説明

光学装置、投影装置、および光学装置の製造方法

【課題】投影装置のレジストレーションを高精度に調整可能とする。
【解決手段】投影装置は、反射パネルユニット、プリズムユニット、および反射パネルユニットをプリズムユニットに固着する固着部材を有する光学装置を備える。反射パネルユニットは、反射型光変調素子を備える。プリズムユニットは、反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および偏光光学装置の出射光を入射して合成出力する色合成プリズムを備える。固着部材は、第1の面とその第1の面に交差する第2の面を有し、第1の面および第2の面がそれぞれ反射パネルユニットの第3の面およびプリズムユニットの第4の面に接着層を介して接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光学装置、投影装置、および光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置の1つとして、3板式の投射型表示装置(投影装置)が知られている。3板式の投影装置は、光源からの白色光をRGB(赤色、緑色、青色)の3原色光に分解し、各色光をそれぞれに対応して設けられた光変調素子に入射して変調し、変調された各色光を色(光)合成プリズムなどで光学的に合成して、スクリーン上に投射する。このような投影装置には、たとえば、光変調素子として透過型光変調素子を用いたものや、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたものが知られている。近年では、より高解像度化が可能な、反射型光変調素子を備えた反射型液晶パネル(反射パネルユニット)を用いた投影装置も実用化されている。
【0003】
反射パネルユニットを用いた投影装置の組み立てにおいては、RGBの各色光がスクリーン上の正位置で重ならずにずれる、いわゆるレジストレーションずれが生じないように、反射パネルユニットを、色合成プリズムなどに対する位置を調整したうえで、固定することがおこなわれている。反射パネルユニットの固定には、たとえば、半田や接着剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−197185号公報
【特許文献2】特開2007−264419号公報
【特許文献3】特開2007−199486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、反射パネルユニットを用いた投影装置では、その組み立て時に、反射パネルユニットをレジストレーションずれが生じないような位置に精度良く固定することができない場合があった。また、一旦固定した反射パネルユニットの位置が、投影装置の使用に伴う温度上昇による構成部品の熱膨張によってずれてしまい、レジストレーションずれが生じる場合があった。
【0006】
本技術は、このような点に鑑みてなされたものであり、レジストレーションが高精度に調整されて組み立てられ、かつ、使用時の温度上昇に起因したレジストレーションずれの発生を抑えた光学装置および投影装置を提供することを目的とする。また、そのような光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、反射パネルユニット、プリズムユニット、および反射パネルユニットをプリズムユニットに固着する固着部材を有する光学装置が提供される。反射パネルユニットは、反射型光変調素子を備える。プリズムユニットは、反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および偏光光学装置の出射光を入射して合成出力する色合成プリズムを備える。固着部材は、第1の面とその第1の面に交差する第2の面を有し、この第1の面および第2の面がそれぞれ反射パネルユニットの第3の面およびプリズムユニットの第4の面に接着層を介して接着される。
【0008】
さらに、上記課題を解決するために、光源、分離光学系、光学装置および投影部を備える投影装置が提供される。分離光学系は、光源からの出射光を波長帯域にしたがい分離する。光学装置は、分離光学系で分離された光を変調し、変調光を合成して出射する。光学装置は、反射パネルユニット、プリズムユニット、および反射パネルユニットをプリズムユニットに固着する固着部材を有する。反射パネルユニットは、反射型光変調素子を備える。プリズムユニットは、反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および偏光光学装置の出射光を入射して合成出力する色合成プリズムを備える。固着部材は、第1の面とその第1の面に交差する第2の面を有し、この第1の面および第2の面がそれぞれ反射パネルユニットの第3の面およびプリズムユニットの第4の面に接着層を介して接着される。投影装置の投影部は、光学装置からの出射光を投影出力する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、反射パネルユニットを準備する工程、偏光光学装置および色合成プリズムを備えるプリズムユニットを準備する工程、反射パネルユニットをプリズムユニットに固着する工程を有する光学装置の製造方法が提供される。反射パネルユニットをプリズムユニットに固着する際には、第1の面とその第1の面に交差する第2の面を有する固着部材を、第1の面および第2の面がそれぞれ接着層を介して反射パネルユニットの第3の面およびプリズムユニットの第4の面に対向するように配置する。そして、その反射パネルユニットを、固着部材の第1の面に沿って移動させ、または固着部材と共にプリズムユニットの第4の面に沿って移動させて、反射パネルユニットのプリズムユニットに対する位置を調整する。反射パネルユニットの位置調整後、反射パネルユニットおよびプリズムユニットを各面間の接着層で接着固定する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、レジストレーションが高精度に調整されて組み立てられ、かつ、使用時の温度上昇に起因したレジストレーションずれの発生を抑えた光学装置および投影装置が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】投影装置の構成例を示す図である。
【図2】光学装置の一例の斜視図である。
【図3】光学装置の一例の分解斜視図(その1)である。
【図4】光学装置の一例の分解斜視図(その2)である。
【図5】反射パネルユニットの一例の要部拡大図である。
【図6】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その1)である。
【図7】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その2)である。
【図8】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その3)である。
【図9】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その4)である。
【図10】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その5)である。
【図11】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その6)である。
【図12】反射パネルユニットの固着方法の説明図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は投影装置の構成例を示す図である。
投影装置1は、光源2、リフレクタ3、フライアイレンズ4、フライアイレンズ5、偏光ビームスプリッタ(偏光素子)6、コンデンサーレンズ7、分離合成光学系(後述の光学装置を含む)、および投影レンズ(投影部)16を有している。
【0013】
光源2は、たとえば、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどのHID(High Intensity Discharge)ランプであり、白色光を出射する。光源2は、リフレクタ3の焦点位置に配置され、リフレクタ3は、光源2から出射した白色光を反射して略平行光を生成する。
【0014】
リフレクタ3で反射した略平行光は、フライアイレンズ4およびフライアイレンズ5に入射し、偏光ビームスプリッタ6に出射される。フライアイレンズ4およびフライアイレンズ5は、後述する反射型光変調素子14に入射する光の照度を均一化する。
【0015】
偏光ビームスプリッタ6は、出射光の偏光軸を所定方向に揃える。たとえば、偏光ビームスプリッタ6は、s偏光とp偏光を含む光を入射して、p偏光を出射する。コンデンサーレンズ7は、偏光ビームスプリッタ6の出射光を入射して集光する。コンデンサーレンズ7を出射した白色光は、分離合成光学系に入射する。
【0016】
分離合成光学系は、コンデンサーレンズ7からの入射光をRGBの各色光に分離する光学系(分離光学系)を有し、当該光学系で分離した各色光を、それぞれに対応して設けられた反射型光変調素子14(14R,14G,14B)で空間変調した後に合成して、その出射光により投影画像を形成する。
【0017】
分離合成光学系は、ダイクロイックミラー8、ダイクロイックミラー9、ミラー(反射ミラー)10、フィールドレンズ11、反射型偏光素子12、光学補償素子13、反射型光変調素子14(14R,14G,14B)、および色合成プリズム15を有している。
【0018】
ダイクロイックミラー8およびダイクロイックミラー9は、RGBの各色光をその波長帯域により選択的に透過、または反射する。ダイクロイックミラー8は、赤色波長帯域の光を透過し、緑色波長帯域および青色波長帯域の光を反射する。ダイクロイックミラー9は、青色波長帯域の光を透過し、緑色波長帯域の光を反射する。これにより、白色光は、RGBの3原色に色分離される。ミラー10は、赤色波長帯域の光を反射する。反射型偏光素子12は、色分離された光束を偏光する。反射型光変調素子14Rは、赤色波長帯域の光を空間変調する。反射型光変調素子14Gは、緑色波長帯域の光を空間変調する。反射型光変調素子14Bは、青色波長帯域の光を空間変調する。
【0019】
ダイクロイックミラー8およびダイクロイックミラー9によって色分離された光束はそれぞれ、フィールドレンズ11に入射され、反射型偏光素子12に入射されて偏光された後、反射型光変調素子14R、反射型光変調素子14G、反射型光変調素子14Bに入射する。
【0020】
反射型光変調素子14R、反射型光変調素子14G、および反射型光変調素子14Bで光変調され、反射されたRGBの各色光は、光学補償素子13で光学補償(位相変調量の微調整)された後、反射型偏光素子12に入射する。光学補償素子13は、より好適な光学補償を得るため、対となる反射型光変調素子14に対して所定の傾きを有して設けられる。反射型光変調素子14から反射型偏光素子12に入射したRGBの各色光は、光変調の度合いにより、一部は透過して光源2の方向に戻り、一部は反射して色合成プリズム15に入射する。なお、光学補償素子13は、その材料として、たとえば、サファイア、水晶、TAC(トリアセチルセルロース)などの各種材料を用いることができる。
【0021】
色合成プリズム15は、緑色波長帯域の入射光を透過し、赤色波長帯域および青色波長帯域の入射光を投影レンズ16方向に反射するように構成されている。色合成プリズム15は、たとえば、複数のガラスプリズム(4つの略同形状の直角二等辺プリズム)を接合することによって構成されており(プリズムブロック)、各ガラスプリズムの接合面には、所定の光学特性を有する第1、第2の2つの干渉フィルタが形成されている。第1の干渉フィルタは、青色波長帯域の入射光を反射し、赤色波長帯域および緑色波長帯域の入射光を透過する。第2の干渉フィルタは、赤色波長帯域の入射光を反射し、緑色波長帯域および青色波長帯域の入射光を透過する。これにより、反射型光変調素子14R、反射型光変調素子14G、および反射型光変調素子14Bによって変調されたRGBの各色光は、色合成プリズム15で合成されて、投影レンズ16に入射する。
【0022】
投影レンズ16は、分離合成光学系からの出射光を所定の倍率に拡大してスクリーン(図示せず)に映像を投影する。
【0023】
次に、上記のような投影装置1が備える光学装置の一例について説明する。
図2は光学装置の一例の斜視図である。図3及び図4は光学装置の一例の分解斜視図である。
【0024】
光学装置100は、上記のダイクロイックミラー8、ダイクロイックミラー9、ミラー(反射ミラー)10、フィールドレンズ11とともに、投影装置1の分離合成光学系を構成する。光学装置100は、RGBに色分離された各色光を反射型光変調素子14で空間変調した後に合成して、その出射光により投影画像を形成する。
【0025】
光学装置100は、図2及び図3に示すように、プリズムユニット150、第1反射パネルユニット200a、第2反射パネルユニット200b、第3反射パネルユニット200cを備える。
【0026】
第1反射パネルユニット200aは、上記の光学補償素子13及び反射型光変調素子14Bを備え、青色波長帯域の光変調をおこなう。第2反射パネルユニット200bは、上記の光学補償素子13および反射型光変調素子14Gを備え、緑色波長帯域の光変調をおこなう。第3反射パネルユニット200cは、上記の光学補償素子13および反射型光変調素子14Rを備え、赤色波長帯域の光変調をおこなう。
【0027】
3つの反射パネルユニット200(第1反射パネルユニット200a、第2反射パネルユニット200b、第3反射パネルユニット200c)はそれぞれ、額縁状のパネルホルダ201に保持された、光学補償素子13および反射型光変調素子14(14B,14G,14R)を含むユニット(後述の光変調部205)を備える。さらに、反射パネルユニット200はそれぞれ、反射型光変調素子14に電気的に接続されたフレキシブルプリント基板202を備える。さらにまた、反射パネルユニット200はそれぞれ、パネルホルダ201の上縁部と下縁部にそれぞれ固着部材203を備える。固着部材203は、たとえば、直方体形状とされ、その一表面(側面)で、所定のパネルホルダ201の、所定の位置に、接着して固定される。
【0028】
なお、固着部材203のパネルホルダ201への接着には、種々の接着剤を用いることができる。固着部材203の接着には、たとえば、紫外線(Ultra Violet;UV)硬化型樹脂等の光硬化型樹脂を用いることができる。このような光硬化型樹脂を用いる場合、固着部材203には、その光硬化型樹脂の硬化に用いる光に対して透明な材料が用いられる。このような材料としては、たとえば、ガラスを挙げることができる。
【0029】
プリズムユニット150は、図4に示すように、色合成プリズム15と、色合成プリズム15の周囲三方(光の入射面)に配置された3つの偏光光学装置300を備える。色合成プリズム15は、複数のガラスプリズムが接合されたプリズムブロック110と、そのプリズムブロック110の偏光光学装置300が配置される面(光の入射面)にそれぞれ設けられた偏光板111およびガラス板112を備える。偏光光学装置300は、たとえば、その外形が略三角柱状(内部は中空)となるように構成され、その傾斜面に相当する部分に上記の反射型偏光素子12が設けられる。このような略三角柱状の偏光光学装置300は、傾斜面相当の部分と向き合う、交差2面相当の部分のうち、一方の面に相当する部分が色合成プリズム15の一の面に向けられて配置され、他方の面に相当する部分に、上記の反射パネルユニット200が取り付けられる(図2及び図3)。
【0030】
プリズムユニット150において、色合成プリズム15と3つの偏光光学装置300は、図4に示すように、上部支持プレート101と下部支持プレート102の間に挟まれ、上部支持プレート101と下部支持プレート102に支持されて固定される。3つの偏光光学装置300と下部支持プレート102の間には、色合成プリズム15に対する各偏光光学装置300の位置(高さ)を調節するスペーサプレート106が配置される。また、プリズムユニット150は、プリズム位置決め部品104によって投影レンズ16との位置関係が決められるようになっている。
【0031】
上部支持プレート101および下部支持プレート102には、図2〜図4に示すように、3つの反射パネルユニット200が取り付けられる位置にそれぞれ、固着部材103が配置される。固着部材103は、上部支持プレート101および下部支持プレート102の表面に接着固定されるとともに、上記の反射パネルユニット200の固着部材203に接着固定される。このような固着部材103により、3つの反射パネルユニット200がプリズムユニット150に固定(固着)される。
【0032】
なお、固着部材103の上部支持プレート101および下部支持プレート102の表面への接着、ならびに反射パネルユニット200の固着部材203への接着には、種々の接着剤を用いることができる。固着部材103の接着には、たとえば、UV硬化型樹脂等の光硬化型樹脂を用いることができる。このような光硬化型樹脂を用いる場合、固着部材103には、その光硬化型樹脂の硬化に用いる光に対して透明な材料が用いられる。このような材料としては、たとえば、ガラスを挙げることができる。
【0033】
反射パネルユニット200は、プリズムユニット150の組み立て後、レジストレーションの調整をおこない、固着部材203と上部支持プレート101および下部支持プレート102とに上記の固着部材103を接着することで、プリズムユニット150に固着される。
【0034】
ところで、反射パネルユニットを、上記のような固着部材103および固着部材203を用いずに、半田や、UV硬化型樹脂などの接着剤を用いて、プリズムユニットに固着することで、光学装置を組み立てる方法がある。このような光学装置の組み立て方法では、たとえば、次のようにして反射パネルユニットがプリズムユニットに固着される。
【0035】
即ち、反射パネルユニットは、レジストレーションずれが生じないように、その反射型光変調素子の画素面内方向(X,Y方向)とフォーカス方向(Z方向)の位置を調整(画素位置調整とフォーカス調整)しながら、プリズムユニットに固着される。その際、プリズムユニットには、反射パネルユニットを固着するための固着用部位(1箇所)を予め設けておき、反射パネルユニットは、所定の位置調整をおこなって、当該固着用部位に、半田や接着剤を用いて固着される。
【0036】
ここで、反射パネルユニットとプリズムユニットの間には、位置調整時に反射パネルユニットをX,Y,Z方向に移動させることができるように、一定のクリアランスが必要になる。反射パネルユニットの固着には、そのような位置調整に必要なプリズムユニット(固着用部位)とのクリアランスが確保されるように、一定の厚み(量)の半田や接着剤が用いられる。
【0037】
一方、組み立て後の光学装置を備える投影装置では、その構成によっては、その使用に伴う光学装置の温度上昇によってその構成部品や構成部材が熱膨張し、反射パネルユニットとプリズムユニット(色合成プリズム)の位置関係がずれ、レジストレーションずれが生じ得ることが知られている。
【0038】
固着部材103および固着部材203を用いず、上記のように反射パネルユニットをプリズムユニットの固着用部位に半田で固着した場合には、そのような投影装置の使用に伴う光学装置の温度上昇に起因したレジストレーションずれが比較的生じ難い。しかし、半田は、光学装置の組み立て時に反射パネルユニットの位置をレジストレーションずれが生じないように調整する際、一旦溶融(この間にレジストレーションが調整)された後に冷却されて固化される。半田を用いた時のレジストレーションの調整においては、このような半田冷却前後で反射パネルユニットの位置変動が比較的生じ易く、X,Y,Z方向の位置をすべて高精度に合わせることができず、レジストレーションの調整を高精度におこなうことができない場合がある。
【0039】
固着部材103および固着部材203を用いず、上記のように反射パネルユニットをプリズムユニットの固着用部位に接着剤で固着する場合には、接着剤をUV照射などで硬化しても、固着に半田を用いた時のような光学装置の組み立て時における反射パネルユニットの位置変動が比較的生じ難い。しかし、接着剤を用いた場合、投影装置の使用に伴う光学装置の温度上昇に起因したレジストレーションずれが比較的生じ易く、固着部位の接着剤の量が多くなるほど(接着剤の層が厚くなるほど)、そのようなレジストレーションずれが生じ易くなる。
【0040】
これに対し、上記のような固着部材103および固着部材203を用いると、高精度にレジストレーションを調整して光学装置100を組み立てることが可能になり、さらに、投影装置1の使用に伴う光学装置100の温度上昇に起因したレジストレーションずれの発生を抑えることが可能になる。以下、これらの点について、光学装置100の組み立て工程の一例とともに説明する。
【0041】
光学装置100の組み立てにおいては、上記の図3に示したような各部品が準備され、プリズムユニット150が組み立てられる。その際は、まず色合成プリズム15の周囲三方の光入射面(偏光板111およびガラス板112の配置面)にそれぞれ、反射型偏光素子12を含む偏光光学装置300を所定の向きで配置する。そして、これらの色合成プリズム15と偏光光学装置300を、スペーサプレート106とともに、上部支持プレート101と下部支持プレート102の間に挟み、固定する。たとえば、上部支持プレート101および下部支持プレート102と、偏光光学装置300とを、ねじ止めによって固定する。上部支持プレート101および下部支持プレート102には、プリズム位置決め部品104を取り付ける。たとえばこのようにして、光学装置100のプリズムユニット150が組み立てられる。
【0042】
また、光学装置100の組み立てにおいては、上記のようなプリズムユニット150とともに、上記の図2および図3、ならびに次の図5に示すような反射パネルユニット200が準備される。なお、図5は反射パネルユニットの一例の要部拡大図である。
【0043】
反射パネルユニット200は、図5に示すように、上記の光学補償素子13および反射型光変調素子14を含む光変調部205を備え、このような光変調部205がパネルホルダ201で保持される。フレキシブルプリント基板202は、光変調部205の反射型光変調素子14に電気的に接続されている。
【0044】
このようなアセンブリの、パネルホルダ201表面の所定位置に、光変調部205を挟んで一対の固着部材203を接着固定する。たとえば、固着部材203にガラス、接着剤にUV硬化型樹脂を用い、固着部材203を、UV硬化型樹脂を介してパネルホルダ201表面の所定位置に配置し、そこにUV照射をおこなう。UVは、ガラスの固着部材203を透過し、UV硬化型樹脂を硬化させる。これにより、パネルホルダ201に固着部材203を接着固定した反射パネルユニット200が得られる。
【0045】
このようにして得られた反射パネルユニット200を、上記のようにして組み立てられたプリズムユニット150に固着する。その際、反射パネルユニット200は、レジストレーションの調整をおこなって、その固着部材203、および固着部材103を用いて、組み立て後のプリズムユニット150に固着される。
【0046】
図6〜図12は反射パネルユニットの固着方法の説明図である。
なお、ここではプリズムユニット150の上部支持プレート101側での反射パネルユニット200の固着を例にして説明する。図6は反射パネルユニットとプリズムユニットの固着部の拡大斜視図である。図7は固着部材と反射パネルユニットおよび上部支持プレートとの固着部断面の一例の模式図である。図8〜図12は固着時のプリズムユニットの挙動を説明する図である。
【0047】
プリズムユニット150に反射パネルユニット200を固着する際は、図6に示すように、反射パネルユニット200の固着部材203と、上部支持プレート101の上面101aとに、接着剤(接着層)を介して固着部材103を配置する。固着部材103は、図7に示すように、その下面103aが、接着剤400aを介して上部支持プレート101の上面101aに対向するように配置され、その一側面103bが、接着剤400bを介して反射パネルユニット200の固着部材203の一側面203bに対向するように配置される。この固着部材103の配置段階では、接着剤400aおよび接着剤400bはいずれも未硬化の状態である。
【0048】
このようにして固着部材103を配置した後、反射パネルユニット200の位置の調整(レジストレーションの調整)をおこなう。
【0049】
その際、たとえばXY面内(反射型光変調素子14の画素面内)方向のうち、X方向については、図8に示すようにして反射パネルユニット200の位置を調整する。即ち、反射パネルユニット200と固着部材103とを互いに接着剤400b側に押圧し、かつ、固着部材103を接着剤400a側に押圧した状態とする。そして、その状態から、固着部材103が接着剤400aを介して上部支持プレート101の上面101aに沿って移動するように、反射パネルユニット200をX方向に移動させる。
【0050】
XY面内方向のうち、Y方向については、図9に示すようにして反射パネルユニット200の位置を調整する。即ち、反射パネルユニット200と固着部材103とを互いに接着剤400b側に押圧し、かつ、固着部材103を接着剤400a側に押圧した状態とする。そして、その状態から、反射パネルユニット200の固着部材203の側面203bが接着剤400bを介して固着部材103の側面103bに沿って移動するように、反射パネルユニット200をY方向に移動させる。
【0051】
XY面内の回転方向については、図10に示すようにして反射パネルユニット200の位置を調整する。即ち、反射パネルユニット200と固着部材103とを互いに接着剤400b側に押圧し、かつ、固着部材103を接着剤400a側に押圧した状態とする。そして、その状態から、反射パネルユニット200の固着部材203の側面203bが接着剤400bを介して固着部材103の側面103bに沿って移動するように、反射パネルユニット200をXY面内回転方向に移動させる。
【0052】
Z方向(フォーカス方向)については、図11のようにして反射パネルユニット200の位置を調整する。即ち、反射パネルユニット200と固着部材103とを互いに接着剤400b側に押圧し、かつ、固着部材103を接着剤400a側に押圧した状態とする。そして、その状態から、固着部材103が接着剤400aを介して上部支持プレート101の上面101aに沿って移動するように、反射パネルユニット200と固着部材103とを一緒にZ方向に移動させる。
【0053】
XZ面内の回転方向(あおり方向)については、図12のようにして反射パネルユニット200の位置を調整する。即ち、反射パネルユニット200と固着部材103とを互いに接着剤400b側に押圧し、かつ、固着部材103を接着剤400a側に押圧した状態とする。そして、その状態から、固着部材103が接着剤400aを介して上部支持プレート101の上面101aに沿って移動するように、反射パネルユニット200と固着部材103とを一緒にXZ面内回転方向に移動させる。
【0054】
このような方法により、反射パネルユニット200のX,Y,Z方向の位置調整、即ち画素位置調整とフォーカス調整(レジストレーション調整)をおこなうことができる。
【0055】
反射パネルユニット200の位置調整段階では、接着剤400aおよび接着剤400bが未硬化であるため、上記のような固着部材103の、上部支持プレート101の上面101aに沿った移動、反射パネルユニット200(固着部材203)の、固着部材103の側面103bに沿った移動が円滑におこなえるようになっている。また、このような上部支持プレート101の上面101aに沿った固着部材103の移動、固着部材103に沿った反射パネルユニット200の移動の際、接着剤400aおよび接着剤400bは、固着部材103の下面103a、側面103bに、均一性良く、薄く、濡れ広がるようになる。
【0056】
上記のようにして反射パネルユニット200の位置を調整した後は、その調整した位置を保持してUV照射をおこない、接着剤400aおよび接着剤400bを硬化させる。固着部材103および固着部材203に共にガラスのようなUVに対して透明な材料を用いていることで、UV照射によって2箇所の接着剤400aおよび接着剤400bを一緒に硬化させることができる。
【0057】
上記のような方法により、反射パネルユニット200が、そのX,Y,Z方向の位置を精度良く調整されて、プリズムユニット150に固着される。なお、ここでは上部支持プレート101側での反射パネルユニット200の固着を例にして説明したが、反射パネルユニット200は、これと同様にして下部支持プレート102側でもプリズムユニット150に固着される。
【0058】
上記の固着方法では、反射パネルユニット200のX,Y方向の位置を、固着部材103の側面103bの接着剤400bによって固定することができ、反射パネルユニット200のZ方向の位置を、固着部材103の下面103aの接着剤400aによって固定することができる。このように上記の固着方法では、反射パネルユニット200をプリズムユニット150に対して固着する部位を、X,Y方向の位置を固定する部位と、Z方向の位置を固定する部位の、2つに分割する。
【0059】
この固着方法では、反射パネルユニットとプリズムユニットの間を1箇所の固着部位で固着するときのように、位置調整に要するクリアランスに応じた一定の厚み(量)の半田や接着剤を設けることは不要になる。固着部材103と上部支持プレート101および下部支持プレート102とを接着する接着剤400aの厚み、ならびに固着部材103と反射パネルユニット200の固着部材203とを接着する接着剤400bの厚みは、充分薄くすることができる。そのため、反射パネルユニット200の固着に半田を用いたり、厚い接着剤を用いたりした場合に比べて、反射パネルユニット200の位置調整を高精度におこない、レジストレーションの調整を高精度におこなうことができる。また、接着剤400aおよび接着剤400bの厚みを薄くすることができるため、投影装置1の使用時に光学装置100の温度が上昇した場合にも、反射パネルユニット200の位置ずれ、それによるレジストレーションずれを効果的に抑制することができる。たとえば、反射パネルユニット200の位置ずれを、X,Y,Zの各方向について0.1mm以下に抑えることができる。
【0060】
さらに、プリズムユニット150と反射パネルユニット200の間の接着面積は、固着部材103の下面103aおよび側面103bのサイズとすることができ、充分大きく確保することができる。そのため、プリズムユニット150と反射パネルユニット200との接着強度を向上させることができる。
【0061】
また、プリズムユニット150と反射パネルユニット200の間を固着する固着部材103および固着部材203には、上記のように、ガラスを用いることができる。ガラスの固着部材103および固着部材203は、プリズムブロック110同様、低い線膨張係数を示す。そのため、投影装置1の使用時に光学装置100の温度が上昇した場合にも、固着部材103自体、固着部材203自体の熱膨張を抑え、反射パネルユニット200の位置ずれ、それによるレジストレーションずれを効果的に抑制することができる。
【0062】
なお、以上の説明では、反射パネルユニット200に、固着部材103と接着剤400bを介して接着される固着部材203を設けるようにした。このほか、反射パネルユニット200の、固着部材103の側面103bと対向する領域に、平坦な領域があれば、固着部材203を設けずに、上記のような固着をおこなうようにしてもよい。
【0063】
また、上記のように、固着部材103を用いたプリズムユニット150と反射パネルユニット200の固着は、その固着部材103の下面103aと側面103bにおいておこなわれる。したがって、下面103aの面積および側面103bの面積を大きくするほど、それぞれプリズムユニット150および反射パネルユニット200との接着面積を大きくすることができる。以上の説明では固着部材103として一定サイズの直方体形状のものを例示したが、このような接着面積の観点から、そのサイズ、形状を設定するようにしてもよい。同様に、反射パネルユニット200に設ける固着部材203についても、固着部材103との接着面積の観点から、そのサイズ、形状を設定するようにしてもよい。
【0064】
なお、本技術は、以下のような構成も採ることができる。
(1)反射型光変調素子を備える反射パネルユニットと、
前記反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットと、
前記反射パネルユニットを前記プリズムユニットに固着する第1の固着部材と、
を有し、
前記第1の固着部材は、第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有し、
前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットはそれぞれ、前記第1の面および前記第2の面が接着層を介して接着される第3の面および第4の面を有する、
光学装置。
(2)前記接着層には、光硬化型樹脂が用いられ、
前記第1の固着部材には、前記接着層が硬化する光に対して透明な材料が用いられる前記(1)に記載の光学装置。
(3)前記第1の固着部材にガラスが用いられる前記(1)または(2)に記載の光学装置。
(4)前記反射パネルユニットは、前記第3の面を有する第2の固着部材を備える前記(1)から(3)のいずれかに記載の光学装置。
(5)前記第2の固着部材にガラスが用いられる前記(4)に記載の光学装置。
(6)前記プリズムユニットは、前記偏光光学装置と前記色合成プリズムを支持し、前記第4の面を有する支持プレートを備える前記(1)から(5)のいずれかに記載の光学装置。
(7)光源と、
前記光源からの出射光を波長帯域にしたがい分離する分離光学系と、
前記分離光学系で分離された光を変調し、変調光を合成して出射する光学装置と、
前記光学装置からの出射光を投影出力する投影部と、
を備え、
前記光学装置は、
反射型光変調素子を備える反射パネルユニットと、
前記反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットと、
前記反射パネルユニットを前記プリズムユニットに固着する固着部材と、
を有し、
前記固着部材は、第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有し、
前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットはそれぞれ、前記第1の面および前記第2の面が接着層を介して接着される第3の面および第4の面を有する、
投影装置。
(8)反射型光変調素子を備える反射パネルユニットを準備する工程と、
前記反射型光変調素子が変調する光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットを準備する工程と、
第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有する固着部材を、前記第1の面および前記第2の面がそれぞれ接着層を介して前記反射パネルユニットの第3の面および前記プリズムユニットの第4の面に対向するように配置する工程と、
前記反射パネルユニットを、前記第1の面に沿って移動させ、または前記固着部材と共に前記第4の面に沿って移動させて、前記反射パネルユニットの前記プリズムユニットに対する位置を調整する工程と、
前記反射パネルユニットの位置を調整した後、前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットを前記接着層で接着固定する工程と、
を有する光学装置の製造方法。
【0065】
なお、上述の実施の形態は、実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0066】
さらに、上述の実施の形態は、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1……投影装置、2……光源、3……リフレクタ、4,5……フライアイレンズ、6……偏光ビームスプリッタ、7……コンデンサーレンズ、8,9……ダイクロイックミラー、10……ミラー、11……フィールドレンズ、12……反射型偏光素子、13……光学補償素子、14,14R,14G,14B……反射型光変調素子、15……色合成プリズム、16……投影レンズ、100……光学装置、101……上部支持プレート、101a……上面、102……下部支持プレート、103,203……固着部材、103a……下面、103b,203b……側面、104……プリズム位置決め部品、106……スペーサプレート、110……プリズムブロック、111……偏光板、112……ガラス板、150…プリズムユニット、200,200a,200b,200c……反射パネルユニット、201……パネルホルダ、202……フレキシブルプリント基板、205……光変調部、300……偏光光学装置、400a,400b……接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型光変調素子を備える反射パネルユニットと、
前記反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットと、
前記反射パネルユニットを前記プリズムユニットに固着する第1の固着部材と、
を有し、
前記第1の固着部材は、第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有し、
前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットはそれぞれ、前記第1の面および前記第2の面が接着層を介して接着される第3の面および第4の面を有する、
光学装置。
【請求項2】
前記接着層には、光硬化型樹脂が用いられ、
前記第1の固着部材には、前記接着層が硬化する光に対して透明な材料が用いられる請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1の固着部材にガラスが用いられる請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記反射パネルユニットは、前記第3の面を有する第2の固着部材を備える請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第2の固着部材にガラスが用いられる請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記プリズムユニットは、前記偏光光学装置と前記色合成プリズムを支持し、前記第4の面を有する支持プレートを備える請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの出射光を波長帯域にしたがい分離する分離光学系と、
前記分離光学系で分離された光を変調し、変調光を合成して出射する光学装置と、
前記光学装置からの出射光を投影出力する投影部と、
を備え、
前記光学装置は、
反射型光変調素子を備える反射パネルユニットと、
前記反射型光変調素子が変調した光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットと、
前記反射パネルユニットを前記プリズムユニットに固着する固着部材と、
を有し、
前記固着部材は、第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有し、
前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットはそれぞれ、前記第1の面および前記第2の面が接着層を介して接着される第3の面および第4の面を有する、
投影装置。
【請求項8】
反射型光変調素子を備える反射パネルユニットを準備する工程と、
前記反射型光変調素子が変調する光を出射する偏光光学装置、および前記偏光光学装置から前記光を入射して合成出力する色合成プリズムを備えるプリズムユニットを準備する工程と、
第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有する固着部材を、前記第1の面および前記第2の面がそれぞれ接着層を介して前記反射パネルユニットの第3の面および前記プリズムユニットの第4の面に対向するように配置する工程と、
前記反射パネルユニットを、前記第1の面に沿って移動させ、または前記固着部材と共に前記第4の面に沿って移動させて、前記反射パネルユニットの前記プリズムユニットに対する位置を調整する工程と、
前記反射パネルユニットの位置を調整した後、前記反射パネルユニットおよび前記プリズムユニットを前記接着層で接着固定する工程と、
を有する光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−54143(P2013−54143A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191192(P2011−191192)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】