説明

光導波路

【課題】特定のエポキシ樹脂をクラッドの構成材料として含まない場合に比べ、耐湿性及び耐汚れ性に優れた光導波路を提供すること。
【解決手段】光を伝搬する光導波路コア112と、光導波路コア112の周囲を囲って配設されるクラッド114と、を備え、クラッド114の少なくとも1部が、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂を含んで構成される光導波路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光導波路は長期信頼性の面から主に無機系材料で作製されることが多かったが、光導波路の製造コスト低減や導波路自体の屈曲性付与や軽量化や製造自由度確保のため、素材の優位性がある高分子材料による光導波路の構成や作製技術の検討がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、フッ素化ポリイミド樹脂を構成材料とした光導波路が提案されている。
また、特許文献2は、フッ素ゴムチューブにコア材料を詰め込んだ光導波路が提案されている。
また、特許文献3には、フッ素脂肪酸構造を持つ材料を構成材料とした光導波路が提案されている。
【特許文献1】特開2005−165256
【特許文献2】特開平08−094872
【特許文献3】特開平10−03119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂をクラッドの構成材料として含まない場合に比べ、耐湿性及び耐汚れ性に優れた光導波路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
高分子材料からなる光を伝搬する光導波路コアと、
高分子材料からなる前記光導波路コアの周囲を囲って配設されるクラッドと、
を備え、
前記クラッドの少なくとも1部が、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂を含んで構成される光導波路。
【0006】
請求項2に係る発明は、
フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂が網目構造体の高分子材料である請求項1に記載の光導波路。
請求項3に係る発明は、
前記フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂における、フルオロエチレンビニルエーテル構造の成分が、エポキシ樹脂全体に対して5重量%以上35重量%以下である請求項1に記載の光導波路。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂をクラッドの構成材料として含まない場合に比べ、耐湿性及び耐汚れ性に優れる光導波路が提供される。
請求項2に係る発明によれば、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂が網目構造体でない場合に比べ、耐湿性及び耐汚れ性に優れる光導波路が提供される。
請求項3に係る発明によれば、クラッドの構成材料としてフルオロエチレンビニルエーテル構造の成分の含有量を考慮しない場合に比べ、クラッドと他の部材との接着性、光導波路の屈曲性及び光導波路の光伝播損失の悪化を抑制しつつ、耐湿性及び耐汚れ性に優れる光導波路が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る光導波路を示す平面図である。図2は、実施形態に係る光導波路の断面図である。図2は、図2のA−A断面図である。
【0010】
第1実施形態に係る光導波路フィルム10は、図1及び図2に示すように、例えば、ベルト状の光導波路であり、クラッド114と、クラッド114に埋設された光導波路コア112と、を有する。
【0011】
ここで、光導波路コア112の屈折率はクラッド114よりも高く構成されている。例えば、光導波路コア112とクラッド114との屈折率差を一例として3%である場合を考えると、屈曲させたときに曲率半径が1.5mmまで曲げ損失がほとんどない光導波路フィルムとなる。屈折率差は、大きいほど屈曲時の損失が無い曲げ半径を小さくなるが、光導波路フィルムの機械的な屈曲性、受発光素子との接続損などを考えると屈折率差を2%以上5%以下程度が最も望ましい。特にこの屈折率差を4%以上にすると、曲げ半径1mmで屈曲させても、実用的な屈曲時の光損失が非常に小さくなり、受発光素子との接続も容易で実用的である。
【0012】
光導波路コア112は、同一平面上であって光導波路フィルム10の幅方向に互いに伝播光が並進するように並列に配列して複数配設されている。なお、本実施形態では、6本の光導波路コア112が配列されている。また、光導波路コア112の平面形状は、ライン状(直線状)に限られず、湾曲した形状でも、分岐した形状(例えばY字状)であってもよい。
【0013】
なお、光導波路コア112は、その長手方向端部が、当該長手方向に対して傾斜する傾斜面が形成されていてもよい。この傾斜面は、光導波路コア112に伝播する光の光路変換部となる面である。当該傾斜面は、光導波路コア112の長手方向に対して、例えば45°の角度をなすように形成されている。この傾斜面では、光導波路コア112内を伝播する光が傾斜面に到達すると、傾斜面と隣接する層(本実施形態では空気層が該当)により、反射され、光の伝播方向が変換される。
【0014】
クラッド114は、光導波路コア112よりも屈折率が低い材料で構成され、光導波路コア112の周囲を取り囲んで配設されている。
【0015】
ここで、光導波路コア112及びクラッド114の材料としては、光導波路フィルム10の使用波長に対して透明であり、光導波路コア112及びクラッド114との間に所望の屈折率差が設定され得るものから選択される。
【0016】
光導波路コア112の材料としては、例えば脂環式オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられるが、後述するようにクラッド114の材料がエポキシ系の樹脂で構成するため、エポキシ樹脂が好適である。
【0017】
そして、クラッド114の材料としては、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂が適用される。
【0018】
このフルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂(以下、特定のエポキシ樹脂と称する)は、当該フルオロエチレンビニルエーテル構造を重合成分して含む樹脂である。特定のエポキシ樹脂は、例えば、エポキシモノマー又はエポキシオリゴマーとフルオロエチレンビニルエーテルモノマー又はフルオロエチレンビニルエーテルオリゴマーとの共重合体が挙げられる。また、特定のエポキシ樹脂は、上記各モノマー及びオリゴマーとの混在物の重合体であってもよい。
【0019】
一方、特定のエポキシ樹脂は、各モノマー又はオリゴマーと架橋剤を架橋・硬化させた網目構造体であってもよい。また、特定のエポキシ樹脂は、各モノマー及びオリゴマーの混在物と硬化剤(架橋剤)を用いて硬化(架橋)させた網目構造体であってもよい。特に、特定のエポキシ樹脂の網目構造体をクラッドの構成材料として適用すると、網目構造体の特定のエポキシ樹脂では、エポキシ樹脂構造とフルオロエチレンビニルエーテル構造との重なり合う網構造となると考えられることから、耐湿性及び耐汚れ性が向上される。ここで、「オリゴマー」とは、重合度2以上15以下程度の重合体を意味する。
【0020】
エポキシモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタジエン−ダイオキサイド、ビニルシクロヘキセン−ダイオキサイド、ジペンテンダイオキサイド、3,3−エポキシシクロヘキサンカルボニトリル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、スチレンオキサイド、エチル3,4−エポキシ−2,5−エンドメチレンシクロヘキソエイト、3,4−エポキシ6−メチルシクロヘキシルメチルアセテート、2,3−エポキシ2エチルヘキサノール、1,2ジイソブチレンオキサイド、ありル9,10−エポキシステアレイト、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレイト等が挙げられる。
【0021】
そして、エポキシオリゴマーとしては、上記エポキシモノマーをオリゴマー化したものである。
【0022】
フルオロエチレンビニルエーテルモノマーとしては、例えば、−CF−CFX−(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)で表されるフルオロエチレン構造単位とビニルエーテル又はビニルエステルの単量体に基づく構造単位との化合物が挙げられる。そして、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマーとしては、これらフルオロエチレンビニルエーテルモノマーをオリゴマー化したもの、例えば、CF−CFX−(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)で表されるフルオロエチレン構造単位とビニルエーテル又はビニルエステルの単量体に基づく構造単位との重合体が挙げられる。
【0023】
また、硬化剤(架橋剤)としては、活性水素官能基を2個以上有する化合物であればよく、例えばエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、フタル酸、コハク酸、ポリアミド115、ポリサルファイド樹脂(商品名:Thiokol LP−3)、ジメチロール尿素樹脂、トリメチロールメラミンのエーテル化物、トリエンスルホン酸アミドの縮合体等が挙げられる。
特定のエポキシ樹脂は、フルオロエチレンビニルエーテル構造の成分がエポキシ樹脂全体に対して5重量%以上35重量%以下で含むことが望ましく、より望ましくは8重量%以上20重量%以下、さらに望ましくは10重量%以上15重量%以下である。この含有量を上記範囲とすることで、クラッドと他の部材(例えば光導波路コア等)との接着性、光導波路の屈曲性及び光導波路の光伝播損失の悪化を抑制しつつ、耐湿性及び耐汚れ性が向上される。
なお、フルオロエチレンビニルエーテル構造の成分は、原料となるフルオロエチレンビニルエーテルモノマー又はオリゴマーの添加量の割合に近似する。
【0024】
そして、特定のエポキシ樹脂では、フルオロエチレンビニルエーテル構造の成分含有量が、上記範囲となるように、上記各モノマー(又はオリゴマー)、及び必要に応じて架橋剤の量を調整する。なお、特定のエポキシ樹脂は、他のモノマー(又はオリゴマー成分)を含んでいてもよい。ここで、特定のエポキシ樹脂の形成前(クラッド形成前:つまり、重合体又は架橋体形成前)の組成物を良く混合することで、バラツキが抑制されてフルオロエチレンビニルエーテル構造が存在した特定のエポキシ樹脂が得られる。つまり、異種の高分子構造単位の斑の発生が抑制された特定のエポキシ樹脂が得られる。
【0025】
光導波路フィルム10は、図3(A)及び図3(B)に示すように、「折り曲げ」や「ねじれ」等の変形に対して追従性(高い屈曲性)を有していることがよい。これにより、フィルムが変形した状態でも、光送受信部から送信された光信号が、光導波路フィルム10に形成された光導波路を導波して、光送受信部により受信される。光導波路フィルム10は、最小屈曲半径3mm以下の可とう性を備えていることが望ましい。最小屈曲半径は、光導波路フィルム10を折り曲げたときに光導波路フィルム10の内側に形成される曲線の微小な部分を円と近似したとき、その円の最小半径の長さを表す値であり、ASTM D―2176に従いその許容値が測定される。
【0026】
光導波路フィルム10は、その厚さが50μm以上500μm以下であることが望ましく、より望ましくは、50μm以上200μm以下である。一方、光導波路フィルム10は、その幅が0.2mm以上10mm以下であることが望ましく、より望ましくは、0.25mm以上5mm以下である。
【0027】
以下、本実施形態に係る光導波路フィルム10の製造方法について説明する。
図4は、実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法を示す工程図である。図4は、図1のA−A断面図における工程図を示す。なお、以下に説明する本実施形態に係る光導波路フィルム10の製造方法で、一つの高分子フィルム10Aに対して切削加工を行い、複数個の光導波路フィルム10を得る手法を示している。
【0028】
実施形態に係る光導波路フィルム10の製造方法では、まず。図4(A)示すように、クラッド層114A(第1クラッド層)、コア層112A、及びクラッド層114B(第1クラッド層)がこの順で積層された高分子フィルム10A(積層体)を準備する。即ち、2つのクラッド層114A及びクラッド層114Bによりコア層112Aが挟まれて積層された高分子フィルム10Aを準備する。高分子フィルム10Aの各層を積層する方法は、各層の間で剥離が生じないように一体的に積層されれば特に限定されず、例えば、ラミネート法、スピンコート等の公知の方法が採用される。そして、準備した高分子フィルム10Aをダイシングテープ10Bに張り合わせる。
【0029】
なお、本実施形態では、3層構成の高分子フィルム10Aを用いる形態を示すが、2層構成の高分子フィルム10A(即ち、クラッド層114A、及びコア層112Aがこの順で積層された高分子フィルム10A)を用いた形態であってもよい。
【0030】
次に、図4(B)に示すように、高分子フィルム10Aをクラッド層114B側から切削、即ちクラッド層114Bごとコア層112Aを切削し、光導波路コア112を形成する。光導波路コア112の形成は、例えば、ダイシングソーにより、高分子フィルム10Aの長手方向に沿って行う切削を、高分子フィルム10Aの幅方向に特定間隔(この間隔が光導波路コア112の幅となる)で実施することで行われる。この切削により、クラッド層114Aの同一平面上であって高分子フィルム10Aの幅方向に互いに伝播光が並進するように並列に配列して、光導波路コア112が複数配設される。本実施形態では6本の光導波路コア112を形成している。なお、図4中、130は、ダイシングソーのブレードを示す。
【0031】
次に、図4(C)に示すように、高分子フィルム10Aをダイシングソーから取り外した後、光導波路コア112を覆う、即ち、上記切削による切削溝に埋め込むように、クラッド形成用硬化性樹脂を塗布し、これを硬化してクラッド層114C(第2クラッド層)を形成する。具体的には、例えば、高分子フィルム10Aの切削面側に、クラッド用硬化性樹脂を滴下するとともに、例えば、スピンコート法による遠心力により広げることで、光導波路コア112上とクラッド用硬化性樹脂が塗布されると共に各切削溝の内部がクラッド用硬化性樹脂によって満たされ、これを硬化させる。ガラス基板などによりクラッド用硬化性樹脂を押し付けて露光硬化する方法を採用してもよい。これによりクラッド114(クラッド層114A、クラッド層114B、及びクラッド層114C)が、光導波路コア112の周囲を取り囲んで形成される。
【0032】
そして、図4(D)に示すように、再び、光導波路コア112が形成された高分子フィルム10Aをダイシングソーに設置した後、高分子フィルム10Aの切削ラインに沿って外形切削加工を施し、一つの高分子フィルムから複数の光導波路フィルム10を作製する。
【0033】
なお、作製する光導波路フィルム10の端面(クラッド114の端面及び光導波路コア112の端面)を傾斜面とするための切削は、例えば、刃先に45°の傾斜構造を有するブレードを用いたダイシングソーにより実施される。
【0034】
以下、本実施形態に係る光導波路フィルム10の製造方法の他の一例について説明する。図5は、他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法を示す工程図である。図6は、ゴム鋳型をゴム鋳型より一回り大きい面積のクラッド用基材に密着させた状態(図5(C)で示される工程)を示す斜視図である。
本実施形態に係る光導波路の製造方法は、例えば、
(1)ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コアに対応する凹部を有するゴム鋳型を準備する工程と、
(2)前記ゴム鋳型にクラッド用基材を密着させる工程と、
(3)前記クラッド用基材が密着された前記ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填する工程と、
(4)充填された前記光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させて光導波路コアを形成する工程と、
(5)前記ゴム鋳型を前記クラッド用基材から剥離する工程と、
(6)前記光導波路コアが形成された前記クラッド用基材上に、クラッド層を形成する工程と、
(7)前記光導波路コアの端部を切断する工程と、
を有している。
【0035】
具体的には、まず、図5(A)に示すように、光導波路コアに対応する凸部12が形成された原盤11を準備する。図5(A)は、光導波路コアに対応する凸部12が形成された原盤11を、凸部12の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
【0036】
次に、図5(B)に示すように、原盤11の凸部12が形成された面に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを形成する。図5(B)には、原盤11に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを形成したものを、凸部12の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
【0037】
次に、図5(C)に示すように、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを原盤11から剥離して型をとり(図示省略)、次いで型の両端を、前記凸部12に対応する凹部22が露出するように切断することにより、凹部22に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口22a、及び前記凸部12に対応する凹部22から光導波路コア形成用硬化性樹脂を排出させるための排出口22bを切削形成して、ゴム鋳型20を作製する(図6参照)。
【0038】
次に、図5(D)に示すように、作製したゴム鋳型20に、ゴム鋳型20より一回り大きい面積のクラッド用基材114Dを密着させる。図5(D)は、図2のA―A切断面を示している。
【0039】
次に、図5(E)に示すように、ゴム鋳型20の進入口22aに光導波路コア形成用硬化性樹脂112Bを数滴垂らし、毛細管現象と減圧/加圧注入法により、ゴム鋳型20の凹部22に該光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填する。凹部22の他端部にある排出口22bからは光導波路コア形成用硬化性樹脂が排出される(図示省略)。図5(E)には、ゴム鋳型20の凹部22に光導波路コア形成用硬化性樹脂が充填されたものを凹部長手方向に直角に切断した断面図を示す。
【0040】
次に、図5(F)に示すように、ゴム鋳型20の凹部22内の光導波路コア形成用硬化性樹脂112BをUV光硬化させることにより、光導波路コア112を形成する。この光導波路コア112が形成されたゴム鋳型20を、原盤11から剥離する。図5(F)には、クラッド用基材114Dの上に、光導波路コア112が形成されたものを、光導波路コア長手方向に直角に切断した切断面を示す。
【0041】
次に、図5(G)に示すように、クラッド用基材114Dの光導波路コア112の形成面に、光導波路コア形成用硬化性樹脂によるクラッド層114Eを形成することにより、光導波路フィルム10が作製される。図5(G)には、光導波路を光導波路コア長手方向に直角に切断した切断面を示す。
【0042】
ここで、図7に示すように、ゴム鋳型20の硬化樹脂層を補強する強化部材24を当該ゴム鋳型に設けて、光導波路を作製してもよい。具体的には、強化部材24をゴム鋳型20に設ける以外は、図7(A)から図7(G)までは、図5(A)から図5(G)で表される工程と同様で、原盤11からスタート(省略)して、クラッド用基材114Dの上に光導波路コアを形成する工程までを示す。
【0043】
図8(A)は、クラッド用基材114Dに強化部材24を設けたゴム鋳型を密着させた斜視図を示す。図8(A)に示すように、強化部材24は、ゴム鋳型凹部形成領域(紫外線等の照射領域)が切り欠いた構造となっている。また、26a、26bは、注入管を、28a、28bは減圧脱気管をそれぞれ示し、強化部材24の四隅にはクラッド用基材114Dとがわずかでも位置ズレを起こさないようにするために、両者を固定するためのネジ30が設けられている。20aは、ゴム鋳型の硬化樹脂層であり、この部分は強化部材24により覆われていない。図8(B)は、図8(A)のA―A断面図であり、22はゴム鋳型凹部を示している。
【0044】
また、図9(A)及び図9(B)は、図8と同様な強化部材を備えたゴム鋳型を用いる例を示し、クラッド用基材とゴム鋳型との位置づれが生じ難くなるように、クラッド用基材を保持する保持部(凹部)を有する保持部材32を用いるもので、これも特にクラッド用基材としてフレキシブルフィルムを用いる場合に有効である。また、この例では、ゴム鋳型凹部形成領域(紫外線等の照射領域)に石英板、ガラス板、硬質プラスチック板のように光透過性基板24aを用い、事前に光導波路コアの凹部に類似の形状で光導波路コア形状より少し大きい形状の溝部分を成型し、その溝に沿って光導波路コアの原盤を用いてゴム材のゴム鋳型部分を作製している。
【0045】
強化部材24の材料としては金属材料、セラミック材料、硬質プラスチック材料等及びそれらの複合材料で作られ、その厚さは1mm以上40mm以下程度が適切である。
【0046】
なお、本実施形態に係る光導波路フィルム10は、上記製造方法に限られるものではなく、種々の手法をしてもよい。
【0047】
以上説明した本実施形態に係る光導波路フィルム10では、光導波路コア112の周囲を囲って配設されるクラッド114が、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂を含んで構成されている。エポキシ樹脂主要成分と共にフルオロエチレンビニルエーテル構造を導入することで、エポキシ樹脂に疎水性が付与される。このような特定のエポキシ樹脂をクラッド114の構成材料として適用することで、当該クラッド114が光導波路フィルム10の保護層として機能し、耐湿性及び耐汚れ性が付与される。
【0048】
また、本実施形態では、光導波路コア112の周囲を囲う全てのクラッド114を、特定のエポキシ樹脂で構成した形態を説明したが、これに限られず、少なくとも一部が特定のエポキシ樹脂で構成されていればよい。具体的には、例えば、図5で示す製法で作製する光導波路フィルム10の場合、クラッド114のうちクラッド層114Eを特定のエポキシ樹脂で構成し、クラッド用基材114Dを他の樹脂で構成してもよい。これは、クラッド用基材114Dは、比較的大きな厚みで形成されることから、耐湿性を付与する必要がない場合があるためである。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
<ゴム鋳型の作製>
石英基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して減圧空洞(30mmX10mmX50μm)が付いた導波路のY字型分岐導波路が同形状の10パターンを描画したフォトマスクを用いて高圧水銀灯で露光し、現像して、断面が正方形の凸部(導波路幅:50μm、高さ:50μm、パターンピッチ:2mm、パターン長さ:20mm、)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を作製した。そして、この原盤の表面に離型剤を塗布した。
【0051】
次に、紫外線線透過する開口部が設けられ、かつ3つの注入口及び3つの排気口を有する強化部材(厚さ1.5mmのアルミニウム製)を用意し、2mm厚の石英製透過性基板に、上記作製した光導波路コア作製用原盤の凸部に対応する凹部と類似形状の凹部(幅:200μmで高さ:200μmの導波路パターン同形状)40mmX30mmX20mmのサイズの石英基板をフォトリソ工程とフッ酸エッチング工程により上記石英透過性基板上に作製し、上記強化部材と一体化させた。次に、この石英透過性基板上に一体化された強化部材を、上記作製した光導波路コア作製用原盤にかぶせた。
【0052】
次に、強化部材の開口部より熱硬化性液状ジメチルシロキサンゴム(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、粘度1000mPa.s)及びその硬化剤を混合したものを流し込み、130℃で20分間加熱してゴム材料を硬化させた。硬化後、硬化ゴム(硬化樹脂層)、透過性基板、及び強化部材が一体になったものを原盤から剥離し、前記凸部に対応する凹部を有し、凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口及び該コア材原液を凹部から排出するための排出口が形成されたゴム鋳型が作製された。
【0053】
なお、この時のシリコーンゴム材(硬化樹脂層)の物性は、硬度がショアA硬度で
20、表面エネルギーが18N/m、ゴム厚:150から200μm、形成された凹部内壁の算術平均粗さRaが0.04μmであった。
【0054】
<光導波路コア及びクラッド層の形成>
前記ゴム鋳型をアートンフィルム(厚さ:75μm、屈折率:1.51、クラッド用基材)に加圧密着させた。また、前記ゴム鋳型の強化部材の各パターンに対応した10口の注入口に対して、テーパー角度20度の針状テーパー加圧注入ヘッド10本をクシ型状に接合された注入集合ヘッドを上下油圧稼動機構装置にセットして、また空孔から出ている2つの大型排気口に減圧脱気ヘッドを接続させた。次いで、圧力調整制御機を通して加圧注入ヘッドから鋳型凹部に、粘度が1100mPa・sのコア層材用紫外線硬化性樹脂(エポキシオリゴマー)を常圧に対して+20kPaの加圧圧力で注入した。また、強化構造を有する鋳型の2つの排出口より、減圧脱気ヘッドを通し静圧による−50kPaの減圧吸引を行なった。この状態で40秒で鋳型凹部にこのコア層材用紫外線硬化性樹脂が充填された。
次に、前記強化部材から加圧注入ヘッド及び減圧脱気ヘッドをはずし、強化部材の露光用開口部から光強度が30mW/cmのUV光を10分間照射して光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させた。そしてゴム鋳型を剥離すると、アートンフィルム上に屈折率1.54の光導波路コア部が形成された。
【0055】
次に、紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー70重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー 20重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を15分間行った後、ブロックイソシアネート 5重量部を加え3分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0056】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂をアートンフィルムの光導波路コア部形成面のコア部を含む光導波部分にインクジェット法により塗布した。そして、110℃の基板加熱雰囲気において光強度が30mW/cmのUV光を10分間照射して紫外線硬化させながら硬化後の膜厚が15μmのクラッド層を形成し、総厚が90μmのフレキシブルなコア断面の一辺が50μm高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.10dB/cm(測定波長850nm)であった。
【0057】
次に、作製した高分子光導波路のパターン光導波ユニットごとに各々0.5mm厚のダイサーブレードを用いて外形切断しモジュール用導波路を作製し、このモジュール用導波路端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.21)のMTコネクターとを接続して、高分子光導波路デバイスを作製した。この高分子光導波路デバイスは、5Gdpsの光信号を伝送し、光オシロスコープにおいてEyeパターンの開いた正常な光伝送が確認された。
【0058】
次に、作製した高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、光伝搬損失の変化が全部0.07dB以内であった。大きな問題が無い屈曲耐久性のレベルであった。
【0059】
次に、高分子光導波路デバイスに対して日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.11dB(長さ=14cm)であり、良好な値であった。また、放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の上のごみや汚れが簡単に落ちた。
【0060】
(比較例1)
屈折率が1.505の紫外線硬化樹脂(エポキシオリゴマー)を、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上に塗布することによって、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上にクラッド層を形成し、実施例1と同様にして高分子光導波路を作製した。この高分子光導波路の平均光伝播損失は、0.09dB/cm(測定波長850nm)であった。
【0061】
次に、実施例1と同様に、光導波路フィルム端部にマルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けたて、高分子光導波路デバイスを作製した。
次に、高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、光伝搬損失の変化が平均0.15dB以内であった。少し問題がある屈曲耐久性のレベルであった。
【0062】
次に、高分子光導波路デバイスに対して、日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.32dB(長さ=14cm)であった。また放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の表面上のごみや汚れが簡単に落とせず、汚れが残留した。
【0063】
(実施例1−2)
紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 96重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー2重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を15分間行った後、ブロックイソシアネート 15重量部を加え3分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0064】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上に塗布することによって、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上にクラッド層を形成し、実施例1と同様にして高分子光導波路を作製した。この高分子光導波路の平均光伝播損失は、0.09dB/cm(測定波長850nm)であった。
【0065】
次に、実施例1と同様に、光導波路フィルム端部にマルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けたて、高分子光導波路デバイスを作製した。
次に、高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、光伝搬損失の変化が平均0.12dB以内であった。少し問題がある屈曲耐久性のレベルであった。
次に、高分子光導波路デバイスに対して、日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.24dB(長さ=14cm)であった。また放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の上のごみや汚れが簡単に落とせず、汚れが若干残留した。
【0066】
(実施例1−3)
紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 50重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー43重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を15分間行った後、ブロックイソシアネート 15重量部を加え1分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0067】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上に塗布することによって、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上にクラッド層を形成し、実施例1と同様にして高分子光導波路を作製した。この高分子光導波路の平均光伝播損失は、0.32dB/cm(測定波長850nm)であった。
【0068】
次に、実施例1と同様に、光導波路フィルム端部にマルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けたて、高分子光導波路デバイスを作製した。
次に、高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、評価途中でクラッド層とコア層の間にクラックが入り、光伝搬損失評価が不能であった。問題がある屈曲耐久性のレベルであった。
次に、高分子光導波路デバイスに対して、日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.08dB(長さ=14cm)であった。また放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の上のごみや汚れが簡単に落とせず、汚れが残留した。
【0069】
(実施例2)
<ゴム鋳型の作製>
シリコンウェハー基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯で露光し、現像して、断面が正方形の凸部(幅:80μm、高さ:80μm、ピッチ1mm、長さ:100mm)を10本形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を作製した。そして、このようにして作製した凸部の1つの端部に、それぞれモールドにより、高さ2mm、幅(凸部に直交する方向)10mm、基板長手方向長さ20mmの、断面が長方形の圧力緩和空隙作製用凸部を形成し、そして光導波路コア作製用原盤とした。
【0070】
次に、アルミ製の強化部材を作製した。強化部材の露光用開口部は石英ガラス製とした。次に、2mm厚のアクリル製透過性基板に、前記光導波路コア作製用原盤と同じピッチで、類似形状の凹部(幅:150μm、高さ:150μm、ピッチ1mm、長さ:100mm、10本)をフォトリソ工程とエッチング工程により透過性基板上に作製し、強化部材と一体化させた。
【0071】
上記光導波路コア作製用原盤に、離型剤を塗布した後、この上に熱硬化性シリコーンゴムオリゴマー(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、ジメチルポリシロキサン)を、上記凸部の長手方向の一端が一部露出するように、かつ、他端にある空隙部作製用凸部の端部までが覆われるように、塗布した。この上から前記一体化した強化部材を押圧し固定した。
【0072】
その後、135℃で18分間加熱して硬化させ、シリコンゴムと強化部材を一体化させた。硬化シリコーンゴム層の厚さは5mmであった。次いでこれを光導波路コア作製用原盤から剥離し鋳型を得た。鋳型のシリコンゴム層には、80μm角の凹部と、光導波路コア形成用硬化性樹脂の進入部と排出部、空隙部とが形成された。表面ゴム層のゴム硬度は14であった。
【0073】
<光導波路コア及び下地クラッド層の形成>
次に、紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 85重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー 17重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を10分間行った後、ブロックイソシアネート 7重量部を加え2分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0074】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を用いて、アートンフィルム上に片面の浸漬塗布法を行い、紫外線光照射と90℃の基板加熱処理を同時に20分行い、光/熱硬化を行い20μm厚の下地クラッド層を積層し、積層導波路基材フィルムを得た。
【0075】
前記合体したゴム鋳型を20μm厚の下地クラッド層を塗布した総厚90μmのアートンフイルムの下地クラッド層形成面に加圧密着させた。
そして前記ゴム鋳型の強化部材の各パターンに対応した20口数の注入口に対して、テーパー角度13度の針状テーパー加圧注入ヘッド20本をクシ型状に接合された注入集合ヘッドを上下油圧稼動機構装置にセットして、また空孔から出ている2つの大型排気口に減圧脱気ヘッドを接続させた。
注入管には光導波路コア形成用硬化性樹脂を入れた加圧タンクに接続し、さらに加圧タンクに窒素ボンベを直結させ、静圧で該樹脂が圧入されるようにした。また、減圧脱気管は、圧力制御機構と減圧タンクを介して真空ポンプに接続し、圧力調整された静圧力による減圧吸引が行なわれるようにした。
静圧による加圧と同期し静圧による吸引しながら、ゴム鋳型凹部に、粘度が500mPa・sのコア層用の紫外線硬化性樹脂(エポキシ系材料)で圧力注入した。
充填終了後、ゴム鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、ゴム鋳型の石英製窓を通して80mW/cmのUV光を8分間照射し光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させた。
ゴム鋳型を剥離するとアートンフイルム/下地クラッド層の上に屈折率1.54の光導波路コアが形成された。
【0076】
次に、紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 85重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー 17重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を10分間行った後、ブロックイソシアネート 7重量部を加え3分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0077】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を用い、アートンフィルムにおける光導波路コアが形成された下地クラッド層面の浸漬塗布法を行い、光照射と80℃の加熱処理10分を行い、塗布したクラッド層の光/熱硬化を行い20μm厚の上部クラッド層を積層し、積層導波路フィルムを得た。
【0078】
次に更に110℃で加熱硬化させたところ、フレキシブルな高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波伝搬損失は、0.11dB/cmであった。
【0079】
次に、実施例1と同様に、作製した高分子光導波路のパターン光導波ユニットごとに各々0.5mm厚のダイサーブレードを用いて外形切断しモジュール用導波路を作製し、このモジュール用導波路端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.22)のMTコネクターとを接続して、高分子光導波路デバイスを作製した。この高分子光導波路デバイスは、5Gdpsの光信号を伝送し、光オシロスコープにおいてEyeパターンの開いた正常な光伝送が確認された。
【0080】
次に、作製した高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、光伝搬損失の変化が全部0.04dB以内であった。大きな問題が無い屈曲耐久性のレベルであった。
次に、作製した高分子光導波路デバイスに対して、日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.09dB(長さ=12cm)であり、良好な値であった。また放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の上のごみや汚れが簡単に落ちた。
【0081】
(実施例3)
紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 85重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー 12重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を10分間行った後、ブロックイソシアネート 7重量部を加え4分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0082】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を用い、剥離層を有するガラス基板面上に片面にドクターブレード法の塗布法を行い、紫外線光照射と100℃の基板加熱処理を同時に20分行い、基板加熱90℃と60mW/cmの紫外線光の6分間照射を行い、紫外線光/熱硬化を同時に行い20μm厚の下地クラッド層フィルムを形成し、導波路基材フィルムを得た。
【0083】
粘度が1100mPa・sのコア層材用紫外線硬化性樹脂(エポキシオリゴマー)を、導波路基材フィルムの下地クラッド層フィルム上にスピナー塗布法で積層し、塗布した後60mW/cmの紫外線光を12分間照射して硬化させ、コア層を形成した。硬化後のコア層の屈折率は1.55、層厚みは35μmであった。
【0084】
次に、紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 85重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー 12重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を10分間行った後、ブロックイソシアネート 7重量部を加え4分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0085】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を、導波路基材フィルムのコア層上にドクターブレード塗布法で塗布し、紫外線光照射60mW/cmと基板加熱90℃との6分間の紫外線光/熱硬化を同時に行い25μm厚の上部クラッド層フィルムを形成し、ガラス基板上に、2つのクラッド層にコア層が挟まれた3層構成の導波路フィルムを得た。
【0086】
この3層構成の導波路フィルムを、12インチ対応ダイシングソー(DISCO社製DFD6361)に設置する。そして、幅65μmのブレードを取り付けたダイシングソーを用い、高分子フィルムの主面(最上面クラッド層)側から、最上面クラッド層及びコア層まで切り込むハーフカット切削を、送りピッチ125μmで101回行うことにより、コア径が60μmでピッチが125μmの100芯(100ch)の光導波路コアを形成した。そして、ダイシングソーから、切削加工を施した導波路フィルムを取り外した。
【0087】
次に、紫外線硬化型エポキシ系オリゴマー 85重量部、フルオロエチレンビニルエーテルオリゴマー12重量部を混合し、これをスリーワンモーターのプロペラ攪拌を10分間行った後、ブロックイソシアネート 7重量部を加え4分攪拌を継続し、硬化後の屈折率が1.50のクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を準備した。
【0088】
このクラッド用紫外線及び熱硬化性樹脂を、切削加工を施した導波路基材フィルムの凹部へ埋めるように塗布し、紫外線光照射60mW/cmと基板加熱90℃との6分間の紫外線光/熱硬化を同時に行い硬化させた。
【0089】
このようにして、高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.10dB/cm(測定波長850nm)であった。
【0090】
次に、作製した高分子光導波路に対して、0.5mm厚のダイサーブレードを用いて外形切断しモジュール用導波路を作製し、このモジュール用導波路端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.21)のMTコネクターとを接続して、高分子光導波路デバイスを作製した。この高分子光導波路デバイスは、5Gdpsの光信号を伝送し、光オシロスコープにおいてEyeパターンの開いた正常な光伝送が確認された。
【0091】
次に、作製した高分子光導波路デバイスに対して、屈曲耐久テストを実施し、半径1.5mmに100万回の180度屈曲繰り返し評価(N=20)に対して、光伝搬損失の変化量の平均0.09dBであった。大きな問題が無い屈曲耐久性のレベルであった。
次に、作製した高分子光導波路デバイスに対して、日本電子回路工業会(JPCA)の規格であるJACA−PE02−05−01S 6.2.3 高温高湿放置試験 C)試験条件 85℃/85%RHに従い1000時間の放置を行なったが、N=10で光伝搬損失の平均変化率が0.13dB(長さ=16cm)であり、良好な値であった。また放置後の簡易な水洗浄で放置テストにおいて付着したクラッド層の上のごみや汚れが簡単に落とせた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態に係る光導波路を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る光導波路の断面図である。
【図3】実施形態に係る光導波路フィルムが変形に対して追従性(屈曲性)を有することを示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法を示す工程図である。
【図5】他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法を示す工程図である。
【図6】他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法において、ゴム鋳型をゴム鋳型より一回り大きい面積のクラッド用基材に密着させた状態(図5(C)で示される工程)を示す斜視図である。
【図7】他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法を示す工程図である。
【図8】他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法において、クラッド用基材に強化部材を設けたゴム鋳型を密着させた様子を示す模式図である。
【図9】他の実施形態に係る光導波路フィルムの製造方法において、クラッド用基材に強化部材を設けたゴム鋳型を密着させた様子の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
10 光導波路フィルム
10B ダイシングテープ
10A 高分子フィルム
11 原盤
12 凸部
20 ゴム鋳型
20a ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層
22 凹部
22a 進入口
22b 排出口
24 強化部材
24a 光透過性基板
30 ネジ
32 保持部材
112 光導波路コア
112A コア層
112B 光導波路コア形成用硬化性樹脂
114 クラッド
114A クラッド層
114B クラッド層
114C クラッド層
114D クラッド用基材
114E クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなる光を伝搬する光導波路コアと、
高分子材料からなる前記光導波路コアの周囲を囲って配設されるクラッドと、
を備え、
前記クラッドの少なくとも1部が、フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂を含んで構成される光導波路。
【請求項2】
フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂が網目構造体の高分子材料である請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記フルオロエチレンビニルエーテル構造を有するエポキシ樹脂における、フルオロエチレンビニルエーテル構造の成分が、エポキシ樹脂全体に対して5重量%以上35重量%以下である請求項1に記載の光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−211040(P2010−211040A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58145(P2009−58145)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】