説明

光学装置の製造方法

【課題】液晶パネルのフォーカス調整にかかる時間を短縮することができ、光学装置の製造効率を向上させることができる光学装置の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の製造方法は、基準位置に複数の液晶パネルを移動させる基準位置移動工程S1と、CCDカメラの位置と、CCDカメラにて取得された撮像画像とに基づいて、各液晶パネルの最適位置を算出するための参照情報を生成する参照情報生成工程S2と、参照情報生成工程S2にて生成された参照情報に基づいて、各液晶パネルの最適位置を算出する最適位置算出工程S3と、最適位置算出工程S3にて算出された最適位置に各液晶パネルを同時に移動させる最適位置移動工程S4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RGB(Red Green Blue)の3つの色光を色光毎に画像情報に応じて変調する3つの液晶パネル(光変調装置)、および各液晶パネルが取り付けられ、変調された各色光を合成するクロスダイクロイックプリズム(色合成光学装置)を備える光学装置と、クロスダイクロイックプリズムから射出された光束を拡大投射する投射レンズとを備えたプロジェクタが知られている。
このようなプロジェクタでは、鮮明な画像を得るために、各液晶パネルは投射レンズのバックフォーカス位置に必ずなければならない。このため、プロジェクタの製造時において、各液晶パネルを投射レンズのバックフォーカス位置に正確に配置するフォーカス調整が高精度に実施されている。そして、このような調整を実施して光学装置を製造する製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の製造装置は、以下に示す製造方法にてフォーカス調整を実施している。
まず、クロスダイクロイックプリズムから射出される光束のうち、液晶パネルの画像形成領域における四隅部分に対応する光束を撮像する4つのCCD(Charge Coupled Device)カメラを、クロスダイクロイックプリズムに対する所定の基準位置に移動させる。そして、液晶パネルをクロスダイクロイックプリズムに対して進退させながら、クロスダイクロイックプリズムから射出される光束を各CCDカメラにて撮像する。そして、各CCDカメラにより撮像された撮像画像に基づいて、合焦状態となる液晶パネルの位置を検出し、検出された液晶パネルの位置を最適位置としている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−208472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造装置では、RGBの各液晶パネルを、それぞれクロスダイクロイックプリズムに対して進退させることで、各液晶パネルの最適位置を順次検出しているので、液晶パネルのフォーカス調整に時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、液晶パネルのフォーカス調整にかかる時間を短縮することができ、光学装置の製造効率を向上させることができる光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学装置の製造方法は、複数の色光を色光毎に画像情報に応じて変調して画像光を形成する複数の光変調装置と、前記各光変調装置にて形成された各画像光を合成する色合成光学装置とを備える光学装置の製造方法であって、前記各光変調装置を、所定の基準位置に移動させる基準位置移動工程と、前記色合成光学装置から射出される光束を撮像して撮像画像を取得する撮像装置の当該色合成光学装置に対する位置と、当該撮像装置にて取得された撮像画像とに基づいて、前記各光変調装置の当該色合成光学装置に対する最適位置を算出するための参照情報を生成する参照情報生成工程と、参照情報生成工程にて生成された参照情報に基づいて、前記最適位置を算出する最適位置算出工程と、前記最適位置算出工程にて算出された最適位置に前記各光変調装置を移動させる最適位置移動工程とを備え、前記参照情報生成工程は、前記撮像装置を、前記色合成光学装置の光軸方向に沿って移動させる撮像装置移動手順と、前記撮像装置移動手順にて移動される前記撮像装置の各位置において、当該撮像装置に撮像画像を取得させる撮像画像取得手順とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような製造方法によれば、参照情報生成工程では、各光変調装置が基準位置にある状態において、撮像装置を色合成光学装置の光軸方向に沿って移動させながら、色合成光学装置から射出される光束を撮像装置にて撮像することで、参照情報を生成することができる。
ここで、参照情報としては、各光変調装置に対して合焦状態となる撮像装置の色合成光学装置に対する位置を検出することができる情報であればよい。具体的に、例えば、撮像装置移動手順にて移動される撮像装置の各位置において取得された撮像画像に基づいて、各撮像画像の鮮明度を示す指標値(例えば、コントラスト値)を算出し、参照情報を、この指標値と、撮像装置の各位置とを関連付けた情報とすれば、各光変調装置に対して合焦状態(撮像画像のコントラスト値が最も高い状態)となる撮像装置の色合成光学装置に対する位置を検出することができる。
【0009】
そして、最適位置算出工程では、例えば、生成された参照情報と、所定の基準参照情報と比較すること等により、生成された参照情報に基づいて、各光変調装置の最適位置を算出することができ、最適位置移動工程では、各光変調装置を、算出された最適位置に同時に移動させることができる。したがって、各光変調装置を、それぞれ色合成光学装置に対して進退させることで、各光変調装置の最適位置を順次検出する従来の製造方法と比較して、光学装置のフォーカス調整にかかる時間を短縮することができ、光学装置の製造効率を向上させることができる。
【0010】
本発明では、前記参照情報生成工程は、前記撮像装置移動手順にて移動される前記撮像装置の各位置において、前記各光変調装置に導入する各色光を射出する複数の調整用光源装置における各色光の射出状態を切り替える光源切替手順を備えることが好ましい。
ここで、各光変調装置に対して各色光を同時に導入した状態において、撮像装置に撮像画像を取得させると、色合成光学装置から射出される光束は各色光が合成された光束となるので、例えば、単板式のCCDカメラ(撮像装置)を用いて撮像画像を取得すると、各光変調装置の最適位置を算出しにくい場合があるという問題がある。これに対して、例えば、3板式のCCDカメラを用いて撮像画像を取得すると、各色光毎の3つの撮像画像を同時に取得することができるので、各光変調装置の最適位置を容易に算出することができる。しかしながら、3板式のCCDカメラは、単板式のCCDカメラと比較して大きいので、光学装置の製造に際して大きいスペースが必要となるという問題がある。
【0011】
しかしながら、このような製造方法によれば、例えば、撮像装置移動手順にて移動される撮像装置の各位置において、各色光を射出する各調整用光源装置のうち、いずれか1つの調整用光源装置からのみ色光を射出するように、各調整用光源装置における各色光の射出状態を切り替えるようにすることができる。
これによれば、撮像装置は、撮像装置移動手順にて移動される撮像装置の各位置において、各調整用光源装置のうち、いずれか1つの調整用光源装置から射出された色光に基づく撮像画像を取得するので、単板式のCCDカメラを用いて撮像画像を取得する場合であっても各光変調装置の最適位置を容易に算出することができるとともに、小さいスペースで光学装置を製造することができる。したがって、光学装置の製造効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクタの構成〕
図1は、製造対象とされる光学装置を備えるプロジェクタ100の構造を模式的に示す図である。
プロジェクタ100は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成し、形成したカラー画像を拡大投射する。このプロジェクタ100は、図1に示すように、外装筐体100Aと、光学ユニット100Bとで大略構成されている。
なお、図1において、具体的な図示は省略したが、外装筐体100A内には、光学ユニット100Bの他、プロジェクタ100内部の各構成部材を冷却する冷却ファン等を備えた冷却ユニット、およびプロジェクタ100内部の各構成部材を制御する制御装置40等が配置される。なお、制御装置40については、後に詳述する。
【0013】
光学ユニット100Bは、図1に示すように、光源ランプ111やリフレクタ112等を有する光源装置110と、レンズアレイ121,122、偏光変換素子123、および重畳レンズ124等を有する照明光学装置120と、ダイクロイックミラー131,132、および反射ミラー133等を有する色分離光学装置130と、入射側レンズ141、リレーレンズ142、および反射ミラー143,144等を有するリレー光学装置140と、3つの液晶パネル151(赤色光用液晶パネルを151R、緑色光用液晶パネルを151G、青色光用液晶パネルを151Bとする)、3つの入射側偏光板152、3つの射出側偏光板153、およびクロスダイクロイックプリズム154等を有する光学装置150と、投射レンズ160と、これら各光学部品110〜160を内部に設定された照明光軸Aに対する所定位置に配置する光学部品用筐体170とを備える。
【0014】
なお、以下では、各光学部品110〜160において、各光学部品110〜140については種々の一般的なプロジェクタの光学系として利用されているものであるため具体的な説明を省略し、光学装置150、投射レンズ160のみについて説明する。
3つの入射側偏光板152は、色分離光学装置130で分離された各光束のうち、偏光変換素子123で揃えられた偏光方向と略同一の偏光方向を有する偏光光のみ透過させ、
その他の光束を吸収するものであり、透光性基板上に偏光膜が貼付されて構成されている。
光変調装置としての3つの液晶パネル151は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密閉封入された構成を有し、液晶の配向状態が制御されることで、入射側偏光板152から射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
【0015】
3つの射出側偏光板153は、入射側偏光板152と略同様の機能を有し、液晶パネル151を介して射出された光束のうち、一定方向の偏光光を透過し、その他の光束を吸収する。
色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム154は、射出側偏光板153から射出された色光毎に変調された各色光を合成してカラー画像を形成する。このクロスダイクロイックプリズム154は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、投射レンズ160に対向する液晶パネル151Gから射出され射出側偏光板153を介した色光(画像光)を透過し、その他の各液晶パネル151R,151Bから射出され射出側偏光板153を介した各色光(画像光)を反射する。このようにして、各色光(各画像光)が合成されてカラー画像が形成される。
投射レンズ160は、筒状の鏡筒内に複数のレンズが収納された組レンズとして構成され、クロスダイクロイックプリズム154から射出されたカラー画像を拡大投射する。
【0016】
具体的な図示は省略したが、上述した光学装置150を構成する各部材151〜154のうち、3つの液晶パネル151、3つの射出側偏光板153、およびクロスダイクロイックプリズム154は、クロスダイクロイックプリズム154の各光束入射側端面154A(図1)に対してそれぞれ対向した状態で固定され、光学装置本体150Aを構成する。ここで、3つの液晶パネル151、3つの射出側偏光板153を光束入射側端面154Aに対して直接、固定する構成に限らず、3つの液晶パネル151、3つの射出側偏光板153を所定の部材(透光性基板や光学素子151,153を保持する保持部材等)を介して光束入射側端面154Aに対して固定する構成としても構わない。また、光学装置本体150Aとしては、3つの液晶パネル151、3つの射出側偏光板153、およびクロスダイクロイックプリズム154の他、3つの入射側偏光板152も一体化する構成を採用してもよい。
【0017】
上述したような構造を有する光学装置本体150Aでは、各液晶パネル151をクロスダイクロイックプリズム154の各光束入射側端面154Aに固定する際に、各液晶パネル151のフォーカス調整、アライメント調整、および固定を実施する必要があるので、各液晶パネル151のフォーカス調整、アライメント調整、および固定を実施可能とする製造装置が必要となる。
【0018】
〔光学装置本体の製造装置の構成〕
図2は、光学装置本体150Aの製造装置1の概略構成を模式的に示す図である。
なお、本発明における製造装置1は、特開2006−208472号公報に記載される製造装置と同様の構造を有している。このため、以下の説明では、製造装置の構造についての具体的な説明を省略する。
製造装置1は、図2に示すように、3つの6軸位置調整装置10と、3つの調整用光源装置20と、撮像装置30と、制御装置40等で大略構成されている。
【0019】
3つの6軸位置調整装置10は、製造装置1内部の所定位置に設置されたクロスダイクロイックプリズム154の各光束入射側端面154A(射出側偏光板153が貼付)に対向配置され、各液晶パネル151を光束入射側から保持しつつ、各光束入射側端面154Aに対する各液晶パネル151の位置を調整する。具体的な図示は省略したが、6軸位置調整装置10は、光束入射側端面154Aに対して近接隔離する方向(以下、Z軸方向)、Z軸に直交する2軸方向(X軸方向(図2中、紙面に平行な方向)、Y軸方向(図2中、紙面に直交する方向)、Z軸を中心とする回転方向(以下、Zθ方向)、X軸を中心とする回転方向(以下、Xθ方向)、およびY軸を中心とする回転方向(以下、Yθ方向)に移動可能に構成されている。そして、6軸位置調整装置10は、制御装置40による図示しないモータ等の駆動部の制御により、保持した液晶パネル151を光束入射側端面154Aに対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、Xθ方向、Yθ方向、およびZθ方向に位置調整する。
【0020】
調整用光源装置20は、6軸位置調整装置10における液晶パネル151の位置調整を行うに際して用いられる位置調整用の光束を射出するLED(Light Emitting Diode)光源であり、液晶パネル151Rに対して赤色光を導入するLED20Rと、液晶パネル151Gに対して緑色光を導入するLED20Gと、液晶パネル151Gに対して青色光を導入するLED20Bとにより構成され、制御装置40による制御の下、点灯または消灯される。そして、調整用光源装置20は、3つの6軸位置調整装置10に対してそれぞれR,G,Bの各色光を供給し、各6軸位置調整装置10の先端部分から対応する各色光を、それぞれ各液晶パネル151R,151G,151Bに照射する。
【0021】
撮像装置30は、制御装置40による制御の下、液晶パネル151にて形成され、クロスダイクロイックプリズム154を介した画像光を撮像する。この撮像装置30は、4つのCCDカメラ31で構成されている。
各CCDカメラ31は、CCDを撮像素子としたエリアセンサであり、クロスダイクロイックプリズム154から射出された光束を撮像して撮像画像を取得し、取得した撮像画像を制御装置40に出力する。なお、本実施形態では、各CCDカメラ31には、単板式のCCDカメラを採用している。
【0022】
具体的に、各CCDカメラ31は、クロスダイクロイックプリズム154から射出される光束のうち、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分に対応する光束を撮像する。また、具体的な図示は省略したが、各CCDカメラ31は、クロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面に対して近接隔離する方向(以下、Z軸方向)、Z軸に直交する2軸方向(X軸方向(図2中、紙面に平行な方向)、およびY軸方向(図2中、紙面に直交する方向)に移動可能に構成されている。そして、各CCDカメラ31は、制御装置40による図示しないモータ等の駆動部の制御により、クロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面に対してX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に位置調整される。
【0023】
制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を含んで構成され、製造装置1全体を制御する。この制御装置40は、液晶パネル移動手段41と、参照情報生成手段42と、最適位置算出手段43と、記憶手段44とを備える。
液晶パネル移動手段41は、3つの6軸位置調整装置10を制御することで各液晶パネル151を各光束入射側端面154Aに対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、Xθ方向、Yθ方向、およびZθ方向に移動させる。
【0024】
参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31のZ軸方向の位置と、各CCDカメラ31にて取得された撮像画像とに基づいて、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出するための参照情報を生成する。なお、参照情報を生成する手順については後に詳述する。この参照情報生成手段42は、CCDカメラ移動部421と、光源制御部422と、撮像画像取得部423とを備える。
【0025】
CCDカメラ移動部421は、各CCDカメラ31をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる。
光源制御部422は、各LED20R,20G,20Bを点灯または消灯させる。
撮像画像取得部423は、各CCDカメラ31に、クロスダイクロイックプリズム154から射出される光束のうち、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分に対応する光束を撮像させて撮像画像を取得する。
【0026】
最適位置算出手段43は、参照情報生成手段42にて生成された参照情報に基づいて、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出する。
記憶手段44は、光学装置本体150Aを製造するためのプログラムやデータ等を記憶するものであり、例えば、参照情報生成手段42にて生成された参照情報を記憶する。
【0027】
〔光学装置本体の製造方法〕
次に、製造装置1による光学装置本体150Aの製造方法を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、各液晶パネル151のZ軸方向の最適位置を算出するフォーカス調整方法を主に説明し、その他(アライメント調整方法、および固定方法等)の製造方法については説明を省略する。
【0028】
図3は、光学装置本体150Aのフォーカス調整方法を示すフローチャートである。
まず、作業者は、各射出側偏光板153が貼付されたクロスダイクロイックプリズム154を製造装置1内の所定位置に設置する。また、各液晶パネル151を各6軸位置調整装置10にそれぞれ保持させる。
そして、作業者により、光学装置本体150Aの製造を開始する旨の操作入力がなされると、製造装置1は、光学装置本体150Aの製造(フォーカス調整)を開始する。
【0029】
まず、液晶パネル移動手段41は、記憶手段44に記憶された各液晶パネル151の基準位置を読み込み、読み込まれた基準位置に各液晶パネル151を移動させる(ステップS1:基準位置移動工程)。なお、この基準位置は、フォーカス調整が既に高精度に実施され、製造装置1にて製造される光学装置本体150Aのフォーカス調整の基準となる光学装置(以下、基準光学装置とする)における各液晶パネルのZ軸方向の位置である。具体的に、各液晶パネル151を基準位置に移動させる場合には、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分のZ軸方向の位置を、基準光学装置における各液晶パネルの画像形成領域における四隅部分のZ軸方向の位置と略一致させるように移動させる。
【0030】
基準位置移動工程S1にて各液晶パネル151が基準位置に移動されると、参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31のZ軸方向の位置と、各CCDカメラ31にて取得された撮像画像とに基づいて、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出するための参照情報を生成する(ステップS2:参照情報生成工程)。
【0031】
具体的に、参照情報生成工程S2は、以下の手順により実施される。
まず、CCDカメラ移動部421は、各CCDカメラ31をZ軸方向に移動させる(ステップS21:撮像装置移動手順)。すなわち、撮像装置移動手順S21では、各CCDカメラ31をクロスダイクロイックプリズム154の光軸方向に沿って移動させる。この際、各CCDカメラ31は、Z軸方向の可動範囲において、クロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面に対して最も近接した位置から最も隔離した位置まで所定の分解能で段階的に移動される。
【0032】
撮像装置移動手順S21にて各CCDカメラ31が各位置に移動されると、光源制御部422は、各LED20R,20G,20Bのうち、いずれか1つの調整用光源装置20を点灯させる(ステップS22:光源切替手順)。この際、光源制御部422は、撮像装置移動手順S21にて各CCDカメラ31が各位置に移動するに従って、LED20B、LED20G、LED20Rの順に順次点灯させる。すなわち、光源制御部422は、撮像装置移動手順S21にて移動される各CCDカメラ31が各位置において、調整用光源装置20における各色光の射出状態を切り替える。
光源切替手順S22にて各LED20R,20G,20Bのうち、いずれか1つの調整用光源装置20が点灯されると、撮像画像取得部423は、各CCDカメラ31に、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分に対応する光束を撮像させて4つの撮像画像を取得する(ステップS23:撮像画像取得手順)。
【0033】
撮像画像取得手順S23にて撮像画像が取得されると、参照情報生成手段42は、各撮像画像における画素毎の輝度値に基づいて、各撮像画像のコントラストに基づく4つの指標値を算出する(ステップS24:指標値算出手順)。そして、参照情報生成手段42は、算出した各指標値と、各撮像画像を取得した際のCCDカメラ31の位置とを関連付けて記憶手段44に記憶させる。
なお、コントラストに基づく指標値としては、撮像画像の鮮明度を示す指標値であればよく、例えば、撮像画像中の全画素における最大輝度値と最小輝度値とに基づいて算出された値(コントラスト値)を指標値として採用してもよく、あるいは、撮像画像中の所定領域内における複数画素の輝度値のばらつき、すなわち、輝度値の分散値を指標値として採用してもよい。
【0034】
指標値算出手順S24にて各撮像画像の指標値が算出されると、参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31の位置が可動範囲内であるか否かを判定する(ステップS25:可動範囲判定手順)。
そして、参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31の位置が可動範囲内であると判定した場合には、再度、ステップS21を実行する。これに対して、参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31の位置が可動範囲内でないと判定した場合には、参照情報生成工程S2を終了する。
参照情報生成工程S2にて生成される参照情報は、指標値算出手順S24にて算出された指標値と、この指標値に係る撮像画像を取得した際のCCDカメラ31の各位置とが関連付けられた情報であり、各CCDカメラ31に対応して4つの参照情報が生成される。
【0035】
図4は、参照情報生成手段42にて生成された参照情報の一例を示すグラフである。
ここで、図4は、各CCDカメラ31に対応して生成される4つの参照情報のうち、1つの参照情報、すなわち、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分のうち、1つの隅部における参照情報を例示したグラフであり、指標値算出手順S24にて算出された指標値を縦軸とし、CCDカメラ31の各位置を横軸としている。また、図4では、縦軸方向の指標値は、大きくなるほど合焦状態に近いことを示し、横軸方向のCCDカメラ31の位置は、大きくなるほどクロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面からの距離が近接していることを示している。そして、LED20Bを点灯させた状態において算出された指標値を丸印で示し、LED20Gを点灯させた状態において算出された指標値を三角印で示し、LED20Rを点灯させた状態において算出された指標値を四角印で示している。
【0036】
参照情報生成工程S2にて各参照情報が生成されると、最適位置算出手段43は、生成された各参照情報に基づいて、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出する(ステップS3:最適位置算出工程)。
まず、最適位置算出手段43は、前述した参照情報生成工程S2を、基準光学装置に対して実施することで取得した各基準参照情報と、光学装置本体150Aに対してステップS1,S2を実施することで取得した各参照情報とを比較する。具体的に、各基準参照情報および各参照情報において、各調整用光源装置20を点灯させた状態において算出された各指標値が最大となるときの各CCDカメラ31の位置(以下、合焦位置とする)をそれぞれ比較する。
【0037】
そして、各基準参照情報における合焦位置と、各参照情報における合焦位置との差に基づいて、各液晶パネル151の画像形成領域における四隅部分のZ軸方向の最適位置、すなわち、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出する。
例えば、青色光用液晶パネルの各基準参照情報における合焦位置に対して、液晶パネル151Bの各参照情報における合焦位置がクロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面に対して所定距離だけ近接した位置にある場合には、液晶パネル151Bを、各光束入射側端面154Aに対して所定距離だけ隔離させた位置を最適位置として算出する。
【0038】
なお、各基準参照情報は、投射レンズを取り付けた状態の基準光学装置において、参照情報生成工程S2を実施することで生成される。これにより、投射レンズ160の色収差による各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置への影響を加味した状態で各基準参照情報を生成することができる。そして、このようにして生成された各基準参照情報との比較により算出された各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置は、投射レンズ160を取り付けた状態における最適位置と略一致する。
【0039】
最適位置算出工程S3にて各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置が算出されると、液晶パネル移動手段41は、算出された最適位置に各液晶パネル151を同時に移動させる(ステップS4:最適位置移動工程)。
以上のステップS1〜S4のフォーカス調整方法を実施した後、アライメント調整、および固定を実施することにより、光学装置本体150Aが製造される。なお、アライメント調整方法、および固定方法には、特開2006−208472号公報に記載される製造方法を採用することができる。
【0040】
本実施形態に係る光学装置本体150Aの製造方法によれば、次のような効果がある。
(1)各液晶パネル151が基準位置にある状態において、各CCDカメラ31をクロスダイクロイックプリズム154の光軸方向に沿って移動させながら、クロスダイクロイックプリズム154から射出される光束を各CCDカメラ31にて撮像することで、各参照情報を生成することができる。そして、生成された各参照情報と、各基準参照情報と比較することにより、生成された各参照情報に基づいて、各液晶パネル151の最適位置を算出することができ、各液晶パネル151を、算出された最適位置に同時に移動させることができる。したがって、光学装置本体150Aのフォーカス調整にかかる時間を短縮することができ、光学装置本体150Aの製造効率を向上させることができる。
【0041】
(2)各CCDカメラ31は、撮像装置移動手順S21にて移動される各CCDカメラ31の各位置において、各LED20R,20G,20Bのうち、いずれか1つの調整用光源装置20から射出された色光に基づく撮像画像を取得するので、単板式のCCDカメラを用いて撮像画像を取得する場合であっても各液晶パネル151の最適位置を容易に算出することができるとともに、小さいスペースで光学装置本体150Aを製造することができる。したがって、光学装置本体150Aの製造効率を向上させることができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省
略する。
前記第1実施形態では、光源切替手順S22において、光源制御部422は、調整用光源装置20における各色光の射出状態を切り替えていた。これに対して、本実施形態では、調整用光源装置20における各色光の射出状態を切り替えることなく、各LED20R,20G,20Bを全て点灯させている点で前記第1実施形態と異なる。
【0043】
図5は、光学装置本体150Aのフォーカス調整方法を示すフローチャートである。
まず、作業者は、各射出側偏光板153が貼付されたクロスダイクロイックプリズム154を製造装置1内の所定位置に設置する。また、各液晶パネル151を各6軸位置調整装置10にそれぞれ保持させる。
そして、作業者により、光学装置本体150Aの製造を開始する旨の操作入力がなされると、製造装置1は、光学装置本体150Aの製造(フォーカス調整)を開始する。
【0044】
まず、液晶パネル移動手段41は、記憶手段44に記憶された各液晶パネル151の基準位置を読み込み、読み込まれた基準位置に各液晶パネル151を移動させる(ステップS11:基準位置移動工程)。なお、この基準位置は、液晶パネル151Rについては、基準光学装置における赤色光用液晶パネルのZ軸方向の位置に対してクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aから離間させる方向に所定距離だけ移動させた位置である。また、液晶パネル151Gについては、基準光学装置における緑色光用液晶パネルのZ軸方向の位置であり、液晶パネル151Bについては、基準光学装置における青色光用液晶パネルのZ軸方向の位置に対してクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aに近接させる方向に所定距離だけ移動させた位置である。すなわち、各液晶パネル151のクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aからの距離を意図的にずらしている。
【0045】
基準位置移動工程S11にて各液晶パネル151が基準位置に移動されると、参照情報生成手段42は、各CCDカメラ31のZ軸方向の位置と、各CCDカメラ31にて取得された撮像画像とに基づいて、各液晶パネル151の各光束入射側端面154Aに対する最適位置を算出するための参照情報を生成する(ステップS12:参照情報生成工程)。
具体的に、参照情報生成工程S12は、以下の手順により実施される。
まず、光源制御部422は、各LED20R,20G,20Bを全て点灯させる(ステップS121:光源点灯手順)。
光源点灯手順S121にて調整用光源装置20が点灯されると、前記第1実施形態と同様に、参照情報生成手段42は、ステップS21,S23〜S25を実施する。
【0046】
図6は、参照情報生成手段42にて生成された参照情報の一例を示すグラフである。
ここで、基準位置移動工程S11にて移動される各液晶パネル151におけるクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aからの距離は、液晶パネル151Rが最も離間した位置であり、液晶パネル151Bが最も近接した位置である。したがって、図6に示すように、液晶パネル151Rにおける指標値は、他の液晶パネル151G,151Bと比較してクロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面からCCDカメラ31が最も近接した位置で大きくなり、液晶パネル151Bにおける指標値は、他の液晶パネル151R,151Gと比較してクロスダイクロイックプリズム154の光束射出側端面からCCDカメラ31が最も離間した位置で大きくなる。すなわち、基準位置移動工程S11にて各液晶パネル151のクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aからの距離を意図的にずらしていることで、各液晶パネル151の合焦位置を意図的にずらしている。
【0047】
参照情報生成工程S12にて各参照情報が生成されると、前記第1実施形態と同様に、最適位置算出手段43は、最適位置算出工程S3を実施し、液晶パネル移動手段41は、最適位置移動工程S4を実施する。
以上のステップS11〜S4のフォーカス調整方法を実施した後、アライメント調整、および固定を実施することにより、光学装置本体150Aが製造される。
【0048】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)と同様の作用効果を奏することができる他、以下の作用効果を奏することができる。
(3)基準位置移動工程S11にて各液晶パネル151のクロスダイクロイックプリズム154の光束入射側端面154Aからの距離を意図的にずらしていることで、各液晶パネル151の合焦位置を意図的にずらしているので、各液晶パネル151の最適位置を容易に算出することができ、光学装置本体150Aの製造効率を向上させることができる。
【0049】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、最適位置算出工程S3において、基準光学装置に対して参照情報生成工程S2を実施することで取得した各基準参照情報と、光学装置本体150Aに対してステップS1,S2,S11,S12を実施することで取得した各参照情報とを比較することにより最適位置を算出していた。これに対して、最適位置算出工程では、例えば、参照情報生成工程にて生成された参照情報と、理論値とを比較することにより最適位置を算出してもよく、要するに、最適位置算出工程では、参照情報生成工程にて生成された参照情報に基づいて、前記最適位置を算出すればよい。
【0050】
前記第1実施形態では、撮像装置移動手順S21を実施した後、光源切替手順S22を実施しているが、これらの手順は逆であってもよく、要するに、撮像装置は、撮像装置移動手順にて移動される撮像装置の各位置において、各調整用光源装置のうち、いずれか1つの調整用光源装置から射出された色光に基づく撮像画像を取得すればよい。
前記各実施形態では、撮像装置として単板式のCCDカメラを採用していたが、例えば、3板式のCCDカメラを採用してもよい。なお、この場合には、調整用光源装置における各色光の射出状態の切り替えることや、各光変調装置の基準位置を意図的にずらすこと等をすることなく最適位置算出工程にて最適位置を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、光学装置の製造方法に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態における製造対象とされる光学装置を備えるプロジェクタの構造を模式的に示す図。
【図2】前記実施形態における光学装置本体の製造装置の概略構成を模式的に示す図。
【図3】前記実施形態における光学装置本体のフォーカス調整方法を示すフローチャート。
【図4】前記実施形態における参照情報生成手段にて生成された参照情報の一例を示すグラフ。
【図5】第2実施形態における光学装置本体のフォーカス調整方法を示すフローチャート。
【図6】前記実施形態における参照情報生成手段にて生成された参照情報の一例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
S1,S11…基準位置移動工程、S2,S12…参照情報生成工程、S21…撮像装置移動手順、S22…光源切替手順、S23…撮像画像取得手順、S3…最適位置算出工程、S4…最適位置移動工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色光を色光毎に画像情報に応じて変調して画像光を形成する複数の光変調装置と、前記各光変調装置にて形成された各画像光を合成する色合成光学装置とを備える光学装置の製造方法であって、
前記各光変調装置を、所定の基準位置に移動させる基準位置移動工程と、
前記色合成光学装置から射出される光束を撮像して撮像画像を取得する撮像装置の当該色合成光学装置に対する位置と、当該撮像装置にて取得された撮像画像とに基づいて、前記各光変調装置の当該色合成光学装置に対する最適位置を算出するための参照情報を生成する参照情報生成工程と、
参照情報生成工程にて生成された参照情報に基づいて、前記最適位置を算出する最適位置算出工程と、
前記最適位置算出工程にて算出された最適位置に前記各光変調装置を移動させる最適位置移動工程とを備え、
前記参照情報生成工程は、
前記撮像装置を、前記色合成光学装置の光軸方向に沿って移動させる撮像装置移動手順と、
前記撮像装置移動手順にて移動される前記撮像装置の各位置において、当該撮像装置に撮像画像を取得させる撮像画像取得手順とを備えることを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置の製造方法において、
前記参照情報生成工程は、
前記撮像装置移動手順にて移動される前記撮像装置の各位置において、前記各光変調装置に導入する各色光を射出する複数の調整用光源装置における各色光の射出状態を切り替える光源切替手順を備えることを特徴とする光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−75214(P2009−75214A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242264(P2007−242264)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】