説明

光導波路デバイス

【課題】光導波路デバイスの受光感度の低下を防ぎ、タッチ入力の誤判定を避ける。
【解決手段】光導波路デバイス10は、先端14から出射光15を出射する複数のコア13を有する光導波路11と、出射光15を受光する複数のフォトダイオード16を有する受光素子12とを含む。コア13のピッチL1はフォトダイオード16のピッチL2よりも大きい。フォトダイオード16のピッチL2と、コア13のピッヒL2の比L2/L1は0.1から0.8であり、1本のコア13に対して1個より多いフォトダイオード16が対面する。このようにすることにより、コア13の出射光15の有無を正しく判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアを有する光導波路と、複数のフォトダイオードを有する受光素子とを備えた光導波路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のコアを有する光導波路と、複数のフォトダイオードを有する受光素子とを備えた光導波路デバイスが知られている(例えば特許文献1)。このような光導波路デバイスでは、通常、一つのコアに対応して、一つのフォトダイオードが配置される。各コアから出射される光は、対応する各フォトダイオードにより受光される。受光された光の強度は、フォトダイオードにより電気信号に変換される。
【0003】
上記の光導波路デバイスは、例えば、光学式タッチパネルに用いられる。光学式タッチパネルにおいては、指やペン等のタッチ入力により光源の光が遮られる。光強度が低下した位置が、光導波路デバイスにより検出されて、指やペン等の座標が特定される。
【0004】
従来の光導波路デバイス20の第一例の、模式的な平面図を図4(a)に、断面図を図4(b)に示す。従来の光導波路デバイス20は、光導波路21と受光素子22を備える。光導波路21は複数のコア23を備える。各コア23は、先端24から出射光25を出射する。受光素子22は、一列に並んだ複数のフォトダイオード26を備える。各フォトダイオード26は、コア23の出射光25を受光する。通常、コア23のピッチ(中心間隔)L6と、フォトダイオード26のピッチ(中心間隔)L7は同一である。従って、コア23とフォトダイオード26は一対一に対応する。
【0005】
一般に、コア23の出射光25は、扇形に広がりながら進む。そのため、図4(a)に示すように、コア23の先端24と、フォトダイオード26の受光面との距離L8が長い場合、コア23から出射された出射光25は、当該コア23と対面するフォトダイオード26だけでなく、隣のフォトダイオード26にも入射する。
【0006】
この状況を図4(a)によって具体的に説明する。図4(a)に示す場合、No.3のコア23には出射光が無い。しかし、No.3のコア23に対面するNo.3のフォトダイオード26には、No.2のコア23の出射光25の一部と、No.4のコア23の出射光25の一部が入射する。このため、No.3のフォトダイオード26には、弱いながら入射光がある。このため、No.3のコア23の出射光が無いにもかかわらず、あるように誤判定されるおそれがある。
【0007】
このような誤判定を避けるためには、各フォトダイオード26の閾値を高くして、隣のコア23からの入射光を感知しないようにすればよい。しかし、フォトダイオード26の閾値を高くすると、その光導波路デバイス20を用いた光学式タッチパネルにおいて、光導波路デバイス20の受光感度が低くなる。そのため、光学式タッチパネルにおいて、タッチ入力を感知しないという不具合の生じるおそれがある。
【0008】
上記の問題の対策として、従来の光導波路デバイス30の第二例においては、図5(a)、(b)に示すように、コア31とフォトダイオード32を接近させ、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9を短縮する。これにより、光導波路デバイス30の受光感度の低下を防ぎ、タッチ入力の不具合を避けることができる。しかし、この対策を施すと別の問題が生じる。
【0009】
図5(b)に示すように、光導波路34では、アンダークラッド層35の上にコア31が形成され、更にオーバークラッド層36によりコア31が埋設されている。ここで、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9を短縮すると、図5(c)に示すように、製造時のばらつきによって、コア31の先端33がオーバークラッド層36から露出するおそれがある。コア31の先端33がオーバークラッド層36から露出すると、コア31の出射光37の拡散減衰が著しくなる。その結果、コア31からフォトダイオード32への光伝送が不可能になるおそれがある。コア31の先端33がオーバークラッド層36から露出することを防止するため、オーバークラッド層36の形成精度を高くしなければならない。これは光導波路34の量産性を低下させる。
【0010】
更に、従来の光導波路デバイス30には、光軸合わせ(調芯)に関する問題がある。図5(a)は、コア31とフォトダイオード32の光軸が完全に合った状態(調芯が完全に行なわれた状態)を示す。しかしコア31とフォトダイオード32の調芯を完全に行なうことは難しく、実際には、図6(a)のように、コア31とフォトダイオード32の光軸(芯)がずれることがある。図6(a)の場合、光軸のずれ量はL10である。
【0011】
図5(a)のように、コア31とフォトダイオード32の光軸がずれていないときは、No.3のフォトダイオード32に、No.2のコア31の出射光37は入射しない。しかし図6(a)の場合は、コア31とフォトダイオード32の光軸がずれているため、No.3のフォトダイオード32に、No.2のコア31の出射光37の一部が入射する。このため、No.3のフォトダイオードには、弱いながら入射光がある。それによって、No.3のコア31の出射光37があるように誤判定されるおそれがある。この問題は、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9を短縮しても解決しない。出射光37の誤入射を防止するためには、コア31とフォトダイオード32の調芯の精度を高くしなければならない。これは光導波路デバイス30の量産性を低下させる。
【0012】
従来の光導波路デバイス30においては、光軸合わせ(調芯)を容易に行なうことができるように、通常、光導波路34のコア31の出射面積よりも、フォトダイオード32の受光面積の方を広くする(例えば特許文献1、コラム11、56行〜62行)。フォトダイオード32の受光面積を広くすると、フォトダイオード32のピッチL7が大きくなる。従来の光導波路デバイス30においては、コア31のピッチL6はフォトダイオード32のピッチL7と同一であるから、コア31のピッチL6も大きくなる。コア31のピッチL6およびフォトダイオード32のピッチL7を大きくすれば、コア31とフォトダイオード32の光軸のずれ量L10に起因する誤判定は解決しやすくなる。しかし、コア31のピッチL6およびフォトダイオード32のピッチL7を大きくすることは、例えば光学式タッチパネルの高精細化を難しくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,351,260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の光導波路デバイス20の第一例においては、コア23のピッチL6とフォトダイオード26のピッチL7は同一である。従ってコア23とフォトダイオード26は一対一に対応する。このとき、コア23の先端24とフォトダイオード26の受光面との距離L8が長いため、コア23から出射された出射光25は、隣のフォトダイオード26に入射することがある。その場合、実際には出射光25の無いコア23に、出射光25があるかのように誤判定されるおそれがある。
【0015】
上記の問題の対策として、従来の光導波路デバイス30の第二例においては、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9を短縮する。これにより、光導波路デバイス30の受光感度の低下を防ぎ、タッチ入力の誤判定を避けることができる。
【0016】
しかし、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9を短縮すると、コア31の先端33がオーバークラッド層36から露出するおそれがある。コア31の先端33がオーバークラッド層36から露出すると、出射光37の拡散減衰が著しくなり、コア31からフォトダイオード32への光伝送が不可能になるおそれがある。
【0017】
従来の光導波路デバイス30の第二例には、更に、光軸合わせ(調芯)に関する問題がある。コア31とフォトダイオード32の調芯を完全に行なうことは、実際には難しく、コア31とフォトダイオード32の光軸(芯)がずれることがある。コア31とフォトダイオード32の光軸がずれると、フォトダイオード32に、隣のコア31の出射光37が入射する。この場合も、実際には出射光37の無いコア31に、出射光37があるかのように誤判定されるおそれがある。
【0018】
コア31のピッチL6およびフォトダイオード32のピッチL7を大きくすれば、コア31とフォトダイオード32の光軸のずれに起因する誤判定は解決しやすくなる。しかし、コア31のピッチL6およびフォトダイオード32のピッチL7を大きくすることは、例えば光学式タッチパネルの高精細化に逆行するため、望ましくないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)本発明の光導波路デバイスは、先端から出射光を出射する複数のコアを有する光導波路と、出射光を受光する複数のフォトダイオードを有する受光素子とを含む。コアおよびフォトダイオードは各々所定のピッチで配列している。コアのピッチはフォトダイオードのピッチより大きい。各コアについて、当該コアの出射光のみが入射するフォトダイオードが存在する。
(2)本発明の光導波路デバイスでは、フォトダイオードのピッチとコアのピッチの比が0.1〜0.8である。
(3)本発明の光導波路デバイスでは、コアの先端と前記フォトダイオードの受光面との距離が200μm〜1,000μmである。
(4)本発明の光導波路デバイスでは、フォトダイオードのピッチが2μm〜30μmである。
(5)本発明の光導波路デバイスでは、コアのピッチが10μm〜200μmである。
(6)本発明の光導波路デバイスでは、コアの先端近傍がテーパー状に広がる形状であり、コアの先端がほぼ半円形である。
(7)本発明の光導波路デバイスでは、コアのテーパー状部分の長さが100μm〜1,000μmであり、テーパー角度が0.3°〜5°である。
(8)本発明の光導波路デバイスでは、コア先端のほぼ半円形部分の曲率半径が2μm〜50μmである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光導波路デバイスにおいては、1本のコアの出射光のみが入射するフォトダイオードが存在する。そのフォトダイオードの入射光の有無により、対応するコアの出射光の有無を正しく判定できる。
【0021】
本発明の光導波路デバイスにおいては、コアの先端とフォトダイオードの受光面との距離を、従来の光導波路デバイスより長くすることができる。従って、コアの先端がオーバークラッド層から露出するおそれがなくなる。これにより、オーバークラッド層の形成精度を極端に高くする必要がなくなり、光導波路の量産性が向上する。
【0022】
本発明の光導波路デバイスにおいては、コアとフォトダイオードの光軸合わせ(調芯)が不完全で、コアとフォトダイオードの対応がずれていても、コアの出射光の有無を正確に判定できるフォトダイオードが存在する。従って調芯の精度は、従来の光導波路デバイスより低くてもよく、光導波路デバイスの量産性が向上する。
【0023】
本発明の光導波路デバイスは、コアの先端が出射光の広がりを抑えるようなレンズ形状であるため、コアの先端にレンズを有しない光導波路デバイスと比べて、コアからフォトダイオードへの光の伝送効率が良く、受光感度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本発明の光導波路デバイスの平面図、(b)本発明の光導波路デバイスの断面図
【図2】(a)本発明の光導波路デバイスの平面図、(b)本発明の光導波路デバイスの断面図
【図3】(a)本発明の光導波路デバイスの平面図、(b)本発明の光導波路デバイスの断面図
【図4】(a)従来の光導波路デバイスの第一例の平面図、(b)従来の光導波路デバイスの第一例の断面図
【図5】(a)従来の光導波路デバイスの第二例の平面図、(b)従来の光導波路デバイスの第二例の断面図、(c)従来の光導波路デバイスの第二例の断面図
【図6】(a)従来の光導波路デバイスの第二例の平面図、(b)従来の光導波路デバイスの第二例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
[光導波路デバイス]
本発明の光導波路デバイス10は、図1(a)に平面図を、図1(b)に断面図を示すように、光導波路11と受光素子12を備える。光導波路11は、所定のピッチで一列に配列した複数のコア13を備える。各コア13は先端14から光15を出射する。受光素子12は、所定のピッチで一列に配列した複数のフォトダイオード16を備える。フォトダイオード16は、コア13から出射された光15を受光する。
【0026】
本発明の光導波路デバイス10においては、コア13のピッチ(中心間隔)L1は、フォトダイオードのピッチ(中心間隔)L2よりも大きい。つまり、コア13のピッチL1とフォトダイオード16のピッチL2の関係は、L1>L2である。フォトダイオード16のピッチL2と、コア13のピッチL1の比L2/L1は、好ましくは0.1〜0.8であり、更に好ましくは0.15〜0.5である。従って1本のコア13に対して、1個より多いフォトダイオード16が対面する。すなわち、コア13とフォトダイオード16は一対一には対応しない。
【0027】
図1(a)に示すように、本発明の光導波路デバイス10においても、コア13の先端14から出射された出射光15は、扇形に広がりながら進む。出射光15の広がり方(角度分布)は、従来の光導波路デバイス30(第二例)のコア31と、特に差はない。しかし、本発明の光導波路デバイス10の、コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3は、従来の光導波路デバイス30(第二例)の、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9より長い。従って、フォトダイオード16の受光面において出射光15の広がる範囲は、従来の光導波路デバイス30(第二例)より広い。
【0028】
さらに、フォトダイオード16のピッチL2が、コア13のピッチL1より小さいため、1本のコア13の出射光15は、複数のフォトダイオード16に入射する傾向にある。フォトダイオード16側から見ると、1個のフォトダイオード16に複数のコア13の出射光15が入射することが多い。しかし、全てのフォトダイオード16に、複数のコア13の出射光15が入射するのではなく、1本のコア13の出射光15のみが入射するフォトダイオード16が存在する。本発明では、そのようなコア13を、そのフォトダイオード16に対応するコア13という。そのようなフォトダイオード16には、他のコア13の出射光15は入射しない。従って対応するコア13の出射光15が無いとき、そのフォトダイオード16には入射光が無い。
【0029】
これを、図1(a)により具体的に説明する。例えばNo.4のコア13の出射光15は、No.7〜No.9のフォトダイオード16に入射する。No.5のコア13の出射光15は、No.9〜No.11のフォトダイオード16に入射する。No.6のコア13の出射光15は、No.11〜No.13のフォトダイオード16に入射する。従って、No.9のフォトダイオード16には、No.4のコア13の出射光15と、No.5のコア13の出射光15が入射する。また、No.11のフォトダイオード16には、No.5のコア13の出射光15と、No.6のコア13の出射光15が入射する。
【0030】
しかし、No.10のフォトダイオード16には、No.5のコア13の出射光15のみが入射する。つまり、No.10のフォトダイオード16には、No.5のコア13以外のコア13の出射光15は入射しない。
【0031】
同様にして、No.6のフォトダイオード16には、No.3のコア13の出射光15だけが入射する。従って図1(a)に示すように、No.3のコア13の出射光が無いと、No.6のフォトダイオード16には入射光が無い。従って、No.6のフォトダイオード16の入射光の有無により、No.3のコア13の出射光15の有無を正しく判定できる。
【0032】
本発明の光導波路デバイス10においては、コア13のピッチL1よりも、フォトダイオード16のピッチL2を小さくする。これにより、コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3を、従来の光導波路デバイス30(第二例)の、コア31の先端33とフォトダイオード32の受光面との距離L9より長くすることができる。具体的には、コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3は、200μm〜1,000μmが適切である。
【0033】
コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3が200μmより小さいと、製造のばらつきなどにより、コア13の先端14がオーバークラッド層17から露出するおそれがある。従ってコア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3は、200μm以上が好ましい。
【0034】
コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3が1,000μmより大きいと、出射光15の広がりが大きくなりすぎて、1本のコア13の出射光15のみが入射するようなフォトダイオード16が存在しなくなるおそれがある。すなわち、どのフォトダイオード16についても、複数個のコア13の出射光15が入射するようになるおそれがある。そのときは、コア13の出射光15の有無を確実に判定できるフォトダイオード16が存在しなくなる。従ってコア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3は、1,000μm以下が好ましい。
【0035】
図1(a)は、本発明の光導波路デバイスにおいて、コア13とフォトダイオード16の光軸が完全に合った状態(調芯が完全に行なわれた状態)を示す。しかし、図1(a)のように、コア13とフォトダイオード16の調芯を完全に行なうことは、本発明の光導波路デバイス10においても難しい。実際には、図2(a)(平面図)のように、コア13とフォトダイオード16の光軸(芯)がずれることがある。図2(a)の場合の光軸のずれ量はL4である。
【0036】
図1(a)の場合、コア13とフォトダイオード16の光軸(芯)がずれていないので、No.3のコア13の出射光15のみが入射するのは、No.6のフォトダイオード16である。一方、図2(a)の場合は、コア13とフォトダイオード16の光軸(芯)がずれているため、No.3のコア13の出射光15のみが入射するのは、No.7のフォトダイオード16である。従って、フォトダイオード16とコア13の対応は、図1(a)と図2(a)では、異なる。
【0037】
しかし、このようなフォトダイオード16とコア13の対応のずれは、例えば光学式タッチパネルの使用開始時の初期化(校正)の際、ソフトウェアにより修正できる。そのため、フォトダイオード16とコア13の対応がずれても、実用上は差し支えない。重要なことは、本発明の光導波路デバイス10においては、どのコア13についても、出射光の有無を正確に判定できるフォトダイオード16が存在することである。これを、コア13に対応するフォトダイオード16という。例えば図1(a)では、No.3のコア13の出射光15の有無は、No.6のフォトダイオード16の入射光の有無により、正確に判定できる。図2(a)では、No.3のコア13の出射光15の有無は、No.7のフォトダイオード16の入射光の有無により、正確に判定できる。
【0038】
[受光素子]
本発明の光導波路デバイス10に用いられる受光素子12は、所定のピッチで一列に配列した複数のフォトダイオード16を有する。この種の受光素子12は、一般にリニアイメージセンサーと言われる。このような受光素子12は、光信号を電気信号に変換するため、光導波路11で受信した光の強度を検出することに用いられる。このような受光素子12としては、CMOSリニアイメージセンサーやCCDリニアイメージセンサーが適している。
【0039】
本発明に用いられる受光素子12は、フォトダイオード16を、好ましくは500個以上、さらに好ましくは1,000個以上有する。フォトダイオード16のピッチL2は、好ましくは2μm〜30μmであり、さらに好ましくは5μm〜10μmである。フォトダイオード16のピッチL2が小さい(2μm程度〜5μm程度)場合は、例えば、コア13のピッチL1を小さくして、光学式タッチパネルの精細度を高くすることができる。フォトダイオード16のピッチL2が大きい(10μm程度〜30μm程度)場合は、フォトダイオード16の受光面が広くなるので、受光素子12の感度を高くすることができる。これにより、例えば、光学式タッチパネルの感度を高くすることができる。
【0040】
[光導波路]
本発明に用いられる光導波路11は、フォトダイオード16に光を導く複数のコア13を有する。複数のコア13は、所定のピッチで一列に配列する。コア13は、通常、クラッド層17、18に埋設される。ここでは、アンダークラッド層18とオーバークラッド層17を合わせてクラッド層17、18という。このような光導波路11は、例えば、株式会社工業調査会発行、塩田剛史著「光配線技術のすべて」76ページ〜81ページに記載された、高分子光導波路の作製方法により、得ることができる。
【0041】
コア13は、クラッド層17、18より屈折率が高く、伝播する光の波長で透明性が高い、任意の材料から形成される。コア13を形成する材料は、好ましくは、パターニング性に優れた紫外線硬化樹脂である。
【0042】
光導波路11のコア13のピッチL1は、コア13のピッチL1とフォトダイオード16のピッチL2の関係がL1>L2を満足する範囲で、好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは20μm〜100μmである。コア13の幅Wは、例えば4μm〜100μmであり、コア13の高さHは、例えば10μm〜100μmである。
【0043】
クラッド層17、18は、コア13より屈折率の低い任意の材料から形成される。コア13とクラッド層17、18との最大屈折率差は、好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.02〜0.2である。クラッド層17、18を形成する材料は、好ましくは熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂である。
【0044】
光導波路11のコア13の本数は、目的に応じて適宜設計されるが、例えば、50本〜2,000本である。
【0045】
本発明に用いられるコア13の先端14は、出射光15の広がりを抑えるようなレンズ形状であることが好ましい。コア13の先端部は、好ましくは、図3(a)(平面図)、(b)(断面図)に示す構造を有する。図3(a)に示すように、コア13の先端14の近傍は、例えば受光素子12に向かってテーパー状に広がる形状である。コア13の先端14は、例えば、ほぼ半円形である。ここでは、テーパー状に広がる部分の長さL5を、レンズの長さL5ということにする。テーパーの角度θは、好ましくは0.3°〜5°である。レンズの長さL5は、好ましくは100μm〜1,000μmである。コア先端14のほぼ半円形の部分の曲率半径Rは、好ましくは2μm〜50μmである。
【0046】
本発明の光導波路デバイス10は、コア13の先端14が出射光15の広がりを抑えるようなレンズ形状である。そのため、コアの先端にレンズを有しない光導波路デバイスと比べて、コア13からフォトダイオード16への光の伝送効率が良く、受光感度が高い。
【実施例】
【0047】
[クラッド層形成用ワニスの調製]
・(成分A)脂環骨格を有するエポキシ系紫外線硬化樹脂(アデカ社製EP4080E):100重量部
・(成分B)光酸発生剤(サンアプロ社製CPI−200K):2重量部
以上の2つの成分を混合して、クラッド層形成用ワニスを調製した。
【0048】
[コア形成用ワニスの調製]
・(成分C)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(大阪ガスケミカル社製オグソールEG):40重量部
・(成分D)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製EX−1040):30重量部
・(成分E)1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル))ブトキシフェニル)ブタン:30重量部(特開2007−070320実施例2に準じて合成)
・(成分B)光酸発生剤(サンアプロ社製CPI−200K):1重量部
・乳酸エチル:41重量部
以上の5つの成分を混合して、コア形成用ワニスを調製した。
【0049】
[光導波路の作製]
厚み188μmのポリエチレンナフタレートフィルムの表面に、クラッド層形成用ワニスを塗布した。次に紫外線を1,000mJ/cm照射した。その後、80℃で5分間加熱処理した。これにより厚み20μmのアンダークラッド層18を形成した。波長830nmにおけるアンダークラッド層18の屈折率は、1.510であった。
【0050】
アンダークラッド層18の表面に、コア形成用ワニスを塗布した。次に100℃で5分間加熱処理して、コア層を形成した。次に、コア層にフォトマスクをギャップ100μmで被せて、紫外線を2,500mJ/cm照射した。さらに100℃で10分間加熱処理した。
【0051】
次に、コア層の紫外線未照射部分を、γ(ガンマ)−ブチロラクトン水溶液で溶解除去した。その後120℃で5分間加熱処理して、複数のコア13を形成した。コア13の幅は30μm、高さは50μm、ピッチL1は52μmである。コア13の波長830nmにおける屈折率は、1.592であった。また、レンズの長さL5は200μm、テーパーの角度θは3.5°である。コア13の先端14は、曲率半径が20μmであり、コーニック定数が−1の非球面レンズ形状である。
【0052】
次に、アンダークラッド層18の表面に、コア13を埋設するように、クラッド層形成ワニスを塗布した。次に紫外線を2,000mJ/cm照射した。その後、80℃で5分間加熱処理した。これにより厚み1mmのオーバークラッド層17を形成した。波長830nmにおけるオーバークラッド層17の屈折率は、1.510であった。以上のようにして、光導波路11を作製した。
【0053】
[光導波路デバイスの作製]
1,024個のフォトダイオード16が一列に並んだ受光素子12(CMOSリニアセンサーアレイ、浜松ホトニクス社製s10226、ピッチL2=7.8μm)を準備した。光導波路11と受光素子12を、コア13の先端14がフォトダイオード16に対向するように、クラッド層形成用ワニスを介して結合した。このようにして光導波路デバイス10を作製した。
【0054】
光導波路デバイス10において、光導波路11のコア13の先端14から、フォトダイオード16の受光面までの距離L3は、300μmであった。
【0055】
この光導波路デバイス10を用いて、座標入力領域が211mm×158mmの光学式タッチパネルを作製した。光学式タッチパネルの受光感度は高く、タッチの誤判定は見られなかった。
【0056】
[測定方法]
[屈折率]
クラッド層形成用ワニスおよびコア形成用ワニスを、それぞれシリコンウェハ上にスピンコートにより成膜して、屈折率測定用フィルムを作製した。これらのフィルムの屈折率を、プリズムカプラー(サイロン社製SPA−400)を用いて測定した。
【0057】
[コアの幅、高さ]
作製した光導波路11を、ダイサー式切断機(DISCO社製DAD522)を用いて断面切断した。切断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察測定して、コア13の幅W、高さHを求めた。
【0058】
[コアのピッチ、フォトダイオードのピッチ、コアの先端とフォトダイオードの受光面の距離]
マイクロスコープ(キーエンス社製)にて撮影した写真から、コア13のピッチL1、フォトダイオード16のピッチL2、コア13の先端14とフォトダイオード16の受光面との距離L3を求めた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の光導波路デバイス10は、光学式タッチパネルや光配線板に、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
10 光導波路デバイス
11 光導波路
12 受光素子
13 コア
14 コアの先端
15 出射光
16 フォトダイオード
17 オーバークラッド層
18 アンダークラッド層
20 光導波路デバイス
21 光導波路
22 受光素子
23 コア
24 コアの先端
25 出射光
26 フォトダイオード
30 光導波路デバイス
31 コア
32 フォトダイオード
33 コアの先端
34 光導波路
35 アンダークラッド層
36 オーバークラッド層
37 出射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から出射光を出射する複数のコアを有する光導波路と、
前記出射光を受光する複数のフォトダイオードを有する受光素子とを含む光導波路デバイスであって、
前記コアおよび前記フォトダイオードは各々所定のピッチで配列し、
前記コアのピッチは前記フォトダイオードのピッチよりも大きく、
前記各コアについて、当該コアの出射光のみが入射する前記フォトダイオードが存在する光導波路デバイス。
【請求項2】
前記フォトダイオードのピッチと前記コアのピッチの比が0.1〜0.8である、請求項1に記載の光導波路デバイス。
【請求項3】
前記コアの先端と前記フォトダイオードの受光面との距離が200μm〜1,000μmである、請求項1または2に記載の光導波路デバイス。
【請求項4】
前記フォトダイオードのピッチが2μm〜30μmである、請求項1から3のいずれかに記載の光導波路デバイス。
【請求項5】
前記コアのピッチが10μm〜200μmである、請求項1から4のいずれかに記載の光導波路デバイス。
【請求項6】
前記コアの先端近傍がテーパー状に広がる形状で、前記コアの先端がほぼ半円形である、請求項1から5のいずれかに記載の光導波路デバイス。
【請求項7】
前記コアのテーパー状部分の長さが100μm〜1,000μmであり、テーパー角度が0.3°〜5°である、請求項6に記載の光導波路デバイス。
【請求項8】
前記コア先端のほぼ半円形部分の曲率半径が2μm〜50μmである、請求項6または7に記載の光導波路デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186192(P2011−186192A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51533(P2010−51533)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】