説明

光学装置及びその製造方法

【課題】 高いバリア特性の封止構造を有し、高安定な光学特性を長期間維持できる、色素増感型太陽電池等として構成される光学装置を提供すること。
【解決手段】 互いに対向する複数の基板210、240を具備し、これらの基板間の内部空間に電解液230が収容されている光学装置において、前記複数の基板のうちいずれかの基板に外部に通じる貫通孔254が形成され、この貫通孔が、外部に開口する凹部250と、この凹部に連接しかつ前記内部空間に開口した連通孔252とから構成され、凹部250の領域内に連通孔252が存在し、凹部250の最大開口面積をS2、連通孔252のうち凹部250との連接位置における開口面積をS1とするとき、S1<S2の関係を満たす光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池、液晶表示装置、表示装置等として構成される光学装置及びその製造方法に関し、特に光学装置の封止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に必要な特性としては、長期にわたり安定した光電変換特性を示すことが挙げられる。特に、増感色素を担持した半導体を用いる色素増感型太陽電池の場合、その構成要素として液状又はゲル状の電解質成分を含むことなどから、電解質成分の電池からの揮発又は漏洩、或いは大気中から電解質中への水分、酸素、その他の成分の浸入等による性能の低下を避けることが課題とされてきた。
【0003】
この問題を解決するための方法として、電解質として不揮発性の溶融塩電解液を用いる方法(例えば、特開2001−196105号公報)、ゲル状電解質を用いる方法(例えば、特開2001−536513号公報)等が検討されてきた。また、封止材を用いて電解質を封止(エンドシール)する方法が記載されている(例えば、後記の特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の実施例1では、対電極が被着したフイルムに設けられた電解液注入口から電解液を、酸化チタン膜と対電極の間に注入し、電解液注入口の周囲に付着した電解液を拭き取って、シリコーン粘着テープで電解液注入口を封止した後、一液性紫外線硬化樹脂でシリコーン粘着テープを被着している。
【0005】
また、特許文献1に記載の実施例2では、対電極が被着したフイルムに設けられた電解液注入口から電解液を、増感色素を担持した電極と対電極の間に注入し、電解液注入口の部分の電解液を除去し、電解液注入口の部分に空隙を作り、電解液注入口の周囲に付着した電解液を拭いた後、シリコーン粘着剤付きポリイミドテープで電解液注入口を塞いだ後に、エポキシ樹脂で補強、封止している。なお、特許文献1の実施例1、2に関して電解注入口の具体的な形状に関する図の記載はされていない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−119306号公報(段落0049、0051、0057)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湿式デバイスとして構成される色素増感型太陽電池に代表される光学装置において、素子の寿命を決定する最大のポイントは封止技術である。向かい合わせた基板の隙間へ液体を注入する湿式デバイスとして構成された光学装置の多くは、液体注入前に素子の外周を封止(メインシール)した後、別途設けられた注液口から液体を注入するのが一般的である。この際、素子の外周の封止は、前記隙間へ液体を注入前に行えることもあり、液体と封止剤が直接触れない状態で硬化させるため、その封止性能は比較的高い。一方、前記隙間へ液体を注入した後の最終的な注液口の封止(いわゆるエンドシール)は、内部へ注入した液体と硬化前の封止剤が注液口付近で触れてしまうことによって接着強度が著しく低下するという問題がある。
【0008】
また、平滑な基板上へ封止剤を盛り付けて硬化させる方法が一般的であるが、硬化後の封止剤が物理的な接触によって剥離してしまう場合や、基板と樹脂の界面から液漏れが生じてしまう課題がある。また、封止性能を高めるために注液口へバリア特性の高い基材を貼り付けて封止する場合もあるが、小型の携帯機器などへ素子を組み込む場合、この基材の厚みが問題になる場合がある。
【0009】
図9は、従来技術の特許文献1の記載から想定される、湿式デバイスとして構成される色素増感型太陽電池の構成を説明する図であり、図9(A)は色素増感型太陽電池の概略平面図、図9(B)はA−A部の概略断面図、図9(C)はB−B部の概略部分断面図である。
【0010】
特許文献1に記載される色素増感型太陽電池300の構造は図9に示すように構成されていると想定される。即ち、透明導電膜(透明電極)314を備えた透明基板312と、透明電極314の対極をなす導電膜(対向電極)342及び集電材344を有する基板346との間に、金属酸化物半導体層316及び電解質層(電解液)330が設けられている。半導体層316は、酸化物半導体材料及び増感色素を有する。また、透明導電膜314と導電膜342は導線で接続されており、アンメータ(電流計)357を有する電流回路358が形成されている。受光面359以外の面の側で、受光基板310(透明基板312と透明電極314構成される)と対向基板340(基板346、集電材344、導電膜342から構成される)との間に第1の封止材320が設けられ、半導体層316及び電解質層316が封止されている。
【0011】
特許文献1に記載の実施例では、図9(C)に示すように、受光基板310と対向基板340との間に電解液330を、対向基板340を貫通する電解液注入口352(図9に示す例では、4ケ所)から注入した後、テープ353(シリコーン粘着テープ、あるいは、シリコーン粘着剤付きポリイミドテープ)で電解液注入口352を封止し、次いで、樹脂354(一液性紫外線硬化樹脂、あるいは、エポキシ樹脂)でテープ353を被着し、補強、封止している。
【0012】
しかし、特許文献1に記載の電解液の封止技術では、テープ353を補強、封止する樹脂354は、対向基板340の外面に凸状となってしまう。この凸状の補強・封止部位のために、太陽電池の厚さが増大するという課題がある。また、図9に示す太陽電池を電池セルとして積層して、積層型太陽電池を作製しようとすると、凸状の補強・封止部位が存在するため、密着して電池セルを積層することができず、光-電気変換効率の良い小型の積層型太陽電池を実現することが困難となるという問題がある。
【0013】
さらに、特許文献1に記載の封止技術では、電解液注入口352から電解液330を注入した後、電解注入口352をエンドシールする前に電解液注入口352の周辺に付着した電解液を拭き取るとき、電解液注入口352の中の電解液は一旦なくなるが、その後、毛管現象で電解液330は電解液注入口352の中に浸入するので、電解液注入口352を封止するテープ353及び樹脂353と対向基板340との界面に浸入してしまい、接着強度が小さくなり、外部からの機械的な接触により凸状の補強・封止部位が剥離し易くなるという課題がある。従って、太陽電池内部からの電解液の揮発又は漏洩、或いは、大気中から太陽電池内部への水分、酸素、その他の成分の浸入が生じてしまい、このため、高いバリア特性を長期間保持することができず、高安定な太陽電池の特性を長期間維持できないという課題がある。
【0014】
テープ353を使用せず、樹脂354のみで電解液注入口352をエンドシールする場合にも、同様の問題を生じ、さらに樹脂354が電解液に直接接触するために劣化の程度が大きくなると考えられる。さらに、湿式デバイスとして構成される、液晶表示装置、エレクトロクロミック表示装置の場合にも、装置の内部に表示に寄与する機能材料を注入して封止する必要があるので、これらの各装置においても同様の問題があることは明らかである。
【0015】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高いバリア特性を有し高安定な光学特性を長期間維持できる、色素増感型太陽電池、液晶表示装置、エレクトロクロミック表示装置等として構成される光学装置、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
即ち、本発明は、互いに対向する複数の基体を具備し、これらの基体間の内部空間に電解液等の機能物質が収容されている光学装置において、前記複数の基体のうちいずれかの基体に外部に通じる貫通孔が形成され、この貫通孔が、外部に開口する凹部と、この凹部に連接しかつ前記内部空間に開口した連通孔とから構成され、前記凹部の領域内に前記連通孔が存在すると共に前記凹部内の少なくとも底部が封止材によって閉塞され、前記凹部の最大開口面積をS2、前記連通孔のうち前記凹部との連接位置における開口面積をS1とするとき、S1<S2の関係を満たすことを特徴とする光学装置に係るものである。
【0017】
また、前記光学装置の第1の製造方法であって、前記複数の基体を互いに接着する工程と、前記凹部の開口部より前記機能物質を前記内部空間に注入する工程と、前記凹部内の少なくとも底部に封止材を充填する工程とを有する、光学装置の製造方法に係るものである。
【0018】
更に、前記光学装置の第2の製造方法であって、前記前記複数の基体のうちいずれかの基体に固体状の電解質層を形成する工程と、前記複数の基体を互いに接着する工程と、前記貫通孔を通じて前記内部空間を排気する工程と、前記凹部内の少なくとも底部に封止材を充填する工程とを有する、光学装置の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光学装置によれば、前記貫通孔をS1<S2の関係にある連通孔と凹部とで構成しているので、凹部内の封止材に対する機能物質の接触を少なくでき、その封止性能を高く保持できる。従って、光学装置の内部の機能物質又はその成分の揮発又は漏洩、或いは、大気中から前記機能物質又はその成分への水分、酸素、その他の成分の侵入を効果的に防ぐことができるという、高いバリア特性を長期間保持することができ、高く安定した光学装置の特性を長期間にわたり維持することができると共に、素子の厚みも増えることはない。
【0020】
本発明の光学装置の第1の製造方法によれば、機能物質を内部に注入するのに用いる前記貫通孔(注液口)の形状を上記のように改良することで、素子の厚みを増やさず、封止性能および耐久性が高い湿式デバイスから構成される光学装置の製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明の光学装置の第2の製造方法によれば、内部を排気する機能をなす前記貫通孔(排気口)の形状を上記のように改良することで、素子の厚みを増やさず、封止性能および耐久性が高い乾式デバイスから構成される光学装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の光学装置では、前記凹部の最大開口面積をS2、前記連通孔のうち前記凹部との連接位置における開口面積をS1とするとき、S2>S1であり、(S2/S1)を1.5以上とするのが好ましい。S2を注液ノズル又は排気用ノズルの先端が挿入可能な大きさとし、S1を内部の機能物質の浸出を防ぎ、注液ノズルからの液体の侵入を防止するような大きさとするために、S2>S1とし、(S2/S1)を1.5以上とする。こにより、安定した注液操作又は排気操作が可能となる。より好ましくは(S2/S1)を2以上とする。これにより、さらに注液操作又は排気操作を良好にすることが可能となる。
【0023】
また、本発明の光学装置では、前記凹部又は前記連通孔は円柱状又は円錐台状の形状を有するのが好ましい。これにより、前記凹部及び前記連通孔を容易に形成することが可能となる。
【0024】
また、本発明の光学装置では、前記凹部の開口の最大直径はφ0.5mm〜φ50mmであり、前記連接位置における前記連通孔の開口の直径はφ0.1mm〜φ10mmであることが好ましい。一般的にいえば、前記凹部の開口に前記注液ノズル又は前記排気用ノズルの先端が挿入可能な大きさであるためには、前記凹部の開口の最大直径はφ0.5mm〜φ50mmであればよく、前記連接位置において内部への機能物質の注入を十分に行い、また注液後の浸出を減少するような大きさであるためには、前記連接位置における前記連通孔の開口の直径はφ0.1mm〜φ10mmであればよい。
【0025】
注液ノズル又は排気用ノズルにより注液すべき液量又は排気すべき排気量、即ち、注入すべき対象空間の容積又は排気すべき対象空間の容積に応じて、前記凹部の開口の最大直径および前記連接位置における前記連通孔の開口の直径の大きさを設定することにより、効率良く作業性良く注液操作又は排気操作を行うことが可能となる。容積が大である場合は開口を大とし、容積が小である場合は開口を小とし、注入すべき対象空間の容積又は排気すべき対象空間の容積に対応して、前記凹部の開口の最大直径および前記連接位置における前記連通孔の開口の直径を変更すればよい。
【0026】
さらに好ましくは、前記凹部の開口の最大直径はφ1mm以上とし、前記連接位置における前記連通孔の開口部の直径はφ0.3mm〜φ0.5mmとする。前記凹部に封止用樹脂を注入するには前記凹部の開口の最大直径はφ1mm以上とする必要がある。φ1mm以上の先端外径をもつ注液ノズルを用いることにより、注液ノズルの先端は前記凹部に挿入可能であり、前記凹部にだけ注入すべき封止用樹脂が前記連通孔に入り込みにくくできる。
【0027】
また、前記複数の基体は、第1の基体と透明な第2の基体とを含み、前記第1の基体と前記第2の基体はメインシール用の封止材により互いに接着され、前記第1の基体及び前記第2の基体のいずれかの部位に前記貫通孔が形成されることが好ましく、光学装置の目的及び構成に応じて、作業のし易い場所に貫通孔を形成する。
【0028】
また、本発明の光学装置は、湿式(又は乾式)デバイスとして構成され、封止性能が高く高いバリア特性を長期間保持することができ、高く安定した光学装置の特性を長期間にわたり維持可能であり、高信頼性を維持することが可能である。こうした光学装置の代表例は、色素増感型太陽電池、液晶表示装置又はエレクトロクロミック表示装置である。
【0029】
本発明の光学装置の第1の製造方法では、前記凹部に充填される前記封止材は液状の樹脂前駆体であることが好ましく、これにより、作業性を良好とすることができる。
【0030】
さらに、前記液状の樹脂前駆体は光硬化型であることが好ましく、これにより、硬化後の樹脂を残したくない部位に存在する硬化前の封止材を拭き取りなどにより除去することが可能となる。
【0031】
また、前記樹脂前駆体の充填後、板体により前記樹脂前駆体を覆い、更に前記樹脂前駆体を硬化させることが好ましい。これにより、光学装置のバリア特性をさらに向上可能な高信頼性の光学装置とその製造方法を提供できる。
【0032】
さらに、前記凹部における前記封止材又は前記板体の表面が、前記基体の表面と同一面に存在していることが好ましい。これにより、光学装置の素子厚さが小さくなると共に、例えば、色素増感型太陽電池を電池セルとして積層して、積層型太陽電池を作製しようとする場合にも、凸状の補強・封止部位が存在しないため、密着して複数の電池セルを積層することが可能であり、バリア特性に優れた小型の積層型太陽電池を実現することが可能な光学装置とその製造方法を提供できる。
【0033】
本発明の光学装置の第2の製造方法では、前記第2の封止材は液状の樹脂前駆体であることが好ましい。これにより、本発明の光学装置の第1の製造方法と同様に、作業性を良好とすることができる。
【0034】
前記液状の樹脂前駆体は光硬化型であることがより好ましく、これにより、本発明の光学装置の第1の製造方法と同様に、硬化後の樹脂を残したくない部位に存在する硬化前の封止材を拭き取りなどにより除去することが可能となる。
【0035】
また、前記樹脂前駆体の充填後、板体により前記樹脂前駆体を覆い、更に前記樹脂前駆体を硬化させることがより好ましい。これにより、本発明の光学装置の第1の製造方法と同様に、光学装置のバリア特性をさらに向上可能な高信頼性の光学装置とその製造方法を提供できる。
【0036】
さらに、前記凹部における前記封止材又は前記板体の表面が、前記基体の表面と同一面に存在していることがより好ましい。これにより、本発明の光学装置の第1の製造方法と同様に、光学装置の素子厚さを小さくできると共に、例えば、色素増感型太陽電池を電池セルとして積層して、積層型太陽電池を作製しようとする場合にも、凸状の補強・封止部位が存在しないため、密着して複数の電池セルを積層することが可能であり、バリア特性に優れた小型の積層型太陽電池を実現することが可能な光学装置の製造方法を提供できる。
【0037】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。なお、各図面では、構成を明確にするために必要に応じて各部を誇張して描いている。
【0038】
第1の実施の形態
以下、本発明に基づく湿式デバイスとして構成される光学装置の例として、色素増感型太陽電池を例にとって詳細に説明する。
【0039】
一般的な色素増感型太陽電池は、光の入射側より、透明電極(透明導電性膜)が形成された透明基板、多孔質色素増感半導体層、電解質層、対向電極(導電膜)が形成された対向基板が順に重ねられた構造をとる。多孔質色素増感半導体層と対向電極を向かい合わせて、透明基板と対向基板は間隙をもって封止材を用いて張り合わせられており、電解質層(電解液)は対向基板に開けられた貫通孔(注液口)より透明基板と対向基板の隙間へ充填される。
【0040】
ここで、対向基板に開けられた貫通孔(注液口)の開口面積は基板内面側と外面側で異なり、それぞれの開口部の面積に制限は無いが、基板内面側<基板外面側である。それぞれの開口部の形状にも制限は無いが、大きさの異なる複数の円柱状もしくは円角錐台状の円形の穴が組み合わせられた形状とすれば作製が容易である点から好ましい。貫通孔(注液口)の基板内面側の開口部の直径に制限は無いが、封止性能を考えると小さい方が好ましく、逆に小さすぎると電解液の注入が困難になるため、好ましいサイズが存在する。具体的にはφ0.1mm〜10mmが特に好ましい。同様に、基板外面側の開口部の直径にも制限は無いが、やはり封止性能を考える小さい方が好ましく、一方で封止剤を充填するために適度の開口面積が必要となる。具体的にはφ0.5mm〜50mmが特に好ましく、開口部の面積は基板内面側<基板外面側を満たすことが必要である。
【0041】
基板外面側の貫通孔(注液口)より電解液を注入し、その後、基板外面側の開口部の凹部に液状の樹脂前駆体を充填し、硬化させることで封止を行う方法が好ましい。必要であれば、気体及び/又は液体に対して遮断性が高く、気体及び/又は液体に対する透過性が低い基材(低透過性の基材)で封止剤を被覆することも可能である。また、物理的な強度を考慮して、この凹部に充填した封止剤ならびに被覆した基材は基板外面よりも凸にならないことが好ましい。このために基板外面をスキージングすると良い。このようにして、硬化後の封止剤及び低透過性の基材は凹部の内部にだけ存在するように、凹部の外部に出ないようにする。本発明の注液口を封止する封止剤に制限は無いが、封止が容易である点から光硬化型の封止剤を用いることが好ましい。
【0042】
図1は、本実施の形態による色素増感型太陽電池を説明する図であり、図1(A)は色素増感型太陽電池の概略平面図、図1(B)はA−A部の概略断面図、図1(C)はB−B部の概略部分断面図である。
【0043】
図1(C)は、連通孔252、凹部250から形成される貫通孔(注液口)254を示す。貫通孔254は単数でも複数個でもよい。図1に示す例では、貫通孔254を4ケ所に設けている。貫通孔254は連通孔252、凹部250から形成されるが、凹部250の形状は、後述するように種々可能である。
【0044】
図1に示すように、色素増感型太陽電池200は、透明導電膜(透明電極)214を備えた透明基板212と、透明電極214の対極をなす導電膜(対向電極)242及び集電材244を有する基板246との間に、金属酸化物半導体層216及び電解質層(電解液)230が設けられている。半導体層216は、酸化物半導体材料及び増感色素を有する。透明電極214の透明基板212と反対の面に、電気抵抗を低下させるためにNi、Ti等の金属218等によりストライプ状又はメッシュ状の配線パターンが、開口率80%程度以上を保持するように形成されている。
【0045】
また、透明電極214と導電膜242は導線で接続されており、アンメータ(電流計)257を有する電流回路258が形成されている。受光面259以外の面の側で、受光基板210(透明基板212と透明電極214構成される)と対向基板240(基板246、集電材244、導電膜242から構成される)との間に第1の封止材(メインシール)220が設けられ、半導体層216及び電解質層230が封止されている。凹部250は、第2の封止材(エンドシール)270およびガラス板260により封止される。
【0046】
図2は、図1(C)における貫通孔の封止を説明する概略断面図であり、図2(A)は後述する実施例1の構成、図2(B)は図2(A)の変形例の構成の構成を示す。
【0047】
電解液230をガラス板260から連通孔252を通して内部に注入した後、凹部250の内面および凹部250の周辺に付着した電解液は拭き取られる。次に、図2(A)に示すように、連通孔252、凹部250から形成される貫通孔254では、凹部250の底面に接続する連通孔252の部分は樹脂等の第2の封止材270により封止され、さらに、第2の封止材270はガラス板260によってカバーされており、凹部250の内面と第2の封止材270とガラス板260との3者は樹脂等により一体化されており、ガラス板260及びこれを固定する樹脂等は、対向基板240の表面の外部に突出しないようにする。すなわち、対向基板240の表面の外部に突出した樹脂等はスキージングして、対向基板240の表面と同一面にして平坦化する。この結果、凹部250の近傍の対向基板240の外側面には凸部が生じない。
【0048】
また、図2(B)に示すように、凹部250の底面に接続する連通孔252の部分は樹脂等の第2の封止材270により封止され、さらに、第2の封止材270は凹部250の内部全体を埋め、対向基板240の表面の外部に突出した第2の封止材270をスキージングして、第2の封止材270が対向基板240の表面と同一面になるように平坦化する構成としてもよい。
【0049】
図3は、本実施の形態における貫通孔の形状例を説明する概略断面図である。ここで、対向基板240の外側面における凹部250の内径をW2とし、対向基板240の内側面における連通孔252の内径をW1とする。
【0050】
図3(A)に示す貫通孔の形状は、図2(A)と同じであり、凹部250は円柱または角柱の形状をなしている。角柱として三角柱、四角柱等が可能である。
【0051】
図3(B)に示す凹部250は円錐台または角錐台の形状をなしている。
【0052】
図3(C)凹部250は半円球の形状をなしている。
【0053】
図3(D)に示す凹部250は、径の異なる複数の円柱または辺長の異なる複数の角柱を対向基板240に複数段に掘り込んで形成されている。角柱として三角柱、四角柱等が可能である。これらの各円柱または各角柱の高さは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
図3(E)に示す凹部250は、上面および下面の径の異なる複数の円錐台または上面および下面の辺長の異なる複数の角錐台を対向基板240に複数段に掘り込んで形成されている。角錐台として三角錐台、四角錐台等が可能である。これらの各円錐台または各角錐台の高さは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
以下、対向基板240の外側面における径W2と、対向基板240の内側面における連通孔252の内径W1との関係について説明する。
【0056】
内径W2は凹部250の内部に第2の封止材270を注入する注液ノズルの先端が挿入可能な大きさをもち、注液ノズルからの液体が連通孔252の内部に侵入しないように、W1<W2の関係を満たすものとする。従って、対向基板240の外側面における凹部250の開口面積をS2とし、対向基板240の内側面における連通孔252の開口面積をS1とすると、S1<S2の関係を満たすものとする。ここで、(S2/S1)は1.5以上、更には2以上がよく、またW2は0.5〜50mm(特に1mm以上)、W1は0.1〜10mm(特に0.3〜0.5mm)とする。
【0057】
注液ノズルの先端を凹部250の内部に挿入して硬化前の封止材を凹部に充填した後、封止材の硬化を行うことにより、封止材が対向基板240から剥れ難く、耐久性が大幅に向上する。
【0058】
図4は、本実施の形態による色素増感型太陽電池の作製工程の一例を説明する図である。
【0059】
図4(A)に示すように、半導体層216が形成された受光基板210、および、凹部250と連通孔252が形成された対向基板240を作製する。次いで、図4(B)に示すように、受光基板210と対向基板240とを対向させて、第1の封止材220により受光基板210と対向基板240とを一体化させる。この結果、受光基板210、対向基板240、第1の封止材220の3者により内部空間が形成される。次いで、電解液を注入する注液ノズルの先端を凹部250の内部に挿入して、図4(C)に示すように、前記内部空間へ気泡が混入しないように電解液230を注入する。次いで、図2で説明した手順に従い、図4(D)に示すように、第2の封止材270とガラス板260により凹部250を封止する。
【0060】
透明基板212は特に制限されず、透明であれば種々の基材を用いることができる。また、湿式デバイスとして構成される太陽電池外部から浸入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性に優れている材料が好ましく、具体的には、石英、サファイア、ガラス等の透明無機基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルフォン類、ポリオレフィン類等の透明プラスチック基板が挙げられ、これらに限定されないが、特に可視光領域の透過率が高い基板を用いるのが好ましい。ここでは、アルカリ水溶液下で水熱処理されるため、耐アルカリ性の高い基板が支持体として特に好ましい。また、これら支持体の厚みは特に制限されず、光の透過率、湿式デバイスとして構成される太陽電池内部と外部の遮断性によって自由に選択することが出来る。
【0061】
透明基板212に形成される透明導電膜(透明電極)214は表面抵抗が低い程好ましい。具体的には500Ω/□以下が好ましく、100Ω/□以下がさらに好ましい。この透明導電膜214を形成する材料として、公知の材料が使用可能であり、具体的にはインジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープSnO2(FTO)、アンチモンドープSnO2(ATO)、SnO2等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、表面抵抗を低減、集電効率向上させる目的で、導電性の高い金属(Ni、Ti)218やカーボンの配線を形成することも可能である。この配線はパターン化して開口率を上げ、集光面積を十分確保するようにする。
【0062】
半導体層216を構成する半導体微粒子としては、シリコンに代表される単体半導体の他に、化合物半導体またはペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。具体的に例示するとTiO2、ZnO、WO3、Nb25、TiSrO3、SnO2であり、特に好ましくはアナターゼ型のTiO2である。また、半導体の種類はこれらに限定されるものでは無く、単独もしくは2種類以上混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子は粒子状、チューブ状、棒状など必要に応じて様々な形態を取ることが可能である。
【0063】
半導体層216を形成するために半導体の製膜方法に特に制限は無いが、物性、利便性、製造コスト等を考慮した場合、半導体微粒子の湿式による製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一分散したペーストを調製し、透明導電膜を形成した基板上に塗布する方法が好ましい。塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等など様々な方法により行うことができる。
【0064】
結晶酸化チタンの結晶型はアナターゼ型が光触媒活性の点から好ましい。アナターゼ型酸化チタンは市販の粉末、ゾル、スラリーでもよいし、あるいは酸化チタンアルコキシドを加水分解する等の公知の方法によって所定の粒径のものを作ってもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、塗布液調製時に乳鉢やボールミル等を使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき二次凝集が解かれた粒子が再度凝集するのを防ぐため、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などを添加することができる。また、増粘の目的でポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、セルロース系の増粘剤など、各種増粘剤を添加することもできる。
【0065】
これらの半導体微粒子の粒径に特に制限は無いが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、この上記半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を2種類以上混合し、入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20〜500nmであることが好ましい。
【0066】
半導体層216は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この上限に特に制限はないが、通常1000倍程度である。一般に、半導体微粒子含有層の厚みが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。
【0067】
従って、半導体微粒子層には好ましい厚さが存在するが、一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。半導体微粒子は支持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限は無いが、温度を上げ過ぎると基盤の抵抗が高くなってしまい、溶融することもあるため、通常は40℃〜700℃であり、より好ましくは40℃〜650℃である。また、焼成時間にも特に制限は無いが、通常は10分〜10時間程度である。
【0068】
焼成後、半導体粒子の表面積の増大や、半導体粒子間のネッキングを高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いたネッキング処理、直径10nm以下の半導体超微粒子ゾルのディップ処理を行っても良い。透明導電性基板の支持体にプラスチック基板を用いている場合は、結着剤を含むペーストを基板上に製膜し、加熱プレスによる基板への圧着も可能である。
【0069】
半導体層216に担持させる色素としては、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン等のキサンテン系色素、メロシアニンキノシアニン、クリプトシアニン等のシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルー等の塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリン等のポルフィリン系化合物、その他アゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、Ruビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素等が挙げられる。この中でもRuビピリジン錯化合物は量子収率が高く特に好ましいが、これに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0070】
上記色素の半導体層216への吸着方法に特に制限は無いが、上記色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水等の溶媒に溶解させ、半導体層を有する電極を浸漬、もしくは色素溶液を半導体電極層に塗布することができる。また、色素同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸等を添加してもよい。また紫外線吸収剤を併用することもできる。色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。アミン類の例としてピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられ、これらアミン類が液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0071】
対向電極242は導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性の物質でも半導体層216に面している側に導電層が設置されていれば、これも使用可能である。ただし、電気化学的に安定である材料を電極として用いることが好ましく、具体的には、白金、金、およびカーボン、導電性ポリマー等を用いることが望ましい。
【0072】
また、酸化還元の触媒効果を向上させる目的で、半導体層216に面している側は微細構造で表面積が増大していることが好ましく、例えば、白金であれば白金黒状態に、カーボンであれば多孔質状態になっていることが望まれる。白金黒状態は白金の陽極酸化法、塩化白金酸処理などによって、また多孔質状態のカーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法により形成することができる。また、透明導電性基板上に白金など酸化還元触媒効果の高い金属を配線するか、表面を塩化白金酸処理することにより、透明な対極として使用することもできる。
【0073】
電解質層230の電解質は、I2と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物の組み合わせ、Br2と金属臭化物あるいは有機臭化物の組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを用いることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cs等、上記有機化合物のカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等の4級アンモニウム化合物が好適であるが、これらに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。この中でも、I2とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物を組み合わせた電解質が好適である。
【0074】
電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M〜5Mが好ましく、さらに好ましくは0.2M〜1Mである。I2やBr2の濃度は0.0005M〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001M〜0.1Mである。また、開放電圧、短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやカルボン酸など各種添加剤を加えることもできる。
【0075】
電解質層230の溶媒として水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。また、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩のイオン性液体を用いることも可能である。
【0076】
湿式デバイスとして構成される太陽電池内部からの漏液、電解質の揮発を低減する目的で、電解質の溶液へ、ゲルマトリクスとしてゲル化剤、ポリマー、架橋モノマーなどを溶解させて太陽電池内部へ注入した後にゲル化を行いゲル状電解質とした電解質層230を使用することも可能である。ゲルマトリクスと電解質の比率は、電解質が多ければイオン導電率は高くなるが、機械的強度は低下する。また、逆に電解質が少なすぎると機械的強度は大きいがイオン導電率は低下するため、電解質はゲル状電解質の50wt%〜99wt%が望ましく、80wt%〜97%がより好ましい。また、後述するように、上記電解質と可塑剤を用いてポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで、乾式バイスとして構成される全固体型の太陽電池を実現することも可能である。
【0077】
湿式デバイスとして構成される太陽電池の製造方法は特に限定されないが、例えば、電解質層230の組成物が液状、もしくは太陽電池内部でゲル化させることが可能であり、電解質層230の組成物が内部への導入以前は液状の場合、色素を担持させた半導体層216と対向電極242を向かい合わせ、半導体層216と対向電極242の2つの電極が接しないように、半導体層216が未塗布の受光基板210の周辺部分で、第1の封止材220により封止して、受光基板210と対向基板とを一体化する。このとき、半導体層216と対向電極242との隙間の距離に特に制限は無いが、この距離は、通常1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。この隙間の距離が長すぎると、導電率の低下から光電流が減少してしまう。
【0078】
第1の封止材220の材料は特に制限されないが、耐光性、絶縁性、防湿性を備えた材料が好ましく、種々の溶接法、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート)、アイオノマー樹脂、セラミック、変性ポリエチレン(プロピレン)、各種熱融着材料等を用いることができる。
【0079】
また、電解質の溶液を注液する注入口となる貫通孔254(凹部250、連通孔252から構成される)が必要であるが、色素を担持した半導体層216およびそれに対向する部分の対向基板240の部位でなければ貫通孔254の場所は特に限定されない。すなわち、注入口となる貫通孔254は、受光基板210の半導体層216が形成されない部位、対向基板240へ半導体層216が形成される部位の投影部分以外の部分、第1の封止材220の部位のいずれかに設けられる。
【0080】
注液方法に特に制限は無いが、受光基板210と対向基板240が予め両基板の外周近傍部分で第1の封止材220により封止されており、電解質の溶液を貫通孔254を通してセルの内部に注液する方法が好ましい。この場合、貫通孔254の凹部250に電解質の溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法やポンプなどの加圧装置を用いる注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加圧下で注液の操作を行うこともできる。
【0081】
完全に電解質の溶液がセルの内部に注入された後、貫通孔254の凹部250や連通孔252に残った溶液を除去し、貫通孔254の凹部250を先に説明したように封止する。この封止方法にも特に制限は無いが、必要であれば上記したようにガラス板やプラスチック基板の基材(板体)を封止剤で凹部250の内部に貼り付けて封止することもできる。この際、貼り付けた基材(板体)が対向基板240の外面よりも凸にならない様にする。貫通孔254を受光基板210に形成する場合には、貼り付けた基材(板体)が受光基板210の外面よりも凸にならない様にする。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態による色素増感型太陽電池では、貫通孔254をS1<S2の関係にある連通孔252と凹部250とで構成しているので、この凹部内の封止材270に対する電解液230の接触を少なくでき、その封止性能を高く保持できる。この結果、連通孔252から電解液230が基板240と封止材270との界面に浸み出しても、基板246に対する封止材270の接着面積が十分であるため、その接着強度を高く保持することができる。
【0083】
しかも、対向基板240の外側面には凸部がないので、第2の封止材270およびガラス板260と凹部250の接着強度が向上し、外部からの機械的な接触によって第2の封止材270およびガラス板260が剥離し難くなる。
【0084】
従って、太陽電池内部からの電解液の揮発又は漏洩が生じ難く、さらに、大気中から太陽電池内部への水分、酸素、その他の成分の浸入が生じ難くなり、このため、高いバリア特性を長期間保持することができ、高安定な太陽電池の特性を長期間維持できる。この結果、太陽電池の信頼性をより向上することができる。
【0085】
第2の実施の形態
本実施の形態では、電解質と可塑剤とポリマーとからなる溶液を調製し、これを塗布後に可塑剤を揮発除去することで全固体型の太陽電池を実現する。
【0086】
図5は、本実施の形態による乾式型の色素増感型太陽電池を説明する図であり、図5(A)は色素増感型太陽電池の概略平面図、図5(B)はA−A部の概略断面図、図5(C)はB−B部の概略部分断面図である。なお、連通孔252、凹部250から形成される貫通孔254は単数でも複数個でも良い。図5では、貫通孔254を4ケ所に設けている。
【0087】
図1から図4で説明した色素増感型太陽電池は湿式デバイスであるが、このデバイスに比べて本実施の形態による乾式デバイスとして構成される色素増感型太陽電池は、固体型電解質層235を電解質層としていることが異なっている。他の構成は、上述の第1の実施の形態と基本的に同一であるので、共通部分は共通符号を付してその説明を省略することがある。固体型電解質層235は、第1の封止材220による受光基板210と対向基板240との一体化に先立って、次の要領で形成される。
【0088】
ポリマーなどを用いたゲル状電解質、全固体型の電解質を使用する場合、色素を担持した半導体層(透明電極214上に塗布乾燥されて形成される。)216上で、電解質と可塑剤を含むポリマー溶液をキャスト法により塗布、成膜する。即ち、電解質と可塑剤を含むポリマー溶液の塗布→乾燥により、全固体型の電解質層を形成する。可塑剤を完全に除去した後、貫通孔254を通して内部空間のガス抜きを行いつつ、両基板210と240の接着を封止材220によって行う。
【0089】
更に、上記した方法と同様にして、第2の封止材270とガラス板260により凹部250の封止を行う。この封止は真空シーラーなどを用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。貫通孔254の凹部250の封止は図2に示した封止と同じ方法で行う。また、貫通孔254の凹部250および連通孔252の形状は、図3に示した貫通孔254の凹部250および連通孔252の形状と同じものが可能である。封止を行った後、電解質を半導体微粒子層へ充分に含侵させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
【0090】
なお、貫通孔254において、凹部250の内径W2は、凹部250の内部に排気用ノズルの先端が挿入可能な大きさをもつように、W1<W2の関係を満たすものとする。従って、注液ノズルを使用する場合と同様に、対向基板240の外側面における凹部250の開口面積をS2とし、対向基板240の内側面における連通孔252の開口面積をS1とすると、S1<S2の関係を満たすものとする。
【0091】
図6は、本実施の形態による色素増感型太陽電池の作製工程の一例を説明する図である。
【0092】
図6(A)に示すように、半導体層216及びこの上に固体型電解質層235が形成された受光基板210、および、凹部250、連通孔252が形成された対向基板240を作製する。次いで、図6(B)に示すように、受光基板210と対向基板240とを対向させて、第1の封止材220により受光基板210と対向基板240とを、減圧(排気)下で一体化させる。この結果、受光基板210、対向基板240、第1の封止材220の3者により内部空間が形成され、この内部空間から貫通孔254を通してガス抜きされる。次いで、図1から図5で説明した色素増感型太陽電池の場合と同様にして、図6(C)に示すように、第2の封止材270とガラス板260により凹部250を封止し、半導体層216および固体型電解質層235が封入される。
【0093】
以上説明した本実施の形態によれば、貫通孔254の凹部250内に上述したと同様に封止材270及びガラス板260を充填して封止しているので、第2の封止材270およびガラス板260と凹部250の接着強度が向上し、外部からの機械的な接触によって第2の封止材270およびガラス板260が剥離し難くなる。従って、大気中から太陽電池内部への水分、酸素、その他の成分の浸入が生じ難くなり、このため、高いバリア特性を長期間保持することができ、高安定な太陽電池の特性を長期間維持できる。
【0094】
但し、上述の第1の実施の形態のように、液状の電解質と封止材270との接触の問題は生じないが、貫通孔254は、封止(エンドシール)される前には、上述したガス抜きの機能も有していることが有利である。
【0095】
第3の実施の形態
図7は、本実施の形態による液晶表示装置として構成された薄膜トランジスタ湿式デバイスを説明する図であり、ボトムゲート型有機薄膜トランジスタ(TFT)を駆動トランジスタとする液晶表示装置の一画素に対応する部分断面図である。
【0096】
この液晶表示装置100は、駆動回路基板118と、対向基板119と、これらの両基板の間に封止された液晶層112とを備え、また両基板の外表面にはそれぞれ偏光板101、116が直交ニコル方式で貼り付けられている。
【0097】
駆動回路基板118においては、基板102上に形成されたゲート電極104と、このゲート電極を覆って形成されたゲート絶縁膜105と、このゲート絶縁膜上に形成されたソース電極108、ドレイン電極109及び有機半導体層(チャネル部)107とによって、ボトムゲート型の絶縁ゲート型有機TFT117が構成されており、またこの有機TFT117上に層間絶縁膜110と液晶配向膜111とが積層されている。
【0098】
また、この駆動回路基板118においては、同一の基板102上に形成された補助容量電極103と、この補助容量電極を覆って形成されたゲート絶縁膜105と、このゲート絶縁膜105上にドレイン電極109と接続して形成された画素電極106とによって補助容量部120が構成されており、この補助容量部の画素電極106上に層間絶縁膜110が積層されている。なお、補助容量電極103は、説明のために画素領域と部分的に重なり合った状態で図示している。他方、対向基板119においては、基板115上に形成された対向電極114と、液晶配向膜113とが積層されている。
【0099】
この液晶表示装置100は、バックライト123が背面から照射される透過型の液晶表示装置であるが、このためには、上記した各電極が透明導電材料で形成されると共に、ゲート絶縁膜105(更に好ましくは有機半導体層107、層間絶縁膜110、更には基板102、115)も透明材料で形成されることが好ましい。基板102、115はガラス、プラスチック基板であってよく、後者の場合はフレキシブルであることによる利点も生かせる。
【0100】
以上では、ボトムゲート型有機TFTを駆動トランジスタとする液晶表示装置の構成について説明したが、ボトムゲート型有機TFT以外のTFTを駆動トランジスタとすることも可能である。
【0101】
この液晶表示装置100では、図示省略したが、対向基板119と駆動回路基板118とを対向させて第1の封止材220により、対向基板119と駆動回路基板118とを一体化させている。この結果、対向基板119、駆動回路基板118、第1の封止材220の3者により内部空間が形成される。次いで、前記内部空間へ気泡が混入しないように液晶を注入する。次いで、上述の第1の実施の形態と同様にして、第2の封止材270とガラス板260により、貫通孔254の凹部250を凸部がないように封止する。なお、図7では、第1の封止材220、貫通孔254(凹部250、連通孔252)、第2の封止材270、ガラス板260は図示していないが、これらの構成要素は図1〜図5に示したものと基本的に同じである。
【0102】
以上説明した本実施の形態による液晶表示装置においても、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0103】
なお、本実施の形態による液晶表示装置と同様に、本発明に基づく光学装置をエレクトロクロミック表示装置等として構成することもできる。この場合、エレクトロクロミック材料は液状であるので、液晶と同様にして、表示装置の内部に注入される。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0105】
以下の各例の湿式デバイスとして構成される色素増感型太陽電池は、次のように作製した。
【0106】
実施例1
TiO2ペーストの作製は「色素増感太陽電池の最新技術」(シーエムシー)を参考に行った。125mlのチタンイソプロポキシドを750mlの0.1M硝酸水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下が終了したら、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌すると、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温まで放冷し、ガラスフィルターでろ過した後、700mlにメスアップした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12間水熱処理を行った後、1時間超音波処理により分散処理した。次いでこの溶液をエバポレーターにより40℃で濃縮し、TiO2の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に20wt%・vs・TiO2のポリエチレングリコール(分子量50万)、30wt%・vs・TiO2の粒子直径200mmのアナターゼ型TiO2を添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、増粘したTiO2ペーストを得た。
【0107】
透明導電膜付きの導電性ガラス基板上へ、上記のTiO2ペーストをブレードコーティング法により5mm×5mm、ギャップ200μmで塗布した後、500℃に30分間保持し、TiO2を導電性ガラス上に焼結した。焼結されたTiO2膜を0.05MのTiCl4水溶液中へ浸漬させ、70℃、30分保持した後、洗浄後に再び500℃、30分間焼成を行った。作製したTiO2焼結体の不純物を除去し、活性を高める意味でUV照射装置により紫外線を30分間露光した。
【0108】
次いで、0.3mMのシス-ビス(イソチオシアナート)−N,N-ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’-ジカルボン酸)−ルテニウム(II)ジテトラブチルアンモニウム塩を溶解したtert−ブチルアルコール/アセトニトリル混合溶媒(体積比1:1)に室温下、24時間浸漬させ、色素を担持させた。この電極を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液、アセトニトリルの順で洗浄し、暗所で乾燥させた。
【0109】
対向基板240には、図3(A)に示したように、凹部250、連通孔252から構成される貫通孔(注液口)254が形成されている。凹部250の開口部は対向基板240の外側面でφ2.0mmとし、連通孔252の開口部は対向基板240の内面側でφ0.3mmとした。対向基板240は、図1に示したように、透明基板246、集電材244、導電膜(対向電極)242から形成される。透明基板246の面に、集電材244としてFTO(フッ素含有酸化錫)、次いで導電膜(対向電極)242として、クロム(厚さ500Å)、次いで白金(厚さ1000Å)を順次スパッタし、その上に塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液をスプレーコートし、385℃、15分間加熱したものを用いた。
【0110】
以上のようにして作製された、色素増感型半導体層を備える受光基板210と対向基板240を対向させ、受光基板210および対向基板240の両基板の外周近傍で、第1の封止材220としてアクリル系UV硬化樹脂を使用して両基板を貼り合わせ、内部空間をもつ色素増感型太陽電池セルを作製した。
【0111】
他方、メトキシアセトニトリル3gにヨウ化ナトリウム(NaI)0.045g、1−プロピル−2.3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド1.52g、ヨウ素(I2)0.152g、4−tert−ブチルピリジン0.081gを溶解させ、電解質組成物の溶液を調製した。
【0112】
この電解質溶液を、貫通孔(注液口)254の凹部250から送液ポンプを用いて上記内部空間へ注入し、減圧することで上記内部空間に存在する気泡を追い出した。次いで、第2の封止材としてのアクリル系UV硬化樹脂を、対向基板240の外面側に形成された凹部250に滴下し、板体のガラス板260としてφ1.9mmのガラス基板を凹部250の内部で、凹部250に滴下したアクリル系UV硬化樹脂に被せた後、アクリル系UV硬化樹脂を紫外線硬化させて凹部250内でガラス板260を一体化させ、これによって図2(A)に示したように凹部250を第2の封止材270とガラス板260により封止して、色素増感型太陽電池セルを得た。
【0113】
実施例2
実施例1において、ガラス板260を使用しない構成とした色素増感型太陽電池セルを作製した。即ち、第2の封止材としてのアクリル系UV硬化樹脂のみで、図2(B)に示したように凹部250を封止した色素増感型太陽電池の素子を準備した。
【0114】
比較例1
対向基板に形成した貫通孔(注液口)の形状を、図9に示した電解液注入口352と同様の形状とした以外は実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。即ち、対向基板340の外側面で注入口352の開口部(φ0.3mm)に、第2の封止材としてのアクリル系UV硬化樹脂を滴下し、紫外線硬化させた(但し、テープ353は使用せず)。
【0115】
以上のようにして作製した実施例1、実施例2、比較例1の湿式デバイス(色素増感型太陽電池セル)を用いて、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2)照射時の光電変換効率を10日おきに測定した。
【0116】
図8は、各例による色素増感型太陽電池の光電変換効率と経過日数との関係を示すグラフであるが、初日に測定した変換効率を100%とした場合の経過日数における光電変換効率の維持率を示している。
【0117】
比較例1では、実験開始からの経過日数とともに光電変換効率の維持率は低下している。特に、光電変換効率の維持率の低下は、実験開始から約40日(経過日数)を超えると急激に低下している。この維持率の急激な低下は、注入口に凹部250が存在しないためにその封止が良好でなく、バリア特性が不十分であり、内部からの電解液の液漏れが進行して、内部空間に気泡が生じているためと考えられる。
【0118】
実施例1では、実験開始から約20日(経過日数)までは比較的緩やかに維持率が低下している初期段階と、これ以後にさらに緩やかに維持率が低下している後期段階とが見られる。即ち、後期段階における維持率の低下の勾配は、初期段階における維持率の低下の勾配よりはるかに小さい。実施例1では、凹部250を用いて貫通孔254を樹脂とバリア特性に優れるガラスとを用いて良好に封止しているので、長期間の良好なバリア特性が実現されている。
【0119】
実施例2では、光電変換効率の維持率は、実験開始から約40日(経過日数)まで比較例1とほぼ同じであるが、経過日数が約40日を超えても光電変換効率の維持率の急激な低下は見られず、実験開始から維持率はほぼ線形的に低下している。凹部250を用いて貫通孔254を良好に封止しているので、比較的長期間のバリア特性が良好である。
【0120】
光電変換効率の維持率は実用的には60%以上が望ましく、80%以上であることが更に望ましい。光電変換効率の維持率が60%以上維持される期間は、比較例1では約65日であるが、実施例1および実施例2では90日経過後も維持率が60%以上維持されている。また、光電変換効率の維持率が80%以上維持される期間は、比較例1では約40日であるが、実施例1では90日以上、実施例2では約55日である。更に、実施例1では、90日経過後も90%を超える維持率を実現しており、維持率の低下する勾配も、実施例2、比較例1に比べてはるかに小さく、実用面から見て非常に望ましい傾向を示している。
【0121】
図8から明らかなように、本発明の実施例1、2の色素増感型太陽電池は、光電変換効率の維持率が高く、バリア特性が高いことが分かる。特に、実施例1では、長期にわたって高く安定した光電変換特性を発現している。これは、実施例1では、太陽電池の素子内部から電解質層の構成成分が揮発又は漏洩しにくく、或いは大気中から電解質層へ水分、酸素、その他の成分が浸入しにくい構成となっているためである。
【0122】
以上、本発明を実施の形態及び実施例について説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
【0123】
例えば、前記色素増感型太陽電池の形態、構造や使用材料等、特に貫通孔254の形状、サイズ、個数、位置は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜選択可能であることは言うまでもない。気体及び/又は液体に対して遮断性が高く、気体及び/又は液体に対する透過性が低い材料は適宜選択されて使用可能である。
【0124】
また、ゲル状電解質を用いる場合、電解質前駆体の溶液を上述の第1の実施の形態と同様に貫通孔から注入後、ゲル化させてよいが、この際にも貫通孔からのガス抜きを行ってから封止することができる。
【0125】
図1、図5には単一の太陽電池セルの例を挙げて説明したが、この太陽電池セルを複数並列に配列し、スタック構造(タンデム型)としてもよい。但し、前記スタック構造とする場合は、セル全体を被覆材及び樹脂層で覆うと次段セルへ入射させる光量が減少してしまうため、受光面と共に、セル同士の接合面において被覆材及び樹脂層の光透過率が高くなるよう制御するか或いは接合面には被覆材及び樹脂層を設けないようにするのがよい。
【0126】
さらに、色素増感型太陽電池を例に挙げて説明したが、本発明は色素増感型以外の太陽電池についても適用可能である。その他、本発明の湿式又は乾式デバイスとして構成される光学装置は、その用途に応じてその形状、形態は様々に変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明に係る光学装置は、耐久性、信頼性に優れた色素増感型太陽電池等の湿式デバイスとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1の実施の形態による色素増感型太陽電池の(A)概略平面図、(B)そのA−A線概略断面図、(C)そのB−B線概略部分断面図である。
【図2】同、図1(C)における貫通孔の封止状態を説明する概略断面図である。
【図3】同、貫通孔の形状例を説明する概略断面図である。
【図4】同、色素増感型太陽電池の作製工程の一例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による色素増感型太陽電池の(A)概略平面図、(B)そのA−A線概略断面図、(C)そのB−B線概略部分断面図である。
【図6】同、色素増感型太陽電池の作製工程の一例を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態による液晶表示装置の一画素に対応する部分断面図である。
【図8】本発明の実施例による色素増感型太陽電池の光電変換効率と経過日数との関係を示すグラフ図である。
【図9】従来技術における色素増感型太陽電池の(A)概略平面図、(B)そのA−A線概略断面図、(C)そのB−B線概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0129】
200、205…色素増感型太陽電池、210…受光基板、
212、246…透明基板、214…透明導電膜(透明電極)、216…半導体層、
218…金属、220…第1の封止材、230…電解質層(電解液)、
235…固体型電解質層、240…対向基板、242…導電膜(対向電極)、
244…集電材、250…凹部、252…連通孔、254…貫通孔、
257…アンメータ、258…電流回路、259…受光面、260…ガラス板、
270…第2の封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する複数の基体を具備し、これらの基体間の内部空間に機能物質が収容されている光学装置において、前記複数の基体のうちいずれかの基体に外部に通じる貫通孔が形成され、この貫通孔が、外部に開口する凹部と、この凹部に連接しかつ前記内部空間に開口した連通孔とから構成され、前記凹部の領域内に前記連通孔が存在すると共に前記凹部内の少なくとも底部が封止材によって閉塞され、前記凹部の最大開口面積をS2、前記連通孔のうち前記凹部との連接位置における開口面積をS1とするとき、S1<S2の関係を満たすことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
(S2/S1)が1.5以上である、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
(S2/S1)が2以上である、請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記凹部又は前記連通孔が円柱状又は円錐台状の形状を有する、請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記凹部の開口の最大直径は0.5mm〜50mmであり、前記連接位置における前記連通孔の開口の直径は0.1mm〜10mmである、請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記凹部の開口の最大直径は1mm以上であり、前記連接位置における前記連通孔の開口部の直径は0.3mm〜0.5mmである、請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記複数の基体は、第1の基体と透明な第2の基体とを含み、前記第1の基体と前記第2の基体とが互いに接着され、前記第1の基体及び前記第2の基体のいずれかの部位に前記貫通孔が形成されている、請求項1に記載の光学装置。
【請求項8】
前記封止材が板体により覆われている、請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
前記凹部における前記封止材又は前記板体の表面が、前記基体の表面と同一面に存在している、請求項1又は請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
湿式デバイスとして構成された、請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
色素増感型太陽電池、液晶表示装置又はエレクトロクロミック表示装置である、請求項10に記載の光学装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法であって、
前記複数の基体を互いに接着する工程と、
前記凹部の開口部より前記機能物質を前記内部空間に注入する工程と、
前記凹部内の少なくとも底部に封止材を充填する工程と
を有する、光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記封止材は液状の樹脂前駆体である、請求項12に記載の光学装置の製造方法。
【請求項14】
前記液状の樹脂前駆体は光硬化型である、請求項13に記載の光学装置の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂前駆体の充填後、板体により前記樹脂前駆体を覆い、更に前記樹脂前駆体を硬化させる、請求項13に記載の光学装置の製造方法。
【請求項16】
前記凹部における前記封止材又は前記板体の表面が、前記基体の表面と同一面に存在している、請求項14又は請求項15に記載の光学装置の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光学装置の製造方法であって、
前記前記複数の基体のうちいずれかの基体に固体状の電解質層を形成する工程と、
前記前記複数の基体を互いに接着する工程と、
前記貫通孔を通じて前記内部空間を排気する工程と、
前記凹部内の少なくとも底部に封止材を充填する工程と
を有する、光学装置の製造方法。
【請求項18】
前記封止材は液状の樹脂前駆体である、請求項17に記載の光学装置の製造方法。
【請求項19】
前記液状の樹脂前駆体は光硬化型である、請求項18に記載の光学装置の製造方法。
【請求項20】
前記樹脂前駆体の充填後、板体により前記樹脂前駆体を覆い、更に前記樹脂前駆体を硬化させる、請求項18に記載の光学装置の製造方法。
【請求項21】
前記凹部における前記封止材又は前記板体の表面が、前記基体の表面と同一面に存在している、請求項19又は請求項20に記載の光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−59181(P2007−59181A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242248(P2005−242248)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】