説明

光学素子、電気光学装置、投射型映像装置及び光学素子の製造方法

【課題】製品使用時においても識別可能であり、識別標識が消えたり、滲んだりすることがない光学素子の提供。
【解決手段】透光性基板101と、透光性基板101の光学領域Lから外れた周縁領域Eに設けられ認識マークMと、認識マークMを覆うように透光性基板101の主面上に設けられた光学機能膜としての反射防止膜ARと、を備え、認識マークMは透光性基板101の主面上にインクジェット方式で印刷された。透光性基板101の光学領域から外れた周辺領域Eに認識マークMが設けられているので、防塵ガラスとしての本来の機能を阻害することがない。認識マークMが透光性基板101にインクジェット方式で直接形成されているので、インクジェットのインクが滲むことがなく、認識マークMを明確に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、この光学素子を備えた電気光学装置、この電気光学装置を備えた投射型映像装置、並びに光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、投射型映像装置には電気光学装置が組み込まれている。この電気光学装置として、透明基板と液晶ライトバルブとがアクリル系紫外線硬化型接着剤を用いて接着されたものであって、透明基板がガラス基板と、このガラス基板の液晶ライトバルブ側の面に設けられた遮光膜とを備え、この遮光膜が外部からの入射光を反射する反射膜と液晶ライトバルブ側からの戻り光を吸収する吸収層とを積層してなる2層構造の従来例がある(特許文献1)。
この特許文献1で示される従来例では、遮光膜は、反射膜としてのクロム膜と、吸収層としての酸化クロム膜との積層により構成されている。ここで、クロム膜からなる反射膜の表面では入射光を反射し、酸化クロム膜からなる吸収膜では液晶ライトバルブからの戻り光を吸収して反射を抑える。このように遮光膜は、入射光を効率良く反射して透過率を低く抑え、かつ液晶ライトバルブからの戻り光の反射を抑制する機能が求められている。
【0003】
また、電気光学装置として、反射防止膜が防塵ガラス基板の光入射面に形成され、光入射側防塵ガラスと透過型液晶パネルの対向基板とが接着層で貼り合わされた従来例がある(特許文献2)。
この特許文献2の従来例では、接着層の屈折率を、光入射側防塵ガラスの屈折率及び対向基板の屈折率に近づけることにより、接着層の界面での反射を抑えている。反射膜は、防塵ガラス基板の光入射面の外周部に形成されている。反射膜としては、クロム、アルミニウム、銀等の金属膜が用いられている。反射膜を含め、光入射面には反射防止膜が形成されている。光入射側防塵ガラスの反射膜の矩形環状のパターンは、切り代を挟んで縦横に並ぶように形成されている。
【0004】
ところで、近年、光学素子としての透明基板や、この透明基板を含む電気光学装置の品質を、ロット番号等を用いてトレースできるよう管理するために、光学素子の表面にマーキングを施される場合がある。
光学素子では、光学特性に影響を与えないように、光学領域外にマーキングをする必要があるが、反射膜(クロム、銀、等)や反射防止膜(誘電体多層膜)の表面をレーザー等により文字状に削除することでマーキングを形成すると、削除した領域から入射した光が迷光となって、液晶パネルを透過する光の透過量が低下してしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、マーキングを施す方法として、インクジェット方式を用いることが考えられる。
インクジェット方式を用いて印刷する従来例として、例えば、光ファイバーケーブルのケーブルを覆っている樹脂テープの表面にインクジェットを用いてインクによるマーキングを行うものがある(特許文献3)。
さらに、偏光フィルム等からなる光学フィルムの片面に粘着層を介して保護フィルムを設け、保護フィルムの表面に識別用のインク情報をインクジェット方式で形成する従来例がある(特許文献4)。
【0006】
また、偏光板表面に保護フィルムが剥離可能に貼付されている保護フィルム付偏光板において、保護フィルムの表面にインクジェット用インクによりマーキングが施されている従来例がある(特許文献5)。この特許文献5の従来例では、インクジェット用インクによるマーキングは特に制限されず、文字、数字、記号、図形、絵等の1種を、または2種以上を組み合わせて行われる。そのマーキング位置も適宜に設定される。マーキングによりバーコードを付すこともでき、保護フィルム付偏光板をバーコード管理することも可能になり、出荷Noの蓄積、納入数量、品質情報、品番コード等を一括管理できるようになる。
【0007】
さらに、第1水晶板と位相差フィルムとの間に粘着層を設け、位相差フィルムと第二水晶板との間に粘着層を設けた光学ローパスフィルターにおいて、粘着層の表面であって光学有効エリア外にマークをインクジェットプリンターによって形成する従来例がある(特許文献6)。
また、液晶パネルに防塵用基板が貼り付けられ、この防塵用基板の液晶パネルの有効領域以外の部分にマークが形成された従来例がある(特許文献7)。この特許文献7の従来例では、液晶パネルのTFT基板側に防塵用基板が接着剤で取り付けられ、この防塵用基板のTFT基板に対向する面とは反対側の面に、例えば、インクジェット、レーザーを用いた金属箔転写法又はレーザーによるガラスダイレクトマーキング等の手法によってマークが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−233733公報
【特許文献2】特開2008−170946公報
【特許文献3】特開平1−150105公報
【特許文献4】特開2000−321422公報
【特許文献5】特開2003−014934公報
【特許文献6】特開2007−072268公報
【特許文献7】特開2009−047880公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2で示される従来例では、光学素子の光学領域以外に、光学素子の製品番号等を示す識別標識を付すことに関する言及がない。
特許文献3で示される従来例では、樹脂テープの表面にインクジェットでマーキングがされているため、マーキングが露出されることになり、製品使用時にマークが剥がれるという課題がある。
特許文献4で示される従来例では、保護フィルムの表面に識別用のインクが形成されているため、識別用のインクが露出していることになり、このインクが剥がれるという課題がある。その上、光学素材を実際に使用するために保護フィルムを剥離した後では、光学素材の識別を行うことができない。
【0010】
特許文献5で示される従来例では、特許文献4の従来例と同様に、保護フィルムの表面にインクジェット用インクによりマーキングが施されているため、マーキングが露出されることに伴う剥がれや、保護フィルムを剥離した後には偏光板の識別が行えないという課題がある。
特許文献6で示される従来例では、粘着層の表面にマークを設けているため、インクジェットと粘着層を構成する材料との関係によっては、マークに滲みが生じることになり、正確に識別することができないという課題がある。
引用文献7で示される従来例では、マークは防塵用基板の表面に露出して形成されているため、マークが擦れたり、剥がれたりする恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、前述の課題を解決するためになされたものであって、製品使用時においても識別可能であり、識別標識が消えたり、滲んだりすることがない光学素子、電気光学装置、投射型映像装置及び光学素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[適用例1]
本適用例に係る光学素子は、透光性基板と、当該透光性基板の前記光学領域から外れた周縁領域に設けられ認識マークと、当該認識マークを覆うように、前記透光性基板の主面上に設けられた光学機能膜と、を備えた光学素子であって、前記認識マークは、前記透光性基板の主面上にインクジェット方式で印刷されたことを特徴とする。
この構成の本適用例では、透光性基板の光学領域から外れた周辺領域に認識マークが設けられているので、光学素子としての本来の機能を阻害することなく、認識マークを認識することができる。その上、認識マークが、直接、透光性基板にインクジェット方式で形成されているので、粘着層に形成される場合に比べてインクが滲むことがなく、認識マークを明確に認識することができる。そして、インクジェット方式では、使用するインクの色を光学機能膜に比べて見やすいものに設定することで、認識マークをより見やすいものにすることができる。さらに、認識マークは光学機能膜で覆われているので、製品使用時に認識マークを利用することができるだけでなく、認識マークが擦れたり剥がれたりすることがない。そして、認識マークを覆う膜は、光学素子で必須の光学機能膜であり、別に被膜をすることを要しない。そのため、従来の光学素子の製造手順の中で認識マークの形成を組み込むことができるから、光学素子の製造コストを抑えることができる。
ここで、認識マークとは、光学素子や電気光学装置の型番等の製品に関する情報、その他の情報であり、数字、文字、記号等により表示されるものである。また、光学領域とは、光学素子として有効利用される主面上の領域である。
【0013】
[適用例2]
本適用例に係る光学素子では、前記光学機能膜は反射防止膜であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、反射防止膜と透光性基板との間に認識マークが設けられるので、反射防止膜自体の機能が損なわれることがない。
【0014】
[適用例3]
本適用例に係る光学素子では、前記光学機能膜は、前記透光性基板の前記光学領域から外れた周縁領域に設けられ遮光膜であり、当該遮光膜は、前記透光性基板へ入射する光を反射する反射層と、前記光を吸収する吸収層と、を有し、前記反射層と前記吸収層とは、前記透光性基板の表面に順に積層されていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、光が透光性基板を透過したとしても、その光は反射層で反射され、透光性基板の光学領域を透過した後に吸収層に入射された光は吸収層で吸収される。そのため、認識マークがあっても、遮光膜自体の機能を損なうことがない。
【0015】
[適用例4]
本適用例に係る光学素子では、前記認識マークは、前記透光性基板と前記反射層との間に設けられていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、認識マークが透光性基板と反射層との間に設けられているので、透光性基板に直接設けられる認識マークが透光性基板を通じて認識しやすくなる。
【0016】
[適用例5]
本適用例に係る光学素子では、前記認識マークは、前記反射層と前記吸収層との間に設けられていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、認識マークが反射層と吸収層との間に設けられているので、吸収層を透過して認識マークを光学素子の裏面側から認識することができる。
【0017】
[適用例6]
本適用例に係る電気光学装置は、前述の構成の光学素子と、液晶パネルと、を備え、前記透光性基板の前記認識マークが設けられていない側の主面が、前記液晶パネルと対向していることを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学機能膜として反射防止膜が用いられた光学素子において、液晶パネルとの位置が好適となる。
【0018】
[適用例7]
本適用例に係る電気光学装置は、前述の光学素子と、液晶パネルと、を備え、前記透光性基板の前記遮光膜が設けられている側の主面が、前記液晶パネルと対向していることを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学機能膜として遮光膜が用いられた光学素子において、液晶パネルとの位置が好適となる。
【0019】
[適用例8]
本適用例に係る投射型映像装置は、光源と、当該光源からの光を画像情報に応じて変調する電気光学装置と、当該電気光学装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備え、前記電気光学装置は、前述の電気光学装置であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、前述の効果を奏することができる投射型映像装置を提供することができる。
【0020】
[適用例9]
本適用例に係る光学素子の製造方法は、透光性基板の光学領域から外れた周縁領域の主面上にインクジェット方式で認識マークを印刷し、当該認識マークを覆うように光学機能膜を前記透光性基板の主面上に設けることを特徴とする。
この構成の本適用例では、前述の効果を奏することができる光学素子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光学素子の断面図。
【図2】第1実施形態にかかる光学素子の平面図。
【図3】(A)から(D)は第1実施形態にかかる光学素子を製造する方法を説明する概略図。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる電気光学装置の断面図。
【図5】第2実施形態にかかる電気光学装置の平面図。
【図6】(A)から(C)は前記電気光学装置を製造する方法を説明する概略図。
【図7】(D)(E)は前記電気光学装置を製造する方法を説明する概略図。
【図8】第2実施形態の変形例にかかる電気光学装置を示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる電気光学装置の断面図。
【図10】第3実施形態にかかる電気光学装置の平面図。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる電気光学装置の断面図。
【図12】第4実施形態にかかる電気光学装置の裏面図。
【図13】本発明の第5実施形態にかかる電気光学装置の断面図。
【図14】電気光学装置を構成する光学素子の光が出射される側の平面図。
【図15】電気光学装置の要部の拡大断面図。
【図16】(A)〜(C)は電気光学装置の製造方法を説明する斜視図。
【図17】(D)(E)は電気光学装置の製造方法を説明する斜視図。
【図18】電気光学装置の変形例の要部を示す拡大断面図。
【図19】電気光学装置の異なる変形例の要部を示す拡大断面図。
【図20】本発明の第6実施形態に係る投射型映像装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
第1実施形態を図1から図3に基づいて説明する。
図1には第1実施形態の光学素子100の断面が示され、図2には光学素子100の平面が示されている。本実施形態の光学素子100は投射型映像装置、デジタルカメラ、その他の電子機器で使用される。
図1及び図2において、光学素子100は、透光性基板101と、この透光性基板101の表面に設けられた光学機能膜としての反射防止膜ARとを備えた防塵ガラスであり、その主面の中心部分に光学領域Lが設けられている。なお、図1において、反射防止膜ARは透光性基板101と同じ厚さに図示されているが、これは、反射防止膜ARの構成をわかりやすくするためのものであり、実際には、反射防止膜ARの膜厚は透光性基板101の厚さに比べて小さく(薄く)なっている。
【0023】
透光性基板101は、例えば、石英、無アルカリガラス、水晶、サファイア、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)等の材料から形成される基板である。この透光性基板101は、平面寸法の縦横が所定寸法、例えば、縦が10mm以上30mm以下、横が13mm以上40mm以下の平面視で外周が矩形状に形成されている。
光学領域Lは平面視で外周が矩形状とされ、その各辺の位置は透光性基板101の各辺から適宜な寸法、例えば、2mmをもって設定される。
反射防止膜ARは、低屈折層と高屈折層、例えば、低屈折率の酸化ケイ素(SiO)の低屈折層と、高屈折率の酸化チタン(TiO)又は酸化タンタル(Ta)の高屈折層とが交互に積層された構造である。
【0024】
透光性基板101の反射防止膜ARが設けられる主面であって光学領域Lのから外れた周辺部分Eに認識マークMが形成されている。
図2では、認識マークMは、「ABC」の記号として表示されている。認識マークMは反射防止膜ARを通じて認識可能とされる。本実施形態では、「ABC」という文字の他に、他のアルファベット、日本語、その他の言語を構成するための文字、数字、記号、図形、バーコード等、内容を識別することができるものであればその種類が限定されない。また、本実施形態では、認識マークMを読みやすくするために大きく表示したが、肉眼あるいは機械等で読み取れる大きさであればよい。認識マークMを表示する位置は図2では平面矩形状の光学素子100の下辺部としたが、光学素子100の隅部であってもよい。
【0025】
図3には第1実施形態にかかる光学素子100を製造する方法を説明する概略が示されている。
図3(A)において、まず、大判の基板101Aを用意する。この大判の基板101Aを複数個、図では、9個分割することで、図1及び図2で示される透光性基板101の1枚分となる。
図3(B)に示される通り、大判の基板101Aの各透光性基板101に対応する位置に「ABC」という認識マークMをインクジェット方式で印刷する。
ここで、インクジェット方式とは、一般に10〜100μm径の微小なノズル開口部と圧力発生素子とが設けられた圧力室にインクが充填され、圧力発生素子を電子的に制御することによって圧力室内のインクを加圧し、その圧力で、ノズル開口部からインクを微小な液滴として吐出するものである。圧力発生素子の種類により、ピエゾ素子による圧電振動子を用いたピエゾ方式や、発熱素子を用い、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力を利用するインクジェット方式など、種々の方式がある。本実施形態では、いずれのインクジェット方式も用いることができる。インクは透光性基板101に塗布した際には弾かない材料が用いられる。
その後、図3(C)に示される通り、この大判の基板101Aの一面に反射防止膜ARAを従来と同様の方法で蒸着する。反射防止膜ARAの成膜は大判の基板101Aに印刷された認識マークMが乾燥した後に行われる。なお、図3(C)では、反射防止膜ARAをフィルム状に図示しているが、これは、大判の基板101Aに反射防止膜ARAが設けられることを模式的に示したものであり、反射防止膜ARAがフィルムを大判の基板101Aに貼り付けて形成されることを意味するものではない。
さらに、図3(D)に示される通り、ダイシング装置、その他の装置によって、大判の基板101Aを複数に分割、本実施形態では、9個に分割し、1つの光学素子100を製造する。
【0026】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)光学領域Lから外れた周縁領域Eにインクジェット方式で認識マークMが印刷される透光性基板101と、この透光性基板101において認識マークMを覆うように設けられる光学機能膜としての反射防止膜ARとを備えて防塵ガラスの光学素子100を構成した。透光性基板101の光学領域Lから外れた周縁領域Eに認識マークMが設けられているので、防塵ガラスとしての本来の機能を阻害することなく、認識マークMを認識することができる。その上、認識マークMが透光性基板101にインクジェット方式で直接形成されているので、インクジェットのインクが滲むことがなく、認識マークMを明確に認識することができる。認識マークMが反射防止膜ARで覆われているので、製品使用時に認識マークMを利用することができるだけでなく、認識マークMが擦れたり剥がれたりすることがない。そして、認識マークMを覆う膜は、反射防止膜ARであるから、別に被膜をすることを要しないため、光学素子の製造コストを抑えることができる。
【0027】
(2)透光性基板101の反射防止膜ARが設けられる側の主面に認識マークMが設けられ、この認識マークMを覆うように反射防止膜ARが設けられるから、反射防止膜ARの機能が損なわれることがない。
(3)光学領域Lが平面に複数箇所形成された大判の基板101Aにおいて、光学領域Lから外れた領域にインクジェット方式で認識マークMを複数箇所印刷し、これらの認識マークMを覆うように反射防止膜ARAを大判の基板101Aに設け、その後、所定サイズに切断して光学素子100を製造したから、複数の光学素子100を容易に製造することができる。
【0028】
本発明の第2実施形態を図4から図8に基づいて説明する。
図4には第2実施形態の電気光学装置の断面が示され、図5には電気光学装置の平面が示されている。
図4において、電気光学装置1は、光学素子としての平板状のカバーガラス10と、このカバーガラス10に設けられた液晶パネル20と、この液晶パネル20に設けられる防塵ガラス24と、これらのカバーガラス10、液晶パネル20及び防塵ガラス24の周縁を保持する図示しないフレームと、液晶パネル20に接続され外部からの電力を供給するための図示しないケーブルとを備えて構成されている。
【0029】
図4及び図5に示される通り、カバーガラス10は、一方の主面から入射光Inが入射され光学領域Lが平面の中心部分に設定される透光性基板11と、この透光性基板11の光学領域Lを規定する額縁として機能し光が出射される側の平面に設けられ光学機能膜としての遮光膜12とを備え、透光性基板11及び遮光膜12と液晶パネル20とは紫外線硬化型接着剤からなる接着層13で互いに接合されている。
透光性基板11は、例えば、石英、無アルカリガラス、水晶、サファイア、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)等の材料から形成される基板である。この透光性基板11は、平面寸法の縦横が所定寸法、例えば、縦が10mm以上30mm以下、横が13mm以上40mm以下の平面視で外周矩形状に形成されている。
光学領域Lは平面視で外周矩形状とされ、その各辺の位置は透光性基板11の各辺から適宜な寸法、例えば、2mmをもって設定される。この寸法は電気光学装置1の種類や大きさによって相違する。
透光性基板11の光が入射される主面には反射防止膜ARが設けられている。
【0030】
図5に示される通り、遮光膜12は、光学領域Lから外れた外周領域Eに配置され、その主面が所定幅、例えば、2mmの帯状に形成されている。
遮光膜12は、透光性基板11へ入射する光を反射する反射層121及びこの反射層121に積層され光を吸収する吸収層122を有する構造である。
反射層121は高反射率膜であり、吸収層122は低反射率膜である。
ここで、反射層121を構成する材料と吸収層122を構成する材料とは、例えば、反射層121がクロムから形成され吸収層122が酸化クロムから形成される場合が考えられる。
【0031】
この構成の電気光学装置1では、外部から入射光Inが透光性基板11の光学領域Lの領域外に入射すると、透光性基板11と反射層121との境界面で反射される。入射光Inが透光性基板11の法線に対して斜めに入射すると、透光性基板11、接着層13及び液晶パネル20を通り、この液晶パネル20の内部で反射して反射光となるが、この反射光が吸収層122に入射すると、この吸収層122で吸収される。このように、遮光膜12は、入射光Inを効率良く反射して透過率を低く抑え、かつ液晶パネル20からの反射光を抑制する機能がある。
【0032】
透光性基板11の反射層121と対向する面には認識マークMがインクジェット方式で形成されている。図3では、認識マークMは、第1実施形態と同様に、「ABC」の記号として表示されている。本実施形態では、遮光膜12が有色の材料から構成される場合を考慮し、透光性基板11を透過して認識マークMが認識されるようになっている。さらに、液晶パネル20が赤色用(R)、緑色用(G)、青色用(B)を考慮して、認識マークMの色が設定される。本実施形態においても、認識マークMを表示する位置は下辺部に限定されるものではなく、光学素子10の隅部であってもよい。
接着層13は紫外線硬化型接着剤、その他の接着剤であって、透光性基板11と屈折率が同じ接着剤から構成される。
【0033】
図4において、液晶パネル20は、液晶ライトバルブと称されるものであり、吸収層側に設けられた平面矩形状の対向基板21と、この対向基板21に積層された液晶部22と、液晶部22に積層され対向基板21と同じ大きさのTFT基板23と、このTFT基板23には防塵ガラス24が積層されている。
液晶部22は、対向基板21とTFT基板23との外周縁部に設けられたシール材221と、このシール材221の内部に収納された液晶222とを備えている、
【0034】
対向基板21は、石英基板、ガラス基板が用いられている。
対向基板21の液晶部22に対向する面には液晶222と接する領域に、液晶222に画素電極(図示せず)とともに駆動電圧を印加する透明電極、例えば、ITO膜から構成された対向電極(図示せず)が全面に渡って形成されている。
TFT基板23は、石英基板、ガラス基板、シリコン基板が用いられている。
TFT基板23の液晶部22に対向する面であって液晶222と接する領域には、画素を構成し、かつ、対向電極とともに液晶222の駆動電圧を印加する透明電極、例えば、ITOから構成された画素電極(図示せず)が配置されている。
TFT基板23の画素電極の上には、ラビング処理された配向膜(図示せず)が設けられており、対向基板21の対向電極の上には、同様に、ラビング処理された配向膜(図示せず)が設けられている。これらの配向膜は、例えば、ポリイミド膜などの透明な有機膜から構成される。
防塵ガラス24は、石英基板、ガラス基板が用いられる。防塵ガラス24とTFT基板23とは接着剤で接着固定され、防塵ガラス24のTFT基板23と対向する面とは反対側の面には反射防止膜ARが設けられている。
【0035】
次に、第2実施形態の電気光学装置1を製造する方法を図6及び図7に基づいて説明する。
[光学素子の製造方法]
まず、図6(A)に示される通り、大判の基板11Aを用意する。この大判の基板11Aを複数個(図6では9個)分割することで、図4及び図5で示される透光性基板11の1枚分となる。
大判の基板11Aの所定位置の各透光性基板11に対応する位置に「ABC」という認識マークMを左右反転させた状態でインクジェット方式により印刷する。つまり、本実施形態では、透光性基板11の正面側から透光性基板11の裏面に印刷された認識マークMを認識するので、透光性基板11へ印刷される認識マークMは左右が反転された状態となる。
図6(B)に示される通り、左右反転されて表示される認識マークMを覆うように、反射層121を構成するために高反射率層121Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で大判の基板11Aの上に成膜し、図6(C)に示される通り、高反射率層121Aの上に、吸収層122を構成するために低反射率層122Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で成膜する。
【0036】
図7(D)で示される通り、低反射率層122A及び高反射率層121Aの光学領域Lに対応する部位にエッチングを行う。そのため、予め光学領域Lと同じ大きさの開口が設けられた図示しないマスクを低反射率層122Aの上に配置し、このマスクの上からエッチング液を浸す。
その後、図7(E)に示される通り、ダイシング装置、その他の装置によって、大判の基板を複数に分割し、1つの光学素子としてのカバーガラス10を製造する。
【0037】
[光学素子と液晶パネルとの接合]
対向基板21、液晶部22及びTFT基板23を接合して液晶パネル20を製造し、このTFT基板23に防塵ガラス24を接合する。液晶パネル20の対向基板21と光学素子10との一方に接着層13を構成する紫外線硬化型接着剤を塗布し、これらを互いに接合した後、接着層13を紫外線硬化する。
【0038】
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)(3)と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(4)光学機能膜を、反射層121と吸収層122とが積層される遮光膜12としたので、光が認識マークMを透過したとしても、その光は反射層121で反射され、吸収層122に入射された光は吸収層で吸収されることになり、認識マークMを設けても、遮光膜12自体の機能を損なうことがない。
【0039】
(5)前述の光学素子10を備えて電気光学装置1を構成したので、認識マークMとして、電気光学装置の種類等を付与することで、電気光学装置1の識別が可能となり、投射型映像装置、その他の電子機器に電気光学装置1を組み込む作業を容易に行うことができる。
なお、第2実施形態では、認識マークMを透光性基板11と反射層121との間に設ける構成に限定されるものではなく、図8に示される通り、反射層121と吸収層122との間に設けるものでも、前述と同様な作用効果を奏することができる。但し、認識マークMを透光性基板11と反射層121との間に設けると、透光性基板11に直接設けられる認識マークMが透光性基板11を通じて認識しやすくなる。これに対して、図8に示される通り、反射層121と吸収層122との間に認識マークMを設けると、吸収層122を透過して認識マークMを光学素子10の裏面側から認識することができる。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態を図9及び図10に基づいて説明する。第3実施形態は第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構造である。
図9には第3実施形態の電気光学装置の断面が示され、図10には電気光学装置の平面が示されている。
図9及び図10に示される通り、カバーガラス10は、透光性基板11と、この透光性基板11の光学領域Lを規定する額縁として機能し光が出射される側の平面に設けられ光学機能膜としての遮光膜12と、透光性基板11の入射側に設けられ光学機能膜としての反射防止膜ARとを備え、透光性基板11及び遮光膜12と液晶パネル20とは接着層13で互いに接合されている。なお、反射防止膜ARは、その構造をわかりやすくするために、厚く図示されている。
【0041】
図9に示される通り、透光性基板11の反射防止膜ARと対向する面には第1の認識マークM1がインクジェット方式で形成されている。この第1の認識マークM1は第1実施形態の認識マークMと同じ方法で形成される。透光性基板11の反射層121と対向する面には第2の認識マークM2がインクジェット方式で形成されている。この第2の認識マークM2は第2実施形態の認識マークMと同じ方法で形成される。
【0042】
従って、第3実施形態では、第1実施形態と第2実施形態との(1)〜(5)で示される作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(6)液晶パネル20の光入射側に配置された透光性基板11の外面であって光学領域Lから外れた領域にインクジェット方式で印刷された第1の認識マークM1を設け、この第1の認識マークMを反射防止膜ARで覆い、透光性基板11と遮光膜12との間に第2の認識マークM2を設けたから、多くの情報を電気光学装置1に付与することができるだけでなく、電気光学装置1を装置内に設置等する際に、一方の識別標識を認識しにくい場合でも、他方の識別標識を認識することができる。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態を図11及び図12に基づいて説明する。第4実施形態は第3実施形態とは第2の認識マークM2が設けられた位置が異なるもので、他の構成は第3実施形態と同じである。
図11には第4実施形態の電気光学装置の断面が示され、図12には電気光学装置の裏面が示されている。
図11で示される通り、電気光学装置1は、光学素子としての平板状のカバーガラス10と、このカバーガラス10に設けられた液晶パネル20と、この液晶パネル20に設けられる光学素子としての防塵ガラス24と、これらのカバーガラス10、液晶パネル20及び防塵ガラス24の周縁を保持する図示しないフレームと、液晶パネル20に接続され外部からの電力を供給するための図示しないケーブルとを備えて構成されている。
【0044】
図11及び図12に示される通り、防塵ガラス24は、透光性基板240と、光学機能膜としての反射防止膜ARとを備えている。反射防止膜ARは、その構造をわかりやすくするために、厚く図示されている。
透光性基板240の反射防止膜ARと対向する面には第1の認識マークM1がインクジェット方式で形成されている。この第1の認識マークM1は第1実施形態の認識マークMと同じ方法で形成される。
透光性基板11の反射層121と対向する面には第2の認識マークM2がインクジェット方式で形成されている。この第2の認識マークM2は第2実施形態の認識マークMと同じ方法で形成される。なお、第2の認識マークM2は図5で示される認識マークMと同様に表示される。
【0045】
従って、第4実施形態では、第3実施形態と第2実施形態との(1)〜(6)で示される作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(7)電気光学装置1の裏面側からは第1の認識マークM1が表示され、正面側からは第2の認識マークM2が表示されるので、電気光学装置1の両面から認識マークM1,M2を認識することができるため、電気光学装置1を設置等する際に、一方の面に表示される第1の認識マークM1が見えなくても、他方の面に表示される第2の認識マークM2が見えることになるので、製品使用時における有用性が向上する。
【0046】
次に、本発明の第5実施形態を図13から図19に基づいて説明する。第5実施形態は第4実施形態において第2の認識マークM2に代えて構造の異なる識別マークを用いた点が第4実施形態とは異なる。
図13には第5実施形態の電気光学装置の断面が示され、図14には電気光学装置を構成する光学素子の光が出射される側の平面が示され、図15には電気光学装置の要部の拡大断面が示されている。
図13において、電気光学装置1は、平板状のカバーガラス10と、このカバーガラス10に設けられた液晶パネル20と、この液晶パネル20に設けられる光学素子としての防塵ガラス24と、これらのカバーガラス10、液晶パネル20及び防塵ガラス24の周縁を保持する図示しないフレームと、液晶パネル20に接続され外部からの電力を供給するための図示しないケーブルとを備えて構成されている。
防塵ガラス24は透光性基板240と光学機能膜としての反射防止膜ARとを備え、透光性基板240と反射防止膜ARとの間には認識マークMが設けられている。
【0047】
図13及び図15に示される通り、遮光膜12は、反射層121及び吸収層122を有する。この吸収層122には識別マークmを構成する凹部2が形成されており、この凹部2の深さは図15では、吸収層122の厚さと同じ、換言すれば、凹部2は吸収層122を貫通して形成されている。凹部2の端縁は、平面上において吸収層122の端縁から離れている。
反射層121は高反射率膜であり、吸収層122は低反射率膜である。
ここで、反射層121を構成する材料と吸収層122を構成する材料との組み合わせとして、[1]反射層121がクロムから形成され、吸収層122が酸化クロムから形成される場合、[2]反射層121がクロムから形成され、吸収層122が二酸化チタン(TiO)から形成される場合、[3]反射層121がアルミから形成され、吸収層122が酸化クロムから形成される場合、[4]反射層121が銀から形成され、吸収層122が二酸化チタン又は酸化クロムから形成される場合がある。
【0048】
この構成の電気光学装置1では、図15に示される通り、外部から入射光Inが透光性基板11の光学領域Lの領域外に入射すると、透光性基板11と反射層121との境界面で反射される。入射光Inが透光性基板11の法線に対して斜めに入射すると、透光性基板11、接着層13及び液晶パネル20を通り、この液晶パネル20の内部で反射して反射光Rfとなるが、この反射光Rfが吸収層122に入射すると、この反射光Rfは再度反射することなく(想像線で示される反射光Rfが発生することなく)、吸収層122で吸収される。このように、遮光膜12は、入射光Inを効率良く反射して透過率を低く抑え、かつ液晶パネル20からの反射光を抑制する機能がある。なお、反射層121には、光源に向かって光を反射し、光を再利用する役目もある。
【0049】
図14では、識別マークmは、「ABC」の記号として表示されている。本実施形態では、「ABC」という文字の他に、他のアルファベット、日本語、その他の言語を構成するための文字、数字、記号、図形、バーコード等、内容を識別することができるものであればその種類が限定されない。また、本実施形態では、識別マークmを読みやすくするために大きく表示したが、肉眼あるいは機械等で読み取れる大きさであればよい。識別マークmを表示する位置は図14では平面矩形状の光学素子10の下辺部としたが、光学素子10の隅部であってもよい。
反射層121と吸収層122とで材料が異なることに伴う色の相違により、透光性基板11に入射光側平面から「ABC」が識別標識として認識される。
接着層13は紫外線硬化型接着剤、その他の接着剤であって、透光性基板11と屈折率が同じ接着剤から構成される。
【0050】
次に、本実施形態の電気光学装置1を製造する方法について説明する。
[カバーガラスの製造方法]
カバーガラス10の製造方法を図16及び図17に基づいて説明する。
図16(A)に示される通り、まず、大判の基板11Aを用意する。この大判の基板11Aを複数個、図では、9個分割することで、図3から図15で示される透光性基板11の1枚分となる。この大判の基板11Aの一面に反射防止膜ARを蒸着で形成する。
図16(B)に示される通り、大判の基板11Aの反射防止膜ARが形成されていない一面に反射層121を構成するために高反射率層121Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で成膜し、この高反射率層121Aの上に、吸収層122を構成するために低反射率層122Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で成膜する。ここで、高反射率層121Aと反射層121との膜厚は同じであり、低反射率層122Aと吸収層122との膜厚は同じである。なお、高反射率層121Aの材料をクロムとし、低反射率層122Aの材料を酸化クロムとした場合、高反射率層121Aを大判の基板11Aの主面上に蒸着等した後、蒸着炉(チャンバー)の中に酸素(O)ガスを導入し、クロムを酸化させながら蒸着、に酸素を混ぜてスパッタ、その他の方法で成膜を行い、低反射率層122Aを成膜する。また、高反射率層121Aと吸収層である低反射率層122Aとの間には、必要に応じてエッチングストッパー層、例えば、SiOの層を挟んでおく。
【0051】
その後、図16(C)に示される通り、吸収層122を構成する低反射率層122Aに凹部2をエッチングで形成し、各、透光性基板11に対応する位置に「ABC」という識別マークmを表示する。
そのため、大判の基板11Aに成膜された高反射率層121A及び低反射率層122Aを含む多層膜の表面上の全面にフォトレジストを塗布する。そして、図示しないステッパー又はマスクアライナー等の露光器を用いて、フォト・マスクを重ねてマーキング・パターン状に露光する。その後、現像して認識マークMに対応する部分のレジストを除去する。さらに、レジストが除去され、遮光膜層12となる多層膜がマーキング状に露出した領域をエッチングして遮光膜層1を構成する多層膜のうち吸収層122を構成する低反射率層122Aのみをエッチングで除去(ハーフエッチング)し、凹部2を形成する。ここで、ハーフエッチングは前述の通りSiO等からなるエッチングストッパー層が用いられていることで、エッチングがストップされる。なお、エッチングストッパー層を設けない場合には、ハーフエッチングとするために時間を管理する。その後、レジストを剥離する。
【0052】
図17(D)に示される通り、額縁状に遮光膜層12を形成し、光学領域Lの領域の基板主面を露出させる。まず、遮光膜12に相当する高反射率層121A及び低反射率層122Aの多層膜の表面上の全面にフォトレジストを塗布し、さらに、図示しないステッパー又はマスクアライナー等の露光器を用いて、フォト・マスク(額縁の形状に応じた)を重ねてパターンを露光する。その後、現像して不要な部分、つまり、光学領域L上のレジストを除去する。レジストが除去され、高反射率層121A及び低反射率層122Aの多層膜が露出した領域をエッチングして遮光膜層12を額縁状にパターン抜きする(レジストが除去された部分のみをエッチング)。なお、エッチングストッパー層を設けた場合には、前述のプロセスで用いたエッチング溶液とは別の種類、即ち、エッチングストッパー層もエッチング除去できるエッチング溶液を使用する。その後、レジストを剥離する。
さらに、図17(E)に示される通り、ダイシング装置、その他の装置によって、大判の基板11Aを複数に分割、本実施形態では、9個に分割し、1つのカバーガラス10を製造する。
【0053】
[カバーガラス、液晶パネル、防塵ガラスの接合]
対向基板21、液晶部22及びTFT基板23を接合して液晶パネル20を製造しておき、この液晶パネル20の対向基板21とカバーガラス10との一方に接着層13を構成する紫外線硬化型接着剤を塗布し、これらを互いに接合した後、接着層13を紫外線硬化する。
さらに、防塵ガラス24を構成する透光性基板240の一面に認識マークMをインクジェット方式で印刷し、その上から反射防止膜ARを蒸着その他の方法で形成する。この防塵ガラス24を液晶パネル20に接着剤で接合して電気光学装置1を製造する。
【0054】
従って、第5実施形態では、第4実施形態と同様の作用効果を奏する他、次の作用効果を奏することができる。
(8)カバーガラス10は、光学領域Lが主面に設けられる透光性基板11と、この透光性基板11の光学領域Lから外れた周縁領域Eに設けられ透光性基板11へ入射する光を反射する反射層121及び光を吸収する吸収層122を有する遮光膜12とを備え、光学領域Lから外れた周縁領域Eに吸収層122の厚さ方向に形成される凹部2を有する識別マークmが設けられた。本実施形態では、識別マークmが透光性基板11の光学領域から外れた領域にあることにより、光学素子10としての本来の機能が阻害されず、識別マークmを認識することができる。その上、識別マークmが反射層121ではなく吸収層122に形成されることで、光学素子10内の迷光を少なくすることができる。
【0055】
(9)凹部2の深さは吸収層122の厚さと同じ、つまり、凹部2が吸収層122を貫通して形成されるので、吸収層122と反射層121との色の相違に基づいて、認識マークMを容易に認識することができる。
【0056】
(10)カバーガラス10を製造するにあたり、透光性基板11に反射層121を構成する高反射率層121Aを成膜し、この高反射率層121Aに吸収層122を構成する低反射率層122Aを成膜し、この低反射率層122Aの厚さ方向に認識マークMを構成する凹部2をエッチングにより形成したから、エッチングという簡易な手段によって、凹部2の形成を容易に行うことができるため、カバーガラス10を低コストで製造することができる。
【0057】
(11)高反射率層121Aをクロムから成膜し、低反射率層122Aを酸化クロムから成膜すれば、酸化クロムがクロムに酸素を混ぜてスパッタで成膜することができるので、一連の成膜作業を容易に行える。
【0058】
なお、第5実施形態では、遮光膜12の構成を図13及び図15で示される構成に限定されることはなく、例えば、図18や図19に示される構成であってもよい。
図18には第5実施形態の変形例に係る電気光学装置の要部の拡大断面が示されている。
図18において、電気光学装置1は、平板状のカバーガラス30と、このカバーガラス30に設けられた液晶パネル20と、防塵ガラス24(図13参照)と、これらのカバーガラス30、液晶パネル20及び防塵ガラス24の周縁を保持する図示しないフレームと、液晶パネル20に接続され外部からの電力を供給するための図示しないケーブルとを備えて構成されている。
【0059】
カバーガラス30は、透光性基板11と、この透光性基板11の光学領域Lを規定する額縁として機能する遮光膜32とを備え、透光性基板11及び遮光膜32と液晶パネル20とは接着層13で互いに接合されている。
遮光膜32は、反射層121及び吸収層122と、これらの反射層121と吸収層122との間に設けられた光を吸収する第三層123とを有する構造である。
反射層121は、クロムからなる高反射率層から構成されている。
吸収層122は、酸化クロムからなる低反射率層から構成され、第1実施形態と同様に認識マークMを構成する凹部2が形成されている。
第三層123は、光を吸収する材料であって吸収層122の材料である酸化クロムよりエッチング液で腐食されにくい材料、例えば、酸化チタンから構成されている。
第三層123の平面上の大きさは反射層121及び吸収層122の平面上の大きさと同じである。
【0060】
以上のカバーガラス30を製造する方法は第1実施形態とほぼ同じであり、大判の基板11Aに反射層121を構成するための高反射率層121Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で成膜した後、第三層123を構成する中間層を大判の基板11Aの大きさに合わせて蒸着、スパッタ等で成膜し、この第三層123を構成する中間層の上に、吸収層122を構成するために低反射率層122Aを蒸着、スパッタ、その他の方法で成膜する。
低反射率層122Aに認識マークMを構成する凹部2をエッチングで形成した後、低反射率層122A、中間層及び高反射率層121Aの中央部分に光学領域Lを形成するためのエッチングを実施する。
図18で示される遮光膜32では、吸収層122と反射層121との間に光を吸収する第三層123が設けられているから、吸収層122とともに第三層123で電気光学装置1の内部での迷光をより少なくすることができる。
そして、第三層123が吸収層122よりはエッチング液で腐食されにくい材料である酸化チタンを用いたので、第三層123がエッチングストッパーとしての機能を有することになる。そのため、吸収層122でのエッチングを十分に行うことができ、これにより、凹部2を確実に形成して認識しやすい認識マークMを設けることができる。
【0061】
図19には吸収層122に形成される凹部の形状が図15とは異なる例が示されている。図19において、吸収層122には識別マークmを構成する凹部4が形成されており、この凹部4の深さは図15の構造とは異なり、吸収層122の厚さより小さく、換言すれば、吸収層122の厚さの途中までとされる。本実施形態では、凹部4に光を照射した場合の陰によって識別マークmを認識することができる。
凹部4の形成は、エッチングの他、レーザー照射による形成も可能である。エッチングを用いる場合にはエッチング液の濃度やエッチング時間を調整することにより実施する。
【0062】
次に、本発明の第6実施形態を図20に基づいて説明する。
第6実施形態は、以上詳細に説明した電気光学装置1をライトバルブとして用いた投射型映像装置(投射型液晶プロジェクター)である。
図20は、投射型映像装置の概略構成が表される。
図20において、本実施形態における投射型映像装置1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R,100G,100Bとして用いたプロジェクターとして構成されている。これらのライトバルブ100R,100G,100Bは電気光学装置1が用いられる。
投射型映像装置1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R,G,Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R,100G,100Bにそれぞれ導かれる。この際、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123および出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R,100G,100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投写光学装置としての投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0063】
従って、第6実施形態では、第2実施形態と同様な作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(12)ランプユニット1102と、このランプユニット1102からの光を、画像情報に応じて変調する電気光学装置1と、この電気光学装置1により変調された光を投写する投射レンズ1114とを備えたから、前述の効果を奏することができる投射型映像装置を提供することができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、電気光学装置1を投射型映像装置に用いたが、本発明では、それ以外に電子機器、例えばデジタルカメラにも用いることができる。さらに、電気光学装置1の例として、光学ローパスフィルターを用いてもよい。
また、前記各実施形態では、遮光膜12,32は平面矩形状の透光性基板11の4つの辺に沿って形成されたが、本発明では、これに限定されるものではない。
さらに、光学素子10,100を製造するにあたり、大判の基板101Aを用いたが、それを分割した透光性基板11,101を用いたものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、投射型映像装置、その他の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…電気光学装置、10,100…光学素子、11,101,240…透光性基板、12,32…遮光膜(光学機能膜)、13…接着層、20…液晶パネル、21…対向基板、22…液晶部、23…TFT基板、24…防塵ガラス、121…反射層、122…吸収層、1100…投射型映像装置、L…光学領域、E…周縁領域、M…認識マーク、M1…第1の認識マークM2…第2の識別標識、AR…反射防止膜(光学機能膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、
当該透光性基板の前記光学領域から外れた周縁領域に設けられ認識マークと、
当該認識マークを覆うように、前記透光性基板の主面上に設けられた光学機能膜と、
を備えた光学素子であって、
前記認識マークは、前記透光性基板の主面上にインクジェット方式で印刷された
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載された光学素子において、
前記光学機能膜は反射防止膜であることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載された光学素子において、
前記光学機能膜は、前記透光性基板の前記光学領域から外れた周縁領域に設けられ遮光膜であり、当該遮光膜は、前記透光性基板へ入射する光を反射する反射層と、前記光を吸収する吸収層と、を有し、
前記反射層と前記吸収層とは、前記透光性基板の表面に順に積層されている
ことを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項3に記載された光学素子において、
前記認識マークは、前記透光性基板と前記反射層との間に設けられている
ことを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項3に記載された光学素子において、
前記認識マークは、前記反射層と前記吸収層との間に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載された光学素子と、液晶パネルと、を備え、
前記透光性基板の前記認識マークが設けられていない側の主面が、前記液晶パネルと対向している
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載された光学素子と、液晶パネルと、を備え、
前記透光性基板の前記遮光膜が設けられている側の主面が、前記液晶パネルと対向している
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
光源と、当該光源からの光を画像情報に応じて変調する電気光学装置と、当該電気光学装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備え、
前記電気光学装置は、請求項6又は請求項7に記載され電気光学装置である
ことを特徴とする投射型映像装置。
【請求項9】
透光性基板の光学領域から外れた周縁領域の主面上にインクジェット方式で認識マークを印刷し、当該認識マークを覆うように光学機能膜を前記透光性基板の主面上に設けることを特徴とする光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−44782(P2013−44782A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180375(P2011−180375)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】