説明

光学装置用連携焦点機構

【課題】多チャネル光学システムの焦点機構を改善すること。
【解決手段】画像を観察するための光学装置が提供される。この光学装置は互いに隣接して配置された二つの光学チャネルを備え,各光学チャネルは画像検知器アセンブリと,画像検知器からそれぞれの距離を隔てた相補対物レンズとを含む。焦点機構は,双方の画像検知器アセンブリ又は双方の対物レンズアセンブリに直接又は間接に結合されており,焦点機構は,画像検知器と各光学チャネルの対物レンズとの間のそれぞれの距離を調整するように構成されている。焦点機構は,二つのネジセグメントを有する回転可能部を備え,各ネジセグメントはネジピッチが同一ではない。したがって,回転可能部の回転によって,画像検知器と各光学チャネルの対物レンズとの間のそれぞれの距離を,同一でない速度で調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光学装置と共に用いる,特に暗視応用に適した連携(ganged)焦点機構に関する。
【背景技術】
【0002】
暗視システムは,暗い環境において物が見えるようにするために,軍事,産業及び住居の広範な応用に用いられる。例えば,暗視システムは,夜間飛行中の軍事操縦士又は地上をパトロールする兵士によって使用される。警備用カメラは暗視システムを用いて暗い場所を監視し,医用機器は暗視システムを用いて網膜色素変性(夜盲症)のような病状を緩和する。
【0003】
従来の画像増強暗視装置は,イメージ増倍管(I)を用いて画像を増幅する。イメージ増倍管は,暗い環境において,当該環境に存在するが人間の目には知覚されない,赤外光スペクトラムの下部を含むわずかな量の光を収集する。イメージ増倍管は,人間の目が画像を知覚できるように光を増幅する。イメージ増倍管から出力される光は,カメラ又は外部モニタに供給してもよいし,観察者の目に直接供給してもよい。イメージ増倍管装置は通常,観察者に直接光出力を伝達するように,ユーザの頭に装着するゴーグル,すなわち単眼鏡又は双眼鏡に用いられる。
【0004】
画像増強暗視装置は,星明かり及び月明かりのような利用可能な光を利用する。画像増強装置は非常に少ない照明下で動作するが,洞窟又は大きな洞窟のような完全な暗黒環境ではうまく動作しない。さらに,画像増強装置の効果は,煙,霧,雨,粉塵及び葉のような戦場の遮へい物(obscuration)によって減少する。このような理由で,標準の暗視装置は熱画像,すなわち赤外(IR)情報を加えることによって,強化することができる。
【0005】
イメージ増倍管を用いる従来の暗視装置は放射される可視波長だけを見ることができるが,強化されたシステムは画像に赤外(すなわち熱)情報を加えることによって,更なる状況認識を可能にする。このことが重要になる典型的なシナリオは,イメージ増倍管装置ではカムフラージュした人が見えない場合である。しかし,同一の画像に赤外情報を加えることによって,カムフラージュした人の熱特徴(heat signature)が見える。
【0006】
強化暗視装置は通常二つのチャネルを含み,各チャネルはユーザに場面の画像を伝達する画像検知器を含む。第1チャネルは,例えば熱カメラ(すなわち赤外検知器)及び第1スペクトラム帯域の場面画像を伝達する相補(complementary)対物レンズを含む。第2チャネルは,例えばイメージ増倍管カメラ及び第2スペクトラム帯域の同一の場面画像を伝達する相補対物レンズを含む。暗視装置内の処理モジュールは,二つの画像を融合させ,互いに重畳させる。このような装置は米国特許第6,560,029号に開示されており,ここで参照する。
【0007】
強化暗視装置の各チャネルの焦点を変えるため,最終ユーザは画像検知器とその相補対物レンズとの間の相対距離を調整する。Willeyほかの米国特許第7,116,491号をここで参照すると,双方の画像検知器を対応する対物レンズに対して同時に移動させることによって,二つの光学チャネルの焦点を同時に調整するように構成された焦点機構を開示している。
【0008】
米国特許第7,116,491号(以降,‘491特許という)に記載されているような種々の暗視装置においては,各画像検知器が対応する相補対物レンズに対して移動するか,その逆である。通常の構成においては,画像検知器の一部をなす孔は,相補対物レンズの一部をなすシリンダの外部回転面上を移動するか,その逆である。シリンダと孔との間の遊び量は,孔及びシリンダを構成する機械精度によって規定される。シリンダと孔との間の遊び,すなわち許容誤差は制限されるが,相補孔内をシリンダが自由にスライドできるようになっている。多チャネルシステムにおいては,孔とシリンダとの間の遊びが重畳された画像間の誤差になるため,孔とシリンダとの間の過度の遊びは有害である。孔がシリンダに沿って自由にスライドするようにしつつ,過度な遊びを制限するため,厳しい許容誤差を維持することは,比較的高価な提案である。したがって,費用と,生産性と,性能との点で,多チャネル光学システムの焦点機構を改善する必要がある。
【0009】
‘491特許に記載されているような種々の多チャネル暗視装置は,各チャネルの相対焦点,すなわち,別のチャネルの焦点に対する一つのチャネルの焦点,を調整する機能を含んでいない。‘491特許においては,両チャネルの焦点は一つのノブを回すことによって同時に調整される。暗視装置を分解しなければ,一つのチャネルの焦点を別のチャネルの焦点と独立に調整することはできない。暗視装置を分解することなく各チャネルの相対焦点を調整する機能を含めることは,使いやすさの点で利点となるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば,画像を観察するための光学装置が提供される。この光学装置は互いに隣接して配置された二つの光学チャネルを備え,各光学チャネルは画像検知器アセンブリと,画像検知器からそれぞれの距離を隔てた相補対物レンズとを含み,対物レンズアセンブリは対物レンズを含み,画像検知器アセンブリは画像検知器を含む。焦点機構は,双方の画像検知器アセンブリ又は双方の対物レンズアセンブリに直接又は間接に結合されており,焦点機構は,画像検知器と各光学チャネルの対物レンズとの間のそれぞれの距離を調整するように構成されている。焦点機構は,二つのネジセグメントを有する回転可能部を備え,焦点機構の各ネジセグメントはネジピッチが同一ではない。各画像検知器アセンブリ又は各対物レンズアセンブリのいずれかが,回転可能部のそれぞれのネジセグメントにネジで結合された対になる(mating)ネジセグメントを含み,したがって,回転可能部の回転によって,画像検知器と各光学チャネルの対物レンズとの間のそれぞれの距離を,焦点機構の同一でないネジピッチによって同一でない速度で調整することができる。
【0011】
本発明の別の態様によれば,各対物レンズアセンブリが相補画像検知器アセンブリの移動面に対向するように配置された移動面を含む。弾性部は,各画像検知器アセンブリの移動面を相補対物レンズアセンブリの移動面に向かって偏位させるように配置される。各対物レンズが,対応する相補対物レンズアセンブリに対して移動すると,各画像検知器が対応する相補対物レンズアセンブリに対して移動したとき,各画像検知器の長手軸が対応する相補対物レンズの長手軸に実質的に平行に保たれるように,弾性部が各画像検知器の移動面を相補対物レンズの移動面に向かって偏移させる。
【0012】
本発明は,添付の図面と関連して以降の詳細な説明を読むことによって,最も良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明による多チャネル暗視光学装置の例示実施形態を右上から見た正面透視図である。
【図1B】図1Aの暗視光学装置の右下から見た背面透視図である。
【図1C】図1Aの暗視光学装置の下面平面図である。
【図1D】図1Aの暗視光学装置の分解図である。
【図2A】図1Aの暗視光学装置のサブアセンブリの背面立面図であって,画像検知器を省略して各チャネルのキャリッジと対応する対物レンズとの間のはめ合いを示した図である。
【図2B】図2Aのサブアセンブリの詳細図である。
【図3】第1チャネルのキャリッジアセンブリの透視図である。
【図4】第2チャネルのキャリッジアセンブリの透視図である。
【図5】図1Cの暗視光学装置の線5‐5に沿った断面図であって,焦点機構と各チャネルのキャリッジとの間のはめ合いを示す図である。
【図6A】図1Aの多チャネル暗視光学装置の焦点機構の上部平面図であって,ハンドル車(hand wheel)を省略した図である。
【図6B】図6Aの焦点機構の正面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を各図に沿って説明する。これらの図は制限的ではなく例示的なものであり,本発明の説明を容易にするために添付したものである。これらの図は正確な縮尺によるものではなく,設計図面として用いることを意図したものではない。
【0015】
図1A〜1Dは,参照符号“10”で示される多チャネル光学装置の一例示実施形態を示す図である。多チャネル光学装置10は,例えば米国特許第6,560,029号に例示されたような人が装着する暗視単眼鏡装置に用いてもよい。多チャネル光学装置10は,画像を観察して,ユーザの目の前に置かれたプリズムビデオディスプレイ(図示せず)に伝達する。
【0016】
図1A〜1Dに示した本発明の例示実施形態によれば,光学装置10は場面の画像を検知し伝達する二つのチャネル,すなわちチャネル11及び13を含む。各チャネル11,13は概略,スペクトラム帯域の場面画像を伝達する対物レンズと,画像検知器と,画像検知器を対物レンズに対して移動させるように構成されたキャリッジアセンブリとを含む。各画像検知器はキャリッジアセンブリに固定的に装着されている。キャリッジアセンブリを移動させることによって,画像検知器と対応する相補対物レンズとの間の距離を調整し,それによってチャネルの焦点を調整する。両チャネル11,13の焦点は,キャリッジアセンブリを移動させる一つの焦点機構17を回すことによって同時に調整される。
【0017】
第1チャネル11は概略,画像検知器22と,第1スペクトラム帯域の場面画像を伝達するようにした対物レンズ8を含む相補対物レンズアセンブリ12と,軸A(図1C参照)に沿って相補対物レンズ8に対して画像検知器22を移動させるようにしたキャリッジアセンブリ15と,を含む。画像検知器22は,任意選択で例えば赤外線検知器であってもよい。キャリッジアセンブリ15は,対物レンズ8に対して移動するように構成される。画像検知器22は,一連のネジ式固定具(図示せず)によってキャリッジアセンブリ15に固定され,キャリッジアセンブリ15に沿って移動する。画像検知器22と対応する相補対物レンズ8との間の軸距離を調整すると,第1チャネル11の焦点が変わる。
【0018】
第2チャネル13は概略,別の画像検知器24と,第2スペクトラム帯域の同一の場面画像を伝達するようにした対物レンズ9を含む相補対物レンズアセンブリ26と,軸A(図1C参照)に沿って相補対物レンズ9に対して画像検知器24を移動させるようにしたキャリッジアセンブリ19と,を含む。画像検知器24は,例えば増倍管アセンブリであってもよいし,イメージ増倍管カメラであってもよい。チャネル11と同様に,画像検知器24は,一連のネジ式固定具(図示せず)によってキャリッジアセンブリ19に固定され,画像検知器24はキャリッジアセンブリ19に沿って移動する。画像検知器24と対応する相補対物レンズ9との間の軸‘A’に沿った軸距離を調整すると,第2チャネル13の焦点が変わる。
【0019】
各対物レンズアセンブリ12及び26は,表面板14に設けられたネジ穴にネジではめ合わされ,固定される。本発明の例示実施形態によれば,対物レンズ8及び9は静止しており,固定され,表面板14に対して移動することはできない。図1Aに示すように,各対物レンズ8及び9のガラスレンズは環境に露出しており,装置10の正面から見ることができる。図1A〜1Dには示されていないが,装置10は装置10の内部部品をカプセル化するために,表面板14に装着されたきょう体を含む。
【0020】
焦点機構17は表面板14に回転可能に装着されている。焦点機構17を回転させると,キャリッジアセンブリ15及び19が同時に移動する。前述のとおり,キャリッジアセンブリ15及び19を移動させると,画像検知器22及び24がそれぞれ対応する相補対物レンズ8及び9に対して移動する。このようにして,焦点機構17を時計方向又は反時計方向いずれかに回すことによって,両チャネル11及び13の焦点が同時に調整される。焦点機構17の更なる詳細を,図5,6A及び6Bを参照して説明する。
【0021】
図2Aは,図1A〜1Dの暗視光学装置のサブアセンブリの背面立面図である。画像検知器22及び24並びに種々のほかの部品は図2Aから省かれ,各チャネルのキャリッジアセンブリ15及び19と対応する相補対物レンズ8及び9との間のはめ合いが示されている。キャリッジアセンブリ15は,対物レンズアセンブリ12(図1D参照)の円筒面30に対向するように配置された半円筒面32を含む。一組のボールベアリング36が,キャリッジアセンブリ15の円筒面30及び32と,対物レンズアセンブリ12との間の境界に配置され,対物レンズアセンブリ12に沿ってキャリッジアセンブリ15を移動させる。
【0022】
類似して第2チャネル13のキャリッジアセンブリ19は対物レンズアセンブリ26の円筒面40に対向するように配置された半円筒面38を含む。一組のボールベアリング42が,キャリッジアセンブリ19の円筒面38及び40と,対物レンズアセンブリ12との間の境界に配置され,対物レンズアセンブリ26に沿ってキャリッジアセンブリ19を移動させる。ボールベアリング36及び42はそれぞれ,キャリッジアセンブリ15及び19が対応する相補対物レンズに沿って滑らかに移動するようにする。
【0023】
図2Bは図2Aのサブアセンブリの詳細図である。図2Bに最も良く示されているように,キャリッジアセンブリ15の下側とキャリッジアセンブリ19の下側との間にポケット46が規定されている。ポケット46の一つの端に一組のボールベアリング48(1個だけが示されている)があり,ポケット46の別の端に別の組のボールベアリング50(1個だけが示されている)がある。ボールベアリング48及び50は,キャリッジアセンブリ15及び19が互いに移動するように,キャリッジアセンブリ15がキャリッジアセンブリ19に沿って滑らかにスライドするようにし,またその逆を行う。後でより詳細に説明するが,キャリッジアセンブリ15及び19は異なる速度で移動し,最終ユーザが独立に移動させてもよいため,キャリッジアセンブリ15及び19は行き違ってスライドするように構成される。
【0024】
弾性部52は,ブロック54をボールベアリング50に押し付けるように構成される。ボールベアリング50は,キャリッジアセンブリ15及び19の円筒面32及び38を,対物レンズアセンブリ15及び19の円筒面30及び40に押圧する。キャリッジアセンブリ15及び19上にそれぞれある傾斜面60及び62は,キャリッジアセンブリ15及び19を図2Bに描かれた矢印によって示される方向,すなわち対物レンズアセンブリ12及び26の円筒面30及び40に向かって押圧するように設計される。
【0025】
弾性部52と,傾斜面60及び62と,ボールベアリング50とは連携して,キャリッジアセンブリ15及び19の円筒面32及び38を対物レンズアセンブリ12及び26の円筒面30及び40に向かって押圧し,それぞれチャネル11及び13の遊びを無くす。キャリッジアセンブリ15及び19と対物レンズアセンブリ12及び26との間の過剰な遊びは,遊び自体が重畳させた画像間の誤差となるため,それぞれ有害である。
【0026】
図3は,第1チャネル11のキャリッジアセンブリ15の透視図である。キャリッジアセンブリ15は概略,キャリッジ70と,二組のベアリング36及び48と,ベアリングセット36及び48をそれぞれ保持するための,キャリッジ70にそれぞれ固定的に装着された二つのベアリングスリーブ74及び78と,を含む。キャリッジ70は半円筒面32を含み,半円筒面32の反対側の端部に二つの凹部72が形成されている。ボールベアリング36は凹部72に位置する。ベアリングスリーブ74は半円筒面32に固定されている。図示していないが,ボールベアリング36を収容するためにスリーブ74には穴が設けられており,図示されているようにボールベアリング36が半円筒面32から突き出る。スリーブ74に設けられた穴は,ボールベアリング36をそれぞれの凹部72に保持するように十分小さいが,ボールベアリング36がそれぞれの凹部72内で回転できるように十分大きい。ボールベアリング36は,キャリッジアセンブリ15が光学チャネル11の対物レンズアセンブリ12の円筒面30に沿って滑らかにスライドできるようにする。
【0027】
ベアリングスリーブ78は,キャリッジ70の下側に装着される。穴80及び81は,ボールベアリング48及び50をそれぞれ収容するように,ベアリングスリーブ78に設けられる。スリーブ78に設けられた穴80及び81は,ボールベアリング48及び50を実質的に固定位置に維持するように十分小さいが,ボールベアリング48及び50が回転できるように十分大きい。ボールベアリング48及び50は,キャリッジアセンブリ15がキャリッジアセンブリ19に沿って滑らかにスライドできるようにする。ボールベアリング48及び50はそれぞれ,スリーブ78の側面82及び60から突き出る。スリーブ78の側面82は実質的に垂直であり,一方スリーブの反対側面は側面82に対して傾斜している。傾斜した側面60の目的は,図2Bに関連して前述した。
【0028】
図4は,第2チャネル13のキャリッジアセンブリ19の透視図である。キャリッジアセンブリ19は概略,キャリッジ90と,一組のベアリング42と,ボールベアリング42を所定の位置に保持するための,キャリッジ90に固定的に装着されたベアリングスリーブ92と,第1チャネルのキャリッジアセンブリ15と対になるように構成された,キャリッジ90の下側に装着された弾性部100と,を含む。キャリッジ90は半円筒面38と,半円筒面38の反対側の端部に形成されている二つの凹部94とを含む。ボールベアリング42は凹部94に位置する。ベアリングスリーブ92は半円筒面38に固定されている。図示していないが,ボールベアリング42を収容するためにスリーブ92には穴が設けられている。図示されているようにボールベアリング42は,スリーブ92に形成さられた穴から突き出る。スリーブ92に設けられた穴は,ボールベアリング42をそれぞれの凹部94に保持するように十分小さいが,ボールベアリング42がそれぞれの凹部94内で回転できるように十分大きい。ボールベアリング42は,キャリッジアセンブリ19が光学チャネル13の対物レンズアセンブリ26の円筒面40に沿って滑らかにスライドできるようにする。
【0029】
弾性アセンブリ100はキャリッジ90の下側に装着され,第1チャネルのキャリッジアセンブリ15と対になるように構成される。光学装置10を組み立てた形態において,キャリッジアセンブリ15のボールベアリング48はキャリッジ90のフランジ105に当たるように配置される。キャリッジアセンブリ15のボールベアリング50は,図2Bに示すように,ブロック54と傾斜面62との間に配置される。前述のとおり,ボールベアリング48及び50はキャリッジアセンブリ15及び19が行き違ってスライドできるようにする。
【0030】
弾性アセンブリ100は,ブロック54と,ピン104と,4個のバネ53の形態で提供される弾性部52と,を備える。ピン104の円筒本体は,キャリッジ90のフランジ105に規定された穴とブロック54内の穴107とを通して配置される。ブロック54はピン104の円筒本体に沿ってスライドする。ピン104の頭106は,フランジ105に装着されるか,又はフランジ105の上に配置される。バネ53はブロック54とフランジ105との間に配置されて,ブロック54を傾斜面62に押しつける。図示していないが,ネジ53はブロック54に固定的に装着してもよい。図2Bに関して上述したように,ブロック54はボールベアリング50を傾斜面60及び62に押し付け,傾斜面60及び62はキャリッジアセンブリ15及び19をそれぞれ対応する相補対物レンズアセンブリ12及び26に当たるように偏移させる。
【0031】
図5は,図1Cの暗視光学装置の線5‐5に沿った断面図であって,焦点機構17とキャリッジアセンブリ15及び19との間のネジはめ合いを示している。図1C,2A及び5に示すように,各キャリッジアセンブリ15及び19はネジ付きスリーブ108及び110を含み,そのスリーブは機械式固定具109(図5に一つの固定具が示されている)によってそれぞれキャリッジ70及び90に固定的に装着されている。スリーブ108及び110は図示されているようにキャリッジ70及び90と別体であってもよいし,キャリッジ70及び90と一体であってもよい。
【0032】
図5に最も良く示されているように,ネジ付きスリーブ108及び110はそれぞれ,メスネジ116及び118を含むネジ穴を含む。スリーブ108及び110のメスネジ116及び118は,それぞれ焦点機構17のオスネジ120及び130とネジではめ合わされている。焦点機構17を回転させると,ネジ付きスリーブ108及び110が焦点機構17の長手方向に沿って移動する。ネジ付きスリーブ108及び110はキャリッジ70及び90に固定されているため,焦点機構17を回転させるとネジ付きスリーブ108及び110が移動し,ネジ付きスリーブがキャリッジアセンブリ15及び19並びに画像検知器22及び24を移動させ,それによってチャネルの焦点11及び13をそれぞれ調整する。バネ113はネジ付きスリーブ108と110との間に配置され,もう一つのバネ115はネジ付きスリーブ110と表面板14との間に配置されて,焦点機構17の逆回転を防止又は制限する。
【0033】
図6A及び6Bはそれぞれ,図1Aの多チャネル暗視光学装置10の焦点機構17の上部平面図及び正面立面図である。ここで図5,6A及び6Bを参照すると,焦点機構17は概略,外部固定具134に規定された孔の中に配置された内部固定具132と,外部固定具134に装着された調整可能なスリーブ140と,外部固定具134に装着されたノブ122と,を備える。焦点機構17のノブ122は,最終ユーザが触れるように,光学装置10の外部に配置される。図6A及び6Bにおいては焦点機構17のノブ122は省略されて,調整可能なスリーブ140が見えている。
【0034】
焦点機構17は,光学装置10の表面板14に設けられた開口部137を通じて配置される。図5に最も良く示されているが,表面板14の開口部137を通じてごみが装置10の内部に入ることを制限又は防止するため,表面板14の開口部137の露出した表面と接触するように二つのOリング136が外部固定具134に配置される。
【0035】
焦点機構17の内部固定具132は円筒形本体であって,長手方向の一部に沿ったオスネジ120を含む。外部固定具134もまた,長手方向の一部に沿ってオスネジ130がある円筒形である。前述のとおり,ネジ付きスリーブ108及び110はそれぞれ,メスネジ116及び118を含み,メスネジは焦点機構17のオスネジ120及び130とそれぞれネジではめ合わされている。
【0036】
固定具132及び134,及び/又はスリーブ108及び110のネジピッチは直接,ネジ付きスリーブ108及び110がそれぞれ固定具132及び134に沿って移動する速度を生じさせる。この例示実施例によれば,オスネジ120のネジピッチはメスネジ116のネジピッチと実質的に等しく,オスネジ130のネジピッチはメスネジ118のネジピッチと実質的に等しい。しかし,オスネジ120のネジピッチは,オスネジ130のネジピッチとは異なる。したがって,メスネジ116のネジピッチもまた,メスネジ118のネジピッチとは異なる。オスネジ120及び130のネジピッチが同一でないため,内部固定具132及び外部固定具134が同一の速度で回転したとしても,ネジ付きスリーブ108及び110は同一の速度で移動しない。換言すれば,固定具132及び134のネジピッチは,それぞれチャネル11及び13の焦点速度を生じさせる。
【0037】
ここではチャネル11及び13の手動焦点合わせについて説明したが,モータ又はほかの機械化装置を焦点アセンブリ17に結合して,装置10のチャネル11及び13の自動焦点合わせを行わせてもよいことが想定される。機械化装置は,高精度かつ低電力のピエゾ電気モータであってもよいし,装置10のような低摩擦システムに適したほかの類似駆動装置であってもよい。
【0038】
図5,6A及び6Bを更に参照すると,調整可能なスリーブ140は,ノブ122の下に配置された外部固定具134の一部の周りに固定されている。調整可能なスリーブ140は,スリーブ140が固定具132及び134に与える押圧力を調整するための,スリーブ140のフランジ143に装着されたネジ142を含む。ネジ142を締めると外部固定具134の内面が,内部固定具132の外面に押し付けられ,その結果固定具132及び134を固定して,固定具134の回転が,同時に固定具132の回転を起こす。ネジ142を緩めると,外部固定具134が内部固定具132から解放されて,固定具132及び134が独立に回転できるようにする。この目的は後で説明する。
【0039】
ノブ122はスリーブ140に取り外し可能に結合されている。スリーブ140から突出したフランジ143はノブ122内に形成された溝(図示せず)に配置されて,ノブ122をノブ122の溝に合わせるか,入れる(indexing or keying)。したがって,ノブ122を回転させると,焦点アセンブリ17の全体,すなわちスリーブ140並びに固定具132及び134が回転する。したがって,ノブ122を回転させると画像検知器22及び24がそれぞれの相補対物レンズ8及び9に対して移動して,チャネル11及び13の焦点設定をそれぞれ変更する。
【0040】
固定具132及び134はそれぞれ溝150及び152を含み,各溝はプラスドライバのチップを受け入れる大きさになっている。溝150及び152は,チャネル11及び13の相対焦点を手動で調整するために設けられている。チャネル11及び13の相対焦点を調整するには,最終ユーザはまずスリーブ140からノブ122を取り除き,ネジ142を緩め,そしてプラスドライバによって(溝150及び152を介して)固定具132及び/又は134を回転させて,チャネル11及び13の個別焦点をそれぞれ調整する。
【0041】
例えば,溝150を回転させると,スリーブ110は静止したままスリーブ108が移動し,それによってチャネル13に対するチャネル11の焦点を変更する。或いは,溝152を回転させると,スリーブ108は静止したままスリーブ110が移動し,それによってチャネル11に対するチャネル13の焦点を変更する。固定具132を回転させるとネジ付きスリーブ108が移動し,ネジ付きスリーブ108が対応する相補対物レンズ8に対して画像検知器22を移動させ,一方,固定具134を回転させるとネジ付きスリーブ110が移動し,ネジ付きスリーブ110が対応する相補対物レンズ9に対して画像検知器24を移動させることを理解されたい。
【0042】
チャネル11及び13の相対焦点が設定されると,ユーザはスリーブ140のネジ142を締めて,固定具132及び134を一体になるように固定し,ノブ122をスリーブ140に装着する。従来の連携焦点機構と異なり,光学システム全体又はその重要な部分を分解することなく,光学システムの外部から各チャネルの相対焦点を調整することができる。
【0043】
対物レンズ8及び9は,図1Aに示すように垂直に距離が隔たっている。当業者であれば,この垂直分離がほとんどの多チャネル光学システムに固有の問題である視差不均一を招くことを理解するであろう。各チャネルを通じて投影される画像を互いに重畳(すなわちオーバレイ)させると,二つの画像の不一致を生じさせる視差不均一を起こす。画像の不一致は,光学装置と観察される物体との間の距離に対する対物レンズ間の分離角度に比例する。
【0044】
連携焦点機構は,機械式,アナログ又はデジタルの撮像システムのいずれかにおける視差補正のための入力として用いることのできる,対物レンズ間の位置不一致の参照値を提供する。全焦点範囲を通じて視差調整を行うために,位置帰還装置を装置10に結合してもよい。位置帰還装置は例えば,対物レンズと対応する相補画像検知器との間の距離を測定するひずみゲージ,ホール効果素子又はエンコーダであってよい。この測定値は,多チャネルの焦点距離(すなわち,被写体までの距離)を導出し,1又は複数の画像検知器自体又はその出力画像のいずれかをプリズム表示装置(図示せず)に偏移させることができる,テーブル,アルゴリズム又は機構へ入力するために用いられる。この方法によって,二つのチャネルを通じて無限遠に見える物体が,二つの重畳された画像を含む一つの画像として表示装置に現れる。物体が近くに移動すると,通常は二つのチャネルの分離がプリズム表示装置上のオーバレイ不一致として現れる。本例示実施形態の帰還装置からの入力は,撮像システムに視差不一致を補償するための開回路命令を提供する。デジタル撮像システムは,視差不一致を補償するために,位置帰還装置と協働して一つの画像を他の画像に対して,プリズム表示装置上の適切な画素数だけ垂直に偏移させる。また,機械式,アナログ又はデジタルの撮像システムを,横方向配置誤差を補償するために,プリズム表示装置上に表示された画像を水平に移動させるようにしてもよい。
【0045】
光学装置10は単眼暗視システムに用いることを意図しているが,双眼暗視システム又は波長特定カメラ,増倍管,望遠鏡,距離計,投影機,3Dシミュレータのような任意のほかの光学システムと共に用いてもよい。光学装置10は,次に掲げる産業又は応用のうち1又は複数に有用である。例えば,エンターテイメント,自動車,医療,軍事,食品加工,医薬品,物流,等。
【0046】
ここでは本発明を特定の実施形態を参照して例示し説明したが,本発明は示された詳細に限定されるものではない。むしろ,本願請求項の精神及び均等物の範囲内,かつ本発明から逸脱することなく,詳細において種々の変更を行ってもよい。例えば,画像検知器22及び24は実際上静止した対物レンズに沿って移動するが,ここに示さなかった別の実施形態においては,静止位置に維持される画像検知器及び対物レンズが,画像検知器の面に沿って移動してもよい。さらに,光学装置は赤外線検知器22及びイメージ増倍管アセンブリ24に限定されず,任意波長の検知器又はイメージ増倍管をこの装置と共に用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を観察する光学装置であって,
互いに近接して配置された二つの光学チャネルであって,各光学チャネルは画像検知器アセンブリと,前記画像検知器アセンブリからそれぞれの距離を隔てた相補対物レンズとを含み,前記対物レンズアセンブリは対物レンズを含み,前記画像検知器アセンブリは画像検知器を含む光学チャネルと,
双方の画像検知器アセンブリ又は双方の対物レンズアセンブリに直接又は間接に結合された焦点機構であって,同一でないネジピッチを有する二つのネジセグメントを備える焦点機構と,を備え,
各画像検知器アセンブリ又は各対物レンズアセンブリは,前記焦点機構を回転させると前記画像検知器アセンブリ又は前記対物レンズアセンブリが移動するように,前記焦点機構の対応するネジセグメントにネジで結合された対になるネジセグメントを含み,それによって前記画像検知器と対応する相補対物レンズとの間のそれぞれの距離を,前記焦点機構のネジセグメントの同一でないネジピッチによって同一でない速度で調整する,光学装置。
【請求項2】
前記焦点機構は,二つの機械式固定具を含み,該固定具のうち一つは他の固定具の孔の中に配置され,前記機械式固定具は互いに遊離可能にはめ合わされている,請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記機械式固定具が互いにはめ合わされている場合,両光学チャネルの焦点設定を同時に調整するために前記焦点機構を回転させたとき,前記機械式固定具は同時に回転し,前記ネジが互いに遊離されたとき,各ネジは一つの光学チャネルの焦点設定を調整するために独立に回転するように構成されている,請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
各対物レンズアセンブリは前記対になるネジセグメントを含み,前記焦点機構を回転させると前記画像検知器が対応する相補対物レンズに対して移動する,請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
各画像検知器アセンブリは前記対になるネジセグメントを含み,前記焦点機構を回転させると前記画像検知器が対応する相補対物レンズに対して移動する,請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記画像検知器のうち一つはイメージ増倍管(I)である,請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記画像検知器のうち一つは赤外線装置(IR)である,請求項1に記載の光学装置。
【請求項8】
画像を観察する光学装置であって,
互いに近接して配置された二つの光学チャネルであって,各光学チャネルは画像検知器アセンブリと,前記画像検知器アセンブリからそれぞれの距離を隔てた相補対物レンズとを含み,前記対物レンズアセンブリは対物レンズを含み,各対物レンズアセンブリは対応する相補画像検知器の移動面に対向するように配置された移動面を含む,光学チャネルと,
各画像検知器を対応する相補対物レンズアセンブリの移動面に向かって各光学検知器アセンブリの移動面を偏移させるように配置された弾性部と,を備え,
各対物レンズを対応する相補画像検知器に対して移動させたとき,前記弾性部は各画像検知器アセンブリの移動面を,前記相補対物レンズの移動面に向かって連続的に偏移させて,各画像検知器が対応する相補対物レンズアセンブリに対して移動したとき,各画像検知器の長手軸が,対応する相補対物レンズの長手軸に実質的に平行を保つようにする,光学装置。
【請求項9】
前記画像検知器アセンブリの間に配置されたボールベアリングを更に備え,前記弾性部は,各画像検知器アセンブリの移動面を対応する相補対物レンズの移動面に向かって偏移させる方向に前記ボールベアリングを偏移させる,請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
前記弾性部は1又は複数の弾性バネを含む,請求項8に記載の光学装置。
【請求項11】
前記画像検知器アセンブリの間に規定されたポケットを更に備え,前記ボールベアリング及び前記バネは前記ポケット内に配置される,請求項9に記載の光学装置。
【請求項12】
前記ボールベアリングは前記ポケットの第1端部に配置され,別のボールベアリングが前記ポケットの反対端部に配置され,前記別のボールベアリングは,前記弾性部によって偏移されるようには配置されていない,請求項11に記載の光学装置。
【請求項13】
前記ポケットは二つの傾斜面によって規定され,前記弾性部は,前記ボールベアリングを前記画像検知器アセンブリの両傾斜面に当たるように偏移させるように配置される,請求項11に記載の光学装置。
【請求項14】
前記移動面は実質的に円筒である,請求項8に記載の光学装置。
【請求項15】
前記画像検知器のうち一つはイメージ増倍管(I)である,請求項8に記載の光学装置。
【請求項16】
前記画像検知器のうち一つは赤外線装置(IR)である,請求項8に記載の光学装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−524296(P2012−524296A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506047(P2012−506047)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028231
【国際公開番号】WO2010/120445
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ エルエルシー (114)
【Fターム(参考)】