には気泡が注入されないようにする。
【0123】
続く、第6の工程で下熱板307への熱の供給も停止して、有機樹脂全体が完全に硬化するまで冷ます。このとき、熱の供給を停止して、自然冷却によって樹脂を硬化させるのみではなく、上熱板及び下熱板を人為的に冷却して、有機樹脂の硬化速度を調整してもよい。
【0124】
なお、第5の工程と第6の工程は、逆の順序でも良い。下熱板307への熱の供給を停止した後も有機樹脂が軟化点以上の温度を保つようであれば、先に、熱の供給を停止して樹脂を硬化させながら気泡を注入してもよい。
【0125】
また、熱板を人為的に冷却して、降温レートを調整して樹脂を硬化させながら、気泡を注入してもよい。樹脂の硬化速度と気泡を注入する周期を調整することで、さらに有機樹脂内に満遍なく気泡が分布することができる。
【0126】
有機樹脂が完全に硬化したら、有機樹脂に対する圧力の印加を停止する(図4(C)参照)。
【0127】
以上の工程で、光学素子は完成する。
【0128】
光学素子に、実施の形態1の変形例で示したような凹凸の構造を作製する場合は、凹凸の構造を有する金型に有機樹脂を配置して成型すればよい。なお、熱プレスによって凹凸の構造を作製する場合は、熱プレス機に金型をセットする際に、大気と接する面(光射出面)が上側に、固体発光素子と接する面(光入射面)が下側にくるようにセットするのがよい。
【0129】
気泡は有機樹脂よりも密度が小さく、有機樹脂に注入された気泡は有機樹脂の上部にたまりやすい。したがって、光学素子の大気と接し、気泡が多く分布される側(光射出面)を上側へセットすると、光射出面側へ気泡を集中して分布させるための特別な機構が必要なく好ましい。
【0130】
また、凹凸の構造は、有機樹脂部材を、熱プレス機によって成型した後から設けることもできる。例えば、エッチング法、砥粒加工法(サンドブラスト法)、マイクロブラスト加工法、液滴吐出法や、印刷法(スクリーン印刷やオフセット印刷などパターンが形成される方法)、スピンコート法などの塗布法、ディッピング法、ディスペンサ法、インプリント法、ナノインプリント法等を適宜用いて形成できる。
【0131】
本実施の形態で示した方法を用いて作製した、屈折率が連続的に変化する光学素子を用いた発光装置は、屈折率が固体発光素子から大気に向かって連続的に低くなる光学素子を介して固体発光素子の発光を大気へ取り出すため、界面における屈折率の差が小さく、反射が抑制された、光の取り出し効率が高い発光装置である。
【0132】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0133】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置に用いる固体発光素子について示す。本実施の形態では、固体発光素子として有機EL素子を用いる。有機EL素子の一例について、図7を用いて説明する。
【0134】
図7(A)に示す発光素子は、透明電極105と、透明電極105上の発光領域107と、発光領域107上の反射電極109を有する。
【0135】
本実施の形態に示す発光装置において、透明電極105は陽極として機能し、反射電極109は陰極として機能するが、本発明はこれに限られない。つまり、透明電極105が陰極として機能し、反射電極109が陽極と機能する構成としても良い。
【0136】
発光領域107は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていれば良い。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、発光領域107は、透明電極105側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。
【0137】
図7(A)に示す有機EL素子の作製方法について説明する。
【0138】
まず、光学素子上に透明電極105を形成する。陽極として機能する、透明電極105は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、インジウムスズ酸化物、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン等を用いることができる。なお、本明細書において、透明電極とは透光性を有する電極を指し、光が透過すれば透明電極と呼ぶことにする。したがって、本明細書においては、曇っていたり、色がついていたりしていても透光性を有していれば透明電極と呼ぶことにする。
【0139】
但し、発光領域107のうち、透明電極105に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、透明電極105に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0140】
透明電極105は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。
【0141】
次に、透明電極105上に、発光領域107を形成する。本実施の形態において、発光領域107は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有する。
【0142】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0143】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0144】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0145】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、透明電極105からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、透明電極105から発光領域107への正孔注入が容易となる。
【0146】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0147】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−[4−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0148】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0149】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0150】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0151】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0152】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0153】
また、正孔輸送層702には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0154】
また、正孔輸送層702には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0155】
発光層703は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0156】
なお、本発明の一態様において、有機EL素子は発光層を2層以上備えていても良い。複数の発光層を設け、それぞれの発光層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。
【0157】
発光層703に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。緑色系の発光材料として、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)、9,10−(ビフェニル−2−イル)−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCABPhA)、9,10−ジフェニル−2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]アントラセン(略称:2DPAPA)、9,10−ジ(2−ビフェニリル)−2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]アントラセン(略称:2DPABPhA)、9,10−ジ(2−ビフェニリル)−2−{N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアミノ}アントラセン(略称:2YGABPhA)、9−(N,N−ジフェニルアミノ)−10−フェニルアントラセン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0158】
また、発光層703に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス{2−[4’−(パーフルオロフェニルフェニル)]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナート)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナート)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリナト)白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナート)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0159】
なお、発光層703としては、上述した発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0160】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−[4−(3,6−ジフェニル−N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5−トリ(1−ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、9−{4−[3−(N、N−ジフェニルアミノ)−N−カルバゾリル]フェニル}−10−フェニルアントラセン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、9−フェニル−10−(4−[N−フェニル−N−{3−(N−フェニル)カルバゾリル}]アミノ)フェニルアントラセン(略称:PCAPA)、9−[4’−{N−フェニル−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)}アミノビフェニル−4−イル]−10−フェニルアントラセン(略称:PCAPBA)、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0161】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0162】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0163】
また、発光層703として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0164】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0165】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0166】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0167】
発光領域は、図7(B)に示すように、透明電極105と反射電極109との間に複数の発光層が積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0168】
発光領域107は、図7(C)に示すように、透明電極105と反射電極109との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び反射電極109と接する複合材料層708を有していても良い。
【0169】
反射電極109と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて反射電極109を形成する際に、発光領域107が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0170】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0171】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0172】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0173】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0174】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0175】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0176】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0177】
電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、CuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)のいずれかを用いることが好ましい。
【0178】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0179】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。
【0180】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0181】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0182】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0183】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、ビスベンゾイミダゾ[2,1−a:2’,1’−a]アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−10,21−ジオン(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0184】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0185】
その他にも、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を用いることができる。
【0186】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。
【0187】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すれば良い。
【0188】
そして、発光領域107上に、反射電極109を形成する。
【0189】
陰極として機能する、反射電極109は、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、およびカルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、およびマグネシウム、これらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属およびこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0190】
光の取り出し方向とは反対側に設けられる反射電極109は、反射機能を有する。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。上述の材料は、地殻における存在量が多く安価であるため、発光素子の作製コストを低減することができ、好ましい。
【0191】
但し、発光領域107のうち、反射電極109に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウムスズ酸化物等様々な導電性材料を用いることができる。
【0192】
なお、反射電極109を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0193】
以上により、本実施の形態の発光装置を作製することができる。
【0194】
本実施の形態で示した、固体発光素子を本発明の光学素子に設けることで、光の取り出し効率の高い、発光装置が提供できる。
【0195】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0196】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置のうち、主に照明装置に用いることができる発光装置について図8を用いて説明する。なお、図8(A)は、発光装置600を示す上面図、図8(B)及び図8(C)は図8(A)をA−Bで切断した断面図である。
【0197】
図8(A)に示す発光装置600は、発光素子の一方の電極が第1の端子603と電気的に接続されており、発光素子の他方の電極が第2の端子604と電気的に接続された構造を有する。
【0198】
図8(B)に示す発光装置600は、第1の基板601上に、第1の電極605、EL層606、および第2の電極607を含む発光素子608を有する。発光素子608は第1の基板側から光を取り出すため、第1の基板601として、本発明の一態様の光学素子が用いられている。
【0199】
図8(B)に示すように第1の端子603は補助配線610および第1の電極605に電気的に接続されている。また、第2の端子604は第2の電極607と電気的に接続されている。また第1の電極605の端部、および補助配線610と第1の電極とが積層されている第1の電極605上には、絶縁層609が形成されている。なお、図8(B)においては、補助配線610の上に第1の電極605が形成されているが、第1の電極605の上に補助配線610が形成されていてもよい。
【0200】
また、第1の基板601と第2の基板602はシール材612によって接着されている。また、第1の基板601と第2の基板602との間には、乾燥剤611を有する。
【0201】
図8(B)に示す発光装置は、発光素子608からの発光を発光素子608の第1の電極605側から取り出す、いわゆるボトムエミッション型の発光装置であるが、本発明はこれに限られることはなく発光素子608の第2の電極607側から光を取り出すトップエミッション型の発光装置を形成することもできる。
【0202】
トップエミッション型の発光装置としては、図8(C)に示すような構造とすることができる。
【0203】
トップエミッション型の発光装置600は、第1の基板601上に、第1の電極605、EL層606、および第2の電極607を含む発光素子608を有する。トップエミッション型の発光装置600は第1の基板601とは反対側の第2の基板602側から光を取り出すため、第2の基板602を本発明の一態様の光学素子とする。
【0204】
図8(C)に示すように第1の端子603は第1の電極605に電気的に接続され、第2の端子604は第2の電極607と電気的に接続されている。また、第1の電極605の端部には、絶縁層609が形成されている。また、第2の電極607上に補助配線610が形成されている。
【0205】
また、第1の基板601と第2の基板602はシール材612によって接着されている。また、第1の基板601と第2の基板602との間には、充填材613が封入されている。充填材は発光素子の発光が光学素子へ入射する前に、大気へと入射することを防止するために、封入されている。
【0206】
発光素子608と充填材613の間にはガスバリア層を設けてもよい。ガスバリア層を設けることで、発光素子に水分等の不純物が侵入することがない。また、侵入した水分を取り除くため、充填材613は乾燥材入りの充填材としてもよい。
【0207】
なお、図8(A)に示す発光装置600の形状は八角形であるが、本発明の一態様はこれに限られない。発光装置600は、その他の多角形または曲線をもつ形状としてもよい。特に、発光装置600の形状としては、三角形、四角形、正六角形などが好ましい。これらの形状にすることで、限られた面積に複数の発光装置600を隙間無く設けることができるためである。
【0208】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を得ることができる。なお、本発明の一態様の発光装置は気泡を注入することで、固体発光素子から大気に向かって屈折率が連続的に低くなる光学素子を介して固体発光素子の発光を大気へ取り出すため、反射が抑制され、光の取り出し効率が高い発光装置である。
【0209】
また、光を取り出す面(光射出面)に凹凸の構造を設ける構造としてもよい。これらの構造を設けることで、高屈折率の材料を用いなくとも、さらに反射が抑制され、光の取り出し効率が高い発光装置となる。
【0210】
したがって、低屈折率で安価な材料を用いて光の取り出し効率が高い発光装置を提供することができる。
【0211】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0212】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である照明装置の一例について、図9を用いて説明する。
【0213】
なお、本実施の形態に示す照明装置は、上記の実施の形態で説明した本発明の一態様である発光装置を適用して形成することができる。
【0214】
図9は、本発明の一態様である照明装置を室内の照明装置8001として用いた例である。なお、照明装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8002を形成することもできる。本実施の形態で示す照明装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8003を備えても良い。
【0215】
また、本発明の一態様である照明装置は、すべて透光性の材料で形成することにより窓ガラス8004としても用いることができる。
【0216】
さらに、本発明の一態様である照明装置は、発光装置をテーブル8005の表面に用いることによりテーブルとしても用いることができる。なお、その他の家具の一部に発光装置を用いることにより、家具として用いることができる。
【0217】
以上のようにして、本発明の一態様である照明装置は、様々な用途に用いることができる。本実施の形態で示した照明装置は、上記の実施の形態で示す本発明の一態様の発光装置を用いているため、光の取り出し効率が向上された、効率のよい照明装置である。
【0218】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0219】
101 光学素子
103 固体発光素子
105 透明電極
107 発光領域
109 反射電極
201 光学素子
301 金型
301a 上型
301b 下型
303 有機樹脂
305 上熱板
307 下熱板
309 管
600 発光装置
601 基板
602 基板
603 第1の端子
604 第2の端子
605 電極
606 EL層
607 電極
608 発光素子
609 絶縁層
610 補助配線
611 乾燥剤
612 シール材
613 充填材
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層
1001 第1の面
1002 第2の面
1003 第3の面
1004 第4の面
1005 第5の面
8001 照明装置
8002 照明装置
8003 照明装置
8004 窓ガラス
8005 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外域から赤外域の間の波長の光が入射される光学素子であって、
気泡が内包されている媒質を有し、
光が入射される面を光入射面とし、他方の面を光射出面とし、
前記気泡は前記媒質内において、前記光入射面から前記光射出面まで、光が進む方向に沿って数密度が高くなるように分布しており、前記気泡の直径は、前記光学素子に入射される光の波長以下である光学素子。
【請求項2】
請求項1において、前記光射出面の屈折率は1.0より大きく1.1未満である光学素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記気泡の直径は10nm以上10μm以下である光学素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記光入射面は凹凸の構造を有する光学素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記光射出面は凹凸の構造を有する光学素子。
【請求項6】
請求項5において、前記凹凸の構造は半球状の構造であり、
前記半球状の構造の屈折率は、半球の中心から外側に向かって同心円状に低くなる光学素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光学素子と、
前記光入射面上の固体発光素子と、を有する発光装置。
【請求項8】
請求項7において、前記固体発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子である発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置を用いた照明装置。
【請求項10】
媒質を一対の金型の間に流し込み、前記一対の金型を加熱しながら、前記一対の金型を圧接してその間の前記媒質に圧力を加えて、前記媒質を所望の形状に成型する工程と、
前記媒質を軟化点以上の温度に保ちながら、前記媒質の下方から第1の周期で気泡を注入する工程と、
前記媒質の上部の金型を冷却する工程と、
前記媒質内の前記気泡の分布が連続的になるように、前記媒質の下方から、前記第1の周期よりも長い第2の周期で気泡を注入する工程と、
前記媒質の下方からの気泡の注入を終了する工程と、
前記媒質の下部の金型を冷却する工程と、を有する光学素子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−186154(P2012−186154A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26830(P2012−26830)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】