説明

光導波路の製造方法

【課題】ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないので、また、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないので、導波損失が非常に小さい光導波路を製造する方法を提供すること。
【解決手段】基板上に各々ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層が形成された光導波路を製造するにあたり、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用い、かつ、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いて、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングして光導波路コアを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの実用化に伴い、その基本構成としての光導波路に関する技術が注目を集めている。光導波路とは、代表的には、屈折率が高い光導波路コアを屈折率が低いクラッド層が取り囲んだ埋め込み型構造をなすか、あるいは、屈折率が低い下部クラッド層の上に屈折率が高い光導波路コアを形成し、上部クラッド層を空気層としたリッジ型構造をなし、光導波路コアに入射した光は該光導波路コアと該クラッド層との界面や該光導波路コアと該空気層との界面で反射しながら該光導波路コア中を伝播する。
【0003】
光導波路の構成材料としては、例えば、石英ガラスや半導体などの無機材料が知られている。他方、種々のポリマーで光導波路を製造する研究開発が行われている。有機材料であるポリマーは、無機材料とは対照的に、成膜工程において、塗布および加熱処理を常圧下で行うことができるので、装置および製造工程を簡素化できるという利点がある。
【0004】
光導波路を製造するためのポリマーとしては、光透明性が高いことから、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が一般的であるが、それ以外にも、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れ、半田付けにも耐えうることから、ポリイミド系樹脂が特に期待されている。ただし、通常のポリイミド系樹脂の場合、光通信に使用される近赤外領域(波長1.0〜1.7μm)では、ベンゼン環のC−H結合が近赤外光を吸収するので、光透明性を確保するには、水素原子の重水素化やフッ素化が必要である。
【0005】
ポリイミド系樹脂からなる光導波路を製造する方法として、例えば、特許文献1には、シリコン基板上にポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層を形成し、該下部クラッド層上にポリイミド系樹脂からなるコア層を形成し、パターニングしたマスク層を介して該コア層を反応性イオンエッチング法により該下部クラッド層が露出するまでエッチングして光導波路コアを形成し、該パターニングしたマスク層を除去し、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上にポリイミド系樹脂からなる上部クラッド層を形成する方法が開示されている。ところが、基板上にポリイミド系樹脂からなる光導波路を形成すると、基板とポリイミド系樹脂との線膨張係数の差により、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入り、隣接する回路に光が漏れるという問題点があった。
【0006】
また、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際には、例えば、特許文献2に記載されているように、通常、酸素(O)ガス、あるいは、酸素(O)ガスに不活性ガス(例えば、窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガス)を加えた混合ガスが用いられてきた。ところが、これらのガスを用いて、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングすると、光導波路コアの側面部が粗面化し、導波損失が増大するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−114746号公報
【特許文献2】特開2001−242430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、ポリイミド系樹脂は、焼成温度を高くすると、電荷移動吸収により着色し、特に短波長側の導波損失が増大するので、低温(300℃以下)での焼成が望まれる。ところが、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングするために、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、溶剤系レジストによるウェットプロセスを用いると、コア層にクラック(ソルベントクラック)が生じ、導波損失が増大するという問題点があった。
【0009】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないので、また、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないので、導波損失が非常に小さい光導波路を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討の結果、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いれば、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないこと、ならびに、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用いれば、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないことを見出して、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、基板上にポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上にポリイミド系樹脂からなるコア層を形成する工程と、該コア層上にマスク層を形成する工程と、該マスク層を光導波路形状にパターニングする工程と、該パターニングしたマスク層を介して該コア層を反応性イオンエッチング法により該下部クラッド層が露出するまでエッチングして光導波路コアを形成する工程と、該パターニングしたマスク層を除去する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上にポリイミド系樹脂からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含し、該コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、該パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用い、かつ、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いることを特徴とする光導波路の製造方法を提供する。
【0012】
本発明による光導波路の製造方法において、前記ハロゲン系ガスは、好ましくは、テトラフルオロメタン(CF)ガスである。また、前記ドライマスクは、好ましくは、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)または酸化インジウムスズ(ITO)からなる。さらに、前記基板は、好ましくは、無機基板であり、前記ポリイミド系樹脂は、好ましくは、フッ素化ポリイミドである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いるので、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しない。また、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用いるので、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じない。それゆえ、導波損失が非常に小さい光導波路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による光導波路の製造方法の代表例を説明するための模式的な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による光導波路の製造方法(以下「本発明の製造方法」ということがある。)は、基板上にポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上にポリイミド系樹脂からなるコア層を形成する工程と、該コア層上にマスク層を形成する工程と、該マスク層を光導波路形状にパターニングする工程と、該パターニングしたマスク層を介して該コア層を反応性イオンエッチング法により該下部クラッド層が露出するまでエッチングして光導波路コアを形成する工程と、該パターニングしたマスク層を除去する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上にポリイミド系樹脂からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含し、該コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、該パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用い、かつ、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法は、基板上に各々ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層が形成された光導波路を製造するにあたり、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用い、かつ、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いて、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングして光導波路コアを形成しようというものである。
【0017】
以下に、図1を参照しながら、本発明の製造方法の代表例について詳しく説明するが、本発明の製造方法は下記の代表例に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0018】
まず、基板1上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜した後、この被膜を焼成して、図1(a)に示すように、ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層2を形成する。なお、下部クラッド層2を形成する前に、基板1上に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を設けておいてもよい。下部クラッド層2の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。また、下部クラッド層2の屈折率は、光導波路コア3の屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。下部クラッド層2を構成するポリイミド系樹脂は、好ましくはフッ素化ポリイミド、より好ましくは全フッ素化ポリイミドである。なお、全フッ素化ポリイミドとは、炭素−水素結合(C−H結合)が全て炭素−フッ素結合(C−F結合)に置換されているポリイミドを意味する。
【0019】
次いで、下部クラッド層2上に、コア層用ポリアミド酸組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜した後、この被膜を焼成して、図1(b)に示すように、ポリイミド系樹脂からなるコア層5を形成する。コア層5の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。また、コア層5の屈折率は、下部クラッド層2および上部クラッド層4の屈折率より高い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、コア層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。コア層5を構成するポリイミド系樹脂は、好ましくはハロゲン化ポリイミド、より好ましくは全ハロゲン化ポリイミドである。なお、全ハロゲン化ポリイミドとは、炭素−水素結合(C−H結合)が全て炭素−ハロゲン結合(C−X結合)に置換されているポリイミドを意味する。ここで、ハロゲン(X)は、フッ素(F)、塩素(Cl)および臭素(Br)よりなる群から選択される1種またはそれ以上である。
【0020】
さらに、図1(c)に示すように、コア層5上に、スパッタリング法やCVD法などにより、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)または酸化インジウムスズ(ITO)からなるマスク層6を形成する。マスク層6の厚さは、コア層5の厚さやマスク層6を処理する際のエッチング選択比などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上であり、また、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【0021】
そして、マスク層6上にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光、現像、アフターベークを行い、光導波路形状にパターニングしたレジスト層(図示せず)を形成した後、レジスト層で保護されていないマスク層6を、ドライエッチング法やウェットエッチング法により、コア層5が露出するまでエッチングして、マスク層6を光導波路形状にパターニングする。次いで、剥離液やドライエッチング法などを用いて、パターニングしたレジスト層(図示せず)を除去し、図1(d)に示すように、光導波路形状にパターニングしたマスク層7を形成する。このとき、パターニングしたマスク層7として無機材料からなるドライマスクを用いるので、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層5であっても、コア層5上に形成されたマスク層6をパターニングする工程で、コア層5にクラック(ソルベントクラック)が生じない。
【0022】
さらに、パターニングしたマスク層7で保護されていないコア層5を、ハロゲン系ガスを用いた反応性イオンエッチング法により下部クラッド層2が露出するまでエッチングして、図1(e)に示すように、光導波路コア3を形成する。このとき、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いるので、光導波路コア3の下端部にクラックが入らず、光導波路コア3の側面部が粗面化しない。
【0023】
光導波路コア3は、長手方向に対して垂直な断面形状が矩形であることが好ましく、正方形であることが最も好ましい。すなわち、光導波路コア3のアスペクト比(幅/厚さ)は、好ましくは1/2以上、より好ましくは2/3以上、さらに好ましくは5/6以上であり、また、好ましくは2/1以下、より好ましくは3/2以下、さらに好ましくは6/5以下である。最も好ましくは1/1である。
【0024】
なお、図1(e)において、光導波路コア3は、1個しか形成されていないが、光導波路の用途などに応じて、2個またはそれ以上形成されていてもよい。また、光導波路コア3は、紙面に対して垂直方向に伸びる直線状に形成されているが、光導波路の用途などに応じて、所定のパターン状に形成されていてもよい。
【0025】
次いで、ドライエッチング法やウェットエッチング法により、パターニングしたマスク層7を除去した後、光導波路コア3を埋め込むように下部クラッド層2および光導波路コア3上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜した後、この被膜を焼成して、図1(f)に示すように、ポリイミド系樹脂からなる上部クラッド層4を形成する。上部クラッド層4の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、光導波路コア3の上側を除いて、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。また、上部クラッド層4の屈折率は、光導波路コア3の屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。上部クラッド層4を構成するポリイミド系樹脂は、好ましくはフッ素化ポリイミド、より好ましくは全フッ素化ポリイミドである。
【0026】
かくして、基板1上に各々ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層2、光導波路コア3および上部クラッド層4が形成された光導波路が得られる。なお、上記では、1個の光導波路を製造する方法について説明したが、基板1上に複数個の光導波路を同時に製造することもできる。この場合、上部クラッド層4を形成した段階で、例えば、ダイシングすることにより、個々のチップに切り出して、複数個の光導波路を得ればよい。
【0027】
本発明の製造方法によれば、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないので、また、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないので、導波損失が非常に小さい光導波路を製造することができる。
【0028】
以下に、本発明の製造方法に用いる材料および条件について詳しく説明するが、本発明の製造方法は下記の材料および条件に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0029】
基板としては、光導波路の用途などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、有機基板または無機基板のいずれであってもよいが、好ましくは、無機基板である。有機基板としては、クラッド層用ポリアミド酸組成物およびコア層用ポリアミド酸組成物の焼成温度に耐える材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミド(PI)基板、ポリエーテルケトン(PEK)基板、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)基板などが挙げられる。これらの有機基板のうち、クラッド層を構成するポリイミド系樹脂に対する接着性が良好であることから、ポリイミド(PI)基板が最も好ましい。無機基板としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン(Si)基板、ガリウムヒ素(GaAs)基板、インジウムリン(InP)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、炭化ケイ素(SiC)基板などの半導体基板;石英ガラス基板、サファイヤ基板、ホウケイ酸ガラス基板などのガラス基板;などが挙げられる。基板の厚さは、光導波路の用途などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0030】
クラッド層用ポリアミド酸組成物およびコア層用ポリアミド酸組成物は、有機溶媒中でジアミン化合物とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸を含有する。
【0031】
ジアミン化合物としては、例えば、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、4,5,6−トリクロロ−1,3−ジアミノ−2―フルオロベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラブロモ−1,3−ジアミノベンゼンなどが挙げられる。これらのジアミン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのジアミン化合物のうち、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが好適である。
【0032】
テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)スルフィド、ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェニル)スルフィド、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、3,6−ジフルオロピロメリト酸、3,6−ジクロロピロメリト酸、3−クロロ−6−フルオロピロメリト酸などのテトラカルボン酸;対応する酸二無水物;対応する酸塩化物;メチルエステル、エチルエステルなどの対応するエステル化物;などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのテトラカルボン酸類のうち、ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、ならびに、これらの対応する酸二無水物および酸塩化物が好適である。
【0033】
ジアミン化合物の添加量は、テトラカルボン酸類と効率よく反応できる量であればよく、特に限定されるものではない。ジアミン化合物の添加量は、化学量論的には、テトラカルボン酸類と等モルであるが、テトラカルボン酸類の全モル数を1モルとした場合に、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは0.9モル以上であり、また、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.1モル以下である。この際、ジアミン化合物の添加量が少なすぎると、テトラカルボン酸類が多量に残存してしまい、精製工程が複雑になることや、重合度が大きくならないことがある。逆に、ジアミン化合物の添加量が多すぎると、ジアミン化合物が多量に残存してしまい、精製工程が複雑になることや、重合度が大きくならないことがある。
【0034】
ジアミン化合物とテトラカルボン酸類との反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸類との反応が効率よく進行でき、かつ、これらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。使用可能な有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの極性有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、有機溶媒の量は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸類との反応が効率よく進行できる量であれば、特に限定されるものではないが、有機溶媒中のジアミン化合物の濃度が好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下となるような量である。
【0035】
ジアミン化合物とテトラカルボン酸類との反応条件は、この反応が充分進行できる条件であれば、特に限定されるものではない。例えば、反応温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下である。反応時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、また、好ましくは144時間以下、より好ましくは120時間以下である。また、反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれで行ってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。反応は、反応効率および重合度などを考慮すると、好ましくは乾燥した不活性ガス雰囲気下で行われる。反応雰囲気の相対湿度は、好ましくは10%RH以下、より好ましくは1%RH以下である。不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガスなどが用いられる。
【0036】
クラッド層用ポリアミド酸組成物は、常温で液状であるので、基板上に適量塗布した後、あるいは、光導波路コアを埋め込むように下部クラッド層および光導波路コア上に適量塗布した後、焼成を行うことにより、組成物中のポリアミド酸が閉環して、ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層または上部クラッド層が形成される。
【0037】
また、コア層用ポリアミド酸組成物は、常温で液状であるので、下部クラッド層上に適量塗布した後、焼成を行うことにより、組成物中のポリアミド酸が閉環して、ポリイミド系樹脂からなるコア層が形成される。
【0038】
なお、作業効率の観点から、クラッド層用ポリアミド酸組成物およびコア層用ポリアミド酸組成物の粘度は、好ましくは0.0001Pa・s以上、より好ましくは0.001Pa・s以上であり、また、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下である。
【0039】
焼成を行う方法や条件は、組成物中のポリアミド酸が効率よく閉環して、ポリイミド系樹脂からなる所望のクラッド層またはコア層が形成できる方法や条件を採用すればよく、特に限定されるものではない。焼成は、通常、空気中、好ましくは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガス雰囲気中、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上であり、また、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である温度で、好ましくは2時間以上、5時間以下行われる。焼成は、連続的に行っても、あるいは、段階的に行ってもよい。このとき、焼成を300℃以下の温度で行えば、得られたポリイミド系樹脂からなるクラッド層および/またはコア層の電荷移動吸収による着色が少なく、短波長側の導波損失を低減することができる。
【0040】
コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際には、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用いる。ドライマスクを構成する無機材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)などが挙げられる。これらの無機材料のうち、酸化亜鉛(ZnO)が特に好適である。
【0041】
コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際には、ハロゲン系ガスを用いる。ここで、「ハロゲン系ガス」とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)などのハロゲン元素の単体や化合物を含むガスを意味する。ハロゲン元素の単体や化合物としては、例えば、塩素(Cl)、テトラフルオロメタン(CF)、トリフルオロメタン(CHF)、テトラフルオロエチレン(C)、ヘキサフルオロプロピレン(C)、オクタフルオロブチレン(C)、四塩化炭素(CCl)、塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)、六フッ化硫黄(SF)などが挙げられる。これらのハロゲン元素の単体や化合物のうち、テトラフルオロメタン(CF)が特に好適である。なお、「ハロゲン系ガス」は、ハロゲン元素の単体や化合物のみからなるガスに限定されるものではなく、ハロゲン元素の単体や化合物に加えて、窒素(N)ガスや希ガス(例えば、アルゴン(Ar)ガス)などの他のガスを混合したガスを包含する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0043】
まず、光導波路を作製する際に用いたクラッド層用ポリアミド酸組成物およびコア層用ポリアミド酸組成物の調製について説明する。
【0044】
≪クラッド層用ポリアミド酸組成物の調製≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノ−ベンゼン1.80g(10.0ミリモル)、下記式(1):
【0045】
【化1】

【0046】
で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)(すなわち、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼンの酸二無水物)5.82g(10.0ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド12.4gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、固形分濃度38.0質量%のクラッド層用ポリアミド酸組成物を得た。
【0047】
≪コア層用ポリアミド酸組成物の調製≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン1.97g(10ミリモル)、上記式(1)で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)(すなわち、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼンの酸二無水物)5.82g(10ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド15.8gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、固形分濃度33.0質量%のコア層用ポリアミド酸組成物を得た。
【0048】
次に、光導波路を実際に作製した実施例および比較例について説明する。
【0049】
≪光導波路の作製≫
<実施例1>
まず、直径4インチ(約100cm)、厚さ0.525mmのウエハ状シリコン(Si)基板上に、クラッド用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が8μmとなるようにスピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、全フッ素化ポリイミドからなる下部クラッド層を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、下部クラッド層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5355であった。
【0050】
次いで、下部クラッド層上に、コア層用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が5μmとなるようにスピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、部分フッ素化ポリイミドからなるコア層を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、コア層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5418であった。
【0051】
さらに、コア層上に、スパッタリング法により、酸化亜鉛(ZnO)からなる厚さ250nmのマスク層を形成した。そして、マスク層上に、フォトレジスト(AZ Electronic Materials製、商品名「AZ3100」)を塗布し、プリベーク、露光、現像、アフターベークを行い、光導波路形状にパターニングしたレジスト層を形成した後、レジスト層で保護されていないマスク層を、バッファードフッ酸(LL−BHF)を用いたウェットエッチング法により、コア層が露出するまでエッチングして、マスク層を光導波路形状にパターニングした。次いで、パターニングしたレジスト層を除去し、光導波路形状にパターニングした幅5μmのマスク層を形成した。
【0052】
さらに、パターニングしたマスク層で保護されていないコア層を、テトラフルオロメタン(CF)ガスを用いた反応性イオンエッチング法により下部クラッド層が露出するまでエッチングして、光導波路コアを形成した。このとき、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しなかった。
【0053】
次いで、塩酸(HCl)を用いたウェットエッチング法により、パターニングしたマスク層を除去した後、光導波路コアを埋め込むように下部クラッド層および光導波路コア上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が8μmとなるように、スピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、全フッ素化ポリイミドからなる上部クラッド層を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、上部クラッド層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5355であった。
【0054】
かくして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路が得られた。
【0055】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.3dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.15dB/cmであり、いずれも非常に小さい値であった。
【0056】
<実施例2>
実施例1において、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として、スパッタリング法で形成した厚さ250nmの酸化亜鉛(ZnO)からなるマスク層に代えて、CVD法により形成した厚さ200nmの酸化シリコン(SiO)からなるマスク層を用いたこと、ならびに、レジスト層で保護されていないマスク層をエッチングする際に、および、パターニングしたマスク層を除去する際に、テトラフルオロメタン(CF)ガスを用いた反応性イオンエッチング法を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路を得た。なお、この実施例では、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しなかった。
【0057】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.4dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.2dB/cmであり、いずれも非常に小さい値であった。
【0058】
<実施例3>
実施例1において、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として、スパッタリング法により形成した厚さ250nmの酸化亜鉛(ZnO)からなるマスク層に代えて、スパッタリング法により形成した厚さ200nmの酸化インジウムスズ(ITO)からなるマスク層を用いたこと、レジスト層で保護されていないマスク層をエッチングする際に、臭化水素(HBr)ガスを用いた反応性イオンエッチング法を用いたこと、ならびに、パターニングしたマスク層を除去する際に、塩酸(HCl)を用いたウェットエッチング法を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路を得た。なお、この実施例では、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しなかった。
【0059】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.4dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.2dB/cmであり、いずれも非常に小さい値であった。
【0060】
<実施例4>
実施例1において、部分フッ素化ポリイミドからなるからなるコア層を形成する際に、焼成温度を300℃から250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路を得た。なお、この実施例では、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じなかった。また、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しなかった。
【0061】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.3dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.1dB/cmであり、いずれも非常に小さい値であった。
【0062】
<比較例1>
実施例1において、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとして、テトラフルオロメタン(CF)ガスに代えて、酸素(O)ガスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路を得た。なお、この比較例では、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入り、光導波路コアの側面部が粗面化した。
【0063】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.5dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.3dB/cmであり、いずれも大きい値であった。
【0064】
<比較例2>
実施例1において、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として、酸化亜鉛(ZnO)からなるマスク層に代えて、溶剤系レジスト(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、商品名「FHD−3CL」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコン(Si)基板上に、全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミドからなる5μm角の光導波路コアおよび全フッ素化ポリイミドからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が形成された光導波路を得た。なお、この比較例では、コア層上に溶剤系レジストを塗布した段階で、コア層にクラック(ソルベントクラック)が生じた。
【0065】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は1.3dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.7dB/cmであり、いずれも非常に大きい値であった。
【0066】
≪評価≫
以上のように、実施例1〜4の光導波路は、部分フッ素化ポリイミドからなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとしてハロゲン系ガスであるテトラフルオロメタン(CF)ガスを用いたので、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しなかった。特に、実施例4の光導波路は、コア層が250℃という低温で焼成した部分フッ素化ポリイミドから構成されているにもかかわらず、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として無機材料である酸化亜鉛(ZnO)からなるドライマスクを用いたので、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じなかった。それゆえ、実施例1〜4の光導波路は、導波損失が非常に小さい光導波路であった。また、実施例4の光導波路は、コア層が250℃という低温で焼成した部分フッ素化ポリイミドから構成されているので、コア層が300℃という高温で焼成した部分フッ素化ポリイミドから構成されている実施例1および2の光導波路に比べて、短波長側(波長0.98μm)の導波損失が小さかった。
【0067】
これに対し、比較例1の光導波路は、部分フッ素化ポリイミドからなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとして酸素(O)ガスを用いたので、光導波路コアの下端部にクラックが入り、光導波路コアの側面部が粗面化した。また、比較例2の光導波路は、低温で焼成した部分フッ素化ポリイミドからなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として溶剤系レジストを用いたので、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じた。それゆえ、比較例1および2の光導波路は、導波損失が大きい光導波路であった。
【0068】
かくして、基板上に各々ポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層が形成された光導波路を製造するにあたり、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いれば、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないので、また、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用いれば、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないので、導波損失が非常に小さい光導波路が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂からなるコア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、光導波路コアの下端部にクラックが入らず、光導波路コアの側面部が粗面化しないので、また、低温で焼成されたポリイミド系樹脂からなるコア層であっても、コア層上に形成されたマスク層をパターニングする工程で、コア層にクラックが生じないので、導波損失が非常に小さい光導波路を製造することができる。それゆえ、本発明は、導波損失が非常に小さい光導波路の適用が期待される様々な光学関連分野や電子機器分野で多大の貢献をなすものである。
【符号の説明】
【0070】
1:基板、2:下部クラッド層、3:光導波路コア、4:上部クラッド層、5:コア層、6:マスク層、7:パターニングしたマスク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にポリイミド系樹脂からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上にポリイミド系樹脂からなるコア層を形成する工程と、該コア層上にマスク層を形成する工程と、該マスク層を光導波路形状にパターニングする工程と、該パターニングしたマスク層を介して該コア層を反応性イオンエッチング法により該下部クラッド層が露出するまでエッチングして光導波路コアを形成する工程と、該パターニングしたマスク層を除去する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上にポリイミド系樹脂からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含し、該コア層を反応性イオンエッチング法によりエッチングする際に、該パターニングしたマスク層として無機材料からなるドライマスクを用い、かつ、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いることを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン系ガスがテトラフルオロメタン(CF)ガスである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ドライマスクが酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)または酸化インジウムスズ(ITO)からなる請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記基板が無機基板である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイミド系樹脂がフッ素化ポリイミドである請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−160347(P2010−160347A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2753(P2009−2753)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】