光学装置、その製造方法、および電子機器
【課題】液滴吐出法とスピンコート法とを組み合せて、優れた表示品質を有する表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】この製造方法によれば、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81の水性溶液を塗布している。当該水性溶液は、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の撥水機能によってはじかれて、区画領域Pごとに塗り分けられる。そして、発光層83の溶液は、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆って全面に塗布される。油性の発光層の溶液は、撥水親油層31の親油機能によりはじかれることなく、スピンコート法により、隔壁7の上面も含めて塗布される。発光層83が略均一な膜厚で形成されるため、輝度バラツキが抑制され、優れた表示品質を得ることができる。
【解決手段】この製造方法によれば、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81の水性溶液を塗布している。当該水性溶液は、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の撥水機能によってはじかれて、区画領域Pごとに塗り分けられる。そして、発光層83の溶液は、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆って全面に塗布される。油性の発光層の溶液は、撥水親油層31の親油機能によりはじかれることなく、スピンコート法により、隔壁7の上面も含めて塗布される。発光層83が略均一な膜厚で形成されるため、輝度バラツキが抑制され、優れた表示品質を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、その製造方法、および当該光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)材料を含有した溶液をインクジェット法により隔壁(バンク)に囲まれた凹部に吐出、および乾燥させて有機薄膜層を形成する、いわゆる液滴吐出法が知られている。
液滴吐出法によって発光画素を形成する場合には、隔壁で区画された1つの凹部を区画領域としたときに、各区画領域を区画する隔壁の上面に撥液性を付与していた。これは、隣り合う区画領域間における溶液の混入を防止するために行われていた。
例えば、特許文献1には、隔壁の上面に、フッ素系の撥液層を転写して、撥液性を付与する方法が開示されている。詳しくは、格子状の隔壁の上面に、撥液層が形成されたフィルムをラミネートした後、当該フィルムのみを剥離することにより、隔壁の上面に選択的に撥液層を転写形成するとしている。
【0003】
他方、有機EL材料を含有した溶液をスピンコート法によって塗布し、有機薄膜層を形成する技術も知られている。
例えば、特許文献2には、正孔注入層や、発光層などの有機薄膜層のいずれかをスピンコート法によって成膜して、有機薄膜層を形成する方法が開示されている。
また、これらの製造方法で形成された有機薄膜層が前述した隔壁などによって区画されて複数の画素が形成されることになるが、各画素における発光輝度を均一化する観点から、当該有機薄膜層の膜厚が均一であることが求められている。
この膜厚の均一化という観点からすると、一般的に、液滴吐出法によって形成された有機薄膜層よりも、スピンコート法などのコート法を用いて成膜した有機薄膜層の方が、膜厚の均一化を図ることができるといわれており、複数の有機薄膜層におけるいくつかの層をコート法で形成することが検討されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139378号公報
【特許文献2】特開平11−121172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液滴吐出法と、コート法とを組み合わせて、表示品質の優れた光学装置を製造することは困難であるという課題があった。例えば、コート法により、最も膜厚の均一化が要求される発光層を、特許文献1における隔壁の上面に形成されたフッ素系の撥液層を覆って成膜する場合、油性の溶液が撥液層ではじかれてしまい、塗布ムラや、充填不足が生じ、膜厚の均一化を図ることが困難であった。
また、特許文献2の記載のように、コート法を用いて正孔注入層を形成しようとしても、その材料特性から、クロストークが生じてしまい、やはり、コート法を用いることは困難であるという課題があった。詳しくは、上述の隔壁の上面に形成された撥液層を覆って正孔注入層を形成する場合、仮に、撥液層を覆って均一に成膜できたとしても、当該層の材料(PEDOT/PSSなど)は、電気抵抗が低いため、撥液層上に形成された正孔輸送層における画素間の電気的干渉が生じてしまい、非発光部分が発光したり、非選択の隣の画素が発光したりするクロストークの原因となっていた。
つまり、複数の画素を備えた光学装置の製造方法において、効果的にコート法を活用する方法は、創案されていないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0007】
(適用例)
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、基板上に、発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、複数の画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、画素電極、および隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域に対して、有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、正孔注入層、および隔壁を覆って、有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0008】
この製造方法によれば、隔壁の上面に、撥水親油層を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域ごとに、正孔注入層の溶液を塗布している。
前述したように正孔注入層は、一般的に電気抵抗が低く、スピンコート法で隔壁を覆って全面塗布するとクロストークの原因となるため、区画領域ごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて塗布する方が適している。
このため、正孔注入層の形成工程では、液滴吐出法を用いており、水溶性の正孔注入層の溶液は、隔壁の上面に形成された撥水親油層の撥水機能によってはじかれて、画素間に塗布されることなく、区画領域ごとに塗り分けられる。
そして、発光層の溶液は、スピンコート法などのコート法を用いて、正孔注入層、および隔壁を覆って全面に塗布される。ここで、発光層の溶液は、油性であるため、隔壁の上面に形成された撥水親油層の親油機能によりはじかれることなく、コート法により、隔壁の上面も含めて塗布することができる。
つまり、撥水親油層の機能を使い分けることによって、コート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された光学装置は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、適用例に係る光学装置の製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の光学装置を製造することができる。
【0009】
換言すれば、液滴吐出法よりも均一な成膜が可能なコート法による発光層の形成を実現したことにより、当該層の膜厚の均一性が高められ、各画素の発光輝度の均一化が図られるため、光学装置の表示品質を高めることができる。
従って、コート法を効果的に活用した光学装置の製造方法を提供することができる。
【0010】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、基板上に、発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、複数の画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、画素電極、および隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域に対して、有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、正孔注入層、および隔壁を覆って、有機機能層としての正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、隔壁の上面における正孔輸送層の上に、撥水撥油層を形成する工程と、区画領域ごとに、有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0011】
また、コート法は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法のいずれかであることが好ましい。
また、撥水親油層は、隔壁の上面に、撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることが好ましい。
また、撥水親油層は、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかであることが好ましい。
また、正孔注入層を構成する材料は、PEDOT/PSSを含むとともに、材料を含有した溶液は、水性溶液であり、発光層を構成する材料を含有した溶液は、油性溶液であることが好ましい。
また、蒸着法により、発光層を覆って、有機機能層としての電子注入層を形成する工程と、蒸着法により、電子注入層を覆って、共通陰極を形成する工程とを、さらに含むことが好ましい。
また、正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液は、油性溶液であり、撥水撥油層は、隔壁の上面に、フッ素系の撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることが好ましい。
【0012】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成された光学装置の製造方法であって、基板上に、複数の色フィルターを区画する隔壁を形成する工程と、隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、複数の区画領域に対して、有機材料を含有した複数の色フィルターごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、複数の色フィルター、および隔壁を覆って、光透過性を有する保護コート層を構成する材料を含有した油性溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0013】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、基板上に形成された発光画素の開口部となる画素電極と、複数の画素電極を区画する隔壁と、隔壁の上面に形成された撥水親油層と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域ごとに形成された有機機能層としての正孔注入層と、正孔注入層、および隔壁を覆って形成された有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【0014】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、基板上に形成された発光画素の開口部となる画素電極と、複数の画素電極を区画する隔壁と、隔壁の上面に形成された撥水親油層と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域ごとに形成された有機機能層としての正孔注入層と、正孔注入層、および隔壁を覆って形成された有機機能層としての正孔輸送層と、隔壁の上面における正孔輸送層の上に形成された撥水撥油層と、区画領域ごとに形成された、有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【0015】
上記記載の光学装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る表示装置の一態様を示す斜視図。
【図2】図1のi−i断面における表示パネルの側断面図。
【図3】(a)素子基板の平面図、(b)(a)のj−j断面における側断面図。
【図4】表示パネルの製造工程を示すフローチャート図。
【図5】(a)〜(c)製造工程における一態様を示す図。
【図6】(a),(b)製造工程における一態様を示す図。
【図7】(a)実施形態2における素子基板の平面図、(b)(a)のk−k断面における側断面図。
【図8】表示パネルの製造工程を示すフローチャート図。
【図9】(a)〜(c)製造工程における一態様を示す図。
【図10】電子機器としての携帯電話を示す斜視図。
【図11】変形例2に係る素子基板の平面図。
【図12】(a)変形例3に係る光学装置としてのCF基板の平面図、(b)(a)のm−m断面における側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置としての表示装置100の概要について説明する。
【0019】
表示装置100は、有機EL表示装置であり、表示パネル18、フレキシブル基板20などから構成されている。表示パネル18は、素子基板1と対向基板17との間に、発光層を含む複数層の有機機能層を挟持したトップエミッション型の有機EL表示パネルであり、対向基板17側から表示光を出射する。
表示パネル18は、マトリックス状に配置された複数の画素からなる表示領域Vを備えている。図1の右上に拡大して示すように、表示領域Vには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色画素が周期的に配置されており、各画素が出射する表示光によりフルカラーの画像が表示される。なお、各画素は発光画素であるが、画素と称する。また、カラー表示を行う表示パネルに限定するものではなく、トップエミッション型の有機EL表示パネルであれば良く、例えば、モノクロ表示を行う表示パネルであっても良い。
表示領域Vは、縦長の長方形をなしており、図1を含む各図においては、当該縦方向をY軸方向とし、縦方向よりも短い横方向をX軸方向と定義している。また、表示パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、Y軸(+)、(−)方向を上下方向とし、X軸(+)、(−)方向を左右方向としている。
【0020】
詳しくは後述するが、表示装置100は、素子基板1側に略白色光を出射する複数の画素を形成し、対向基板17側に赤緑青の各色カラーフィルターを配置することにより、RGBの各色画素を形成した、「白色発光+カラーフィルター方式」によるトップエミッション型の有機EL表示パネルである。
従来、これらの画素における発光輝度の均一化を図るために、液滴吐出法よりも、有機薄膜層の膜厚の均一化を図ることができるコート法を用いることが検討されていたが、有効な製造方法は見当たらなかった。
これに対して、表示装置100の製造方法によれば、後述の特徴ある構成、および方法によって、液滴吐出法とコート法とを組み合せることを実現し、優れた表示品質の光学装置を製造することができる。
【0021】
また、表示パネル18において、素子基板1が対向基板17から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、例えば、ポリイミドフィルムの基材に鉄箔の配線などが形成された柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板の略称である。また、フレキシブル基板20には、駆動用IC(Integrated Circuit)21が実装され、その端部には、専用のコントローラーや、外部機器(いずれも図示せず)と接続するための複数の端子が形成されている。
表示パネル18は、フレキシブル基板20を介して、外部機器から電力や画像信号を含む制御信号の供給を受けることにより、表示領域Vに画像や文字などを表示する。
【0022】
「表示パネルの概略構成」
図2は、図1のi−i断面における側断面図である。
続いて、表示パネル18の概略構成について説明する。
表示パネル18は、素子基板1、素子層2、平坦化層4、反射層5、画素電極6、隔壁7、電気光学層としての有機EL層8、共通電極9、電極保護層10、緩衝層11、ガスバリア層12、充填剤13、CF層14、対向基板17などから構成されている。また、素子基板1と対向基板17とに挟持された部位のことを機能層16という。換言すれば、素子層2からCF層14までの積層構造を機能層16という。
素子基板1は、無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。なお、この構成に限定するものではなく、樹脂基板を用いても良い。また、トップエミッション型であるため、光透過性が低い材料を用いても良く、例えば、金属基板を用いる構成であっても良い。
素子層2には、各画素をアクティブ駆動するための画素回路が形成されている。画素回路には、TFT(Thin Film Transistor)からなる画素を選択するための選択トランジスターや、有機EL層8に電流を流すための駆動トランジスター3などが含まれており、画素ごとに対応して形成されている。なお、画素回路は、好適例として、活性層に低温ポリシリコンを用いているが、アモルファスシリコンを活性層として用いた構成であっても良い。
【0023】
素子層2の上層(Z軸(−)方向)には、例えば、アクリル樹脂などからなる絶縁層である平坦化層4が形成されている。
平坦化層4の上層には、画素ごとに区画されて、反射層5と、画素電極6とがこの順番で積層されている。
反射層5は、例えば、アルミニウムなどの反射性を有する金属からなる反射層であり、有機EL層8から素子基板1側に向かう光を反射して、表示に寄与する光にする。
画素電極6は、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどの透明電極から構成されており、画素ごとに素子層2の駆動トランジスター3のドレイン端子と平坦化層4を貫通するコンタクトホールにより接続されている。なお、本実施形態では、好適例として、反射層5と画素電極6との間に、SiO2などの透明な無機絶縁層を介在させているが、この構成に限定するものではなく、反射電極として機能する構成であれば良い。例えば、反射層5を省略して、画素電極6のみをアルミニウムなどの反射性の導電材料によって形成することであっても良い。または、無機絶縁層を介在させることなく、反射層5の上に、画素電極6を直接形成することであっても良い。
【0024】
隔壁7は、光硬化性の黒色樹脂などから構成され、平面的に各画素を格子状に区画している。なお、素子層2における駆動トランジスター3を含む画素回路は、光による誤動作を防止するために、平面的に隔壁と重なるように配置されている。
なお、図2では、好適例として有機材料からなる隔壁7(第1隔壁)によるシングルバンク構成としているが、例えば、さらに無機材料からなる低い隔壁(第2隔壁)を備えたダブルバンク構成としても良い。ダブルバンク構成の場合、隔壁7(第1隔壁)の下層に、画素電極6の周縁部を覆うSiO2などの無機材料膜からなる第2隔壁を形成し、第2隔壁から露出した部分が開口部となる。
【0025】
また、隔壁7の上面には、本発明における特徴ある構成の一つである撥水親油層が形成されているが図2では、省略している。
複数層の有機機能層としての有機EL層8は、正孔注入層や、発光層などを含む複数の有機機能層から形成された有機EL発光層である。図2において、有機EL層8は、画素電極6、および隔壁7を覆う一層の構成となっているが、実際は、各部位を覆って形成された有機薄膜層と、隔壁7で区画された区画領域内に形成された有機薄膜層とが、混在した状態となっている。
好適例における有機EL層8は、正孔注入層と、発光層と、電子注入層とを、この順番に積層した構成となっている。または、正孔注入層と発光層との間に、正孔輸送層をさらに備えた構成であっても良い。
【0026】
好適例における正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)を用いる。また、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
好適例における正孔輸送層(中間層)の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、トリフェニルアミン系ポリマーを用いても良い。
【0027】
発光層の材料としては、略白色の蛍光、または燐光を発光する発光材料を用いることが好ましい。または、有機EL層8R,8G,8Bごとに、赤色、緑色、青色の蛍光、または燐光を発光する発光材料を用いても良い。
好適例としては、略白色、赤色、緑色、青色に対応したポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)などを用いても良い。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
電子注入層の材料としては、仕事関数が小さい材料が好ましく、好適例では、例えば、カルシウムを用いる。
【0028】
共通陰極としての共通電極9は、MgAgなどの金属を、光を透過するようにごく薄く成膜した金属薄膜層であり、全画素に跨る有機EL層8を覆って形成されている。
陰極保護層としての電極保護層10は、SiO2や、Si3N4、SiOxNyなどの高密度で、かつ、透明性の高い材質から構成されており、共通電極9を覆って形成することにより、有機EL層8へ水分などが浸入することを防止している。
緩衝層11は、熱硬化性のエポキシ樹脂などの透明な有機緩衝層である。
ガスバリア層12は、電極保護層10と同様な材質で構成されたガスバリア層であり、緩衝層11をさらに覆って形成することにより、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防止している。
充填剤13は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる透明な接着層であり、ガスバリア層12とCF層14との間の凹凸面に充填されるとともに、両者を接着する。また、表示パネル18の周縁部から、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防ぐ機能も果たす。
【0029】
対向基板17は、透明な無機ガラスから構成されており、好適例として、無アルカリガラスを用いている。また、対向基板17における有機EL層8側(Z軸(+)側)には、CF層14が形成されている。
CF層14には、赤色カラーフィルター14r、緑色カラーフィルター14g、青色カラーフィルター14bが画素配置と同様に配置されている。詳しくは、各色のカラーフィルターは、それぞれが対応する画素電極6と重なるように配置されており、各カラーフィルター間には、ハッチングで示した遮光部が形成されている。遮光部は、平面的に隔壁7と重なるように格子状に形成されており、光学的には、ブラックマトリックスの機能を果たす。
そして、対向基板17と素子基板1とは、対向基板17の周縁部に形成されたシール剤15によって接着および封止されている。シール剤15としては、エポキシ系の接着剤や、紫外線硬化樹脂などを用いる。
【0030】
このように構成された各画素からは、カラーフィルターの色調に対応した表示光が出射される。例えば、赤色画素の場合、有機EL層8で放射された白色光は、赤色カラーフィルター14rによって赤色光が選択されて、赤色の表示光として対向基板17から出射される。また、緑色、青色の画素においても同様である。
これにより、表示領域Vでは、対向基板17から出射される複数のカラー画素からの表示光によりフルカラーの画像が表示されることになる。
【0031】
「素子基板の詳細な構造」
図3(a)は素子基板1の平面図であり、(b)は(a)のj−j断面における側断面図である。
ここでは、素子基板1の平面レイアウト、および有機EL層8を含む積層構造について、詳細に説明する。
図3(a)は、電極保護層10までが形成された状態の素子基板1の平面図である。当該図に示すように、隔壁7によって格子状に区画された複数の領域の各々を区画領域(画素)Pとしており、各区画領域Pには、Y軸方向に長い楕円状の画素電極6が配置されている。なお、画素電極6の平面形状は、楕円状に限定するものではなく、トラック形状や、長方形、円であっても良い。
【0032】
図3(b)は、(a)のj−j断面における側断面図であり、1つの画素を長手方向(Y軸方向)に沿って切断した状態を示している。
当該図に示すように、有機EL層8は、正孔注入層81、発光層83、電子注入層84から構成されている。
正孔注入層81は、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
発光層83は、略白色光を放射する発光層であり、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って形成されている。
ここで、隔壁7の上面には、本発明における特徴ある構成の一つである撥水親油層31が形成されている。撥水親油層31は、水性溶液をはじいて、油性溶液になじむ機能を有している。
電子注入層84は、真空蒸着法により、発光層83を覆って全面に形成されている。
このように、有機EL層8は、区画領域P内に形成された正孔注入層81と、隔壁7を含む各部を覆って形成された発光層83、および電子注入層84とが、混在した積層構造となっている。
また、図2で説明した通り、電子注入層84の上には、共通電極9と電極保護層10とが、この順番で、それぞれ全面に形成されている。
【0033】
「表示パネルの製造方法」
図4は、表示パネルの製造工程を示すフローチャート図である。図5(a)〜(c)は、製造工程における一態様を示す図である。図6(a),(b)は、製造工程における一態様を示す図である。
ここでは、表示パネル18の製造方法について、有機EL層8の工程を中心に説明する。
【0034】
まず、ステップS1では、フォトリソ法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの周知の製造方法を用いて、画素電極6までが作り込まれた素子基板1を形成する。換言すれば、画素電極6までが形成された素子基板1を準備する。
ステップS2では、フォトリソ法を用いて、格子状の隔壁7を形成する。詳しくは、前述した光硬化性の樹脂を素子基板1の全面にスピンコート法などにより塗布した後、格子状のマスクを用いて露光し、現像することによって格子状の隔壁7を形成する。なお、好適例では、黒色の光硬化性樹脂を用いている。
これにより、図3(a)に示すように、複数の画素電極6を1つずつに区画する隔壁7が形成される。換言すれば、表示領域Vを複数の区画領域Pに区画する隔壁7が形成される。
ステップS3では、画素電極6、および隔壁7を含む表示領域Vの露出面に親液化処理を施す。詳しくは、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。この処理により、画素電極6、および隔壁7を含む表示領域Vの露出面に水酸基が導入されて親液性が付与される。この状態が、図5(a)に示されている。
【0035】
ステップS4では、図5(b)に示すように、素子基板1上に、転写フィルム130を重ねた状態(準備体)とし、転写法を用いて、隔壁7の上面に撥水親油膜を形成する。
ここで、転写フィルム130は、基材となる樹脂フィルム上の一面に、撥水親油膜131を形成(塗布)したフィルム部材である。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ナイロン系フィルム、フッ素樹脂フィルムなどを用いることができる。また、撥水親油膜131としては、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかを用いることができる。
本実施形態では、好適例として、樹脂フィルムとして、厚さ約20μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用い、当該フィルム上に、撥水親油膜131を約80nmの厚さで形成したものを転写フィルム130としている。
【0036】
そして、当該図に示すように、隔壁7面を上にした状態の素子基板1上に、撥水親油膜131側を下にして転写フィルム130を重ねて準備体としている。
本実施形態では、好適例として、この準備体をラミネート装置でラミネートすることにより、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する。なお、図5(b)では、ラミネート装置における伝熱性のあるシリコンゴムなどのエラストマーから構成された加圧ローラー61,62のみを図示している。また、ラミネートは転写法の一種である。具体的なラミネート条件としては、加圧ローラー61,62の温度を約130℃とし、準備体の搬送速度(ラミネート速度)を0.5m/minとした。
なお、ローラーを用いたラミネート法に限定するものではなく、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成することが可能な転写法であれば良い。例えば、準備体の上方から加熱した平板を押し当てて、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する方法であっても良い。
これにより、図5(c)に示すように、隔壁7の上面に選択的に撥水親油層31が形成されることになる。なお、この撥水親油層31は、撥水親油膜131の一部が転写されたものである。
また、隔壁7の上面とは、下底が長く、上底が短い略台形状をなした隔壁7の断面形状における上底のことを指しており、実際は、曲面を含んだ凸状となっている。
【0037】
ステップS5では、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、各区画領域P内に、正孔注入層81を形成する。なお、正孔注入層81の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、液滴吐出装置を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81を構成する材料を含有した水性溶液を吐出する。なお、インクジェット法に限定するものではなく、所定の位置に溶液を吐出可能な塗布方法であれば良い。例えば、ジェットディスペンサー法や、ニードルディスペンサー法などのディスペンサー法を用いても良い。
図5(c)には、液滴吐出装置のノズル510から溶液d1が吐出されて、区画領域P内に着弾し、凸状(水玉状)の溶液溜りu1となった状態が示されている。
ここで、溶液溜りu1が凸状となるのは、区画領域Pの底部を形成する画素電極6などが親液性を有するとともに、撥水親油層31が水性の溶液に対して撥液性を有しているからであり、充填された溶液は、その表面張力によって水玉状の膨らみを持って区画領域Pに溜まることになる。
【0038】
乾燥工程では、真空乾燥と熱処理を行う。まず、溶液が塗布された状態の素子基板1を真空チャンバーに移して、真空乾燥を行う。これにより、溶液中の溶媒の沸点が下がり、当該溶媒が低温で蒸発することになるため、溶質が析出して正孔注入層が形成される。さらに、残存する溶媒を除去するために熱処理を行う。好適例では、窒素ガス雰囲気下において、約200℃で約10分間の熱処理を行う。
なお、乾燥工程において、素子基板1を加熱しても良い。例えば、当該基板をホットプレート上に載せて加熱する方法や、表示領域Vの上方から赤外線ランプを照射する方法などを採用することができる。また、これらの方法を組み合せても良い。このような方法によれば、より効率的に乾燥を行うことができる。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図5(c)において点線で示すように、区画領域Pの底部に、画素電極6を覆う正孔注入層81が形成される。
【0039】
ステップS6では、スピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆う発光層83を形成する。なお、発光層83の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、発光層83を構成する材料を含有した油性溶液を塗布する。
ここで、隔壁7の上面に形成されている撥水親油層31は、油性溶液になじむため、発光層の溶液をはじくことなく隔壁7を覆って、スピンコート法による略均一な膜厚の発光層83を形成することができる。なお、上記説明では、好適例としてスピンコート法を用いているが、スピンコート法に限定するものではなく、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法などのコート法を用いても良い。
また、乾燥工程は、ステップS5での説明と同様である。詳しくは、真空乾燥と熱処理を行う。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図6(a)に示すように、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、全面に発光層83が形成される。
【0040】
ステップS7では、真空蒸着法を用いて、発光層83を覆って、カルシウムからなる電子注入層84を形成する。
ステップS8では、真空蒸着法を用いて、電子注入層84を覆って、MgAgからなる共通電極9を形成する。
ステップS9では、CVD法を用いて、共通電極9を覆って、SiO2からなる電極保護層10を形成する。この状態が図6(b)に示されている。なお、図6(b)は、図3(b)と同一図面である。
【0041】
また、ステップS9に続けて、スピンコート法や、CVD法などを用いて、熱硬化性のエポキシ樹脂からなる緩衝層11や、SiO2からなるガスバリア層12などを形成して、図2に示す、素子基板1が完成する。
そして、積層構造が完成した素子基板1と別途製造された対向基板17とを充填剤13や、シール剤15を用いて貼り合せて、表示パネル18が完成する。
【0042】
「好適例における寸法」
上述した好適例による各部の寸法について、図3を用いて紹介しておく。
まず、区画領域の「長さ(Y軸方向)×幅(X軸方向)」を「約300μm×約150μm」とした。
また、画素電極6の長さを約200μmとし、幅を約100μmとした。
また、隔壁7の高さ(厚さ)を約3μmとした。
また、撥水親油層31の厚さを約80nmとした。
【0043】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
この製造方法によれば、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81の溶液を塗布している。
前述したように、正孔注入層81は、一般的に電気抵抗が低く、スピンコート法を用いて、隔壁7を覆って全面塗布するとクロストークの原因となるため、区画領域ごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて塗布する方が適している。
このため、正孔注入層81の形成工程では、液滴吐出法を用いており、水溶性の正孔注入層の溶液は、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の撥水機能によってはじかれて、画素間に塗布されることなく、区画領域Pごとに塗り分けられる。
そして、発光層の溶液は、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆って全面に塗布される。ここで、発光層の溶液は、油性であるため、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の親油機能によりはじかれることなく、スピンコート法により、隔壁7の上面も含めて塗布することができる。
つまり、撥水親油層31の機能を使い分けることによって、スピンコート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された表示装置100は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、本実施形態に係る製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の表示装置100を製造することができる。
【0044】
換言すれば、コート法による発光層83の形成を実現したことにより、当該層の膜厚の均一性が高められ、各画素の発光輝度の均一化が図られるため、表示装置100の表示品質を高めることができる。
従って、コート法を効果的に活用した表示装置100の製造方法を提供することができる。
【0045】
(実施形態2)
図7(a)は、実施形態2に係る素子基板の平面図であり、図3(a)に対応している。図7(b)は(a)におけるk−k断面の断面図であり、図3(b)に対応している。
以下、本発明の実施形態2に係る表示装置について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0046】
本実施形態の表示装置は、実施形態1の素子基板1とは、異なる構成の素子基板1bを備えている。詳しくは、有機EL層8が正孔輸送層82を加えた構成となっている点が、実施形態1の素子基板1とは異なる。また、当該構成の変更に伴い製造方法の一部も異なっている。それ以外は、実施形態1での説明と略同様である。なお、素子基板1bとは、本実施形態における素子基板1上に形成された複数層の積層構造体の全体を指している。
まず、図7(a)に示された素子基板1bの平面態様は、図3(a)の実施形態1の平面態様と同様である。
また、図7(b)は図3(a)におけるj−j断面と同一部分の断面図であり、当該図に示すように、実施形態2に係る有機EL層8は、正孔注入層81、正孔輸送層82、発光層83、電子注入層84から構成されている。
【0047】
正孔注入層81は、実施形態1と同様に、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
そして、正孔輸送層82は、コート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って形成されている。
また、発光層83は、RGBの色光ごとの発光層が、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
ここで、隔壁7の上面には、実施形態1と同様に撥水親油層31が形成されている。また、本実施形態では、隔壁7の上面における正孔輸送層82上に、撥水撥油層32がさらに形成されている点が、実施形態1と異なっている。
また、電子注入層84は、真空蒸着法により、発光層83、および隔壁7を覆って全面に形成されている。
このように、有機EL層8は、区画領域P内に形成された正孔注入層81、および発光層83と、隔壁7を含む各部を覆って形成された正孔輸送層82、および電子注入層84とが、混在した積層構造となっている。また、これらの積層構造以外は、実施形態1での構成と同様である。
【0048】
「表示パネルの製造方法」
図8は、実施形態2に係る表示パネルの製造工程を示すフローチャート図であり、図4に対応している。図9(a)〜(c)は、製造工程における一態様を示す図であり、図5,6に対応している。
ここでは、表示パネル18の製造方法について、有機EL層8の工程を中心に説明する。なお、図4の工程と同一の工程については、重複する説明は省略する。
【0049】
まず、ステップS11の画素電極形成工程から、ステップS15の正孔注入層形成工程までは、図4のステップS1〜ステップS5までの各工程と同一である。
ステップS16では、スピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆う正孔輸送層82を形成する。なお、正孔輸送層82の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、正孔輸送層82を構成する材料を含有した油性溶液を塗布する。
ここで、隔壁7の上面に形成されている撥水親油層31は、油性溶液になじむため、正孔輸送層の溶液をはじくことなく隔壁7を覆って、スピンコート法による略均一な膜厚の正孔輸送層82を形成することができる。なお、スピンコート法に限定するものではなく、他のコート法を用いても良いことは、実施形態1での説明と同様である。
また、乾燥工程は、実施形態1での説明と同様である。詳しくは、真空乾燥と熱処理を行う。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図9(a)に示すように、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、全面に正孔輸送層82が形成される。なお、正孔輸送層82には、均一な絶縁性が要求されるため、有機EL層8において、発光層83に次いで、膜厚の均一性が求められている。
【0050】
ステップS17では、素子基板1上に、転写フィルムを重ねた状態とし、転写法を用いて、隔壁7の上面に撥水撥油層32を形成する。転写フィルムは、基材となる樹脂フィルム上の一面に、撥水撥油膜を形成(塗布)したフィルム部材である。
なお、具体的には、図5(b)で説明したラミネート法を用いて、図9(b)に示すように、隔壁7の上面における正孔輸送層82上に、撥水撥油層32を形成する。転写フィルムの材質や、ラミネート条件については、実施形態1での説明と同様である。
また、撥水撥油膜としては、フッ素系化合物、またはケイ素系化合物を含有した撥液剤を用いることができる。本実施形態では、好適例として、住友スリーエム社製のノベック(登録商標)EGC-1720を用いている。
【0051】
ステップS18では、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、各区画領域P内に、発光層83を形成する。なお、発光層83の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
溶液の塗布工程では、液滴吐出装置を用いて、区画領域Pごとに、発光層83を構成する材料を含有した油性溶液を吐出する。詳しくは、図7(a)に示すように、画素列ごとにRGBの各色に対応した溶液を塗布する。なお、インクジェット法に限定するものではなく、所定の位置に溶液を吐出可能な塗布方法であれば良いことは、実施形態1での説明と同様である。
図9(b)には、液滴吐出装置のノズル520から溶液d2が吐出されて、区画領域P内に着弾し、凸状(水玉状)の溶液溜りu2となった状態が示されている。
ここで、溶液溜りu2が凸状となるのは、撥水撥油層32が油性の溶液に対して撥液性を有しているからであり、充填された溶液は、その表面張力によって水玉状の膨らみを持って区画領域Pに溜まることになる。
また、乾燥工程については、実施形態1(ステップS5)での説明と同様である。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図9(b)において点線で示すように、区画領域Pの底部側における正孔輸送層82の上に、発光層83が形成される。
【0052】
ステップS19では、真空蒸着法を用いて、発光層83、および隔壁7を覆って、カルシウムからなる電子注入層84を形成する。
そして、ステップS20の共通電極形成工程、およびステップS21の電極保護層形成工程は、図4のステップS8〜ステップS9の各工程と同一である。
また、ステップS21に続けて、緩衝層11や、ガスバリア層12などを形成して素子基板1bが完成すること、および別途製造された対向基板17を充填剤13や、シール剤15を用いて貼り合せて、表示パネル18が完成することなども、実施形態での説明と同様である。
【0053】
なお、図2において、実施形態2の素子基板1bを適用すると、RGBの各色を発光する画素に、さらにRGBの各色カラーフィルターを被せた構成となるが、この構成によれば、高いコントラストを確保することができる。詳しくは、トップエミッション型である表示パネル18は、対向基板17から入射する外光が反射層5で反射された反射光によって、コントラストが低下してしまうという問題を有しているが、カラーフィルターを備えることによって、発光色以外の反射率を抑えられるため、高コントラストを確保することが可能となる。
また、表示パネル18の形式としては、トップエミッション型に限定するものではなく、ボトムエミッション型として構成しても良い。この構成の場合、反射層5を削除し、共通電極9を反射性に優れたアルミニウムなどから構成された反射電極とすれば良い。
これによれば、素子基板1側からRGBの各色の表示光を出射するボトムエミッション型の表示パネルを構成することができる。
【0054】
上述した通り、本実施形態に係る光学装置、および製造方法によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
この製造方法によれば、撥水親油層31と、撥水撥油層32とが有する機能を使い分けることにより、有機EL層8の中でも膜厚の均一性が求められる正孔輸送層82を、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて形成している。また、スピンコート法を用いて形成するとクロストークが発生する恐れがある正孔注入層81を、区画領域Pごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて形成している。
つまり、撥水親油層31と、撥水撥油層32とを効果的に使い分けることにより、コート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された表示装置は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、本実施形態に係る製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の表示装置を製造することができる。
【0055】
(電子機器)
図10は、上述の表示装置を搭載した携帯電話を示す斜視図である。
上述した表示装置100は、例えば、電子機器としての携帯電話200に搭載して用いることができる。
携帯電話200は、本体部350と、当該本体部に対して開閉自在に設けられた表示部370とを備えるとともに、実施形態1に係る表示装置100を内蔵している。詳しくは、表示装置100は、表示部370に組み込まれており、表示パネル18が表示画面となっている。また、本体部350には、複数の操作ボタンを有する操作部365が設けられている。
つまり、携帯電話200は、優れた表示品質の表示装置100を搭載している。従って、鮮明な表示画面を備えた携帯電話200を提供することができる。
なお、表示パネル18の素子基板には、実施形態2に係る素子基板1bを用いても良く、この場合であっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
また、携帯電話の態様は、図10に示した折畳み式に限定するものではなく、表示パネルを備えた携帯電話であれば良い。
例えば、本体部350に対して表示部370が折畳み、および旋回可能に設けられた携帯電話であっても良い。または、一体型の携帯電話や、一体型の本体部に操作部が収納されているスライド式の携帯電話であっても良い。
また、電子機器としては、携帯電話に限定するものではなく、液晶パネルを備えた電子機器であれば良い。
例えば、カーナビゲーションシステム用の表示装置や、PDA(Personal Digital Assistants)、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器に用いることができる。
これらの電子機器によれば、高品位の表示を得ることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0058】
(変形例1)
図3(b)、および図7(b)を用いて説明する。
上記各実施形態では、有機EL層8の積層構造を正孔注入層81、発光層83、電子注入層84からなる3層構造、または正孔注入層81、正孔輸送層82、発光層83、電子注入層84からなる4層構造として説明したが、この構成に限定するものではない。
例えば、正孔注入層と、発光層とからなる2層構成であっても良いし、発光層と、電子注入層との間に、さらに正孔阻害層を設けた構成であっても良い。
これらの構成であっても、各有機機能層の特性に応じて、撥水親油層の機能、または撥水撥油層との組み合せによる機能を効果的に使い分けることにより、コート法と液滴吐出法とのうち、最適な方法を選択した製造方法を実現することができる。
また、この製造方法であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0059】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る素子基板の平面図であり、図3(a)に対応している。
上記各実施形態では、隔壁7によって、1つの画素電極6ごとに、1つの区画領域Pが形成されるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。例えば、図11に示すように、複数の画素電極6に対して、1つの区画領域Pが形成される隔壁77構成であっても良い。
変形例2の素子基板51は、実施形態1の隔壁7(図3)とは異なる隔壁77を備えている。詳しくは、Y軸方向に隣り合う2つの画素電極6に対して、1つの区画領域P(共通バンク)が形成される隔壁77構成となっている。このため、区画領域Pの縦方向(Y軸方向)の長さが、図3の区画領域Pに比べて長くなっている。この点以外は、実施形態1での説明と同様である。
【0060】
この構成であっても、上記各実施形態における製造方法を適用可能であることから、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
なお、2つの画素電極6に対して1つの区画領域Pが形成される構成に限定するものではなく、3つ以上の画素電極6に対して1つの区画領域Pが形成されることであっても良い。または、表示領域Vの周縁部では複数の画素電極6に対して1つの区画領域Pを形成し、中央部では1つの画素電極6に対して1つの区画領域Pを形成するというように、変化させても良い。これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0061】
(変形例3)
図12(a)は、変形例3に係る光学装置としてのCF基板の平面図であり、図3(a)に対応している。図12(b)は、(a)におけるm−m断面の側断面図であり、図3(b)に対応している。
上記各実施形態では、有機ELパネルである表示パネル18を用いて説明したが、光学装置としてのCF基板115に適用することであっても良い。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
変形例3に係るCF基板115は、液晶パネルや、トップエミッション型の有機ELパネルに用いられるカラーフィルターが形成された基板である。このため、画素電極6や、素子層2(図2)などは、形成されていない。
【0062】
CF基板115は、透明基板111、色フィルター層181、隔壁7、保護コート層185などから構成されている。
透明基板111は、透明性を有する無機、または有機基板である。
隔壁7は、CF基板115が組み込まれる液晶パネルの平面的な画素配置に対応して、各区画領域Pをマトリックス状に区画するように、格子状に形成されている。
色フィルター層181は、図12(a)に示すように、RGBの各色の色フィルターが、区画領域P列ごとに周期的に繰り返す、縦ストライプに形成されている。
保護コート層185は、色フィルター層181、および隔壁7を覆って、全面に形成された透明樹脂からなる保護コート層である。
【0063】
このCF基板115の製造にも、実施形態1の製造方法の一部を適用することが可能である。以下、図4のフローチャートと比較しながら説明する。
詳しくは、まず、透明基板111上に、格子状の隔壁7を形成した後、図4のステップS3と同様に、透明基板111、および隔壁7の露出面に、親液化処理を施す。
次に、ステップS4と同様に、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成する。
そして、ステップS5と同様に、区画領域Pごとに、各色の色フィルター層ごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布し、乾燥する。
最後に、色フィルター層181、および隔壁7を覆って、光透過性を有する保護コート層185を構成する材料を含有した油性溶液をスピンコート法により塗布する。なお、スピンコート法に限定するものではなく、他のコート法を用いても良いことは、実施形態1での説明と同様である。
【0064】
このように、撥水親油層31の機能を効果的に活用することによって、水性溶液を用いる色フィルター層を液滴吐出法により各区画領域Pに塗り分けるとともに、油性溶液を用いる保護コート層をコート法により、全面に塗布することができる。
特に、従来、図12(b)の撥水親油層31を、撥油性も有する撥水撥油層で構成する方法が一般的であったが、この構成の場合、保護コート層185を形成する前に、撥水撥油層を除去する必要があった。これに対して、変形例3の製造方法によれば、撥水親油層31を除去することなく、保護コート層185を形成することが可能であるため、製造効率が良い。
従って、製造効率に優れたCF基板115の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,51…基板としての素子基板、6…画素電極、7,77…隔壁、8…複数層の有機機能層としての有機EL層、9…共通陰極としての共通電極、18…表示パネル、31…撥水親油層、32…撥水撥油層、81…正孔注入層、82…正孔輸送層、83…発光層、84…電子注入層、100…光学装置としての表示装置、111…透明基板、115…光学装置としてのCF基板、181…色フィルターとしての色フィルター層、185…保護コート層、200…電子機器としての携帯電話、d1,d2…液滴、u1,u2…溶液溜り、P…区画領域、V…表示領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、その製造方法、および当該光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)材料を含有した溶液をインクジェット法により隔壁(バンク)に囲まれた凹部に吐出、および乾燥させて有機薄膜層を形成する、いわゆる液滴吐出法が知られている。
液滴吐出法によって発光画素を形成する場合には、隔壁で区画された1つの凹部を区画領域としたときに、各区画領域を区画する隔壁の上面に撥液性を付与していた。これは、隣り合う区画領域間における溶液の混入を防止するために行われていた。
例えば、特許文献1には、隔壁の上面に、フッ素系の撥液層を転写して、撥液性を付与する方法が開示されている。詳しくは、格子状の隔壁の上面に、撥液層が形成されたフィルムをラミネートした後、当該フィルムのみを剥離することにより、隔壁の上面に選択的に撥液層を転写形成するとしている。
【0003】
他方、有機EL材料を含有した溶液をスピンコート法によって塗布し、有機薄膜層を形成する技術も知られている。
例えば、特許文献2には、正孔注入層や、発光層などの有機薄膜層のいずれかをスピンコート法によって成膜して、有機薄膜層を形成する方法が開示されている。
また、これらの製造方法で形成された有機薄膜層が前述した隔壁などによって区画されて複数の画素が形成されることになるが、各画素における発光輝度を均一化する観点から、当該有機薄膜層の膜厚が均一であることが求められている。
この膜厚の均一化という観点からすると、一般的に、液滴吐出法によって形成された有機薄膜層よりも、スピンコート法などのコート法を用いて成膜した有機薄膜層の方が、膜厚の均一化を図ることができるといわれており、複数の有機薄膜層におけるいくつかの層をコート法で形成することが検討されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139378号公報
【特許文献2】特開平11−121172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液滴吐出法と、コート法とを組み合わせて、表示品質の優れた光学装置を製造することは困難であるという課題があった。例えば、コート法により、最も膜厚の均一化が要求される発光層を、特許文献1における隔壁の上面に形成されたフッ素系の撥液層を覆って成膜する場合、油性の溶液が撥液層ではじかれてしまい、塗布ムラや、充填不足が生じ、膜厚の均一化を図ることが困難であった。
また、特許文献2の記載のように、コート法を用いて正孔注入層を形成しようとしても、その材料特性から、クロストークが生じてしまい、やはり、コート法を用いることは困難であるという課題があった。詳しくは、上述の隔壁の上面に形成された撥液層を覆って正孔注入層を形成する場合、仮に、撥液層を覆って均一に成膜できたとしても、当該層の材料(PEDOT/PSSなど)は、電気抵抗が低いため、撥液層上に形成された正孔輸送層における画素間の電気的干渉が生じてしまい、非発光部分が発光したり、非選択の隣の画素が発光したりするクロストークの原因となっていた。
つまり、複数の画素を備えた光学装置の製造方法において、効果的にコート法を活用する方法は、創案されていないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0007】
(適用例)
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、基板上に、発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、複数の画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、画素電極、および隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域に対して、有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、正孔注入層、および隔壁を覆って、有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0008】
この製造方法によれば、隔壁の上面に、撥水親油層を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域ごとに、正孔注入層の溶液を塗布している。
前述したように正孔注入層は、一般的に電気抵抗が低く、スピンコート法で隔壁を覆って全面塗布するとクロストークの原因となるため、区画領域ごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて塗布する方が適している。
このため、正孔注入層の形成工程では、液滴吐出法を用いており、水溶性の正孔注入層の溶液は、隔壁の上面に形成された撥水親油層の撥水機能によってはじかれて、画素間に塗布されることなく、区画領域ごとに塗り分けられる。
そして、発光層の溶液は、スピンコート法などのコート法を用いて、正孔注入層、および隔壁を覆って全面に塗布される。ここで、発光層の溶液は、油性であるため、隔壁の上面に形成された撥水親油層の親油機能によりはじかれることなく、コート法により、隔壁の上面も含めて塗布することができる。
つまり、撥水親油層の機能を使い分けることによって、コート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された光学装置は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、適用例に係る光学装置の製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の光学装置を製造することができる。
【0009】
換言すれば、液滴吐出法よりも均一な成膜が可能なコート法による発光層の形成を実現したことにより、当該層の膜厚の均一性が高められ、各画素の発光輝度の均一化が図られるため、光学装置の表示品質を高めることができる。
従って、コート法を効果的に活用した光学装置の製造方法を提供することができる。
【0010】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、基板上に、発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、複数の画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、画素電極、および隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域に対して、有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、正孔注入層、および隔壁を覆って、有機機能層としての正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、隔壁の上面における正孔輸送層の上に、撥水撥油層を形成する工程と、区画領域ごとに、有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0011】
また、コート法は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法のいずれかであることが好ましい。
また、撥水親油層は、隔壁の上面に、撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることが好ましい。
また、撥水親油層は、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかであることが好ましい。
また、正孔注入層を構成する材料は、PEDOT/PSSを含むとともに、材料を含有した溶液は、水性溶液であり、発光層を構成する材料を含有した溶液は、油性溶液であることが好ましい。
また、蒸着法により、発光層を覆って、有機機能層としての電子注入層を形成する工程と、蒸着法により、電子注入層を覆って、共通陰極を形成する工程とを、さらに含むことが好ましい。
また、正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液は、油性溶液であり、撥水撥油層は、隔壁の上面に、フッ素系の撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることが好ましい。
【0012】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成された光学装置の製造方法であって、基板上に、複数の色フィルターを区画する隔壁を形成する工程と、隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、複数の区画領域に対して、有機材料を含有した複数の色フィルターごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、複数の色フィルター、および隔壁を覆って、光透過性を有する保護コート層を構成する材料を含有した油性溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【0013】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、基板上に形成された発光画素の開口部となる画素電極と、複数の画素電極を区画する隔壁と、隔壁の上面に形成された撥水親油層と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域ごとに形成された有機機能層としての正孔注入層と、正孔注入層、および隔壁を覆って形成された有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【0014】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、基板上に形成された発光画素の開口部となる画素電極と、複数の画素電極を区画する隔壁と、隔壁の上面に形成された撥水親油層と、隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、区画領域ごとに形成された有機機能層としての正孔注入層と、正孔注入層、および隔壁を覆って形成された有機機能層としての正孔輸送層と、隔壁の上面における正孔輸送層の上に形成された撥水撥油層と、区画領域ごとに形成された、有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【0015】
上記記載の光学装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る表示装置の一態様を示す斜視図。
【図2】図1のi−i断面における表示パネルの側断面図。
【図3】(a)素子基板の平面図、(b)(a)のj−j断面における側断面図。
【図4】表示パネルの製造工程を示すフローチャート図。
【図5】(a)〜(c)製造工程における一態様を示す図。
【図6】(a),(b)製造工程における一態様を示す図。
【図7】(a)実施形態2における素子基板の平面図、(b)(a)のk−k断面における側断面図。
【図8】表示パネルの製造工程を示すフローチャート図。
【図9】(a)〜(c)製造工程における一態様を示す図。
【図10】電子機器としての携帯電話を示す斜視図。
【図11】変形例2に係る素子基板の平面図。
【図12】(a)変形例3に係る光学装置としてのCF基板の平面図、(b)(a)のm−m断面における側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置としての表示装置100の概要について説明する。
【0019】
表示装置100は、有機EL表示装置であり、表示パネル18、フレキシブル基板20などから構成されている。表示パネル18は、素子基板1と対向基板17との間に、発光層を含む複数層の有機機能層を挟持したトップエミッション型の有機EL表示パネルであり、対向基板17側から表示光を出射する。
表示パネル18は、マトリックス状に配置された複数の画素からなる表示領域Vを備えている。図1の右上に拡大して示すように、表示領域Vには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色画素が周期的に配置されており、各画素が出射する表示光によりフルカラーの画像が表示される。なお、各画素は発光画素であるが、画素と称する。また、カラー表示を行う表示パネルに限定するものではなく、トップエミッション型の有機EL表示パネルであれば良く、例えば、モノクロ表示を行う表示パネルであっても良い。
表示領域Vは、縦長の長方形をなしており、図1を含む各図においては、当該縦方向をY軸方向とし、縦方向よりも短い横方向をX軸方向と定義している。また、表示パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、Y軸(+)、(−)方向を上下方向とし、X軸(+)、(−)方向を左右方向としている。
【0020】
詳しくは後述するが、表示装置100は、素子基板1側に略白色光を出射する複数の画素を形成し、対向基板17側に赤緑青の各色カラーフィルターを配置することにより、RGBの各色画素を形成した、「白色発光+カラーフィルター方式」によるトップエミッション型の有機EL表示パネルである。
従来、これらの画素における発光輝度の均一化を図るために、液滴吐出法よりも、有機薄膜層の膜厚の均一化を図ることができるコート法を用いることが検討されていたが、有効な製造方法は見当たらなかった。
これに対して、表示装置100の製造方法によれば、後述の特徴ある構成、および方法によって、液滴吐出法とコート法とを組み合せることを実現し、優れた表示品質の光学装置を製造することができる。
【0021】
また、表示パネル18において、素子基板1が対向基板17から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、例えば、ポリイミドフィルムの基材に鉄箔の配線などが形成された柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板の略称である。また、フレキシブル基板20には、駆動用IC(Integrated Circuit)21が実装され、その端部には、専用のコントローラーや、外部機器(いずれも図示せず)と接続するための複数の端子が形成されている。
表示パネル18は、フレキシブル基板20を介して、外部機器から電力や画像信号を含む制御信号の供給を受けることにより、表示領域Vに画像や文字などを表示する。
【0022】
「表示パネルの概略構成」
図2は、図1のi−i断面における側断面図である。
続いて、表示パネル18の概略構成について説明する。
表示パネル18は、素子基板1、素子層2、平坦化層4、反射層5、画素電極6、隔壁7、電気光学層としての有機EL層8、共通電極9、電極保護層10、緩衝層11、ガスバリア層12、充填剤13、CF層14、対向基板17などから構成されている。また、素子基板1と対向基板17とに挟持された部位のことを機能層16という。換言すれば、素子層2からCF層14までの積層構造を機能層16という。
素子基板1は、無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。なお、この構成に限定するものではなく、樹脂基板を用いても良い。また、トップエミッション型であるため、光透過性が低い材料を用いても良く、例えば、金属基板を用いる構成であっても良い。
素子層2には、各画素をアクティブ駆動するための画素回路が形成されている。画素回路には、TFT(Thin Film Transistor)からなる画素を選択するための選択トランジスターや、有機EL層8に電流を流すための駆動トランジスター3などが含まれており、画素ごとに対応して形成されている。なお、画素回路は、好適例として、活性層に低温ポリシリコンを用いているが、アモルファスシリコンを活性層として用いた構成であっても良い。
【0023】
素子層2の上層(Z軸(−)方向)には、例えば、アクリル樹脂などからなる絶縁層である平坦化層4が形成されている。
平坦化層4の上層には、画素ごとに区画されて、反射層5と、画素電極6とがこの順番で積層されている。
反射層5は、例えば、アルミニウムなどの反射性を有する金属からなる反射層であり、有機EL層8から素子基板1側に向かう光を反射して、表示に寄与する光にする。
画素電極6は、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどの透明電極から構成されており、画素ごとに素子層2の駆動トランジスター3のドレイン端子と平坦化層4を貫通するコンタクトホールにより接続されている。なお、本実施形態では、好適例として、反射層5と画素電極6との間に、SiO2などの透明な無機絶縁層を介在させているが、この構成に限定するものではなく、反射電極として機能する構成であれば良い。例えば、反射層5を省略して、画素電極6のみをアルミニウムなどの反射性の導電材料によって形成することであっても良い。または、無機絶縁層を介在させることなく、反射層5の上に、画素電極6を直接形成することであっても良い。
【0024】
隔壁7は、光硬化性の黒色樹脂などから構成され、平面的に各画素を格子状に区画している。なお、素子層2における駆動トランジスター3を含む画素回路は、光による誤動作を防止するために、平面的に隔壁と重なるように配置されている。
なお、図2では、好適例として有機材料からなる隔壁7(第1隔壁)によるシングルバンク構成としているが、例えば、さらに無機材料からなる低い隔壁(第2隔壁)を備えたダブルバンク構成としても良い。ダブルバンク構成の場合、隔壁7(第1隔壁)の下層に、画素電極6の周縁部を覆うSiO2などの無機材料膜からなる第2隔壁を形成し、第2隔壁から露出した部分が開口部となる。
【0025】
また、隔壁7の上面には、本発明における特徴ある構成の一つである撥水親油層が形成されているが図2では、省略している。
複数層の有機機能層としての有機EL層8は、正孔注入層や、発光層などを含む複数の有機機能層から形成された有機EL発光層である。図2において、有機EL層8は、画素電極6、および隔壁7を覆う一層の構成となっているが、実際は、各部位を覆って形成された有機薄膜層と、隔壁7で区画された区画領域内に形成された有機薄膜層とが、混在した状態となっている。
好適例における有機EL層8は、正孔注入層と、発光層と、電子注入層とを、この順番に積層した構成となっている。または、正孔注入層と発光層との間に、正孔輸送層をさらに備えた構成であっても良い。
【0026】
好適例における正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)を用いる。また、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
好適例における正孔輸送層(中間層)の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、トリフェニルアミン系ポリマーを用いても良い。
【0027】
発光層の材料としては、略白色の蛍光、または燐光を発光する発光材料を用いることが好ましい。または、有機EL層8R,8G,8Bごとに、赤色、緑色、青色の蛍光、または燐光を発光する発光材料を用いても良い。
好適例としては、略白色、赤色、緑色、青色に対応したポリオレフィン系ポリマー蛍光材料を用いる。または、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)などを用いても良い。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
電子注入層の材料としては、仕事関数が小さい材料が好ましく、好適例では、例えば、カルシウムを用いる。
【0028】
共通陰極としての共通電極9は、MgAgなどの金属を、光を透過するようにごく薄く成膜した金属薄膜層であり、全画素に跨る有機EL層8を覆って形成されている。
陰極保護層としての電極保護層10は、SiO2や、Si3N4、SiOxNyなどの高密度で、かつ、透明性の高い材質から構成されており、共通電極9を覆って形成することにより、有機EL層8へ水分などが浸入することを防止している。
緩衝層11は、熱硬化性のエポキシ樹脂などの透明な有機緩衝層である。
ガスバリア層12は、電極保護層10と同様な材質で構成されたガスバリア層であり、緩衝層11をさらに覆って形成することにより、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防止している。
充填剤13は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる透明な接着層であり、ガスバリア層12とCF層14との間の凹凸面に充填されるとともに、両者を接着する。また、表示パネル18の周縁部から、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防ぐ機能も果たす。
【0029】
対向基板17は、透明な無機ガラスから構成されており、好適例として、無アルカリガラスを用いている。また、対向基板17における有機EL層8側(Z軸(+)側)には、CF層14が形成されている。
CF層14には、赤色カラーフィルター14r、緑色カラーフィルター14g、青色カラーフィルター14bが画素配置と同様に配置されている。詳しくは、各色のカラーフィルターは、それぞれが対応する画素電極6と重なるように配置されており、各カラーフィルター間には、ハッチングで示した遮光部が形成されている。遮光部は、平面的に隔壁7と重なるように格子状に形成されており、光学的には、ブラックマトリックスの機能を果たす。
そして、対向基板17と素子基板1とは、対向基板17の周縁部に形成されたシール剤15によって接着および封止されている。シール剤15としては、エポキシ系の接着剤や、紫外線硬化樹脂などを用いる。
【0030】
このように構成された各画素からは、カラーフィルターの色調に対応した表示光が出射される。例えば、赤色画素の場合、有機EL層8で放射された白色光は、赤色カラーフィルター14rによって赤色光が選択されて、赤色の表示光として対向基板17から出射される。また、緑色、青色の画素においても同様である。
これにより、表示領域Vでは、対向基板17から出射される複数のカラー画素からの表示光によりフルカラーの画像が表示されることになる。
【0031】
「素子基板の詳細な構造」
図3(a)は素子基板1の平面図であり、(b)は(a)のj−j断面における側断面図である。
ここでは、素子基板1の平面レイアウト、および有機EL層8を含む積層構造について、詳細に説明する。
図3(a)は、電極保護層10までが形成された状態の素子基板1の平面図である。当該図に示すように、隔壁7によって格子状に区画された複数の領域の各々を区画領域(画素)Pとしており、各区画領域Pには、Y軸方向に長い楕円状の画素電極6が配置されている。なお、画素電極6の平面形状は、楕円状に限定するものではなく、トラック形状や、長方形、円であっても良い。
【0032】
図3(b)は、(a)のj−j断面における側断面図であり、1つの画素を長手方向(Y軸方向)に沿って切断した状態を示している。
当該図に示すように、有機EL層8は、正孔注入層81、発光層83、電子注入層84から構成されている。
正孔注入層81は、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
発光層83は、略白色光を放射する発光層であり、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って形成されている。
ここで、隔壁7の上面には、本発明における特徴ある構成の一つである撥水親油層31が形成されている。撥水親油層31は、水性溶液をはじいて、油性溶液になじむ機能を有している。
電子注入層84は、真空蒸着法により、発光層83を覆って全面に形成されている。
このように、有機EL層8は、区画領域P内に形成された正孔注入層81と、隔壁7を含む各部を覆って形成された発光層83、および電子注入層84とが、混在した積層構造となっている。
また、図2で説明した通り、電子注入層84の上には、共通電極9と電極保護層10とが、この順番で、それぞれ全面に形成されている。
【0033】
「表示パネルの製造方法」
図4は、表示パネルの製造工程を示すフローチャート図である。図5(a)〜(c)は、製造工程における一態様を示す図である。図6(a),(b)は、製造工程における一態様を示す図である。
ここでは、表示パネル18の製造方法について、有機EL層8の工程を中心に説明する。
【0034】
まず、ステップS1では、フォトリソ法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの周知の製造方法を用いて、画素電極6までが作り込まれた素子基板1を形成する。換言すれば、画素電極6までが形成された素子基板1を準備する。
ステップS2では、フォトリソ法を用いて、格子状の隔壁7を形成する。詳しくは、前述した光硬化性の樹脂を素子基板1の全面にスピンコート法などにより塗布した後、格子状のマスクを用いて露光し、現像することによって格子状の隔壁7を形成する。なお、好適例では、黒色の光硬化性樹脂を用いている。
これにより、図3(a)に示すように、複数の画素電極6を1つずつに区画する隔壁7が形成される。換言すれば、表示領域Vを複数の区画領域Pに区画する隔壁7が形成される。
ステップS3では、画素電極6、および隔壁7を含む表示領域Vの露出面に親液化処理を施す。詳しくは、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。この処理により、画素電極6、および隔壁7を含む表示領域Vの露出面に水酸基が導入されて親液性が付与される。この状態が、図5(a)に示されている。
【0035】
ステップS4では、図5(b)に示すように、素子基板1上に、転写フィルム130を重ねた状態(準備体)とし、転写法を用いて、隔壁7の上面に撥水親油膜を形成する。
ここで、転写フィルム130は、基材となる樹脂フィルム上の一面に、撥水親油膜131を形成(塗布)したフィルム部材である。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ナイロン系フィルム、フッ素樹脂フィルムなどを用いることができる。また、撥水親油膜131としては、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかを用いることができる。
本実施形態では、好適例として、樹脂フィルムとして、厚さ約20μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用い、当該フィルム上に、撥水親油膜131を約80nmの厚さで形成したものを転写フィルム130としている。
【0036】
そして、当該図に示すように、隔壁7面を上にした状態の素子基板1上に、撥水親油膜131側を下にして転写フィルム130を重ねて準備体としている。
本実施形態では、好適例として、この準備体をラミネート装置でラミネートすることにより、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する。なお、図5(b)では、ラミネート装置における伝熱性のあるシリコンゴムなどのエラストマーから構成された加圧ローラー61,62のみを図示している。また、ラミネートは転写法の一種である。具体的なラミネート条件としては、加圧ローラー61,62の温度を約130℃とし、準備体の搬送速度(ラミネート速度)を0.5m/minとした。
なお、ローラーを用いたラミネート法に限定するものではなく、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成することが可能な転写法であれば良い。例えば、準備体の上方から加熱した平板を押し当てて、隔壁7の上面に撥液層を選択的に形成する方法であっても良い。
これにより、図5(c)に示すように、隔壁7の上面に選択的に撥水親油層31が形成されることになる。なお、この撥水親油層31は、撥水親油膜131の一部が転写されたものである。
また、隔壁7の上面とは、下底が長く、上底が短い略台形状をなした隔壁7の断面形状における上底のことを指しており、実際は、曲面を含んだ凸状となっている。
【0037】
ステップS5では、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、各区画領域P内に、正孔注入層81を形成する。なお、正孔注入層81の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、液滴吐出装置を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81を構成する材料を含有した水性溶液を吐出する。なお、インクジェット法に限定するものではなく、所定の位置に溶液を吐出可能な塗布方法であれば良い。例えば、ジェットディスペンサー法や、ニードルディスペンサー法などのディスペンサー法を用いても良い。
図5(c)には、液滴吐出装置のノズル510から溶液d1が吐出されて、区画領域P内に着弾し、凸状(水玉状)の溶液溜りu1となった状態が示されている。
ここで、溶液溜りu1が凸状となるのは、区画領域Pの底部を形成する画素電極6などが親液性を有するとともに、撥水親油層31が水性の溶液に対して撥液性を有しているからであり、充填された溶液は、その表面張力によって水玉状の膨らみを持って区画領域Pに溜まることになる。
【0038】
乾燥工程では、真空乾燥と熱処理を行う。まず、溶液が塗布された状態の素子基板1を真空チャンバーに移して、真空乾燥を行う。これにより、溶液中の溶媒の沸点が下がり、当該溶媒が低温で蒸発することになるため、溶質が析出して正孔注入層が形成される。さらに、残存する溶媒を除去するために熱処理を行う。好適例では、窒素ガス雰囲気下において、約200℃で約10分間の熱処理を行う。
なお、乾燥工程において、素子基板1を加熱しても良い。例えば、当該基板をホットプレート上に載せて加熱する方法や、表示領域Vの上方から赤外線ランプを照射する方法などを採用することができる。また、これらの方法を組み合せても良い。このような方法によれば、より効率的に乾燥を行うことができる。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図5(c)において点線で示すように、区画領域Pの底部に、画素電極6を覆う正孔注入層81が形成される。
【0039】
ステップS6では、スピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆う発光層83を形成する。なお、発光層83の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、発光層83を構成する材料を含有した油性溶液を塗布する。
ここで、隔壁7の上面に形成されている撥水親油層31は、油性溶液になじむため、発光層の溶液をはじくことなく隔壁7を覆って、スピンコート法による略均一な膜厚の発光層83を形成することができる。なお、上記説明では、好適例としてスピンコート法を用いているが、スピンコート法に限定するものではなく、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法などのコート法を用いても良い。
また、乾燥工程は、ステップS5での説明と同様である。詳しくは、真空乾燥と熱処理を行う。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図6(a)に示すように、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、全面に発光層83が形成される。
【0040】
ステップS7では、真空蒸着法を用いて、発光層83を覆って、カルシウムからなる電子注入層84を形成する。
ステップS8では、真空蒸着法を用いて、電子注入層84を覆って、MgAgからなる共通電極9を形成する。
ステップS9では、CVD法を用いて、共通電極9を覆って、SiO2からなる電極保護層10を形成する。この状態が図6(b)に示されている。なお、図6(b)は、図3(b)と同一図面である。
【0041】
また、ステップS9に続けて、スピンコート法や、CVD法などを用いて、熱硬化性のエポキシ樹脂からなる緩衝層11や、SiO2からなるガスバリア層12などを形成して、図2に示す、素子基板1が完成する。
そして、積層構造が完成した素子基板1と別途製造された対向基板17とを充填剤13や、シール剤15を用いて貼り合せて、表示パネル18が完成する。
【0042】
「好適例における寸法」
上述した好適例による各部の寸法について、図3を用いて紹介しておく。
まず、区画領域の「長さ(Y軸方向)×幅(X軸方向)」を「約300μm×約150μm」とした。
また、画素電極6の長さを約200μmとし、幅を約100μmとした。
また、隔壁7の高さ(厚さ)を約3μmとした。
また、撥水親油層31の厚さを約80nmとした。
【0043】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
この製造方法によれば、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成した後、液滴吐出法を用いて、区画領域Pごとに、正孔注入層81の溶液を塗布している。
前述したように、正孔注入層81は、一般的に電気抵抗が低く、スピンコート法を用いて、隔壁7を覆って全面塗布するとクロストークの原因となるため、区画領域ごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて塗布する方が適している。
このため、正孔注入層81の形成工程では、液滴吐出法を用いており、水溶性の正孔注入層の溶液は、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の撥水機能によってはじかれて、画素間に塗布されることなく、区画領域Pごとに塗り分けられる。
そして、発光層の溶液は、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆って全面に塗布される。ここで、発光層の溶液は、油性であるため、隔壁7の上面に形成された撥水親油層31の親油機能によりはじかれることなく、スピンコート法により、隔壁7の上面も含めて塗布することができる。
つまり、撥水親油層31の機能を使い分けることによって、スピンコート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された表示装置100は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、本実施形態に係る製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の表示装置100を製造することができる。
【0044】
換言すれば、コート法による発光層83の形成を実現したことにより、当該層の膜厚の均一性が高められ、各画素の発光輝度の均一化が図られるため、表示装置100の表示品質を高めることができる。
従って、コート法を効果的に活用した表示装置100の製造方法を提供することができる。
【0045】
(実施形態2)
図7(a)は、実施形態2に係る素子基板の平面図であり、図3(a)に対応している。図7(b)は(a)におけるk−k断面の断面図であり、図3(b)に対応している。
以下、本発明の実施形態2に係る表示装置について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0046】
本実施形態の表示装置は、実施形態1の素子基板1とは、異なる構成の素子基板1bを備えている。詳しくは、有機EL層8が正孔輸送層82を加えた構成となっている点が、実施形態1の素子基板1とは異なる。また、当該構成の変更に伴い製造方法の一部も異なっている。それ以外は、実施形態1での説明と略同様である。なお、素子基板1bとは、本実施形態における素子基板1上に形成された複数層の積層構造体の全体を指している。
まず、図7(a)に示された素子基板1bの平面態様は、図3(a)の実施形態1の平面態様と同様である。
また、図7(b)は図3(a)におけるj−j断面と同一部分の断面図であり、当該図に示すように、実施形態2に係る有機EL層8は、正孔注入層81、正孔輸送層82、発光層83、電子注入層84から構成されている。
【0047】
正孔注入層81は、実施形態1と同様に、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
そして、正孔輸送層82は、コート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って形成されている。
また、発光層83は、RGBの色光ごとの発光層が、液滴吐出法により、区画領域Pごとに形成されている。
ここで、隔壁7の上面には、実施形態1と同様に撥水親油層31が形成されている。また、本実施形態では、隔壁7の上面における正孔輸送層82上に、撥水撥油層32がさらに形成されている点が、実施形態1と異なっている。
また、電子注入層84は、真空蒸着法により、発光層83、および隔壁7を覆って全面に形成されている。
このように、有機EL層8は、区画領域P内に形成された正孔注入層81、および発光層83と、隔壁7を含む各部を覆って形成された正孔輸送層82、および電子注入層84とが、混在した積層構造となっている。また、これらの積層構造以外は、実施形態1での構成と同様である。
【0048】
「表示パネルの製造方法」
図8は、実施形態2に係る表示パネルの製造工程を示すフローチャート図であり、図4に対応している。図9(a)〜(c)は、製造工程における一態様を示す図であり、図5,6に対応している。
ここでは、表示パネル18の製造方法について、有機EL層8の工程を中心に説明する。なお、図4の工程と同一の工程については、重複する説明は省略する。
【0049】
まず、ステップS11の画素電極形成工程から、ステップS15の正孔注入層形成工程までは、図4のステップS1〜ステップS5までの各工程と同一である。
ステップS16では、スピンコート法を用いて、正孔注入層81、および隔壁7を覆う正孔輸送層82を形成する。なお、正孔輸送層82の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
まず、溶液の塗布工程では、スピンコート法により、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、正孔輸送層82を構成する材料を含有した油性溶液を塗布する。
ここで、隔壁7の上面に形成されている撥水親油層31は、油性溶液になじむため、正孔輸送層の溶液をはじくことなく隔壁7を覆って、スピンコート法による略均一な膜厚の正孔輸送層82を形成することができる。なお、スピンコート法に限定するものではなく、他のコート法を用いても良いことは、実施形態1での説明と同様である。
また、乾燥工程は、実施形態1での説明と同様である。詳しくは、真空乾燥と熱処理を行う。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図9(a)に示すように、正孔注入層81、および隔壁7を覆って、全面に正孔輸送層82が形成される。なお、正孔輸送層82には、均一な絶縁性が要求されるため、有機EL層8において、発光層83に次いで、膜厚の均一性が求められている。
【0050】
ステップS17では、素子基板1上に、転写フィルムを重ねた状態とし、転写法を用いて、隔壁7の上面に撥水撥油層32を形成する。転写フィルムは、基材となる樹脂フィルム上の一面に、撥水撥油膜を形成(塗布)したフィルム部材である。
なお、具体的には、図5(b)で説明したラミネート法を用いて、図9(b)に示すように、隔壁7の上面における正孔輸送層82上に、撥水撥油層32を形成する。転写フィルムの材質や、ラミネート条件については、実施形態1での説明と同様である。
また、撥水撥油膜としては、フッ素系化合物、またはケイ素系化合物を含有した撥液剤を用いることができる。本実施形態では、好適例として、住友スリーエム社製のノベック(登録商標)EGC-1720を用いている。
【0051】
ステップS18では、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、各区画領域P内に、発光層83を形成する。なお、発光層83の形成工程は、溶液の塗布工程と、乾燥工程とを含んでいる。
溶液の塗布工程では、液滴吐出装置を用いて、区画領域Pごとに、発光層83を構成する材料を含有した油性溶液を吐出する。詳しくは、図7(a)に示すように、画素列ごとにRGBの各色に対応した溶液を塗布する。なお、インクジェット法に限定するものではなく、所定の位置に溶液を吐出可能な塗布方法であれば良いことは、実施形態1での説明と同様である。
図9(b)には、液滴吐出装置のノズル520から溶液d2が吐出されて、区画領域P内に着弾し、凸状(水玉状)の溶液溜りu2となった状態が示されている。
ここで、溶液溜りu2が凸状となるのは、撥水撥油層32が油性の溶液に対して撥液性を有しているからであり、充填された溶液は、その表面張力によって水玉状の膨らみを持って区画領域Pに溜まることになる。
また、乾燥工程については、実施形態1(ステップS5)での説明と同様である。
乾燥工程が終了すると、溶液中の溶媒が飛ばされて、図9(b)において点線で示すように、区画領域Pの底部側における正孔輸送層82の上に、発光層83が形成される。
【0052】
ステップS19では、真空蒸着法を用いて、発光層83、および隔壁7を覆って、カルシウムからなる電子注入層84を形成する。
そして、ステップS20の共通電極形成工程、およびステップS21の電極保護層形成工程は、図4のステップS8〜ステップS9の各工程と同一である。
また、ステップS21に続けて、緩衝層11や、ガスバリア層12などを形成して素子基板1bが完成すること、および別途製造された対向基板17を充填剤13や、シール剤15を用いて貼り合せて、表示パネル18が完成することなども、実施形態での説明と同様である。
【0053】
なお、図2において、実施形態2の素子基板1bを適用すると、RGBの各色を発光する画素に、さらにRGBの各色カラーフィルターを被せた構成となるが、この構成によれば、高いコントラストを確保することができる。詳しくは、トップエミッション型である表示パネル18は、対向基板17から入射する外光が反射層5で反射された反射光によって、コントラストが低下してしまうという問題を有しているが、カラーフィルターを備えることによって、発光色以外の反射率を抑えられるため、高コントラストを確保することが可能となる。
また、表示パネル18の形式としては、トップエミッション型に限定するものではなく、ボトムエミッション型として構成しても良い。この構成の場合、反射層5を削除し、共通電極9を反射性に優れたアルミニウムなどから構成された反射電極とすれば良い。
これによれば、素子基板1側からRGBの各色の表示光を出射するボトムエミッション型の表示パネルを構成することができる。
【0054】
上述した通り、本実施形態に係る光学装置、および製造方法によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
この製造方法によれば、撥水親油層31と、撥水撥油層32とが有する機能を使い分けることにより、有機EL層8の中でも膜厚の均一性が求められる正孔輸送層82を、液滴吐出法よりも均一な膜圧が得られるスピンコート法を用いて形成している。また、スピンコート法を用いて形成するとクロストークが発生する恐れがある正孔注入層81を、区画領域Pごとに塗り分け可能な液滴吐出法を用いて形成している。
つまり、撥水親油層31と、撥水撥油層32とを効果的に使い分けることにより、コート法と液滴吐出法とのうち、各有機機能層の特性に応じた最適な方法を選択した製造方法となっている。
よって、この製造方法によって製造された表示装置は、クロストークの発生が低減されるとともに、各発光画素の発光輝度も均一化されている。
従って、本実施形態に係る製造方法によれば、液滴吐出法とコート法とを組み合せることにより、優れた表示品質の表示装置を製造することができる。
【0055】
(電子機器)
図10は、上述の表示装置を搭載した携帯電話を示す斜視図である。
上述した表示装置100は、例えば、電子機器としての携帯電話200に搭載して用いることができる。
携帯電話200は、本体部350と、当該本体部に対して開閉自在に設けられた表示部370とを備えるとともに、実施形態1に係る表示装置100を内蔵している。詳しくは、表示装置100は、表示部370に組み込まれており、表示パネル18が表示画面となっている。また、本体部350には、複数の操作ボタンを有する操作部365が設けられている。
つまり、携帯電話200は、優れた表示品質の表示装置100を搭載している。従って、鮮明な表示画面を備えた携帯電話200を提供することができる。
なお、表示パネル18の素子基板には、実施形態2に係る素子基板1bを用いても良く、この場合であっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
また、携帯電話の態様は、図10に示した折畳み式に限定するものではなく、表示パネルを備えた携帯電話であれば良い。
例えば、本体部350に対して表示部370が折畳み、および旋回可能に設けられた携帯電話であっても良い。または、一体型の携帯電話や、一体型の本体部に操作部が収納されているスライド式の携帯電話であっても良い。
また、電子機器としては、携帯電話に限定するものではなく、液晶パネルを備えた電子機器であれば良い。
例えば、カーナビゲーションシステム用の表示装置や、PDA(Personal Digital Assistants)、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器に用いることができる。
これらの電子機器によれば、高品位の表示を得ることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0058】
(変形例1)
図3(b)、および図7(b)を用いて説明する。
上記各実施形態では、有機EL層8の積層構造を正孔注入層81、発光層83、電子注入層84からなる3層構造、または正孔注入層81、正孔輸送層82、発光層83、電子注入層84からなる4層構造として説明したが、この構成に限定するものではない。
例えば、正孔注入層と、発光層とからなる2層構成であっても良いし、発光層と、電子注入層との間に、さらに正孔阻害層を設けた構成であっても良い。
これらの構成であっても、各有機機能層の特性に応じて、撥水親油層の機能、または撥水撥油層との組み合せによる機能を効果的に使い分けることにより、コート法と液滴吐出法とのうち、最適な方法を選択した製造方法を実現することができる。
また、この製造方法であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0059】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る素子基板の平面図であり、図3(a)に対応している。
上記各実施形態では、隔壁7によって、1つの画素電極6ごとに、1つの区画領域Pが形成されるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。例えば、図11に示すように、複数の画素電極6に対して、1つの区画領域Pが形成される隔壁77構成であっても良い。
変形例2の素子基板51は、実施形態1の隔壁7(図3)とは異なる隔壁77を備えている。詳しくは、Y軸方向に隣り合う2つの画素電極6に対して、1つの区画領域P(共通バンク)が形成される隔壁77構成となっている。このため、区画領域Pの縦方向(Y軸方向)の長さが、図3の区画領域Pに比べて長くなっている。この点以外は、実施形態1での説明と同様である。
【0060】
この構成であっても、上記各実施形態における製造方法を適用可能であることから、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
なお、2つの画素電極6に対して1つの区画領域Pが形成される構成に限定するものではなく、3つ以上の画素電極6に対して1つの区画領域Pが形成されることであっても良い。または、表示領域Vの周縁部では複数の画素電極6に対して1つの区画領域Pを形成し、中央部では1つの画素電極6に対して1つの区画領域Pを形成するというように、変化させても良い。これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0061】
(変形例3)
図12(a)は、変形例3に係る光学装置としてのCF基板の平面図であり、図3(a)に対応している。図12(b)は、(a)におけるm−m断面の側断面図であり、図3(b)に対応している。
上記各実施形態では、有機ELパネルである表示パネル18を用いて説明したが、光学装置としてのCF基板115に適用することであっても良い。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
変形例3に係るCF基板115は、液晶パネルや、トップエミッション型の有機ELパネルに用いられるカラーフィルターが形成された基板である。このため、画素電極6や、素子層2(図2)などは、形成されていない。
【0062】
CF基板115は、透明基板111、色フィルター層181、隔壁7、保護コート層185などから構成されている。
透明基板111は、透明性を有する無機、または有機基板である。
隔壁7は、CF基板115が組み込まれる液晶パネルの平面的な画素配置に対応して、各区画領域Pをマトリックス状に区画するように、格子状に形成されている。
色フィルター層181は、図12(a)に示すように、RGBの各色の色フィルターが、区画領域P列ごとに周期的に繰り返す、縦ストライプに形成されている。
保護コート層185は、色フィルター層181、および隔壁7を覆って、全面に形成された透明樹脂からなる保護コート層である。
【0063】
このCF基板115の製造にも、実施形態1の製造方法の一部を適用することが可能である。以下、図4のフローチャートと比較しながら説明する。
詳しくは、まず、透明基板111上に、格子状の隔壁7を形成した後、図4のステップS3と同様に、透明基板111、および隔壁7の露出面に、親液化処理を施す。
次に、ステップS4と同様に、隔壁7の上面に、撥水親油層31を形成する。
そして、ステップS5と同様に、区画領域Pごとに、各色の色フィルター層ごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布し、乾燥する。
最後に、色フィルター層181、および隔壁7を覆って、光透過性を有する保護コート層185を構成する材料を含有した油性溶液をスピンコート法により塗布する。なお、スピンコート法に限定するものではなく、他のコート法を用いても良いことは、実施形態1での説明と同様である。
【0064】
このように、撥水親油層31の機能を効果的に活用することによって、水性溶液を用いる色フィルター層を液滴吐出法により各区画領域Pに塗り分けるとともに、油性溶液を用いる保護コート層をコート法により、全面に塗布することができる。
特に、従来、図12(b)の撥水親油層31を、撥油性も有する撥水撥油層で構成する方法が一般的であったが、この構成の場合、保護コート層185を形成する前に、撥水撥油層を除去する必要があった。これに対して、変形例3の製造方法によれば、撥水親油層31を除去することなく、保護コート層185を形成することが可能であるため、製造効率が良い。
従って、製造効率に優れたCF基板115の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,51…基板としての素子基板、6…画素電極、7,77…隔壁、8…複数層の有機機能層としての有機EL層、9…共通陰極としての共通電極、18…表示パネル、31…撥水親油層、32…撥水撥油層、81…正孔注入層、82…正孔輸送層、83…発光層、84…電子注入層、100…光学装置としての表示装置、111…透明基板、115…光学装置としてのCF基板、181…色フィルターとしての色フィルター層、185…保護コート層、200…電子機器としての携帯電話、d1,d2…液滴、u1,u2…溶液溜り、P…区画領域、V…表示領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、
前記画素電極、および前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域に対して、前記有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って、前記有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、
前記画素電極、および前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域に対して、前記有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って、前記有機機能層としての正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、
前記隔壁の上面における前記正孔輸送層の上に、撥水撥油層を形成する工程と、
前記区画領域ごとに、前記有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記コート法は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記撥水親油層は、前記隔壁の上面に、前記撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、前記フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記撥水親油層は、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記正孔注入層を構成する材料は、PEDOT/PSSを含むとともに、前記材料を含有した前記溶液は、水性溶液であり、
前記発光層を構成する材料を含有した前記溶液は、油性溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項7】
蒸着法により、前記発光層を覆って、前記有機機能層としての電子注入層を形成する工程と、
蒸着法により、前記電子注入層を覆って、共通陰極を形成する工程とを、さらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記正孔輸送層を構成する材料を含有した前記溶液は、油性溶液であり、
前記撥水撥油層は、前記隔壁の上面に、フッ素系の前記撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、前記フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成された光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記複数の色フィルターを区画する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、複数の前記区画領域に対して、前記有機材料を含有した前記複数の色フィルターごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記複数の色フィルター、および前記隔壁を覆って、光透過性を有する保護コート層を構成する材料を含有した油性溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項10】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、
基板上に形成された前記発光画素の開口部となる画素電極と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁と、
前記隔壁の上面に形成された撥水親油層と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域ごとに形成された前記有機機能層としての正孔注入層と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って形成された前記有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【請求項11】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、
基板上に形成された前記発光画素の開口部となる画素電極と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁と、
前記隔壁の上面に形成された撥水親油層と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域ごとに形成された前記有機機能層としての正孔注入層と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って形成された前記有機機能層としての正孔輸送層と、
前記隔壁の上面における前記正孔輸送層の上に形成された撥水撥油層と、
前記区画領域ごとに形成された、前記有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の光学装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、
前記画素電極、および前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域に対して、前記有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って、前記有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記発光画素の開口部となる画素電極を形成する工程と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁を形成する工程と、
前記画素電極、および前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域に対して、前記有機機能層としての正孔注入層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って、前記有機機能層としての正孔輸送層を構成する材料を含有した溶液をコート法により塗布する工程と、
前記隔壁の上面における前記正孔輸送層の上に、撥水撥油層を形成する工程と、
前記区画領域ごとに、前記有機機能層としての発光層を構成する材料を含有した溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記コート法は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記撥水親油層は、前記隔壁の上面に、前記撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、前記フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記撥水親油層は、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリル共重合体、水添石油樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記正孔注入層を構成する材料は、PEDOT/PSSを含むとともに、前記材料を含有した前記溶液は、水性溶液であり、
前記発光層を構成する材料を含有した前記溶液は、油性溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項7】
蒸着法により、前記発光層を覆って、前記有機機能層としての電子注入層を形成する工程と、
蒸着法により、前記電子注入層を覆って、共通陰極を形成する工程とを、さらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記正孔輸送層を構成する材料を含有した前記溶液は、油性溶液であり、
前記撥水撥油層は、前記隔壁の上面に、フッ素系の前記撥水親油層が形成されたフィルムをラミネートした後、前記フィルムを剥離することにより、転写形成されたものであることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
有機材料を含む複数の色フィルターが形成された光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記複数の色フィルターを区画する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁を含む露出部分に親液化処理を施す工程と、
前記隔壁の上面に、撥水親油層を形成する工程と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、複数の前記区画領域に対して、前記有機材料を含有した前記複数の色フィルターごとの水性溶液を液滴吐出法により塗布する工程と、
前記複数の色フィルター、および前記隔壁を覆って、光透過性を有する保護コート層を構成する材料を含有した油性溶液をコート法により塗布する工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項10】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、
基板上に形成された前記発光画素の開口部となる画素電極と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁と、
前記隔壁の上面に形成された撥水親油層と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域ごとに形成された前記有機機能層としての正孔注入層と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って形成された前記有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【請求項11】
複数層の有機機能層を有する発光画素を複数備えた光学装置であって、
基板上に形成された前記発光画素の開口部となる画素電極と、
複数の前記画素電極を区画する隔壁と、
前記隔壁の上面に形成された撥水親油層と、
前記隔壁によって区画された複数の領域の各々を区画領域としたときに、前記区画領域ごとに形成された前記有機機能層としての正孔注入層と、
前記正孔注入層、および前記隔壁を覆って形成された前記有機機能層としての正孔輸送層と、
前記隔壁の上面における前記正孔輸送層の上に形成された撥水撥油層と、
前記区画領域ごとに形成された、前記有機機能層としての発光層と、を少なくとも有することを特徴とする光学装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の光学装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−96375(P2011−96375A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246216(P2009−246216)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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