光学部材位置調整装置、投影光学系及びその調整方法、並びに露光装置
【課題】光学系中の光学部材の位置関係を容易に効率的に調整できるようにする。
【解決手段】光学部材の位置調整装置であって、レンズ36Aを支持する第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して第1方向R1に沿って配置された弾性ヒンジ部55A,55Bを介して連結された第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して第2方向R2に沿って配置された弾性ヒンジ部55C,55Dを介して連結された第3支持部54A3と、第3支持部54A3に対して第1支持部54A1及び第2支持部54A2をそれぞれ第1方向R1及び第2方向R2の回りに回転させる第1及び第2駆動機構と、を備える。
【解決手段】光学部材の位置調整装置であって、レンズ36Aを支持する第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して第1方向R1に沿って配置された弾性ヒンジ部55A,55Bを介して連結された第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して第2方向R2に沿って配置された弾性ヒンジ部55C,55Dを介して連結された第3支持部54A3と、第3支持部54A3に対して第1支持部54A1及び第2支持部54A2をそれぞれ第1方向R1及び第2方向R2の回りに回転させる第1及び第2駆動機構と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の位置を調整する位置調整装置、光学部材の位置調整装置を備える投影光学系及びその調整方法、投影光学系を備える露光装置、並びに露光装置を使用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイ装置の製造工程中で、ガラスプレート等のパネル状の感光性基板にマスクパターンの像を露光するために、マスクと感光性基板とを投影光学系に対して同期移動して感光性基板を走査露光する露光装置(以下、パネル露光装置という。)が使用されている。
【0003】
従来、パネル露光装置は、投影光学系の大型化を抑制して大面積のパターンを効率的に露光するために、複数の部分投影光学系から構成されるマルチレンズ型の投影光学系を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−330964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のテレビ、高機能携帯電話、及びいわゆるタブレット型端末等における薄型ディスプレイ装置に対する高精細化の要求はますます高まっており、これに応じて、パネル露光装置では投影光学系の収差等の光学性能の一層の向上が求められている。
一般に、光学系では組み立てた後で、目標とする光学性能が得られるように、鏡筒等に対する複数の光学部材の位置関係(位置及び角度)を調整する必要がある。しかしながら、例えばマルチレンズ型投影光学系の場合には、複数の部分投影光学系が近接して配置されているため、個々の部分投影光学系中の光学部材の位置を効率的に調整することが困難であり、調整時間が長いとともに、目標とする光学性能がさらに高くなると、調整が困難になる恐れがあった。
【0006】
さらに、複数の部分投影光学系の光学性能間のばらつきは露光むらの一要因になりえるため、複数の部分投影光学系の光学性能のばらつきを小さくする必要がある。ところが、特に部分投影光学系の数が多いと、光学性能のばらつきを小さくするための調整が困難であった。
本発明の態様は、このような事情に鑑み、光学系中の光学部材の位置を容易に効率的に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、光学部材の位置を調整する装置が提供される。この光学部材位置調整装置は、その光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、その第1環状部とは異なる第2環状部と、その第2環状部とは異なる第3環状部と、第1の方向に関する2つの位置で、その第1環状部とその第2環状部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、その第1の方向と交差した第2の方向に関する2つの位置で、その第2環状部とその第3環状部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、その第3環状部に対してその第1環状部をその第1の方向の回りに回転させる第1駆動部と、その第3環状部に対してその第2環状部をその第2の方向の回りに回転させる第2駆動部と、を備えるものである。
【0008】
また、第2の態様によれば、光学部材の位置を調整する装置が提供される。この光学部材位置調整装置は、その光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、その第1環状部とは異なるとともに環状にかつ傾斜可能に配置された第1及び第2の傾斜可能部と、その第1環状部とは異なるとともにその傾斜可能部に連結された第2環状部と、第1の方向に関する位置で、その第1環状部とその第1の傾斜可能部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、その第1の方向と交差した第2の方向に関する位置で、その第1環状部とその第2の傾斜可能部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、その第2環状部に対してその第1の傾斜可能部をその第1の方向に対して傾くように傾斜させる第1駆動部と、その第2環状部に対してその第2の傾斜可能部をその第2の方向に対して傾くように傾斜させる第2駆動部と、を備えるものである。
【0009】
また、第3の態様によれば、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系が提供される。この投影光学系は、光軸に沿って配列された複数の光学部材と、その複数の光学部材のうちの調整対象の光学部材を支持するための第1又は第2の態様の光学部材位置調整装置と、その光学部材位置調整装置の第3環状部又は第2環状部が固定される鏡筒と、を備えるものである。
【0010】
また、第4の態様によれば、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系が提供される。この投影光学系は、光軸に沿って配列された複数の光学部材と、その複数の光学部材のうちの調整対象の第1の光学部材を支持するための第1の態様の光学部材位置調整装置(ただし、その第1環状部、その第2環状部、及びその第3環状部は、その光学部材の光軸に沿って配列されている)と、その複数の光学部材のうちの調整対象の第2の光学部材を支持するための第1の態様の光学部材位置調整装置(ただし、その第1環状部、その第2環状部、及びその第3環状部は、その光学部材の光軸を中心として同心円状に配列されている)と、その第1及び第2の光学部材位置調整装置のその第3環状部が固定される鏡筒と、を備えるものである。
【0011】
また、第5の態様によれば、第4の態様による投影光学系の調整方法であって、その第1の光学部材位置調整装置を用いてその第1の光学部材を調整してその投影光学系の結像特性の粗調整を行い、その第2の光学部材位置調整装置を用いてその第2の光学部材を調整してその結像特性の微調整を行う投影光学系の調整方法が提供される。
また、第6の態様によれば、露光光でマスクのパターンを介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、そのマスクを移動するマスクステージと、第3又は第4の態様の投影光学系と、その基板を移動する基板ステージと、を備えるものである。
【0012】
また、第7の態様によれば、第6の態様の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、その露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、第1駆動部によって第3環状部に対して第1環状部(光学部材)を第1の方向の回りに回転させ、第2駆動部によって第3環状部に対して第2環状部(第1環状部及び光学部材)を第2の方向の回りに回転させることで、光学系中のその光学部材の位置関係を容易に効率的に調整できる。
また、第2の態様によれば、第1駆動部によって第2環状部に対して第1の傾斜可能部を第1の方向に対して傾斜させ、第2駆動部によって第2環状部に対して第2の傾斜可能部を第2の方向に対して傾斜させることで、光学系中のその光学部材の位置関係を容易に効率的に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の一例に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の投影システムPSを示す斜視図である。
【図3】図2中の一つの部分投影光学系を示す断面図である。
【図4】図3中の第1のレンズ支持部材を示す斜視図である。
【図5】(A)は図3中の第1の調整装置を示す第1の駆動機構に沿った断面図、(B)は第1の調整装置を示す第2の駆動機構に沿った断面図である。
【図6】(A)は図3中の第2のレンズ支持部材を示す正面図、(B)は図6(A)中の連結用の板ばねを示す拡大図である。
【図7】(A)は図3中の第2の調整装置を示す第1の駆動機構に沿った断面図、(B)は第2の調整装置を示す第2の駆動機構に沿った断面図である。
【図8】投影システムの調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】第2のレンズ支持部材の変形例を示す正面図である。
【図10】他の実施形態のレンズ支持部材を示す斜視図である。
【図11】(A)は図10の第1の弾性ヒンジ部を示す図、(B)は図10の第3の弾性ヒンジ部を示す図、(C)は図11(A)のレンズの駆動機構を示す要部の断面図である。
【図12】(A)はレンズ支持部材の変形例を示す正面図、(B)は図12(A)のレンズ支持部材を示す断面図である。
【図13】液晶表示素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の一例につき図1〜図8を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、一例として、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の薄型ディスプレイパネルに使用されるフォトレジストが塗布されたパネル状の平板ガラスよりなるプレートPT(感光性基板)にマスクMのパターンの像を露光するマルチレンズ型で走査露光方式のパネル露光装置である。以下、プレートPTの合焦時の表面に垂直にZ軸を取り、その表面に平行な平面内で走査露光時のマスクM及びプレートPTの走査方向に沿ってX軸を、X軸に直交する方向(非走査方向)に沿ってY軸を取って説明する。
【0016】
図1において、露光装置EXは、露光用の照明光EL(露光光)を発生する例えば超高圧水銀ランプからなる光源10と、照明光ELでマスクMのパターン面の複数の台形状の照明領域IRA等を均一な照度分布で照明する照明系ISと、マスクMをマスクホルダ(不図示)を介してXY平面に平行に保持して移動するマスクステージ21と、マスクMのパターンの像をプレートPTの表面の複数の台形状の露光領域PRA等に形成するマルチレンズ型投影光学系よりなる投影システムPS(投影光学系)と、プレートPTを保持して移動するプレートステージ22と、を備えている。さらに、露光装置EXは、マスクステージ21の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Aと、プレートステージ22の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Bと、レーザ干渉計23A,23Bの計測結果に基づいてマスクステージ21及びプレートステージ22を同期して駆動するリニアモータ等を含む駆動系(不図示)と、プレートステージ22に設けられて投影システムPSの波面収差を計測する例えばシアリング干渉方式の波面収差計測装置24と、装置全体の動作を統括的に制御する主制御装置(不図示)と、を備えている。
【0017】
そして、光源10から射出された照明光ELは、楕円鏡、ミラー、シャッター(不図示)、及び波長選択フィルター(不図示)を介して集光光学系11に入射する。波長選択フィルターでは、一例としてi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)から一つ又は複数の波長の光が選択される。集光光学系11を通過した照明光ELは、分岐光学系13の入射端12に入射し、分岐光学系13の投影システムPSを構成する部分投影光学系PLA〜PLGと同じ数(本実施形態では7つ)の射出端14A〜14Gから射出された照明光ELは、それぞれ対応する部分照明系ILA〜ILGを介して照明領域IRA〜IRGを照明する。部分照明系ILA〜ILGは、それぞれコリメートレンズ、フライアイインテグレータ(オプティカルインテグレータ)、及びコンデンサーレンズ等を有する。集光光学系11から部分照明系ILA〜ILGまでの光学部材を含んで照明系ISが構成されている。台形状の照明領域IRA〜IRGは、図2に示すように、後述の部分投影光学系PLA〜PLGの配列に合わせて、Y方向に配列された第1列の3個の照明領域IRA,IRB,IRCと、それから−X方向に離れるとともに、Y方向に半周期ずれて配列された第2列の4個の照明領域IRD,IRE,IRF,IRGとに分かれている。
【0018】
図1において、マスクMの照明領域IRA〜IRGからの照明光は、各照明領域に対応するようにY方向に沿って2列に配列された複数(本実施形態では7つ)の部分投影光学系PLA〜PLGからなる投影システムPSに入射する。部分投影光学系PLA〜PLGは照明領域IRA〜IRG中のパターンの像を対応する露光領域PRA等に形成する。図1では、各部分投影光学系PLA〜PLGは、鏡筒内部の光学系の概略構成を示している。部分投影光学系PLA〜PLGは、互いに同一構成で一例としてZ方向に配列された2段の反射屈折系を有するほぼ両側にテレセントリックで高精細な結像光学系であり、それぞれ一例として等倍の正立正像を形成し、開口数は例えば0.1程度である。
【0019】
この場合、X方向に向かって全部の照明領域IRA〜IRGを見ると、照明領域IRA〜IRGはY方向に隙間なく配置されている。そこで、照明領域IRA〜IRGのパターンの投影システムPSによる像でプレートPTを露光しつつ、マスクステージ21によって照明領域IRA〜IRGに対してマスクMを+X方向(又は−X方向)に移動することと、プレートステージ22によって露光領域PRA等に対してプレートPTを+X方向(又は−X方向)に移動することとを同期して行うことで、マスクMの全面のパターンを1回の走査露光でプレートPTの一つのパターン形成領域(区画領域)に露光できる。
【0020】
図2に示すように、部分投影光学系PLA〜PLGは、Y方向に配置された第1列の3個の部分投影光学系PLA,PLB,PLCと、それらに対向するように−X方向に配置されるとともに、Y方向に半周期ずれて配置された第2列の4個の部分投影光学系PLD,PLE,PLF,PLGとに分かれて、2点鎖線で示す平板状で照明光を通す開口が形成された光学系フレーム26に支持されている。光学系フレーム26は、プレートステージ22が移動可能に載置されたベース部材(不図示)に支持されている。なお、投影システムPSを構成する部分投影光学系PLA〜PLGの数及び配列は任意である。
【0021】
第1〜第7の部分投影光学系PLA〜PLGの構成は互いに同一であり、以下では、図3を参照して、第1の部分投影光学系PLAの構成につき説明する。図3において、部分投影光学系PLAは、マスクMの照明領域IRA内のパターンの一次像I1を形成する第1反射屈折系G1Pと、一次像I1の近傍に配置された視野絞り(不図示)と、第1反射屈折系G1Pを収容する第1(上部)鏡筒50と、その一次像I1の二次像I2をプレートPT上の露光領域PRAに形成する第2反射屈折系G2Pと、第2反射屈折系G2Pを収容する第2(下部)鏡筒52と、を有する。また、第1反射屈折系G1Pは、マスクMから−Z方向に入射する光をシフトする像シフタ28A(例えば複数の平行平面板)等と、その光を+X方向に反射する第1直角プリズム30Aと、第1直角プリズム30A側から順に+X方向に配列されたレンズ32A、レンズ34A、レンズ36A、レンズ38A、及びレンズ40Aと、直角プリズム30Aの第1反射面で反射されてレンズ32A〜40Aを通過した光を−X方向に反射する第1凹面鏡42Aと、を備えている。レンズ32A〜40A及び第1凹面鏡42Aよりなる光学系の光軸をAX1とする。第1凹面鏡42Aで反射された光は、レンズ40A〜32Aを通過し、直角プリズム30Aの第2反射面で−Z方向に反射されて一次像I1を形成する。
【0022】
また、第1鏡筒50は、角柱状で像シフタ28A及び直角プリズム30Aを支持する第1鏡筒部50aと、円筒状でレンズ32A,34Aを支持する第2鏡筒部50bと、円筒状でレンズ36A,38A,40Aを収容する第3鏡筒部50cと、他端部が閉じられた短い円筒状で第1凹面鏡42Aを支持する第4鏡筒部50dとをボルトB7等(図7(A)参照)によって連結したものである。第1鏡筒50は光学系フレーム26の上面に固定されている。
【0023】
第2反射屈折系G2Pの構成は第1反射屈折系G1Pとほぼ同様である。すなわち、第2反射屈折系G2Pは、一次像I1から−Z方向に入射する光を+X方向に反射する第2直角プリズム30Bと、第2直角プリズム30Bで反射された光の光路に配置されたレンズ32B,34B,36B,38B,40Bと、レンズ40Bを通過した光を−X方向に反射する第2凹面鏡42Bと、第2凹面鏡42Bで反射されてレンズ40B〜32Bを通過し、直角プリズム30Bで−Z方向に反射された光をシフトする像シフタ28B等と、を備えている。レンズ32B〜40B及び第2凹面鏡42Bよりなる光学系の光軸をAX2とする。像シフタ28Bを通過した光によって露光領域PRAに二次像I2が形成される。第2鏡筒52も、像シフタ28B及び直角プリズム30Bを支持する第1鏡筒部52aと、レンズ32B,34Bを支持する第2鏡筒部52bと、レンズ36B,38B,40Bを収容する第3鏡筒部52cと、第2凹面鏡42Bを支持する第4鏡筒部52dとを連結したものである。第2鏡筒52は光学系フレーム26の底面に固定されている。
【0024】
また、部分投影光学系PLAは、第3鏡筒部50c,52cに対するレンズ36A,36Bの位置関係を調整して結像特性の粗調整を行う第1の調整装置8A及び第3の調整装置8Cと、第3鏡筒部50c,52cに対するレンズ40A,40Bの位置関係を調整して結像特性の微調整を行う第2の調整装置8B及び第4の調整装置8Dと、を有する。本実施形態では、互いに同じ構成の第1及び第3の調整装置8A,8Cは、それぞれレンズ36A,36Bを保持する金属製の円筒状のレンズ支持部材54A,54Bと、光軸AX1,AX2に垂直な平面内の直交する2つの方向の回りでレンズ36A,36Bの回転角(チルト角)を調整して、偏芯コマ収差を粗調整する第1の駆動機構56A,56B及び第2の駆動機構57A,57Bと、を有する。レンズ支持部材54A,54Bはそれぞれ4箇所で連結板58A,58B及びボルトB1(図5(A)参照)によって第3鏡筒部50c内の−X方向の端面50c3等に固定されている。第3鏡筒部50cの側面上方(Z軸をX軸の回りに±45°回転した方向)には、駆動機構56A,57Aのレバー56A1,57A1の端部を外面に突き出すためのスリット部50c1,50c2が形成されている。第2鏡筒52の第3鏡筒部52cの側面下方にも、スリット部50c1,50c2と対称に駆動機構56B,57Bのレバーの端部を外面に突き出すためのスリット部52c1,52c2が形成されている。
【0025】
同様に、互いに同じ構成の第2及び第4の調整装置8B,8Dは、それぞれレンズ40A,40Bを保持し、レンズ支持部材54A,54Bより短い金属製の円筒状(外径は、レンズ支持部材54A,54Bより大きい環状)のレンズ支持部材60A,60Bと、光軸AX1,AX2に垂直な平面内の直交する2つの方向の回りでレンズ40A,40Bの回転角(チルト角)を調整して、偏芯コマ収差を微調整する第1の駆動機構62A,62B及び第2の駆動機構63A,63Bと、を有する。レンズ支持部材60A,60Bの外周部はそれぞれボルトB11によって第3鏡筒部50c,52c内の+X方向の端面50c4,52c4に固定されている。第3鏡筒部50c,52cの端面50c5,52c5に第4鏡筒部50d,52dのフランジ部がボルトB7によって固定され、第4鏡筒部50d,52dのフランジ部には、駆動機構62A,63A,62B,63Bの連結用の板ばね64A,65A等の端部を外面に突き出すためのスリット部50d1,50d2等が形成されている。偏芯コマ収差は、波面収差としては、例えば7次及び8次のツェルニケ(Zernike) 係数(Z7,Z8)で表される。なお、図3において、第3鏡筒部50c,52c及び第4鏡筒部50d,52dの断面図は、それぞれXZ面を光軸AX1,AX2の回りに45°回転した面に沿った断面を表している。
【0026】
以下、図4〜図5(B)を参照して図3中の第1の調整装置8Aにつき説明する。図4は、調整装置8Aの一部のレンズ支持部材54Aを示す。図4において、レンズ支持部材54Aは、レンズ36Aの外縁部を収容する収容部54A1a(図5(A)参照)を有する環状の第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して、1対のスリットB4A,B4Bを隔てて配置された環状の第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して、ほぼスリットB4A,B4Bを光軸AX1の回りに90°回転させた形状の1対のスリットB3A,B3Bを隔てて配置された第3支持部54A3と、を一体的に形成したものである。
なお、一対のスリットB4A,B4Bは、後述する弾性ヒンジ部55A,55Bを残すように、光軸AX1の回りに対して、対称にかつ180°より小さい角度で形成される。
また、スリットB4A,B4Bの端部、即ち、弾性ヒンジ部55A,55Bの近傍は、+X方向に折れ曲がった折り曲げ部を有する形状である。
【0027】
また、一対のスリットB3A,B3Bは、後述する弾性ヒンジ部55C,55Dを残すように、光軸AX1の回りに対して、対称にかつ180°より小さい角度で形成される。また、スリットB3A,B3Bの端部、即ち、弾性ヒンジ部55C,55Dの近傍は、−X方向に折れ曲がった折り曲げ部を有する形状である。
レンズ36Aの外縁部は第1支持部54A1内の収容部54A1a(支持部)に環状の押さえ部材B2(図5(A)参照)によって固定され、第3支持部54A3の側面の4箇所の平坦部に設けた連結板58Aによって、第3支持部54A3が図3の第3鏡筒部50cに固定されている。スリットB4A,B4B等の折れ曲げ部及び端部は可撓性を増すために円形に形成されている。スリットB4A,B4B,B3A,B3Bの折り曲げ部等の形状等は、例えばワイヤカット放電加工機等で加工できる。
【0028】
スリットB4A,B4Bの1対の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を時計回りに45°回転した第1方向R1に沿って対向するように配置された第1及び第2の弾性ヒンジ部55A,55Bである。スリットB3A,B3Bの1対の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を反時計回りに45°回転した第2方向R2に沿って対向するように配置された第3及び第4の弾性ヒンジ部55C,55Dである。スリットB4A,B4Bの端部と、スリットB3A,B3Bの端部とは光軸AX1に垂直な同じ平面上にあるため、弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通る回転軸B5と弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通る回転軸B6とは光軸AX1で直交している。
【0029】
図5(A)は図4の回転軸B5に沿った方向の断面図であり、図5(B)は図4の回転軸B6に沿った方向の断面図である。第2支持部54A2に対して第1支持部54A1(レンズ36A)は、弾性ヒンジ部55A,55Bを介して第1方向R1に沿った回転軸B5の回りに、第1の駆動機構56Aによって図5(B)の点線の位置D2で示すように回転駆動される。図5(B)に示すように、第1の駆動機構56Aは、第1支持部54A1の弾性ヒンジ部55Cの近傍に固定されたレバー56A1と、第3鏡筒部50cの外面に固定されてレバー56A1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ56A2と、レバー56A1の第3鏡筒部50cのスリット部50c1を通して突き出た先端部とマイクロメータ56A2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね56A3とを有する。また、レバー56A1の先端部は+X方向に折れ曲がっており、マイクロメータ56A2の先端(相対的に滑りやすいように、半球面に加工されている)とレバー56A1の平坦な先端部との接触部は、弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通り光軸AX1に垂直な平面上にある。このため、駆動機構56Aによって第1支持部54A1(レンズ36A)を弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通る軸の回りに容易にかつ正確に回転できる。
【0030】
また、第3支持部54A3(第3鏡筒部50c)に対して第2支持部54A2(第1支持部54A1及びレンズ36A)は、弾性ヒンジ部55C,55Dを介して第2方向R2に沿った回転軸B6の回りに、第2の駆動機構57Aによって図5(A)の点線の位置D1で示すように回転駆動される。図5(A)に示すように、駆動機構57Aは、第1支持部54A1(又は第2支持部54A2でもよい)の弾性ヒンジ部55Aの近傍に固定されたレバー57A1と、第3鏡筒部50cの外面に固定されてレバー57A1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57A2と、レバー57A1の第3鏡筒部50cのスリット部50c2を通して突き出た先端部とマイクロメータ57A2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね57A3とを有する。また、レバー57A1の先端部は+X方向に折れ曲がっており、マイクロメータ57A2の先端(相対的に滑りやすいように、半球面に加工されている)とレバー57A1の平坦な先端部との接触部は、弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通り光軸AX1に垂直な平面上にある。このため、駆動機構57Aによって第2支持部54A2(レンズ36A)を弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通る軸の回りに容易にかつ正確に回転できる。
【0031】
次に、図6(A)〜図7(B)を参照して図3中の第2の調整装置8Bにつき説明する。図6(A)は、調整装置8Bの一部のレンズ支持部材60Aを示す。図6(A)において、レンズ支持部材60Aは、レンズ40Aを収容する収容部60A1a(図7(A)参照)を有する環状の第1支持部60A1と、第1支持部60A1に対して、1対のスリットB13,B14を隔てて同心円状に配置された環状の第2支持部60A2と、第2支持部60A2に対して1対のスリットB15,B16を隔てて同心円状に配置された第3支持部60A3と、を一体的に形成したものである。
なお、1対のスリットB13,B14は、後述する弾性ヒンジ部61A,61Bを残すように、光軸AX1の回りにほぼ対称にほぼ180°の角度で形成され、かつ端部に半径方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。
【0032】
また、1対のスリットB15,B16は、後述する弾性ヒンジ部61C,61Dを残すように、ほぼスリットB13,B14を半径方向に広げた形状で、かつこの形状を光軸AX1の回りに90°回転した形状である。ただし、スリットB13,B14の中央部は光軸AX1の方向に向かう凹の折り曲げ部を有し、スリットB15,B16の中央部は光軸AX1に対して半径方向に向かう凸の折り曲げ部を有する。
レンズ40Aの外縁部は第1支持部60A1内の収容部60A1a(支持部)に環状の押さえ部材B12(図7(A)参照)によって固定され、第3支持部60A3の外周部が複数のボルトB11によって第3鏡筒部50c内の端面50c4に固定されている。スリットB13〜B16の端部は可撓性を増すために円形に形成されている。スリットB13〜B16の折り曲げ部等の形状は、例えばワイヤカット放電加工機等で加工できる。
【0033】
スリットB13,B14の1対の半径方向の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を時計回りに45°回転した第1方向R1に沿って対向するように配置された第1及び第2の弾性ヒンジ部61A,61Bである。スリットB15,B16の1対の半径方向の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を反時計回りに45°回転した第2方向R2に沿って対向するように配置された第3及び第4の弾性ヒンジ部61C,61Dである。弾性ヒンジ部61A〜61Dは、可撓性を増すために、X方向の厚さがレンズ支持部材60Aの外形の厚さよりもかなり薄く形成されている(図7(A)、(B)参照)。スリットB13〜B16には、弾性ヒンジ部61D,61C,61A,61Bとの機械的な干渉を避けるための凹部又は凸部が設けられている。弾性ヒンジ部61A,61Bの中心を通る回転軸B17と弾性ヒンジ部61C,61Dの中心を通る回転軸B18とは光軸AX1で直交している。
【0034】
図7(A)は図6(A)の回転軸B18に沿った方向の断面図であり、図7(B)は図6(A)の回転軸B17に沿った方向の断面図である。第2支持部60A2に対して第1支持部60A1(レンズ40A)は、弾性ヒンジ部61A,61Bを介して第1方向R1に沿った回転軸B17の回りに第1の駆動機構62Aによって回転駆動される。図7(A)に示すように、第1の駆動機構62Aは、第1支持部60A1の弾性ヒンジ部61Cの近傍に一端部が固定された連結用の板ばね64Aと、第4鏡筒部50dの外面にボルト62A2で固定されてスリット部50d1を通過した板ばね64Aの他端部がボルト等で固定された支持部62A1と、支持部62A1と第4鏡筒部50dの外面との間に設置された厚さが調整可能なワッシャ62A3と、を有する。ワッシャ62A3は種々の厚さの多数のワッシャの中から選択されたものであり、ワッシャ62A3の厚さを調節することによって、板ばね64Aの他端部をX方向に押し引きすることができる。このように板ばね64Aの他端部をX方向に押し引きすることで、点線の位置D3で示すように、第1支持部60A1(レンズ40A)を回転できる。
【0035】
なお、板ばね64Aには第2の駆動機構62Bによる変位等によって横方向の応力が加わるため、その応力を逃がすために、図6(B)に示すように2箇所のフレクシャ部64Aa,64Abが形成されている。
また、図6(A)において、第3支持部60A3(第3鏡筒部50c)に対して第2支持部60A2(第1支持部60A1及びレンズ40A)は、弾性ヒンジ部61C,61Dを介して第2方向R2に沿った回転軸B18の回りに第2の駆動機構63Aによって回転駆動される。図7(B)に示すように、第2の駆動機構63Aは、第2支持部60A2(又は第1支持部60A1でもよい)の弾性ヒンジ部61Aの近傍に一端部が固定された連結用の板ばね65Aと、第4鏡筒部50dの外面にボルト63A2で固定されてスリット部50d2を通過した板ばね64Aの他端部がボルト等で固定された支持部63A1と、支持部63A1と第4鏡筒部50dの外面との間に設置された厚さが調整可能なワッシャ63A3と、を有する。ワッシャ63A3の厚さを調節して、板ばね65Aの他端部をX方向に押し引きすることで、点線の位置D4で示すように、第2支持部60A2(ひいてはレンズ40A)を回転できる。板ばね65Aにも板ばね64Aと同様に図6(B)に示すように2箇所(又は1箇所でもよい)のフレクシャ部が形成されている。
【0036】
なお、駆動機構62A,63Aとしても、駆動機構56A,57Aと同様にマイクロメータ方式の押し引き機構を使用してもよい。また、駆動機構56A,62A等として、電動マイクロメータ、超音波モータ、又はピエゾ素子等の駆動素子を用いる自動的な押し引き機構を使用してもよい。
次に、本実施形態の投影システムPSの光学特性又は結像特性の調整方法の一例につき図8のフローチャートを参照して説明する。まず、図8のステップ102で、投影システムPSの複数の部分投影光学系PLA〜PLGの各部材の製造、各部材の組立調整、及び光学系フレーム26に対する装着が行われる。次のステップ104で、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1の調整装置8Aを使用して図3の第1鏡筒50内の第1反射屈折系G1Pの粗調整を行い、第3の調整装置8Cを使用して第2鏡筒52内の第2反射屈折系G2Pの粗調整を行う。次のステップ106で、例えば波面収差計測装置(不図示)等を用いて波面収差を計測しながら、各部分投影光学系PLA〜PLGの第2の調整装置8Bを使用して第1反射屈折系G1Pの微調整を行い、第4の調整装置8Dを使用して第2反射屈折系G2Pの微調整を行う。これらの調整に際して、調整装置8A〜8Dの操作部(マイクロメータ56A2及びワッシャ62A3等)は第1鏡筒50及び第2鏡筒52の外面に出ているため、マルチレンズ型の投影システムPSであっても結像特性(波面収差)の調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0037】
その後、ステップ108で、単体での調整済みの投影システムPSが、図2に示すように、露光装置本体部のマスクステージ21とプレートステージ22との間に装着される。次のステップ110で、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1の調整装置8Aを使用して第1反射屈折系G1Pの粗調整を行う。この際に、第1反射屈折系G1Pは第1鏡筒50内に収容され、調整装置8Aの操作部(マイクロメータ56A2,57A2)は第1鏡筒50の斜め上部の外面に固定されているため、複数の部分投影光学系PLA〜PLGが近接して配置されていても、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1反射屈折系G1Pの粗調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0038】
次のステップ112で、例えば図1の波面収差計測装置24を用いてオンボディで波面収差を計測しながら、各部分投影光学系PLA〜PLGの第2の調整装置8Bを使用して第1反射屈折系G1Pの微調整を行う。この際にも、第1反射屈折系G1Pは第1鏡筒50内に収容され、調整装置8Bの操作部(ワッシャ62A3,63A3)は第1鏡筒50の横方向の外面に固定されているため、複数の部分投影光学系PLA〜PLGが近接して配置されていても、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1反射屈折系G1Pの微調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。また、例えば所定の部分投影光学系PLAの結像特性に対して、他の部分投影光学系PLB〜PLGの結像特性を合わせるための調整も、調整装置8A〜8Dを用いてきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0039】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
本実施形態の露光装置EXの投影システムPS(マルチレンズ型投影光学系)は、複数の部分投影光学系PLA〜PLGを備え、各部分投影光学系PLA〜PLGはそれぞれ粗調用の第1の調整装置8A及び微調用の第2の調整装置8Bを備えている。
そして、部分投影光学系PLA等の第1反射屈折系G1P内のレンズ36Aの第1鏡筒50に関する位置関係を調整する第1の調整装置8Aは、レンズ36Aを支持する環状の第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して、光軸AX1に垂直な第1方向R1に沿って対向するように配置された1対の弾性ヒンジ部55A,55Bを介して連結された環状の第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して、光軸AX1に垂直で第1方向R1に直交する第2方向R2に沿って対向するように配置された1対の弾性ヒンジ部55C,55Dを介して連結された環状の第3支持部54A3と、第3支持部54A3(第1鏡筒50)に対して第1支持部54A1(レンズ36A)を第1方向R1の回りに回転させる第1の駆動機構56Aと、第3支持部54A3に対して第2支持部54A2(レンズ36A)を第2方向R2の回りに回転させる第2の駆動機構57Aと、を備えている。そして、第1〜第3支持部54A1〜54A3は光軸AX1に沿って全体としてほぼ円筒状に連結されている。
【0040】
また、第1反射屈折系G1P内のレンズ40Aの第1鏡筒50に関する位置関係を調整する第2の調整装置8Bは、レンズ40Aを支持する環状の第1支持部60A1と、第1支持部60A1に対して弾性ヒンジ部61A,61Bを介して連結された環状の第2支持部60A2と、第2支持部60A2に対して弾性ヒンジ部61C,61Dを介して連結された環状の第3支持部60A3と、第3支持部60A3(第1鏡筒50)に対して第1支持部60A1(レンズ40A)を第1方向R1の回りに回転させる第1の駆動機構62Aと、第3支持部60A3に対して第2支持部60A2(レンズ40A)を第2方向R2の回りに回転させる第2の駆動機構63Aと、を備えている。そして、第1〜第3支持部60A1〜60A3は光軸AX1を中心としてほぼ同心円状に連結されている。
【0041】
本実施形態によれば、第1の駆動機構56A,62Aによって第3支持部54A3,60A3に対して第1支持部54A1,60A1(レンズ36A,40A)を第1の方向R1の回りに回転させ、第2の駆動機構57A,63Aによって第3支持部54A3,60A3に対して第2支持部54A2,60A2(第1支持部54A1,60A1及びレンズ36A,40A)を第2の方向R2の回りに回転させることで、第1反射屈折系G1P(部分投影光学系PLA〜PLG)中のレンズ36A,40Aの第1鏡筒50(第3支持部54A3,60A3が固定された部材)に対する位置関係を容易に効率的に調整できる。
【0042】
なお、第1の方向R1と第2の方向R2とは90°以外の角度で交差していてもよい。
また、第1〜第3支持部54A1〜54A3及び第1〜第3支持部60A1〜60A3はそれぞれ一体的に形成されているため、レンズ36A,40Aを安定に駆動できる、なお、第1〜第3支持部54A1〜54A3及び第1〜第3支持部60A1〜60A3のうちの少なくとも一つの部分を別体の部材から形成し、この別体の部材を弾性ヒンジ機構を介して他の部分に連結してもよい。
【0043】
また、投影システムPSは、それぞれマスクMのパターンの一部の像をプレートPT表面に形成する複数の部分投影光学系PLA〜PLGを有するため、全体として小型の投影光学系を用いて露光領域を広くできるため、例えば1回の走査露光で、大面積のプレートPTに対してマスクMのパターンの像を高精度に露光できる。
また、本実施形態の投影システムPSは、マスクMのパターン面(第1面)のパターンの像をプレートPTの表面(第2面)に形成する投影光学系であって、その第1面とその第2面との間に順に、かつその第2面に沿って(光軸AX1,AX2がプレートPTの表面に沿ったX方向に延びるように)配列されて、それぞれ中間像を形成する第1及び第2の反射屈折光学系G1P,G2Pを備えている。さらに、投影システムPSは、第1の反射屈折光学系G1P内のレンズ36A(第1の光学部材)及びレンズ40A(第2の光学部材)を支持するための第1及び第2の調整装置8A及び8Bと、第2の反射屈折光学系G2P内のレンズ36B(第3の光学部材)及びレンズ40B(第4の光学部材)を支持するための第3及び第4の調整装置8C及び8Dと、調整装置8A〜8Dの第3支持部54A3,60A3等が固定される第1鏡筒50及び第2鏡筒52と、を備えている。
【0044】
また、本実施形態の投影システムPSの調整方法は、投影システムPS単体の調整時に調整装置8C及び8Dを用いて第2の反射屈折系G2Pのレンズ36B,40Bの調整を行い(ステップ104,106)、投影システムPSを露光装置に組み込んだ状態で、調整装置8A及び8Bを用いて第1の反射屈折光学系G1Pのレンズ36A,40Aの調整を行うものである(ステップ110,112)。この調整方法によれば、投影システムPSを露光装置に組み込んだ状態では、スペース的に余裕のある上方の第1鏡筒50内の第1の反射屈折系G1Pの調整を行うため、投影システムPSの調整が容易である。
【0045】
なお、調整装置8A,8Bと同様の調整装置で凹面鏡42A等の他の光学部材の位置関係を調整してもよい。
また、本実施形態の露光装置EXは、照明光ELでマスクMのパターンを介してプレートPTを露光する露光装置において、マスクMを移動するマスクステージ21と、本実施形態の投影システムPS(投影光学系)と、プレートPTを移動するプレートステージ22と、を備えている。露光装置EXによれば、投影システムPSの結像特性を高精度に調整できるため、大面積のプレートPTに対してマスクMのパターンの像を高精度に露光できる。
【0046】
次に、上記の実施形態については以下のような変形が可能である。
まず、図6(A)のレンズ支持部材60Aの代わりに図9の第1変形例のレンズ支持部材60Cを使用してもよい。図9において、レンズ支持部材60Cは、レンズ40Aを支持する第1支持部60C1と、その外側の第2支持部60C2とを連結する弾性ヒンジ部61E,61Fが単に半円状のスリットの端部間にあり、第2支持部60C2と、その外側の第3支持部60C3とを連結する弾性ヒンジ部61G,61Hも単に半円状のスリットの端部間にある。この単純な形状のレンズ支持部材60Cを使用しても、弾性ヒンジ部61E,61Fを通る回転軸B17及び弾性ヒンジ部61G,61Hを通る回転軸B18の回りに板ばね64A,65Aを有する駆動機構によってレンズ40Aを回転できる。
【0047】
次に、他の本実施形態につき図10〜図11(C)を参照して説明する。この実施形態の調整装置は、図5(A)のレンズ36Aの調整装置8Aの代わりに使用できる。図10は、本実施形態の調整装置のレンズ支持部材54Cを示す。図10において、レンズ支持部材54Cは、レンズ36Aを収容する環状の第1支持部54C1(第1環状部)と、第1支持部54C1に対して1対のスリットE1,E2を隔てて配置された環状の第2支持部54C2と、第2支持部54C2に対して4本のスリットE3,E4,E5,E6を隔てて配置された環状の第3支持部54C3と、第3支持部54C3に対して4本のスリットE7,E8,E9,E10及び2本のスリットE11,E12を隔てて配置された環状の第4支持部54C4(第2環状部)と、を光軸AX1方向に一体的に円筒状に連結したものである。第4支持部54C4が連結板58Aを用いて図5(A)の第3鏡筒部50c内の端面50c3に固定される。
【0048】
なお、1対のスリットE1,E2は、後述する線状ヒンジ部75Cb等を残すように、光軸AX1の回りに対称に180°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部に+X方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。4本のスリットE3,E4,E5,E6は、後述する線状ヒンジ部75Ca,75Ab等を残すように、光軸AX1の回りに90°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部に+X方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。また、4本のスリットE7,E8,E9,E10は、後述する線状ヒンジ部75Aa等及び線状ヒンジ部75Ca等の近傍の領域を残すように、光軸AX1の回りに90°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部にX方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。スリットE11,E12は、線状ヒンジ部75Ca等と平行に形成されている。
【0049】
スリットE3,E4間及びスリットE5,E6間に第1の方向R1に平行な直線E13に沿って対向するように1対の弾性ヒンジ部75A,75Bが対称に形成され、スリットE1,E2間及びスリットE6,E3間に第1の方向R1に直交する第2の方向R2に平行な直線E14沿って対向するように1対の弾性ヒンジ部75C,75Dが対称に形成されている。図11(A)に示すように、弾性ヒンジ部75Aは、スリットE3,E4間及びスリットE7,E8間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部75Aa,75Ab(平行リンク部)、及びスリットE3,E7間及びスリットE4,E8間に形成された厚さが薄い点状ヒンジ部75Ac,75Ad(点連結を行う第1弾性ヒンジ部)を有し、線状ヒンジ部75Aa,75Ab間の傾斜可能な傾斜可能部54C31(第3支持部54C3の一部)に、第1の駆動機構56Cのレバー56C1が固定される。弾性ヒンジ部75Aに対向する弾性ヒンジ部75Bにも、傾斜可能部54C31に対向するように傾斜可能部54C32がある。
【0050】
また、図11(B)に示すように、弾性ヒンジ部75Cは、スリットE1,E2間及びスリットE4,E5間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部75Ca,75Cb、及びスリットE1,E4間及びスリットE2,E4間に形成されて厚さが薄い点状ヒンジ部75Cc,75Cd(点連結を行う第2弾性ヒンジ部)を有し、線状ヒンジ部75Ca,75Cb間の傾斜可能な傾斜可能部54C33(第3支持部54C3の一部)に、第2の駆動機構57Cのレバー57C1が固定される。弾性ヒンジ部75Cに対向する弾性ヒンジ部75Dにも、傾斜可能部54C33に対向するように傾斜可能部54C34がある。駆動機構56C及び57Cは、それぞれレバー56C1及び57C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57C2等を有する。第1の駆動機構56Cのレバー56C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ(不図示)は図5(A)の第3鏡筒部50cの外面に固定される。一方、第2の駆動機構57Cのレバー57C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57C2は、一例として、図11(C)に示すように、傾斜可能部54C33の近傍の第4支持部54C4に固定され、マイクロメータ57C2の支持部とレバー57C1の先端部との間に引っ張りコイルばね57C3が設けられている。マイクロメータ57C2も鏡筒部50cの外部で操作できる。このようにマイクロメータ57C2を第4支持部54C4(レンズ支持部材54C)に固定することで、第1の駆動機構56Cでレバー56C1を駆動したときに、傾斜可能部54C33の傾斜角が変化しない。
【0051】
図11(A)に示すように、第2の駆動機構のレバー57C1を光軸AX1の方向(X方向)に押し引きすることで、図11(B)の線状ヒンジ部75Ca,75Cb間の傾斜可能部54C33(及びこれに対向する傾斜可能部54C34)が傾斜し、点状ヒンジ部75Cc,75Cdがその傾斜角を相殺するように曲がることで、点線の位置D5に示すように、第3支持部54C3に対して第2支持部54C2の先端部が横方向(第2の方向R2)にシフトし、第1支持部54C1(レンズ36A)はその方向に平行に同じ量だけシフトする。同様に、図11(B)に示すように、第1の駆動機構のレバー56C1を光軸AX1の方向(X方向)に押し引きすることで、図11(A)の線状ヒンジ部75Aa,75Ab間の傾斜可能部54C31(及びこれに対向する傾斜可能部54C32)が傾斜し、点状ヒンジ部75Ac,75Adがその傾斜角を相殺するように曲がることで、点線の位置D6に示すように、第4支持部54C4に対して第3支持部54C3の先端部が横方向(第1の方向R1)にシフトし、第2支持部54C2及び第1支持部54C1(レンズ36A)はその方向に平行に同じ量だけシフトする。
【0052】
このように本実施形態のレンズ支持部材54C及び駆動機構56C,57Cを有する調整装置によれば、レバー56C1の駆動によってレンズ36Aを第1の方向R1にシフトさせ、レバー57C1の駆動によってレンズ36Aを第2の方向R2にシフトさせることができ、これによって光学系の偏芯コマ収差を補正できる。
なお、本実施形態のレンズ36Aの調整装置の代わりに、図12(A)、(B)に示す変形例の調整装置を使用してもよい。図12(A)は、その調整装置のレンズ支持部材54Dを示す。図12(A)において、レンズ支持部材54Dは、レンズ36Aを収容する環状の第1支持部54D1(第1環状部)と、第1支持部54D1に対して光軸AX1の回りに120°よりもわずかに小さい角度で形成された円弧状の3つのスリットF1,F2,F3を隔てて同心円状に配置された環状の第2支持部54C3(第2環状部)と、第2支持部54C3の一部に120°間隔で配置された3箇所の互いに同一形状の傾斜可能部54D2A,54D2B,54D2Cとを一体的に連結したものである。
【0053】
第1の傾斜可能部54D2Aは、スリットF1,F2の端部近傍から半径方向に平行に延びるスリットF1a,F2bと、光軸AX1の円周方向にほぼ平行に形成された2つのスリットF4,F5とで囲まれた領域であり、第2支持部54D2A及びこの近傍に第1の弾性ヒンジ部76Aが設けられている。弾性ヒンジ部76Aは、スリットF4,F1a間及びスリットF5,F1a間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部76Aa,76Ab(第1平行リンク部)、スリットF4,F2b間及びスリットF5,F2b間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部76Ac,76Ad(第2平行リンク部)、及びスリットF1の端部とスリットF2の端部との間に形成された厚さが薄い点状ヒンジ部76Ae(点連結を行う第1弾性ヒンジ部)を有し、スリットF4,F5間の傾斜可能部54D2Aに、第1の駆動機構56Dのレバー56D1が固定される。
【0054】
また、図12(A)の傾斜可能部54D2Aの中心を通る断面図である図12(B)に示すように、線状ヒンジ部76Aa〜76Ad(第2平行リンク部)は、レンズ支持部材54Dの−X方向側に位置しているのに対して、点状ヒンジ部76Ae(点連結部)はレンズ支持部材54Dの+X方向側に位置しており、第2平行リンク部と点連結部とは光軸AX1方向の位置が異なっている。
【0055】
図12(A)において、第2の傾斜可能部54D2B及びこの近傍にも2つの平行リンク部と一つの点連結部とを有する第2の弾性ヒンジ部76Bが設けられ、第2の傾斜可能部D2Bに、第2の駆動機構56Eのレバー56E1が固定されている。また、第3の傾斜可能部54D2C及びこの近傍にも2つの平行リンク部と一つの点連結部とを有する第3の弾性ヒンジ部76Cが設けられ、第3の傾斜可能部54D2Cに、第3の駆動機構56Fのレバー56F1が固定されている。
【0056】
図12(B)において、第2支持部54D3の外周部が光学系の鏡筒77の端面にボルト(不図示)によって固定されている。第1の駆動機構56Dは、レバー56D1の先端部をX方向に押し引きするために鏡筒77の外面に固定されたマイクロメータ56D2と、レバー56D1の先端部とマイクロメータ56D2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね56D3とを有する。他の駆動機構56E,56Fも同様に構成されている。
【0057】
マイクロメータ56D2によってレバー56D1を光軸AX1に平行なX方向に押し引きすることによって、点線の位置D7で示すように、線状ヒンジ部76Aa,76Acに対して線状ヒンジ部76Ab,76AdがX方向に移動するように第2の傾斜可能部54D2Aが傾斜する。この際に、他の弾性ヒンジ部76B,76Cは動かないため、点線の位置D8で示すように第1支持部54D1(レンズ36A)はY軸の回りに回転(傾斜)する。また、図12(A)の第2の駆動機構56Eのレバー56E1を+X方向に押し、第3の駆動機構56Fのレバー56F1を−X方向に引くことで、第1支持部54D1(レンズ36A)はZ軸の回りに回転(傾斜)する。また、3つのレバー56D1,56E1,56F1を同じ量だけX方向に押し引きすることによって、第1支持部54D1(レンズ36A)をX方向にシフトさせることができる。
【0058】
このようにこの変形例によれば、3つの等角度間隔で配置された駆動機構56D〜56Fを用いることで、第1支持部54D1(レンズ36A)を直交する2軸(Y軸及びZ軸)の回りの回転角を調整して偏芯コマ収差を補正できるとともに、第1支持部54D1(レンズ36A)のX方向の位置を調整して光学系のフォーカス状態を補正できる。
また、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて、プレートPT上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、電子デバイス(マイクロデバイス)としての多数の液晶ディスプレイ又は液晶表示パネル(液晶表示素子)を得ることもできる。以下、図13のフローチャートを参照して、この製造方法の一例につき説明する。
【0059】
図13のステップS401(パターン形成工程)では、先ず、露光対象のプレート上にフォトレジストを塗布して感光基板(プレートPT)を準備する塗布工程、上記の露光装置を用いて液晶表示パネル用のマスク(例えばマスクMを含む)のパターンをその感光基板上の多数のパターン形成領域(区画領域)に転写露光する露光工程、及びその感光基板を現像する現像工程が実行される。この塗布工程、露光工程、及び現像工程を含むリソグラフィ工程によって、そのプレート上に所定のレジストパターンが形成される。このリソグラフィ工程に続いて、そのレジストパターンをマスクとしたエッチング工程、及びレジスト剥離工程等を経て、そのプレート上に多数の電極等を含む所定パターンが形成される。そのリソグラフィ工程等は、そのプレート上のレイヤ数に応じて複数回実行される。
【0060】
その次のステップS402(カラーフィルタ形成工程)では、赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの組をマトリックス状に多数配列するか、又は赤R、緑G、青Bの3本のストライプ状の複数のフィルタの組を水平走査線方向に配列することによってカラーフィルタを形成する。その次のステップS403(セル組立工程)では、例えばステップS401にて得られた所定パターンを有するプレートとステップS402にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0061】
その後のステップS404(モジュール組立工程)では、そのようにして組み立てられた多数の液晶パネル(液晶セル)に表示動作を行わせるための電気回路、及びバックライト等の部品を取り付けて、液晶表示パネルとして完成させる。
上述の液晶表示パネル(液晶表示素子)の製造方法によれば、上記の実施形態の露光装置又は露光方法を用いてマスクMのパターンを基板(プレートPT)に転写する工程(ステップS401の一部)と、この工程によりそのパターンが転写されたそのプレートPTをそのパターンに基づいて加工(現像、エッチング等)する工程(ステップS401の他の部分)とを含んでいる。
【0062】
この製造方法によれば、露光装置EXの投影システムPSの結像特性を高精度な状態に維持できるため、液晶表示パネルを効率的にかつ高精度に製造できる。
なお、上記の実施形態のレンズを調整する調整装置8A〜8Dは、一つの結像光学系のみからなる投影光学系にも適用できる。この場合には、照明系ISは、全体として一つの照明領域を照明する一つの光学系から構成できる。
【0063】
また、露光装置EXは走査露光を行っているが、ステッパー型の露光装置にも調整装置8A〜8D等を有する投影光学系を使用できる。
なお、上述の実施形態では、光源として超高圧水銀ランプを用いているが、これに限定されることなく、他の適当な光源を用いることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0064】
EX…露光装置、M…マスク、PS…投影システム、PLA〜PLG…部分投影光学系、G1P…第1反射屈折系、G2P…第2反射屈折系、PT…プレート、8A〜8D…調整装置、26…光学系フレーム、36A,36B…レンズ、40A,40B…レンズ、50…上部鏡筒、52…下部鏡筒、54A,54B…レンズ支持部材、56A,56B,57A,57B…駆動機構、60A,60B…レンズ支持部材、62A,62B,63A,63B…駆動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の位置を調整する位置調整装置、光学部材の位置調整装置を備える投影光学系及びその調整方法、投影光学系を備える露光装置、並びに露光装置を使用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイ装置の製造工程中で、ガラスプレート等のパネル状の感光性基板にマスクパターンの像を露光するために、マスクと感光性基板とを投影光学系に対して同期移動して感光性基板を走査露光する露光装置(以下、パネル露光装置という。)が使用されている。
【0003】
従来、パネル露光装置は、投影光学系の大型化を抑制して大面積のパターンを効率的に露光するために、複数の部分投影光学系から構成されるマルチレンズ型の投影光学系を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−330964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のテレビ、高機能携帯電話、及びいわゆるタブレット型端末等における薄型ディスプレイ装置に対する高精細化の要求はますます高まっており、これに応じて、パネル露光装置では投影光学系の収差等の光学性能の一層の向上が求められている。
一般に、光学系では組み立てた後で、目標とする光学性能が得られるように、鏡筒等に対する複数の光学部材の位置関係(位置及び角度)を調整する必要がある。しかしながら、例えばマルチレンズ型投影光学系の場合には、複数の部分投影光学系が近接して配置されているため、個々の部分投影光学系中の光学部材の位置を効率的に調整することが困難であり、調整時間が長いとともに、目標とする光学性能がさらに高くなると、調整が困難になる恐れがあった。
【0006】
さらに、複数の部分投影光学系の光学性能間のばらつきは露光むらの一要因になりえるため、複数の部分投影光学系の光学性能のばらつきを小さくする必要がある。ところが、特に部分投影光学系の数が多いと、光学性能のばらつきを小さくするための調整が困難であった。
本発明の態様は、このような事情に鑑み、光学系中の光学部材の位置を容易に効率的に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、光学部材の位置を調整する装置が提供される。この光学部材位置調整装置は、その光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、その第1環状部とは異なる第2環状部と、その第2環状部とは異なる第3環状部と、第1の方向に関する2つの位置で、その第1環状部とその第2環状部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、その第1の方向と交差した第2の方向に関する2つの位置で、その第2環状部とその第3環状部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、その第3環状部に対してその第1環状部をその第1の方向の回りに回転させる第1駆動部と、その第3環状部に対してその第2環状部をその第2の方向の回りに回転させる第2駆動部と、を備えるものである。
【0008】
また、第2の態様によれば、光学部材の位置を調整する装置が提供される。この光学部材位置調整装置は、その光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、その第1環状部とは異なるとともに環状にかつ傾斜可能に配置された第1及び第2の傾斜可能部と、その第1環状部とは異なるとともにその傾斜可能部に連結された第2環状部と、第1の方向に関する位置で、その第1環状部とその第1の傾斜可能部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、その第1の方向と交差した第2の方向に関する位置で、その第1環状部とその第2の傾斜可能部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、その第2環状部に対してその第1の傾斜可能部をその第1の方向に対して傾くように傾斜させる第1駆動部と、その第2環状部に対してその第2の傾斜可能部をその第2の方向に対して傾くように傾斜させる第2駆動部と、を備えるものである。
【0009】
また、第3の態様によれば、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系が提供される。この投影光学系は、光軸に沿って配列された複数の光学部材と、その複数の光学部材のうちの調整対象の光学部材を支持するための第1又は第2の態様の光学部材位置調整装置と、その光学部材位置調整装置の第3環状部又は第2環状部が固定される鏡筒と、を備えるものである。
【0010】
また、第4の態様によれば、第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系が提供される。この投影光学系は、光軸に沿って配列された複数の光学部材と、その複数の光学部材のうちの調整対象の第1の光学部材を支持するための第1の態様の光学部材位置調整装置(ただし、その第1環状部、その第2環状部、及びその第3環状部は、その光学部材の光軸に沿って配列されている)と、その複数の光学部材のうちの調整対象の第2の光学部材を支持するための第1の態様の光学部材位置調整装置(ただし、その第1環状部、その第2環状部、及びその第3環状部は、その光学部材の光軸を中心として同心円状に配列されている)と、その第1及び第2の光学部材位置調整装置のその第3環状部が固定される鏡筒と、を備えるものである。
【0011】
また、第5の態様によれば、第4の態様による投影光学系の調整方法であって、その第1の光学部材位置調整装置を用いてその第1の光学部材を調整してその投影光学系の結像特性の粗調整を行い、その第2の光学部材位置調整装置を用いてその第2の光学部材を調整してその結像特性の微調整を行う投影光学系の調整方法が提供される。
また、第6の態様によれば、露光光でマスクのパターンを介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、そのマスクを移動するマスクステージと、第3又は第4の態様の投影光学系と、その基板を移動する基板ステージと、を備えるものである。
【0012】
また、第7の態様によれば、第6の態様の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、その露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、第1駆動部によって第3環状部に対して第1環状部(光学部材)を第1の方向の回りに回転させ、第2駆動部によって第3環状部に対して第2環状部(第1環状部及び光学部材)を第2の方向の回りに回転させることで、光学系中のその光学部材の位置関係を容易に効率的に調整できる。
また、第2の態様によれば、第1駆動部によって第2環状部に対して第1の傾斜可能部を第1の方向に対して傾斜させ、第2駆動部によって第2環状部に対して第2の傾斜可能部を第2の方向に対して傾斜させることで、光学系中のその光学部材の位置関係を容易に効率的に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の一例に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の投影システムPSを示す斜視図である。
【図3】図2中の一つの部分投影光学系を示す断面図である。
【図4】図3中の第1のレンズ支持部材を示す斜視図である。
【図5】(A)は図3中の第1の調整装置を示す第1の駆動機構に沿った断面図、(B)は第1の調整装置を示す第2の駆動機構に沿った断面図である。
【図6】(A)は図3中の第2のレンズ支持部材を示す正面図、(B)は図6(A)中の連結用の板ばねを示す拡大図である。
【図7】(A)は図3中の第2の調整装置を示す第1の駆動機構に沿った断面図、(B)は第2の調整装置を示す第2の駆動機構に沿った断面図である。
【図8】投影システムの調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】第2のレンズ支持部材の変形例を示す正面図である。
【図10】他の実施形態のレンズ支持部材を示す斜視図である。
【図11】(A)は図10の第1の弾性ヒンジ部を示す図、(B)は図10の第3の弾性ヒンジ部を示す図、(C)は図11(A)のレンズの駆動機構を示す要部の断面図である。
【図12】(A)はレンズ支持部材の変形例を示す正面図、(B)は図12(A)のレンズ支持部材を示す断面図である。
【図13】液晶表示素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の一例につき図1〜図8を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、一例として、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の薄型ディスプレイパネルに使用されるフォトレジストが塗布されたパネル状の平板ガラスよりなるプレートPT(感光性基板)にマスクMのパターンの像を露光するマルチレンズ型で走査露光方式のパネル露光装置である。以下、プレートPTの合焦時の表面に垂直にZ軸を取り、その表面に平行な平面内で走査露光時のマスクM及びプレートPTの走査方向に沿ってX軸を、X軸に直交する方向(非走査方向)に沿ってY軸を取って説明する。
【0016】
図1において、露光装置EXは、露光用の照明光EL(露光光)を発生する例えば超高圧水銀ランプからなる光源10と、照明光ELでマスクMのパターン面の複数の台形状の照明領域IRA等を均一な照度分布で照明する照明系ISと、マスクMをマスクホルダ(不図示)を介してXY平面に平行に保持して移動するマスクステージ21と、マスクMのパターンの像をプレートPTの表面の複数の台形状の露光領域PRA等に形成するマルチレンズ型投影光学系よりなる投影システムPS(投影光学系)と、プレートPTを保持して移動するプレートステージ22と、を備えている。さらに、露光装置EXは、マスクステージ21の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Aと、プレートステージ22の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Bと、レーザ干渉計23A,23Bの計測結果に基づいてマスクステージ21及びプレートステージ22を同期して駆動するリニアモータ等を含む駆動系(不図示)と、プレートステージ22に設けられて投影システムPSの波面収差を計測する例えばシアリング干渉方式の波面収差計測装置24と、装置全体の動作を統括的に制御する主制御装置(不図示)と、を備えている。
【0017】
そして、光源10から射出された照明光ELは、楕円鏡、ミラー、シャッター(不図示)、及び波長選択フィルター(不図示)を介して集光光学系11に入射する。波長選択フィルターでは、一例としてi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)から一つ又は複数の波長の光が選択される。集光光学系11を通過した照明光ELは、分岐光学系13の入射端12に入射し、分岐光学系13の投影システムPSを構成する部分投影光学系PLA〜PLGと同じ数(本実施形態では7つ)の射出端14A〜14Gから射出された照明光ELは、それぞれ対応する部分照明系ILA〜ILGを介して照明領域IRA〜IRGを照明する。部分照明系ILA〜ILGは、それぞれコリメートレンズ、フライアイインテグレータ(オプティカルインテグレータ)、及びコンデンサーレンズ等を有する。集光光学系11から部分照明系ILA〜ILGまでの光学部材を含んで照明系ISが構成されている。台形状の照明領域IRA〜IRGは、図2に示すように、後述の部分投影光学系PLA〜PLGの配列に合わせて、Y方向に配列された第1列の3個の照明領域IRA,IRB,IRCと、それから−X方向に離れるとともに、Y方向に半周期ずれて配列された第2列の4個の照明領域IRD,IRE,IRF,IRGとに分かれている。
【0018】
図1において、マスクMの照明領域IRA〜IRGからの照明光は、各照明領域に対応するようにY方向に沿って2列に配列された複数(本実施形態では7つ)の部分投影光学系PLA〜PLGからなる投影システムPSに入射する。部分投影光学系PLA〜PLGは照明領域IRA〜IRG中のパターンの像を対応する露光領域PRA等に形成する。図1では、各部分投影光学系PLA〜PLGは、鏡筒内部の光学系の概略構成を示している。部分投影光学系PLA〜PLGは、互いに同一構成で一例としてZ方向に配列された2段の反射屈折系を有するほぼ両側にテレセントリックで高精細な結像光学系であり、それぞれ一例として等倍の正立正像を形成し、開口数は例えば0.1程度である。
【0019】
この場合、X方向に向かって全部の照明領域IRA〜IRGを見ると、照明領域IRA〜IRGはY方向に隙間なく配置されている。そこで、照明領域IRA〜IRGのパターンの投影システムPSによる像でプレートPTを露光しつつ、マスクステージ21によって照明領域IRA〜IRGに対してマスクMを+X方向(又は−X方向)に移動することと、プレートステージ22によって露光領域PRA等に対してプレートPTを+X方向(又は−X方向)に移動することとを同期して行うことで、マスクMの全面のパターンを1回の走査露光でプレートPTの一つのパターン形成領域(区画領域)に露光できる。
【0020】
図2に示すように、部分投影光学系PLA〜PLGは、Y方向に配置された第1列の3個の部分投影光学系PLA,PLB,PLCと、それらに対向するように−X方向に配置されるとともに、Y方向に半周期ずれて配置された第2列の4個の部分投影光学系PLD,PLE,PLF,PLGとに分かれて、2点鎖線で示す平板状で照明光を通す開口が形成された光学系フレーム26に支持されている。光学系フレーム26は、プレートステージ22が移動可能に載置されたベース部材(不図示)に支持されている。なお、投影システムPSを構成する部分投影光学系PLA〜PLGの数及び配列は任意である。
【0021】
第1〜第7の部分投影光学系PLA〜PLGの構成は互いに同一であり、以下では、図3を参照して、第1の部分投影光学系PLAの構成につき説明する。図3において、部分投影光学系PLAは、マスクMの照明領域IRA内のパターンの一次像I1を形成する第1反射屈折系G1Pと、一次像I1の近傍に配置された視野絞り(不図示)と、第1反射屈折系G1Pを収容する第1(上部)鏡筒50と、その一次像I1の二次像I2をプレートPT上の露光領域PRAに形成する第2反射屈折系G2Pと、第2反射屈折系G2Pを収容する第2(下部)鏡筒52と、を有する。また、第1反射屈折系G1Pは、マスクMから−Z方向に入射する光をシフトする像シフタ28A(例えば複数の平行平面板)等と、その光を+X方向に反射する第1直角プリズム30Aと、第1直角プリズム30A側から順に+X方向に配列されたレンズ32A、レンズ34A、レンズ36A、レンズ38A、及びレンズ40Aと、直角プリズム30Aの第1反射面で反射されてレンズ32A〜40Aを通過した光を−X方向に反射する第1凹面鏡42Aと、を備えている。レンズ32A〜40A及び第1凹面鏡42Aよりなる光学系の光軸をAX1とする。第1凹面鏡42Aで反射された光は、レンズ40A〜32Aを通過し、直角プリズム30Aの第2反射面で−Z方向に反射されて一次像I1を形成する。
【0022】
また、第1鏡筒50は、角柱状で像シフタ28A及び直角プリズム30Aを支持する第1鏡筒部50aと、円筒状でレンズ32A,34Aを支持する第2鏡筒部50bと、円筒状でレンズ36A,38A,40Aを収容する第3鏡筒部50cと、他端部が閉じられた短い円筒状で第1凹面鏡42Aを支持する第4鏡筒部50dとをボルトB7等(図7(A)参照)によって連結したものである。第1鏡筒50は光学系フレーム26の上面に固定されている。
【0023】
第2反射屈折系G2Pの構成は第1反射屈折系G1Pとほぼ同様である。すなわち、第2反射屈折系G2Pは、一次像I1から−Z方向に入射する光を+X方向に反射する第2直角プリズム30Bと、第2直角プリズム30Bで反射された光の光路に配置されたレンズ32B,34B,36B,38B,40Bと、レンズ40Bを通過した光を−X方向に反射する第2凹面鏡42Bと、第2凹面鏡42Bで反射されてレンズ40B〜32Bを通過し、直角プリズム30Bで−Z方向に反射された光をシフトする像シフタ28B等と、を備えている。レンズ32B〜40B及び第2凹面鏡42Bよりなる光学系の光軸をAX2とする。像シフタ28Bを通過した光によって露光領域PRAに二次像I2が形成される。第2鏡筒52も、像シフタ28B及び直角プリズム30Bを支持する第1鏡筒部52aと、レンズ32B,34Bを支持する第2鏡筒部52bと、レンズ36B,38B,40Bを収容する第3鏡筒部52cと、第2凹面鏡42Bを支持する第4鏡筒部52dとを連結したものである。第2鏡筒52は光学系フレーム26の底面に固定されている。
【0024】
また、部分投影光学系PLAは、第3鏡筒部50c,52cに対するレンズ36A,36Bの位置関係を調整して結像特性の粗調整を行う第1の調整装置8A及び第3の調整装置8Cと、第3鏡筒部50c,52cに対するレンズ40A,40Bの位置関係を調整して結像特性の微調整を行う第2の調整装置8B及び第4の調整装置8Dと、を有する。本実施形態では、互いに同じ構成の第1及び第3の調整装置8A,8Cは、それぞれレンズ36A,36Bを保持する金属製の円筒状のレンズ支持部材54A,54Bと、光軸AX1,AX2に垂直な平面内の直交する2つの方向の回りでレンズ36A,36Bの回転角(チルト角)を調整して、偏芯コマ収差を粗調整する第1の駆動機構56A,56B及び第2の駆動機構57A,57Bと、を有する。レンズ支持部材54A,54Bはそれぞれ4箇所で連結板58A,58B及びボルトB1(図5(A)参照)によって第3鏡筒部50c内の−X方向の端面50c3等に固定されている。第3鏡筒部50cの側面上方(Z軸をX軸の回りに±45°回転した方向)には、駆動機構56A,57Aのレバー56A1,57A1の端部を外面に突き出すためのスリット部50c1,50c2が形成されている。第2鏡筒52の第3鏡筒部52cの側面下方にも、スリット部50c1,50c2と対称に駆動機構56B,57Bのレバーの端部を外面に突き出すためのスリット部52c1,52c2が形成されている。
【0025】
同様に、互いに同じ構成の第2及び第4の調整装置8B,8Dは、それぞれレンズ40A,40Bを保持し、レンズ支持部材54A,54Bより短い金属製の円筒状(外径は、レンズ支持部材54A,54Bより大きい環状)のレンズ支持部材60A,60Bと、光軸AX1,AX2に垂直な平面内の直交する2つの方向の回りでレンズ40A,40Bの回転角(チルト角)を調整して、偏芯コマ収差を微調整する第1の駆動機構62A,62B及び第2の駆動機構63A,63Bと、を有する。レンズ支持部材60A,60Bの外周部はそれぞれボルトB11によって第3鏡筒部50c,52c内の+X方向の端面50c4,52c4に固定されている。第3鏡筒部50c,52cの端面50c5,52c5に第4鏡筒部50d,52dのフランジ部がボルトB7によって固定され、第4鏡筒部50d,52dのフランジ部には、駆動機構62A,63A,62B,63Bの連結用の板ばね64A,65A等の端部を外面に突き出すためのスリット部50d1,50d2等が形成されている。偏芯コマ収差は、波面収差としては、例えば7次及び8次のツェルニケ(Zernike) 係数(Z7,Z8)で表される。なお、図3において、第3鏡筒部50c,52c及び第4鏡筒部50d,52dの断面図は、それぞれXZ面を光軸AX1,AX2の回りに45°回転した面に沿った断面を表している。
【0026】
以下、図4〜図5(B)を参照して図3中の第1の調整装置8Aにつき説明する。図4は、調整装置8Aの一部のレンズ支持部材54Aを示す。図4において、レンズ支持部材54Aは、レンズ36Aの外縁部を収容する収容部54A1a(図5(A)参照)を有する環状の第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して、1対のスリットB4A,B4Bを隔てて配置された環状の第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して、ほぼスリットB4A,B4Bを光軸AX1の回りに90°回転させた形状の1対のスリットB3A,B3Bを隔てて配置された第3支持部54A3と、を一体的に形成したものである。
なお、一対のスリットB4A,B4Bは、後述する弾性ヒンジ部55A,55Bを残すように、光軸AX1の回りに対して、対称にかつ180°より小さい角度で形成される。
また、スリットB4A,B4Bの端部、即ち、弾性ヒンジ部55A,55Bの近傍は、+X方向に折れ曲がった折り曲げ部を有する形状である。
【0027】
また、一対のスリットB3A,B3Bは、後述する弾性ヒンジ部55C,55Dを残すように、光軸AX1の回りに対して、対称にかつ180°より小さい角度で形成される。また、スリットB3A,B3Bの端部、即ち、弾性ヒンジ部55C,55Dの近傍は、−X方向に折れ曲がった折り曲げ部を有する形状である。
レンズ36Aの外縁部は第1支持部54A1内の収容部54A1a(支持部)に環状の押さえ部材B2(図5(A)参照)によって固定され、第3支持部54A3の側面の4箇所の平坦部に設けた連結板58Aによって、第3支持部54A3が図3の第3鏡筒部50cに固定されている。スリットB4A,B4B等の折れ曲げ部及び端部は可撓性を増すために円形に形成されている。スリットB4A,B4B,B3A,B3Bの折り曲げ部等の形状等は、例えばワイヤカット放電加工機等で加工できる。
【0028】
スリットB4A,B4Bの1対の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を時計回りに45°回転した第1方向R1に沿って対向するように配置された第1及び第2の弾性ヒンジ部55A,55Bである。スリットB3A,B3Bの1対の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を反時計回りに45°回転した第2方向R2に沿って対向するように配置された第3及び第4の弾性ヒンジ部55C,55Dである。スリットB4A,B4Bの端部と、スリットB3A,B3Bの端部とは光軸AX1に垂直な同じ平面上にあるため、弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通る回転軸B5と弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通る回転軸B6とは光軸AX1で直交している。
【0029】
図5(A)は図4の回転軸B5に沿った方向の断面図であり、図5(B)は図4の回転軸B6に沿った方向の断面図である。第2支持部54A2に対して第1支持部54A1(レンズ36A)は、弾性ヒンジ部55A,55Bを介して第1方向R1に沿った回転軸B5の回りに、第1の駆動機構56Aによって図5(B)の点線の位置D2で示すように回転駆動される。図5(B)に示すように、第1の駆動機構56Aは、第1支持部54A1の弾性ヒンジ部55Cの近傍に固定されたレバー56A1と、第3鏡筒部50cの外面に固定されてレバー56A1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ56A2と、レバー56A1の第3鏡筒部50cのスリット部50c1を通して突き出た先端部とマイクロメータ56A2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね56A3とを有する。また、レバー56A1の先端部は+X方向に折れ曲がっており、マイクロメータ56A2の先端(相対的に滑りやすいように、半球面に加工されている)とレバー56A1の平坦な先端部との接触部は、弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通り光軸AX1に垂直な平面上にある。このため、駆動機構56Aによって第1支持部54A1(レンズ36A)を弾性ヒンジ部55A,55Bの中心を通る軸の回りに容易にかつ正確に回転できる。
【0030】
また、第3支持部54A3(第3鏡筒部50c)に対して第2支持部54A2(第1支持部54A1及びレンズ36A)は、弾性ヒンジ部55C,55Dを介して第2方向R2に沿った回転軸B6の回りに、第2の駆動機構57Aによって図5(A)の点線の位置D1で示すように回転駆動される。図5(A)に示すように、駆動機構57Aは、第1支持部54A1(又は第2支持部54A2でもよい)の弾性ヒンジ部55Aの近傍に固定されたレバー57A1と、第3鏡筒部50cの外面に固定されてレバー57A1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57A2と、レバー57A1の第3鏡筒部50cのスリット部50c2を通して突き出た先端部とマイクロメータ57A2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね57A3とを有する。また、レバー57A1の先端部は+X方向に折れ曲がっており、マイクロメータ57A2の先端(相対的に滑りやすいように、半球面に加工されている)とレバー57A1の平坦な先端部との接触部は、弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通り光軸AX1に垂直な平面上にある。このため、駆動機構57Aによって第2支持部54A2(レンズ36A)を弾性ヒンジ部55C,55Dの中心を通る軸の回りに容易にかつ正確に回転できる。
【0031】
次に、図6(A)〜図7(B)を参照して図3中の第2の調整装置8Bにつき説明する。図6(A)は、調整装置8Bの一部のレンズ支持部材60Aを示す。図6(A)において、レンズ支持部材60Aは、レンズ40Aを収容する収容部60A1a(図7(A)参照)を有する環状の第1支持部60A1と、第1支持部60A1に対して、1対のスリットB13,B14を隔てて同心円状に配置された環状の第2支持部60A2と、第2支持部60A2に対して1対のスリットB15,B16を隔てて同心円状に配置された第3支持部60A3と、を一体的に形成したものである。
なお、1対のスリットB13,B14は、後述する弾性ヒンジ部61A,61Bを残すように、光軸AX1の回りにほぼ対称にほぼ180°の角度で形成され、かつ端部に半径方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。
【0032】
また、1対のスリットB15,B16は、後述する弾性ヒンジ部61C,61Dを残すように、ほぼスリットB13,B14を半径方向に広げた形状で、かつこの形状を光軸AX1の回りに90°回転した形状である。ただし、スリットB13,B14の中央部は光軸AX1の方向に向かう凹の折り曲げ部を有し、スリットB15,B16の中央部は光軸AX1に対して半径方向に向かう凸の折り曲げ部を有する。
レンズ40Aの外縁部は第1支持部60A1内の収容部60A1a(支持部)に環状の押さえ部材B12(図7(A)参照)によって固定され、第3支持部60A3の外周部が複数のボルトB11によって第3鏡筒部50c内の端面50c4に固定されている。スリットB13〜B16の端部は可撓性を増すために円形に形成されている。スリットB13〜B16の折り曲げ部等の形状は、例えばワイヤカット放電加工機等で加工できる。
【0033】
スリットB13,B14の1対の半径方向の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を時計回りに45°回転した第1方向R1に沿って対向するように配置された第1及び第2の弾性ヒンジ部61A,61Bである。スリットB15,B16の1対の半径方向の間隔部分が、光軸AX1に垂直な平面内でZ軸を反時計回りに45°回転した第2方向R2に沿って対向するように配置された第3及び第4の弾性ヒンジ部61C,61Dである。弾性ヒンジ部61A〜61Dは、可撓性を増すために、X方向の厚さがレンズ支持部材60Aの外形の厚さよりもかなり薄く形成されている(図7(A)、(B)参照)。スリットB13〜B16には、弾性ヒンジ部61D,61C,61A,61Bとの機械的な干渉を避けるための凹部又は凸部が設けられている。弾性ヒンジ部61A,61Bの中心を通る回転軸B17と弾性ヒンジ部61C,61Dの中心を通る回転軸B18とは光軸AX1で直交している。
【0034】
図7(A)は図6(A)の回転軸B18に沿った方向の断面図であり、図7(B)は図6(A)の回転軸B17に沿った方向の断面図である。第2支持部60A2に対して第1支持部60A1(レンズ40A)は、弾性ヒンジ部61A,61Bを介して第1方向R1に沿った回転軸B17の回りに第1の駆動機構62Aによって回転駆動される。図7(A)に示すように、第1の駆動機構62Aは、第1支持部60A1の弾性ヒンジ部61Cの近傍に一端部が固定された連結用の板ばね64Aと、第4鏡筒部50dの外面にボルト62A2で固定されてスリット部50d1を通過した板ばね64Aの他端部がボルト等で固定された支持部62A1と、支持部62A1と第4鏡筒部50dの外面との間に設置された厚さが調整可能なワッシャ62A3と、を有する。ワッシャ62A3は種々の厚さの多数のワッシャの中から選択されたものであり、ワッシャ62A3の厚さを調節することによって、板ばね64Aの他端部をX方向に押し引きすることができる。このように板ばね64Aの他端部をX方向に押し引きすることで、点線の位置D3で示すように、第1支持部60A1(レンズ40A)を回転できる。
【0035】
なお、板ばね64Aには第2の駆動機構62Bによる変位等によって横方向の応力が加わるため、その応力を逃がすために、図6(B)に示すように2箇所のフレクシャ部64Aa,64Abが形成されている。
また、図6(A)において、第3支持部60A3(第3鏡筒部50c)に対して第2支持部60A2(第1支持部60A1及びレンズ40A)は、弾性ヒンジ部61C,61Dを介して第2方向R2に沿った回転軸B18の回りに第2の駆動機構63Aによって回転駆動される。図7(B)に示すように、第2の駆動機構63Aは、第2支持部60A2(又は第1支持部60A1でもよい)の弾性ヒンジ部61Aの近傍に一端部が固定された連結用の板ばね65Aと、第4鏡筒部50dの外面にボルト63A2で固定されてスリット部50d2を通過した板ばね64Aの他端部がボルト等で固定された支持部63A1と、支持部63A1と第4鏡筒部50dの外面との間に設置された厚さが調整可能なワッシャ63A3と、を有する。ワッシャ63A3の厚さを調節して、板ばね65Aの他端部をX方向に押し引きすることで、点線の位置D4で示すように、第2支持部60A2(ひいてはレンズ40A)を回転できる。板ばね65Aにも板ばね64Aと同様に図6(B)に示すように2箇所(又は1箇所でもよい)のフレクシャ部が形成されている。
【0036】
なお、駆動機構62A,63Aとしても、駆動機構56A,57Aと同様にマイクロメータ方式の押し引き機構を使用してもよい。また、駆動機構56A,62A等として、電動マイクロメータ、超音波モータ、又はピエゾ素子等の駆動素子を用いる自動的な押し引き機構を使用してもよい。
次に、本実施形態の投影システムPSの光学特性又は結像特性の調整方法の一例につき図8のフローチャートを参照して説明する。まず、図8のステップ102で、投影システムPSの複数の部分投影光学系PLA〜PLGの各部材の製造、各部材の組立調整、及び光学系フレーム26に対する装着が行われる。次のステップ104で、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1の調整装置8Aを使用して図3の第1鏡筒50内の第1反射屈折系G1Pの粗調整を行い、第3の調整装置8Cを使用して第2鏡筒52内の第2反射屈折系G2Pの粗調整を行う。次のステップ106で、例えば波面収差計測装置(不図示)等を用いて波面収差を計測しながら、各部分投影光学系PLA〜PLGの第2の調整装置8Bを使用して第1反射屈折系G1Pの微調整を行い、第4の調整装置8Dを使用して第2反射屈折系G2Pの微調整を行う。これらの調整に際して、調整装置8A〜8Dの操作部(マイクロメータ56A2及びワッシャ62A3等)は第1鏡筒50及び第2鏡筒52の外面に出ているため、マルチレンズ型の投影システムPSであっても結像特性(波面収差)の調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0037】
その後、ステップ108で、単体での調整済みの投影システムPSが、図2に示すように、露光装置本体部のマスクステージ21とプレートステージ22との間に装着される。次のステップ110で、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1の調整装置8Aを使用して第1反射屈折系G1Pの粗調整を行う。この際に、第1反射屈折系G1Pは第1鏡筒50内に収容され、調整装置8Aの操作部(マイクロメータ56A2,57A2)は第1鏡筒50の斜め上部の外面に固定されているため、複数の部分投影光学系PLA〜PLGが近接して配置されていても、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1反射屈折系G1Pの粗調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0038】
次のステップ112で、例えば図1の波面収差計測装置24を用いてオンボディで波面収差を計測しながら、各部分投影光学系PLA〜PLGの第2の調整装置8Bを使用して第1反射屈折系G1Pの微調整を行う。この際にも、第1反射屈折系G1Pは第1鏡筒50内に収容され、調整装置8Bの操作部(ワッシャ62A3,63A3)は第1鏡筒50の横方向の外面に固定されているため、複数の部分投影光学系PLA〜PLGが近接して配置されていても、各部分投影光学系PLA〜PLGの第1反射屈折系G1Pの微調整をきわめて容易に効率的に行うことができる。また、例えば所定の部分投影光学系PLAの結像特性に対して、他の部分投影光学系PLB〜PLGの結像特性を合わせるための調整も、調整装置8A〜8Dを用いてきわめて容易に効率的に行うことができる。
【0039】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
本実施形態の露光装置EXの投影システムPS(マルチレンズ型投影光学系)は、複数の部分投影光学系PLA〜PLGを備え、各部分投影光学系PLA〜PLGはそれぞれ粗調用の第1の調整装置8A及び微調用の第2の調整装置8Bを備えている。
そして、部分投影光学系PLA等の第1反射屈折系G1P内のレンズ36Aの第1鏡筒50に関する位置関係を調整する第1の調整装置8Aは、レンズ36Aを支持する環状の第1支持部54A1と、第1支持部54A1に対して、光軸AX1に垂直な第1方向R1に沿って対向するように配置された1対の弾性ヒンジ部55A,55Bを介して連結された環状の第2支持部54A2と、第2支持部54A2に対して、光軸AX1に垂直で第1方向R1に直交する第2方向R2に沿って対向するように配置された1対の弾性ヒンジ部55C,55Dを介して連結された環状の第3支持部54A3と、第3支持部54A3(第1鏡筒50)に対して第1支持部54A1(レンズ36A)を第1方向R1の回りに回転させる第1の駆動機構56Aと、第3支持部54A3に対して第2支持部54A2(レンズ36A)を第2方向R2の回りに回転させる第2の駆動機構57Aと、を備えている。そして、第1〜第3支持部54A1〜54A3は光軸AX1に沿って全体としてほぼ円筒状に連結されている。
【0040】
また、第1反射屈折系G1P内のレンズ40Aの第1鏡筒50に関する位置関係を調整する第2の調整装置8Bは、レンズ40Aを支持する環状の第1支持部60A1と、第1支持部60A1に対して弾性ヒンジ部61A,61Bを介して連結された環状の第2支持部60A2と、第2支持部60A2に対して弾性ヒンジ部61C,61Dを介して連結された環状の第3支持部60A3と、第3支持部60A3(第1鏡筒50)に対して第1支持部60A1(レンズ40A)を第1方向R1の回りに回転させる第1の駆動機構62Aと、第3支持部60A3に対して第2支持部60A2(レンズ40A)を第2方向R2の回りに回転させる第2の駆動機構63Aと、を備えている。そして、第1〜第3支持部60A1〜60A3は光軸AX1を中心としてほぼ同心円状に連結されている。
【0041】
本実施形態によれば、第1の駆動機構56A,62Aによって第3支持部54A3,60A3に対して第1支持部54A1,60A1(レンズ36A,40A)を第1の方向R1の回りに回転させ、第2の駆動機構57A,63Aによって第3支持部54A3,60A3に対して第2支持部54A2,60A2(第1支持部54A1,60A1及びレンズ36A,40A)を第2の方向R2の回りに回転させることで、第1反射屈折系G1P(部分投影光学系PLA〜PLG)中のレンズ36A,40Aの第1鏡筒50(第3支持部54A3,60A3が固定された部材)に対する位置関係を容易に効率的に調整できる。
【0042】
なお、第1の方向R1と第2の方向R2とは90°以外の角度で交差していてもよい。
また、第1〜第3支持部54A1〜54A3及び第1〜第3支持部60A1〜60A3はそれぞれ一体的に形成されているため、レンズ36A,40Aを安定に駆動できる、なお、第1〜第3支持部54A1〜54A3及び第1〜第3支持部60A1〜60A3のうちの少なくとも一つの部分を別体の部材から形成し、この別体の部材を弾性ヒンジ機構を介して他の部分に連結してもよい。
【0043】
また、投影システムPSは、それぞれマスクMのパターンの一部の像をプレートPT表面に形成する複数の部分投影光学系PLA〜PLGを有するため、全体として小型の投影光学系を用いて露光領域を広くできるため、例えば1回の走査露光で、大面積のプレートPTに対してマスクMのパターンの像を高精度に露光できる。
また、本実施形態の投影システムPSは、マスクMのパターン面(第1面)のパターンの像をプレートPTの表面(第2面)に形成する投影光学系であって、その第1面とその第2面との間に順に、かつその第2面に沿って(光軸AX1,AX2がプレートPTの表面に沿ったX方向に延びるように)配列されて、それぞれ中間像を形成する第1及び第2の反射屈折光学系G1P,G2Pを備えている。さらに、投影システムPSは、第1の反射屈折光学系G1P内のレンズ36A(第1の光学部材)及びレンズ40A(第2の光学部材)を支持するための第1及び第2の調整装置8A及び8Bと、第2の反射屈折光学系G2P内のレンズ36B(第3の光学部材)及びレンズ40B(第4の光学部材)を支持するための第3及び第4の調整装置8C及び8Dと、調整装置8A〜8Dの第3支持部54A3,60A3等が固定される第1鏡筒50及び第2鏡筒52と、を備えている。
【0044】
また、本実施形態の投影システムPSの調整方法は、投影システムPS単体の調整時に調整装置8C及び8Dを用いて第2の反射屈折系G2Pのレンズ36B,40Bの調整を行い(ステップ104,106)、投影システムPSを露光装置に組み込んだ状態で、調整装置8A及び8Bを用いて第1の反射屈折光学系G1Pのレンズ36A,40Aの調整を行うものである(ステップ110,112)。この調整方法によれば、投影システムPSを露光装置に組み込んだ状態では、スペース的に余裕のある上方の第1鏡筒50内の第1の反射屈折系G1Pの調整を行うため、投影システムPSの調整が容易である。
【0045】
なお、調整装置8A,8Bと同様の調整装置で凹面鏡42A等の他の光学部材の位置関係を調整してもよい。
また、本実施形態の露光装置EXは、照明光ELでマスクMのパターンを介してプレートPTを露光する露光装置において、マスクMを移動するマスクステージ21と、本実施形態の投影システムPS(投影光学系)と、プレートPTを移動するプレートステージ22と、を備えている。露光装置EXによれば、投影システムPSの結像特性を高精度に調整できるため、大面積のプレートPTに対してマスクMのパターンの像を高精度に露光できる。
【0046】
次に、上記の実施形態については以下のような変形が可能である。
まず、図6(A)のレンズ支持部材60Aの代わりに図9の第1変形例のレンズ支持部材60Cを使用してもよい。図9において、レンズ支持部材60Cは、レンズ40Aを支持する第1支持部60C1と、その外側の第2支持部60C2とを連結する弾性ヒンジ部61E,61Fが単に半円状のスリットの端部間にあり、第2支持部60C2と、その外側の第3支持部60C3とを連結する弾性ヒンジ部61G,61Hも単に半円状のスリットの端部間にある。この単純な形状のレンズ支持部材60Cを使用しても、弾性ヒンジ部61E,61Fを通る回転軸B17及び弾性ヒンジ部61G,61Hを通る回転軸B18の回りに板ばね64A,65Aを有する駆動機構によってレンズ40Aを回転できる。
【0047】
次に、他の本実施形態につき図10〜図11(C)を参照して説明する。この実施形態の調整装置は、図5(A)のレンズ36Aの調整装置8Aの代わりに使用できる。図10は、本実施形態の調整装置のレンズ支持部材54Cを示す。図10において、レンズ支持部材54Cは、レンズ36Aを収容する環状の第1支持部54C1(第1環状部)と、第1支持部54C1に対して1対のスリットE1,E2を隔てて配置された環状の第2支持部54C2と、第2支持部54C2に対して4本のスリットE3,E4,E5,E6を隔てて配置された環状の第3支持部54C3と、第3支持部54C3に対して4本のスリットE7,E8,E9,E10及び2本のスリットE11,E12を隔てて配置された環状の第4支持部54C4(第2環状部)と、を光軸AX1方向に一体的に円筒状に連結したものである。第4支持部54C4が連結板58Aを用いて図5(A)の第3鏡筒部50c内の端面50c3に固定される。
【0048】
なお、1対のスリットE1,E2は、後述する線状ヒンジ部75Cb等を残すように、光軸AX1の回りに対称に180°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部に+X方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。4本のスリットE3,E4,E5,E6は、後述する線状ヒンジ部75Ca,75Ab等を残すように、光軸AX1の回りに90°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部に+X方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。また、4本のスリットE7,E8,E9,E10は、後述する線状ヒンジ部75Aa等及び線状ヒンジ部75Ca等の近傍の領域を残すように、光軸AX1の回りに90°よりもわずかに小さい角度で形成され、端部にX方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する形状である。スリットE11,E12は、線状ヒンジ部75Ca等と平行に形成されている。
【0049】
スリットE3,E4間及びスリットE5,E6間に第1の方向R1に平行な直線E13に沿って対向するように1対の弾性ヒンジ部75A,75Bが対称に形成され、スリットE1,E2間及びスリットE6,E3間に第1の方向R1に直交する第2の方向R2に平行な直線E14沿って対向するように1対の弾性ヒンジ部75C,75Dが対称に形成されている。図11(A)に示すように、弾性ヒンジ部75Aは、スリットE3,E4間及びスリットE7,E8間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部75Aa,75Ab(平行リンク部)、及びスリットE3,E7間及びスリットE4,E8間に形成された厚さが薄い点状ヒンジ部75Ac,75Ad(点連結を行う第1弾性ヒンジ部)を有し、線状ヒンジ部75Aa,75Ab間の傾斜可能な傾斜可能部54C31(第3支持部54C3の一部)に、第1の駆動機構56Cのレバー56C1が固定される。弾性ヒンジ部75Aに対向する弾性ヒンジ部75Bにも、傾斜可能部54C31に対向するように傾斜可能部54C32がある。
【0050】
また、図11(B)に示すように、弾性ヒンジ部75Cは、スリットE1,E2間及びスリットE4,E5間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部75Ca,75Cb、及びスリットE1,E4間及びスリットE2,E4間に形成されて厚さが薄い点状ヒンジ部75Cc,75Cd(点連結を行う第2弾性ヒンジ部)を有し、線状ヒンジ部75Ca,75Cb間の傾斜可能な傾斜可能部54C33(第3支持部54C3の一部)に、第2の駆動機構57Cのレバー57C1が固定される。弾性ヒンジ部75Cに対向する弾性ヒンジ部75Dにも、傾斜可能部54C33に対向するように傾斜可能部54C34がある。駆動機構56C及び57Cは、それぞれレバー56C1及び57C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57C2等を有する。第1の駆動機構56Cのレバー56C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ(不図示)は図5(A)の第3鏡筒部50cの外面に固定される。一方、第2の駆動機構57Cのレバー57C1の先端部をX方向に押し引きするマイクロメータ57C2は、一例として、図11(C)に示すように、傾斜可能部54C33の近傍の第4支持部54C4に固定され、マイクロメータ57C2の支持部とレバー57C1の先端部との間に引っ張りコイルばね57C3が設けられている。マイクロメータ57C2も鏡筒部50cの外部で操作できる。このようにマイクロメータ57C2を第4支持部54C4(レンズ支持部材54C)に固定することで、第1の駆動機構56Cでレバー56C1を駆動したときに、傾斜可能部54C33の傾斜角が変化しない。
【0051】
図11(A)に示すように、第2の駆動機構のレバー57C1を光軸AX1の方向(X方向)に押し引きすることで、図11(B)の線状ヒンジ部75Ca,75Cb間の傾斜可能部54C33(及びこれに対向する傾斜可能部54C34)が傾斜し、点状ヒンジ部75Cc,75Cdがその傾斜角を相殺するように曲がることで、点線の位置D5に示すように、第3支持部54C3に対して第2支持部54C2の先端部が横方向(第2の方向R2)にシフトし、第1支持部54C1(レンズ36A)はその方向に平行に同じ量だけシフトする。同様に、図11(B)に示すように、第1の駆動機構のレバー56C1を光軸AX1の方向(X方向)に押し引きすることで、図11(A)の線状ヒンジ部75Aa,75Ab間の傾斜可能部54C31(及びこれに対向する傾斜可能部54C32)が傾斜し、点状ヒンジ部75Ac,75Adがその傾斜角を相殺するように曲がることで、点線の位置D6に示すように、第4支持部54C4に対して第3支持部54C3の先端部が横方向(第1の方向R1)にシフトし、第2支持部54C2及び第1支持部54C1(レンズ36A)はその方向に平行に同じ量だけシフトする。
【0052】
このように本実施形態のレンズ支持部材54C及び駆動機構56C,57Cを有する調整装置によれば、レバー56C1の駆動によってレンズ36Aを第1の方向R1にシフトさせ、レバー57C1の駆動によってレンズ36Aを第2の方向R2にシフトさせることができ、これによって光学系の偏芯コマ収差を補正できる。
なお、本実施形態のレンズ36Aの調整装置の代わりに、図12(A)、(B)に示す変形例の調整装置を使用してもよい。図12(A)は、その調整装置のレンズ支持部材54Dを示す。図12(A)において、レンズ支持部材54Dは、レンズ36Aを収容する環状の第1支持部54D1(第1環状部)と、第1支持部54D1に対して光軸AX1の回りに120°よりもわずかに小さい角度で形成された円弧状の3つのスリットF1,F2,F3を隔てて同心円状に配置された環状の第2支持部54C3(第2環状部)と、第2支持部54C3の一部に120°間隔で配置された3箇所の互いに同一形状の傾斜可能部54D2A,54D2B,54D2Cとを一体的に連結したものである。
【0053】
第1の傾斜可能部54D2Aは、スリットF1,F2の端部近傍から半径方向に平行に延びるスリットF1a,F2bと、光軸AX1の円周方向にほぼ平行に形成された2つのスリットF4,F5とで囲まれた領域であり、第2支持部54D2A及びこの近傍に第1の弾性ヒンジ部76Aが設けられている。弾性ヒンジ部76Aは、スリットF4,F1a間及びスリットF5,F1a間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部76Aa,76Ab(第1平行リンク部)、スリットF4,F2b間及びスリットF5,F2b間に形成されて互いに平行で厚さが薄い線状ヒンジ部76Ac,76Ad(第2平行リンク部)、及びスリットF1の端部とスリットF2の端部との間に形成された厚さが薄い点状ヒンジ部76Ae(点連結を行う第1弾性ヒンジ部)を有し、スリットF4,F5間の傾斜可能部54D2Aに、第1の駆動機構56Dのレバー56D1が固定される。
【0054】
また、図12(A)の傾斜可能部54D2Aの中心を通る断面図である図12(B)に示すように、線状ヒンジ部76Aa〜76Ad(第2平行リンク部)は、レンズ支持部材54Dの−X方向側に位置しているのに対して、点状ヒンジ部76Ae(点連結部)はレンズ支持部材54Dの+X方向側に位置しており、第2平行リンク部と点連結部とは光軸AX1方向の位置が異なっている。
【0055】
図12(A)において、第2の傾斜可能部54D2B及びこの近傍にも2つの平行リンク部と一つの点連結部とを有する第2の弾性ヒンジ部76Bが設けられ、第2の傾斜可能部D2Bに、第2の駆動機構56Eのレバー56E1が固定されている。また、第3の傾斜可能部54D2C及びこの近傍にも2つの平行リンク部と一つの点連結部とを有する第3の弾性ヒンジ部76Cが設けられ、第3の傾斜可能部54D2Cに、第3の駆動機構56Fのレバー56F1が固定されている。
【0056】
図12(B)において、第2支持部54D3の外周部が光学系の鏡筒77の端面にボルト(不図示)によって固定されている。第1の駆動機構56Dは、レバー56D1の先端部をX方向に押し引きするために鏡筒77の外面に固定されたマイクロメータ56D2と、レバー56D1の先端部とマイクロメータ56D2の支持部とを連結する引っ張りコイルばね56D3とを有する。他の駆動機構56E,56Fも同様に構成されている。
【0057】
マイクロメータ56D2によってレバー56D1を光軸AX1に平行なX方向に押し引きすることによって、点線の位置D7で示すように、線状ヒンジ部76Aa,76Acに対して線状ヒンジ部76Ab,76AdがX方向に移動するように第2の傾斜可能部54D2Aが傾斜する。この際に、他の弾性ヒンジ部76B,76Cは動かないため、点線の位置D8で示すように第1支持部54D1(レンズ36A)はY軸の回りに回転(傾斜)する。また、図12(A)の第2の駆動機構56Eのレバー56E1を+X方向に押し、第3の駆動機構56Fのレバー56F1を−X方向に引くことで、第1支持部54D1(レンズ36A)はZ軸の回りに回転(傾斜)する。また、3つのレバー56D1,56E1,56F1を同じ量だけX方向に押し引きすることによって、第1支持部54D1(レンズ36A)をX方向にシフトさせることができる。
【0058】
このようにこの変形例によれば、3つの等角度間隔で配置された駆動機構56D〜56Fを用いることで、第1支持部54D1(レンズ36A)を直交する2軸(Y軸及びZ軸)の回りの回転角を調整して偏芯コマ収差を補正できるとともに、第1支持部54D1(レンズ36A)のX方向の位置を調整して光学系のフォーカス状態を補正できる。
また、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて、プレートPT上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、電子デバイス(マイクロデバイス)としての多数の液晶ディスプレイ又は液晶表示パネル(液晶表示素子)を得ることもできる。以下、図13のフローチャートを参照して、この製造方法の一例につき説明する。
【0059】
図13のステップS401(パターン形成工程)では、先ず、露光対象のプレート上にフォトレジストを塗布して感光基板(プレートPT)を準備する塗布工程、上記の露光装置を用いて液晶表示パネル用のマスク(例えばマスクMを含む)のパターンをその感光基板上の多数のパターン形成領域(区画領域)に転写露光する露光工程、及びその感光基板を現像する現像工程が実行される。この塗布工程、露光工程、及び現像工程を含むリソグラフィ工程によって、そのプレート上に所定のレジストパターンが形成される。このリソグラフィ工程に続いて、そのレジストパターンをマスクとしたエッチング工程、及びレジスト剥離工程等を経て、そのプレート上に多数の電極等を含む所定パターンが形成される。そのリソグラフィ工程等は、そのプレート上のレイヤ数に応じて複数回実行される。
【0060】
その次のステップS402(カラーフィルタ形成工程)では、赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの組をマトリックス状に多数配列するか、又は赤R、緑G、青Bの3本のストライプ状の複数のフィルタの組を水平走査線方向に配列することによってカラーフィルタを形成する。その次のステップS403(セル組立工程)では、例えばステップS401にて得られた所定パターンを有するプレートとステップS402にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0061】
その後のステップS404(モジュール組立工程)では、そのようにして組み立てられた多数の液晶パネル(液晶セル)に表示動作を行わせるための電気回路、及びバックライト等の部品を取り付けて、液晶表示パネルとして完成させる。
上述の液晶表示パネル(液晶表示素子)の製造方法によれば、上記の実施形態の露光装置又は露光方法を用いてマスクMのパターンを基板(プレートPT)に転写する工程(ステップS401の一部)と、この工程によりそのパターンが転写されたそのプレートPTをそのパターンに基づいて加工(現像、エッチング等)する工程(ステップS401の他の部分)とを含んでいる。
【0062】
この製造方法によれば、露光装置EXの投影システムPSの結像特性を高精度な状態に維持できるため、液晶表示パネルを効率的にかつ高精度に製造できる。
なお、上記の実施形態のレンズを調整する調整装置8A〜8Dは、一つの結像光学系のみからなる投影光学系にも適用できる。この場合には、照明系ISは、全体として一つの照明領域を照明する一つの光学系から構成できる。
【0063】
また、露光装置EXは走査露光を行っているが、ステッパー型の露光装置にも調整装置8A〜8D等を有する投影光学系を使用できる。
なお、上述の実施形態では、光源として超高圧水銀ランプを用いているが、これに限定されることなく、他の適当な光源を用いることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0064】
EX…露光装置、M…マスク、PS…投影システム、PLA〜PLG…部分投影光学系、G1P…第1反射屈折系、G2P…第2反射屈折系、PT…プレート、8A〜8D…調整装置、26…光学系フレーム、36A,36B…レンズ、40A,40B…レンズ、50…上部鏡筒、52…下部鏡筒、54A,54B…レンズ支持部材、56A,56B,57A,57B…駆動機構、60A,60B…レンズ支持部材、62A,62B,63A,63B…駆動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材の位置を調整する装置において、
前記光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、
前記第1環状部とは異なる第2環状部と、
前記第2環状部とは異なる第3環状部と、
第1の方向に関する2つの位置で、前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、
前記第1の方向と交差した第2の方向に関する2つの位置で、前記第2環状部と前記第3環状部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、
前記第3環状部に対して前記第1環状部を前記第1の方向の回りに回転させる第1駆動部と、
前記第3環状部に対して前記第2環状部を前記第2の方向の回りに回転させる第2駆動部と、
を備えることを特徴とする光学部材位置調整装置。
【請求項2】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項3】
前記第3環状部は、鏡筒内に固定され、
前記第1駆動部は、前記第1環状部に固定される一端部と前記鏡筒に設けられた開口を介して前記鏡筒の外側に配置される他端部とを有する第1レバー部と、前記鏡筒に固定されて前記第1レバー部の前記他端部を変位させる変位部と、を有し、
前記第2駆動部は、前記第2環状部又は前記第1環状部に固定される一端部と前記鏡筒に設けられた開口を介して前記鏡筒の外側に配置される他端部とを有する第2レバー部と、前記鏡筒に固定されて前記第2レバー部の前記他端部を変位させる変位部と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項4】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、前記光学部材の光軸に沿って配列されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項5】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、円筒状の部材の外側面と内側面とを連通するスリットによって区画され、
前記第1の弾性ヒンジ部は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であり、前記第2の弾性ヒンジ部は、前記第2環状部と前記第3環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項6】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、前記光学部材の光軸を中心として同心円状に配列されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項7】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、円筒状の部材の一端面と他端面とを連通する複数のスリットによって区画され、
前記第1の弾性ヒンジ部は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であり、前記第2の弾性ヒンジ部は、前記第2環状部と前記第3環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であることを特徴とする請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項8】
前記第1環状部の一端面及び他端面の少なくとも一方に設けられ、前記第1環状部を支持する第1フレクシャ部と、
前期第2環状部の一端面及び他端面の少なくとも一方に設けられ、前記第2環状部を支持する第2フレクシャ部とを備えることを特徴とする請求項7に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項9】
光学部材の位置を調整する装置において、
前記光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、
前記第1環状部とは異なるとともに環状にかつ傾斜可能に配置された第1及び第2の傾斜可能部と、
前記第1環状部とは異なるとともに前記傾斜可能部に連結された第2環状部と、
第1の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第1の傾斜可能部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、
前記第1の方向と交差した第2の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第2の傾斜可能部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、
前記第2環状部に対して前記第1の傾斜可能部を前記第1の方向に対して傾くように傾斜させる第1駆動部と、
前記第2環状部に対して前記第2の傾斜可能部を前記第2の方向に対して傾くように傾斜させる第2駆動部と、
を備えることを特徴とする光学部材位置調整装置。
【請求項10】
前記第2環状部に連結された第3の傾斜可能部と、
前記第1及び第2の方向と交差した第3の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第3の傾斜可能部とを連結する第3の弾性ヒンジ部と、
前記第2環状部に対して前記第3の傾斜可能部を前記第3の方向に対して傾くように傾斜させる第3駆動部と、を備えることを特徴とする請求項9に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項11】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
光軸に沿って配列された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の光学部材を支持するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置と、
前記光学部材位置調整装置の前記第3環状部又は前記第2環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項12】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
光軸に沿って配列された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の第1の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第1の光学部材位置調整装置と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の第2の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第2の光学部材位置調整装置と、
前記第1及び第2の光学部材位置調整装置の前記第3環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項13】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
前記第1面と前記第2面との間に順に、かつ前記第2面に沿って配列されて、それぞれ中間像を形成する第1及び第2の反射屈折光学系と、
前記第1の反射屈折光学系内の第1の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第1の光学部材位置調整装置と、
前記第1の反射屈折光学系内の第2の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第2の光学部材位置調整装置と、
前記第2の反射屈折光学系内の第3の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第3の光学部材位置調整装置と、
前記第2の反射屈折光学系内の第4の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第4の光学部材位置調整装置と、
前記第1から第4の光学部材位置調整装置の前記第3環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項14】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の投影光学系よりなる複数の部分投影光学系を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項15】
投影光学系の調整方法であって、
前記投影光学系は、請求項12に記載の投影光学系であり、
前記第1の光学部材位置調整装置を用いて前記第1の光学部材を調整して前記投影光学系の結像特性の粗調整を行い、
前記第2の光学部材位置調整装置を用いて前記第2の光学部材を調整して前記結像特性の微調整を行うことを特徴とする投影光学系の調整方法。
【請求項16】
投影光学系の調整方法であって、
前記投影光学系は、請求項13に記載の投影光学系であり、
前記投影光学系単体の調整時に前記第3及び第4の光学部材位置調整装置を用いて前記第2の反射屈折光学系の調整を行い、
前記投影光学系を露光装置に組み込んだ状態で、前記第1及び第2の光学部材調整装置を用いて前記第1の反射屈折光学系の調整を行うことを特徴とする投影光学系の調整方法。
【請求項17】
露光光でマスクのパターンを介して基板を露光する露光装置において、
前記マスクを移動するマスクステージと、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の投影光学系と、
前記基板を移動する基板ステージと、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項18】
前記投影光学系に対して前記マスクステージ及び前記基板ステージを走査方向に同期移動することを特徴とする請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、
前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
光学部材の位置を調整する装置において、
前記光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、
前記第1環状部とは異なる第2環状部と、
前記第2環状部とは異なる第3環状部と、
第1の方向に関する2つの位置で、前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、
前記第1の方向と交差した第2の方向に関する2つの位置で、前記第2環状部と前記第3環状部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、
前記第3環状部に対して前記第1環状部を前記第1の方向の回りに回転させる第1駆動部と、
前記第3環状部に対して前記第2環状部を前記第2の方向の回りに回転させる第2駆動部と、
を備えることを特徴とする光学部材位置調整装置。
【請求項2】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項3】
前記第3環状部は、鏡筒内に固定され、
前記第1駆動部は、前記第1環状部に固定される一端部と前記鏡筒に設けられた開口を介して前記鏡筒の外側に配置される他端部とを有する第1レバー部と、前記鏡筒に固定されて前記第1レバー部の前記他端部を変位させる変位部と、を有し、
前記第2駆動部は、前記第2環状部又は前記第1環状部に固定される一端部と前記鏡筒に設けられた開口を介して前記鏡筒の外側に配置される他端部とを有する第2レバー部と、前記鏡筒に固定されて前記第2レバー部の前記他端部を変位させる変位部と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項4】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、前記光学部材の光軸に沿って配列されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項5】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、円筒状の部材の外側面と内側面とを連通するスリットによって区画され、
前記第1の弾性ヒンジ部は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であり、前記第2の弾性ヒンジ部は、前記第2環状部と前記第3環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項6】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、前記光学部材の光軸を中心として同心円状に配列されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項7】
前記第1環状部、前記第2環状部、及び前記第3環状部は、円筒状の部材の一端面と他端面とを連通する複数のスリットによって区画され、
前記第1の弾性ヒンジ部は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であり、前記第2の弾性ヒンジ部は、前記第2環状部と前記第3環状部との間に設けられた2つのスリットで挟まれた部分であることを特徴とする請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項8】
前記第1環状部の一端面及び他端面の少なくとも一方に設けられ、前記第1環状部を支持する第1フレクシャ部と、
前期第2環状部の一端面及び他端面の少なくとも一方に設けられ、前記第2環状部を支持する第2フレクシャ部とを備えることを特徴とする請求項7に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項9】
光学部材の位置を調整する装置において、
前記光学部材を支持する支持部を有する第1環状部と、
前記第1環状部とは異なるとともに環状にかつ傾斜可能に配置された第1及び第2の傾斜可能部と、
前記第1環状部とは異なるとともに前記傾斜可能部に連結された第2環状部と、
第1の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第1の傾斜可能部とを連結する第1の弾性ヒンジ部と、
前記第1の方向と交差した第2の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第2の傾斜可能部とを連結する第2の弾性ヒンジ部と、
前記第2環状部に対して前記第1の傾斜可能部を前記第1の方向に対して傾くように傾斜させる第1駆動部と、
前記第2環状部に対して前記第2の傾斜可能部を前記第2の方向に対して傾くように傾斜させる第2駆動部と、
を備えることを特徴とする光学部材位置調整装置。
【請求項10】
前記第2環状部に連結された第3の傾斜可能部と、
前記第1及び第2の方向と交差した第3の方向に関する位置で、前記第1環状部と前記第3の傾斜可能部とを連結する第3の弾性ヒンジ部と、
前記第2環状部に対して前記第3の傾斜可能部を前記第3の方向に対して傾くように傾斜させる第3駆動部と、を備えることを特徴とする請求項9に記載の光学部材位置調整装置。
【請求項11】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
光軸に沿って配列された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の光学部材を支持するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学部材位置調整装置と、
前記光学部材位置調整装置の前記第3環状部又は前記第2環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項12】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
光軸に沿って配列された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の第1の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第1の光学部材位置調整装置と、
前記複数の光学部材のうちの調整対象の第2の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第2の光学部材位置調整装置と、
前記第1及び第2の光学部材位置調整装置の前記第3環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項13】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
前記第1面と前記第2面との間に順に、かつ前記第2面に沿って配列されて、それぞれ中間像を形成する第1及び第2の反射屈折光学系と、
前記第1の反射屈折光学系内の第1の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第1の光学部材位置調整装置と、
前記第1の反射屈折光学系内の第2の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第2の光学部材位置調整装置と、
前記第2の反射屈折光学系内の第3の光学部材を支持するための請求項4又は請求項5に記載の第3の光学部材位置調整装置と、
前記第2の反射屈折光学系内の第4の光学部材を支持するための請求項6又は請求項7に記載の第4の光学部材位置調整装置と、
前記第1から第4の光学部材位置調整装置の前記第3環状部が固定される鏡筒と、
を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項14】
第1面のパターンの像を第2面に形成する投影光学系において、
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の投影光学系よりなる複数の部分投影光学系を備えることを特徴とする投影光学系。
【請求項15】
投影光学系の調整方法であって、
前記投影光学系は、請求項12に記載の投影光学系であり、
前記第1の光学部材位置調整装置を用いて前記第1の光学部材を調整して前記投影光学系の結像特性の粗調整を行い、
前記第2の光学部材位置調整装置を用いて前記第2の光学部材を調整して前記結像特性の微調整を行うことを特徴とする投影光学系の調整方法。
【請求項16】
投影光学系の調整方法であって、
前記投影光学系は、請求項13に記載の投影光学系であり、
前記投影光学系単体の調整時に前記第3及び第4の光学部材位置調整装置を用いて前記第2の反射屈折光学系の調整を行い、
前記投影光学系を露光装置に組み込んだ状態で、前記第1及び第2の光学部材調整装置を用いて前記第1の反射屈折光学系の調整を行うことを特徴とする投影光学系の調整方法。
【請求項17】
露光光でマスクのパターンを介して基板を露光する露光装置において、
前記マスクを移動するマスクステージと、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の投影光学系と、
前記基板を移動する基板ステージと、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項18】
前記投影光学系に対して前記マスクステージ及び前記基板ステージを走査方向に同期移動することを特徴とする請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、
前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−105865(P2013−105865A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248244(P2011−248244)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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