説明

光学装置および光学装置の製造方法

【課題】製造が容易な耐久性および信頼性に優れた固体撮像装置20およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】受光エリア2を含む所定領域を気密封止する固体撮像素子が形成された固体撮像素子チップ1を準備する素子基板準備ステップと、第1の主面と第2の主面とを有する第1の基板11の、第1の主面の記所定領域に相当する領域に、凹部5Aを形成する凹部形成ステップと、透明部材からなる第2の基板10を、第1の基板11の第1の主面と接合し、第1の基板11と第2の基板10とが接合された接合基板12を作成する接合ステップと、接合基板12の第2の主面を研削加工し、凹部5Bを露出する研削加工ステップと、凹部5Bが露出した接合基板12の第2の主面と、固体撮像素子チップ1とを接合し、固体撮像素子チップ1の所定領域を封止する封止ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に気密封止部を設けた光学装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、固体撮像素子チップの受光部を気密封止した固体撮像装置において、小型実装を必要とする分野への適用を可能にするために、特に実装後の形状の小さい新規な構造を有する固体撮像装置を提案している。図9は出願人が提案済みの固体撮像装置の概略構造を示す断面説明図である。
【0003】
例えば、出願人は、特開平7−202152号公報において、図9に示すように、固体撮像素子チップ901の受光エリア902のみに、気密封止部905Cを設けた固体撮像装置920を提案している。固体撮像装置920は、気密封止部905Cを形成する封止部材912を平板部910と枠部911との2部材で構成したものである。そして平板部910はガラス、石英、サファイア、透明樹脂等の透明部材よりなり、枠部911はセラミック、ガラス、シリコン等の無機物、またはコバールまたは42アロイ等の金属を用いて形成してもよいが、固体撮像素子チップ901の表面に、エポキシ、フェノールまたはシリコンなどの樹脂を印刷、またはフォトリソ技術でパターン形成してもよいこと、また平板部910に枠部911を接着した封止部材912を、固体撮像素子チップ901の表面に接着するようにしてもよいことが記載されている。そして、前記固体撮像素子チップ901の受光エリア902のマイクロレンズ903の表面と封止部材912の裏面の間には、干渉縞が生じないように少なくとも5μm以上の空間が形成されるように、固体撮像素子チップ901の表面に接着されている。
【0004】
固体撮像装置920は、小型化実装が可能になると共に、特に固体撮像素子チップ901の表面にフィルタ、マイクロレンズまたはプリズム等の光学部品を形成しても、それらの光学部品の光学能力の低下を伴うことがなかった。
【特許文献1】特開平7−202152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、固体撮像装置920は、別体として形成した枠部911を平板部910に接着したものを、固体撮像素子チップ901の表面に接着しているため、枠部911の高さ、すなわち平板部910と固体撮像素子チップ901表面との距離を常に一定に管理することは容易ではない。このため、固体撮像装置920はマイクロレンズ等の光学特性の変動、つまり撮像特性のロット間変動が生じるおそれがあった。
【0006】
また、固体撮像装置920では、枠部911の高さ、言い換えれば枠部911の厚さは非常に薄いために、製造時に、枠部911の破損や反りの問題が発生することがあった。さらに、枠部911をエポキシ、フェノール、またはシリコーン等の有機材料で形成した場合には、有機材料を介して水分が気密封止部に浸入しやすく、気密封止部内部で曇りまたは結露が生じることがあり、撮像性能の低下、さらには、固体撮像装置の故障に至る可能性もあった。
【0007】
以上の説明のように、公知の固体撮像装置等の光学装置においては、気密封止部を形成すること、および小型実装へ対応すること等の重要性は認識されていたが気密封止部の製造方法等については十分な注意が払われているとは言えなかった。
【0008】
本発明は、製造が容易な耐久性および信頼性に優れた光学装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明の光学装置は光学素子の所定領域が封止部材により気密封止された光学装置であって、前記所定領域に相当する部分に凹部が形成された第1の基板の凹部形成面と、透明部材からなる第2の基板とが接合され、前記第1の基板の凹部形成面が研削加工され前記凹部が露出した前記封止部材と、前記光学素子が形成された素子基板とが接合している。
【0010】
また、本発明の光学装置の製造方法は、所定領域を気密封止する光学素子が形成された素子基板を準備する素子基板準備ステップと、第1の主面と第2の主面とを有する第1の基板の、前記第1の主面の前記所定領域に相当する領域に、凹部を形成する凹部形成ステップと、透明部材からなる第2の基板を、前記第1の基板の第1の主面と接合し、前記第1の基板と前記第2の基板とが接合された接合基板を作成する接合ステップと、前記接合基板の前記第2の主面を研削加工し、前記凹部を露出する研削加工ステップと、前記凹部が露出した前記接合基板の前記第2の主面と、前記素子基板とを接合し、前記光学素子の前記所定領域を封止する封止ステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、製造が容易な耐久性および信頼性に優れた光学装置およびその製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
最初に、図面を参照して本発明の第1の実施の形態にかかる光学装置である固体撮像装置20の構造について説明する。図1は、本実施の形態にかかる固体撮像装置を構成する固体撮像素子チップの上面概略図であり、図2は図1のII線における固体撮像素子チップの概略構造を示す断面概略図である。なお、図1においては、マイクロレンズ3はマイクロレンズ領域3Aとして表示している。
【0013】
図1および図2に示すように、固体撮像素子チップ1の表面には、CCD(Charge Coupled Device)型またはMOS(Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮像素子を有しマイクロレンズ領域3Aおよび図示しない色フィルタが配設された光電変換を行う受光エリア2と、撮像動作に必要な走査回路およびアンプ等を含む周辺回路6A、6Bとが配置されている。さらに、固体撮像素子チップ1の表面の端面近傍には、固体撮像素子チップ1と外部の電気回路との電気的接続を得るための複数のパッド電極4が配置されている。
【0014】
以下、図3を用いて固体撮像素子チップ1に気密封止部5Cを形成し固体撮像装置20を製造する方法について説明する。図3は、固体撮像素子チップに気密封止部5Cを形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【0015】
<素子基板準備ステップ>
最初に、図1および図2で示した、所定領域である受光エリア2を気密封止する光学素子である固体撮像素子が形成された素子基板である固体撮像素子チップ1が準備される。なお、本説明では、気密封止部5Cを形成する領域の中心である受光エリア2の位置および大きさ等を確認するために素子基板準備ステップを最初に説明したが、図面等で受光エリア2が確認できる場合には、固体撮像素子チップ1は、製造工程の最初に準備しておく必要はない。
【0016】
<凹部形成ステップ>
図3(A)に示すように、第1の主面11Uと第2の主面11Dとを有する第1の基板11が準備される。第1の基板11は、平板状の基板であり気密封止部材である接合基板12、いわゆる枠部11Bに加工される基板である。第1の基板11の材料としては、硬質であり、水分の透過性の低い材料が好ましく、例えば、シリコンに代表される半導体、ガラスに代表されるセラミックス、または、各種金属を用いることができる。第1の基板11の材料としては、加工性およびコスト等の観点からシリコンが特に好ましい。ここで、シリコンとは、不純物のドープにより半導体化した通常のシリコンだけでなく、絶縁体である真性シリコンでもよい。
【0017】
次に、図3(B)に示すように、第1の基板11の第1の主面11Uの、所定領域に相当する領域に、凹部5Aが形成される。ここで、所定領域に相当する領域とは、固体撮像装置20となったときに、所定領域である受光エリア2をカバーすることのできる位置および大きさに相当する領域である。
【0018】
第1の基板11に凹部5Aを形成する方法は公知の各種手法を用いることができる。例えば、凹部5A形成領域を除く第1の基板11の第1の主面11Uにフォトリソグラフィ法によりレジスト膜をパターニングする。そして、このレジスト膜を保護膜として、サンドブラスト法、フッ酸等の溶液を用いた湿式エッチング法、または四フッ化炭素ガス等を用いたドライエッチング法により、所望の深さD1の凹部5Aを形成できる。ここで、深さD1は、固体撮像素子チップ1上のマイクロレンズ3の高さD2(図3(E)参照)よりも大きくする。凹部5Aを形成後にレジスト膜を除去することで、図3(B)に示す凹部5Aが形成された第1の基板11Aが得られる。なお、本実施の形態の固体撮像装置20においては、第1の基板11、および第2の基板10は、その外寸が、図3(E)に示すように、固体撮像装置20となったときに、固体撮像素子チップ1上のパッド電極4形成領域にまで及ばない大きさとする。
【0019】
<接合ステップ>
次に図3(C)に示すように、凹部5Aが形成された第1の基板11Aの凹部形成面である第1の主面11Uと、透明部材からなる第2の基板10とが、接着接合され、接合基板14が作成される。
【0020】
なお、第2の基板10の材料としては、撮像に必要な透過率および分光透過特性を有するガラス、石英またはサファイア等を用いることができ、コストおよび加工性等の観点からガラスを用いることが好ましい。
【0021】
本実施の形態の固体撮像装置20においては、凹部5Aが形成された第1の基板11Aと第2の基板10との接合においては、接合界面に無機材料からなる接着層13を介して接合する。すなわち、固体撮像装置20の製造方法では、無機材料からなる接着層を形成する接着層形成ステップを含む。接着層13の材料としては、接合強度および耐湿特性の観点から、ガラスフリットもしくは水ガラス等のガラス、または、金もしくは、はんだ等の金属を用いることが好ましい。接着層13が無機材料からなるため、固体撮像装置20においては、接着層13を介して水分等が気密封止部に侵入することがない。
【0022】
<研削加工ステップ>
次に図3(D)に示すように、接合基板14の、第1の基板11Aの凹部5Aが形成面と反対面である第2の主面11Dが、凹部5Aが露出するまで研削加工される。研削加工は砥石が取り付けられた公知の研削加工機を用いてもよいし、CMP法等の研磨加工であってもよい。また研削面の表面粗さの改善または、気密封止部5Cの高さ調整のために、研削加工後に、さらに研磨加工を行ってもよい。
【0023】
図3(D)に示すように、研削加工により、第1の基板11は、外周部のみが残り、この外周部が気密封止部材である接合基板12の枠部11Bとなり、接合基板12が形成される。
【0024】
<封止ステップ>
そして、図3(E)に示すように、凹部5Bが露出した接合基板12の外周部11B側と、素子基板である固体撮像素子チップ1とが接合され、気密封止部5Cを有する固体撮像装置20が製造される。
【0025】
封止ステップにおける接合方法は接合ステップにおける接合方法と同様の方法で行うことが好ましい。すなわち、図3(E)には図示していないが、外周部11Bと、固体撮像素子チップ1との接合も接着層を用いて接着接合することが好ましい。
【0026】
上記説明の固体撮像装置の製造方法によって製造された固体撮像装置20は、受光エリア2を含む所定領域が封止部材である接合基板12により気密封止された光学装置であって、所定領域に相当する部分に凹部5Bが形成された第1の基板11Aの凹部形成面と、透明部材からなる第2の基板10とが接合され、第1の基板11Aの凹部形成面が研削加工され凹部5Bが露出した接合基板12である封止部材と、光学素子が形成された素子基板である固体撮像素子チップ1とが接合している。
【0027】
そして、固体撮像素子チップ1に形成された少なくとも受光エリア2を含む所定領域である封止領域に、外部から密閉された空間である気密封止部5Cが形成され、気密封止部材である接合基板12の透明部材を介して外部から受光エリア2に導光可能でありながら、受光エリア2を外部環境からの水分等から保護している。
【0028】
そして、本実施の形態の固体撮像装置20の製造方法によれば、撮像性能に影響を与える透明部材からなる第2の基板10の表面および裏面には一切の加工を行うことがないため、表面の面荒れの発生がなく、固体撮像装置20は撮像特性の低下が生じない。また、固体撮像装置20の封止部材である接合基板12の枠部11Bは、水分の透過性の低い材料からなる第1の基板11を加工して形成されているため、気密封止部5Cへの水分の侵入を抑制できる。このため、固体撮像装置20は、気密封止部5Cでの曇りや結露による撮像性能の低下を防ぐことができる。さらに、固体撮像装置20は、気密封止部5Cへの水の侵入を防止できることから、固体撮像装置20は高耐久性・高信頼性である。
【0029】
また、本実施の形態の固体撮像装置20の製造方法によれば、枠部11Bとなる第1の基板11は、製造工程の途中で凹部5Aが設けられるが、第2の基板10と接合するまでは開口部は設けない。このため、第1の基板11の機械的強度の著しい低下はなく、取り扱いが容易で、製造段階での破損の心配もない。また、第1の基板11は枠部11Bの高さに合わせて薄く研削加工されるが、第2の基板10と接合後に第2の基板10を支持基板として加工されるため、本実施の形態の固体撮像装置20の製造方法によれば、製造段階での枠部11Bの破損の心配がない。
【0030】
なお、固体撮像装置20の製造方法としては、素子基板として多数の固体撮像素子チップ1が形成されたウエハに対して、封止ステップで複数の接合基板12を接合し、その後、分離ステップで、個々の固体撮像装置20に個片化してもよい。
【0031】
あるいは、固体撮像装置20の製造方法としては、接合基板として多数の気密封止部材が形成されたウエハに対して、封止ステップで複数の固体撮像素子チップ1とを接合し、その後、分離ステップで、個々の固体撮像装置20に個片化してもよい。
【0032】
さらに、固体撮像装置20の製造方法としては、封止ステップで、多数の気密封止部材が形成された接合基板と、多数の固体撮像素子チップ1が形成された素子基板とを接合し、その後、分離ステップで、個々の固体撮像装置20に個片化してもよい。
【0033】
<第2の実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態にかかる固体撮像装置120の製造方法について説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる固体撮像素子チップ101に気密封止部105Cを形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。本実施の形態の固体撮像装置120の製造方法は、第1の実施の形態にかかる固体撮像装置20の製造方法と類似しているため、同じ工程の説明は省略する。
【0034】
すなわち、まず素子基板準備ステップにおいて、電極パッド104等を有する固体撮像素子チップ101が準備される。次に、図4(A)に示す第1の基板111が、凹部形成ステップにより図4(B)に示す凹部105Aが形成された第1の基板111Aに加工される。
【0035】
本実施の形態の固体撮像装置120の製造方法では、接合ステップにおいて、陽極接合法を用いて第1の基板111Aと第2の基板110とが、接合される。陽極接合法は、可動イオンを含むガラスと、シリコンまたは金属等を接合する方法であり、重ね合わせた基板を加熱してガラス側を軟化させ、同時にガラス側を陰極として両者の間に電圧を印加することにより電気的二重層を発生させ、静電引力により両者を接合する。
【0036】
このため、第1の基板111の材料としては陽極接合可能な導電性を有するシリコンに代表される半導体、または、各種金属を用いる。また、第2の基板110の材料としては、陽極接合可能な透明材料である、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス等の耐熱ガラスを用いる。
【0037】
そして、図4(C)に示すように、本実施の形態の接合ステップでは、凹部105Aが形成されたシリコンからなる第1の基板111Aと、耐熱ガラスからなる第2の基板110を圧着した状態で、400℃程度の加熱を行いながら、第1の基板111Aを陽極として500Vから1000Vの電圧を印加する。すると、第1の基板111Aと対向する第2の基板110の表面側より正イオンが第2の基板110内部に移動し、その結果、第1の基板111Aの表面には負の電荷が誘起され、正イオンと負電荷の間で生じる静電力により強固な接合が実現される。
【0038】
本実施の形態の固体撮像装置120の製造方法の接合ステップ後は、第1の実施の形態の固体撮像装置20の製造方法と同じである。
【0039】
本実施の形態の固体撮像装置120の製造方法および固体撮像装置120は、第1の実施の形態の固体撮像装置20の製造方法および固体撮像装置20と同様の作用効果を奏する。さらに、固体撮像装置120は、接合ステップにおいて陽極接合法を用いるため、固体撮像装置20よりも接合界面の強度が強く信頼性が高い。さらに、固体撮像装置120は、接合時に接着層13を形成する必要がないために、中間層形成材料のガラスフリット等が第2の基板へ、はみ出すことによる撮像性能の低下が発生することがない。
【0040】
なお、本実施の形態の固体撮像装置120の製造方法においては、封止ステップにおける接合も、接合ステップと同じ陽極接合法を用いてもよい。
【0041】
また、固体撮像装置120の製造方法としては、素子基板として多数の固体撮像素子チップ101が形成されたウエハに対して、封止ステップで複数の接合基板112を貼り合わせ、その後、分離ステップで、個々の固体撮像装置120に個片化してもよい。
【0042】
<第3の実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の第3の実施の形態にかかる固体撮像装置220の製造方法について説明する。図5は、第3の実施の形態にかかる固体撮像素子チップ201に気密封止部205Cを形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【0043】
本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法は、第2の実施の形態にかかる固体撮像装置120の製造方法と類似しているため、同じ工程の説明は省略する。
【0044】
本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法では、固体撮像装置120の製造方法と同様に、接合ステップにおいて、陽極接合法を用いて第1の基板211Aと第2の基板210とが、接合される。しかし、第2の実施の形態にかかる固体撮像装置120と異なり、第1の基板211として陽極接合不可能な材料、すなわち、絶縁材料である石英またはガラスを用いることができる。
【0045】
固体撮像装置220の製造方法では、まず素子基板準備ステップにおいて、電極パッド204等を有する固体撮像素子チップ201が準備される。次に、図5(A)に示す、石英またはガラスからなる第1の基板211が、凹部形成ステップにより図5(B)に示す凹部205Aが形成された第1の基板211Aに加工される。
【0046】
そして、本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法では、接合ステップの前に、第1の基板211Aの接合面となる領域に導電層213が形成される導電層形成ステップを含む。導電層213は導電性を有する材料、例えば、シリコン、金、ニッケル、インバー、コバールまたは42アロイ等を、蒸着法、スパッタ法、またはCVD法等の方法により形成することができる。
【0047】
なお、図5においては、凹部形成ステップの後に導電層形成ステップにより導電層213を形成する例を示しているが、導電層形成ステップは接合ステップの前であれば、凹部形成ステップの前であってもよい。すなわち、第1の基板211の全面に導電層213を形成した後、第1の基板211に凹部205Aを形成してもよい。
【0048】
そして、図5(C)に示すように、本実施の形態の接合ステップでは、導電層213が形成された第1の基板211Aと、耐熱ガラスからなる第2の基板110を圧着した状態で、400℃程度の加熱を行いながら、導電層213を陽極として500Vから1000Vの電圧を印加し陽極接合が行われる。
【0049】
本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法の接合ステップ後は、第1の実施の形態の固体撮像装置20の製造方法等と同じである。
【0050】
本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法および固体撮像装置220は、第1の実施の形態の固体撮像装置120の製造方法および固体撮像装置120と同様の作用効果を奏する。さらに、固体撮像装置220では、第1の基板211の材料選択の範囲が、固体撮像装置120における第1の基板111の材料選択の範囲よりも広い。このため、固体撮像装置220は、固体撮像装置の設計の自由度が高い。
【0051】
なお、本実施の形態の固体撮像装置220の製造方法においては、封止ステップにおける接合も接合ステップと同じ陽極接合法を用いてもよい。
【0052】
また、固体撮像装置220の製造方法としては、素子基板として多数の固体撮像素子チップ201が形成されたウエハに対して、封止ステップで複数の封止部材212を貼り合わせ、その後、分離ステップで、個々の固体撮像装置220に個片化してもよい。
【0053】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態にかかる固体撮像装置の製造方法について説明する。本実施の形態の固体撮像装置の製造方法は、第2の実施の形態にかかる固体撮像装置120の製造方法と類似しているため、同じ工程の説明は省略する。
【0054】
本実施の形態の固体撮像装置の製造方法においては、接合ステップまたは封止ステップの少なくともいずれかの接合が、直接接合法または常温接合法によって行われる。
【0055】
直接接合法とは、接合面を原子間の結合距離に匹敵するレベルまで平坦化した後、その表面を化学処理により親水化し、表面の水酸基間の水素結合を利用して接合を行う方法である。このような表面間力による接合は、常温の大気中で行うこともできる。より強い接合が要求される場合には、接合界面を酸素またはアルゴン等の雰囲気下でプラズマ処理したり、紫外線を用いて表面を活性化したりすることで比較的低温の100℃から400℃で接合を行う。接合処理の雰囲気は、窒素、アルゴンもしくはネオン等の不活性ガス、または大気が好ましく、接合処理の雰囲気の圧力は減圧化、例えば低真空から10−6〜10−7Paレベルの超高真空、または大気圧から選択される。
【0056】
さらに常温接合法とは、上記の直接接合法を真空中で行う接合方法であり、常温で堅固な接合界面を得ることができる接合方法である。
【0057】
本実施の形態の固体撮像装置の製造方法および固体撮像装置は、第1の実施の形態の固体撮像装置120の製造方法および固体撮像装置120と同様の作用効果を奏する。さらに本実施の形態の固体撮像装置の製造方法では、接合が低温行われるため、被接合体間の熱膨張率の差に起因する熱ひずみおよび熱応力が小さいために、接合箇所の信頼性および耐久性が、より向上する。
【0058】
このため、本実施の形態の固体撮像装置の製造方法では、接合基板の反り等に起因する不良発生を抑制できる。また、本実施の形態の固体撮像装置の製造方法では、接合が低温で行われるため加温および冷却の時間が短時間になり、または不要になるため、製造のスループットを増大することができる。
【0059】
また、固体撮像装置320の製造方法としては、図6(A)に示すように、素子基板として多数の固体撮像素子チップ301が形成されたウエハ301Aに対して、封止ステップで複数の封止部材312を貼り合わせ、その後、図6(B)に示すように、分離ステップで、個々の固体撮像装置320に個片化してもよい。
【0060】
<第5の実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の第5の実施の形態にかかる固体撮像装置420の製造方法について説明する。本実施の形態の固体撮像装置420の製造方法は、第1の実施の形態にかかる固体撮像装置20の製造方法と類似しているため、同じ工程の説明は省略する。図7は、第5の実施の形態にかかる固体撮像素子チップ401に一括して気密封止部405Cを形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【0061】
以下、図7を用いて固体撮像装置420の製造方法について説明する。
【0062】
<素子基板準備ステップ>
最初に、素子基板として、多数の固体撮像素子チップ401となる領域が形成された固体撮像素子チップ基板401A(図7(E)参照)が準備される。言い換えれば、固体撮像素子チップ基板401Aは、多数の固体撮像素子チップ401となる領域を有する基板であり、シリコンウエハに素子回路等を形成した基板である。
【0063】
<凹部形成ステップ>
図7(B)に示すように、第1の基板411の第1の主面411Uの、所定領域に相当する領域に、多数の凹部405Aを有する第1の基板411Aが形成される。
【0064】
<接合ステップ>
次に図7(C)に示すように、多数の凹部405Aが形成された第1の基板411Aの凹部形成面と、透明部材からなる第2の基板410Aとが、接合され、接合基板414Aが作成される。
【0065】
<封止ステップ>
そして、図7(E)に示すように、多数の枠部411Bを有する接合基板412Aの第2の主面と固体撮像素子チップ基板401Aとが接合される。
【0066】
<分離ステップ>
次に、図7(F)に示すように、パッド電極404が表面に露出するように、第2の基板410Aの一部が除去され、個々の固体撮像素子チップ401の封止部材412が形成される。第2の基板410Aの一部を除去する方法としては、機械的研削、ダイシングブレードによる切り取り、または化学エッチング等の方法を用いることができる。
【0067】
そして、図7(G)に示すように、固体撮像素子チップ基板401Aを、ダイシングブレードによる機械的ダイシング法、またはレーザによるドライダイシング法により、切断することで、気密封止部405Cを有する固体撮像素子チップ401である固体撮像装置420を一括して多数個、製造することができる。
【0068】
本実施の形態にかかる固体撮像装置420および固体撮像装置420の製造方法によれば、第1の実施の形態の固体撮像装置20および固体撮像装置20の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態にかかる固体撮像装置420の製造方法は、複数の固体撮像装置420の製造を一括して行うことができるため、固体撮像装置20よりも、低コストの固体撮像装置420を提供することができる。
【0069】
<第5の実施の形態の変形例>
次に、図面を参照して本発明の第5の実施の形態の変形例にかかる固体撮像装置520の製造方法について説明する。本変形例の固体撮像装置の製造方法は、第5の実施の形態にかかる固体撮像装置420の製造方法と類似しているため、同じ工程の説明は省略する。図8は、本変形例にかかる固体撮像素装置520の製造方法を説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【0070】
本変形例にかかる固体撮像装置520の製造方法は、貫通配線を用いたWL−CSP(Wafer Level-Chip Size Package)技術を、第5の実施の形態の固体撮像装置420の製造方法に用いている。
以下、図8を用いて固体撮像装置520の製造方法について説明する。
【0071】
<封止ステップ>
図8(A)に示すように、接合基板512Aの第2の主面と固体撮像素子チップ基板501Aとが接合される。
【0072】
<貫通配線形成ステップ>
次に、図8(B)に示すように、固体撮像素子チップ基板501Aのパッド電極504と電気的に接続された貫通配線504Bが形成される。貫通配線形成工程では、最初に、例えばシリコンからなる固体撮像素子チップ基板501Aの裏面側から、パッド電極504の裏面まで、多数の貫通穴が形成される。貫通孔形成には、レジストマスクを用いたDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法、もしくは、レーザーアブレーション加工法、機械的なドリル加工、または、ウオータジェット法等を用いることができる。そして、貫通穴の内面に、SiO等の電気絶縁膜が成膜される。貫通穴が、めっき法または導電性ペースト埋め込み等の公知の方法により導電化処理され、貫通配線504Bが形成される。
【0073】
<分離ステップ>
図8(C)に示すように、接合基板512Aと固体撮像素子チップ基板501Aとが接合された基板を、ダイシングブレードによる機械的ダイシング等により切断することで、気密封止部505Cを有する多数の固体撮像装置520を一括して製造することができる。
【0074】
固体撮像装置520は、貫通配線504Bを介してパッド電極504に印加する各種電位を固体撮像装置520の裏面から供給できる。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0076】
例えば、上記説明では光学素子として固体撮像子素子を有する固体撮像子素子装置を例に説明したが、光学素子として、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、LEDなどの発光素子、MEMSによるミラー素子等を有する光学素子に気密封止部を設けた光学装置およびその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1の実施の形態にかかる固体撮像素子チップの上面概略図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる固体撮像素子チップの固体撮像素子チップの概略構造を示す断面概略図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図4】第2の実施の形態にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図5】第3の実施の形態にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図6】第4の実施の形態にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図7】第5の実施の形態にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図8】第5の実施の形態の変形例にかかる固体撮像素子チップに気密封止部を形成する方法について説明するための概略構造を示す断面説明図である。
【図9】公知の固体撮像装置920の概略断面構造を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1…固体撮像素子チップ、
2…受光エリア、
3…マイクロレンズ、
3A…マイクロレンズ領域、
4…パッド電極、
5A…凹部、
5B…凹部、
5C…気密封止部、
6A…周辺回路、
6B…周辺回路、
10…第2の基板、
11…第1の基板、
11B…枠部、
11D…第2の主面、
11U…第1の主面、
12…接合基板、
13…接着層、
14…接合基板、
20…固体撮像装置
213…導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の所定領域が封止部材により気密封止された光学装置であって、
前記所定領域に相当する部分に凹部が形成された第1の基板の凹部形成面と、透明部材からなる第2の基板とが接合され、前記第1の基板の凹部形成面が研削加工され前記凹部が露出した前記封止部材と、
前記光学素子が形成された素子基板とが接合していることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記光学素子が、固体撮像素子であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
所定領域を気密封止する光学素子が形成された素子基板を準備する素子基板準備ステップと、
第1の主面と第2の主面とを有する第1の基板の、前記第1の主面の前記所定領域に相当する領域に、凹部を形成する凹部形成ステップと、
透明部材からなる第2の基板を、前記凹部が形成された前記第1の基板の前記第1の主面と接合し、前記第1の基板と前記第2の基板とが接合された接合基板を作成する接合ステップと、
前記接合基板の前記第1の基板の前記第2の主面を研削加工し、前記凹部を露出する研削加工ステップと、
前記凹部が露出した前記接合基板の前記第2の主面と、前記素子基板とを接合し、前記光学素子の前記所定領域を封止する封止ステップとを有することを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記素子基板準備ステップが、複数の前記光学素子が形成された前記素子基板を準備する素子基板準備ステップであり、
前記封止ステップが、前記複数の光学素子を前記気密封止する封止ステップであり、
複数の前記気密封止された前記光学素子を分離する分離ステップを有することを特徴とする請求項3に記載の光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記透明部材がガラスであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記接合ステップおよび/または封止ステップが、前記第1の基板と前記第2の基板との接合面に、無機材料からなる接着層を形成する接着層形成ステップを有することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記接合ステップおよび/または封止ステップが、陽極接合法により接合することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の基板が絶縁材料からなる基板であり、
前記接合ステップおよび/または封止ステップが、前記陽極接合法により接合する前に、前記第1の基板と前記第2の基板との接合面に、シリコン、金、ニッケル、インバー、コバール、または42アロイからなる導電層を形成する導電層形成ステップを有することを特徴とする請求項7に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記接合ステップおよび/または封止ステップが、直接接合法あるいは常温接合法により接合することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の基板がシリコン基板であることを特徴とする請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項11】
前記光学素子が、固体撮像素子であることを特徴とする請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−267049(P2009−267049A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114209(P2008−114209)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】