説明

光学装置、その製造方法、および検査方法

【課題】撥液層の形成状態を効率的に検査する検査方法を提供すること。
【解決手段】この検査方法では、ダミー領域の区画領域Pに対して溶液を塗布した後、当該区画領域に塗布された溶液の溶液溜りk2の表面形状を立体的に計測し、あらかじめ定義されている基準表面形状と比較する。溶液溜りの表面形状は、撥液層の形成状態によって変化するため、当該形状によって、撥液層の形成状態の良し悪しを判断することができる。そして、計測した溶液溜りの表面形状が基準表面形状と略同一の場合には、表示領域Vの区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布する。従って、撥液層の形成状態を効率的に検査可能な表示装置の検査方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、その製造方法、および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)材料が分散または溶解した溶液をインクジェット法により隔壁(バンク)に囲まれた凹部に吐出、および乾燥させる、いわゆる液滴吐出法を用いて発光画素を形成する技術が知られている。
液滴吐出法によって発光画素を形成する場合には、隔壁で区画された1つの凹部を区画領域としたときに、各区画領域を区画する隔壁の上面に撥液性を付与する必要があった。換言すれば、複数の区画領域を格子状に区画する隔壁の上面には、撥液性を付与する必要があった。これは、高さが数μm程度に設定された隔壁によって、隣り合う区画領域間における溶液の混入(混色)を防止するために行われていた。つまり、隔壁の上面に撥液性を付与することにより、1つの区画領域に塗布された溶液が当該区画領域内に水玉状に留まるようにして、混色を防止していた。また、塗布された溶液溜りの形状を均一化することにより、形成される有機膜の厚さの均一化を図る意味合いもあった。
【0003】
隔壁の上面に撥液性を付与する方法としては、例えば、特許文献1のように転写法を用いることが知られている。
当該文献では、基板上に形成された格子状の隔壁の上面に、撥液層が形成されたフィルムをラミネートした後、当該フィルムのみを剥離することにより、隔壁の上面に選択的に撥液層を転写形成するとしている。また、この方法によれば、混色を防止することができるとしている。換言すれば、隔壁の上面に均一に撥液層を形成することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法によって形成された撥液層が均一であるか否かは、実際に溶液を吐出してみないと解らなかった。換言すれば、当該方法では、撥液層の形成状態を検査するために、実際に表示パネルを製造して、表示品位の良し悪しで確認するしか手段がなかった。
つまり、撥液層の形成状態を効率的に検査する方法が創案されていないという課題があった。
また、従来の方法のように、完成状態の表示パネルを製造することなく、撥液層の形成状態をインラインで検査可能な効率的な製造方法が望まれていた。換言すれば、撥液層の形成状態の検査工程を含む効率的な製造方法が創案されていないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0007】
(適用例)
有機材料を含む複数の発光画素が形成された表示領域と、表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを少なくとも有する光学装置の製造方法であって、基板上に、複数の発光画素、および複数のダミー画素を区画する隔壁を形成する工程と、隔壁の上面に、撥液層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、ダミー画素となる区画領域に対して、有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により、塗布する工程と、ダミー画素となる区画領域に塗布された溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、計測した溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、計測した溶液溜りの表面形状が、基準表面形状と略同一の場合には、発光画素となる区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布することを特徴とする光学装置の製造方法。
【0008】
この製造方法によれば、ダミー画素となる区画領域に対して溶液を塗布した後、当該区画領域に塗布された溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測し、あらかじめ定義されている基準表面形状と比較している。
ここで、溶液溜りの表面形状は、撥液層の形成状態によって変化するため、当該形状によって、撥液層の形成状態の良し悪しを判断することができる。
そして、計測した溶液溜りの表面形状が基準表面形状と略同一の場合には、発光画素となる区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布している。
つまり、撥液層が適切に形成されたときの溶液溜りの表面形状である基準表面形状と、ダミー画素となる区画領域に形成された溶液溜りの表面形状とが略同じであった場合には、撥液層が適切に形成されたと判断して、発光画素となる区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布することとしている。換言すれば、適用例に係る製造方法によれば、実際に表示パネルを製造して撥液層の形成状態を検査していた従来の方法と異なり、撥液層の形成状態を検査するためのダミー画素を用いて撥液層の形成状態をインラインで検査することができる。
従って、撥液層の形成状態の検査工程を含む効率的な製造方法を提供することができる。
【0009】
また、隔壁の形成工程の前には、基板上に、複数の配線を形成する工程をさらに含み、隔壁は、配線上に形成されてなり、ダミー画素を区画する隔壁の下には、発光画素を区画する隔壁の下に形成された配線とは、厚さが異なるか、または幅が異なる配線が形成されていることが好ましい。
また、ダミー画素を区画する隔壁の下に形成された配線は、発光画素を区画する隔壁の下に形成された配線よりも、厚さが厚い、および/または幅が広いことが好ましい。
また、隔壁の形成工程では、フォトリソ法を用いて、配線上に格子状の隔壁を形成し、撥液層の形成工程では、転写法を用いて、隔壁の上面に、撥液層を選択的に形成することが好ましい。
また、計測した溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程において、計測した溶液溜りの表面形状が、基準表面形状と異なる場合には、撥液層の形成工程における形成条件を見直す工程と、見直した形成条件で、再度、撥液層の形成工程を行うことが好ましい。
【0010】
有機材料を含む複数の発光画素が形成された表示領域と、表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを少なくとも有する光学装置において、複数の発光画素、および複数のダミー画素を区画する隔壁の上面に形成された撥液層の形成状態の検査方法であって、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、ダミー画素となる区画領域に、有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、ダミー画素となる区画領域に塗布された溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、計測した溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、計測した溶液溜りの表面形状が、基準表面形状と略同一の場合には、撥液層が適切に形成されていると判断することを特徴とする光学装置の検査方法。
【0011】
複数の発光画素が形成された表示領域と、表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを基板上に有する光学装置であって、基板上に形成された複数の配線と、配線上に形成されるとともに、複数の発光画素、および複数のダミー画素を区画する隔壁と、隔壁の上面に形成された撥液層と、隔壁によって区画された複数の領域内に液滴吐出法によって形成された有機層と、を少なくとも備え、ダミー画素を区画する隔壁の下には、発光画素を区画する隔壁の下に形成された配線とは、厚さが異なるか、または幅が異なる配線が形成されていることを特徴とする光学装置。
また、ダミー画素を区画する隔壁の下に形成された配線は、発光画素を区画する隔壁の下に形成された配線よりも、厚さが厚い、および/または幅が広いことが好ましい。
また、ダミー画素を区画する隔壁の下に形成された配線は、断線部分を含むことが好ましい。
【0012】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成されたフィルター領域と、フィルター領域の外側に形成された複数のダミーフィルターとを少なくとも有する光学装置の製造方法であって、基板上に、複数の色フィルター、および複数のダミーフィルターを区画する隔壁を形成する工程と、隔壁の上面に、撥液層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、ダミーフィルターとなる区画領域に対して、有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により、塗布する工程と、ダミーフィルターとなる区画領域に塗布された溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、計測した溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、計測した溶液溜りの表面形状が、基準表面形状と略同一の場合には、色フィルターとなる区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布することを特徴とする光学装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る光学装置の一態様を示す斜視図。
【図2】素子基板の平面図。
【図3】図2のi−i断面における表示パネルの側断面図。
【図4】表示パネルの製造工程を示すフローチャート図。
【図5】製造工程における一態様を示す図。
【図6】(a)〜(c)製造工程における一態様を示す図。
【図7】(a)実施形態2に係るダミー領域における隔壁近傍の断面図、(b)表示領域Vにおける隔壁近傍の断面図。
【図8】実施形態3に係るダミー領域における隔壁近傍の断面図。
【図9】(a)変形例1に係る素子基板の拡大平面図、(b)は(a)におけるj−j断面の断面図。
【図10】変形例2に係る素子基板の平面図。
【図11】変形例4に係る光学装置としてのCF基板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0015】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。
まず、本発明の実施形態1に係る光学装置としての表示装置100の概要について説明する。
【0016】
表示装置100は、有機EL表示装置であり、表示パネル18、フレキシブル基板20などから構成されている。表示パネル18は、素子基板1と対向基板16との間に、発光層を含む機能層を挟持したボトムエミッション型の有機EL表示パネルであり、素子基板1側から表示光を出射する。
表示パネル18は、マトリックス状に配置された複数の画素からなる表示領域Vを備えている。図1の右上に拡大して示すように、表示領域Vには、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の各色画素が周期的に配置されており、各画素が出射する表示光によりフルカラーの画像が表示される。なお、各画素は発光画素であるが、画素と称する。また、カラー表示を行う表示パネルに限定するものではなく、モノクロ表示を行う表示パネルであっても良い。表示領域Vは、縦長の長方形をなしており、図1を含む各図においては、当該縦方向をY軸方向とし、縦方向よりも短い横方向をX軸方向と定義している。また、表示パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、Y軸(+)、(−)方向を上下方向とし、X軸(−)、(+)方向を左右方向としている。
【0017】
詳しくは後述するが、表示領域Vの各画素における発光層を含む複数の有機層は、液滴吐出法によって形成されている。
ここで、表示装置100によれば、本実施形態に係る特徴ある製造方法によって、隔壁の上面に均一に撥液層が形成されているため、RGBの各色画素が混色なく、かつ、有機層の厚さが略均一化されており、輝度ムラや、発光色ムラが低減されている。
また、当該製造方法には、撥液層の形成状態を確認する検査工程が組み込まれているため、インライン検査によって効率良く表示パネル18(素子基板1)を製造することができる。
【0018】
また、表示パネル18において、素子基板1が対向基板16から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、例えば、ポリイミドフィルムの基材に鉄箔の配線などが形成された柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板の略称である。また、フレキシブル基板20には、駆動用IC(Integrated Circuit)21が実装され、その端部には、専用のコントローラーや、外部機器(いずれも図示せず)と接続するための複数の端子が形成されている。
表示パネル18は、フレキシブル基板20を介して、外部機器から電力や画像信号を含む制御信号の供給を受けることにより、表示領域Vに画像や文字などを表示する。
【0019】
「表示パネルの詳細な構成」
図2は素子基板の平面図である。図3は、図2のi−i断面における表示パネルの側断面図である。
続いて、表示パネルの詳細な構成について、図2および図3を用いて説明する。
図2は、図1において素子基板1をZ軸(+)方向から見たときの平面図である。このため、図1と比べてX軸方向が反転している。また、完成状態の素子基板1をこの方向から観察した場合、一様な共通電極(陰極)が観察されることになるが、ここでは、説明の都合上、有機層を形成する前段階における平面態様を示している。
素子基板1上には、格子状の隔壁7が形成されている。詳しくは、隔壁7は、行列をなして配置された画素電極(陽極)の開口部5eを1つずつ区画するように形成されている。また、隔壁7によって区画された複数の領域のことを区画領域Pという。
ここで、複数の区画領域Pは、全てが略同じ大きさの縦長の長方形に形成されているが、表示領域V内に配置された(発光)画素となる区画領域と、当該表示領域の外側に形成されたダミー画素となる区画領域とに区分けされている。詳しくは、表示領域Vの上方(Y軸(+)側)に、ダミー領域Dが形成されており、2行のダミー画素分に対応した複数の区画領域Pが配置されている。
【0020】
なお、本実施形態では、好適例として表示領域Vの上方に2行のダミー画素を形成するものとして説明するが、ダミー画素の形成位置は表示領域Vの外側であれば、どこでも良く、また、形成数も1行、または1列以上であれば良い。例えば、表示領域Vの左右の外側に2つのダミー領域を形成した構成であっても良い。
また、本実施形態では、好適例としてダミー領域Dに形成されるダミー画素の構成を表示領域Vの画素構造と同一な構成としている、換言すれば、ダミー画素も発光可能な構成としているが、発光しない構成であっても良い。
また、図2では、好適例として、区画領域Pを縦長の長方形としており、そのサイズをY軸方向が長さnで、X軸方向を長さ(幅)mとしている。なお、長方形に限定するものではなく、トラック形状や、楕円などであっても良い。また、開口部5eについても楕円形状としているが、トラック形状や、円、長方形などであっても良い。
【0021】
また、表示領域Vの左端(X軸(−)側)における区画領域Pの列には赤色の有機EL層が形成され、その右隣(X軸(+)側)の区画領域Pの列には緑色の有機EL層が形成され、その右隣の区画領域Pの列には青色の有機EL層が形成される。以降、区画領域P列ごとに、この順番で、周期的に各色の有機EL層が形成されることになる。
【0022】
続いて、図3を用いて、表示パネル18の断面構成について説明する。図3は、図2の区画領域Pが形成された素子基板1に、有機層、共通電極(陰極)、および対向基板を取り付けた完成状態における側断面図である。なお、当該側断面図は、表示領域V内の(発光)画素の断面を示しているが、ダミー領域Dにおけるダミー画素の断面形状も同様である。
表示パネル18は、素子基板1、素子層2、平坦化層4、画素電極5、配線6、隔壁7、有機EL層8、共通電極9、接着層11、対向基板16などから構成されている。また、素子基板1と対向基板16とに挟持された部位のことを電気光学層としての機能層15という。換言すれば、素子層2から接着層11までの積層構造を機能層15という。
素子基板1は、透明な無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。なお、ガラスに限定するものではなく、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)などの透明基板を用いても良い。
素子層2には、各画素をアクティブ駆動するための画素回路が形成されている。画素回路には、TFT(Thin Film Transistor)からなる画素を選択するための選択トランジスターや、有機EL層8に電流を流すための駆動トランジスター3などが含まれており、画素ごとに対応して形成されている。なお、画素回路は、好適例として、活性層に低温ポリシリコンを用いているが、アモルファスシリコンを活性層として用いた構成であっても良い。
【0023】
素子層2の上層(Z軸(+)方向)には、例えば、アクリル樹脂などからなる絶縁層である平坦化層4が形成されている。
平坦化層4の上層には、画素ごとに区画された陽極としての画素電極5(開口部5e)、および複数本の配線6が形成されている。
画素電極5は、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどの透明電極から構成されており、図3の左端の赤色画素に示すように、画素ごとに素子層2の駆動トランジスター3のドレイン端子と平坦化層4を貫通するコンタクトホールにより接続されている。また、図3では省略しているが、画素電極5の上層に、例えば、SiO2などの絶縁層を形成しても良い。この構成の場合、当該絶縁層の開口部が開口部5eとなり、画素電極5と有機EL層8とが接触する面積を当該絶縁層の開口部のサイズで規定することになる。
複数本の配線6は、前述した選択トランジスターを順次選択する選択信号を供給する走査線、または駆動トランジスター3にデータ信号を供給するデータ線、若しくは電源配線などの各画素を表示駆動するために形成された配線である。
配線6は、平面的に画素電極5の間隙を縫って配線されている。換言すれば、表示領域V、およびダミー領域Dにおいて、隔壁7に重なる位置に配置されている。
隔壁7は、前述した格子状の隔壁であり、断面形状は、素子基板1側が広い台形状になっている。また、隔壁7の下(素子基板1側)には、配線が形成されている。なお、隔壁7の断面形状は、矩形や、半円状であっても良い。好適例における材料としては、光硬化性のアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂などを用いる。
ここで、図3では省略しているが、隔壁7の上面には、撥液層10(図6)が形成されている。なお、撥液層の種類や、形成方法などについては後述する。
【0024】
有機層としての有機EL層8は、正孔注入層や、発光層などを含む複数の有機(薄膜)層から形成された有機EL発光層である。
好適例における有機EL層8は、正孔注入層と、中間層と、各色発光層とを、この順番に積層した構成となっている。
好適例における正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)を用いる。また、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
好適例における中間層の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、トリフェニルアミン系ポリマーを用いても良い。
【0025】
発光層の材料としては、有機EL層8R,8G,8Bごとに、赤色、緑色、青色の蛍光、または燐光を発光する発光材料を用いることが好ましい。
好適例としては、赤色、緑色、青色に対応したポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)などを用いても良い。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
【0026】
陰極としての共通電極9は、全ての有機EL層8、および隔壁7を覆って共通に形成された陰極であり、単層構成であっても複数層構成であっても良い。
好適例としては、複数層構成とし、発光層側の薄い下層(電子注入層)を仕事関数が小さい材料(例えば、カルシウム)から形成し、厚い上層を仕事関数が大きい材料(例えば、アルミニウム)から形成する。
接着層11は、好適例では、熱硬化型のエポキシ系接着剤を用いている。なお、これに限定するものではなく、特に、水分の浸入を防ぐバリア性、および対向基板の接着性を備えた接着剤であれば良く、シリコン系や、アクリル系の接着剤を用いても良い。または、共通電極9の上層に、シリコン窒化膜や、シリコン酸化膜などの無機バリア層をさらに形成した後に、接着層11を充填する構成であっても良い。
対向基板16は、機能層15を封止するためのガラス基板である。または、金属基板を用いても良い。なお、対向基板16は必須の構成ではなく、当該基板を省略しても良い。この場合、共通電極9の上層に、前述の無機バリア層を厚く形成することが好ましい。
【0027】
「表示パネルの製造方法」
図4は、表示パネルの製造工程を示すフローチャート図である。図5は、製造工程における一態様を示す図である。図6(a)〜(c)は、製造工程における一態様を示す図である。
ここでは、表示パネル18の製造方法について、撥液層10の形成工程、および検査工程を中心に説明する。
【0028】
まず、ステップS1では、フォトリソ法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの周知の製造方法を用いて、開口部5eまでが作り込まれた素子基板1を形成する。換言すれば、開口部5eまでが形成された素子基板1を準備する。
ステップS2では、フォトリソ法を用いて、格子状の隔壁7を形成する。詳しくは、前述した光硬化性の樹脂を素子基板1の全面にスピンコート法などにより塗布した後、格子状のマスクを用いて露光し、現像することによって格子状の隔壁7を形成する。なお、好適例では、黒色の光硬化性樹脂を用いている。
これにより、図2に示すように、複数の開口部5eを1つずつに区画する隔壁7が形成される。換言すれば、表示領域V、およびダミー領域Dを複数の区画領域Pに区画する隔壁7が形成される。
【0029】
ステップS3では、開口部5eを含む表示領域V、およびダミー領域Dの露出面に親液化処理を施す。詳しくは、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。この処理により、開口部5eを含む表示領域V、およびダミー領域Dの露出面に水酸基が導入されて親液性が付与される。
ステップS4では、図5に示すように、素子基板1上に、転写フィルム85を重ねた状態(準備体)とし、転写法を用いて、隔壁7の上面に撥液層を形成する。
ここで、転写フィルム85は、基材となる樹脂フィルム上の一面に、撥液層を積層したフィルム部材である。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ナイロン系フィルム、フッ素樹脂フィルムなどを用いることができる。また、撥液層としては、フッ素系化合物、またはケイ素系化合物を含有した撥液剤を用いることができる。
本実施形態では、好適例として、樹脂フィルムとして、厚さ約20μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のPETフィルムを用い、PETフィルム上に、フッ素系化合物を含有した撥液剤をバーコーターで約80nmの厚さで塗布し、約100℃で加熱乾燥して撥液層86を形成したものを転写フィルム85としている。なお、具体的な撥液剤としては、例えば、住友スリーエム社製のノベック(登録商標)EGC-1720を用いることができる。
【0030】
そして、図5に示すように、隔壁7面を上にした状態の素子基板1上に、撥液層86側を下にして転写フィルム85を重ねて準備体としている。
本実施形態では、好適例として、この準備体をラミネート装置でラミネートすることにより、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する。なお、図5では、ラミネート装置における伝熱性のあるシリコンゴムなどのエラストマーから構成された加圧ローラー81,82のみを図示している。また、ラミネートは転写法の一種である。具体的なラミネート条件としては、加圧ローラー81,82の温度を約130℃とし、準備体の搬送速度(ラミネート速度)を0.5m/minとした。
なお、ローラーを用いたラミネート法に限定するものではなく、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成することが可能な転写法であれば良い。例えば、準備体の上方から加熱した平板を押し当てて、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する方法であっても良い。
【0031】
これにより、図6(a)に示すように、隔壁7の上面に選択的に撥液層10が形成されることになる。なお、隔壁7の上面とは、下底が長く、上底が短い略台形状をなした隔壁7の断面形状における上底のことを指しており、曲面を含んだ凸状となっている。詳しくは、略正規分布曲線の高さを低くした形状となっており、最上部(頂)となる曲面の両端に山裾となる反対向きの2つの曲面(肩部)を含んだ形状となっている。なお、これらの形状は、隔壁7の下に形成された配線6の厚さ、および幅に応じて変化する。
図6(a)〜(c)は、図3の赤色画素が形成される区画領域の拡大図であり、本実施形態における配線6の厚さは、厚さt1に設定され、幅は幅w1に設定されている。このため、配線6の端部から、隔壁7の端部までの距離は長さf1となり、隔壁7における肩部から最上部(頂)までの上面の高さは、高さh1となっている。なお、これらの寸法は、表示領域V、およびダミー領域Dにおいて共通である。
【0032】
ステップS5では、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、図2におけるダミー領域Dの最上段(Y軸(+)側)の区画領域Pに有機材料を溶解した溶液を吐出する。換言すれば、ダミー領域Dの最外周の区画領域P行に溶液を選択的に吐出する。なお、本実施形態では、有機材料として、正孔注入層の材料を用いているが、有機層を形成する有機材料と同様な材料であれば良い。例えば、視認性に優れた色調の有機材料を用いても良いし、染料を添加しても良い。これによれば、吐出した溶液の溶液溜りの識別を容易に行うことができる。
なお、インクジェット法に限定するものではなく、所定の位置に溶液を吐出可能な塗布方法であれば良い。例えば、ジェットディスペンサー法や、ニードルディスペンサー法などのディスペンサー法を用いても良い。
【0033】
図6(a)は、吐出された溶液が区画領域P内で溶液溜りとなった状態を示している。なお、表示領域V、およびダミー領域Dにおける区画領域Pの形状(寸法)は、同一であるため、図6(a)、(b)を用いて、ダミー領域Dの最外周の区画領域Pの説明をする。
液滴吐出装置(図示せず)の吐出ヘッド510から吐出された溶液の液滴k1は、区画領域P内に着弾し、当該図に示すように、凸状(水玉状)の溶液溜りk2となる。
ここで、溶液溜りk2が凸状となるのは、区画領域Pの底部を形成する開口部5eなどが親液性を有するとともに、撥液層10が撥液性を有しているからであり、充填された溶液は、その表面張力によって水玉状の膨らみを持って区画領域Pに溜まることになる。換言すれば、撥液層10が隔壁7の上面に適切に形成されている場合には、溶液溜りk2は、隔壁7の肩部を周縁部とした凸状の溶液溜りk2となる。
【0034】
図6(b)は、(a)の比較図であり、撥液層10が形成不良であった場合における溶液溜りの状態を示している。当該図に示すように、撥液層10は、隔壁7の上面における最上部(頂)にのみ形成されており、両端の肩部には形成されていない。
この状態の区画領域P内に形成される溶液溜りk3は、その表面が略平ら、または若干凹状となっている。これは、隔壁7の肩部を覆って溶液が充填されるからである。換言すれば、撥液層10によって規定される区画領域Pの容量(面積)が大きくなっているからである。
なお、図6(a)の溶液溜りk2と、(b)の溶液溜りk3とを同一条件で乾燥して有機層を形成した場合、(b)の区画領域Pに形成された有機層の方が、(a)の区画領域Pに形成された有機層よりも薄くなってしまう。換言すれば、表示領域V内に、撥液層10が形成不良となった区画領域Pが含まれていると、輝度ムラや、発光色ムラが生じてしまうという問題があった。
また、不良モードとしては、隔壁7の上面に撥液層10が形成されていない場合も想定され、この場合は、混色が生じてしまうという問題があった。
【0035】
図6(a)に戻る。
ステップS6では、ダミー領域Dの区画領域Pに塗布された溶液溜りk2の表面形状(形状プロファイル)を立体的に計測する。詳しくは、高輝度白色光を溶液溜りk2を含む区画領域Pに照射することにより、非接触で3次元寸法を計測することが可能な走査型白色干渉計を用いて計測する。なお、走査型白色干渉計の原理は、可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型などの等光路干渉計を利用し、被測定面に対応するCCD(Charge Coupled Device)各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して検出するというものである。
また、本実施形態では、好適例として、ダミー領域Dにおける1行分の表面形状を計測しているが、1行分全てを計測しなくても良い。例えば、1つ、または複数ヶ置きに計測することであっても良いし、顕微鏡で観察して、違和感がある溶液溜りだけ計測することであっても良い。
【0036】
ステップS7では、計測した溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する。計測した溶液溜りの表面形状が、基準表面形状と略同一(規格内)の場合には、ステップS8に進む。表面形状が異なる場合(例えば、図6(b))には、ステップS10に進む。
なお、基準表面形状は、例えば、比較用のコンピューターに事前に計測してある好適な表面形状が許容される幅(閾値)を持って記憶されている。
【0037】
ステップS8では、表示領域Vの全ての区画領域Pに、液滴吐出法を用いて、有機EL層8を形成する。なお、有機EL層8の形成は、有機層ごとに、溶剤の塗布工程と乾燥工程とを繰り返えすことにより行われる。
乾燥工程では、真空乾燥と熱処理を行う。まず、溶液が塗布された状態の素子基板1を真空チャンバーに移して、真空乾燥を行う。これにより、溶液中の溶媒の沸点が下がり、当該溶媒が低温で蒸発することになるため、溶質が析出して正孔注入層が形成される。さらに、残存する溶媒を除去するために熱処理を行う。好適例では、窒素ガス雰囲気下において、約200℃で約10分間の熱処理を行う。
なお、乾燥工程において、素子基板1を加熱しても良い。例えば、当該基板をホットプレート上に載せて加熱する方法や、表示領域Vの上方から赤外線ランプを照射する方法などを採用することができる。また、これらの方法を組み合せても良い。このような方法によれば、より効率的に乾燥を行うことができる。
【0038】
図6(c)には、このようにして、区画領域P内に正孔注入層、中間層、発光層の3層が積層形成された積層構造からなる有機EL層8Rが示されている。
ステップS9では、全ての有機EL層8、および隔壁7(撥液層10)を覆って、共通電極9(図3)を形成する。好適例では、2層構成としており、電子注入層としてのカルシウムと、陰極層としてのアルミニウムとをこの順番で蒸着法により積層して、共通電極9を形成している。なお、図4のフローチャートでは省略しているが、共通電極9の形成後、接着層11により対向基板16が貼り合わされて表示パネル18が完成する。
【0039】
続いて、ステップS7で、表面形状が異なる場合について説明する。
ステップS10は、サブルーチンとなっており、撥液層の形成工程(ステップS4)における形成条件を見直す工程と、見直した形成条件で、再度、撥液層の形成工程を行う工程とが含まれている。
形成条件を見直す工程では、隔壁7の形状、転写フィルム85の品質、加圧ローラー81,82の温度や、準備体の搬送速度などのラミネート条件を全て見直して、形成不良の原因を調べて、必要な対策を講ずる。
そして、再度、撥液層の形成工程を行う工程では、対策後の条件で、再度、ステップS4以降の各工程を行う。なお、撥液層を2重に重ねて形成しても機能上の問題はないため、同一の素子基板1を用いれば良い。また、この場合、ステップS5では、図2におけるダミー領域Dの最上段の下(2段目)の区画領域P行に有機材料を溶解した溶液を吐出する。
【0040】
発明者等による上記フローを採用した量産工程による長期実験結果によれば、実験開始から3ヶ月までは、ステップS7で、形成不良は検出されなかった。3ヶ月経過後、ステップS7で、形成不良が検出され、ステップS10で形成条件を見直した結果、加圧ローラー81,82のシリコンゴムが劣化していることを見出した。
このシリコンゴムを新たな物に取り替えたところ、ステップS7での形成不良は検出されなくなった。
また、上記ステップS5〜ステップS7までの工程が、本実施形態における表示装置の検査方法に相当する。
なお、上記説明では、隔壁7の下に配線6が形成されているものとして説明したが、配線6は無くても良い。表示領域V、およびダミー領域Dにおける隔壁7の断面形状が同一であれば、上記フローを適用することができる。
【0041】
「好適例における寸法」
上述した好適例による各部の寸法について、図2、および図6(a)を用いて紹介しておく。
まず、区画領域の「長さn×幅m」を「約300μm×約150μm」とした。
また、開口部5e長さを約200μmとし、幅を約100μmとした。
また、隔壁7の高さ(厚さ)を約3μmとした。
また、撥液層10の厚さを約80nmとした。
配線6の厚さt1を約1.0μmとした。
隔壁7における肩部から最上部(頂)までの上面の高さh1を約0.5μmとした。
【0042】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および製造方法(検査方法)によれば、以下の効果を得ることができる。
上述した製造方法によれば、ダミー領域Dの区画領域に対して溶液を塗布した後、当該区画領域に塗布された溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測し、あらかじめ定義されている基準表面形状と比較している(ステップS4〜S7)。
溶液溜りの表面形状は、撥液層の形成状態によって変化するため、当該形状によって、撥液層の形成状態の良し悪しを判断することができる。
そして、計測した溶液溜りの表面形状が基準表面形状と略同一の場合には、表示領域Vの区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布している(ステップS7〜S8)。
つまり、撥液層が適切に形成されたときの溶液溜りの表面形状である基準表面形状と、ダミー領域Dの区画領域に形成された溶液溜りの表面形状とが略同じであった場合には、撥液層が適切に形成されたと判断して、表示領域Vの区画領域にも、有機材料を溶解した溶液を塗布することとしている。換言すれば、本実施形態に係る製造方法(検査方法)によれば、実際に表示パネルを製造して撥液層の形成状態を検査していた従来の方法と異なり、撥液層の形成状態を検査するためのダミー画素を用いて撥液層の形成状態をインラインで検査することができる。
従って、撥液層の形成状態の検査工程を含む効率的な表示装置の製造方法を提供することができる。また、撥液層の形成状態を効率的に検査可能な表示装置の検査方法を提供することができる。
【0043】
また、ステップS7で、計測した形状プロファイルが規格外の場合には、ステップS10に進み、撥液層の形成工程(ステップS4)における形成条件を見直す工程と、見直した形成条件で、再度、撥液層の形成工程を行う工程とを含む工程が行われる。
形成条件の見直し工程では、製品の流動を止めて、全てのラミネート条件を見直すことになるため、不良品の発生を最低限に抑制することができる。
そして、形成不良の原因を追究したら、必要な対策を講じて、再度、撥液層の形成工程(ステップS4)以降の各工程を行う。この際、同一の素子基板1を用いることができるため、不良品の発生を低減することができる。
従って、歩留まりの良い表示装置の製造方法を提供することができる。
【0044】
また、上記製造方法によって製造された表示装置100によれば、表示領域Vにおける混色の発生はなく、また、各画素における有機層の厚さが略均一化される。
従って、輝度ムラや、発光色ムラが抑制された表示装置100を提供することができる。
【0045】
(実施形態2)
図7(a)は実施形態2に係るダミー領域における隔壁近傍の断面図であり、(b)は表示領域Vにおける隔壁近傍の断面図であり、共に図6に対応している。また、両図共に、撥液層を形成する前の状態を示している。
以下、本発明の実施形態2に係る表示装置について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置では、表示領域Vにおける隔壁7の断面形状と、ダミー領域Dにおける隔壁7の断面形状とを異ならせている。詳しくは、ダミー領域Dにおける隔壁7の下の配線6の厚さを、表示領域Vにおける配線6の厚さよりも厚くすることにより、ダミー領域Dにおける撥液層の形成を表示領域Vよりも難しくしている。それ以外は、表示装置100での説明と略同様である。
【0046】
まず、図7(b)は、表示領域Vにおける区画領域Pの隔壁7の断面形状を示しており、この寸法関係は、実施形態1での説明(図6(a))と同様である。
図7(a)は、ダミー領域Dにおける区画領域Pの隔壁7の断面形状を示している。
ここで、配線6の厚さが(b)の厚さt1よりも厚い厚さt2となっている。このため、隔壁7における肩部から最上部(頂)までの上面の高さが、図7(b)の高さh1よりも高い、高さh2となっている。
好適例では、表示領域Vにおける配線6の厚さt1を約1.0μmとしたときに、ダミー領域Dにおける配線6の厚さt2を約1.3μmとしている。
この隔壁7の上面の高さhは、撥液層を形成する際の難易度の指標となる寸法であり、当該高さが高いほど(配線6が厚いほど)、撥液層の形成(転写)が難しくなる。つまり、表示領域Vよりも、ダミー領域Dにおける撥液層の形成が難しくなるように、配線6の厚さが設定されている。
また、基準表面形状は、実施形態1と同じ規格(閾値)設定を用いている。
これ以外の構成、および製造方法は、実施形態1での説明と同様である。
【0047】
上述した通り、本実施形態に係る光学装置、および製造方法によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
上述した構成によれば、表示領域Vよりも、ダミー領域Dにおける撥液層の形成(転写)が難しくなるように、配線6の厚さtが設定されている。
つまり、ダミー領域Dにおいて、表示領域Vよりも撥液層の形成不良が発生しやすい構成としたことにより、より厳しい検出条件で、撥液層の形成状態を検査することができる。換言すれば、撥液層の形成が難しいダミー領域Dにおいて、撥液層の形成不良が検出されなければ、表示領域Vにおける撥液層の形成状態は高い確度で適正であるといえる。
従って、撥液層の形成状態をより精度良く検出することが可能な表示装置の検査方法を提供することができる。
【0048】
(実施形態3)
図8は実施形態3に係るダミー領域における隔壁近傍の断面図であり、図6、および図7に対応している。また、当該図は、撥液層を形成する前の状態を示している。
以下、本発明の実施形態3に係る表示装置について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置でも、表示領域Vにおける隔壁7の断面形状と、ダミー領域Dにおける隔壁7の断面形状とを異ならせている。詳しくは、ダミー領域Dにおける隔壁7の下の配線6の幅を、表示領域Vにおける配線6の幅よりも広くすることにより、ダミー領域Dにおける撥液層の形成を表示領域Vよりも難しくしている。それ以外は、表示装置100での説明と略同様である。
【0049】
まず、表示領域Vにおける区画領域Pの隔壁7の断面形状は、図7(b)の断面形状と同一であり、以下、当該図と比較して説明する。
図8は、本実施形態のダミー領域Dにおける区画領域Pの隔壁7の断面形状を示しており、配線6の幅が図7(b)の幅w1よりも広い幅w2となっている。このため、配線6の端部から隔壁7の端部までの距離が、図7(b)の長さf1よりも短い、長さf2となっている。
この配線6の端部から隔壁7の端部までの長さf2も、隔壁7の上面の高さhと同様に、撥液層を形成する際の難易度の指標となる寸法であり、当該長さが短いほど(配線6の幅が広いほど)、撥液層の形成(転写)が難しくなる。これは、隔壁7の上面における肩部(裾野部)の曲面が小さくなり、当該部への転写が難しくなるからである。
このように、表示領域Vよりも、ダミー領域Dにおける撥液層の形成(転写)が難しくなるように、配線6の幅が設定されている。
また、基準表面形状は、実施形態1と同じ規格(閾値)設定を用いている。
これ以外の構成、および製造方法は、実施形態1での説明と同様である。
【0050】
上述した通り、本実施形態に係る光学装置、および製造方法によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
上述した構成によれば、表示領域Vよりも、ダミー領域Dにおける撥液層の形成(転写)が難しくなるように、配線6の幅wが設定されている。
つまり、ダミー領域Dにおいて、表示領域Vよりも撥液層の形成不良が発生しやすい構成としたことにより、より厳しい検出条件で、撥液層の形成状態を検査することができる。換言すれば、撥液層の形成が難しいダミー領域Dにおいて、撥液層の形成不良が検出されなければ、表示領域Vにおける撥液層の形成状態は高い確度で適正であるといえる。
従って、撥液層の形成状態をより精度良く検出することが可能な表示装置の検査方法を提供することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0052】
(変形例1)
図9(a)は、変形例1に係る素子基板の拡大平面図であり、図2に対応している。図9(b)は、(a)におけるj−j断面の断面図である。
上記各実施形態では、溶液の溶液溜りの表面形状を計測した後、基準表面形状と比較することにより、撥液層の形成状態を良否判断していたが、この方法に限定するものではない。例えば、ダミー領域Dにおける溶液の塗布態様を顕微鏡などで目視することによって良否判断することであっても良い。
変形例1に係る素子基板31は、ダミー領域Dにおける区画領域Pの構成のみが、実施形態1の構成と異なる。また、撥液層の形成状態の検査方法(製造方法)も、実施形態1での説明と異なる。
まず、ダミー領域Dにおける区画領域Pには、隔壁7の下に配線6が無い部分が形成されている。換言すれば、隔壁7の下に配線6の断線部分が形成されている。
詳しくは、図9(a)にハッチングで示すように、X軸方向に隣り合う区画領域Pを区画する隔壁7の中央部に配線6の断線部分が形成されている。換言すれば、Y軸方向において隔壁7と重なって延在する配線6(図示せず)は、ダミー領域Dのハッチングで示す部分において断線している。また、配線6の断線部分の長さuを区画領域Pの幅mよりも短く設定している。
【0053】
図9(b)は、この隔壁7の断線部分の断面図であり、当該部には、配線6が形成されていないため、図7(b)の基準断面と比較して、隔壁7の上面の形状がフラットとなり、上面の高さも、基準断面における高さh1よりも低い、高さh3となっている。なお、この断線部分以外の断面形状は、ダミー領域D、および表示領域V共に、図7(b)の基準断面形状となっている。
また、前述した撥液層の形成工程におけるラミネート条件は、所期の条件となっていれば、この断線部分にも支障なく撥液層を形成できる条件設定となっている。換言すれば、断線部分は、表示領域Vよりも撥液層の形成不良が発生しやすい構成となっている。
そして、撥液層の形成状態の検査工程では、図4のステップS5で、溶液を塗布する区画領域Pをダミー領域Dにおいて1列置きの区画領域Pとしている。例えば、図9(a)で、各色名に丸を附したように、ダミー領域Dにおける緑色(G)の区画領域P列、赤色(R)の区画領域P列、青色(B)の区画領域P列というように、ダミー領域Dの最上段の区画領域P行における1列置きの区画領域Pに溶液を塗布する。
【0054】
続いて、ステップS6では、顕微鏡または拡大鏡を用いて目視で、ダミー領域Dを観察し、塗布した溶液が隣の列の区画領域Pに浸入しているか否か検査する。換言すれば、塗布した溶液の隣接区画領域Pへの浸入の有無を検査する。
隣接区画領域Pへの浸入が認められない場合には、ステップS8に進む。隣接区画領域Pへの浸入が認められた場合には、ステップS10に進む。
これらの工程以外は、実施形態1での説明(図4のフローチャート)と同様である。
【0055】
上述した通り、本変形例に係る検査方法(製造方法)によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本変形例に係る検査方法(製造方法)によれば、撥液層の形成状態の検査を目視で行えるため、簡便、かつ、効率的である。また、溶液溜りの表面形状を測定するための測定装置が不要となる。
従って、撥液層の形成状態を簡便、かつ、効率的に検査可能な表示装置の検査方法を提供することができる。撥液層の形成状態の検査工程を含む簡便、かつ、効率的な表示装置の製造方法を提供することができる。
さらに、ダミー領域Dにおいて、表示領域Vよりも撥液層の形成不良が発生しやすい構成としたことにより、より厳しい検出条件で、撥液層の形成状態を検査することができる。従って、撥液層の形成状態をより精度良く検出することが可能な表示装置の検査方法を提供することができる。
【0056】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る素子基板の平面図であり、図2に対応している。
上記各実施形態では、隔壁7によって、1つの開口部5eごとに、1つの区画領域Pが形成されるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。例えば、図10に示すように、複数の開口部5eに対して、1つの区画領域が形成される隔壁77構成であっても良い。
変形例2の素子基板51は、実施形態1の隔壁7(図2)とは異なる隔壁77を備えている。詳しくは、Y軸方向に隣り合う2つの開口部5eに対して、1つの区画領域P(共通バンク)が形成される隔壁77構成となっている。このため、区画領域Pの縦方向の長さが、長さ2nとなっている。この点以外は、実施形態1での説明と同様である。
【0057】
この構成であっても、ダミー領域Dの溶液溜りの表面形状から、撥液層の形成状態を判断することが可能であるため、実施形態1と同様な作用効果を得ることができる。なお、この場合、基準表面形状は、長さ2nの区画領域Pを用いてあらかじめ計測し、設定しておく必要がある。
なお、2つの開口部5eに対して1つの区画領域Pが形成される構成に限定するものではなく、3つ以上の開口部5eに対して1つの区画領域Pが形成されることであっても良い。または、周縁部では複数の開口部5eに対して1つの区画領域Pを形成し、中央部では1つの開口部5eに対して1つの区画領域Pを形成するというように、変化させても良い。これらの構成であっても、比較対象を明確にしておけば、同様な作用効果を得ることができる。
なお、本変形例の構成は、実施形態1以外の上記各実施形態、および変形例にも適用することが可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(変形例3)
図3を用いて説明する。
上記各実施形態、および各変形例では、表示パネル18をボトムエミッション型の有機ELパネルとして説明したが、トップエミッション型の有機ELパネルであっても良く、有機層を塗布および乾燥して形成する光学装置であれば良い。
詳しくは、表示パネル18をトップエミッション型とする場合、開口部5e(画素電極5)の素子基板1側に全反射層を形成する。また、共通電極9を薄くしてハーフミラー層とする。これにより、対向基板16側から、表示光が出射されることになる。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
(変形例4)
図11は、変形例4に係る光学装置としてのCF基板の平面図であり、図2に対応している。
上記各実施形態では、有機ELパネルである表示パネル18を用いて説明したが、光学装置としてのCF基板に適用することであっても良い。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
変形例4に係るCF基板116は、液晶パネルや、トップエミッション型の有機ELパネルに用いられるカラーフィルターが形成された基板である。このため、画素電極5(開口部5e)や、素子層2(図3)などは、形成されていない。
実施形態1の製造方法(図4)をCF基板116に適用する場合、基板は透明な無垢基板を用いる(ステップS1)。また、有機層形成工程(ステップS8)が変更となり、共通電極形成工程(ステップS9)は不要となる。それ以外の工程は、同一である。
【0060】
詳しくは、有機層形成工程(ステップS8)では、色フィルターを構成する材料を溶解した溶液を液滴吐出法によって1回塗布するだけで良い。換言すれば、有機層は1層のみの構成となる。また、図11では、複数の色フィルターが形成された領域を領域V(表示領域Vに相当する)としており、RGBの3色のカラーフィルターをストライプ状に配置しているが、さらに色数が多くても良い。また、デルタ配置などの異なる色配置であっても良い。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,31,51…基板としての素子基板、5…画素電極、5e…開口部、6…配線、7,77…隔壁、8,8R,8G,8B…複数の有機層としての有機EL層、9…共通電極、10…撥液層、18…表示パネル、100…光学装置としての表示装置、116…光学装置としてのCF基板、D…ダミー領域、k2,k3…溶液溜り、P…区画領域、V…表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料を含む複数の発光画素が形成された表示領域と、前記表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを少なくとも有する光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記複数の発光画素、および前記複数のダミー画素を区画する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁の上面に、撥液層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記ダミー画素となる前記区画領域に対して、前記有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により、塗布する工程と、
前記ダミー画素となる前記区画領域に塗布された前記溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状が、前記基準表面形状と略同一の場合には、前記発光画素となる前記区画領域にも、前記有機材料を溶解した溶液を塗布することを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記隔壁の形成工程の前には、前記基板上に、複数の配線を形成する工程をさらに含み、
前記隔壁は、前記配線上に形成されてなり、
前記ダミー画素を区画する前記隔壁の下には、前記発光画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線とは、厚さが異なるか、または幅が異なる配線が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダミー画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線は、前記発光画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線よりも、前記厚さが厚い、および/または幅が広いことを特徴とする請求項2に記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記隔壁の形成工程では、フォトリソ法を用いて、前記配線上に格子状の前記隔壁を形成し、
前記撥液層の形成工程では、転写法を用いて、前記隔壁の上面に、前記撥液層を選択的に形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記計測した前記溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程において、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状が、前記基準表面形状と異なる場合には、
前記撥液層の形成工程における形成条件を見直す工程と、
前記見直した形成条件で、再度、前記撥液層の形成工程を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
有機材料を含む複数の発光画素が形成された表示領域と、前記表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを少なくとも有する光学装置において、前記複数の発光画素、および前記複数のダミー画素を区画する隔壁の上面に形成された撥液層の形成状態の検査方法であって、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記ダミー画素となる前記区画領域に、前記有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記ダミー画素となる前記区画領域に塗布された前記溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状が、前記基準表面形状と略同一の場合には、前記撥液層が適切に形成されていると判断することを特徴とする光学装置の検査方法。
【請求項7】
複数の発光画素が形成された表示領域と、前記表示領域の外側に形成された複数のダミー画素とを基板上に有する光学装置であって、
前記基板上に形成された複数の配線と、
前記配線上に形成されるとともに、前記複数の発光画素、および前記複数のダミー画素を区画する隔壁と、
前記隔壁の上面に形成された撥液層と、
前記隔壁によって区画された複数の領域内に液滴吐出法によって形成された有機層と、を少なくとも備え、
前記ダミー画素を区画する前記隔壁の下には、前記発光画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線とは、厚さが異なるか、または幅が異なる配線が形成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項8】
前記ダミー画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線は、前記発光画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線よりも、前記厚さが厚い、および/または幅が広いことを特徴とする請求項7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記ダミー画素を区画する前記隔壁の下に形成された前記配線は、断線部分を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の光学装置。
【請求項10】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成されたフィルター領域と、前記フィルター領域の外側に形成された複数のダミーフィルターとを少なくとも有する光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記複数の色フィルター、および前記複数のダミーフィルターを区画する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁の上面に、撥液層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記ダミーフィルターとなる前記区画領域に対して、前記有機材料を溶解した溶液を液滴吐出法により、塗布する工程と、
前記ダミーフィルターとなる前記区画領域に塗布された前記溶液の溶液溜りの表面形状を立体的に計測する工程と、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状と、あらかじめ定義されている基準表面形状とを比較する工程と、を含み、
前記計測した前記溶液溜りの表面形状が、前記基準表面形状と略同一の場合には、前記色フィルターとなる前記区画領域にも、前記有機材料を溶解した溶液を塗布することを特徴とする光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−60487(P2011−60487A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206788(P2009−206788)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】