説明

光導波路デバイス及びその製造方法

【課題】 光路変換部の形成位置等の設計自由度が高く、且つ漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本光導波路デバイスの製造方法は、基部3と、基部3上に配置された下部クラッド部21と、下部クラッド部21上に積層され且つ光を伝搬するコア部1と、コア部1上に配置された上部クラッド部22と、基部3上に形成されており且つコア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部41、42と、を備える光導波路デバイス100を製造する方法であり、上記基部3と、基部3上に形成された上記下部クラッド部21及び上記光路変換部41、42と、を備える積層体上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、上記コア部1を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部22を形成する上部クラッド部形成工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路デバイス及びその製造方法に関する。更に詳しくは、光路変換部の形成位置等の設計自由度が高く、且つ漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理分野及び情報通信分野等において、扱われるデータ量等が増加しており、今後益々大きくなることが予測され、これに伴う通信速度の高速化が求められている。このため、電気信号に比べて処理速度が大きい光信号を用いた処理への移行が望まれている。特に近年は、光通信ケーブルに代表される伝達距離の長い信号伝達経路及びこれに付随する専用デバイスだけでなく、汎用電子機器内の基板及び電子部品等の接続等の短い信号伝達経路に関しても、電気伝送媒体から光伝送媒体への移行が検討されている。この新たな情報処理及び情報通信においては、加工性、可とう性等の材料特性及びコスト的な面等に優れるため有機系材料から形成される光導波路デバイスが注目されている。
【0003】
通常、光導波路では、光の伝搬するコア部と、このコア部に光を閉じこめるクラッド部と、光路変換部を備える。このうち、光路変換部は伝搬する光の光路を変換する部分であり、その精度により光伝搬の損失及び精度等が大きく左右される重要な部分である。この光路変換部の形成方法としては、ダイシングによりコア部の一部を切り欠くことにより光路変換部を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)、コア部の光学的出射口の光軸上にミラーを載置する方法(例えば、特許文献2参照。)、光路変換部品を所望の位置に載置した後、スピンコート法を用いてコア部内に埋め込む方法(例えば、特許文献3及び4参照。)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−300961号公報
【特許文献2】特開2002−082244号公報
【特許文献3】特開2003−50329号公報(第7頁、第7図など)
【特許文献4】特開2002−107561号公報(第4頁、第3図など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の方法は、光路変換部品等の他部材を使用しないために簡便である。しかし、所望の光路変換部の一ヶ所だけをコア部にダイシング形成するようなことは困難である。即ち、通常、コア部を備える基板を一直線に横切るようにダイシングせざるを得ず、光路変換部の形成位置の自由度が大きく制限される。このため、上記のような従来の電気回路に変わる高密度化、高集積化を達成することが困難である。
また、上記特許文献2の方法では、ミラーを所望の位置に配置することができ、光路変換部の形成位置の自由度が高いという面において優れている。しかし、光学的出射口とミラーとの間に隙間があるために漏光がある。特に光路変換部数が増えると損失は無視できないものとなる場合もある。
更に、上記特許文献3及び4の方法では、スピンコート法を用いるために光路変換部品上にコア部等が盛り上がって形成される。このため、研磨工程を備える必要がある。しかし、有機系材料を研磨することは難しく、また、研磨前には硬化させる必要があり工程の自由が制限されることとなる。更に、光路変換部近傍のコア部形状の制御が難しいという問題がある。即ち、例えば、特許文献3では、スピンコート法により形成された下部クラッド部が光路変換部品をほぼ覆ってしまい、この下部クラッド部上にコア部を形成しても意図する方向へ光路変換することが困難となるなどの問題を生じる場合がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、光路変換部の形成位置等の設計自由度が高く、且つ漏光及び散乱損失が抑制された光導波路デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
(1)基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、上記基部と、該基部上に形成された上記下部クラッド部及び上記光路変換部と、を備える積層体[以下、「積層体(i)」ともいう。]上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
(2)基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、上記基部と、該基部上に形成された上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部及び光路変換部と、を備える積層体[以下、「積層体(ii)」ともいう。]上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
(3)上記コア部形成用未硬化フィルム配設工程において、上記光路変換部の最上部が該コア部形成用未硬化フィルムの上面と同一平面となるように、又は該光路変換部の最上部が該コア部形成用未硬化フィルムの上面から突出するように、上記コア部形成用未硬化フィルムを配設する上記(1)又は(2)に記載の光導波路デバイスの製造方法。
(4)上記コア部形成用未硬化フィルム配設工程は、上記コア部形成用未硬化フィルムを圧着する圧着工程を含む上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
(5)上記圧着工程は、ラミネート法を用いて行う上記(4)に記載の光導波路デバイスの製造方法。
(6)上記圧着工程は、プレス法を用いて行う上記(4)に記載の光導波路デバイスの製造方法。
(7)上記圧着は、温度20〜130℃において、0.1〜2.4MPaで加圧して行う上記(4)乃至(6)のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
(8)上記コア部形成用未硬化フィルムの温度20℃での粘度が、10Pa・s以上である上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
(9)基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、表面に上記光路変換部が形成された上記基部上に、上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部と、上記コア部となる未硬化コア部と、からなる未硬化複合体を配設する未硬化複合体配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
(10)上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする光導波路デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光導波路デバイスの製造方法によれば、液状の材料をスピンコート等の方法により流しかけるのではなく、予め所定の厚みで作製したフィルムを貼り付けることによりコア部を形成するため、コア部を略一定の厚みで形成することができる。その結果、漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスを容易に製造することができる。更には、光路変換部の形成位置等の設計自由度が高いため、自由度の高い光路設計を行うことができ、容易に高密度化、高集積化することができる。
また、光路変換部の最上部がコア部形成用未硬化フィルムの上面と同一平面となるように、又はコア部形成用未硬化フィルムの上面から突出するように、コア部形成用未硬化フィルムが配設された場合には、より確実に漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスを容易に製造することができる。
更に、上記コア部形成用未硬化フィルムを特定の方法により配設した場合には、予め作製したフィルムから材料樹脂が染み出すことなく、所定の位置に貼り付けることができるため、厚みを一定にできる。
また、上記コア部形成用未硬化フィルムの温度20℃での粘度が、10Pa・s以上である場合には、フィルムを作製することが容易であり、特に厚みを均一にできる。
本発明の他の光導波路デバイスの製造方法によれば、コア部及び下部クラッド部を効率よく形成することができ、且つコア部を略一定の厚みで形成することができるため、漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスを容易に製造することができる。
本発明の光導波路デバイスは、上記の各製造方法により製造されるため、漏光及び散乱損失の発生が十分に抑制されており、光通信分野、電気電子分野等において広く利用できる。
また、光路変換部の最上部が、コア部の上面と同一平面となるように、又はコア部の上面から突出するように形成されている場合には、漏光及び散乱損失の発生がより確実に抑制された光導波路デバイスとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]光導波路デバイス
本発明の光導波路デバイスは、後述する各光導波路デバイスの製造方法により得られるものであり、基部と、基部上に配置された下部クラッド部と、下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、コア部上に配置された上部クラッド部と、基部上に形成されており且つコア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記「基部」を構成する材料は特に限定されず、有機系材料、無機系材料及びこれら両方を用いた複合材料等が挙げられる。
有機系材料は特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、BT(ビスマレイミド・トリアジン)系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、熱硬化性PPE(ポリフェニレンエーテル)系樹脂、LCP(液晶ポリマー)、BCB(ベンゾシクロブテン)及びポリノルボルネン等を挙げることができる。これらの有機系材料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、基部に、例えば、強度を向上させる等の目的で各種ゴム等を併用することもできる。
更に、有機系材料を用いる場合には、基部の内部に芯材としてガラスクロス、ガラス不織布、樹脂(ポリアミド等)クロス、樹脂(ポリアミド等)不織布、樹脂(ポリアミド等)フィルム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成された3次元網目構造を有するフッ素樹脂系芯材及び金属箔等を用いてもよい。
【0011】
無機系材料も特に限定されず、例えば、アルミナ、石英、チタニア、ジルコニア、ガーナイト、チタン酸塩(チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)、ムライト、コーディエライト、フォルステライト、ワラストナイト、アノーサイト、エンスタタイト、ジオプサイト、アーケルマナイト、ゲーレナイト及びスピネル等のセラミックス系材料が挙げられる。更に、結晶性又は非結晶性のガラス系材料が挙げられる。ガラス系材料を構成する成分としては、Si、Al、Na、K、Mg、Ca、B、Pb及びZn等が挙げられる。具体的には、アルミノケイ酸系ガラス及びアルミノホウケイ酸系ガラス等が挙げられる。これらのセラミック系材料及びガラス系材料は単独で用いてもよく、併用してもよい。併用する場合には、セラミックス系材料をフィラー等としてガラス系材料中に含有させることができる。これらの無機系材料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記「コア部」は、光が伝搬する部分であり、後述する光重合性組成物が少なくとも光の照射により硬化された光硬化樹脂から構成されており、後述するコア部形成用未硬化フィルム、又は後述する未硬化コア部を備える未硬化複合体を用いて形成されるものである。
上記光硬化樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂及びポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、これらの各樹脂の備える水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子(F、Cl及びBr等)に置換された各ハロゲン化樹脂、これらの樹脂の備える少なくとも一部の水素原子が重水素原子に置換された各重水素化樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種のみが用いられていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。これらのなかでも、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。コア部がエポキシ系樹脂からなる場合は、耐熱性、絶縁性、耐薬品性及び耐水性に特に優れた光導波路デバイスとなる。また、コア部がアクリル系樹脂からなる場合は、感光性、透明性に特に優れた光導波路デバイスとなる。
【0013】
コア部の平面形状は特に限定されず、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。更には、枝分かれを有していてもよい。
また、断面形状(光の伝搬方向に対する断面)も特に限定されず、四角形(正方形及び矩形など)及び円形等とすることができる。また、四角形以外の他の多角形とすることもでき、楕円形等のように完全な円形ではない断面形状であってもよい。
【0014】
コア部の屈折率は、コア部を構成する樹脂の種類及びその種類の数に関わらず、コア部の全体が略均一な屈折率であってもよいし、異なる部分を有していてもよい。尚、コア部が屈折率の異なる部分を有するとは、例えば、コア部の中心部の屈折率が最大となっており、クラッド部に近づくに従い屈折率が小さくなっている場合等である。また、屈折率は、異種の樹脂間で異なることもあれば同じであることもあり、更には同じ単量体に由来する樹脂であってもその重合度により変化する。このため、均一な屈折率の部分及び屈折率の異なる部分は、各々同種の樹脂から得てもよく、異種の樹脂から得てもよい。
【0015】
コア部の光に対する透過特性は特に限定されず、例えば、赤外線(近赤外線を含む)、可視光線及び紫外線等、どのような光が透過できるものであってもよい。なかでも、特に近赤外線(0.7〜25μm)が透過できるものであることが好ましく、更には近赤外線(0.7〜2μm)の透過に適したものであることがより好ましい。
【0016】
上記「下部クラッド部」及び上記「上部クラッド部」は、各々クラッド部を構成する部分である。クラッド部はコア部を取り囲む部分であり、コア部との界面においてコア部内を伝搬する光を反射できる部分である。例えば、クラッド部は、コア部に比べて屈折率を小さく(通常、0.2%以上)することで、この作用を得ることができる。下部クラッド部と上部クラッド部とは同じ屈折率でもよく、異なるものでもよい。
【0017】
尚、上記下部クラッド部及び上部クラッド部とは、後述する光導波路デバイスの製造方法(i)により得られた光導波路デバイスにおいては、コア部形成用未硬化フィルムが配設される前に形成されていたクラッド部が下部クラッド部であり、この未硬化フィルムが配設された後に形成されたクラッド部が上部クラッド部である。また、後述する光導波路デバイスの製造方法(ii)により得られた光導波路デバイスにおいては、コア部形成用未硬化フィルムが配設される前に形成されていた未硬化のクラッド部が、後に硬化されたものが下部クラッド部であり、この未硬化フィルムが配設された後に形成されたクラッド部が上部クラッド部である。更に、後述する光導波路デバイスの製造方法(iii)により得られた光導波路デバイスにおいては、未硬化複合体を構成している未硬化のクラッド部が硬化されたものが下部クラッド部であり、この未硬化複合体が配設された後に形成されたクラッド部が上部クラッド部である。
従って、例えば、上記コア部の下端面(下部クラッド部に面する側の一面)より下方に配置された部分を下部クラッド部とし、コア部の上記下端面より上方に配置された部分を上部クラッド部とすることができる。また、後述する光導波路デバイスの製造方法(iii)において、コア部パターンが付与された未硬化コア部を備える未硬化複合体を用いて得られた光導波路デバイスにおいては、上記コア部の上端面(上部クラッド部に面する側の一面)より下方に配置された部分を下部クラッド部とし、コア部の上記上端面より上方に配置された部分を上部クラッド部とすることができる。
【0018】
また、これらの下部クラッド部及び上部クラッド部の各々は、所定の部分ごとに段階的に形成されたものであってもよい。即ち、例えば、上部クラッド部は、各コアパターン間をコア部の高さまで埋めるように形成された中間クラッド部と、コア部及び中間クラッドの上面に形成された最上部クラッド部と、から構成されてもよい。
【0019】
この下部クラッド部及び上部クラッド部を構成する材料は特に限定されない。これらの各クラッド部には無機系材料を用いてもよいが、加工が容易であり、硬化されてコア部を構成する光重合性組成物と熱膨張率の合わせこみがより容易であること等から、通常、有機系材料が用いられる。この有機系材料としては、前記光硬化樹脂として挙げた各樹脂等を用いることができる。
また、コア部と各クラッド部とは、同じ材料からなっていてもよいし、異なる材料からなっていてもよい。また、下部クラッド部と上部クラッド部とは、同じ材料からなっていてもよいし、異なる材料からなっていてもよい。更に、例えば、上部クラッド部が上記のように中間クラッドと最上部クラッド部とから構成される際には、これらは同じ材料からなるものであってもよく、異なる材料からなるものであってもよい。即ち、各クラッド部は、1種の材料から形成されていても、2種以上の材料から形成されていてもよい。
また、下部クラッド部及び上部クラッド部の形状(断面形状等)などは特に限定されない。
【0020】
上記「光路変換部」は、上記基部上に形成されており且つコア部内を伝搬する光を反射する部分である。この光路変換部を有することにより、漏光を防止しつつ、光路を効率よく変換することできる。この光路変換部は、光導波路デバイス中に1つのみ配置されていてもよいし、2つ以上配置されていてもよい。尚、「基部上」とは、基部上方という意味であり、光路変換部は、図3〜5に示すように、基部表面に配置されていてもよいし(図3参照)、下部クラッド部表面に配置されていてもよいし(図4参照)、下部クラッド部内に一部が埋没するように配置されていてもよい(図5参照)。
この光路変換部の形状は、光路を変換することができる限り特に限定されない。この形状としては、例えば、傾斜された反射面を備える三角柱や四角柱等の多角柱などの形状が挙げられる。1つの光路変換部が有する反射面の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。反射面を2つ以上有する光路変換部を用いる場合には、より高密度化及び高集積化することができる。また、光路変換部品による光路変換の方向は限定されず、例えば、コア内における光路変換でもよく、コア外への光路変換でもよい。
【0021】
更に、光路変換部は、光を反射できる面を備えていればどのような材料から形成されてもよいが、例えば、金属等の反射率の高い材料で形成されていることが好ましい。なかでも、金、銀、銅、ロジウム及びニッケル等が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
この光路変換部を形成する方法は特に限定されず、例えば、基部や下部クラッド部上に金属の塊状物を押しつけた後、型押し治具を用いてこの金属の塊状物を所定形状に成形して得ることもできる。
また、この光路変換部は、予め所定形状に成形された光路変換部品を所定の位置に配設して形成することもできる。この光路変換部品の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記と同様の方法等により剥離可能な基板等の表面に光路変換部を形成した後、基板を剥離することで得ることができる。更には、一般の金属加工の方法、例えば鋳造・鍛造等により作製することができる。
更に、光路変換部品の配設に際しては、基部、下部クラッド部及びこれらの表面に設けられたマーク部等に光路変換部品を接合してもよく、接合しなくてもよい。接合する場合は、下部クラッド部が未硬化状態である場合にはその硬化による接合力を利用してもよく、圧着を行ってもよく、接合剤を介してもよく、更にはサーモソニック法等により接合してもよい。
【0022】
また、本発明の光導波路デバイスでは、この光路変換部の最上部が、上記コア部の上面と同一平面となるように、又はコア部の上面から突出するように形成されていることが好ましい。この場合、漏光及び散乱損失の発生が十分に抑制された光導波路デバイスとなる。
【0023】
本発明の光導波路デバイスは、上記基部、上記下部クラッド部、上記コア部、上記上部クラッド部及び上記光路変換部以外にも他部を備えることができる。
上記他部としては、発光素子、受光素子等の光学部品などが挙げられる。更には、各種電子部品等が挙げられる。
【0024】
上記発光素子としては、例えば、面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;VCSEL)、発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)、及び、半導体レーザダイオード(Laser Diode ;LD)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記受光素子としては、例えば、pinフォトダイオード(pin Photo Diode;pin PD)及びアバランシェフォトダイオード(APD)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記発光素子と上記受光素子とは一体化されたものであってもよい。
更に、電子部品としては、各種能動部品(集積回路素子及びトランジスタ等)、受動部品(コンデンサ、キャパシタ及びインダクタ等)、変換部品(フィルタ及びトランス等)及び接続部品等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの光学部品及び電子部品の搭載方法等は特に限定されず、ワイヤボンディング及び/又はフリップチップボンディング等によるものとすることができる。
【0025】
本光導波路デバイスは、更に導体部を備えることができる。特に上記発光素子及び上記受光素子等の光学素子を備える場合は、導体部を備えることが好ましい。導体部を備えることにより光学素子は、他の電子部品と電気的に接続でき、光導波路構造、光学素子及び電子部品等を一体物として扱えるようになる。また、本光導波路デバイス内に導体部を備えることにより、光学素子と電子部品との接続距離等を短く抑えることができ、応答性を向上させることができる。更に、光導波路デバイス自体の小型化にも寄与することとなる。
【0026】
導体部の種類は特に限定されず、例えば、通常配線、スルーホール導体、ビア導体、抵抗として機能する配線パターン、インダクタとして機能する配線パターン、キャパシタとして機能する配線パターン及びランド等が挙げられる。これらの導体部の配設場所は特に限定されないが、クラッド内、クラッド部表面及び基部内等に配設することができる。更に、導体部を構成する材料も特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、タングステン及びモリブデン等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導体部の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法(CVD法及びPVD法等を含む)、気相成長法及びめっき法等と、フォトリソグラフィ法等のパターニング法とを併用して得ることができる。
【0027】
[2]光導波路デバイスの製造方法(i)
本発明の光導波路デバイスの製造方法は、基部と、基部上に配置された下部クラッド部と、下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、コア部上に配置された上部クラッド部と、基部上に形成されており且つコア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスを製造する方法であり、上記基部と、基部上に形成された上記下部クラッド部及び上記光路変換部と、を備える積層体(i)上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0028】
上記「コア部形成用未硬化フィルム配設工程」では、コア部形成用未硬化フィルムが後述する積層体(i)上に配設される。
上記「コア部形成用未硬化フィルム」は、光重合性組成物からなるフィルムであり、実質的に流動性のないものである。「実質的に流動性が無い」とは、付与された成形状態を維持できるものを意味する。具体的には、このコア部形成用未硬化フィルムの温度20℃での粘度が、10Pa・s以上であるものが好ましく、より好ましくは50Pa・s以上、更に好ましくは200Pa・s以上である。この粘度が10Pa・s以上である場合、多少のベタツキがあっても、フィルム単体で容易に操作することが可能である。
【0029】
この光重合性組成物は、紫外線、赤外線、近赤外線等の所定の光の照射により重合(「重合」には「共重合」及び「単独重合」を含む。以下同様。)されて(「更に重合が進行されて」を含む意味である。)硬化され光硬化樹脂となる組成物である。尚、本発明でいう光硬化樹脂の概念には、所定の光の照射により硬化させることができる限り、一般的に言う熱硬化性重合体(「重合体」には「共重合体」及び「単独重合体」を含む。以下同様。)や熱可塑性重合体等が包含される。また、樹脂中の三次元構造の有無等においても限定されない。
この光重合性組成物に含有される成分は特に限定されないが、通常、光重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。
上記光重合性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、フッ素系化合物、イミド系化合物、ビスマレイミド系化合物、フェニレン系化合物、フェニレンエーテル系化合物、フェノール系化合物、シリコーン系化合物、ウレタン系化合物、エステル系化合物、フェノキシ系化合物及びオレフィン系化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル系化合物、エポキシ系化合物が好ましい。光重合性組成物がエポキシ系化合物を含む場合には、耐熱性、絶縁性、耐薬品性及び耐水性により優れた光導波路が得られ、アクリル系化合物を含む場合には、感光性、透明性により優れた光導波路が得られるからである。
【0030】
上記エポキシ系化合物は、エポキシ基を有することにより重合できる化合物をいう。このエポキシ化合物は特に限定されず、例えば、オリゴマーでもよく、モノマーでもよく、これらの混合物であってもよい。また、モノマー(オリゴマーにおいてはオリゴマー化前のモノマーも)及びオリゴマーは、二官能性でも、多官能性でもよく、これらの混合物であってもよい。更に、これらのモノマー及びオリゴマーとして、一部又は全部の水素原子が重水素原子に置換された重水素化物を用いることができる。また、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物を用いることができる。更に、分子内にシリコーン鎖を有してもよく、有さなくてもよい。
具体的にいうと、二官能性エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型及び脂環型(シクロヘキセンオキシド構造を持つエポキシ化合物等)等が挙げられる。このうちグリシジルエーテル型としては、各種ビスフェノール型、ビフェニル型、ナフタレン型及びフルオレン型等が挙げられる。これらのうちビスフェノール型としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノール型及びビスフェノールAF型、ビスフェノールS型、等が挙げられる。また、グリシジルアミン型としては、ヒダントイン型、アニリン型及びトルイジン型等が挙げられる。
一方、多官能性エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型及びグリシジルアミン型等が挙げられる。このうちグリシジルエーテル型としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジフェニルプロパン型、トリスヒドロキシフェニルメタン型及びテトラフェニロールエタン型等が挙げられる。また、グリシジルアミン型としては、アミノフェノール型、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型、トリグリシジルイソシアヌレート型及び1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン型等が挙げられる。
これらのグリシジルエーテル型の各エポキシ化合物には、1価脂肪族アルコール、多価脂肪族アルコール、1価芳香族アルコール及び多価芳香族アルコール、1価フェノール及び多価フェノールから誘導されたグリシジルエーテル型エポキシ化合物が含まれる。各芳香族アルコールを構成する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等が挙げられる。
これらの各エポキシ化合物の一部又は全部の水素原子が重水素原子及び/又はハロゲン原子に置換された化合物が挙げられる。
【0031】
上記アクリル系化合物としては、例えば、1価から多価(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマー、アルコールをアクリル酸もしくはメタクリル酸等の不飽和結合を持つカルボン酸でエステル化した化合物及びこれらの誘導体等が挙げられる。更には、エポキシ性オリゴマーの有する一部又は全部のエポキシ基に、これらのアクリル系化合物を付加した化合物(例えば、エポキシアクリレート等)が挙げられる。
また、これらの光重合性化合物のなかでも、常温で固体のものを主成分として使用することにより実質的に流動性の無い光重合性組成物を容易に得ることができる。この際、所望の特性に応じて各種市販材料等の配合が調整される。
【0032】
上記光重合開始剤としては、例えば、光酸発生剤、光ラジカル発生剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、光重合性化合物の種類等に応じて、適宜選択される。
上記光酸発生剤は、光の照射及び/又は後述する光増感剤への光の照射に伴って酸を発生させることができる化合物をいう。この光酸発生剤としては、イオン性酸発生剤及び非イオン性酸発生剤が挙げられる。イオン性酸発生剤としては、例えば、ルイス酸発生剤(アリールジアゾニウム塩等の各種ジアゾニウム塩)、ブレンステッド酸発生剤[各種オニウム塩(ジアリールヨードニウム塩等のヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アルキルジアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、ジアリールセレニウム塩等のセレニウム塩など)]等が挙げられる。また、非イオン性酸発生剤としては、例えば、スルホン酸発生剤(スルホン酸エステルなど)、カルボン酸発生剤(カルボン酸エステルなど)、アミド誘導体等が挙げられる。これらの光酸発生剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記光重合性化合物がエポキシ系化合物の場合には、光重合開始剤として光酸発生剤を用いることが好ましい。
【0033】
上記光ラジカル発生剤は、光の照射によりラジカルを発生できる化合物及び/又は後述する光増感剤への光の照射に起因してラジカルを発生できる化合物をいう。この光ラジカル発生剤は特に限定されないが、例えば、有機ホウ素系錯体、s−トリアジン系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、チタノセン化合物、カルボニル化合物、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。この光ラジカル発生剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記光重合性化合物がアクリル系化合物の場合には、光重合開始剤として光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
【0034】
上記光重合性化合物と、上記光重合開始剤との質量比(光重合性化合物/光重合開始剤)は特に限定されないが、100/0.05〜100/10であることが好ましく、より好ましくは100/0.1〜100/5、更に好ましくは100/0.2〜100/4である。この質量比が100/0.05〜100/10である場合には、重合反応が十分に進行することにより耐熱性、絶縁性、耐薬品性及び耐水性により優れた光導波路デバイスが得られる。
【0035】
また、上記光重合性組成物には、硬化させる際に照射する光の種類に応じて、光増感剤を含有させることができる。光増感剤は、照射する光に対して増感作用を有し、光重合開始剤を補助できるものである。この光増感剤は、光重合開始剤等のみでは照射される光に対する十分な感光性が得られ難い場合に効果的である。
【0036】
また、上記光重合性組成物には、硬化後の物性を向上させるために、熱硬化剤を更に含有させてもよい。熱硬化剤としては、例えば、熱酸発生剤、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、光重合性組成物の種類等に応じて、適宜選択される。
上記熱酸発生剤としては、芳香族スルホニウム塩系化合物(対アニオンとしては、例えば、SbF及びPF等)、チオフェン系化合物塩(対アニオンとしては、例えば、SbF及びPF等)、ピリジン系化合物、可溶性有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸及びパラトルエンスルホン酸等)、及び、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三フッ化ホウ素ベンジルアミン、四フッ化ホウ素酸塩等)などが挙げられる。具体的には、三新化学株式会社製のSI−100L、SI−80L、SI−60L、SI−110L及びSI−180L等、旭電化株式会社製のアデカオプトンCP−66及びCP−77、日本曹達株式会社製のCI−2639及びCI−2624、住友精化株式会社製のBSP(2−トリブロモメチルスルホニルピリジン)、BMPS(α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン)等が挙げられる。尚、上記光重合性組成物がエポキシ系化合物を含む場合には、熱硬化剤として少なくとも熱酸発生剤を用いることが好ましい。
また、上記熱ラジカル発生剤としては、各種有機過酸化物(過酸化ベンゾイル等)等が挙げられる。尚、上記光重合性組成物がアクリル系化合物を含む場合には、熱硬化剤として少なくとも熱ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
【0037】
上記光重合性組成物と、上記熱硬化剤との質量比(光重合性組成物/熱硬化剤)は特に限定されないが、100/0.05〜100/10であることが好ましく、より好ましくは100/0.1〜100/5、更に好ましくは100/0.2〜100/4である。この質量比が100/0.05〜100/10である場合には、加熱による重合反応が十分に進行することにより、より硬化状態が均一なコア部となる。
【0038】
このコア部形成用未硬化フィルムは、フィルム単体であってもよいし、剥離可能な支持体及び/又は剥離可能な表面保護フィルムを備える積層体であってもよい。尚、支持体及び表面保護フィルムの両方を備える場合には、一方がコア部形成用未硬化フィルムの一面に形成され、他方がコア部形成用未硬化フィルムの他面に形成される。具体的には、図6に示すように、未硬化フィルム10の表面に剥離可能な支持体51及び剥離可能な表面保護フィルム52を備えるもの等が挙げられる。
上記支持体を備える場合には、コア部形成用未硬化フィルムを配設する際の操作性が向上するため好ましい。また、上記表面保護フィルムを備える場合には、コア部形成用未硬化フィルムの保管性が向上するため好ましい。
上記支持体は、コア部形成用未硬化フィルムから剥離可能なものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の樹脂フィルムや樹脂シートなどが挙げられる。
また、上記表面保護フィルムにおいても、支持体同様にコア部形成用未硬化フィルムから剥離可能なものであればよく、上記支持体と同様の構成のものを挙げることができる。
尚、支持体及び表面保護フィルムの形状は特に限定されず、用途に応じてそれぞれ所定の形状とすることができる。
【0039】
また、上記コア部形成用未硬化フィルムの厚さは用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、150μm以下であることが好ましく、より好ましくは20〜80μm、更に好ましくは40〜60μmである。特に、マルチモード光ファイバの径にあわせて50μm程度に調整することが多い。
【0040】
上記コア部形成用未硬化フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記光重合性組成物と溶剤とを混合して溶解させ、混合溶液を調製し、その後、得られた混合溶液を上記支持体又は上記表面保護フィルム上に塗工することにより製造することができる。更に、必要に応じて溶剤を除去するための乾燥工程を設けてもよい。
上記溶剤は原料を溶解し均一溶液にできるものであれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤、ジエチルエーテル、メトキシトルエン等のエーテル系溶剤などが挙げられる。
この溶剤の配合量は特に限定されないが、光重合性組成物と溶剤との合計を100質量%とした場合に、40〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜85質量%である。
混合液を支持体又は表面保護フィルム上に塗工する方法は特に限定されないが、キャスティング法を用いることが好ましい。この場合、原料ロスが少なく、生産性を向上させることができる。
また、乾燥工程を備える場合には、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥等の乾燥手段を用いることができる。尚、各乾燥条件は、含有される成分に応じて適宜調整される。
【0041】
上記「積層体(i)」は、基部と、基部上に形成された下部クラッド部と、基部及び/又は下部クラッド部上に形成された光路変換部とを備えるものである。尚、上記基部、上記下部クラッド部及び上記光路変換部については、前記の各説明をそのまま適用することができる。
この積層体(i)を製造する方法は特に限定されないが、例えば、(1)上記基部表面に下部クラッド部形成用組成物を塗布又は下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設し、その後、予め作製しておいた光路変換部品の一部を埋入して光路変換部を形成し、次いで、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化させて下部クラッド部を形成することにより得る方法、(2)上記基部表面に下部クラッド部形成用組成物を塗布又は下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設し、その後、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化させて下部クラッド部を形成し、次いで、下部クラッド部上に光路変換部を形成することにより得る方法、(3)上記基部表面に光路変換部を形成し、その後、下部クラッド部形成用組成物を塗布又は下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設し、次いで、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化させて下部クラッド部を形成することにより得る方法等が挙げられる。
これらの各方法においては、漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスをより確実に製造でき、且つ生産性に優れるという観点から、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを用いることがより好ましい。
尚、この積層体(i)を製造する際には、上記光路変換部の上部側が必ず下部クラッド部の上面から突出するように下部クラッド部が形成される。
【0042】
特に、上記(2)の方法により積層体(i)を製造する場合であって、且つ、下部クラッド部形成用組成物又は下部クラッド部形成用未硬化フィルムを光照射により硬化させて下部クラッド部を形成する場合には、
上記基部表面に下部クラッド部形成用組成物を塗布又は下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設して未硬化下部クラッド部20を形成する未硬化下部クラッド部形成工程(図13の工程21参照)と、
未硬化下部クラッド部形成工程の後に、フォトリソグラフィ法を用いて光路変換部が配置されることとなる凹部である光路変換部用凹部211を未硬化下部クラッド部20に形成する光路変換部用凹部形成工程(図13の工程22参照)と、
この光路変換部用凹部形成工程の後に光路変換部用凹部211に光路変換部41を形成する光路変換部形成工程(図13の工程23参照)と、を備える方法により上記積層体(i)を製造することができる。
この方法で製造された光導波路デバイスは、光路変換部とコア部とが直接接して接続されるために光路変換部における変換効率が高い。また、光路変換部品が特に安定して配置することができる。
【0043】
上記各工程のうち上記光路変換部用凹部形成工程(図13の工程22参照)は、光路変換部用凹部211が形成されることとなる部位が遮光されたフォトマスクを用い、未硬化下部クラッド部を露光する露光工程と、この露光工程の後に現像して光路変換部用凹部211を得る現像工程とを備えることができる。また、上記露光工程では位置決め基準91を用いて位置決めを行うことができる。
更に、上記光路変換部形成工程(図13の工程23参照)では、光路変換部を形成する方法は特に限定されず、その場形成してもよく、予め形成された光路変換部品を光路変換部用凹部内に配置して形成してもよい。このうち、その場形成とは、下部クラッド部21に形成された光路変換部用凹部211上に金属塊状物を押しつけた後、型押し治具を用いてこの金属の塊状物を所定形状に成形して光路変換部41を形成する方法等が挙げられる。この光路変換部形成工程においても、位置決め基準91を用いて位置決めを行うことができる。
【0044】
また、上記各方法において用いられる下部クラッド部形成用組成物は、クラッド部形成用重合性化合物と、重合開始剤と、を含むものであり、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化されて、硬化樹脂となる。このクラッド部形成用重合性化合物は特に限定されず、例えば、前述のコア部形成用未硬化フィルムにおける光重合性化合物と同様のものを用いることができる。また、上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、前述のコア部形成用未硬化フィルムにおける光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と同様のものを用いることができる。
また、上記下部クラッド部形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー法、カーテンコート法及びロールコート法等の各種印刷法を用いることにより塗布することができる。
【0045】
また、上記積層体(i)を形成する際には、下部クラッド部を完全に硬化させる必要はなく、後述するコア部を形成する際に、更に硬化を進行させてもよい。更には、上部クラッド部形成後に、後述する一括硬化工程を更に設けて硬化を更に進行させてもよい。
【0046】
また、上記下部クラッド部形成用未硬化フィルムは、上記下部クラッド部形成用組成物からなるフィルムであり、実質的に流動性のないものである。「実質的に流動性が無い」とは、付与された成形状態を維持できるものを意味する。具体的には、この下部クラッド部形成用未硬化フィルムの温度20℃での粘度が、10Pa・s以上であるものが好ましく、50Pa・s以上、更に好ましくは200Pa・s以上である。この粘度が10Pa・s以上である場合、多少のベタツキがあっても、フィルム単体で容易に操作することが可能である。
【0047】
また、下部クラッド部形成用未硬化フィルムは、フィルム単体であってもよいし、剥離可能な支持体及び/又は剥離可能な表面保護フィルムを備える積層体であってもよい。尚、支持体及び表面保護フィルムの両方を備える場合には、一方が下部クラッド部形成用未硬化フィルムの一面に形成され、他方が下部クラッド部形成用未硬化フィルムの他面に形成される。
上記支持体を備える場合には、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設する際の操作性が向上するため好ましい。また、上記表面保護フィルムを備える場合には、下部クラッド部形成用未硬化フィルムの保管性が向上するため好ましい。尚、上記支持体及び表面保護フィルムとしては、前述のコア部形成用未硬化フィルムにおける支持体及び表面保護フィルムと同様のものを用いることができる。
また、この下部クラッド部形成用未硬化フィルムの配設方法は特に限定されず、例えば、後述するコア部形成用未硬化フィルムと同様の方法により配設することができる。
【0048】
更に、上記積層体(i)を、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを用いた上記(1)の方法で製造する場合における、上記光路変換部品を埋入する際の条件は特に限定されないが、例えば、温度30〜120℃(特に50〜100℃)の雰囲気下で行うことができ、更には光路変換部品を2.4MPa以下(特に1.0MPa以下、更には0.01〜0.5MPa)の圧力で押圧して行うことができる。また、光路変換部品自体の重さで埋入させることもできる。
【0049】
上記コア部形成用未硬化フィルムを配設する方法は特に限定されないが、コア部形成用未硬化フィルム配設工程では、未硬化フィルムを積層体(i)上に圧着する圧着工程を含むことが好ましい。
この圧着工程では、コア部形成用未硬化フィルムの圧着を、例えば、ラミネート法を用いて行うことができる。ラミネート法とは、支持体の一方側から他方側へロールを転がしてフィルムを圧着していく方法である。この方法を用いた場合には、空気を押し出しながら圧着できるため、泡の巻き込みを減らすことができる。更に、コア部形成用未硬化フィルムの圧着は、プレス法を用いて行うこともできる。プレス法とは、貼り付けるフィルム全体にわたり、例えば、ゴム板や金属板等を用いて、フィルム全体を同時に圧着する方法である。この方法を用いた場合には、フィルム全体を一度に圧着できるため全体の均一性を保つことができる。
圧着条件は適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、温度20〜130℃において加圧して行うことが好ましい。この際の温度は40〜100℃であることがより好ましく、更に好ましくは50〜80℃である。上記加圧の際の圧力は、0.1〜2.4MPaであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0MPa、更に好ましくは0.4〜0.8MPaである。また、加圧時間は、3〜120秒であることが好ましく、より好ましくは5〜80秒、更に好ましくは10〜40秒である。また、圧着させる際には、フィルムを予め加熱しておいてもよい。
【0050】
また、上記コア部形成用未硬化フィルム配設工程においては、上記光路変換部の最上部がコア部形成用未硬化フィルムの上面と同一平面となるように、又は光路変換部の最上部がコア部形成用未硬化フィルムの上面から突出するように、上記コア部形成用未硬化フィルムを配設することが好ましい。この場合、漏光及び散乱損失の発生が十分に抑制された光導波路デバイスを得ることができる。
【0051】
上記「コア部形成工程」では、通常、任意のパターン形状を有するコア部がフォトリソグラフィ法により形成される。
上記フォトリソグラフィ法とは、所定の光(前記コア部形成用未硬化フィルムを構成する光重合性組成物により適宜選択される。)を用いて所望のコア部パターンを未硬化フィルムに露光し、フィルムを構成する光重合性組成物の所望部分を硬化させ、その後、上記光が照射されずに硬化されなかった部分を除去する工程を備える方法をいう。
具体的にこの工程を説明すると、所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して所定の光を未硬化フィルムに照射し、フォトマスクのパターンを通して光が照射された箇所のみを硬化させる。その後、硬化していない部分を、現像剤を用いて除去することにより、積層体上に所定形状にパターニングされたコア部が形成される。
このように、実質的に流動性の無いフィルムを用いてコア部を形成するため、略一定の厚みのコア部を形成することができる。更には、コア部の形状が崩れたりせず、正確なパターンを有するコア部を形成することができる。
【0052】
また、このコア部形成工程においては、コア部を完全に硬化させる必要はなく、後述する上部クラッド部を形成する際に、更に硬化を進行させてもよい。更には、上部クラッド部形成後に、後述する一括硬化工程を更に設けて硬化を更に進行させてもよい。
【0053】
上記「上部クラッド部形成工程」では、上記コア部及び上記下部クラッド部上に上部クラッド部が形成される。
この上部クラッド部を製造する方法は特に限定されないが、例えば、コア部及び積層体(i)表面に、上部クラッド部形成用組成物を塗布又は上部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設し、その後、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化させることで得ることができる。なかでも、生産性に優れるという観点から、上部クラッド部形成用未硬化フィルムを用いることが好ましい。
上記上部クラッド部形成用組成物は、前記クラッド部形成用重合性化合物と、前記重合開始剤と、を含むものであり、所定の光の光照射及び/又は加熱により硬化されて、硬化樹脂となる。この上部クラッド部形成用組成物の塗布方法については、前記下部クラッド部形成用組成物と同様の塗布方法を用いることができる。
また、上記上部クラッド部形成用未硬化フィルムについては、上記下部クラッド部形成用未硬化フィルムと同様のものを用いることができる。
【0054】
また、この上部クラッド部形成工程においては、上部クラッド部を完全に硬化させる必要はなく、この工程後に硬化工程を更に設けて硬化を更に進行させてもよい。
【0055】
更に、本発明の光導波路デバイスの製造方法においては、この上部クラッド部形成工程の後に、一括硬化工程を備えていることが好ましい。この一括硬化工程では、光照射による光硬化及び/又は加熱による加熱硬化により、各部位の硬化を更に進行させることができ、上記下部クラッド部、上記コア部、上記上部クラッド部のうちのいずれか一部が、完全に硬化していない場合においても、各々の部位が均一な硬化状態となった光導波路デバイスを得ることができる。
【0056】
また、本発明の光導波路デバイスの製造方法では、上記工程以外にも、発光素子及び受光素子等の前記光学部品、前記電子部品などの他部を配設する工程、更には、前記導体部を配設する工程等を備えることができる。
【0057】
[3]光導波路デバイスの製造方法(ii)
本発明の他の光導波路デバイスの製造方法は、基部と、基部上に配置された下部クラッド部と、下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、コア部上に配置された上部クラッド部と、基部上に形成されており且つコア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスを製造する方法であり、上記基部と、基部上に形成された上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部及び光路変換部と、を備える積層体(ii)上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0058】
上記「コア部形成用未硬化フィルム配設工程」では、コア部形成用未硬化フィルムが後述する積層体(ii)上に配設される。上記コア部形成用未硬化フィルムについては、上記[2]における説明をそのまま適用することができる。
【0059】
上記「積層体(ii)」は、基部と、基部上に形成された下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部と、基部及び/又は未硬化下部クラッド部上に形成された光路変換部とを備えるものである。尚、上記基部及び上記光路変換部については、前記の各説明をそのまま適用することができる。
上記未硬化下部クラッド部は、硬化されて下部クラッド部となるものである。この未硬化下部クラッド部としては、例えば、(1)前記下部クラッド部形成用組成物を塗布して形成されたもの、(2)前記下部クラッド部形成用未硬化フィルムにより形成されたものが挙げられる。これらのなかでも、この未硬化下部クラッド部は、漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスをより確実に製造でき、且つ生産性に優れるという観点から、上記(2)の未硬化下部クラッド部が好ましい。
【0060】
この積層体(ii)を製造する方法は特に限定されず、例えば、(1)上記基部表面に下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設又は上記下部クラッド部形成用組成物を塗布して、未硬化下部クラッド部を形成し、次いで、未硬化下部クラッド部上方から光路変換部品の一部を埋入して光路変換部を形成することにより得る方法、(2)上記基部表面に光路変換部品を配設して光路変換部を形成し、その後、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設又は下部クラッド部形成用組成物を塗布して、未硬化下部クラッド部を形成することにより得る方法等が挙げられる。
これらの各方法においては、漏光及び散乱損失の発生が抑制された光導波路デバイスをより確実に製造でき、且つ生産性に優れるという観点から、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを用いることがより好ましい。
尚、この積層体(ii)を製造する際には、上記光路変換部の上部側が必ず未硬化下部クラッド部の上面から突出するように未硬化下部クラッド部が形成される。
また、上記積層体(ii)を、下部クラッド部形成用未硬化フィルムを用いて上記(1)の方法で製造する場合における、上記光路変換部品を埋入する際の条件は、前記[1]における説明をそのまま適用することができる。
【0061】
上記コア部形成用未硬化フィルムを配設する方法は特に限定されないが、コア部形成用未硬化フィルム配設工程では、未硬化フィルムを積層体(ii)上に圧着する圧着工程を含むことが好ましい。このコア部形成用未硬化フィルム配設工程及び圧着工程については、上記[2]における各説明をそのまま適用することができる。
また、このコア部形成用未硬化フィルムを配設した際に、未硬化下部クラッド部の形状が損なわれてしまう場合には、通常、フィルムが配設されても未硬化下部クラッド部の形状が損なわれない程度まで硬化を進行させてからコア部形成用未硬化フィルムが配設される。尚、未硬化下部クラッド部を完全に硬化させて下部クラッド部とする工程は、後述のコア部形成工程において行ってもよいし、後述の上部クラッド部形成工程において行ってもよい。更には、上部クラッド部形成工程後に、硬化工程を更に設けて行ってもよい。
【0062】
上記「コア部形成工程」では、通常、任意のパターン形状を有するコア部が形成される。このコア部形成工程については、上記[2]における説明をそのまま適用することができる。
【0063】
上記「上部クラッド部形成工程」では、上記コア部及び上記下部クラッド部上に上部クラッド部が形成される。この上部クラッド部形成工程については、上記[2]における説明をそのまま適用することができる。
【0064】
更に、本発明の他の光導波路デバイスの製造方法では、上記工程以外にも、発光素子及び受光素子等の前記光学部品、前記電子部品などの他部を配設する工程、更には、前記導体部を配設する工程等を備えることができる。
【0065】
[4]光導波路デバイスの製造方法(iii)
本発明の他の光導波路デバイスの製造方法は、基部と、基部上に配置された下部クラッド部と、下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、コア部上に配置された上部クラッド部と、基部上に形成されており且つコア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスを製造する方法であり、表面に上記光路変換部が形成された上記基部上に、上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部と、上記コア部となる未硬化コア部と、からなる未硬化複合体を配設する未硬化複合体配設工程と、上記コア部を形成するコア部形成工程と、上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【0066】
上記「表面に光路変換部が形成された基部」は、例えば、前記基部上に前記光路変換部品を配設することにより得ることができる。また、ワイヤボンディング装置に設けられたキャピラリ内に金属ワイヤを供給し、この金属ワイヤの先端部を塊状にして、基部表面に押しつけた後、型押し治具を用いてこの金属の塊状物を所定形状に成形して得ることもできる。
【0067】
上記「未硬化複合体配設工程」では、上記基部上に未硬化複合体が配設される。
上記「未硬化複合体」は、下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部と、コア部となる未硬化コア部とを備えるものであり、実質的に流動性のないものである。尚、「実質的に流動性が無い」とは、付与された成形状態を維持できるものを意味する。具体的には、この未硬化複合体の温度20℃での粘度が、10Pa・s以上であるものが好ましく、より好ましくは50Pa・s以上、更に好ましくは200Pa・s以上である。この粘度が10Pa・s以上である場合、多少のベタツキがあっても、単体で容易に操作することが可能である。
また、上記未硬化複合体を構成する上記未硬化下部クラッド部及び上記未硬化コア部の各形状は特に限定されない。更に、この未硬化コア部には所定のコア部パターンが付与されていてもよい。
また、この未硬化複合体は、単体であってもよいし、剥離可能な支持体及び/又は剥離可能な表面保護フィルムを備えていてもよい。尚、支持体及び表面保護フィルムの両方を備える場合には、一方が未硬化複合体の一面に形成され、他方が未硬化複合体の他面に形成される。このような未硬化複合体の具体的な例としては、例えば、図7に示すように、未硬化コア部11及び未硬化下部クラッド部から構成される未硬化複合体の表面に剥離可能な支持体51及び剥離可能な表面保護フィルム52を備えるもの、図8に示すように、コア部パターンが付与された未硬化コア部11及び未硬化下部クラッド部から構成される未硬化複合体の表面に剥離可能な支持体51及び剥離可能な表面保護フィルム52を備えるもの等が挙げられる。
上記支持体を備える場合には、未硬化複合体を配設する際の操作性が向上するため好ましい。また、上記表面保護フィルムを備える場合には、未硬化複合体の保管性が向上するため好ましい。尚、上記支持体及び表面保護フィルムとしては、前述のコア部形成用未硬化フィルムにおける支持体及び表面保護フィルムと同様のものを用いることができる。
【0068】
この未硬化コア部を製造する方法は特に限定されないが、例えば、(1)剥離可能な支持体上に、前記光重合性組成物を塗布又は前記コア部形成用未硬化フィルムを配設することにより未硬化コア部を形成し、その後、この未硬化コア部上に、前記下部クラッド部形成用組成物を塗布又は前記下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設することにより未硬化下部クラッド部を形成して得る方法、(2)剥離可能な支持体上に、前記光重合性組成物を塗布又は前記コア部形成用未硬化フィルムを配設することにより未硬化コア部を形成し、その後、フォトリソグラフィ法により所定のコア部パターンを付与し、次いで、コア部パターンが付与された未硬化コア部上に、前記下部クラッド部形成用組成物を塗布又は前記下部クラッド部形成用未硬化フィルムを配設することにより未硬化下部クラッド部を形成して得る方法等が挙げられる。尚、上記(2)の方法において、コア部パターンを付与する際には、上記光路変換部が形成された基部上に配設できる程度に硬化具合が調整される。
【0069】
また、この未硬化複合体の配設方法は特に限定されず、例えば、前記コア部形成用未硬化フィルムと同様の方法により配設することができる。
【0070】
上記「コア部形成工程」では、通常、任意のパターン形状を有するコア部が形成される。このコア部形成工程については、上記[2]における説明をそのまま適用することができる。尚、コア部パターンが付与された未硬化コア部を備える未硬化複合体を用いる場合には、この工程において、所定の光を照射することによりコア部が形成される。
また、下部クラッド部の形成は、コア部の形成と共に行ってもよいし、コア部形成後に行ってもよいし、後述の上部クラッド部形成工程において行ってもよい。更には、上部クラッド部形成工程後に、硬化工程を更に設けて行ってもよい。
【0071】
上記「上部クラッド部形成工程」では、上記コア部及び上記下部クラッド部上に上部クラッド部が形成される。この上部クラッド部形成工程については、上記[2]における説明をそのまま適用することができる。
【0072】
更に、本発明の他の光導波路デバイスの製造方法では、上記工程以外にも、発光素子及び受光素子等の前記光学部品、前記電子部品などの他部を配設する工程、更には、前記導体部を配設する工程等を備えることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び図により本発明を具体的に説明する。
[1]光導波路デバイス
図1は、本発明の光導波路デバイスの一例の断面を模式的に示す図である。また、図2は、図1におけるA−A断面を模式的に示す図である。この光導波路デバイス100は、基部(多層セラミック配線基板)3、下部クラッド部21、コア部1、上部クラッド部22、光路変換部41及び42、光学素子61及び62、並びに、導体部81及び82等を備える。
【0074】
コア部1は、光路変換部41及び42により光路変換されている。また、コア部1はエポキシ系樹脂から構成されている。一方、上部クラッド部22及び下部クラッド部21はコア部1よりも屈折率が小さいエポキシ系樹脂から構成されている。
【0075】
基部(多層セラミック配線基板)3は、内部に図示しない導体部(配線パターン及び層間接続のためのビアホール並びにスルーホール等)とアルミナ基焼結材とを有し、これらの導体部はアルミナ基焼結材により絶縁されている。この基部3の一面側には下部クラッド部21等が設けられ、他面側には複数の接続端子(導体部82)が設けられている。この光導波路デバイスは、この接続端子を用いて図示しないプリント配線等に搭載することができる。
【0076】
また、光路変換部として、金からなり、互いに向き合う約45゜の傾斜面を有する三角柱形状の光路変換部41及び42とを備える。これら光路変換部41及び42は、基部3の一面に配置されている。また、この光路変換部41及び42の最上部は、コア部1の上面と同一平面となるように、又はコア部1の上面から突出するように形成されている。
【0077】
更に、導体部として、発光素子61及び受光素子62とを図示しない電気回路へ接続するための導体部81と、光導波路デバイスを図示しないプリント配線板等に搭載するための接続端子である導体部82と、を備える。これら導体部81及び82は金、銀、銅、ハンダ、アルミニウム、ニッケル及びこれらの合金等からなる。
【0078】
光学素子として、発光素子61であるVCSELと、受光素子62であるフォトダイオードとを備える。発光素子61は紫外線、近赤外線等の所定の光を発することができ、受光素子62はこれらの光を検知できるものである。また、発光素子61は発光部を備え、この発光部を下方に向けて搭載されている。一方、受光素子62は受光部を備え、この受光部を下方に向けて搭載されている。各光学素子は、上部クラッド部22の表面に形成された導体部81を介して接合されている。
これらの各光学素子は、図示しない外部回路からの電気信号を受けて発光素子61で光信号へ変換され、発光素子61から光信号として発せられた光はコア部1内を透過して受光素子62で受光される。受光素子62で受光された光信号は受光素子62により電気信号へ変換され、図示しない外部回路へと伝達されることとなる。
【0079】
[2]光導波路デバイスの製造方法(i)
上記[1]で説明した本光導波路デバイスの一例の製造方法を以下に説明する。尚、以下の製造方法の説明においては便宜上、各部は製造後における光導波路デバイスの符号を用いて説明する。
(1)基部3
基部3として、予め焼結された多層セラミック配線基板を用意した。多層セラミック配線基板の構成については上記[1]における通りである。
【0080】
(2)光路変換部用パッド411及び421並びに位置決め基準パッド91の形成
基部3の一面に、ドライフィルム(メッキレジスト)を付け、露光、現像によりパッドを形成する以外の所をドライフィルムで保護した後、金メッキを行い、最後にドライフィルム(メッキレジスト)を剥離することにより、光路変換部用パッド411及び421、並びに、位置決め基準パッド91を形成した(図9における工程1参照)。尚、位置決め基準パッド91と、光路変換部を形成するための光路変換部用パッド411及び421となる金からなる薄膜が、剥離シートの表面に剥離可能に保持された転写フィルムを用意し、この転写フィルムを多層セラミック配線基板の表面に転写して形成することも可能である。
【0081】
(3)積層体(i)の形成
エポキシ系化合物[脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)99.5質量%及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%]を含むクラッド部形成用組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;78%)を調製し、その後、得られた混合溶液を支持体(PET製フィルム、厚さ;38μm)上にキャスティング法(ギャップ;130μm)により塗工し、次いで、加熱乾燥を行い溶剤を除去することにより支持体を備えた下部クラッド部形成用未硬化フィルムを形成した。
この支持体を備えるクラッド部形成用未硬化フィルムを、上記基部3上に載置し、下部クラッド部形成用未硬化フィルムのみを温度40〜50℃、圧力0.5MPaの条件で圧着し、温度120℃×30分間の条件で乾燥し、未硬化下部クラッド部を形成した。
その後、予め形成された略45゜の傾斜面を備える三角柱形状の光路変換部品を、映像手段を用いて位置決め基準91の座標に基づき、光路変換部用パッド411及び421上方に正確に配置されるように位置決めし、未硬化下部クラッド部上に載置した。次いで、温度120℃に加熱することにより光路変換部品の自重により沈み込むことを利用し、光路変換部品を未硬化下部クラッド部内に埋入させた。
次いで、露光(露光量;2000mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約7分間)及び加熱(温度120℃×30分間)を行って硬化させ、下部クラッド部21を形成し、基部3と、下部クラッド部21と、光路変換部41及び42とを備える積層体(i)を得た(図9における工程2参照)。
【0082】
(4)コア部形成用未硬化フィルムの配設(コア部形成用未硬化フィルム配設工程)
エポキシ系化合物[芳香族エポキシ系化合物(ジャパンエポキシレジン株式会社製、品名「エピコート1001」)44.5質量%、脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)55.0質量%]及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%を含む光重合性組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;78%)を調製し、その後、得られた混合溶液を支持体(PET製フィルム、厚さ;38μm)上にキャスティング法(ギャップ;130μm)により塗工し、次いで、加熱乾燥を行い、溶剤を除去することにより支持体を備えるコア部形成用未硬化フィルム10を形成した。
この支持体を備えるコア部形成用未硬化フィルム10を、上記(3)で形成した積層体(i)の下部クラッド部21及び光路変換部41、42上に載置し、温度40〜50℃、圧力0.5MPaの条件でコア部形成用未硬化フィルム10のみを下部クラッド部21上にラミネート法により配設し、温度120℃×30分間の条件で乾燥した(図9の工程3参照)。
【0083】
(5)コア部1の形成(コア部形成工程)
上記コア部形成用未硬化フィルム10上に、所定パターン(線幅;約50μm)が形成されたフォトマスク7を配置し、露光(露光量;500mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約2分間)を行い、温度120℃×30分間の条件でポストベイクした。次いで、2−メトキシエタノールを用いて現像(30秒×1回)し、イソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄し、コア部1を形成した(図10の工程4参照)。
【0084】
(6)上部クラッド部22の形成(上部クラッド部形成工程)
上記(3)で用いたクラッド部形成用組成物と同様のものを、下部クラッド部21及びコア部1上にスピンコート法により塗工した。その後、露光(露光量;2000mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約7分間)及びポストベイク(温度120℃×30分間)を行って硬化させ、上部クラッド部22を形成した(図10における工程5参照)。尚、この上部クラッド部は、上記[2]の(3)で用いたものと同様のクラッド部形成用未硬化フィルム(上部クラッド部形成用未硬化フィルム)を用いて形成することもできる。
【0085】
(7)一括硬化工程
上記(6)までに得られた光導波路構造を、温度150×1時間の条件にて加熱することにより一括硬化を行い。この光導波路構造全体を完全に硬化させた。
【0086】
(8)導体部81及び位置決め基準パッド92の形成
上記上部クラッド部22表面に、ドライフィルム(メッキレジスト)を付け、露光、現像によりパッドを形成する以外の所をドライフィルムで保護した後、金メッキを行い、最後にドライフィルム(メッキレジスト)を剥離することにより、導体部81及び位置決め基準パッド92を形成した(図10における工程6参照)。尚、導体部81及び位置決め基準パッド92となる金からなる薄膜が、剥離シートの表面に剥離可能に保持された転写フィルムを用意し、その後、上記と同様に映像手段を用いて位置決め基準91に基づいて決定された位置に、この転写フィルムを上部クラッド部22の表面に転写し形成することも可能である。
【0087】
(9)発光素子61及び受光素子62の搭載(発光素子配設工程)
上記と同様に映像手段を用い位置決め基準92に基づき、導体部81上であって目的とする位置に正確に発光素子61を載置し、予め発光素子61の一面に設けられたハンダにより導体部81と接続した。同様に位置決め基準92に基づき、受光素子62を載置し、同様にハンダにより接続し、本発明の光導波路デバイス100を得た(図10における工程7参照)。尚、得られたコア部1と各クラッド部21、22との屈折率差(コア部−クラッド部)は850nmの近赤外光に対し1.9%、589nmのNa−D線に対し2.0%であった。
【0088】
[3]光導波路デバイスの製造方法(ii)
上記[1]で説明した本光導波路デバイスの他の一例の製造方法を以下に説明する。尚、以下の製造方法の説明においては便宜上、各部は製造後における光導波路デバイスの符号を用いて説明する。
(1)基部3
基部3として、予め焼結された多層セラミック配線基板を用意した。多層セラミック配線基板の構成については上記[1]における通りである。
【0089】
(2)光路変換部用パッド411及び421並びに位置決め基準パッド91の形成
基部3の一面に、ドライフィルム(メッキレジスト)を付け、露光、現像によりパッドを形成する以外の所をドライフィルムで保護した後、金メッキを行い、最後にドライフィルム(メッキレジスト)を剥離することにより、光路変換部用パッド411及び421、並びに、位置決め基準パッド91を形成した。尚、位置決め基準パッド91と、光路変換部を形成するための光路変換部用パッド411及び421となる金からなる薄膜が、剥離シートの表面に剥離可能に保持された転写フィルムを用意し、この転写フィルムを多層セラミック配線基板の表面に転写して形成することも可能である。
その後、光路変換部用パッド411へ金属の塊状物(金属;金)を押しつけた後、型押し治具を用いてこの金属の塊状物を成形し、略45゜の傾斜面を備える三角柱形状の光路変換部41を形成した。同様にして、光路変換部用パッド421上に、光路変換部41と向き合う略45゜の傾斜面を備える三角柱形状の光路変換部42を形成した(図11における工程1参照)。
【0090】
(3)未硬化複合体の配設(未硬化複合体配設工程)
エポキシ系化合物[脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)99.5質量%及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%]を含むクラッド部形成用組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;75%)を調製し、その後、得られた混合溶液を、前記[2]の(4)と同様の方法により得られた支持体を備えるフィルム状の未硬化コア部11上にキャスティング法(ギャップ;130μm)により塗工し、次いで、加熱乾燥を行い、溶剤を除去することにより、未硬化下部クラッド部20及び未硬化コア部11を備えるフィルム状の未硬化複合体を形成した。
この未硬化複合体を、上記(2)で形成した光路変換部41、42が形成された基部3上に載置し、温度60〜80℃、圧力0.5MPaの条件で、基部3上にラミネート法により配設し、温度120℃×30分間の条件で乾燥した。(図11における工程2参照)。
【0091】
(4)コア部1及び下部クラッド部21の形成(コア部形成工程及び下部クラッド部形成工程)
上記未硬化複合体における未硬化コア部11上に、所定パターン(線幅;約50μm)が形成されたフォトマスク7を配置し、露光(露光量;500mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約2分間)を行い、温度120℃×30分間の条件でポストベイクした。次いで、2−メトキシエタノールを用いて現像(30秒×1回)し、イソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄し、コア部1と、未硬化下部クラッド部20からクラッド部21とを同時に形成した。(図12における工程3参照)。
【0092】
(5)上部クラッド部22の形成(上部クラッド部形成工程)
上記(3)で用いたクラッド部形成用組成物と同様のものを、下部クラッド部21及びコア部1上にスピンコート法により塗工した。その後、露光(露光量;2000mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約7分間)及びポストベイク(温度120℃×30分間)を行って硬化させ、上部クラッド部22を形成した(図12における工程4参照)。尚、この上部クラッド部は、上記(3)で用いたものと同様のクラッド部形成用未硬化フィルム(上部クラッド部形成用未硬化フィルム)を用いて形成することもできる。
【0093】
(6)一括硬化工程
上記(5)までに得られた光導波路構造を、温度150×1時間の条件にて加熱することにより一括硬化を行い。この光導波路構造全体を完全に硬化させた。
【0094】
(7)導体部81及び位置決め基準パッド92の形成
上記上部クラッド部22表面に、ドライフィルム(メッキレジスト)を付け、露光、現像によりパッドを形成する以外の所をドライフィルムで保護した後、金メッキを行い、最後にドライフィルム(メッキレジスト)を剥離することにより、導体部81及び位置決め基準パッド92を形成した(図12における工程5参照)。尚、導体部81及び位置決め基準パッド92となる金からなる薄膜が、剥離シートの表面に剥離可能に保持された転写フィルムを用意し、その後、上記と同様に映像手段を用いて位置決め基準91に基づいて決定された位置に、この転写フィルムを上部クラッド部22の表面に転写し形成することも可能である。
【0095】
(8)発光素子61及び受光素子62の搭載(発光素子配設工程)
上記と同様に映像手段を用い位置決め基準92に基づき、導体部81上であって目的とする位置に正確に発光素子61を載置し、予め発光素子61の一面に設けられたハンダにより導体部81と接続した。同様に位置決め基準92に基づき、受光素子62を載置し、同様にハンダにより接続し、本発明の光導波路デバイス100を得た(図12における工程6参照)。尚、得られたコア部1と各クラッド部21、22との屈折率差(コア部−クラッド部)は850nmの近赤外光に対し1.9%、589nmのNa−D線に対し2.0%であった。
【0096】
[4]光導波路デバイスの製造方法(iii)
上記[2]で説明した製造方法と積層体(i)の形成方法が異なる例を以下に説明する。尚、以下の製造方法の説明においては便宜上、各部は製造後における光導波路デバイスの符号を用いて説明する。
(1)基部3
上記[2](1)と同じ基部3を用意した。
(2)光路変換部用パッド411及び421並びに位置決め基準パッド91の形成
上記[2](2)と同様にして光路変換部用パッド411及び421並びに位置決め基準パッド91を形成した。
【0097】
(3)積層体(i)の形成(図13参照)
エポキシ系化合物[脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)99.5質量%及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%]を含むクラッド部形成用組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;78%)を調製し、その後、得られた混合溶液を支持体(PET製フィルム、厚さ;38μm)上にキャスティング法(ギャップ;130μm)により塗工し、次いで、加熱乾燥を行い溶剤を除去することにより支持体を備えた下部クラッド部形成用未硬化フィルムを形成した。この支持体を備えるクラッド部形成用未硬化フィルムを、上記基部3上に載置し、下部クラッド部形成用未硬化フィルムのみを温度70〜90℃、圧力0.5MPaの条件で圧着し、温度100℃×30分間の条件で乾燥し、未硬化下部クラッド部を形成した(図13の工程21)。
【0098】
次いで、得られた未硬化下部クラッド部上にフォトマスクを密着させて配置し、露光(露光量;1000mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約4分間)を行い、更に、温度70℃×30分間の条件でポストベイクした。その後、2−メトキシエタノールを用いて現像(30秒×1回)し、イソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄し、光路変換部用凹部211を形成した(図13の工程22)。
【0099】
その後、予め形成された略45゜の傾斜面を備える三角柱形状の光路変換部品41及び42を、映像手段を用いて位置決め基準91の座標に基づき、光路変換部用パッド411及び421上方に正確に配置されるように位置決めし、光路変換部用凹部内に載置した(図13の工程23)。
【0100】
(4)コア部形成用未硬化フィルムの配設(コア部形成用未硬化フィルム配設工程)
上記[2](4)と同様にしてコア部形成用未硬化フィルム10を配設した。この際、コア部形成用未硬化フィルムは、柔軟性を有するために、下部クラッド部21と光路変換部41及び42との間隙に充填される。(図13の工程3)
【0101】
以下、上記[2](5)から(9)までと同様にして、コア部1を形成し、上部クラッド部22を形成し、一括硬化工程を行い、更に、導体部81及び位置決め基準パッド92を形成し、次いで、発光素子61及び受光素子62を搭載して(図13の工程7)、本発明の光導波路デバイス101を得た。
【0102】
[5]比較品の光導波路デバイスの製造
(1)基部
上記[2](1)と同じ基部を用意した。
(2)光路変換部用パッド及び位置決め基準パッドの形成
上記[2](2)と同様にして光路変換部用パッド及び位置決め基準パッドを形成した。
(3)光路変換部の形成
予め形成された略45゜の傾斜面を備える三角柱形状の光路変換部品を、映像手段を用いて位置決め基準の座標に基づき、光路変換部用パッドの上方に正確に配置されるように位置決めして載置した。次いで、接着剤で固定することにより光路変換部品を安定化させた。
【0103】
(4)下部クラッド部の形成
エポキシ系化合物[脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)99.5質量%及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%]を含むクラッド部形成用組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;78%)を調製し、その後、得られた混合溶液をスピンコート法により、厚さ50μmに基板上に塗工した。次いで、露光(露光量;2000mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約7分間)を行い、更に、温度120℃×30分間の条件でポストベイクして下部クラッド部を形成した。
【0104】
(5)コア部の形成
エポキシ系化合物[芳香族エポキシ系化合物(ジャパンエポキシレジン株式会社製、品名「エピコート1001」)44.5質量%、脂環式エポキシ系化合物(ダイセル化学工業株式会社製、品名「EHPE3150」)55.0質量%]及び重合開始剤(酸発生剤、旭電化工業株式会社製、品名「SP172」)0.5質量%を含む光重合性組成物と、溶剤(メチルエチルケトン)とを混合し、溶解させて混合溶液(固形分;78%)を調製し、その後、得られた混合溶液をスピンコート法により、厚さ50μmに下部クラッド部上に塗工した。得られた未硬化コア部上方にフォトマスクを離間させて配置し、露光(露光量;500mJ/cm、光源;紫外線ランプ、露光時間;約2分間)を行い、更に、温度120℃×30分間の条件でポストベイクした。その後、2−メトキシエタノールを用いて現像(30秒×1回)し、イソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄してコア部を形成した。
【0105】
(6)上部クラッド部の形成
上記(4)と同様にして、コア部上に上部クラッド部を形成した。その後、上記[2](7)から(9)までと同様にして、一括硬化工程を行い、更に、導体部及び位置決め基準パッドを形成し、次いで、発光素子及び受光素子を搭載して、比較品の光導波路デバイスを得た。
【0106】
[6]光学的接合性の評価
上記[4]で得られた本発明品の光導波路デバイスと、上記[5]で得られた比較品の光導波路デバイスとを用いて、各々の光路変換部での光学的結合損失を測定した。その結果、上記[5]で得られた比較品の光導波路デバイスでは結合損失が18dBであったのに対して、上記[4]で得られた本発明品の光導波路デバイスでは0.8dBであり、比較品に対する結合損失割合は4%であり著しく向上されていた。これは、比較品では、光路変換部の後方へ光が漏れているのに対して、本発明品では光路変換部がコアと接しており変換効率が高いのが原因と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の光導波路デバイス及びその製造方法は、光通信分野、電気電子分野等において広く利用できる。例えば、光導波路、光分岐結合器、光合分波器、光アイソレーター、光ファイバーアンプ、配線基板、ICパッケージ等として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の光導波路デバイスの一例の模式的な断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面を模式的に示す説明図である。
【図3】光路変換部の配置例を模式的に示す説明図である。
【図4】光路変換部の他の配置例を模式的に示す説明図である。
【図5】光路変換部の他の配置例を模式的に示す説明図である。
【図6】コア部形成用未硬化フィルムの一例を模式的に示す説明図である。
【図7】未硬化複合体の一例を模式的に示す説明図である。
【図8】未硬化複合体の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図9】本光導波路デバイスの一例の製造方法を模式的に説明する説明図である。
【図10】本光導波路デバイスの一例の製造方法の図9及び図13に続く工程を模式的に説明する説明図である。
【図11】本光導波路デバイスの他の一例の製造方法を模式的に説明する説明図である。
【図12】本光導波路デバイスの他の一例の製造方法の図11に続く工程を模式的に説明する説明図である。
【図13】本光導波路デバイスの更に他の一例の製造方法を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0109】
100、101;光導波路デバイス、1;コア部、10;コア部形成用未硬化フィルム、11;未硬化コア部、20;未硬化下部クラッド部、21;下部クラッド部、211:光路変換部形成用凹部、22;上部クラッド部、3;基部、4、41、42;光路変換部、411、421;光路変換部用パッド、51;支持体、52;表面保護フィルム、61;発光素子、62;受光素子、7;フォトマスク、81、82;導体部、91、92;位置決め基準。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、
上記基部と、該基部上に形成された上記下部クラッド部及び上記光路変換部と、を備える積層体上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、
上記コア部を形成するコア部形成工程と、
上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項2】
基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、
上記基部と、該基部上に形成された上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部及び光路変換部と、を備える積層体上に、コア部形成用未硬化フィルムを配設するコア部形成用未硬化フィルム配設工程と、
上記コア部を形成するコア部形成工程と、
上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項3】
上記コア部形成用未硬化フィルム配設工程において、上記光路変換部の最上部が該コア部形成用未硬化フィルムの上面と同一平面となるように、又は該光路変換部の最上部が該コア部形成用未硬化フィルムの上面から突出するように、上記コア部形成用未硬化フィルムを配設する請求項1又は2に記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項4】
上記コア部形成用未硬化フィルム配設工程は、上記コア部形成用未硬化フィルムを圧着する圧着工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項5】
上記圧着工程は、ラミネート法を用いて行う請求項4に記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項6】
上記圧着工程は、プレス法を用いて行う請求項4に記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項7】
上記圧着は、温度20〜130℃において、0.1〜2.4MPaで加圧して行う請求項4乃至6のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項8】
上記コア部形成用未硬化フィルムの温度20℃での粘度が、10Pa・s以上である請求項1乃至7のいずれかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項9】
基部と、該基部上に配置された下部クラッド部と、該下部クラッド部上に積層され且つ光を伝搬するコア部と、該コア部上に配置された上部クラッド部と、該基部上に形成されており且つ該コア部を伝搬した光の光路を変換する光路変換部と、を備える光導波路デバイスの製造方法において、
表面に上記光路変換部が形成された上記基部上に、上記下部クラッド部となる未硬化下部クラッド部と、上記コア部となる未硬化コア部と、からなる未硬化複合体を配設する未硬化複合体配設工程と、
上記コア部を形成するコア部形成工程と、
上記上部クラッド部を形成する上部クラッド部形成工程と、を備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする光導波路デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−3868(P2006−3868A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78219(P2005−78219)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】