説明

光学素子およびバックライト

【課題】光を反射する方向を容易に変更することが可能な光学素子を提供すること。
【解決手段】光学素子100は、中空部を有する円柱状をなし、電気刺激により、一方の端部の外径が変化するアクチュエータ本体11と、アクチュエータ本体11の一方の端部近傍の外周面上に設けられた第1の電極12と、アクチュエータ本体11の一方の端部近傍の内周面上に設けられた第2の電極13と、を備えたアクチュエータ10と、アクチュエータ本体11の一方の端部に、中空部を塞ぐように配置され、湾曲凹面形状をなす鏡面を備えた鏡面部20と、を有し、アクチュエータ本体11の外径の変化に伴って、鏡面の曲率半径が変化するよう構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子およびバックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
ノートPC、携帯電話等の表示部や液晶テレビ等の液晶ディスプレイには、視認性を向上させる目的でバックライトが設けられている。
バックライトは、レンチキュラレンズや光拡散シート等を光源の前に配置して、ディスプレイの所定の範囲に光が届くよう構成されているのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかし、従来のバックライトでは、光の広がる方向が一定であり、ディスプレイを見る人の位置等によって、光の広がる方向を変化させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光を反射する方向を容易に変更することが可能な光学素子を提供すること、また、このような光学素子を備えたバックライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光学素子は、中空部を有する円柱状をなし、電気刺激により、一方の端部の外径が変化するアクチュエータ本体と、当該アクチュエータ本体の一方の端部近傍の外周面上に設けられた第1の電極と、前記アクチュエータ本体の一方の端部近傍の内周面上に設けられた第2の電極と、を備えたアクチュエータと、
前記アクチュエータ本体の一方の端部に、前記中空部を塞ぐように配置され、湾曲凹面形状をなす鏡面を備えた鏡面部と、を有し、
前記アクチュエータ本体の外径の変化に伴って、前記鏡面の曲率半径が変化するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、光を反射する方向を容易に変更することが可能な光学素子を提供することができる。
【0006】
本発明の光学素子では、前記鏡面部は、伸縮性を有する変形樹脂膜と、
前記鏡面を有する金属薄膜とで構成されていることが好ましい。
これにより、光を反射する方向をより容易に変更することができるとともに、応答速度をより速いものとすることができる。
本発明の光学素子では、前記アクチュエータの変形する部位は、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物で構成されていることが好ましい。
これにより、より低電圧で光学素子を駆動させることができる。
【0007】
本発明の光学素子では、前記刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、重合性官能基を含むことが好ましい。
これにより、より低電圧で光学素子を駆動させることができる。
【0008】
本発明の光学素子では、前記刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記第1のユニットBに結合した第1のユニットCと、
前記第2のユニットBに結合した第2のユニットCと、
を有し、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは、酸化還元反応によって結合するものであり、
前記第1のユニットCおよび第2のユニットCは、液晶性を有することが好ましい。
これにより、より低電圧で光学素子を駆動させることができる。
【0009】
本発明の光学素子では、一対のアルキル鎖と、
前記一対のアルキル鎖の間を架橋する架橋部と、
前記一対のアルキル鎖の少なくとも一方に結合した液晶性官能基と、を有し、
前記架橋部は、回転軸として機能する結合を有し、かつ、該結合の一端に位置する第1の基と、前記結合の他端に位置する第2の基とを有するユニットAと、
前記第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、を有し、
前記架橋部は、前記第1の基の第2の結合部位において一方のアルキル鎖と結合し、前記第2の基の第2の結合部位において他方のアルキル鎖と結合しており、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが、酸化還元反応によって結合することが好ましい。
これにより、より低電圧で光学素子を駆動させることができる。
【0010】
本発明の光学素子では、酸化還元反応によって分子構造が変形する複数の変形基と、
液晶性を有する複数の液晶性官能基と、
前記変形基と前記液晶性官能基とを連結する下記式(12)で表される複数の連結基と、を有し、
前記変形基は、回転軸として機能する結合を有し、かつ、該結合の一端に位置する第1の基と、前記結合の他端に位置する第2の基とを有するユニットAと、
前記第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、を有し、
前記変形基は、前記第1の基の第2の結合部位および前記第2の基の第2の結合部位において、前記連結基と結合しており、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが、酸化還元反応によって結合することが好ましい。
【化1】

これにより、より低電圧で光学素子を駆動させることができる。
【0011】
本発明のバックライトは、複数の、本発明の光学素子と、
前記光学素子の前記鏡面近傍に設けられた光源と、を備えたことを特徴とする。
これにより、光の広がる方向を任意に変更することが可能なバックライトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学素子の好適な実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示す光学素子のアクチュエータが駆動した状態を示す模式図である。
【図3】図1に示す光学素子のアクチュエータ本体の形状を示す図である。
【図4】図1に示す光学素子の鏡面部の構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の光学素子を適用したバックライトの一例を示す模式図である。
【図6】刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【図7】刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【図8】刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【図9】刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【図10】刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《光学素子》
以下、本発明の光学素子について説明する。
本発明の光学素子は、外部から入射した光を反射するものであり、その反射光の進行方向を任意に変更することが可能な光学素子である。
図1は、本発明の光学素子の好適な実施形態を示す模式図、図2は、図1に示す光学素子のアクチュエータが駆動した状態を示す模式図、図3は、図1に示す光学素子のアクチュエータ本体の形状を示す図、図4は、図1に示す光学素子の鏡面部の構成の一例を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、光学素子100は、アクチュエータ10と、鏡面部20とを有している。
アクチュエータ10は、図1に示すように、アクチュエータ本体11と、第1の電極12と、第2の電極13とを有している。
アクチュエータ本体11は、図3に示すように、中空部を有する円柱状をなしている。
【0015】
このアクチュエータ本体11は、後述する第1の電極12および第2の電極13に電圧を印加し、電気刺激を与えることにより、一方の端部の外径が変化するよう構成されている。
アクチュエータ本体11の、少なくとも、電圧を印加することで変形する部分を構成する材料としては、例えば、バッキーゲル材料や、後述するような刺激応答性化合物等を挙げることができる。
【0016】
第1の電極12は、図1に示すように、上記アクチュエータ本体11の一方の端部近傍の外周面上に設けられている。また、第2の電極13は、図1に示すように、上記アクチュエータ本体11の一方の端部近傍の内周面上に設けられている。言い換えると、第1の電極12と第2の電極13とで、アクチュエータ本体11の一部を挟持した構成となっている。
【0017】
第1の電極12および第2の電極13には、図示せぬ電源に接続されており、電圧を印加可能となっている。
アクチュエータ本体11は、上記第1の電極12および第2の電極13に電圧を印加することにより、例えば、図2に示すように、これら電極に挟まれた部位およびその近傍がアクチュエータ本体11の内側に向かって屈曲するよう構成されている。このように屈曲することにより、アクチュエータ本体11の外径が変化する(小さくなる)。
【0018】
鏡面部20は、図1に示すように、アクチュエータ本体11の外径が変化する端部に、アクチュエータ本体11の中空部を塞ぐように配置され、アクチュエータ本体11の端部に固着されている。また、鏡面部20は、湾曲凹面形状を備えた鏡面を有している。
鏡面部20は、図4に示すように、鏡面を有する金属薄膜21と、アクチュエータ本体11の中空部側に向かって配された変形樹脂膜22とで構成されている。
金属薄膜は、鏡面を形成している膜であり、銀、アルミ等の金属で形成されている。
【0019】
変形樹脂膜22は、上記金属薄膜21を支持する機能を有しており、伸縮性を備えた膜である。鏡面部20をこのような構成とすることにより、光学素子100の応答性をより優れたものとすることができる。
変形樹脂膜22を構成する材料としては、例えば、シリコンゴムといった粘弾性のある材料が挙げられる。
【0020】
このような光学素子100では、上述したようにアクチュエータ本体11が内側に屈曲変形することで、アクチュエータ本体11の外径が小さくなる。それに伴って、アクチュエータ本体11の端部に固着された鏡面部20は、その外径が小さくなる。外径が小さくなると、鏡面の湾曲凹面が図2に示すように、さらに図中の下方向に撓んでいき、鏡面の曲率半径が小さくなる。このように曲率半径が小さくなることにより、例えば、入射した光をより広範囲にわたって反射することができる。また、電圧の印加を停止するまたは正負逆の電圧を印加することにより、図2の状態から図1の状態へと変化させることができ、鏡面の小さかった曲率半径を大きくすることも可能である。
なお、上述した実施形態では、鏡面部20が2層で構成されたものとして説明したが、これに限定されず、1層であってもよいし、任意の機能を有する層(膜)をさらに追加してもよい。
【0021】
《バックライト》
次に、本発明の光学素子を利用したバックライトの好適な実施形態について説明する。
図5は、本発明の光学素子を適用したバックライトの一例を示す模式図である。
バックライト1000は、上述したような光学素子100と、光学素子100の鏡面近傍に配置された光源200とを有している。
【0022】
このようなバックライト1000では、光学素子100のアクチュエータ10を駆動させることにより、鏡面の曲率半径が変化させることができる。これにより、光源200からの光の広がりを調節することができる。
このようなバックライト1000を、例えば、透過型ディスプレイのバックライトとして使用することにより、透過型ディスプレイの視野角を容易に調整することができる。
【0023】
《刺激応答性化合物》
次に、上記アクチュエータ本体の少なくとも変形する部分を構成する材料の一例として、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物について説明する。
以下に説明するような刺激応答性化合物を用いた場合、一対の電極板に電圧を印加すると、アクチュエータ本体の一方の電極と接している側では、酸化反応が進み膨張し、アクチュエータ本体の他方の電極と接している側では、還元反応が進み収縮する。その結果、図2に示すように、還元反応が生じた方向、すなわち、アクチュエータ本体の内径方向に屈曲し、鏡面部20の鏡面の曲率半径が変化する。
【0024】
<第1実施形態>
次に、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物の第1実施形態について詳細に説明する。
図6、図7は、本実施形態の刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図6、図7中、○は官能基を意味し、線は結合を意味する。
【0025】
図6(a)に示すように、本実施形態の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、ユニットAの両末端に結合した2つのユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)と、それぞれのユニットBに結合した2つのユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)とを有している。
刺激応答性化合物は、刺激によって、分子の形状を変形(変位)させる機能を有する化合物のことを指す。
【0026】
刺激応答性化合物を構成するユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基(ユニット)である。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、下記式(1)から(3)なる群から選択される1種の基であるのが好ましい。このような基をユニットAとして用いることにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、より低電圧で駆動するものとなる。
【0027】
【化2】

【0028】
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、図6(a)に示すように、ユニットAの回転軸方向の両末端(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合している基である。すなわち、第1のユニットBがユニットAの第1の結合部位に、第2のユニットBがユニットAの第2の結合部位に結合している。
また、ユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図6(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
【0029】
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)としては、ユニットB同士(第1のユニットBと第2のユニットBと)で酸化還元反応によって結合を形成する基であれば、特に限定されないが、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、下記式(4)で表される基であるのが好ましい。これにより、反応条件を調整することで、ユニットB同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつ容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつ低電圧で変形が可能となる。
【0030】
【化3】

【0031】
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)は、ユニットBに結合した基であり、液晶性を有する基である。第1のユニットBには第1のユニットCが結合しており、第2のユニットBには第2のユニットCが結合している。液晶性を有することにより、ユニットCは、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。これにより、激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
【0032】
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。
ユニットCとしては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、ユニットCの配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつやり円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
【0033】
また、ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)は、重合性官能基を有しているのが好ましい。この重合性官能基によって、刺激応答性化合物が重合することで、より分子鎖の長い刺激応答性化合物を形成することができる。また、このように分子鎖を長くすることにより、後に詳述するように、分子の変形(変位)の度合いを大きくすることができ、より強い力(応力)で駆動させることが可能となる。
ユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)の具体例としては、以下のようなものを挙げることができる。
【0034】
【化4】

【0035】
以上説明したように、本実施形態の刺激応答性化合物は、軸回転可能なユニットAと、ユニットAの両末端(第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つのユニットであって、酸化還元反応によりユニット同士で結合を形成することが可能なユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)と、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)に結合した2つのユニットであって、液晶性を有するユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)とを有している点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、低電力で変形(変位)させることができるとともに、変位の度合いを比較的大きくすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0036】
すなわち、液晶性を有するユニットCによって複数の刺激応答性化合物分子が配向した(並んだ)状態で存在することができ、その揃った状態で電圧等を印加して1分子内のユニットB同士が酸化還元反応により結合する(架橋する)。このように、ユニットCの配向性(液晶性)とユニットBの刺激による結合性とを利用することで、図6(a)に示す状態から、図6(b)に示す状態へと確実に変形(変位)することができる。特に、ユニットCの配向とユニットB同士の結合は、低い電圧で進行するので、低電圧で、大きな変形(変位)が可能となる。
【0037】
なお、ユニットCが重合性官能基を利用して重合した刺激応答性化合物を用いた場合、上述したように、低電圧で、さらに大きな変形が可能となる。
すなわち、電圧を印加する前(酸化還元反応が進行する前)は、図7(a)に示すように、長い分子が伸びた状態で存在している。そこへ電圧を印加すると、図7(b)に示すように、ユニットAを軸に回転し、隣接するユニットB同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性のユニットCが配向することにより、長い分子が折りたたまれた状態となる。このため、変位の度合いを大きなものとすることができる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物の第2実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の刺激応答性化合物は、ビチオフェン(ユニットA)と、当該ビチオフェンの2つのα位(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基(第1のユニットBおよび第2のユニットB)と、ビチオフェンの2つのβ位(ユニットAの第3の結合部位および第4の結合部位)に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基(第1のユニットCおよび第2のユニットC)とを有しており、具体的には、下記式(6)で表すことができる。式(6)中、Rは、液晶性官能基を示す。
【0039】
【化5】

【0040】
刺激応答性化合物とは、刺激によって、分子の形状を変形(変位)させる機能を有する化合物のことを指す。
ビチオフェンは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基である。ビチオフェンを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
【0041】
ビチオフェンの2つのα位には、上記式(6)に示すように、1,3−ベンゾジチオーリル基が結合している。また、1,3−ベンゾジチオーリル基は、1,3−ベンゾジチオーリル基同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
【0042】
本実施形態の刺激応答性化合物が1,3−ベンゾジチオーリル基を有することにより、反応条件を調整することで、1,3−ベンゾジチオーリル基同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつ容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつ低電圧で変形が可能となる。
また、ビオフェンの2つのβ位には、液晶性を有する液晶性官能基(式中、Rで表される官能基)が結合している。液晶性を有することにより、液晶性官能基は、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。これにより、刺激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
【0043】
液晶性官能基としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。中でも特に、高い液晶性を示すことから、上記式(6)中のRで示したような、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものを用いるのが好ましい。
【0044】
液晶性官能基としては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつやり円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
【0045】
また、液晶性官能基は、重合性官能基を有している。この重合性官能基によって、刺激応答性化合物が重合させることができる。その結果、より分子鎖の長い刺激応答性化合物重合体を形成することができる。また、このように分子鎖を長くすることにより、後に詳述するように、分子の変形(変位)の度合いを大きくすることができ、より強い力(応力)で駆動させることが可能となる。
【0046】
重合性官能基としては、特に限定されないが、ビニル基またはアクリル基であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体をより容易に得ることができる。また、得られる刺激応答性化合物重合体の運動性を高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
また、重合性官能基は、液晶性官能基に、酸素またはメチレン基を介して結合しているのが好ましい。このような構成とすることにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体の運動性をさらに高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
【0047】
また、液晶性官能基は、ビチオフェンと、アルキレン基を介して結合しているのが好ましい。これにより、液晶性官能基の運動性(配向性)を向上させることができ、刺激応答性化合物の変形(駆動)の方向性をより一定なものとすることができる。
このような液晶性官能基の具体例としては、上記第1実施形態で述べたようなユニットC(第1のユニットCと第2のユニットC)の具体例と同様なものを挙げることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の刺激応答性化合物は、軸回転可能なビチオフェン(ユニットA)と、ビチオフェンのα位(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合し、酸化還元反応により結合を形成する2つの1,3−ベンゾジチオーリル基(第1のユニットBおよび第2のユニットB)と、ユビチオフェンのβ位(ユニットAの第3の結合部位および第4の結合部位)に結合した2つの重合性の液晶性官能基(第1のユニットCおよび第2のユニットC)とを有している点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0049】
すなわち、液晶性官能基によって複数の刺激応答性化合物分子が配向した(並んだ)状態で存在することができ、その揃った状態で電圧等を印加して1分子内の1,3−ベンゾジチオーリル基同士が酸化還元反応により結合する(架橋する)。このように、液晶性官能基の配向性(液晶性)と1,3−ベンゾジチオーリル基の結合性とを利用することで、下記式(7)の左に示す状態から、下記式(7)の右に示す状態へと確実に変形(変位)することができる。これにより、液晶性官能基によって分子の変形に一定の方向性を持たせつつ、1,3−ベンゾジチオーリル基の酸化還元反応による結合でその変形の度合いを大きくすることができる。また、液晶性官能基の配向と1,3−ベンゾジチオーリル基同士の結合は、低い電圧で進行するので、低電圧で、大きな変形(変位)が可能となる。
また、刺激応答性化合物は重合性官能基を有しているので、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物重合体を容易に形成することができる。
【0050】
【化6】

【0051】
また、本実施形態の刺激応答性化合物としては、上記の化合物をそのまま用いてもよいし、上記の化合物が重合した重合物(刺激応答性化合物重合体)を用いてもよい。以下、刺激応答性化合物重合体について説明する。
図8は、刺激応答性化合物(刺激応答性化合物重合体)の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【0052】
刺激応答性化合物重合体は、上述した刺激応答性化合物が重合性官能基によって重合して得られるものである。
刺激応答性化合物が重合することにより、酸化された状態では、図8の上に示される構造のように長い分子が伸びた状態で存在することとなる。そして、そこへ電圧を印加し、電子を与えて還元すると、図8の下に示される構造のように、ビチオフェンを軸に回転し、隣接する1,3−ベンゾジチオーリル基同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性官能基が配向することにより、長い分子が折りたたまれた状態となる。このため、変形の度合い(変形率)を大きなものとすることができるとともに、その変形に方向性を持たせることができる。
このような刺激応答性化合物重合体において、構成する刺激応答性化合物は、2重結合またはシクロヘキサンを介して重合しているのが好ましい。これにより、変形の方向性を保持しつつ、構成する刺激応答性化合物の運動性(配向性)が向上させることができ、変形率をより高いものとすることができる。
【0053】
<第3実施形態>
次に、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物の第3実施形態について詳細に説明する。
図9は、本実施形態の刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図9中、○および□は官能基を意味し、線は結合を意味する。
【0054】
図9(a)に示すように、本実施形態の刺激応答性化合物は、一対のアルキル鎖と、これらアルキル鎖を架橋する架橋部と、一対のアルキル鎖の一方に結合した液晶性官能基とを有している。なお、図では、説明をわかりやすくするため、架橋部および液晶性官能基が1つずつ記載されているが、実際には複数の架橋部および液晶性官能基が存在している。
【0055】
架橋部は、図9(a)に示すように、回転軸として機能する結合を有し、当該結合の一端に位置する第1の基(図中、A)と、結合の他端に位置する第2の基(図中、A)とを有するユニットAと、第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットB(図中、B)と、第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットB(図中、B)とを有している。
【0056】
ユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合の両端にそれぞれ第1の基および第2の基が結合している。そして、当該結合を軸に回転可能となっている。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、上記式(1)から(3)なる群から選択される1種の基であるのが好ましい。このような基をユニットAとして用いることにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、より低電圧で駆動するものとなる。
【0057】
第1のユニットBは、図9(a)に示すように、ユニットAの第1の基の第1の結合部位に結合している。また、第2のユニットBは、図9(a)に示すように、ユニットAの第2の基の第1の結合部位に結合している。
また、第1のユニットBおよび第2のユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図9(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
【0058】
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)としては、ユニットB同士(第1のユニットBと第2のユニットBと)で酸化還元反応によって結合を形成する基であれば、特に限定されないが、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、上記式(4)で表される基であるのが好ましい。これにより、反応条件を調整することで、ユニットB同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつ容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつ低電圧で変形が可能となる。
【0059】
また、刺激応答性化合物は、図9(a)に示すように、液晶性官能基を有している。この液晶性官能基は、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。このため、激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
液晶性官能基としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。
【0060】
液晶性官能基としては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつやり円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
なお、本実施形態では、液晶性官能基が一方のアルキル鎖のみに結合している場合について説明したが、これに限定されず、両方のアルキル鎖に結合していてもよい。
液晶性官能基の具体例としては、以下のようなものが挙げることができる。
【0061】
【化7】

【0062】
以上説明したように、本実施形態の刺激応答性化合物は、一対のアルキル鎖と、上述したような軸回転可能なユニットAおよび酸化還元反応によりユニット同士で結合を形成することが可能なユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)を備えた架橋部と、液晶性官能基とを有している点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、低電力で変形(変位)させることができるとともに、変位の度合いを比較的大きくすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0063】
すなわち、液晶性官能基によって複数の刺激応答性化合物分子が配向した(並んだ)状態で存在することができ、その揃った状態で電圧等を印加することで、ユニットAが軸回転、さらに、1分子内のユニットB同士が酸化還元反応により結合する(架橋する)。このように、液晶性官能基の配向性(液晶性)とユニットBの刺激による結合性とを利用することで、図9(a)に示す状態から、図9(b)に示す状態へと確実に変形(変位)することができる。特に、液晶性官能基の配向とユニットB同士の結合は、低い電圧で進行するので、低電圧で、大きな変形(変位)が可能となる。
【0064】
上述したような刺激応答性化合物は、上述したようなユニットAと、ユニットAの第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、ユニットAの第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、ユニットAの第1の基の第2の結合部位およびユニットAの第2の基の第2の結合部位に結合した重合性官能基とを有する第1モノマーと、液晶性官能基と少なくとも1つの重合性官能基とを有する第2モノマーとを任意の比率で共重合させることにより、製造することができる。
【0065】
重合性官能基としては、特に限定されないが、ビニル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物をより容易に得ることができる。また、得られる刺激応答性化合物の運動性を高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
第1モノマーの具体例としては、例えば、下記式(9)〜(11)を挙げることができる。
【0066】
【化8】

【0067】
また、第2モノマーの具体例としては、例えば、下記式(13)〜(15)を挙げることができる。
【0068】
【化9】

【0069】
<第4実施形態>
次に、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物の第4実施形態について詳細に説明する。
図10は、本実施形態の刺激応答性化合物の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。図10中、○および□は官能基を意味し、線は結合を意味する。
【0070】
図10に示すように、本実施形態の刺激応答性化合物は、分子構造が変形する複数の変形基と、液晶性を有する複数の液晶性官能基と、変形基と液晶性官能基とを連結する複数の連結基とを有している。
変形基は、酸化還元反応によって分子構造が変形する基であり、図10(a)に示すように、回転軸として機能する結合を有し、かつ、当該結合の一端に位置する第1の基(図中、A)と、結合の他端に位置する第2の基(図中、A)とを有するユニットAと、第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットB(図中、B)と、第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットB(図中、B)とを有している。
【0071】
ユニットAは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合の両端にそれぞれ第1の基および第2の基が結合している。そして、当該結合を軸に回転可能となっている。このようなユニットを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
ユニットAとしては、例えば、2つの芳香環が結合した基を用いることができるが、中でも、上記式(1)から(3)なる群から選択される1種の基であるのが好ましい。このような基をユニットAとして用いることにより、刺激応答性化合物は、より円滑な変形(変位)が可能となり、より低電圧で駆動するものとなる。
【0072】
第1のユニットBは、図10(a)に示すように、ユニットAの第1の基(A)の第1の結合部位に結合している。また、第2のユニットBは、図10(a)に示すように、ユニットAの第2の基(A)の第1の結合部位に結合している。
また、第1のユニットBおよび第2のユニットBは、ユニットB同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である(図10(b)参照)。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
【0073】
ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)としては、ユニットB同士(第1のユニットBと第2のユニットBと)で酸化還元反応によって結合を形成する基であれば、特に限定されないが、ユニットB(第1のユニットBと第2のユニットB)は、上記式(4)で表される基であるのが好ましい。これにより、反応条件を調整することで、ユニットB同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつ容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつ低電圧で変形が可能となる。
【0074】
また、刺激応答性化合物は、図10(a)に示すように、液晶性官能基を有している。この液晶性官能基は、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。このため、激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
液晶性官能基は、その両末端において後述する連結基と結合しており、当該連結基を介して、前述した変形基の第1の基の第2の結合部位および第2の基の第2の結合部位と接続している。
【0075】
液晶性官能基としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。
液晶性官能基としては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつやり円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
液晶性官能基の具体例としては、上記式(8)のようなものが挙げることができる。
上述した変形基と液晶性官能基とを連結する連結基は、下記式(12)で表される基である。
【0076】
【化10】

【0077】
このようなシロキサン結合を備えた連結基を用いて連結することにより、刺激応答性化合物の刺激に対する応答性をより高いものとすることができる。また、図10に示すような刺激応答性化合物の製造を容易に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態の刺激応答性化合物は、酸化還元反応により変形可能な変形基と、液晶性官能基と、これらを連結する上記式(12)で表される連結基とを有している点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、低電力で変形(変位)させることができるとともに、変位の度合いを比較的大きくすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0078】
すなわち、このような刺激応答性化合物では、酸化された状態では、図10(a)に示される構造のように長い分子が伸びた状態で存在することとなる。そして、そこへ電圧を印加し、電子を与えて還元すると、図10(b)に示される構造のように、ユニットAの回転軸を軸に回転し、隣接するユニットB同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性官能基が配向することにより、長い分子が折りたたまれた状態となる。このため、変形の度合い(変形率)を大きなものとすることができるとともに、その変形に方向性を持たせることができる。また、変形に酸化還元反応を利用するため、比較的低電力で駆動させることができる。
【0079】
上述したような刺激応答性化合物は、上述したようなユニットAと、ユニットAの第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、ユニットAの第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、ユニットAの第1の基の第2の結合部位およびユニットAの第2の基の第2の結合部位に結合した重合性官能基とを有する第1モノマーと、液晶性官能基と2つの重合性官能基とを有する第2モノマーと、下記式(16)で表される第3モノマーとを、白金等の触媒存在下において、任意の比率で共重合させることにより、製造することができる。
【0080】
【化11】

【0081】
重合性官能基としては、特に限定されないが、ビニル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物をより容易に得ることができる。また、得られる刺激応答性化合物の運動性を高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
第1モノマーの具体例としては、例えば、上記式(9)〜(11)を挙げることができる。
また、第2モノマーの具体例としては、例えば、上記式(13)〜(15)を挙げることができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
10…アクチュエータ 11…アクチュエータ本体 12…第1の電極 13…第2の電極 20…鏡面部 21…金属薄膜 22…変形樹脂膜 100…光学素子 200…光源 1000…バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する円柱状をなし、電気刺激により、一方の端部の外径が変化するアクチュエータ本体と、当該アクチュエータ本体の一方の端部近傍の外周面上に設けられた第1の電極と、前記アクチュエータ本体の一方の端部近傍の内周面上に設けられた第2の電極と、を備えたアクチュエータと、
前記アクチュエータ本体の一方の端部に、前記中空部を塞ぐように配置され、湾曲凹面形状をなす鏡面を備えた鏡面部と、を有し、
前記アクチュエータ本体の外径の変化に伴って、前記鏡面の曲率半径が変化するよう構成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記鏡面部は、伸縮性を有する変形樹脂膜と、
前記鏡面を有する金属薄膜とで構成されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記アクチュエータの変形する部位は、酸化還元反応により分子構造が変化する刺激応答性化合物で構成されている請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、重合性官能基を含む請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記第1のユニットBに結合した第1のユニットCと、
前記第2のユニットBに結合した第2のユニットCと、
を有し、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは、酸化還元反応によって結合するものであり、
前記第1のユニットCおよび第2のユニットCは、液晶性を有する請求項3に記載の光学素子。
【請求項6】
一対のアルキル鎖と、
前記一対のアルキル鎖の間を架橋する架橋部と、
前記一対のアルキル鎖の少なくとも一方に結合した液晶性官能基と、を有し、
前記架橋部は、回転軸として機能する結合を有し、かつ、該結合の一端に位置する第1の基と、前記結合の他端に位置する第2の基とを有するユニットAと、
前記第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、を有し、
前記架橋部は、前記第1の基の第2の結合部位において一方のアルキル鎖と結合し、前記第2の基の第2の結合部位において他方のアルキル鎖と結合しており、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが、酸化還元反応によって結合する請求項3に記載の光学素子。
【請求項7】
酸化還元反応によって分子構造が変形する複数の変形基と、
液晶性を有する複数の液晶性官能基と、
前記変形基と前記液晶性官能基とを連結する下記式(12)で表される複数の連結基と、を有し、
前記変形基は、回転軸として機能する結合を有し、かつ、該結合の一端に位置する第1の基と、前記結合の他端に位置する第2の基とを有するユニットAと、
前記第1の基の第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記第2の基の第1の結合部位に配置された第2のユニットBと、を有し、
前記変形基は、前記第1の基の第2の結合部位および前記第2の基の第2の結合部位において、前記連結基と結合しており、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとが、酸化還元反応によって結合する請求項3に記載の光学素子。
【化1】

【請求項8】
複数の、請求項1ないし7のいずれかに記載の光学素子と、
前記光学素子の前記鏡面近傍に設けられた光源と、を備えたことを特徴とするバックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58363(P2012−58363A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199562(P2010−199562)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】