説明

光学部品用組成物及び光学部品

【課題】光学特性、耐熱性、密着特性及び加工性などに優れる光学部品用組成物を提供し、さらには、光学特性及び耐熱性に優れた光学部品を提供する。
【解決手段】熱又は活性エネルギー線により架橋反応し得る炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基アルケニル基を有すを有する式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体及び溶剤を含む光学部品用組成物。


[式(A)中、X、Y、Zは基を示す。m及びnは、mが1以上の整数、nが0以上の整数、かつ、m+nが4以上の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品用組成物及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に代表される光学材料として、石英ガラス等の無機材料、ポリマー系の有機材料が検討されている。無機材料は、一般的に、光学部品の製作プロセスに高温加熱が必要となる等の問題があり、光学材料として、さらに特性の向上が望まれている。有機材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールなどが知られている。ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートは耐熱性の観点から、その適用用途が制限されたり、適用のために製造工程が複雑化する問題が生じる。
【0003】
また、フッ素化ポリイミド及びフッ素化ポリベンゾオキサゾールは、幅広く検討されており(例えば、特許文献1及び2参照。)、光学材料としての適用がなされているが、樹脂構造中にフッ素を導入しているため、使用される用途に制限されることがあり、より信頼性の高い材料が望まれる。
【0004】
また、光学材料として、可視光領域における透過率が良好な、嵩高い特定構造を有するポリベンゾオキサゾールが知られている(例えば、特許文献3参照。)。これは、ノルボルナン骨格等の嵩高い特定構造を樹脂構造に導入することにより、光透過率は向上するが、その反面、脂肪族構造及び疎水構造の導入により、耐熱性が低下し、その適用用途が制限されたり、下地基板へ製膜する場合、樹脂の基板への濡れ性が低いことより、その使用が限定されたり、塗膜の均一性が低下する等の問題があり、実用化するにはマージンが狭い、または難しいという問題がある。
【0005】
また、光学部品としての光導波路において、SiO等の無機酸化物による導波路(例えば、特許文献4参照。)の作製は、その製膜方法から、コンフォーマルに製膜が進むため、下地凹凸の影響を受け易く、平坦化処理等の工夫が必要となり、工程が複雑化する。また、ポリイミドを用いた場合は、ポリイミド構造中にカルボニル基を含むため、吸湿による影響を受けることがあり、実用化は難しい。また、光導波路に、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールと無機粒子の複合材料を用いることが知られているが(例えば、特許文献5及び6参照。)、これらは、ポリマーの溶液中に無機粒子を分散する必要があり、分散性を制御する必要がある。組成物の均一性の観点から、特性分布の制御、ヘイズ等が起こりやすく、使用時のマージンが狭い、使用できないと言った問題が生じる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−290374号公報
【特許文献2】国際公開第2003/010223号パンフレット
【特許文献3】特開平11−322929号公報
【特許文献4】特開平08−139300号公報
【特許文献5】特開2006−222270号公報
【特許文献6】特開2007−63502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで、光学特性、耐熱性、密着特性及び加工性などに優れる光学部品用組成物を提供し、さらには、光学特性及び耐熱性に優れた光学部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基を有するヒドロキシアミド重合体を、熱及び/又は活性エネルギー線により閉環・架橋反応させることにより、光学特性、耐熱性、物理特性の高い樹脂が得られ、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記第(1)項から第(6)項の手段により達成される。
【0009】
(1) 熱又は活性エネルギー線により架橋反応し得る炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基アルケニル基を有すを有する式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体及び溶剤を含む光学部品用組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
[式(A)中、Xは下記式(B)で表される基の中から選ばれる基を示し、式中の2つのXは同一でも異なっていてもよい。Yは下記式(C)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示す。Zは式(D)で表される基の中から選ばれる基を示す。m及びnは、mが1以上の整数、nが0以上の整数、かつ、m+nが4以上の整数を示す。また、式(A)における繰り返し単位の配列はブロック的、ランダム的のいずれであってもよい。]
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
[式(B)及び式(D)中のX1は、式(E)
【0016】
【化5】

【0017】
で表される基の中から選ばれる基を示す。式(D)中のpは1以上、4以下の整数を示す。また、式(B)、式(C)、式(D)及び式(E)で表される基における環構造上の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基の中から選ばれる少なくとも1個の基で置換されていてもよい。]
【0018】
(2) 前記ヒドロキシアミド重合体は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000以上、15000以下である第(1)項に記載の光学部品用組成物。
(3) 前記光学部品用組成物は、23℃/湿度45%での雰囲気下で、スピンコータの回転数を1400rpmで塗膜を形成し、これを380℃/250秒加熱したフィルムの平均厚みが500nmになるように、前記ヒドロキシアミド重合体の含有量を調整した時の25℃での溶液粘度が、7mPas以上、11mPas以下である第(2)項に記載の光学部品用組成物。
(4) 第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載の光学部品用組成物を用いて製膜し、前記光学部品用組成物中のヒドロキシアミド重合体を縮合反応及び架橋反応させて得られる光学部品。
(5) 前記光学部品は、380nmの波長における光の減衰係数が、0以上、0.01以下である、第(4)項に記載の光学部品。
(6) 前記光学部品は、ラマンスペクトル測定による前記ヒドロキシアミド重合体の炭素−炭素二重結合残存率が、0%以上、50%以下である、第(4)項又は第(5)項に記載の光学部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光学特性、耐熱性、密着特性及び加工性などに優れる光学部品用組成物が得られる。前記光学部品用組成物より得られる光学部品は、光学特性、耐熱性、密着特性などに優れ、これを具備する光学デバイスは、光学特性及び耐熱性に優れたものである。また、前記光学部品用組成物は、製膜をする際に基材への濡れ性にも優れることから、製膜の均一性も優れることより、得られる膜の特性も良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、熱又は活性エネルギー線により架橋反応し得る炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基アルケニル基を有するを有する式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体及び溶剤を含む光学部品用組成物である。これにより、光学特性、耐熱性、密着特性及び加工性などに優れる光学部品用組成物を提供できる。
【0021】
本発明における熱又は活性エネルギー線により架橋反応し得る炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基アルケニル基を有する基としては、例えば、マレイミド基、ノルボルネンジカルボキシド基、シクロヘキセンジカルボキシミド基が挙げられる。
【0022】
上記ヒドロキシアミド重合体は、架橋反応において、炭素−炭素二重結合同士が分子間又は分子内で反応し架橋構造を形成すると同時に、ヒロドキシアミド重合体は、加熱により脱水閉環し、ベンゾオキサゾール重合体となるため、脱水閉環及び架橋反応が進行した重合体は架橋構造を有するベンゾオキサゾール重合体となり、非常に耐熱性に優れたものとなる。
【0023】
前記式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体は、前記式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物の少なくとも1種と、式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸化合物の1種又は2種以上とを用いて、従来の酸クロリド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応等の方法により、反応させ得ることができる。また、前記ジカルボン酸化合物として、前記式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸化合物と式(D)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸化合物とを併用することもできる。
【0024】
なお、前記ビスアミノフェノール化合物において、前記式(B)で表される基は、アミノ基及びフェノール性水酸基と結合し得る結合手を四つ有するものである。また、前記ジカルボン酸化合物において、前記式(C)及び式(D)で表される基は、カルボキシル基と結合し得る結合手を二つ有するものである。
【0025】
また、前記式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体に、架橋性基を有さない(架橋反応しない)タイプの別のヒドロキシアミド重合体を組み合わせて、相互侵入網目構造とすることによっても、同様に高耐熱性の樹脂を得ることが可能である。この場合、前記架橋性基を有さないヒドロキシアミド重合体は、前記式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物の少なくとも1種と、式(D)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸化合物の少なくとも1種とを用いて、上記同様の方法により得ることができる。
【0026】
本発明で用いる、式(B)で表される基を有するビスアミノフェノール化合物としては、2,4−ジアミノレゾルシノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン、9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−アミノ−3−ヒドロキシ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−ヒドロキシ−3−アミノ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。これらのなかでも、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン及び3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明で用いる、式(C)で表される基を有するジカルボン酸化合物の例としては、3−マレイミドフタル酸、4−マレイミドフタル酸、2−マレイミドイソフタル酸、4−マレイミドイソフタル酸、5−マレイミドイソフタル酸、2−マレイミドテレフタル酸、3−マレイミドテレフタル酸、3−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)フタル酸、4−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)フタル酸、2−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸、4−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸、5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸、2−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)テレフタル酸、3−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)テレフタル酸、3−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)フタル酸、4−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)フタル酸、2−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、4−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、5−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、2−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)テレフタル酸、3−(4−シクロヘキセンジカルボキシミド)テレフタル酸、3−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)フタル酸、4−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)フタル酸、2−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、4−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、5−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)イソフタル酸、2−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)テレフタル酸及び3−(3−シクロヘキセンジカルボキシミド)テレフタル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明で用いる、式(D)で表される基を有するジカルボン酸化合物の例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニルビス安息香酸、3,4’−スルホニルビス安息香酸、3,3’−スルホニルビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジメチル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、9,9−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,3’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,3’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、9,9−ビス−(2−カルボキシ−フェニル)フルオレン、9,9−ビス−(3−カルボキシ−フェニル)フルオレン、9,9−ビス−(4−カルボキシ−フェニル)フルオレン、ビス−((2−カルボキシ−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、ビス−((4−カルボキシ−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、ビス−((5−カルボキシ−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、ビス−((6−カルボキシ−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−(2−カルボキシ−フェノキシ)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−(3−カルボキシ−フェノキシ)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−(4−カルボキシ−フェノキシ)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((4−(2−カルボキシ−フェノキシ)−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((4−(3−カルボキシ−フェノキシ)−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((4−(4−カルボキシ−フェノキシ)−3−フェニル)−フェニル)−フルオレン、1,3−アダマンタン−ジカルボン酸、2,2−アダマンタン−ジカルボン酸、1,2−アダマンタン−ジカルボン酸、3,3’−(1,1’−ビアダマンタン)−ジカルボン酸、3,5−(1,1’−ビアダマンタン)−ジカルボン酸、2,2−(1,1’−ビアダマンタン)−ジカルボン酸、2,2’−(1,1’−ビアダマンタン)−ジカルボン酸及び2,5−(1,1’−ビアダマンタン)−ジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、イソフタル酸及び4,4’−オキシビス安息香酸などが好ましい。
これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
なお、式(B)、式(C)及び式(D)で表される基における環構造上の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基の中から選ばれる少なくとも1個の基で置換されていてもよい。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。
【0030】
本発明に用いるヒドロキシアミド重合体の製造方法としては、例えば、酸クロリド法では、使用する酸クロリドは、まず、N,N’−ジメチルホルムアミド等の触媒存在下で、前記ジカルボン酸化合物と、過剰量の塩化チオニルとを、室温ないし130℃程度の温度で反応させ、過剰の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した後、残査をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより得ることができる。このようにして製造したジカルボン酸クロリド化合物を、前記ビスアミノフェノール化合物と共に、通常N−メチル−2−ピロリドン及びN,N’−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒に溶解し、ピリジン等の酸受容剤存在下で、室温ないし−30℃程度の温度で反応させることにより、ヒドロキシアミド重合体を得ることができる。
【0031】
また、該ビスアミノフェノール化合物として、前記式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物の少なくとも1種と、該ジカルボン酸化合物として、式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸の1種又は2種以上と、を用いることにより得られる。このようにして得られたヒドロキシアミド重合体の繰り返し単位の配列は、ブロック的で合ってもランダム的であっても良い。
【0032】
さらに、式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体において、式(C)で表される基を有するジカルボン酸化合物を用いて得られた炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基前記アルケニル基を有するを有する繰り返し単位と、該炭素−炭素二重結合基を有しない式(D)で表される基を有するジカルボン酸化合物を用いて得られた繰り返し単位を有する共重合体である場合、炭素−炭素二重結合基を有する含窒素環基を有する繰り返し単位と、それを有しない繰り返し単位の配列は、ブロック的であっても、ランダム的であってもかまわない。例えば、ブロック的な繰り返し単位の製造方法としては、酸クロリド法による場合、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と式(D)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物とを、予め反応させて分子量を上げた後、更に式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と、式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0033】
また、逆に、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と、式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物とを、予め反応させて、重合体の分子量を上げた後、更に式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と式(D)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物とを反応させてもよい。
【0034】
ランダムな繰り返し単位の場合は、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と式(D)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物と式(C)で表されるで表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロリド化合物とを、同時に反応させることにより得ることができる。
【0035】
式(A)で表される構造中のm及びnは、mが1以上の整数、nが0以上の整数、且つm+nが4以上の整数であり、用いたビスアミノフェノール化合物およびジカルボン酸化合物の種類により異なるが、一般的には、m+nは4〜100の範囲である。また、m及びnは、下記式の関係を満たす整数であるが、
0.05≦(m/(m+n))≦1
好ましくは、下記式の関係を満たす整数である。
0.5≦(m/(m+n))≦1
ここで、
(m/(m+n))<0.05
の場合には、前記炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基を有する繰り返し単位の数が少ないことを意味し、架橋反応部位が少ないため、耐熱性が向上せず好ましくない。また、前記炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基を有する繰り返し単位と、それを有しない繰り返し単位の配列は、ブロック状であっても、ランダム状であっても良い。
【0036】
本発明に用いるヒドロキシアミド重合体は、加熱することにより縮合反応及び架橋反応を生じさせ、ベンゾオキサゾール重合体を得ることができる。
【0037】
式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000以上、15000以下であることが好ましく、より好ましくは7000以上、15000以下、さらに好ましくは8000以上、12000以下である。前記重量分子量は前記下限値より小さいと製膜後のプロセス中に耐熱性が劣化し、ガス発生の問題が生じるおそれがあり、前記上限値より大きいと、溶剤への溶解性が低下するおそれがあり、また、本発明の光学部品用組成物における粘度が上昇することにより、塗膜形成時に下地基板への濡れ性が低下して、基材面の性質の影響を受け、製膜における条件調整範囲が狭くなったり、膜厚均一性の低下が起こるおそれがある。
【0038】
上記重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフを用い、標準ポリスチレンで検量線を作成し、ポリスチレン換算で求めることができる。例えば、装置として、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフSC−8020システムに、TSKgelGMH−HRH高速SEC用カラム、UV(λ=270nm)検出器を用い、移動相としてLiBr0.5%を添加したN−メチル−2−ピロリドン液を用いて測定し、標準ポリスチレンとして、東ソー製PS−オリゴマーキットにより、リテンションタイムと分子量の検量線を作製し、ヒドロキシアミド重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。
【0039】
また、ヒドロキシアミド重合体の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を前記の範囲にするための反応方法としては、例えば、ジカルボン酸化合物と該ビスアミノフェノール化合物の反応モル比を調整して、分子量を制御する方法、該ジカルボン酸クロリド化合物と該ビスアミノフェノール化合物に、カルボン酸クロリド化合物又は、及びアミノフェノール化合物を用いて、反応を停止させ、任意の分子量に調整する方法等を例示することができる。上記カルボン酸クロリド化合物及びアミノフェノール化合物は、末端封止材として反応を終結させ、それ以上分子量が大きくならないようにするために用い、例えば、安息香酸クロライド、2−アミノフェノールを例示することができる。
【0040】
前記ジカルボン酸化合物とビスアミノフェノール化合物の反応モル比を調整することにより分子量を制御する方法においては、上記の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量とも関係し、上記で用いるジカルボン酸化合物及びビスアミノフェノール化合物の構造によりモル比が異なるが、一方の化合物のモル数を過剰に、例えば、アミノフェノール化合物のモル数を過剰とすることにより、0.7以上、0.9以下に調整されることが好ましく、0.75以上、0.90以下がより好ましく、さらに好ましくは、0.8以上、0.90以下とするのが良い。反応モル比は、前記範囲外でも使用できるが、前記下限値より低いと比較的低分子の成分が多く生じるため、その除去等により、工程の複雑化する恐れがある。また、前記上限値を超える場合、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が目的とする範囲よりも大きくなる恐れがある。
【0041】
本発明の光学部品用組成物は、上記で得られたヒドロキシアミド重合体と溶剤を混合することにより得ることができる。前記ヒドロキシアミド重合体と溶剤の混合割合としては、その使用目的等により異なるが、一般的には、前記ヒドロキシアミド重合体に対する溶剤の重量比で、例えば、5倍以上、20倍以下程度で用いることができる。
【0042】
本発明に用いる溶剤としては、ヒドロキシアミド重合体の構造により、それぞれ異なるが、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及び非プロトン極性溶媒などが挙げられ。例えば、ケトン系溶媒として、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−メチルーシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、炭酸プロピレン、ジアセトンアルコール及びγ−ブチロラクトンなど;エーテル系溶媒として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール1−モノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及び1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテルなど;エステル系溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びメチル−3−メトキシプロピオネート等;非プロトン系極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシド等、を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。この中で、ヒドロキシアミド重合体の構造により異なるが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンと上記シクロペンタノン以外の溶媒の混合物、シクロヘキサノンと上記シクロヘキサイノン以外の溶媒の混合物が好適に使用することができる。
【0043】
本発明の光学部品用組成物は、前記ヒドロキシアミド重合体及び溶剤に、必要に応じて、各種添加剤として、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤、酸素ラジカルやイオウラジカルを加熱により発生するラジカル開始剤等を添加することができる。また、当該ヒドロキシアミド重合体に、感光剤としての例えばナフトキノンジアジド化合物と一緒に用いることで、感光性樹脂組成物として用いることが可能である。
【0044】
本発明の光学部品用組成物を用いて光学部品を得ることができる。光学部品がフィルム状である場合の製造方法としては、例えば、上記で得たヒドロキシアミド重合体と、シクロヘキサノンなどの溶剤を用いて、光学部品用組成物を作製し、この光学部品用組成物を、適当な支持体、例えば、シリコンウエハやセラミック基板等に塗布して、塗膜を形成する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が挙げられる。その後、上記で得た塗膜を、例えば、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で、40℃以上、425℃以下の温度で加熱して溶剤を除去し、引き続き、350℃以上、425℃以下の温度で、加熱及び/又は300℃以上、425℃以下の温度下で活性エネルギー線を照射して、前記光学部品用組成物中のヒドロキシアミド重合体を、縮合反応及び架橋反応させ、ベンゾオキサゾール重合体としてフィルムを形成し、それを用いて光学部品として使用することができる。
【0045】
前記活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線領域から赤外線領域の任意の波長の光線などを用いることができる。
【0046】
このように光学用フィルムに用いることができる上記光学部品用組成物は、上記同様に塗布して形成した塗膜を、380℃/250秒加熱して得られたフィルムが、380nmの波長におけるフィルム中の光の減衰係数が、0以上、0.01以下であることが好ましい。前記減衰係数は、数値が小さいほど、フィルム中での光の吸収が小さいことを意味しており、減衰係数が小さいほど、透明性がよいことから、透明性が良好なものとなる。前記減衰係数は前記範囲外でも使用できるが、0.01を越えるとフィルム中で光が吸収されて減衰することを意味し、その使用用途によっては、好ましくない恐れがある。好ましくは0に近いほうがよく、0.008以下、より好ましくは0.005以下とするのが良い。
【0047】
上記減衰係数は、n&k Technology Inc.製n&kアナライザーや市販の分光エリプソメーターにより、測定することができ、前記分光エリプソメーターとしては、例えば、J.A.Woollam Co. Inc.製分光エリプソメーターにより測定することができる。減衰係数の測定に関しては、380nmでの波長の値を用いる。例えば、シリコン基板上にスピンコートで作製した塗膜を、窒素ガス雰囲気下で380℃/250秒熱処理して得られたフィルムを、n&k Technology Inc.社製n&kアナライザー1500を用いて、反射率測定を行い、380nmの波長での減衰係数を得ることができる。
【0048】
本発明の光学部品用組成物は、特定の条件により形成される塗膜の厚みが500nmとなり、さらに、該組成物の溶液粘度が下記の範囲となるように、ヒドロキシアミド重合体の含有量を調整することが製膜性の上で好ましい。
【0049】
上記溶液粘度としては、25℃で測定した時、7mPas以上、11mPas以下であることが好ましく、より好ましくは、8mPas以上、11mPas以下、さらに好ましくは、8mPas以上、10mPas以下である。溶液粘度は、前記範囲外でも使用できるが、前記下限値より低いと、ヒドロキシアミド重合体における比較的低分子成分が多く含まれる可能性が高く、アウトガスに代表される耐熱性の低下を生じる恐れがある。また、前記上限値を超えると、下地基板への濡れ性が低下することにより、製膜時のマージンの低下又は膜厚均一性等が低下する恐れがある。
【0050】
上記溶液粘度におけるヒドロキシアミド重合体の含有量を調整する評価方法としては、上記で得られるヒドロキシアミド重合体を、標準溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに溶解した組成物とし、該組成物を、23℃/湿度45%での雰囲気下で、支持体上に、スピンコータの回転数を1400rpmで塗膜を形成し、該塗膜を380℃/250秒加熱した後の塗膜の厚みが500nmになるように、該ヒドロキシアミド重合体の含有量が調整される。
【0051】
上記溶液粘度は、市販のE型粘度計、B型粘度計により測定することができ、JIS Z 8809により規格制定された粘度計を校正する標準物質として製造された標準液により校正して用いる。例えば、E型粘度計としては、TVE−20L:東機産業(株)製を、標準液としては、東機産業(株)製の粘度計校正用の標準液JS10を例示することができる。
【0052】
また、上記光学部品用組成物は、上記同様に塗布して形成した塗膜を、380℃/250秒加熱して得られたフィルムとして、該フィルム中におけるヒドロキシアミド重合体のラマンスペクトルから計算される炭素−炭素二重結合残率が、フィルムの熱安定性の上で、0%以上、50%以下であることが好ましく、前記範囲においては0%に近いほうがよく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下とするのが良い。前記ヒドロキシアミド重合体の炭素−炭素二重結合残率は、前記範囲外でも使用できるが、前記上限値を越えると、その後の熱処理等により、反応が進み物性の変化を起こす恐れがある。
【0053】
上記ラマンスペクトルは、例えば、(株)東京インスツルメンツ製三次元顕微レーザーラマン分光装置Nanofinderを用いて測定することができる。ラマンスペクトルによる炭素−炭素二重結合残率の測定は、例えば、シリコン基板上に、スピンコートで作製した塗膜を、N2ガス雰囲気下で、200℃/90秒の熱処理により乾燥した塗膜、及び380℃/250秒の熱処理した塗膜を、それぞれ作製し、これらの塗膜について、ラマンスペクトルを測定し、このラマンスペクトル結果における炭素−炭素二重結合に由来するピーク高さから、下記式により算出することができる。
炭素−炭素二重結合残存率(%)=P1÷P2×100
上記式中、P1は、380℃/250秒の熱処理をした塗膜における炭素−炭素二重結合に由来するピーク高さ、P2は、200℃/90秒の熱処理をした塗膜における炭素−炭素二重結合に由来するピーク高さを示す。
【0054】
また、上記光学部品用組成物は、プラズマCVD法により製膜されたSiOx膜の表面に、上記同様に塗布して塗膜を形成する際の光学部品用組成物の該SiOx膜に対する接触角が0°以上、10°以下であることが好ましく、前記範囲においては0°に近いほうがよく、好ましくは8°以下、より好ましくは5°以下である。前記接触角は、前記範囲外でも使用できるが、前記上限値を越えると、基板表面に対して、濡れ性が悪く、製膜性を低下させるため、膜特性のバラツキが大きくなったり、製膜のマージンが狭まる等の問題が生じる恐れがある。
【0055】
上記接触角は、一般的なθ/2法により求めることができる。具体的には、基板上に、光素子用組成物の液滴を落とし、液滴の左右端点を結んだ線に対して、左右端点と頂点を線で結んだ角度を2倍して接触角とする。測定装置として、例えば、協和界面科学(株)製CA−X型の接触角測定装置を用いて、測定することができる。
【0056】
本発明の光学部品は、上記光学部品用組成物を用いて得られるものである。例えば、光学レンズ、光学フィルター、光スイッチ、光導波路、光ファイバー、集光レンズ等が挙げられる。
【0057】
本発明の光学部品の1つである光導波路の構造例として、特に限定はされないが、特開平08−139300号公報に記載されている。
例えば、図1に示すように、半導体基板(1)上に、クラッド層としてプラズマCVD法によりSiOx膜に代表される無機膜(2)を形成し、フォトレジスト法により、コア部として凹状に加工する。その後、上記で凹状を形成した無機膜の面に、本発明の光学部品用組成物を用いて、これを塗布して塗膜を形成する。塗布の方法としては、スピンナーによる回転塗布、スプレーコーターによる噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が挙げられる。その後、上記で得た塗膜を、所定温度でプリベーク後、加熱及び/又は活性エネルギー線を照射して、光導波路部(3)を形成する。
次に、必要によりエッチング等をして、不必要な部分を除去する。この際に、レジスト等を用いてパターニングをしても構わない。その後、上部に、プラズマCVD法によりSiOx膜に代表される無機膜(4)を形成して、光導波路を作製できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
製造例1
5−マレイミドイソフタル酸ジクロリドの製造
(1)温度計、ジムロー卜冷却管、塩化カルシウム管及び撹拌機を備えた4つ口の2Lフラスコに、無水マレイン酸98.1g(1.0モル)、5−アミノイソフタル酸181.1g(1.0モル)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン700mLに溶解し、トリエチルアミン111.3g(1.1モル)を添加した後、120℃で10時間攪拌した。その後、反応液を50%メタノール水溶液7Lに滴下し、沈殿物を集め、さらに、沈殿物を50%メタノール水溶液7L中で、2時間の攪拌をした後ろ過回収する作業を2回繰り返した。その後、沈殿物を乾燥することにより、5−マレイミドイソフタル酸243g(収率93%)を得、これを次の反応に用いた。
【0060】
(2)温度計、ジムロート冷却管及び撹拌機を備えた2Lの4つ口フラスコに、上記で得られた5−マレイミドイソフタル酸200g(0.77モル)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.5g(0.002モル)、1,2−ジクロロエタン1.8Lを仕込み、0℃に冷却した。これに、塩化チオニル220mL(3.1モル)を、5℃以下で1時間かけて滴下した。その後、100℃で6時間撹拌した。反応液を冷却後、ろ過して結晶を除き、結晶を1,2−ジクロロエタン500mLで洗浄した。ろ液と洗浄液をあわせて、40℃以下で減圧濃縮し、得られた残渣をジエチルエーテル600mLで2回抽出ろ過した。抽出液からジエチルエーテルを減圧留去することで、固体の粗生成物を得た。これを、乾燥したn−へキサンで洗浄し、続いてジエチルエーテルで再結晶することで57gの5−マレイミドイソフタル酸ジクロリドを得た(収率25%)。
また、上記の方法に準拠して、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリドを製造した。
【0061】
製造例2
5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸ジクロリド
(1)製造例1(1)において、無水マレイン酸98.1g(1.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン700mLを、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物164.2g(1.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン1Lとする以外は製造例1(1)と同様にして、281gの5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸を得た(収率86%)。
【0062】
(2)温度計、ジムロート冷却管及び撹拌機を備えた2Lの4つ口フラスコに、上記で得られた5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸200g(0.61モル)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.4g(0.002モル)、1,2−ジクロロエタン1.4Lを仕込み、0℃に冷却した。これに、塩化チオニル180mL(2.4モル)を、5℃以下で1時間かけて滴下した。その後、100℃で8時間撹拌した。冷却後ろ過して結晶を除き、結晶を1,2−ジクロロエタン500mLで洗浄した。ろ液と洗浄液をあわせて40℃以下で減圧濃縮し、得られた残渣をジエチルエーテル600mLで2回抽出ろ過した。抽出液からジエチルエーテルを減圧留去することで、固体の粗生成物を得た。これを乾燥したn−へキサンで洗浄し、続いて、ジエチルエーテルで再結晶することで、91gの5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸ジクロリドを得た(収率41%)。
また、上記の方法に準拠して、5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸ジクロリドを製造した。
【0063】
実施例1
[ヒドロキシアミド重合体の合成]
窒素ガスフロー下で、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22モル)を添加した後、−15℃に冷却し、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)を、少しずつ添加した。添加終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で5時間撹拌した。その後、反応液を、50%メタノール水溶液4リットルに、小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めた。さらに、50%メタノール水溶液4リットル中で攪拌し、ろ過回収する作業を3回繰り返した。その後、沈殿物を乾燥することにより、ヒドロキシアミド重合体36g(収率93%)を得た。
【0064】
上記で得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、下記の方法により、溶解性、重量平均分子量(Mw)及び溶液粘度を評価した。
(1)溶解性
溶剤N−メチル−2−ピロリドンに対するヒドロキシアミド重合体の溶解性を評価した。ヒドロキシアミド重合体1g及びN−メチル−2−ピロリドン2gを、ふた付きのガラス製サンプル容器に投入し、30秒間手動で混合し、30分間静置し、不溶物の有無を目視で観察して溶解性を判断した。ここで、第一表中、◎は、30秒間手動で混合後に溶解し、○は、30秒間手動で混合後し、30分間静置後に溶解したことを意味する。
(2)標準ポリスチレン換算重量平均分子量
装置として、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフSC−8020システムに、TSKgelGMH−HRH高速SEC用カラム、LiBr0.5%入りN−メチル−2−ピロリドン移動相、UV(λ=270nm)検出器を用いて測定し、標準ポリスチレン(東ソー製PS−オリゴマーキット)を用いて換算して重量平均分子量を求めた。
(3)溶液粘度
ヒドロキシアミド重合体1gとN−メチル−2−ピロリドン9gの割合で組成物として、これを、23℃/湿度45%の雰囲気中で、スピンコータ(回転数1400rpm)により、支持体上に塗膜を形成し、さらに該塗膜を380℃/250秒加熱した後の塗膜の厚みが500nmであることを確認した。次いで、本測定に用いた前記組成物を、ふた付きのガラス製サンプル容器に精秤し、溶解後に1.1mlを測り取りサンプルとした。粘度計は、E型粘度計TVE−20L:東機産業(株)製を用い、25.0℃において、コーンロータ1°34’×R24を用い、コーンロータ回転数:50rpmで測定した。測定はそれぞれ3回行い、平均値を算出した。
【0065】
[組成物及びフィルムの作製]
上記で得たヒドロキシアミド重合体1gと、N−メチル−2−ピロリドン9gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。該組成物を用いて、シリコン基板上に、スピンコートにより、塗膜を形成し、該塗膜をN2ガス雰囲気下で、200℃/90秒間加熱して乾燥し、さらに380℃/250秒間熱処理をし、フィルムを得た。
【0066】
上記で得た組成物及びフィルムのそれぞれを用いて、下記に示した測定法により、接触角、ガラス転移温度、密着性、架橋基残存率及び膜質均一性について、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0067】
(4)接触角
上記で得た組成物を、ふた付きのガラス製サンプル容器に投入し、溶解後、協和界面科学(株)製CA−X型の接触角測定装置を用いて、マイクロシリンジにより1μlを測り取り、SiOx膜付き基板へ滴下後、5秒後の接触角を、θ/2法により測定した。測定は、それぞれ3回行い平均値を算出した。
【0068】
(5)ガラス転移温度
上記で得たフィルムを削り落とした粉末について、MDSC(温度サイクルモード示差操作熱量計:ティー・エイ・インスツルメント社製2910MDSC)により、N2ガスを30mL/分の流量で流しながら、昇温速度2℃/分、温度振幅±2℃/分の条件で昇温しながら、40℃から420℃までの温度範囲で測定を行い、リバース曲線の変移点から算出を行った。
【0069】
(6)密着性
上記フィルム作製工程において、シリコン基板として、SiOx膜付きシリコン基板を用いた以外は同様にして、フィルムを作製し、さらに上層にSiOxを100nm製膜し、N2ガス雰囲気下で400℃/3時間アニールしたフィルムについて、JIS K−5400に従い、テープ接着テストを行い、100マス(分母)中の剥れ個数(分子)により評価を行った。
【0070】
(7)架橋基残存率(炭素−炭素二重結合残存率)
上記フィルム作製工程において、シリコン基板上に、上記で得た組成物をスピンコートして作製した塗布膜を、N2ガス雰囲気下で、200℃/90秒の熱処理サンプル及び380℃/250秒の熱処理塗膜をそれぞれ作製した。これらの塗膜に関して(株)東京インスツルメンツ製三次元顕微レーザーラマン分光装置Nanofinderを用いて、架橋基のピーク高さを1mm単位で定規により測定し、下記式より架橋基残存率を求めた。
架橋基残存率(%)=P1÷P2×100
P1:380℃/250秒での熱処理サンプルの架橋基のピーク高さ
P2:200℃/90秒での熱処理サンプルの架橋基のピーク高さ
【0071】
(8)膜質均一性
上記フィルム作製工程において、シリコン基板として、200mm直径のシリコンウエハに、上記で得た組成物を1400rpmでスピンコートして作製した塗膜を、N2ガス雰囲気下で380℃/250秒熱処理し、ウエハー面内をXY軸それぞれ10mm間隔に19ポイント(合計37ポイント)をn&k Technology Inc.社製n&kアナライザー1500を用いて測定し、屈折率は平均値、膜厚は3シグマからバラツキ度を計算した。
【0072】
[光学部品の評価]
光学部品は、図1に示すような、シリコン基板(半導体基板(1))上に凹部を有するSiOx膜(無機膜(2))を形成した基板を用意し、前記凹部に塗布膜を形成して得られるが、このような光学部品としての評価としては、上記で得られた塗布膜を評価することで、簡素化して行った。
上記で得た組成物を用いて、上記シリコン基板上に、凹部を埋設するように、スピンコートにより、塗膜を形成し、該塗膜をN2ガス雰囲気下で、200℃/90秒間加熱して乾燥し、さらに380℃/250秒間熱処理をし、フィルムを得た。
【0073】
上記で得た塗布膜を用いて、下記に示した測定法により、屈折率及び減衰係数について、評価を行った。各特性を第二表に示す。
(9)屈折率及び減衰係数
上記で得たフィルムを用いて、n&k Technology Inc.社製n&kアナライザー1500を用いて反射率測定を行い、190nm〜1000nmの波長域での反射率をカーブフィッティングして、算出した633nmの屈折率と380nmの減衰係数を用いた。
【0074】
実施例2
実施例1において、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド11.2g(0.0375モル)とイソフタル酸ジクロリド7.6g(0.0375モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体33g(収率89%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)及び溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0075】
実施例3
実施例1において、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、3,3'−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル11.6g(0.05モル)と9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン28.3g(0.05モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体42g(収率92%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0076】
実施例4
実施例1において、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル10.8g(0.05モル)と9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン28.3g(0.05モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体42g(収率93%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0077】
実施例5
実施例1において、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)と4,4’−オキシビス安息香酸クロライド12.6g(0.0425モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体38g(収率90%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0078】
実施例6
実施例1において、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、3,3'−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル11.6g(0.05モル)と9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル))フルオレン28.3g(0.05モル)を用い、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、5−(5−ノルボルネンジカルボキシミド)イソフタル酸ジクロリド15.5g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体を得た。得られたヒドロキシアミド重合体39g(収率94%)を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0079】
実施例7
実施例1において、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、3,3'−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン28.0g(0.1モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体38g(収率88%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0080】
実施例8
実施例1において、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド23.8g(0.08モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体36g(収率87%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)及び溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0081】
比較例1
実施例1において、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、イソフタル酸ジクロリド17.2g(0.0085モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体32g(収率94%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0082】
比較例2
実施例1において、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、2,2−ビス(3−アミノ−4ヒロドキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.6g(0.1モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体48g(収率92%)を得た。得られたヒドロキシアミド重合体を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0083】
比較例3
実施例1において、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル23.2g(0.1モル)の代わりに、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル21.6g(0.1モル)を用い、5−マレイミドイソフタル酸ジクロリド12.7g(0.0425モル)とイソフタル酸ジクロリド8.6g(0.0425モル)の代わりに、イソフタル酸ジクロリド819.3g(0.095モル)を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、ヒドロキシアミド重合体を得た。得られたヒドロキシアミド重合体32g(収率95%)を用いて、実施例1と同様にして、溶解性、重量平均分子量(Mw)、溶液粘度を評価した。
このヒドロキシアミド重合体0.1gと、N−メチル−2−ピロリドン1gをガラス製サンプル瓶中で溶解して混合した後、孔径0.1μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、フィルムを作製すると共に、評価を行った。各特性を第1表に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
第1表及び第2表にまとめた結果から明らかなように、実施例は、比較例と比べても、シクロヘキサノンへの溶解性に優れ、濡れ性も良いことがわかり、また、密着性、耐熱性、等も優れたものとなった。比較例1および3のヒドロキシアミド重合体では、炭素−炭素二重結合を有さないために架橋構造がなく、ガラス転移温度が低く、耐熱性が低いことが明らかである。特に比較例3のヒドロキシアミド体は、シクロヘキサノンへの溶解性が低く、また濡れ性が悪いことなどにより、各種特性を満足できていない。比較例2のヒドロキシアミド体はフッ素を含むことにより、濡れ性が悪いこと、密着性の低下が認められ、各種特性を全て満足できないことが明らかである。
【0087】
次に、実施例は、光学部品として、簡易的に評価したところ、減衰係数は、小さく、フィルム中での光の吸収が小さいことから良好な透明性を示し、光学部品として良好な事がわかり、屈折率等も優れたものとなり、各種特性を満足することができ、本発明の目的を十分満足させるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の光学部品の1つである光導波路の構造例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体基板
2 半導体基板上の無機膜
3 光導波路部
4 上部無機膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱又は活性エネルギー線により架橋反応し得る炭素−炭素二重結合を有する含窒素複素環基アルケニル基を有すを有する式(A)で表されるヒドロキシアミド重合体及び溶剤を含む光学部品用組成物。
【化1】

[式(A)中、Xは下記式(B)で表される基の中から選ばれる基を示し、式中の2つのXは同一でも異なっていてもよい。Yは下記式(C)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示す。Zは式(D)で表される基の中から選ばれる基を示す。m及びnは、mが1以上の整数、nが0以上の整数、かつ、m+nが4以上の整数を示す。また、式(A)における繰り返し単位の配列はブロック的、ランダム的のいずれであってもよい。]
【化2】

【化3】

【化4】

[式(B)及び式(D)中のX1は、式(E)
【化5】

で表される基の中から選ばれる基を示す。式(D)中のpは1以上、4以下の整数を示す。また、式(B)、式(C)、式(D)及び式(E)で表される基における環構造上の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基の中から選ばれる少なくとも1個の基で置換されていてもよい。]
【請求項2】
前記ヒドロキシアミド重合体は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000以上、15000以下である請求項1に記載の光学部品用組成物。
【請求項3】
前記光学部品用組成物は、23℃/湿度45%での雰囲気下で、スピンコータの回転数を1400rpmで塗膜を形成し、これを380℃/250秒加熱したフィルムの平均厚みが500nmになるように、前記ヒドロキシアミド重合体の含有量を調整した時の25℃での溶液粘度が、7mPas以上、11mPas以下である請求項2に記載の光学部品用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品用組成物を用いて製膜し、前記光学部品用組成物中のヒドロキシアミド重合体を縮合反応及び架橋反応させて得られる光学部品。
【請求項5】
前記光学部品は、380nmの波長における光の減衰係数が、0以上、0.01以下である、請求項4に記載の光学部品。
【請求項6】
前記光学部品は、ラマンスペクトル測定による前記ヒドロキシアミド重合体の炭素−炭素二重結合残存率が、0%以上、50%以下である、請求項4又は5に記載の光学部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−251513(P2009−251513A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102508(P2008−102508)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】