説明

光導波路を介したスキャン溶接やスキャンマーキングの方法及びそのための光導波路

溶接もしくはマーキングに充分なエネルギー密度の光学的ビームを当てることにより、或る部分に溶接もしくはマーキングを施す光学的スキャン装置。前記部分に充分なエネルギー密度のビームを当ててパターンを制御する方法は、前記部分と光学的スキャン装置の光源の間に光導波路を配置し、これにより、溶接あるいはマーキングを施さない部分の領域が、溶接あるいはマーキングに充分なエネルギー密度のビームを当てられないようにし、溶接あるいはマーキングを施す部分の領域は充分なエネルギー密度のビームが当てられるようにする。一局面では、光導波路はビームが望まれていない方向には反射しないように使用される。一局面では、光導波路は充分なエネルギー密度のビームの方向を、充分なエネルギー密度のビームに当てられるべきでない部分の領域から充分なエネルギー密度のビームを当てられるべき領域へと変化させ、これにより、ビームのエネルギーをビームを当てられるべき領域に集中させる。一局面では、散逸型の光導波路が溶接もしくはマーキングを施されるべきでない部分の領域におけるビームのエネルギーを散逸させ、これにより、その領域は前記充分なエネルギー密度のビームを当てられないことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的スキャン溶接もしくはスキャンマーキングに関し、特に光導波路を用いた光学的スキャン溶接やスキャンマーキングに関する。
【背景技術】
【0002】
光学的スキャン溶接もしくはスキャンマーキングは、しばしば光スキャン溶接や光スキャンマーキングと称され、溶接もしくはマーキングをすべき材料に光学的ビーム(可視周波数等)の走査を行うものである。光学的ビームは光学的装置にてつくられ、例示上は赤外線スペクトル内にある。尚、光学的ビームは可視光あるいは紫外線スペクトル内にあってもよい。レーザーがスキャン溶接もしくはスキャンマーキングに頻繁に使用される。非干渉光の光源も使用される。光学的ビームは赤外線ビーム、可視光ビーム、紫外線ビームであってもよい。
【0003】
光学的スキャン溶接においては、二つの部分から成ってそれらが溶接される材料等が光学的ビームで加熱され、一緒に流れて二つの部分は接合され、素材は固化する。光学的スキャンマーキングでは、マークを施される部分の一部が光学的ビームで加熱され、その一部から材料が取り除かれてその一部がマーキングされる。ビームは狭幅(狭幅ビームスキャン)であっても広幅(広幅ビームスキャン)であってもよい。ビームは、部分もしくはパターン調整用のマスクの上に直接パターン(そこで溶接やマーキングが発生する)を描くことができる。後者では、溶接もしくはマーキングを施される材料の上にマスクが配置されて、溶接あるいはマーキングを施される材料の一部だけに光学的ビームが当てられる。マスクはマスクの性質により光学的ビームのエネルギーを吸収もしくは反射し、溶接あるいはマーキングを施されない材料の部分には光学的ビームを当てない。反射式マスクによりもたらされる問題の一つは、光学的スキャン装置の光学的システムに戻るといったような、望まれていない方向に光学的ビームを反射することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学的スキャン装置は、充分なエネルギー密度の光学的ビームを溶接もしくはマーキングを施す部分に当てることによりその部分に溶接もしくはマーキングを施す。当該部分に充分なエネルギー密度のビームを当ててパターンを制御する方法は、当該部分と光学的スキャン装置の光源の間に光導波路を配置することであり、これにより、溶接あるいはマーキングを施されるべきでない部分の領域が上記の充分なエネルギー密度のビームを当てられないようにし、溶接あるいはマーキングを施す部分の領域は上記充分なエネルギー密度のビームが当てられるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一局面では、光導波路は上記ビームが望まれていない方向には反射しないように使用される。
【0006】
一局面では、光導波路は上記充分なエネルギー密度のビームの方向を、上記充分なエネルギー密度のビームを当てられるべきでない部分の領域から上記充分なエネルギー密度のビームを当てられるべき領域へと変化させ、これにより、ビームのエネルギーをビームを当てられるべき領域に集中させる。
【0007】
一局面では、光導波路は溶接もしくはマーキングを施されるべきでない部分の領域におけるビームのエネルギーを散逸させる散逸型の光導波路であり、これにより、当該領域内にあるビームのエネルギー密度は上記充分なエネルギー密度より小さくなる。
【0008】
一局面では、光導波路はポジティブ型もしくはネガティブ型の光導波路である。
【0009】
本発明のさらなる応用範囲は以下に記す詳細な説明によって明らかになる。詳細な説明や具体例は本発明の好ましい実施例を示しているが、それらは説明のためだけのものであって、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0010】
本発明は詳細な説明と添付の図面によりさらに充分に理解されることとなる。
【0011】
図1は、本発明の一局面に従ってネガティブ型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【0012】
図2は、本発明の一局面に従ってポジティブ型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【0013】
図3は、本発明の一局面に従ってビームを光導波路の外部へ向ける光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【0014】
図4は、本発明の一局面に従って散逸型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に記す好ましい実施例の記載は、本質的に、単に例示であって、決して本発明やその応用や用途を限定するものではない。
【0016】
図1を参照すると、部分100は、広幅や狭幅ビームの光学的スキャン装置102を用いて本発明に従い溶接あるいはマーキングを施される。この場合、光学的スキャン装置102は充分なエネルギー密度の光学的ビーム106を前記部分上に当て、部分100の材料が溶接の場合はパターンの中で流れて一体になり、マーキングの場合は取り除かれるかするレベルまで、部分100上のパターンを加熱する。光学的スキャン溶接の場合、部分100は溶接される二つの部分100を含むことができる。光学的スキャン装置102はビーム106(可視周波数等)を発生する光源104(レーザーや非干渉光の光源)を有する。光導波路108は部分100と光学的スキャン装置102との間に並置され、例示では部分100の上にあり、溶接あるいはマーキングを施されるべき部分100におけるパターンを統御する。
【0017】
ビーム106は、例示では矢印107で示される方向に、部分100の上でスキャンされる。光導波路108は所望のパターンに溶接あるいはマーキングが部分100の上で施されるよう形成された出力面109を備えている。光導波路108はビーム106を、溶接あるいはマーキングを施すべきでない部分100上の領域112からは離し、溶接あるいはマーキングを施すべき部分100上の領域114には当たるように方向づける。従って領域114においては、領域114内にある部分100に溶接あるいはマーキングを施すに充分なエネルギー密度のビーム106が当てられ、領域112はそのような充分なエネルギー密度のビームを当てられない。図1の実施例では、光導波路108はネガティブ型光導波路であり、即ち、上記充分なエネルギー密度のビーム106を反射させてビーム106を当てるべきでない部分100上の領域112から離し、上記充分なエネルギー密度のビーム106を当てるべき部分100上の領域114には到達させる。この場合、光導波路108は窪み反射型の光導波路として例示され得る。
【0018】
図2を参照すると、ネガティブ型光導波路に代わってポジティブ型光導波路208が利用されている。ネガティブ型光導波路と同様に、ポジティブ型光導波路208はビーム106を領域112からは離し、領域114には到達させる。それは領域114の上にビーム106の焦点を合わせることにて行われる(ネガティブ型光導波路のケースにおいて反射するビーム106とは対照的に)。この場合、ポジティブ型光導波路208は伝達誘電体として例示され得る。
【0019】
図1及び2の実施例においては、ビーム106は部分100の領域112から離されたとき、部分100の領域114へと方向を変えられる。これにより、部分100の領域114上でのエネルギーの集中を増大させる。それはまた、光学的スキャン装置102の光学的システムに戻るといったような、望まれていない方向に光学的ビーム106が反射することを回避する。
【0020】
上述の代わりに、ビーム106は部分100の領域112から向きを変えられたとき、領域112から単に向きを変えられただけで領域114には向けられないことも可能である。図3を参照すると、光導波路308はビーム106の向きを部分100の領域112から変えるように形成されており、それにより、向きを変えられたビーム106の部分116は光導波路308から出ていくが、光導波路308はビーム106を領域114へ向かわせていない。この場合、光導波路308はひとつもしくは複数のファイバー・オプティック・エレメント118(図3にてファントム線で表示)を備えて光導波路308からのビーム106の一部分116の方向を変えてもよい。これにより、ビーム106のうちで方向を変えられたその部分を、光学的スキャン装置102の光学的システムからは離れた所望の方向に向かわせることが可能となる。
【0021】
もう一つの変更例では、光導波路は散逸型光導波路であり、溶接もしくはマーキングを施すべきでない部分100の領域112におけるビーム106のエネルギーを溶接あるいはマーキングの閾値より低いエネルギー密度まで適宜散逸もしくは発散させる。図4を参照すると、光導波路408は溶接されるべきでない部分100の領域112におけるビーム106のエネルギーを散逸あるいは発散させる、散逸あるいは発散形状400を有しており、それにより、部分100の領域112におけるビーム106の一部分402のエネルギーは溶接もしくはマーキングをするエネルギー密度の閾値より適宜低くなっている。散逸あるいは発散形状400は、例えであり且つそれは限定するものでなく、小平面型やレンズ型や表面艶消し型であってもよい。それらの相違がまた光学的スキャン装置102の光学的システムに戻るといったような、望まれていない方向に光学的ビーム106が反射することを回避する。
【0022】
上述した光導波路が使用される光学的スキャン溶接は透過赤外線(TTIR)溶接を包含する。TTIR溶接では、(赤外線レーザービームに対する)伝達性材料から成る部分が(赤外線レーザービームに対する)吸収性材料から成る部分に溶接される。それら二つの部分は共に、赤外線レーザービームの光源に最も接近した位置にあって伝達性材料から成る部分と一緒に配置される。赤外線レーザービームがそれらの部分に当てられると、赤外線レーザーは伝達性材料から成る部分を通って吸収性材料から成る部分へ到達し、吸収性材料から成る部分を加熱する。吸収性材料から成る部分は加熱され、流れて、伝達性物質から成る部分の材料と結合する。
【0023】
各部分を溶接あるいはマーキングする光学的スキャン装置における光導波路の使用は、図1から4を参照して記載されているように、直接ビーム書きで得られるものよりも良質の画像品質を提供する。光導波路はまたビームからのエネルギーをマスクよりも効率良く使用する。
【0024】
本発明の記述は本質的に単に代表的なものであり、従って、本発明の骨子から離れていない変更等は本発明の特許請求の範囲内のものと解釈される。係る変更等は本発明の精神や範囲から離脱しているものとは認められない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一局面に従ってネガティブ型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【図2】本発明の一局面に従ってポジティブ型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【図3】本発明の一局面に従ってビームを光導波路の外部へ向ける光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【図4】本発明の一局面に従って散逸型の光導波路を用いた光学的スキャン装置の模式図である。
【符号の説明】
【0026】
102・・・光学的スキャン装置
104・・・光源
106・・・光学的ビーム
108・・・光導波路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接もしくはマーキングに充分なエネルギー密度の光学的ビームを或る部分に当てる光学的スキャン装置でもって前記部分に溶接もしくはマーキングを施す方法であって、前記部分と前記光学的スキャン装置の光源との間に光導波路を配して前記部分における前記ビームのパターンを制御して、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべきでない部分の領域が前記充分なエネルギー密度のビームを当てられることから防ぎ、且つ、前記ビームが望まれていない方向に反射することを防ぐ方法。
【請求項2】
前記光導波路で前記ビームの方向を、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべきでない前記部分の前記領域から離し、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべき前記領域へ向かわせ、これにより、エネルギーを前記部分のビームを当てるべき領域上に集中させる請求項1の方法。
【請求項3】
前記光導波路はネガティブ型光導波路である請求項2の方法。
【請求項4】
前記光導波路はポジティブ型光導波路である請求項2の方法。
【請求項5】
前記光導波路で前記ビームの方向を、前記充分なエネルギー密度の前記ビームを当てるべきでない前記部分の前記領域から離し、前記光導波路の外部へと向かわせる請求項1の方法。
【請求項6】
前記光導波路は散逸型光導波路であり、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべきでない前記部分の前記領域における前記ビームのエネルギーを前記光導波路でもって散逸させ、これにより、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべきでない領域にある前記ビームのエネルギーを前記充分なエネルギー密度より小さくさせる請求項1の方法。
【請求項7】
前記光学的スキャン装置はレーザースキャン装置であり、前記光学的ビームはレーザービームである請求項1の方法。
【請求項8】
前記部分は溶接される二つの部分から成り、前記方法は前記二つの部分を溶接する透過赤外線溶接方法から成る請求項1の方法。
【請求項9】
前記光学的ビームは非干渉性ビームである請求項1の方法。
【請求項10】
溶接もしくはマーキングに充分なエネルギー密度のレーザービームを或る部分に当てるレーザースキャン装置でもって前記部分に溶接もしくはマーキングを施す方法であって、前記部分と前記レーザースキャン装置の光源との間に光導波路を配して前記部分における前記ビームのパターンを制御して、前記充分なエネルギー密度のレーザービームを反射させてレーザービームを当てるべきでない部分上の領域から離し、前記充分なエネルギー密度のビームを当てるべき部分上の領域に到達させる方法。
【請求項11】
前記ビームが望まれていない方向に反射しないように前記ビームを前記光導波路で方向づける請求項10の方法。
【請求項12】
前記光導波路はネガティブ型光導波路である請求項11の方法。
【請求項13】
前記光導波路はポジティブ型光導波路である請求項11の方法。
【請求項14】
前記光導波路で前記ビームの方向を、前記充分なエネルギー密度の前記ビームを当てるべきでない前記部分の前記領域から離し、前記光導波路の外部へと向かわせる請求項10の方法。
【請求項15】
前記部分は溶接される二つの部分から成り、前記方法は前記二つの部分を溶接する透過赤外線溶接方法から成る請求項9の方法。
【請求項16】
溶接もしくはマーキングに充分なエネルギー密度のレーザービームを或る部分に当てるレーザースキャン装置でもって前記部分に溶接もしくはマーキングを施す方法であって、前記部分と前記レーザースキャン装置のレーザー光源との間に散逸型光導波路を配して前記部分における前記ビームのパターンを制御して、前記充分なエネルギー密度のレーザービームを当てるべきでない部分上の領域における前記ビームのエネルギーを前記光導波路でもって散逸させる方法。
【請求項17】
前記ビームが望まれていない方向に反射することを前記光導波路で防ぐ請求項16の方法。
【請求項18】
前記部分は溶接される二つの部分から成り、前記方法は前記二つの部分を溶接する透過赤外線溶接方法から成る請求項16の方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−500174(P2009−500174A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519508(P2008−519508)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025124
【国際公開番号】WO2007/005447
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501410126)ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】