説明

光学素子の製造方法、光学素子、および液晶表示装置

【課題】 表面凹凸の抑制された位相差層を備えた光学素子を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】 光透過性を有する基材2と、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を重合してなる位相差層3と、導電性を有する透明導電膜5とを有する光学素子1の製造方法において、基材2に対して直接もしくは間接に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して液晶塗布膜を作製し、該液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させて該液晶塗布膜を位相差層3となす位相差層形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に、導電性を有する導電材料を含む導電膜組成物にて透明導電膜5を形成する透明導電膜形成工程と、を備え、透明導電膜形成工程が行われた後に位相差層形成工程が行われることにより、表面凹凸の抑制された位相差層3を備えた光学素子1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法。光学素子、および該光学素子を備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一対の基板の間に駆動用の液晶材料を封入してなる駆動用液晶層を備える液晶セルの外側に偏光板を配置してなる構造を備える。液晶表示装置の構造を構成するための各部材の精密化の進展とともに、液晶表示装置の小型化が進み、また、液晶表示装置は携帯電話やPDA等といった機器に幅広く用いられるようになっている。液晶表示装置については、昼夜や屋内外を問わず様々な時と場所で使用できるようなものが要請される。こうした要請に応えるべく、液晶表示装置については、省電力化に加えて、液晶画面の高輝度化や高コントラスト化などといった表示特性の向上が、重要な課題となっている。
【0003】
液晶表示装置には、多数の画素を有する画素部が、所定の配置パターンにて形成されている。液晶表示装置の液晶画面に表示される画像は、画素部を通る光のパターンによって形成される。画像の形成に用いられる光の違いに応じて様々な種類の液晶表示装置が提案されている。液晶表示装置外部の外光を取り込むとともにその外光の反射光を利用する反射表示機能(反射型の表示を行う機能)を有してなる液晶表示装置(反射型液晶表示装置)が提案されている。反射型液晶表示装置は、液晶セル内に反射板を配している。反射板は、液晶セル内に取り込まれて駆動用液晶層を通った入射光を反射させて反射光を形成する。この反射光が、再び駆動用液晶層を進行し、画像を構成するために用いられる。
【0004】
このほかにも、液晶表示装置内部に内蔵されたバックライトを光源とする光を利用する透過表示機能(透過型の表示を行う機能)を有してなる液晶表示装置(透過型液晶表示装置)が提案されている。透過型液晶表示装置では、バックライトから出た光が、液晶セル内に入射され、さらに駆動用液晶層を通る。そして、駆動用液晶層を通りぬけた光は、画像を構成するために用いられる。
【0005】
液晶表示装置のうち、反射型液晶表示装置は、透過型液晶表示装置に比べて省電力化を図ることができる。透過型液晶表示装置は、反射型液晶表示装置に比べて、屋内などの外光の弱い場所で高輝度・高コントラストな液晶画面を得やすい。
【0006】
そこで、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置の利点を取り入れた液晶表示装置として、反射表示機能と透過表示機能の両方の機能を有する液晶表示装置(半透過半反射型液晶表示装置)が提案されている。半透過半反射型液晶表示装置は、透過表示機能と反射表示機能の両方の機能を発揮する(透過部と反射部の表示を両立させる)ものである。例えば、半透過半反射型液晶表示装置は、晴天時の屋外などといった十分な光量の外光がある場所では、反射部のみ、あるいは、透過部と反射部の両者を利用して液晶画面が表示され、反射部での液晶画面の表示が困難になる夜間や暗所では、透過部を主に利用して液晶画面が表示される。そして、半透過半反射型液晶表示装置は、反射型液晶表示装置の利点としての省電力化の効果と、透過型液晶表示装置の利点としての高輝度、高コントラスト化の効果の両方の効果を発揮するものである。
【0007】
半透過半反射型液晶表示装置においては、画素部に、透過表示機能にて表示される液晶画面の領域に対応して定められる透過部と、反射表示機能にて表示される液晶画面の領域に対応して定められる反射部とが形成されている。通常、画素部を構成する1つの画素ごとに、透過部と反射部の組み合わせが1セット形成される。透過部は、バックライトを光源とする光が進行する部分に対応し、反射部は、外光の反射光が進行する部分に対応している。
【0008】
半透過半反射型液晶表示装置においては、1つの画素に形成される透過部と反射部の間で、光の進行経路および駆動用液晶層の通過回数に相違が存在している。光の進行経路の相違は、透過部を通る光における常光と異常光の位相差と、反射部を通る光における常光と異常光の位相差との間に相違を生じさせる。さらに、駆動用液晶層の通過回数の相違は、透過部を通る光と反射部を通る光との間で、光路長の相違を生じさせる。反射部を通る光は、駆動用液晶層を2回通過し、透過部を通る光は、駆動用液晶層を1回通過する。すなわち、駆動用液晶層では、反射部を通る光の光路長は、駆動用液晶層の厚み(セルギャップ)の2倍の長さであり、透過部を通る光の光路長は、駆動用液晶層の厚み(セルギャップ)に相当する長さとなる。これらの位相差の相違と光路長の相違は、透過部と反射部の表示の両立を困難にする。
【0009】
そこで、従来、半透過半反射型液晶表示装置においては、1/4波長板としての機能を有する位相差フィルムを液晶セルの基板の外側に貼り付けてなる構成が備えられていた。これにより、半透過半反射型液晶表示装置では、偏光板を通った直線偏光が円偏光に変換されていた。そして、この構成によって、半透過半反射型液晶表示装置は、透過部と反射部の表示の両立を実現させていた。ところが、このような半透過半反射型液晶表示装置では、透過部を通る光が十分有効には活用されない。すなわち、透過部の表示特性が損なわれる。
【0010】
これに対し、半透過半反射型液晶表示装置として、反射部に位相差層を設けた基板を有するものが提案されている。ここに、位相差層は、上記したような1/4波長板としての機能を発揮可能な層構造である。そのような位相差層は、重合性官能基を有する液晶化合物(重合性液晶化合物)を含む液晶組成物でなる層構造として具体的に形成される(特許文献1)。反射部に位相差層を設けた半透過半反射型液晶表示装置によれば、反射部の位相差層が、反射部と透過部とのセルギャップを調整する機能を発揮するとともに1/4波長板の機能を発揮する。これにより、反射部に位相差層を設けた半透過半反射型液晶表示装置は、透過部の表示特性を損なうことなく反射表示を実現可能なものとなり、半透過半反射型液晶表示装置の表示特性を高めることが可能となる(特許文献2、3)。その他、半透過半反射型液晶表示装置として、1/2波長板としての機能を有する層を設けたものが提案されている。この液晶表示装置によれば、反射板で反射されたバックライトからの光を偏光板に吸収させないようにすることができ、バックライトからの光のリサイクルが可能になる(特許文献4)。
【0011】
反射部に位相差層を設けた半透過半反射型液晶表示装置は、例えば、次のように組み立てられる。まず、対面配置させる基板(第1の基板と第2の基板)が作製される。第1の基板は、光透過性を有する基材に対して反射部に対応する領域に位相差層を形成し、その後、位相差層を被覆してITO(Indium Tin Oxide、インジウムスズ酸化物)などの透明導電膜を形成される。そして、第1の基板には、光硬化性樹脂からなる柱状体が形成される。第2の基板は、反射部に対応する部分に反射板を取り付け、透過部に対応する領域を光透過可能に構成されている。また、第2の基板には、ゲート線やTFT(Thin Film Transistor)などの電極形成用素子が取り付けられており、さらに、透明導電膜が形成されている。第2の基板の透明導電膜は、電極形成用素子に対して電気的に接続されている。
【0012】
次に、第1の基板と第2の基板が対面して配置される。このとき、第1の基板の反射部と透過部に対応する部分が、それぞれ第2の基板の反射部と透過部に対応する部分に対面される。また、第1の基板の柱状体の先端が第2の基板に当接される。このとき、柱状体を除く第1の基板と、第2の基板との間には、柱状体の高さに応じて隙間が存在する。
【0013】
さらに、第1の基板と、第2の基板との間の隙間に、駆動用の液晶材料が封入される。これにより、駆動用液晶層が形成される。こうして、液晶セルが形成され、さらに液晶セルの外側に偏光板が取り付けられ、半透過半反射型液晶表示装置が製造される。
【0014】
ところで、反射部に位相差層を設けた基板を有する半透過半反射型液晶表示装置では、反射部の位相差層は、セルギャップを調節する層としての機能を果たすことから、位相差層の表面には、予定されない表面凹凸の発生が抑制されることが重要である。位相差層に大きな表面凹凸が存在すると、反射部に位相差層を形成した基板と駆動用液晶層との接触界面に表面凹凸が生じるため、セルギャップにムラが生じ、反射部の表示特定が損なわれる。また、この位相差層が1/4波長板としての機能を果たすことからしてみても、やはり、位相差層の表面には、予定されない表面凹凸の発生が抑制されることが重要である。位相差層に大きな表面凹凸が生じると、反射部に形成された位相差層の厚みにムラが生じ、反射部の表示特性が損なわれる。
【0015】
特に、半透過半反射型液晶表示装置の駆動用液晶層の駆動方式がMVA(Multi-Domain Vertical Alignment)方式やCPA(Continuous Pinwheel Alignment)方式である場合、上記したような位相差層の表面凹凸の抑制は重要である。MVA方式やCPA方式の液晶表示装置では、第1の基板や第2の基板に、所定のパターンに形成された透明導電膜を設けるほか、所定の位置に所定形状の突起が設けられる。また、例えば、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置において、第1の基板の画素内の所定領域に、液晶セルの厚み方向に平行な断面の形状を半楕円形に形成された突起が設けられることがある。ここに、このように第1の基板や第2の基板に設けられる突起は、いずれも駆動用液晶層に含まれる駆動用液晶の配向を規制するものである。すなわち、第1の基板と第2の基板の少なくともいずれかに設けられた突起の設置位置および形状によって、駆動用液晶の配向が規制される。このとき、駆動用液晶の配向が効果的に規制されることで、突起のない液晶表示装置に比べて視野角の広い液晶表示装置が得られる。
【0016】
【特許文献1】特開2000−221506号公報
【特許文献2】特表2006−527408号公報
【特許文献3】特開2004−004494号公報
【特許文献4】特開2005−338256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、反射部に位相差層を設けた基板を有する半透過半反射型液晶表示装置では、反射部に位相差層を形成した基板における駆動用液晶層との接触界面に凹凸(表面凹凸)が皺状(条状)に生じることがあり、さらに、その皺状の表面凹凸の大きさが反射部の表示特性に悪影響を及ぼすほどの大きさになることもあった。このことが、半透過半反射型液晶表示装置の製造効率を低下させてしまうという問題を生じさせていた。
【0018】
特に、VA方式やMVA方式やCPA方式の半透過半反射型液晶表示装置においては、第1の基板や第2の基板を構成する面のうち駆動用液晶層に対する接触面(接触界面)に、突起による表面凹凸のほかに、予定されない凹凸が大きく形成されてしまう。その予定されない凹凸は、突起によって規制された駆動用液晶の配向を大きく乱す。このことが、半透過半反射型液晶表示装置の反射部における表示特性を著しく低下させる結果を招いていた。
【0019】
本発明者らは、位相差層の表面に凹凸が生じる原因が、透明導電膜と位相差層の形成順序にあることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、表面凹凸の抑制された位相差層を備えた光学素子の製造方法、その製造方法によって得られる光学素子、および、その光学素子を組み込んだ液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、
(1) 光透過性を有する基材と、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を重合してなる位相差層と、導電性を有する透明導電膜とを有する光学素子の製造方法であって、基材に対して直接もしくは間接に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して液晶塗布膜を作製し、該液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させて該液晶塗布膜を位相差層となす位相差層形成工程と、基材に対して直接もしくは間接に、導電性を有する導電材料を含む導電膜組成物にて透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、を備え、透明導電膜形成工程が行われた後に、位相差層形成工程が行われることを特徴とする光学素子の製造方法、
(2) 位相差層形成工程では、位相差層が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、上記(1)に記載の光学素子の製造方法、
(3) 基材に対して直接もしくは間接に、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布し重合させて柱状体を形成する柱状体形成工程を備え、該柱状体形成工程では、柱状体が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、上記(1)または(2)に記載の光学素子の製造方法、
(4) 基材に対して直接もしくは間接に、突起を基材の面内方向に所定のパターンにて設ける突起形成工程を備え、該突起形成工程では、形成される突起は、柱状体の基端部から先端部までの高さよりも該突起の基端部から先端部までの高さが小さくなるように形成される、上記(3)に記載の光学素子の製造方法、
(5) 突起形成工程では、突起は、基材に対して直接もしくは間接に、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を重合することで形成される、上記(4)に記載の光学素子の製造方法、
(6) 柱状体と突起が、同一の光硬化性樹脂を含む樹脂組成物にて同時に形成されることにより、柱状体形成工程と突起形成工程が同時に行われる、上記(5)に記載の光学素子の製造方法、
(7) 突起形成工程では、突起は、基材に対して直接もしくは間接に、ポジレジストを用いたフォトリソグラフィー法にて形成される、上記(4)に記載の光学素子の製造方法、
(8) 透明導電膜形成工程では、透明導電膜が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、上記(1)から(7)のいずれかに記載の光学素子の製造方法、
(9) 基材に対して直接もしくは間接に、入射光のうち所定の可視光線を透過光として分光可能な着色層を有してなるカラーフィルタ層を形成するカラーフィルタ層形成工程が行われる、上記(1)から(8)のいずれかに記載の光学素子の製造方法、
(10) カラーフィルタ層形成工程では、可視光線の透過スペクトルを異にする複数種類の着色層がそれぞれの種類の着色層について定められたパターンにて形成されることにより、複数種類の着色層を有してなるカラーフィルタ層が形成される、上記(9)に記載の光学素子の製造方法、
(11) 上記(1)から(10)のいずれかの製造方法によって得られる光学素子、
(12) 上記(11)に記載の光学素子を備えることを特徴とする液晶表示装置、を要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明導電膜形成工程が行われた後に位相差層形成工程が行われることにより、光学素子における位相差層の表面について、その位相差層の表面凹凸の発生が効果的に抑制される。
【0023】
本発明において、位相差層形成工程では、位相差層が所定のパターンにて形成されてもよい。その場合、本発明の製造方法によって得られる光学素子は、半透過半反射型液晶表示装置の基板に容易に組み込んで使用できるものとなる。その光学素子を組み込んだ半透過半反射型液晶表示装置は、光学素子に形成される位相差層のパターンを、半透過半反射型液晶表示装置における反射部のパターンに対応するパターンとすることで、具体的に実現されうる。
【0024】
また、光学素子を組み込んだ液晶表示装置について駆動用液晶を駆動するために駆動用液晶層に印加されるべき電圧(駆動電圧)の大きさは、光学素子が透明導電膜の全面を覆って位相差層を形成している場合の駆動電圧のほうが、光学素子が透明導電膜の全面を覆って位相差層を形成していない場合における駆動電圧に比べて、高くなる。この点、本発明において、位相差層が所定のパターンにてパターン形成される場合、光学素子の平面視上、透明導電膜の形成領域の少なくとも一部に対して重なり合わないように位相差層をパターン形成することができる。その場合、透明導電膜の一部の領域は位相差層に覆われず、光学素子は、透明導電膜の表面を露出させた状態となる。すると、光学素子を組み込んだ液晶表示装置において、透明導電膜より駆動液晶層に印加された電圧が位相差層の影響を受けてしまう虞は小さくなる。
【0025】
本発明では、基材の面内方向の所定の位置に、光硬化性樹脂からなる柱状体を所定のパターンで形成するという柱状体形成工程が行われてもよい。製造される光学素子が液晶表示装置に組み込まれて用いられる場合、柱状体により、液晶表示装置の駆動用液晶層のセルギャップが維持される。
【0026】
本発明では、基材の面内方向の所定の位置に、光硬化性樹脂やポジレジストからなる突起を形成するという突起形成工程が行われてもよい。この場合、製造される光学素子は、VA方式やMVA方式やCPA方式の液晶表示装置の基板に容易に組み込んで使用されるものとなる。それらの液晶表示装置において、その突起は、駆動用液晶層の駆動用液晶の配向を規制する機能を発揮する。
【0027】
本発明では、柱状体と突起とが、同一の光硬化性樹脂を含んでなる樹脂組成物にてハーフトーンマスクを用いて同時に形成されてよい。このとき、柱状体と突起は、互いに同じ樹脂組成物で形成される。このように柱状体と突起とが同一物で同時に形成されると、柱状体と突起の製造工程を短縮することが可能となる。
【0028】
本発明では、透明導電膜が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成されてもよい。そのような透明導電膜を備えた光学素子が液晶表示装置に組み込まれた場合、その液晶表示装置は、駆動用液晶層の厚み方向に対して傾斜した方向に電界を生じさせることができるものとなる。その液晶表示装置は、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式やCPA方式の液晶表示装置として使用可能なものとなる。すなわち、本発明の光学素子が液晶表示装置の基板に組み込まれることにより、VA方式やMVA方式やPVA方式やCPA方式の液晶表示装置を構成することが容易になる。
【0029】
本発明において、透明導電膜が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成され、且つ、突起形成工程が実施されてもよい。本発明の製造方法によれば、パターン形成された透明導電膜と突起を備えた光学素子が得られる。そのような光学素子が液晶表示装置に組み込まれた場合、次のような効果が生じる。まず、液晶表示装置において、透明導電膜がパターン形成されていることで、パターン形成された透明導電膜のうち電圧を印加される部分と印加されない部分を生じさせることができる。これにより、液晶表示装置は、駆動用液晶層内の電場分布を所定の分布パターンとなるようにすることが可能なものとなる。ここで、液晶表示装置の電圧分布が所定のパターンとなる場合、駆動用液晶層内の駆動用液晶は、駆動用液晶をなす液晶分子の配向を局所的に変更することが可能な状態となる。そして、駆動用液晶層内の液晶分子の配向を局所的に変更することが可能となるため、本発明によれば、視野角の広狭を制御することが可能な液晶表示装置を得ることが可能となる。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる光学素子は、液晶表示装置を構成する液晶セルの第1の基板と第2の基板のいずれかもしくは両方に組み込まれることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、基材2と位相差層3と透明導電膜5とを有する光学素子1の製造方法である。
【0032】
<第1の実施形態に対応する光学素子の製造方法>
まず、本発明の「光学素子の製造方法」の実施例の1つの形態(第1の実施形態)について説明する。
【0033】
本発明の光学素子の製造方法は、基材2に対して直接もしくは間接に位相差層3を形成する位相差層形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に透明導電膜5を形成する透明導電膜形成工程とを備える。そして、本発明の光学素子の製造方法は、透明導電膜形成工程が行われた後に、位相差層形成工程が行われる。
【0034】
本発明の光学素子の製造方法の第1の実施形態では、図1(A)に示すように、光学素子1として、基材2に、位相差層3と、透明導電膜5とを形成しており、且つ、透明導電膜5が形成された後に位相差層3が形成されてなるものが得られる。
【0035】
なお、図1(A)に示す光学素子1の具体的な実施例では、光学素子1は、基材2に対して透明導電膜5及び配向膜(図示せず)を介して間接に位相差層3を形成している。なお、「基材2に対して直接もしくは間接」という構成には、「基材2の所定の面の全領域に対して直接もしくは間接」という構成、および、「基材2の所定の面の一部の領域に対して直接もしくは間接」という構成の両方の構成が含まれる。
【0036】
本発明の製造方法にて得られる光学素子1は、所定の領域(領域K)における表面凹凸の大きさを、所定の大きさを超えない範囲の値とするものである。
【0037】
ここで、「所定の領域K」とは、「光学素子の表面のうち、基材に対して透明導電膜と位相差層の積層によって形成される表面(積層面の最表面)(表面A)」における所定の領域であり、かつ、「表面Aの領域のうち、光学素子の平面視上、位相差層の形成された領域に対して重なり合う領域」である(図7)。なお、図7では、便宜上、配向膜等は省略されている。
【0038】
「表面凹凸」および「表面凹凸の大きさ」は、光学素子1の表面Aの面内方向のプロファイル(profile)、および、光学素子1の縦断面のプロファイル(profile)を測定することによって特定することができる。
【0039】
光学素子1の表面Aの面内方向のプロファイル(profile)と光学素子1の縦断面のプロファイルは、原子間力電子顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscope)を用いて、次のように測定される。
【0040】
光学素子1の表面Aの面内方向のプロファイル(profile)は、表面Aの凹凸の状態を図面化あるいは画像化してなるものである。光学素子1の表面Aの面内方向のプロファイル(profile)は、表面Aの領域Kの部分を、その光学素子1の面内方向にAFMによって走査されることで測定される。測定された表面Aの面内方向のプロファイルに基づき、光学素子1は、光学素子1の表面Aの領域Kに表面凹凸が存在するか否かという点、および、表面凹凸が存在する場合、その表面凹凸は光学素子の平面視上どのような形状となっているかという点について、観測される。
【0041】
光学素子1の領域Kに表面凹凸が認められる場合、光学素子1の縦断面のプロファイルがAFMによって測定される。ここに、プロファイルの測定対象となる光学素子1の縦断面は、平面視上、光学素子1の厚み方向に平行な断面(縦断面)であって、且つ、表面凹凸の凸部と凹部を通過する縦断面である。例えば、図7(A)(B)に示すように、光学素子1の領域Kに、表面凹凸が条状に形成され、その表面凹凸において凸部90の頂上部と凹部91の底部がいずれも条状に形成されている場合(図7(A))、次のように光学素子1の縦断面について、そのプロファイルが測定される。すなわち、光学素子1の厚み方向に平行な断面(縦断面)であって、且つ、条状に形成された凸部90の頂上部と凹部の底部91を通過する方向(破線Fが延びる方向)の縦断面について、光学素子1の縦断面のプロファイル(断面プロファイル)が測定される。
【0042】
光学素子1の領域Kの表面凹凸について測定されたプロファイルに基づき、その表面凹凸における凸部90の頂上部と凹部91の底部の位置が特定される。光学素子の厚み方向の距離であって光学素子の表面近傍に選択された位置G(図7(B)において符号Gにて示す、透明導電膜5の表面位置が位置Gとして選択されてもよい)から凸部90の頂上部までの距離(H1)が測定される。さらに、光学素子の厚み方向の距離であって位置Gから凹部の底部までの距離(H2)が測定される。そして、隣り合う凸部と凹部についてH1とH2の差(ΔH=|H1−H2|)が算出される。このとき、H1、H2の測定点はつぎのように定められる。断面プロファイルにおいて、領域Kの中央位置に対応する位置(中央位置)を定める。この中央位置(1箇所)が測定点となる。そして、その1箇所の測定点について、最も近接した凹部の底部と、凸部の頂上部を特定する。この測定点についてΔHが算出される。ここに算出されたΔHは、「1つの断面プロファイルに基づく光学素子の領域Kの「表面凹凸の大きさ」」として定義される(図7(B))。
【0043】
光学素子1の領域Kの「表面凹凸の大きさ」を定めるにあたっては、さらに、断面プロファイルを得るために選択される縦断面として、3つの縦断面が選択され、各断面プロファイル(3種類の断面プロファイル)に対して、ΔHが算出される。そして、各断面プロファイル(3種類の断面プロファイル)に基づき算出されたΔHが、更に、平均される。これによって算出された値が、光学素子の領域Kの「表面凹凸の大きさ」たるΔHとして定義される。
【0044】
なお、光学素子1の領域Kの断面プロファイルを得るために選択される3つの縦断面は、光学素子1において表面凹凸が存在する互いに異なる位置に選択される。
【0045】
光学素子1の領域Kにおける表面凹凸の測定にあたり、位置Gは、H1、H2を定めるための便宜上の基準となる位置として選択された位置であり、物理的にH1、H2を測定可能な位置であれば、光学素子の表面の位置であってもその表面から離れた位置であってもかまわない。位置Gの違いは、表面凹凸の大きさΔHに影響をあたえない。
【0046】
本発明の製造方法によって得られる光学素子1は、領域Kにおいて、表面凹凸の大きさΔHが80nm程度未満に抑えられる。また、より好ましい光学素子1として、表面凹凸の大きさΔHが50nm以下に抑えられたものを得ることができる。
【0047】
ここで、光学素子1においては、光学素子の位相差層3の凸部90と凹部91とで位相差の差が10nm程度以内に抑えられることが、位相差層の「予定された位相差量の大きさ」からの誤差が過剰に大きくならず、好ましい。
【0048】
そこで、ΔHが200nmの場合、位相差の差を10nm以下に抑えるためには、Δnが0.05以下の液晶化合物しか、位相差層を構成する液晶化合物として好ましく使用することができなくなる。ΔHが120nmの場合は、同様にΔnが0.08以下の液晶化合物しか使用できない。これに対し、本発明では、ΔHを80nm未満に抑えられるため、Δnが0.125程度以下の液晶化合物であれば使用可能である。また、本発明では、ΔHを50nm以下に抑制できるため、Δnが0.20以下の液晶化合物が使用可能となり、位相差層を構成する液晶化合物の選択肢が増大する。
【0049】
光学素子1の領域KにおけるΔHが抑えられることに伴う他の効果として、次のようなことが挙げられる。光学素子が、領域Kにおいて予定していない過剰に大きな凹凸が存在するものである場合、そのような光学素子が組み込まれた液晶表示装置では、駆動用液晶の配向に悪影響が生じる虞がある。つまり、液晶表示装置において駆動用液晶の配向状態が予定されない状態となってしまい、それが液晶表示装置のコントラストを低下させてしまうという虞がある。そこで、光学素子1は、領域KにおいてΔHがより抑えられたものであるほど、上記した虞が低減され、好ましい光学素子となる。
【0050】
また、光学素子1を組み込んだ液晶表示装置では、透明導電膜と駆動用液晶層の間の位相差層が、駆動用液晶を駆動させるための電界を弱める。この点でも、光学素子1は、領域KにおいてΔHがより抑えられたものであるほど好ましい。
【0051】
なお、光学素子1を組み込んだ液晶表示装置は、透明導電膜と駆動用液晶層の間に位相差層を形成する液晶表示装置となっている。そして、この液晶表示装置は、「透明導電膜と駆動用液晶層の間に位相差層を形成しない液晶表示装置と比べて、位相差層を形成した領域に対面する駆動用液晶層の部分のセルギャップを大きくしてなる構成」を備えることが好ましい。ただし、この比較は、光学素子1を組み込んだ液晶表示装置の駆動用液晶層を構成する駆動用液晶のΔnと、透明導電膜と駆動用液晶層の間に位相差層を形成しない液晶表示装置の駆動用液晶層を構成する駆動用液晶のΔnが同じであることを前提とする。上記のようにセルギャップが定められると、液晶表示装置は、位相差層が駆動用液晶層の電界を弱めることを考慮した構成を備えることとなる。すなわち、セルギャップのみを異にする液晶表示装置について駆動用液晶層を通る光の位相差を比較した場合、駆動用液晶層に与えられる電界が弱められたとしても、セルギャップが大きい液晶表示装置は、セルギャップが小さい液晶表示装置よりも、駆動用液晶層を通る光に十分な位相差を与える。
【0052】
「基材2について」
基材2を構成する材料は、光透過性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、基材2は、透明材料により形成されたものを適宜採用できる。基材2の光線透過率は、適宜選定可能である。基材2は、単層で構成されてなるものでも、複数種類の材料にて多層に構成されてなるものでもよい。
【0053】
基材2は、光学的に等方性を有するように構成されていることが好ましい。基材2としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。また、基材2は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどからなるプラスチック基板であってもよいし、またさらにポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロプレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトンなどのフィルムを用いることもできる。これらのなかでも、基材2は無アルカリガラスであることが好ましい。また、基材2は、その剛性について特に限定されず、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジットな部材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブルな部材を用いることができる。
【0054】
「透明導電膜5について」
透明導電膜5とは、透明な膜、且つ、導電性を有する膜を示す。ここに、「透明な膜」とは、例えばガラス上に製膜された膜の場合、ガラスについて測定された可視光線(波長400〜700(nm))の透過率(R1)に対して、ガラスと膜とを合わせた積層体について測定した透過率(R2)の比率(R2/R1)が0.6以上であることを示すものとする。また、「導電性を有する膜」とは、対象となる膜の抵抗率が10-3(Ω・cm)以下である場合を示すものとする。
【0055】
透明導電膜5を構成する材料(導電材料)としては、ITO、酸化アルミニウムや酸化ガリウムを添加された酸化亜鉛、酸化アンチモンやフッ素をドープされた酸化スズが挙げられるが、抵抗率の低さの点では、透明導電膜5を構成する導電材料がITOであることが好ましい。すなわち、透明導電膜5は、ITOを導電材料とする導電膜組成物からなるITO膜であることが好ましい。
【0056】
「透明導電膜形成工程」
透明導電膜5を形成する工程(透明導電膜形成工程)は、導電材料を含む導電膜組成物を用い、従前より公知な方法を適宜用いて実施することができる。具体的には、透明導電膜形成工程には、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法(ディツプコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法など)、クラスタービーム法、PLD法(Pulsed Laser Deposition法)などを用いることができる。
【0057】
透明導電膜形成工程においては、透明導電膜5が、平面視上、所定のパターンにて形成されてもよい。この場合、透明導電膜5は、基板2の面内方向の所定の領域であって所定のパターンに応じて定められる領域に、形成される。なお、透明導電膜5が所定のパターンにて形成される場合、そのパターンとしては、ストライプ状のパターン、格子状のパターン、多角形の領域でなる透明導電膜5のユニットを多数配置してなるパターン、などを挙げることができる。
【0058】
透明導電膜5のパターン形成は、レジストを用いた方法などにより形成可能である。具体的には、透明導電膜5のパターン形成は、例えば、次のように形成可能である。導電膜組成物が所定の面に一面にスパッタリングされて、透明導電膜が形成される。このとき、透明導電膜の形成領域は、透明導電膜5の形成を予定される領域よりも広範囲の領域にわたる。次に、透明導電膜を覆うようにレジストが塗布されてレジスト膜が形成される。これとは別に、所定のパターンにて開口部を形成したマスクが準備される。そして、そのマスクを介してレジスト膜に向けて活性放射線が照射されて、レジスト膜に硬化部と非硬化部が形成される。レジスト膜のうち非硬化部にあたる部分は現像処理により取り除かれる。これにより、透明導電膜のうち、透明導電膜5の形成を予定される部分に対応する部分がレジスト膜に覆われる。そして、透明導電膜のうちレジスト膜に覆われていない部分がエッチングされる。エッチングの後、透明導電膜5の形成を予定される部分に対応する部分に形成されたレジスト膜が取り除かれる。このとき、透明導電膜のうち、透明導電膜5の形成を予定される部分に対応する部分は、除去されず、所定の面上に残される。こうして、透明導電膜5がパターン形成される。すなわち、パターン形成されていない透明導電膜から、パターン形成された透明導電膜が形成される。
【0059】
「位相差層3について」
位相差層3は、液晶化合物を含む液晶組成物にてなる層であり、液晶化合物をなす液晶分子を所定の方向に規則的に配向させてなる層構造を備える。位相差層3を構成する液晶化合物の配向は、具体的には、例えば、光学素子1を組み込む液晶表示装置の構成に応じて定められる位相差層3の光学機能に応じて、ホモジニアス配向(水平配向)、ホメオトロピック配向(垂直配向)、ツイスト配向、ハイブリッド配向、ベンド配向などから適宜選択される。なお、位相差層3が、液晶化合物をホモジニアス配向してなる構造にて構成される場合、位相差層3は、いわゆる正のAプレートとしての光学機能を有する層をなし、また、位相差層3が、ホメオトロピック配向した液晶化合物にて構成される場合では、正のCプレートとしての光学機能を有する層をなす。
【0060】
なお、位相差層3の厚さ方向に法線(H)を有する平面(S)を想定し、法線Hに平行してz軸、平面Sの面内方向に互いに直交するx軸とy軸とを想定して、x軸とy軸とz軸とで張られる3次元空間を想定した場合にあって、位相差層3のx軸、y軸、z軸方向の屈折率を、それぞれNx、Ny、Nzとした場合に、位相差層3が正のAプレートである場合とは、Nx>Ny=Nz、もしくはNy>Nx=Nzである場合を示し、位相差層が正のCプレートである場合とは、Nx=Ny<Nzである場合を示すものとする。
【0061】
位相差層3を構成する液晶化合物としては、重合性官能基を有する重合性液晶化合物や、高分子液晶化合物等を適宜用いることができる。さらに、位相差層3を構成する液晶化合物としては、ネマチック規則性、スメクチック規則性を有する液晶相を形成し得る液晶化合物であれば特に限定されるものではないが、ネマチック規則性を有する液晶化合物(ネマチック液晶化合物)を好適に使用できる。位相差層3を構成する液晶としてネマチック規則性を有する液晶化合物が選択される場合、ネマチック規則性を有する液晶化合物の中でも、液晶化合物を構成する液晶分子の分子構造中に2つ以上の重合性基を有するネマチック液晶化合物が、好適に使用されることができる。より具体的に、そのようなネマチック液晶化合物として、特表平11−513019号公報に開示されているような重合性液晶化合物を使用することができる。
【0062】
なお、位相差層3を構成する液晶化合物としては、「液晶化合物をなす液晶分子が重合性液晶化合物のモノマー分子であるもの」、「液晶化合物をなす液晶分子が重合性液晶化合物のオリゴマー分子であるもの」、「液晶化合物をなす液晶分子が重合性液晶化合物のポリマー分子であるもの」等が、それぞれ単体で用いられてよい。また、これらの二種以上を混合してなるものが、位相差層3を構成する液晶化合物として採用されてもよい。
【0063】
位相差層3を構成する重合性液晶化合物としては、重合性液晶化合物をなす液晶分子の分子構造中に不飽和二重結合を重合性官能基として有するものが好ましく、分子構造の両末端に不飽和二重結合を有するもの(不飽和二重結合を2以上有するもの)がより好ましい。
【0064】
位相差層3を構成する重合性液晶化合物は、棒状の分子構造を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは円盤状の分子構造を有する重合性液晶化合物、所謂ディスコティック重合性液晶化合物を用いることができる。特に、位相差層3を構成する重合性液晶化合物としては、棒状重合性液晶化合物を好ましく用いることができる。
【0065】
位相差層3を構成する重合性液晶化合物は、架橋重合性を有する液晶化合物をあげることができ、架橋重合性を有するネマチック液晶化合物(架橋性ネマチック液晶化合物)などを好ましい液晶化合物としてあげることができる。架橋性ネマチック液晶化合物としては、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶化合物として、より具体的には、下記化1〜12で表される化合物のうちの1種または複数種を混合して用いることができる。
【0066】
【化1】

【0067】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ水素又はメチル基を示し、Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、又はニトロ基を表し、a及びbは、それぞれ個別に2〜12の整数を表す。)
【0068】
【化2】

【0069】
【化3】

【0070】
【化4】

【0071】
【化5】

【0072】
【化6】

【0073】
【化7】

【0074】
【化8】

【0075】
【化9】

【0076】
【化10】

【0077】
【化11】

【0078】
【化12】

【0079】
位相差層3は、その位相差層3に入射される光に位相差を生じさせるものである。したがって、光が所定の方向に位相差層3を通過すると、常光と異常光の間に所定の位相差が生じる。ここに位相差は、リタデーション量により決定される。リタデーション量は、位相差層3の複屈折率(Δn)と膜厚(d)との積により定められる。位相差層3は、光に位相差を生じさせるものであるので、屈折率異方性を有する(Δnがゼロでない)ように形成される。ところで、屈折率異方性を示すΔnは、位相差層3を構成する液晶化合物や位相差層3の下地をなす面の配向規制力に応じて様々に異なる値をとる。位相差層3は、位相差層3を構成する液晶化合物の配向する方向(主軸(遅相軸もしくは進相軸)の方向)に対して平行な面を想定するとともに、その面内に、液晶化合物の主軸方向に対して直角なX軸と、主軸方向に対して平行なY軸とを仮定した場合に、位相差層12を構成する液晶化合物は、液晶化合物のX軸方向の屈折率nXとY軸方向の屈折率nYとの差(Δn=|nX−nY|)が0.03〜0.20程度であることが好ましく、0.05〜0.15程度であることがより好ましい。
【0080】
Δnが0.03未満である場合、位相差層3が所望のリタデーション量を光に生じさせるものになるために、位相差3の膜厚が過剰に厚くなってしまう虞がある。位相差層3の厚みが過剰に厚くなると、位相差層3を構成する液晶化合物の配向に乱れが生じる虞が大きくなる。一方、Δnが0.20を超える場合、位相差層3が所望のリタデーション量を光に生じさせものになるために、位相差層3の膜厚が過剰に薄くなってしまう虞がある。位相差層3の膜厚が過剰に薄い場合、所定の厚みを有する位相差層3を得るために位相差層3をなす膜の厚みを制御することが困難になる。
【0081】
複屈折率の測定は、次のように、位相差層3のリタデーション値と膜厚を測定することにより算出できる。まず、リタデーション値は、RETS−1250VA(大塚電子社製)等の市販の光学材料検査装置を測定装置として用いて測定できる。リタデーション値を測定される光(測定光)の波長は、可視領域(380〜780nm、測定装置の制約によっては400〜800nm)であることが好ましく、特に、比視感度の最も大きい550nm付近で測定することがより好ましい。
【0082】
位相差層3の膜厚は、触針式段差計等を用いて測定することができ、DEKTAK(Sloan社製)等の市販の測定機器を好適に使用できる。なお、これらの測定機器は、位相差層3のみならず、光学素子1を構成する各層各部の膜厚を測定するために使用することができるものである。
【0083】
「位相差層形成工程」
位相差層3を形成する工程(位相差層形成工程)は、次のように行われる。まず、液晶化合物を含む液晶組成物が調製される。次に、液晶組成物が所定の面(光学素子1を構成する基材2などの「部材や層」における所定の面)上に塗布される。このとき、その所定の面上に、液晶塗布膜が形成される。つぎに、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物は、所定の方向に配向される。さらに、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物を所定の方向に配向してなる状態が維持されつつ、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物をなす重合性液晶分子が重合される。これにより、液晶塗布膜が硬化し、その液晶塗布膜が位相差層3となる。
【0084】
<位相差層3の形成の際に用いられる液晶組成物>
位相差層3が形成されるにあたり、液晶組成物にて液晶塗布膜が作製される。液晶塗布膜の作製の際に用いられる液晶組成物は、重合性液晶化合物を含む組成物として構成される。この重合性液晶化合物は、上記したような位相差層3を構成する液晶化合物として使用可能な液晶化合物である。
【0085】
位相差層3を形成するための液晶組成物においては、重合性液晶化合物の他に、光重合開始剤が含まれることが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を好適に使用できる。ラジカル重合性開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げることができる。本発明においては、市販の光重合開始剤を使用することもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物や、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物を好適に使用できる。
【0086】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の配向性を大きく損なわない範囲で添加することが好ましい。光重合開始剤の添加量としては、一般的には重合性液晶化合物に対して0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜12質量%、より好ましくは、0.5〜10質量%の範囲で液晶組成物に添加することができる。
【0087】
なお、位相差層3を形成するための液晶組成物には、光重合開始剤の他に増感剤が、本発明の目的が損なわれない範囲で添加されてよい。
【0088】
また、位相差層3を形成するための液晶組成物は、更に熱重合開始剤を含んでなることが好ましい。重合性液晶化合物の重合反応は、加熱によっても進行可能な反応であるが、液晶組成物が熱重合開始剤を含有していることにより、等方相の状態にある重合性液晶を効率的に重合させて硬化することができる。このとき、位相差層3の形成を予定される下地面の領域から外れた領域(予定外領域)に液晶塗布膜が形成されてしまった場合に、液晶相の液晶化合物を含む位相差層3がその予定外領域に形成されないようにすることができる。すなわち、液晶塗布膜の部分に含まれる重合性液晶化合物が等方相の状態になされ、その状態にて重合性液晶化合物が重合される。
【0089】
熱重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を好適に使用できる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキシルニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレル酸、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、を挙げることができる。
【0090】
熱重合開始剤は、重合性液晶化合物の配向性を大きく損なわない範囲で添加することが好ましい。熱重合開始剤の添加量としては、一般的には液晶化合物に対し0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜12質量%、より好ましくは、0.5〜10質量%の範囲で液晶組成物に添加することができる。
【0091】
位相差層3を形成するための液晶組成物は、界面活性剤を含有するものであることが好ましい。液晶組成物が界面活性剤を含有することにより、液晶塗布膜において気体に対して接触する面(気体界面、露出面)で、液晶化合物の配向に乱れが生じる虞を抑制できる。具体的には、空気雰囲気下にて液晶塗布膜を形成する場合には、液晶塗布膜の空気界面での液晶化合物の配向を制御することができる。
【0092】
界面活性剤として使用可能なものは、重合性液晶化合物が液晶相をなすことを損なうものでなければ、特に限定されることはない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0093】
界面活性剤の添加量としては、一般的には液晶化合物に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲で、液晶組成物に添加することができる。
【0094】
位相差層3を形成するための液晶組成物には、液晶化合物を含む非液体の組成物、および、その非液体の組成物を所定の溶媒に添加して溶解してなる液体もしくは懸濁してなる液体の組成物(液晶組成液)の両者が含まれる。
【0095】
液晶組成物を下地面に塗布する工程を経由して位相差層3が作製される際、液晶組成物として、液晶組成液が用いられる。
【0096】
液晶組成液を構成する溶媒としては、液晶組成物を構成する各成分(重合性液晶化合物、および、重合性液晶化合物以外の各成分)を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、有機溶媒を好適に使用できる。有機溶媒としては、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等を1種類または2種類以上を混合してなるものを好適に使用できる。
【0097】
なお、位相差層3に求められる光学機能がいわゆる負のCプレートとしての機能であり、それに応じて重合性液晶化合物に求められる配向がコレステリック配向である場合には、液晶組成物には、カイラル剤が含有されることが好ましい。液晶組成物がカイラル剤を含有する場合、液晶組成物にて形成される位相差層は、コレステリック配向した液晶化合物を有する層として形成される。
【0098】
カイラル剤としては、例えば1つもしくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、またはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物等が挙げられる。カイラル剤としては、少量でも液晶分子の配向に螺旋ピッチを誘発させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、より具体的には、例えばMerck社製S−811等の市販のものを用いることができる。
【0099】
<液晶組成液の塗布>
重合性液晶化合物を含む液晶組成液が調製されると、調製された液晶組成液が所定の面上に塗布される(塗布処理)。
【0100】
調製された液晶組成液を所定の面上に塗布するにあたり、液晶組成液の塗布方法は、従前より公知な塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート等といった各種印刷法やスピンコートなどの方法やこれらを組み合わせた方法を適宜用いることが具体的に例示できる。
【0101】
<液晶組成液を塗布される面について>
液晶組成液を塗布される「所定の面」は、光学素子1を構成する各種の「部材や層」の表面のうち、位相差層3の下地面となることを予定される面である。ところで、光学素子1では、所定の基材2が用いられており、その基材2に対して直接もしくは間接に位相差層3が形成される。位相差層3が基材2に対して直接形成される場合、位相差層3の下地面は基材2の面となる。位相差層3が基材2に対して間接に形成される場合、位相差層3の下地面は、基材2の面とは異なる所定の層の面、となる。本発明の製造方法で得られる光学素子1は、基材2に透明導電膜5を形成した後に位相差層3を形成してなる。このように透明導電膜5の面上に位相差層3が形成される場合、位相差層3の下地面は、透明導電膜5となっている。すなわち、位相差層3のうち透明導電膜5の面上に形成される領域については、位相差層3は基材2に対して間接に形成される。また、位相差層3の下地面は、「位相差層3を構成する液晶化合物を所定の方向に配向させる能力(配向能)」を備える面であることが好ましい。下地面がこのような面であることにより、位相差層3を構成する液晶化合物が所定の方向により一層配向しやすくなる。位相差層3の下地面が配向能を備える場合としては、具体的に、基材2と位相差層3との間の位置に、基材2と異なる所定の層をなす配向膜(図示せず)が形成され、配向膜の表面が位相差層3の下地面となる場合が挙げられる。配向膜は、その表面に、液晶化合物を配向させる配向能を付与する処理を施されている。したがって、配向膜の表面に、所定の方向に液晶化合物を配向させた位相差層3が容易に形成できる。なお、配向膜に液晶化合物を配向させる配向能を付与するための処理としては、形成された配向膜にラビングをするという処理や、配向膜に偏光を照射するという処理や、配向膜に斜め方向から露光するという処理があげられる。
【0102】
なお、配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等が通常使用される。そのほかにも、市販の配向膜が使用されてもよい。例えば、サンエバー(日産化学株式会社製)、QL及びLXシリーズ(日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製)、ALシリーズ(JSR株式会社製)、リクソンアライナー(チッソ株式会社製)等の配向膜が、位相差層3の下地面を形成する層として用いられてもよい。
【0103】
また、配向膜にラビングをするという処理は、レーヨン、綿、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等の材料から選択されるラビング布を金属ロールに巻きつけ、これを配向膜に接した状態で回転させるか、ロールを固定したまま基材2を搬送することにより、配向膜の表面をラビング布で摩擦する方法が通常用いられる。
【0104】
<液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物の配向処理>
液晶組成液の塗布により、基材表面や配向膜表面などの所定の面(下地面)上に液晶塗布膜が形成される。液晶塗布膜には、その液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物を配向させる処理(配向処理)が施される。
【0105】
配向処理としては、「液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、液晶塗布膜の中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、この液晶塗布膜中の液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にする」という処理が挙げられる。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、加熱雰囲気下におく手段でもよいし、赤外線で加熱する手段でもよい。位相差層3を正のAプレートの光学機能を有する層とする場合、このような配向処理により、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物をなす液晶分子は水平配向する。位相差層3を正のCプレートの機能を有する層とする場合、配向処理により、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物をなす液晶分子は垂直配向する。
【0106】
水平配向や垂直配向など所定の方向に液晶分子を配向させる方法としては、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる液晶分子の種類やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を減圧乾燥する方法によっても実現可能であり、また、液晶塗布膜に対して所定方向から電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
【0107】
なお、上記塗布処理と配向処理の間には、適宜、液晶塗布膜に残存する溶媒を留去する処理(留去処理)が実施されてよい。この留去処理は、例えば、液晶塗布膜が低圧下に置かれることで、実施可能である。
【0108】
<液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物の重合処理>
配向処理の後、液晶塗布膜に含まれる液晶化合物が重合される(重合処理)。重合処理の際、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を所定の方向に配向させた状態が維持される。
【0109】
重合性液晶化合物の重合反応は、液晶組成物中に添加された光重合開始剤の感光波長の光(具体的には例えば紫外線)などの活性放射線(液晶化合物もしくは光重合開始剤の反応性官能基を励起するエネルギー線)を、液晶相の状態になっている液晶化合物を含有している液晶塗布膜に向けて、その液晶塗布膜全面に照射することで進行する。このとき、液晶塗布膜に照射する光の波長は、この液晶塗布膜中に含まれている光重合開始剤の種類に応じて適宜選択される。なお、液晶塗布膜に照射する光は、単色光に限らず、光重合開始剤の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。
【0110】
液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が重合されることにより、液晶塗布膜が位相差層3となる。
【0111】
「所定のパターンにて形成された位相差層3について」
位相差層形成工程では、位相差層3が、平面視上、所定のパターンにて形成(パターン形成)されていてもよい。このとき、位相差層3は、基材2の面内方向に、その所定のパターンに応じた領域に形成される。
【0112】
なお、位相差層3のパターンは次のようなものであってもよい。例えば、位相差層3は、位相差層3の形成を予定される面の平面視上、ストライプ状のパターンや、マトリックス状のパターンにて形成されてよい。
【0113】
発明においては、位相差層3が所定のパターンにてパターン形成される場合、光学素子の平面視上、位相差層3の形成領域の少なくとも一部の領域が透明導電膜5の形成領域に対して重なり合わないように、位相差層3をパターン形成することができる。その場合、透明導電膜5の一部の領域は位相差層3に覆われず、光学素子1は、透明導電膜5の表面の少なくとも一部を露出させた状態を形成可能となる。そのような光学素子1によれば、光学素子1を組み込んだ液晶表示装置について駆動用液晶を駆動するために駆動用液晶層に印加されるべき電圧(駆動電圧)の大きさを、光学素子が透明導電膜の全面を覆って位相差層を形成している場合の駆動電圧よりも、低く抑えることが可能となる。
【0114】
パターン形成された位相差層3は、次のように、液晶塗布膜に重合処理が実施されることによって、作製されうる。なお、この重合処理は、液晶塗布膜に対して、上記に説明した配向処理と同じ配向処理が実施され、さらに必要に応じて上記に説明した留去処理と同じ留去処理が実施された後に実施される。
【0115】
<重合性液晶化合物の重合処理>
位相差層3をパターン形成するための重合処理は、液晶塗布膜に向けて、紫外線などの活性放射線を照射されることで実施される。ただし、この重合処理では、活性放射線は、位相差層3を形成しようとする部分に対応した所定のパターンにてパターン形成されたフォトマスクを介して、液晶塗布膜に照射される。これにより、液晶塗布膜における活性放射線の被照射部分に含まれる重合性液晶化合物の重合反応が進み、液晶塗布膜において活性放射線が照射されなかった部分では重合性液晶化合物の重合反応が進まない(部分的重合処理)。部分的重合処理により活性放射線の被照射部分に含まれる重合性液晶化合物の重合反応が完了した後、液晶塗布膜における活性放射線が照射されなかった部分の液晶組成液が除去される。この除去は、有機溶剤などによる現像処理によって実現できる。
【0116】
現像処理は、例えば次のように実施される。重合性液晶化合物の重合処理の際にフォトマスクを用いた部分的重合処理が実施された後、液晶塗布膜を形成した基材2は、該基材全体を所定の溶液内に浸漬される。ここに、基材2を浸漬する「所定の溶液」とは、液晶分子の重合反応が不十分で未硬化な状態にある液晶組成物を溶解可能な溶液を示す。これにより、液晶塗布膜において重合性液晶化合物の重合反応が進まなかった部分は、基材2から取り除かれる。
【0117】
こうして、液晶相の重合性液晶化合物の重合構造を形成してなる層が、基材2の表面などの下地面上に、所定のパターンで形成される(パターニングされる)。このとき、液晶塗布膜のうち活性放射線の被照射部分が位相差層3となる。このように、重合処理が、フォトマスクを介した活性放射線の照射と現像処理を用いた方法(フォトリソグラフィー法)にて実施されることにより、パターン形成された位相差層3が作製される。
【0118】
光学素子1が、パターン形成された位相差層3を備えるものである場合、半透過半反射型液晶表示装置に組み込み可能な光学素子1を得ることができる。図2、3に示すように、光学素子1において、例えば、平面視上、半透過半反射型液晶表示装置の反射部に対応する位置となることを予定された領域(反射部領域200)を覆って且つ透過部に対応する位置となることを予定された領域(透過部領域201)を覆わないように、位相差層3が備えられる。このとき、位相差層3の厚みを透過部と反射部との間に求められる所定の段差の大きさに対応する値とするように、位相差層3が形成される。こうすることで、光学素子1は、半透過半反射型液晶表示装置に組み込み可能なものとなる。
【0119】
なお、位相差層3をパターン形成するための重合処理は、次のように実施されてもよい。液晶塗布膜が液晶相を示す状態で、光重合開始剤の感光波長の光などの活性放射線が、フォトマスクを介して、液晶塗布膜に照射される(露光される)。フォトマスクは、位相差層3のパターンに対応した所定のパターンにて光を通過させる領域を形成している。この露光の際、重合性液晶化合物の重合反応が、液晶塗布膜における活性放射線の被照射部分にて進行する(部分的重合処理)。部分的重合処理により重合反応が進行した後、重合性液晶化合物が等方相となる温度(Ti)まで液晶塗布膜が加熱される。この後の処理について、次の第1の方法や第2の方法が実施される。
【0120】
第1の方法では、液晶塗布膜がその状態でさらに感光波長の光などの活性放射線を全体に照射される。これにより、液晶塗布膜に含まれる未重合の状態にある重合性液晶化合物の重合反応が進行される。
【0121】
第2の方法では、液晶塗布膜を温度Tiまで加熱した後、さらに液晶塗布膜の温度をTi以上の所定の温度まで加熱する。このとき、液晶塗布膜に含まれる未重合の状態にある重合性液晶化合物の熱重合が行われる。こうして、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物の重合反応が所定の重合度に至るまで進められる。
【0122】
そのほか、位相差層3を所定の部分にパターン形成する方法としては、「液晶組成物を、従前より公知な印刷方法を用いて所定の部分に塗布することで、液晶塗布膜を成膜する成膜工程」と、「液晶塗布膜に含まれる重合性液晶を所定の方向に配向させる配向工程」と、「重合性液晶を重合反応させることで液晶塗布膜を硬化させて液晶塗布膜を位相差層となす重合工程」とでなる方法(印刷法)を挙げることができる。
【0123】
<第2の実施形態について>
本発明の製造方法は、第1の実施形態の製造方法を構成する工程に加えて、柱状体4を形成する工程(柱状体形成工程)備えてもよい(第2の実施形態)。
【0124】
本発明の第2の実施形態は、基材2に対して直接もしくは間接に位相差層3を形成する位相差層形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に透明導電膜5を形成する透明導電膜形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に柱状体4を形成する柱状体形成工程とを備える。そして、この製造方法では、透明導電膜形成工程が行われた後、位相差層形成工程が行われる。
【0125】
本発明の第2の実施形態で得られる光学素子1としては、図1(B)、(C)、図8(A)、に示すように、基材2に対して、位相差層3と、透明導電膜5と、柱状体4とを形成したものがあげられる。
【0126】
「柱状体について」
第2の実施形態では、柱状体形成工程にて、柱状体4が形成される。柱状体4は、形状を特に限定されるものではないが、製造容易な形状であるという理由で、円柱状に形成されている。柱状体4は、光学素子1の平面視上所定の位置に所定のパターンにて、多数配置されている。柱状体4は、その基端部を位相差層3の表面上の位置とするように形成されていてよく、また、柱状体4の基端部を位相差層3と透明導電膜5の間の位置とするように形成されていてもよい(図1(B)、図8(A))。
【0127】
柱状体4は、樹脂材料を含む樹脂組成物(柱状体形成用樹脂組成物)にて形成され、好ましくは光硬化性樹脂を含む樹脂組成物にて形成される。柱状体4を構成する光硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、屈折率異方性を有しない透明な樹脂材料が好ましく用いられ、特に、透明な有機材料で形成されたものが好ましく用いられる。柱状体4を構成する有機材料としては、耐圧性、耐熱性に優れる点で、紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。柱状体4を構成する樹脂材料として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリスチリルメタクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート(特に、それぞれビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型の骨格を有するエポキシアクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシアクリレート)、ポリカーボネート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、メラミンアクリレート等の多官能オリゴマーであって官能基の数が1〜10のもの等が具体的に挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等の単官能モノマー及び多官能モノマーも好ましいものとして挙げられる。
【0128】
第2の実施形態の製造方法によって得られる光学素子1においては、柱状体4は、平面視上、基材2の面内方向に柱状体4の設置を予定された所定の領域(柱状体設置予定領域)として特定される位置に形成される。柱状体設置予定領域は、光学素子1を組み込む液晶表示装置の設計に応じて適宜設定される。柱状体設置予定領域は、通常、「液晶表示装置において平面視上隣り合う画素間の隙間にあたる領域」内の所定の領域に、設定される。
【0129】
「柱状体形成工程」
第2の実施形態では、次のように柱状体4が形成される(柱状体形成工程)。
【0130】
柱状体4は、次のように、フォトリソグラフィー法を用いて形成されることができる。まず、柱状体形成用樹脂組成物が調製される。柱状体形成用樹脂組成物が所定の面上に塗布され、これにより塗布膜(柱状体形成用塗布膜)が形成される。例えば、柱状体形成用樹脂組成物が位相差層3の外部露出表面上に塗布されて、位相差層3上に柱状体形成用塗布膜が形成される。次に、柱状体設置予定領域に対応するパターンにてパターン形成されたフォトマスクが準備される。そのフォトマスクを介して柱状体形成用塗布膜に向けて、紫外線などの活性放射線が照射される。活性放射線の被照射部分では、柱状体形成用塗布膜が硬化する。活性放射線が照射されなかった部分では、柱状体形成用塗布膜の硬化が進まない。柱状体形成用塗布膜における活性放射線が照射されなかった部分は、現像処理により取り除かされる。こうして、柱状体設置予定領域に、柱状体形成用塗布膜の硬化物が形成される。この硬化物が柱状体4に相当する。
【0131】
なお、本発明の第2の実施形態では、基材2に対して位相差層3、透明導電膜5をそれぞれ形成する工程(位相差層形成工程、透明導電膜形成工程)は、それぞれ第1の実施形態における位相差層形成工程、透明導電膜形成工程と同じである。また第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、位相差層3や透明導電膜5は、パターン形成されていてもよい。第2の実施形態において位相差層3や透明導電膜5がパターン形成される場合、位相差層3や透明導電膜5のパターン形成方法としては、それぞれ第1の実施形態における位相差層3や透明導電膜5のパターン形成方法と同じ方法が採用される。
【0132】
また、第2の実施形態においては、光学素子1を構成する基材2、位相差層3、透明導電膜5の個々の構造および個々の材料は、それぞれ第1の実施形態において光学素子1を構成する基材2、位相差層3、透明導電膜5の個々の構造、材料と同じである。
【0133】
<第3の実施形態について>
第1の実施形態、第2の実施形態は、基材に対して直接もしくは間接に、突起を基材の面内方向に所定のパターンにて設けられる工程(突起形成工程)を備えていてもよい(第3の実施形態)。
【0134】
第3の実施形態によれば、突起6を備える光学素子1が形成される(図1(C)、図8(B))。なお、図1(C)、図8(B)には、第3の実施形態の製造方法により得られる光学素子1における実施例の1つが、示されている。
【0135】
本発明の第3の実施形態は、基材2に対して直接もしくは間接に位相差層3を形成する位相差層形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に透明導電膜5を形成する透明導電膜形成工程と、基材2に対して直接もしくは間接に柱状体4を形成する柱状体形成工程と、突起形成工程を備える。そして、この製造方法について、図1(C)の光学素子が製造される場合を例にとると、透明導電膜形成工程が行われた後、位相差層形成工程が行われ、その後、柱状体形成工程と突起形成工程が順次もしくは同時に行われる。
【0136】
突起6は、樹脂組成物(ここでは突起形成用樹脂組成物)からなる。この突起6は、光学素子1を組み込んだ液晶表示装置において、液晶表示装置の駆動用液晶層に含まれる駆動用液晶の配向を制御することを目的として設けられる構造体である。したがって、突起6を構成する樹脂組成物は、屈折率異方性を有しない光透過性を有する樹脂材料であれば、この目的を達成することが可能な範囲で特に限定されない。突起6を構成する突起形成用樹脂組成物は、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を挙げることができる。突起形成用樹脂組成物に含まれることの可能な光硬化性樹脂は、柱状体4を構成する光硬化性樹脂の範囲と同じ範囲に属する材料から、適宜選択されてよい。その他にも、突起6は、具体的に、ポジレジストにより形成されてもよい。
【0137】
突起6が、ポジレジストにて形成される場合、ポジレジストとしては、エネルギーの照射によって分解等を生じて現像液溶解性が高くなる性質を有するものが用いられる。具体的には、ポジレジストとしては、ナフトキノンジアジド、ベンゾキノンジアジドなどのキノンジアジド類や、ジアゾメルドラム酸、ジアゾジメドン、3−ジアゾ−2,4−ジオンなどのジアゾ化合物や、o−ニトロベンジルエステル、オニウム塩、オニウム塩とポリフタルアルデヒド、コリン酸t−ブチルの混合物と、OH基を持ちアルカリに可溶なハイドロキノン、フロログルシン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンなどのモノマーや、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂、スチレンとマレイン酸、マレイミドの共重合物、フェノール系とメタクリル酸、スチレン、アクリロニトリルの共重合物などのポリマーの混合物もしくは縮合物、あるいはポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ヘキサフルオロブチル、ポリメタクリル酸ジメチルテトラフルオロプロピル、ポリメタクリル酸トリクロロエチル、メタクリル酸メチル−アクリルニトリル共重合体、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリα−シアノアクリレート、ポリトリフルオロエチル−α−クロロアクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも汎用性の面から、ポジレジストとしては、ノボラック樹脂を主成分とする混合・縮合物が好ましく用いられる。
【0138】
突起6の個々の形状、大きさ、形成位置は、光学素子1の用途に応じて適宜設定される。したがって、光学素子1において、突起6の形成パターンは適宜設定される。
【0139】
光学素子1において、突起6は、平面視上、基材2の面内方向に突起6の設置を予定された所定の領域(突起設置予定領域)に形成される。突起設置予定領域は、平面視上、柱状体設置予定領域とは重なり合わない領域に定められる。また、突起設置予定領域は、光学素子1を組み込む液晶表示装置の設計に応じて適宜設定される。
【0140】
突起6の形状や大きさは、適宜設定される。例えば、VA方式の液晶表示装置に組み込まれる光学素子1では、突起6の形状は、通常は、半楕円球状や錐体状の形状に形成される。また、突起6の大きさは、突起6の先端が柱状体4の先端よりも突出した位置にならないような大きさにて形成される。したがって、突起6の基端部から先端部までの高さは、柱状体4の基端部から先端部までの高さよりも小さい。突起は、その高さが0.5〜2.0μm程度となるように形成される。
【0141】
「突起形成工程」
突起6は次のように形成される(突起形成工程)。突起6が光硬化性樹脂を含む樹脂組成物にて形成される場合、突起形成工程では、次のように、フォトリソグラフィー法を用いて突起6の形成が行われる。まず、突起形成用樹脂組成物が調製される。突起形成用樹脂組成物が所定の面上に塗布され、これにより塗布膜(突起形成用塗布膜)が形成される。例えば、突起形成用樹脂組成物が位相差層3の外部露出表面上に塗布されて、位相差層3上に突起形成用塗布膜が形成される。次に、突起設置予定領域に対応するパターンにてパターン形成されたフォトマスクが準備される。そのフォトマスクを介して突起形成用塗布膜に向けて、紫外線などの活性放射線が照射される。活性放射線の被照射部位では、突起形成用塗布膜が硬化する。活性放射線が照射されなかった部位では、突起形成用塗布膜の硬化が進まない。突起形成用塗布膜における活性放射線が照射されなかった部位は、現像処理により取り除かされる。こうして、突起設置予定領域に、突起形成用塗布膜の硬化物が形成される。この硬化物が突起6に相当する。
【0142】
第3の実施形態では、柱状体形成工程と突起形成工程とが別々の工程として実施されてなるものであるのみならず、この2つの工程が同時に実施されてなるものであってもよい。これは、「柱状体4と突起6とが、同一の樹脂組成物にて構成され、且つ、柱状体4と突起6が、フォトリソグラフィー法を用いて形成される」ことで、具体的に実現できる。ただし、この場合、柱状体4と突起6の形成領域が、平面視上、重なり合わない。
【0143】
「柱状体形成工程と突起形成工程の同時実施」
まず、柱状体形成用樹脂組成物と突起形成用樹脂組成物を兼ねる樹脂組成物(樹脂組成物Q)が調製される。その樹脂組成物Qが所定の面上に塗布され、これにより塗布膜(柱状体と突起の形成用塗布膜)が形成される。例えば、樹脂組成物Qが位相差層3の外部露出面上に塗布されて、位相差層3上に、柱状体4と突起6の形成用塗布膜が形成される。次に、柱状体形成予定位置と突起設置予定領域に対応するパターンにてパターン形成されたフォトマスクが準備される。ただし、そのフォトマスクにおいて柱状体4のパターンにあたる部分と突起6のパターンにあたる部分との光線透過率は異なる。具体的に、そのフォトマスクとして、ハーフトーンマスクが挙げられる。そして、そのようなフォトマスクを介して、柱状体4と突起6の形成用塗布膜に向けて、紫外線などの活性放射線が照射される。活性放射線の被照射部位では、柱状体4と突起6の形成用塗布膜が硬化する。活性放射線が照射されなかった部位では、柱状体4と突起6の形成用塗布膜の硬化が進まない。柱状体4と突起6の形成用塗布膜における活性放射線が照射されなかった部分は、現像処理により取り除かされる。こうして、柱状体形成予定位置と突起設置予定領域に、それぞれ柱状体4と突起6の形成用塗布膜の硬化物が同時に形成される。この硬化物のうち柱状体形成予定位置に形成されたものが、柱状体4に相当し、硬化物のうち突起設置予定領域に形成されたものが、突起6に相当する。
【0144】
なお、突起6がポジレジストにて形成される場合、突起形成工程では、次のように、ハーフトーンマスクを用いたフォトリソグラフィー法を用いて突起6の形成が行われる。まず、突起6を構成するポジレジスト組成物が調製される。そのポジレジスト組成物が所定の面上に塗布され、これによりレジスト膜が形成される。例えば、レジスト組成物が位相差層3の外部露出表面上に塗布されて、位相差層3上にレジスト膜が形成される。次に、突起設置予定領域以外の領域に対応するパターンにてパターン形成されたフォトマスクが準備される。そのフォトマスクを介してレジスト膜に向けて、活性放射線が照射される。活性放射線の被照射部位では、突起形成用塗布膜が現像処理可能に可溶化する。そして、現像処理によりレジスト膜のうち可溶化された部分がとり除かれる。こうして、レジスト膜の硬化物が所望のパターンにて形成される。この硬化物が突起6に相当する。
【0145】
<第4の実施形態について>
第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態の製造方法は、基材に対して直接もしくは間接にカラーフィルタ層を形成する工程(カラーフィルタ層形成工程)を備えてもよい(第4の実施形態)。
【0146】
第4の実施形態によって得られる光学素子1は、次に示すように、カラーフィルタ層13を備えるものである(図2,3)
【0147】
「カラーフィルタ層について」
カラーフィルタ層13は、着色層27を有して形成される。
【0148】
着色層27は、入射光のうち所定の可視光線を透過光として分光可能な層である。このような着色層27は、次に示すような材料組成物を用いて形成することができる。具体的には、着色層27の材料組成物(着色層組成物)は、例えば、所定の色を呈する顔料と、樹脂組成物を配合してなる樹脂組成物などを挙げることができ、市販のカラーフィルタ用着色レジスト、例えば、ザ・インクテック社製のIT−G R246、IT−G G445、IT−G B506を適宜使用することができる。なお、着色層27の色相は、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなど適宜選択される。
【0149】
「カラーフィルタ層形成工程」
カラーフィルタ層13は、次のように形成される(カラーフィルタ層形成工程)。第4の実施形態について、図2,3に示す光学素子1を製造する場合を例にとると、カラーフィルタ層形成工程は、透明導電膜形成工程よりも前に実施される。カラーフィルタ層形成工程は、着色層27を基材2に対して直接もしくは間接に形成することで実施される。着色層27は、所定の面の上に着色層組成物を塗布して塗布膜を得て、その塗布膜を硬化させることによって得ることができる。ここに、着色層27を形成する「所定の面」は、光学素子1を構成する所定の「部材や層」の表面である。例えば、図3に示すように、着色層27が、基材2に対して直接形成される場合には、「所定の面」は、基材2の表面となる。
【0150】
カラーフィルタ層形成工程では、複数種類の着色層27が形成されて、その複数の着色層27を有するカラーフィルタ層13が形成されてもよい。この場合、各種類の着色層27は、互いに可視光線の透過スペクトルを異にする層である。このとき、カラーフィルタ層13は、色相を異にする着色層27を備えてなる層になる。
【0151】
カラーフィルタ層13が複数種類の着色層27を有して形成される場合、各種類の着色層27は、それぞれの着色層27について定められたパターンにて形成される。
【0152】
カラーフィルタ層13が複数種類の着色層27を備える場合において、カラーフィルタ層13の具体例としては、具体的に図2,3に示す例をあげることができる。
【0153】
図2,3に示すカラーフィルタ層13は、3種類の着色層27でなる。この3種類の着色層27は、三色(3種類)の着色層27(27a,27b,27c)であり、互いに透過スペクトルを異にする。カラーフィルタ層13は、着色層27(27a,27b,27c)を面順次に配列してなる(図2)。着色層27a,27b,27cのそれぞれは、矩形状の着色層を間欠的に配置してなる間欠的な短冊状のパターン(縞状のパターン)をなして形成されており、さらに間欠的な短冊状パターンをなす着色層27a,27b,27cを構成する1つ1つの層は、細長帯状に形成されている。
【0154】
着色層27a,27b,27cは光透過性を有しており、図2,3の例では、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。
【0155】
このような着色層27a,27b,27cは、それぞれの透過スペクトルに応じて、各透過スペクトルに対応する顔料と樹脂などを配合してなる着色材料を溶媒に分散させた着色層組成物を基材2に塗布して形成される塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、例えば矩形状などといった所定形状にパターニングすることで形成することができる。そのほかにも、着色層27a,27b,27cは、着色層組成物を所定形状に基材2に塗布することによっても形成できる。
【0156】
なお、カラーフィルタ層13が複数種類の着色層27を備える場合、着色層27の組み合わせパターンについても、図2,3に示すようなRGB方式の三色の場合のほか、その補色系であるCMY方式とすることも可能であり、さらに二色の場合、または四色以上の場合なども採りうる。また着色層27のパターンの形状も、矩形状のパターン形成する場合のほか、三角形状などの微細パターンを基材2などの所定の面上に多数分散配置するパターンの場合など、目的に応じて種々のパターンを採りうる。
【0157】
カラーフィルタ層13が図2,3に示すような複数種類の着色層27を備える場合、RGBの三色の着色層(赤色(R)27a,緑色(G)27b,青色(B)27c)のそれぞれについての所定の領域は、それぞれ、画素部と着色層27との交差範囲を定める領域(画素部指定領域22)をなす。そして、このカラーフィルタ10においては、図2に二点鎖線で示すように、三色の着色層(赤色(R)27a,緑色(G)27b,青色(B)27c)にて定められる三つの画素部指定領域22があわさって、一つの絵素21が形成される。
【0158】
なお、第4の実施形態において、カラーフィルタ層形成工程で複数種類の色相の着色層が形成される場合に、位相差層形成工程にて、位相差層3がパターン形成されてよい。ただし、その場合、平面視上、各種類の着色層の形成領域の少なくとも一部と、位相差層3の形成領域とが重なりあうように、位相差層3が形成されることが好ましい。これにより、いずれの色相の着色層を通過する光についてみても、着色層を通過する光の少なくとも一部が位相差層3を通過できる。
【0159】
<第5の実施形態について>
第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態の製造方法は、ブラックマトリクス15を形成する工程(BM形成工程)を備えていてもよい(第5の実施形態)。
【0160】
ブラックマトリクス(BM)は、が多数の画素部を集合させて構成される場合に、画素部を画素ごとに区画化するために光学素子1に設けられることが多い。
【0161】
第4の実施形態においてBM形成工程が備えられる場合を例として説明する。図4、図5は、光学素子1の実施例の一つを説明するための断面を示すそれぞれ概略平面図、概略断面図である。ここに挙げる第5の実施形態の光学素子は、基材2上に着色層27や位相差層3、柱状体4を積層する前に、基材2上にブラックマトリクス15を積層して形成されてなるものである(図4、5)。第5の実施形態において、図4,5に示すような光学素子を製造する場合を例とすると、BM形成工程は、カラーフィルタ層形成工程、透明導電膜形成工程、位相差層形成工程、柱状体形成工程、突起形成工程の前に実施される。
【0162】
「ブラックマトリクス15」
図4,5に示す第5の実施形態の光学素子1の例においては、基材2の一方の表面に遮光性のブラックマトリクス15が縦横に格子状(格子縞状)に形成され、これによりブラックマトリクス15の非形成領域が開口部20として格子点状に多数形成される。このとき、1つ1つの開口部20は、光学素子1が液晶表示装置に組み込まれた際、平面視上、液晶表示装置の1つの画素の範囲を指定する領域(有効表示領域(画素部全体のうち画像表示に使用される領域)における画素1つ分の領域)に相当し、ブラックマトリクス15の形成領域は、各画素部に輪郭を付する遮光部を指定する領域に相当する。そして、その遮光部が、光学素子1においてはブラックマトリクス15の設置された部分に対応する。
【0163】
なお、図4,5に示す光学素子1の例では、ブラックマトリクス15を配置した基材2の上には、開口部20の所定の領域を覆うように三色の着色層27a,27b,27cが、面順次に配列されている(図4、図5)。このカラーフィルタ10では、開口部20が着色層27a,27b,27cによってそれぞれ被覆されて、それぞれの色相に応じた画素の範囲が指定され、そして着色層27a,27b,27cそれぞれの異なる色相の画素の範囲があわさって(図4では、開口部20の領域3つをあわせた範囲にて特定される領域)、一つの絵素21を指定する範囲が特定される。
【0164】
第5の実施形態において、着色層27a,27b,27cは、上記第4の実施形態のカラーフィルタ層形成工程と同様に、色相ごとに、フォトリソグラフィー法などの方法を適宜用いて形成できる。
【0165】
また、ブラックマトリクス15は、遮光部としての機能として、「塗工される着色層27a,27b,27cを透過する光の混色を防止する機能」や、「液晶表示装置に組み込まれる際に、基板に配置される回路であって駆動用液晶を駆動させるために用いられるTFTなどの駆動回路などを、外光から隠蔽する機能」を併せもつ。
【0166】
ブラックマトリクス15の配置形状は矩形格子状である場合に限定されず、ストライプ状や三角格子状などに形成してもよい。
【0167】
「BM形成工程」
BM形成工程は次のように実施される。BM形成工程は、例えば、ブラックマトリクス15の材料をなす金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を基材2面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス15は、黒色顔料を含む樹脂等の有機材料を所定形状に印刷するもしくはフォトリソグラフィー法により形成することも可能である。その他、BM形成工程は、ブラックマトリクスをなす材料を所定形状に塗工することによっても実現できる。
【0168】
本発明の製造方法にて得られる光学素子1は、液晶表示装置に組み込まれることができる。光学素子1を組み込んだ液晶表示装置の構成は、図6(A)(B)に示すような液晶表示装置の1例を用いて、次のように説明される。
【0169】
<液晶表示装置50について>
図6(A)(B)には、光学素子を組み込んだ液晶表示装置を説明するための液晶表示装置として、第5の実施形態の製造方法で得られる光学素子を組み込んだ液晶表示装置が模式的に示されている。図6に示す例では、第5の実施形態の製造方法で得られる光学素子1は、第1の実施形態で得られる光学素子に柱状体4と突起6と着色層27とブラックマトリクス15を設けてなるものである。すなわち、図6の例における光学素子1は、図4に示す第5の実施形態で得られる光学素子1に対して突起6を光学素子の最表面に更に設けてなる構造をなす。また、液晶表示装置は、VA方式の半透過半反射型液晶表示装置50である。図6(A)は、液晶表示装置の概略断面図であり、「光学素子1についての断面を見た場合に図5に示す断面となる」ような断面である。図6(B)は、液晶表示装置の概略断面図であり、「光学素子1についての断面を見た場合に図4のIV−IV線断面に示す断面となる」ような断面である。
【0170】
図6(A)(B)に示す半透過半反射型液晶表示装置50は、対面する一対の基板31(第1の基板32、第2の基板33)の間に液晶(駆動用液晶;負の誘電率異方性を有する)34を封入して駆動用液晶層35を形成してなる液晶セルを備えるとともに、その液晶セルの厚み方向外側に直線偏光板39,40を配置し、さらに液晶セルの厚み方向外側のうち第2の基板33の外側の位置にバックライト(図示せず)を配置してなる。バックライトは、これを光源とする光が液晶セルの第2の基板33に向かうように配置されている。
【0171】
半透過半反射型液晶表示装置50は、透過部と反射部とを備える。透過部は、半透過半反射液晶表示装置50のうち、「バックライトから液晶セルに入射した光が第2の基板33、駆動用液晶層35、第1の基板32を、この順序で通過することにより、画像を形成する」ために用いられる部分である。反射部は、半透過半反射液晶表示装置50のうち、「液晶セルに入射した外光が第1の基板32、駆動用液晶層35を通過し、第2の基板33で反射され、再び駆動用液晶層35、第1の基板32を通ることにより、画像を形成する」ために用いられる部分である。
【0172】
第1の基板32は、基材2上に遮光性のブラックマトリクス(BM)15でなる遮光部によって、有効表示領域の外縁が形成される。有効表示領域とは、液晶表示装置50の液晶表示画面を構成する画素部の存在領域に相当する領域である。また、遮光部の形成により、平面視上、BMの外縁で囲まれる領域として微細にパターニングされた多数の画素を指定する領域が、有効表示領域内に区画形成される。すなわち、遮光部は、有効表示領域の外縁を形成するとともに、有効表示領域を1つ1つの画素に区画する。
【0173】
第1の基板32には、遮光部が、平面視上、第1の基板32の面内方向に個々の画素を取り巻くように形成されている。第1の基板32の個々の画素は、透過部に対応する領域(透過部領域200)と反射部に対応する領域(反射部領域201)とを有する。
【0174】
BM15は、基材2のインセル側(駆動用液晶層35に対面する面側)表面の全面に遮光性材料を塗工した上でフォトリソグラフィー法により所望形状に形成することができる。図6(A)(B)では、BM15は、縦横格子状の形状に形成される。
【0175】
第1の基板32には、画素部の透過部領域200と反射部領域201を覆って着色層27でなるカラーフィルタ層13が積層される。このとき、基材2の面うちBM15が積層された面を面Mとし、基材2の面のうち、面Mに対して基材2の背面にあたる面を面Nとする場合に、カラーフィルタ層13は、基材2に対して面M側の位置に形成される。
【0176】
カラーフィルタ層13は、RGBの3種類の色相の着色層27にて構成される。各色の種類の着色層27は、顔料レジストを用いて構成される。各種類の着色層27は、短冊状の形状に形成される。また、各種類の着色層27は、BM15によって格子状に形成された画素部を覆って形成される。なお、各種類の着色層27の形成は、フォトリソグラフィー法にて実現される。このとき、R(Red)の色相の着色層27(R)、G(Green)の色相の着色層27(G)、B(Blue)の色相の着色層27(B)は、面順次に形成される。
【0177】
第1の基板32には、透明導電膜5が形成される。透明導電膜5は、位相差層3、突起6、柱状体4の形成の前に形成されるものである。第1の基板32において、透明導電膜5は、第1の基板32の面内方向に対して一面に形成される。
【0178】
第1の基板32には、位相差層3が形成される。位相差層3は、基材2に対して面M側に形成される。位相差層3は、平面視上、画素部の反射部領域201に対して重なり合う領域に、パターン形成される。これにより、第1の基板32の組み込まれた半透過半反射液晶表示装置において、反射部を構成する第1の基板32の部分の厚みと、透過部を構成する第1の基板32の部分の厚みとが異なることになる。
【0179】
位相差層3は、反射部領域201に対向する駆動用液晶層35の厚み(セルギャップ)が、透過部領域200に対向する駆動用液晶層35の厚み(セルギャップ)の概半分になる厚みになるように設計される。
【0180】
さらに、位相差層3は、その厚みについて、例えば1/4波長に相当する位相のずれを光に生じるように設計される。そして、例えば、液晶セル内に封止された駆動用液晶層35は、駆動用液晶層35に電圧が印加された時に、反射部では光の位相差が1/4波長となり、透過部では位相差が1/2波長、駆動用液晶層35に電圧が印加されない時には、反射部、透過部共に位相差がゼロとなるように、駆動用液晶層35を構成する駆動用液晶34をなす液晶分子の屈折率異方性Δnおよびセルギャップ(D)および配向が設計されている。
【0181】
第1の基板には、柱状体4と突起6とが、柱状体設置予定領域と突起設置予定領域に、光硬化性樹脂材料などの樹脂材料にて、それぞれ形成される。
【0182】
第1の基板32には、柱状体4が、第1の基板32と第2の基板33の間に介在するように多数形成される。柱状体4は、液晶セルを形成する際に第1の基板32に基端を有し且つ第2の基板33に先端を接することができるような長さにて、形成される。これにより、駆動用液晶層35のセルギャップDが所定の大きさに保たれる。
【0183】
突起6は、図6(A)(B)では、楕円球をその長軸を法線方向とする平面で半分に分割してなる形状(半楕円球状)に形成される。突起6の突起設置予定領域は、個々の画素部における反射部領域201の中央に、各1つ形成されるようなパターンで突起設置予定領域が指定される。
【0184】
第2の基板33は、その第2の基板33の表面且つ第1の基板に対して対面する面内の領域であって、半透過半反射液晶表示装置における反射部と透過部に対応する領域を、それぞれ第2の基板33側の反射部領域と透過部領域となしている。
【0185】
第2の基板33側の反射部領域には、光透過性を有する基材11上に、第1の基板32から第2の基板33に向かう方向に液晶層35内を進行する光を反射させる反射板38が設けられている。なお、第2の基板33の基材11は、第1の基板32の基材2として使用可能な範囲のものから選択される。
【0186】
第2の基板33側の透過部領域は、バックライトを光源とする光を透過させるとともに、第2の基板33から第1の基板32に向かう方向に光の駆動用液晶層内の進行を可能に構成される。
【0187】
第2の基板33には、インセル側に、TFT等の画素スイッチング素子、データ線、走査線等の電気回路部(図示せず)が形成されている。さらに、第2の基板33において、透明導電膜42が、平面視上、第1の基板32における個々の画素部の形状に合わせて形成される。すなわち、第2の基板33には、透明導電膜42は、個々の画素部の区分けパターンに合わせたパターンにて形成される。第2の基板33における透明導電膜42は、第1の基板32における透明導電膜5と同じものを用いて形成できる。ただし、第2の基板33において、電気回路部と透明導電膜42は、「液晶セルを形成するにあたり第1の基板に対して第2の基板を対面させた場合に第1の基板32の柱状体に対して接触しないような領域」に、形成される。
【0188】
液晶セルの外側には、直線偏光板39,40(第1の直線偏光板39、第2の直線偏光板40)が設けられており、第1の基板32の外側に設けられる第1の直線偏光板39、第2の基板の外側に設けられる第2の直線偏光板40は、その透過軸を互いに直交して配置され、これら2枚の直線偏光板39,40は、クロスニコル状態を構成している。
【0189】
なお、この半透過半反射型液晶表示装置50には、必要に応じて、第1の基板32と第1の偏光板39との間に位相差フィルム41を適宜配置してよい。なお、位相差フィルム41には、もし使うなら正のAプレートとしての機能や正のCプレートとしての機能や負のCプレートを有する位相差フィルムなどの単体が用いられ、もしくは、これらの位相差フィルムを適宜組み合わせたものが用いられる。
【0190】
なお、上記した液晶表示装置の説明は、液晶表示装置がVA方式の半透過半反射型液晶表示装置である場合についての説明であった。しかしながら、この記載は、本発明の光学素子を組み込み可能な液晶表示装置は、VA方式の半透過半反射型液晶表示装置に限定するものではない。
【0191】
本発明の製造方法について、次に示すように、実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0192】
本発明の製造方法を用いて光学素子を作製するにあたり、基材を準備した。
【0193】
<基材の準備>
基材として、洗浄処理を施された低膨張率無アルカリガラス板(コーニング社製1737ガラス 100mm×100mm、厚み0.7mm)(ガラス基材)が、準備された。
【0194】
<各種組成物の調製>
次に、光学素子の作製に使用される液晶組成物、柱状体形成用の樹脂組成物、突起形成用の樹脂組成物、着色層を形成するための組成物といった各種組成物が次に示すような組成に調製された。
【0195】
<液晶組成物>
下記に示す各成分(重合性液晶化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、溶剤)が混合されるとともに、70℃で30分間攪拌されて混合液にした。そして、その混合液の温度が室温まで降温された。この室温にされた混合液が、液晶組成物となる。
【0196】
(液晶組成物の組成(成分および各成分の配合量))
・重合性液晶化合物 (化12におけるX=6の化合物) 28.75重量部
・光重合開始剤 (イルガキュア907) 1.24重量部
・重合禁止剤 (2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール) 0.01重量部
・溶剤 (ジエチレングリコールジメチルエーテル) 70.00重量部
【0197】
<柱状体形成用の樹脂組成物と突起形成用の樹脂組成物>
柱状体形成用の樹脂組成物および突起形成用の樹脂組成物については、いずれも樹脂組成物(樹脂組成物A)が用いられた。樹脂組成物Aは、下記に示す成分と組成にて構成されるフォトレジストである。
【0198】
(樹脂組成物Aの組成)
・モノマー・・・・・14.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・13.0重量部
・開始剤・・・・・2.0重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・1.0重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア365)
・溶剤・・・・・70.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0199】
<着色層を形成するための組成物>
着色層を形成するための組成物には、顔料分散型フォトレジストが用いられた。着色層を構成する材料たる顔料分散型フォトレジストについては、赤色(R)着色画素を構成する着色材料(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)が採用された。
【0200】
顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合したものである。その組成を下記に示す。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
【0201】
赤色(R)着色画素用フォトレジストの組成は、次に示すとおりである。
【0202】
<赤色(R)着色画素用フォトレジストの組成>
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製 クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製 パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製 ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製 SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製 イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0203】
尚、本明細書に記載されたポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0204】
実施例1
<透明導電膜の形成>
ガラス基材上の表面上に、透明導電膜を、次のように形成した。
【0205】
透明導電膜を形成するための材料としては、ITOが選択された。そして、ITOが、ガラス基材の表面に、スパッタリングされた。このとき、ガラス基材の表面に、透明導電膜が一面に形成された。このとき、ガラス基材面上に透明導電膜を形成してなる部材(導電膜形成基材)が得られた。
【0206】
<配向膜の形成>
導電膜形成基材上に配向膜形成用組成物(JSR株式会社製、AL1254)をスピンコーターにて塗布した。このとき、ガラス基材面上に塗布膜(配向膜形成用塗布膜)が形成され、ガラス基材面上に塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を形成してなる部材(積層材A)が得られた。塗布条件は、配向膜の膜厚が0.1μm以下となるよう調整した。積層材Aを、230℃のオーブン内で30分間焼成した。次いで、積層材Aの塗布膜の表面に配向処理を施した。配向処理は、積層材Aを構成する塗布膜の表面がラビングされることによって実施された。ラビングは、ラビング装置によって実施された。この配向処理により、積層材Aの塗布膜が、配向膜となる。
【0207】
<位相差層形成工程>
積層材Aの配向膜表面上には、位相差層が、次のように形成された。なお、光学素子において、位相差層は、予め定められたストライプ状のパターンにてパターン形成された。
【0208】
まず、積層材Aの配向膜表面上に、液晶組成物を塗布した。これにより、積層材Aの配向膜表面上に液晶塗布膜が形成され、積層材Aの配向膜面上に液晶塗布膜を形成してなる部材(積層材B)が得られた。なお、液晶組成物の塗布は、スピンコート法にて実施された。液層組成物の塗布の後、積層材Bは、80℃で3分間、予備焼成(プリベーク)された。
【0209】
次に、ストライプ状のパターンを形成されたフォトマスクを準備した。ここに、フォトマスクのストライプ状のパターンは、光学素子の位相差層のパターンに対応するパターンである。
【0210】
準備されたフォトマスクは、予備焼成された積層材Bの液晶塗布膜に対して間隔をあけて対面する位置に配置された。このとき、フォトマスクにおいてストライプ状のパターンが形成された領域は、光学素子において位相差層を設けようとする領域に対面した。さらに、積層材Bの液晶塗布膜に露光処理を施した。露光処理は、紫外線(波長365nm、線量200mJ/cm)が積層材Bの液晶塗布膜に向けてフォトマスクを介して照射されることによって、実施された。露光処理の後、積層材Bの液晶塗布膜に現像処理を施した。現像処理は、メチルエチルケトンによるバット現像(現像時間5秒間)によって行われた。このとき、積層材Bの液晶塗布膜は、ストライプ状のパターンにてパターン形成された膜となった。
【0211】
現像処理の後、積層材Bを、230℃で30分間、焼成(本焼成(ポストベーク))した。これにより、積層材Bの液晶塗布膜は、ストライプ状のパターンにてパターン形成された位相差層となる。位相差層は、線幅30μm程度のストライプ状のパターンに形成された。位相差層は、このストライプ状の層構造を1つのユニットとしてそれらのユニットを多数備えたものとして形成される。また、位相差層の膜厚は、2.0μmであった。なお、位相差層の厚みは、触針型膜厚計にて測定された。
【0212】
このように積層材Bに露光処理と現像処理を施すことで、ガラス基材に透明導電膜を形成した後に配向膜およびパターン形成された位相差層を形成してなる本発明の光学素子が作製された。光学素子の位相差層では、位相差層に含まれる重合性液晶化合物が、ホモジニアス配向している。すなわち、この位相差層は、いわゆる正のAプレートとして機能する層である。
【0213】
次に、得られた光学素子について、光学素子の面内方向の表面プロファイルを測定した。光学素子の面内方向の表面プロファイルはAFMにて測定された。このとき、光学素子の表面において、平面視上、位相差層の形成領域に重なり合う領域(領域K)に、大きな表面凹凸が認められるか否かについての観測が、実施された。この光学素子では、光学素子の表面における領域K内の表面凹凸の発生がごくわずかに認められるにとどまっていることが、確認された。
【0214】
AFMにより測定された光学素子の1つの断面プロファイルは、図9に示されるとおりである。断面プロファイルとして選択された面は、平面視上、領域Kを通過する面(位相差層の設置領域を通過する面)であるが、柱状体の設置領域を通過しない面である。断面プロファイルに基づき測定された光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、24nmであった。
【0215】
なお、表面凹凸の大きさを測定するにあたり、ΔHが測定される。ΔHは、3つ選択された縦断面についての各断面プロファイルに基づき測定された。3つの縦断面は、次のように選択された。位相差層を構成する多数のストライプ状の層構造から3つを選択し、それらの3つの層構造における各表面凹凸の形成領域の中央位置に各1つ、計3つの縦断面が選択された。次に、各縦断面について断面プロファイルを測定した。そして、その断面プロファイルにおいて表面凹凸の形成が認められる領域における中央位置1箇所を定め、その定められた位置から最も近い位置に認められる凸部の頂上部と凹部の底部が、H1、H2の測定対象として選択された。そして、ΔHは、3つの断面プロファイルのそれぞれについて測定されたH1とH2の差の値として3つ特定される。このΔHの平均値として、表面凹凸の大きさが測定された。
【0216】
実施例2
実施例1で得られた光学素子に、次に示すように、柱状体を形成した(柱状体形成工程)。
【0217】
<柱状体形成工程>
実施例1で得られた光学素子の表面上の所定の領域に、柱状体を、次のようなフォトリソグラフィー法にて形成した。なお、柱状体が形成される「光学素子の表面」は、実施例1の光学素子の表面のうち位相差層の形成面である。また、柱状体が形成される「所定の領域」は、実施例2の光学素子において柱状体の設置を予定された領域(柱状体設置予定領域)に対応して、指定される領域である。
【0218】
<フォトリソグラフィー法による柱状体の形成>
実施例1の光学素子の表面のうち位相差層の形成面に、樹脂組成物Aを一面に塗布した。樹脂組成物Aの塗布は、スピンコート法にて実施された。このとき、実施例1の光学素子の表面のうち位相差層の形成面上に、塗布膜が形成され、実施例1の光学素子に塗布膜を形成してなる部材(積層材C)が形成された。次に、積層材Cの塗布膜の乾燥処理を施した。乾燥処理により、積層材Cの塗布膜に含まれる溶剤が留去された。具体的に、乾燥処理は、積層材Cが減圧状態下に静置されることで実施された。乾燥処理の後、積層材Cを、80℃、3分間の条件で、予備焼成(プリベーク)した。
【0219】
次に、所定のパターンを形成されたフォトマスクを準備した。ここに、このフォトマスクの所定のパターンは、光学素子の柱状体設置予定領域に対応する領域の形成パターンに対応するパターンである。
【0220】
柱状体の形成用に準備されたフォトマスクは、予備焼成された積層材Cの塗布膜に対して間隔をあけて対面する位置に配置された。このとき、フォトマスクにおいて所定のパターンが形成された領域は、光学素子において柱状体を設けようとする領域に対面された。さらに、積層材Cの塗布膜に露光処理を施した。露光処理は、紫外線(波長365nm、線量100mJ/cm)が積層材Cの塗布膜に向けてフォトマスクを介して照射されることによって、実施された。露光処理の後、積層材Cの塗布膜に現像処理を施した。現像処理は、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像(現像時間60秒)によって行われた。現像処理の後、積層材Cを、230℃、30分間の条件で、焼成(ポストベーク)した。このとき、積層材Cの塗布膜における所定の部分が、柱状体となる。これにより、位相差層の形成面上に柱状体を形成してなる光学素子が得られた。
【0221】
なお、この光学素子において、個々の柱状体は、円柱状(直径10μm、高さ2μm程度)に形成された。
【0222】
得られた光学素子について、光学素子の面内方向の表面プロファイルと光学素子の縦断面の断面プロファイルが測定された。光学素子の面内方向の表面プロファイルは、実施例1と同じく、AFMにて測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の大きな表面凹凸の存在が認められた。また、光学素子の縦断面形状の断面プロファイルの測定にあたり、その断面プロファイルの測定対象となる光学素子の縦断面としては、実施例1において選択された縦断面と同じ面が選択された。AFMにより測定された光学素子の断面プロファイルは、図10に示されるとおりである。このプロファイルに基づき測定された光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、31nm程度であった。
【0223】
実施例3
実施例2で得られた光学素子に、次に示すように、高さ1μmの突起を形成した(突起形成工程)。
【0224】
<突起形成工程>
実施例2の光学素子の表面上の所定の領域に、突起を、フォトリソグラフィー法にて形成した。なお、突起が形成される「光学素子の表面」は、実施例2の光学素子の表面のうち位相差層の形成面である。また、突起が形成される「所定の領域」は、得ようとする光学素子において予め定められた領域(突起設置予定領域)に対応する領域である。突起を構成する材料には、実施例2の柱状体の形成の際に用いられた材料と同じく、樹脂組成物Aが採用された。また、突起の形成方法としてのフォトリソグラフィー法には、実施例2の柱状体の形成の際に採用されたフォトリソグラフィー法と同じ方法が用いられた。ただし、突起の形成方法としてのフォトリソグラフィー法では、露光時の照射線量は、露光(50mJ/cm)である。また、突起の形成方法としてのフォトリソグラフィー法では、フォトマスクに形成されたパターンが、実施例2の柱状体の形成の際に用いたフォトマスクに形成されたパターンとは異なっている。すなわち、突起の形成にあたって用いられるフォトマスクの所定のパターンは、光学素子の突起設置予定領域に対応する領域の形成パターンに対応するパターンである。実施例3では、位相差層の形成面上に柱状体と突起を形成してなる光学素子が得られた。
【0225】
なお、この光学素子において、個々の突起は、半楕円体状(直径10μm、高さ1μm程度)に形成された。
【0226】
得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルを測定した。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の表面凹凸の存在は、わずかに認められるに留まっていた。また、断面プロファイルの対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、35nmであった。
【0227】
実施例4
「透明導電膜形成工程を実施した後であって基材に配向膜を形成する前に柱状体形成工程が実施される」という点を除いて、実施例2と同じ方法を用いて、光学素子が得られた。
【0228】
この光学素子は、基材を備えるとともに、柱状体を形成した後で位相差層を形成してなるものである。
【0229】
得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルが測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の表面凹凸の存在は、わずかに認められるに留まっていた。また、断面プロファイルの対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、23nmであった。
【0230】
実施例5
「ガラス基材に着色層を形成する工程(カラーフィルタ層形成工程)が実施される」という点、「透明導電膜が着色層表面上に形成される」という点を除いて、実施例1と同じ材料および方法を用いて、光学素子が得られた。なお、カラーフィルタ層形成工程は、次に示すように実施された。
【0231】
<カラーフィルタ層形成工程>
なお、カラーフィルタ層形成工程は、着色層を形成する工程でなる。そして、着色層を形成する工程は、次に示すように実施された。
【0232】
基材に対して、赤色(R)の顔料分散型フォトレジストをスピンコート法で塗布し、減圧乾燥により溶剤を減じ、80℃、3分間の条件でプリベークし、露光(100mJ/cm)した。引き続き0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を50秒行った後、230℃、30分間ポストベークし、膜厚2.2μmの赤色(R)着色層を形成し、赤色の着色層が一面形成された。
【0233】
得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルが測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の表面凹凸の存在は、わずかに認められるに留まっていた。また、断面プロファイルの対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、25nmであった。
【0234】
実施例6
柱状体を形成するための光学素子として、実施例5の光学素子を用いたほかは、実施例2と同じ材料および方法を用いて、柱状体を備える光学素子を作成した。得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさを測定したところ、その大きさは31nmであった。
【0235】
比較例1
配向膜を形成した位置がガラス基板の表面であること、および、位相差層の形成後に透明導電膜を形成したこと以外は、実施例1と同じ材料を用い、実施例1と同じ位相差層形成工程、透明導電膜形成工程を実施して、光学素子を得た。比較例1では、基材を備えるとともに位相差層を形成した後に透明導電膜を形成してなる光学素子が得られた。
【0236】
得られた光学素子について、光学素子の面内方向の表面プロファイルと光学素子の縦断面の断面プロファイルが測定された。光学素子の面内方向の表面プロファイルは、実施例1と同じく、AFMにて測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の大きな表面凹凸の存在が認められた。また、光学素子の縦断面形状の断面プロファイルの測定にあたり、その断面プロファイルの測定対象となる光学素子の縦断面としては、実施例1において選択された縦断面と同じ面が選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、80nmであった。
【0237】
比較例2
比較例1で得られる光学素子における表面上に、更に、柱状体の形成が行われた。柱状体の形成は、実施例2と同じ工程を用いて実施された。こうして、基材を備えるとともに位相差層を形成した後に透明導電膜を形成し更にその後に柱状体を形成してなる光学素子が得られた。
【0238】
得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルと光学素子の縦断面の断面プロファイルが測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の大きな表面凹凸の存在が、認められた。また、光学素子の縦断面の断面プロファイルに基づき、なお、断面プロファイルの測定対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。AFMにより測定された光学素子の断面プロファイルは、図11に示されるとおりである。このプロファイルに基づき測定された光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、128nmであった。
【0239】
比較例3
比較例2で得られた光学素子に対して、実施例3の突起形成工程と同じ工程を用いて、高さ1μmの突起を形成した。ただし、突起が形成される「光学素子の表面」は、実施例3と異なり、比較例2の光学素子の表面のうち透明導電膜の形成面である。
【0240】
得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルと光学素子の縦断面の断面プロファイルが測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の大きな表面凹凸の存在が、認められた。また、光学素子の縦断面の断面プロファイルに基づき、なお、断面プロファイルの測定対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、209nmであった。
【0241】
比較例4
「ガラス基材に着色層を形成する工程(カラーフィルタ層形成工程)が実施される」という点、「配向膜が着色層表面上に形成される」という点を除いて、比較例1と同じ材料および方法を用い光学素子が得られた。なお、カラーフィルタ層形成工程は、実施例5と同じ方法が用いられた。
【0242】
比較例4で得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の面内方向の表面プロファイルが測定された。光学素子の表面の領域Kにおいて、平面視上、ストライプ状の表面凹凸は、大きなものが認められた。また、断面プロファイルの対象となる「光学素子の縦断面」は、実施例1と同じ方法で選択された。光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさは、81nmであった。
【0243】
比較例5
柱状体を形成するための光学素子として、比較例4の光学素子を用いたほかは、実施例2と同じ材料および方法を用いて、柱状体を備える光学素子を作成した。得られた光学素子について、実施例1と同じ方法で、光学素子の領域Kにおける表面凹凸の大きさを測定したところ、その大きさは134nmであった。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】(A)本発明の製造方法により得られる光学素子の例を示す断面模式図である。(B)本発明の製造方法により得られる光学素子の例を示す断面模式図である。(C)本発明の製造方法により得られる光学素子の例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の製造方法により得られる光学素子の一例を模式的に示す概略平面図である。
【図3】(A)図2のI−I線断面を模式的に示す図である。(B)図2のII−II線断面を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第5の実施形態の光学素子の一例を模式的に示す概略平面図である。
【図5】図4のIII−III線断面を模式的に示す図である。
【図6】(A)本発明の製造方法により得られる光学素子を組み込んだ液晶表示装置の例における概略断面図である。(B)本発明の製造方法により得られる光学素子を組み込んだ液晶表示装置の例における概略断面図である。
【図7】(A)本発明の製造方法により得られる光学素子の表面凹凸を説明するための概略平面図である。(B)本発明の製造方法により得られる光学素子の表面凹凸を説明するための概略断面図である。
【図8】(A)本発明の製造方法により得られる光学素子の他の例の1つを示す断面模式図である。(B)本発明の製造方法により得られる光学素子の他の例の1つを示す断面模式図である。
【図9】実施例1におけるAFMの測定結果を示す図である。
【図10】実施例2におけるAFMの測定結果を示す図である。
【図11】比較例2におけるAFMの測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0245】
1 光学素子
2 基材
3 位相差層
4 柱状体
5 透明導電膜
6 突起
11 基材
13 カラーフィルタ層
15 ブラックマトリクス
27 着色層
31 一対の基板
32 第1の基板
33 第2の基板
50 半透過半反射型液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基材と、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を重合してなる位相差層と、導電性を有する透明導電膜とを有する光学素子の製造方法であって、
基材に対して直接もしくは間接に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して液晶塗布膜を作製し、該液晶塗布膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させて該液晶塗布膜を位相差層となす位相差層形成工程と、
基材に対して直接もしくは間接に、導電性を有する導電材料を含む導電膜組成物にて透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、を備え、
透明導電膜形成工程が行われた後に、位相差層形成工程が行われることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
位相差層形成工程では、位相差層が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
基材に対して直接もしくは間接に、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布し重合させて柱状体を形成する柱状体形成工程を備え、
該柱状体形成工程では、柱状体が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
基材に対して直接もしくは間接に、突起を基材の面内方向に所定のパターンにて設ける突起形成工程を備え、
該突起形成工程では、形成される突起は、柱状体の基端部から先端部までの高さよりも該突起の基端部から先端部までの高さが小さくなるように形成される、請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
突起形成工程では、突起は、基材に対して直接もしくは間接に、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を重合することで形成される、請求項4に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
柱状体と突起が、同一の光硬化性樹脂を含む樹脂組成物にて同時に形成されることにより、柱状体形成工程と突起形成工程が同時に行われる、請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
突起形成工程では、突起は、基材に対して直接もしくは間接に、ポジレジストを用いたフォトリソグラフィー法にて形成される、請求項4に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
透明導電膜形成工程では、透明導電膜が、基材の面内方向に所定のパターンにて形成される、請求項1から7のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
基材に対して直接もしくは間接に、入射光のうち所定の可視光線を透過光として分光可能な着色層を有してなるカラーフィルタ層を形成するカラーフィルタ層形成工程が行われる、請求項1から8のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
カラーフィルタ層形成工程では、可視光線の透過スペクトルを異にする複数種類の着色層がそれぞれの種類の着色層について定められたパターンにて形成されることにより、複数種類の着色層を有してなるカラーフィルタ層が形成される、請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかの製造方法によって得られる光学素子。
【請求項12】
請求項11に記載の光学素子を備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−32591(P2010−32591A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191813(P2008−191813)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】