説明

光干渉計

【課題】光の波長の変化による位相のずれを補償し、位相の観測・位相の検出に適した光干渉計を実現する。
【解決手段】外部入力光を2つの光路の光に分ける第1のビームスプリッタ10と、一方の光路に挿入したファラデー効果を利用した透過型の可変光位相器12と、2つの光路に分けた光を再度重ね合わせる第2のビームスプリッタ14を具備している。可変光位相器は、入力した直線偏光を円偏光に変換する第1の四分の一波長板20と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子22と、それを透過した円偏光を直線偏光に変換して出力する第2の四分の一波長板24を備え、この第2の四分の一波長板から出力する光の位相を、可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる構造とする。そして、第2のビームスプリッタは、2つに分けた他方の光路の光と前記可変光位相器の透過光とを重ね合わせて外部出力光とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファラデー効果を利用した可変光位相器を一方の光路に組み込んだ光干渉計に関するものである。この技術は、例えば光ファイバ通信や光計測などの分野における光位相を応用した技術などに有用である。
【背景技術】
【0002】
光干渉計は、外部入力光を複数の光に分け、異なる光路を進んだ光を再び重ね合わせて干渉を起こさせる光学系であり、得られた干渉光の強度を解析することにより様々な物理量を測定する装置などに利用されている。光干渉計には、光学系の構成により、マッハ・ツェンダ干渉計やマイケルソン干渉計などがある。
【0003】
マッハ・ツェンダ干渉計は、外部入力光を2つに分けて、別々の光路を通してから再度重ね合わせて外部出力光とする方式であり、マイケルソン干渉計は、外部入力光を2つに分けて、それぞれの光を反射鏡で折り返して重ね合わせて外部出力光とする方式である。これらの光干渉計では、2つに分けた光の位相差が干渉光の強度として観測される。このことは、光の波長の変化を計測する場合には都合がよいが、光の位相を観測する場合には不都合を生じる。
【0004】
例えば、光ファイバ通信では、情報を伝送するための変調方式として、高速化(ワイドバンド化)に適しているという点から、情報を位相に乗せる位相変調方式が有望視されている。この位相変調では、位相を変化させる位相変調器や位相の変化を検出する位相復調器が必要となる。この場合、光の波長の変化による位相のずれを補償できなければ、位相の変化を正しく検出することができない。
【0005】
ところで、光通信や光測定の分野では、光スイッチや光減衰器などの光デバイスが使用されるが、これらの中にはマッハ・ツェンダ型干渉計などに可変光位相器(位相シフタ)を組み合わせて構成されるものもある。例えば、特許文献1には、マッハ・ツェンダ干渉計と位相シフタを用いた差分4位相偏移変調の技術が開示されている。
【0006】
従来、光の位相を制御する可変光位相器としては、導波路構造を用いた熱光学位相シフタ、導波路構造の電気光学結晶を用いた電気光学位相シフタ、液晶を用いた液晶光学位相シフタが知られている。しかし、熱光学位相シフタの場合、熱光学効果を利用しているため、応答速度が遅く、雰囲気温度の影響を受け易い。電気光学位相シフタの場合には、電気光学結晶と光ファイバの屈折率差が大きいため、損失(特に挿入損失)が大きくなる。液晶光学位相シフタの場合は、液晶を利用しているため、応答速度が遅いことが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004−516743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、光の波長の変化による位相のずれを補償し、位相の観測・位相の検出に適した光干渉計を提供することである。本発明が解決しようとする他の課題は、外部温度などの影響を受け難くし、応答速度を速めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外部入力光を2つの光路の光に分ける第1のビームスプリッタと、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した透過型の可変光位相器と、2つの光路に分けた光を再度重ね合わせる第2のビームスプリッタを具備し、前記可変光位相器は、入力した直線偏光を円偏光に変換する第1の四分の一波長板と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した円偏光を直線偏光に変換して出力する第2の四分の一波長板を備え、この第2の四分の一波長板から出力する光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる構造とし、前記第2のビームスプリッタは、2つに分けた他方の光路の光と前記可変光位相器の透過光とを重ね合わせて外部出力光とするようにしたことを特徴とする光干渉計である。
【0010】
この場合、前記可変光位相器は、その入力側に、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する第1の偏光子を、その出力側に、互いに直交する2つの直線偏光を偏光合成して出力光とする第2の偏光子を備えた構造とし、それによって偏波無依存型としてもよい。
【0011】
また本発明は、外部入力光を2つの光路の光に分けるビームスプリッタと、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した反射型の可変光位相器と、2つに分けた他方の光路の光を折り返す反射鏡を具備し、前記可変光位相器は、入力した直線偏光を円偏光に変換する四分の一波長板と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した円偏光を反射して光路を逆進させる反射体を備え、前記四分の一波長板を逆進して出力する光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる構造とし、前記ビームスプリッタは、2つに分けた他方の光路の戻り光と前記可変光位相器の戻り光とを重ね合わせて外部出力光とするようにしたことを特徴とする光干渉計である。
【0012】
この場合、前記可変光位相器は、その入出力側に、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離すると共に、互いに直交する2つの直線偏光を偏光合成して出力光とする偏光子を備えた構造とし、それによって偏波無依存型としてもよい。
【0013】
なお、外部から光干渉計への光入出力には、光コリメータを使用するのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光干渉計は、2つに分けた一方の光路に可変光位相器を挿入し、該可変光位相器で光の位相を調整するものであるから、温度など周囲環境の変化に伴う光路の伸縮や光の波長の変化による位相のずれを補償することができる。本発明は光路長を物理的に変えるものではないので、装置全体を温調器に収容して更に温度制御を行うといった従来の大掛かりな設備が不要となり、省電力化並びに応答性の改善が可能となる。これによって、光の位相を観測したり光の位相を検出するのに適した光干渉計が得られる。
【0015】
また本発明は、可変光位相器で位相を変える方式であるから、一つ前の信号光の位相と次の信号光の位相との差を検出する差動の光干渉計が実現できる。また、可変光位相器で干渉計の出力を制御することも可能となる。
【0016】
しかも本発明ではファラデー効果を利用した可変光位相器を用いているので、高速制御が可能であり、しかも温度等の環境条件による影響も受け難い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光干渉計の一実施例を示す説明図。
【図2】その可変光位相器の動作説明図。
【図3】それに用いる透過型の可変光位相器の他の例を示す説明図。
【図4】本発明に係る光干渉計の他の実施例を示す説明図。
【図5】その可変光位相器の動作説明図。
【図6】それに用いる反射型の可変光位相器の他の例を示す説明図。
【図7】本発明に係る光干渉計の更に他の実施例を示す説明図。
【図8】その可変光位相器の電流値と光強度の関係を示す説明図。
【実施例】
【0018】
(第1実施例)
本発明に係る光干渉計の第1実施例を図1に示す。これは、透過型の可変光位相器を用いるマッハ・ツェンダ型の例である。外部入力光を2つの光路の光に分ける第1のビームスプリッタと、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した透過型の可変光位相器12と、2つの光路に分けた光を再度重ね合わせる第2のビームスプリッタ14を具備している。ここでは外部入力光として直線偏光を想定しており、ビームスプリッタとしては例えばハーフミラーを用いる。第1のビームスプリッタ10によって外部入力光を2つの光路の光に分け、該第1のビームスプリッタ10の透過光は第1の反射鏡16で反射されて、第2のビームスプリッタ14に導かれる。他方、第1のビームスプリッタ10の反射光は、第2の反射鏡18で反射されて、可変光位相器12を透過して第2のビームスプリッタ14に導かれる。このようにして第2のビームスプリッタ14に達した2つの光は、偏光方向が同じ状態で合波されて外部出力光となる。
【0019】
ここでは可変光位相器12は、入力した直線偏光を円偏光に変換する第1の四分の一波長板20と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子22と、該可変ファラデー回転子22を透過した円偏光を直線偏光に変換して出力する第2の四分の一波長板24を備えている。可変ファラデー回転子22は、ファラデー素子(磁気光学結晶)と、それに外部磁界を印加する電磁石などの外部磁界印加手段からなり、印加する外部磁界の方向と強度によって透過光のファラデー回転角を任意に変えることができる構造である。前方からの入力光は、第1の四分の一波長板20、可変ファラデー回転子22、第2の四分の一波長板24を順次透過した後、後方への出力光となる。可変ファラデー回転子22によるファラデー回転角に応じて、第2の四分の一波長板24から出力する光の位相を変化させ、出力光とする。そして、前記第2のビームスプリッタ14は、可変光位相器12を通る下側光路の光と、可変光位相器12を通らない上側光路の光を重ね合わせて外部出力光とする。
【0020】
この可変光位相器の動作を図2により説明する。同図のAとBは、同じ可変光位相器12であって、位相制御状態だけが異なる。Aは、ファラデー回転角が0度の場合を示しており、Bは、ファラデー回転角が90度の場合を示している。
【0021】
この場合、入力光は直線偏光であって、第1の四分の一波長板20は、その直線偏光の偏光方向に対して、光学軸が面内で45度回転していることにより、その直線偏光を円偏光に変換する。この変換は可逆である。可変ファラデー回転子22は、第1の四分の一波長板20にて直線偏光から変換された円偏光を透過させる。この可変ファラデー回転子22は、例えば同図のAとBに示すように、ファラデー回転角を45度+0度から45度+90度まで無段階で変化させることができ、円偏光が透過する場合は円偏光の位相を+0度から+90度まで無段階で変化させることができる。この位相の変化は、ファラデー素子への印加磁界の方向と強度によって操作することができ、その印加磁界は電磁石への通電電流によって制御することができる。可変ファラデー回転子22を透過した円偏光は、第2の四分の一波長板24で直線偏光に変換される。このとき、可変ファラデー回転子22にて偏光面の相対的な方向が制御された円偏光は、第2の四分の一波長板24でその偏光面の方向に対応した位相で直線偏光に変換される。従って、可変ファラデー回転子22のファラデー回転角を変化させることにより、円偏光から直線偏光に変換された出力光の位相を変化させることができる。例えば、同図のAとBとでは90度の位相差が生じているが、この位相差は可変ファラデー回転子22の回転角に応じて連続的に変化する。
【0022】
このように出力光の位相変化は、可変ファラデー回転子22でのファラデー回転角の変化によってもたらされる。前述のように、可変ファラデー回転子22のファラデー回転角は、印加磁界の方向と強度によって連続的に可変させることができるが、その印加磁界の方向と強度は励磁コイルの通電電流によって任意の大きさに高速で可変制御することができる。これによって、光位相の連続可変と高速制御が可能であるとともに、温度等の環境条件からの影響を受け難い可変光位相器12を構成することができる。
【0023】
可変光位相器を備えていない通常のマッハ・ツェンダ型光干渉計では、上側光路の光路長L1と下側光路の光路長L2が等しい(L1=L2)場合、同位相で合成されるので光は強め合って出力される。L1−L2=λ×n(波長の整数倍)の場合も、同様に、光は強め合って出力される。一方、L1−L2=λ/2(波長の半分)の場合は、逆位相で合成されるので出力する光は弱め合う。更に、L1−L2=λ/2+λ×n(n:整数)の場合も、光は弱め合って出力する。ここで、波長λが変化した場合は、光路長L1とL2の関係が変わらなくても、λ×n、λ/2+λ×nが変化するため、光の出力は変化する(但し、L1=L2の場合は除く)。即ち、波長の変化が、重ね合わせでの位相のずれになる。そこで、図1に示すように、一方の光路に可変光位相器を挿入することにより、破線で示す位相状態を実線で示す位相状態に変化させることができ、光の波長の変化による位相のずれを補償することができる。
【0024】
なお、図1に示す実施例において、外部入力光が直線偏光ではない場合には、偏光分離型のビームスプリッタを用いると共に、一方の光路(例えば、第1のビームスプリッタと第1の反射鏡との間)に二分の一波長板を挿入する。第1のビームスプリッタによって外部入力光を互いに直交する2つの直線偏光に分け、該第1のビームスプリッタの透過光は二分の一波長板で偏光方向を直交した方向に変換され、第1の反射鏡で反射されて第2のビームスプリッタに導かれる。他方、第1のビームスプリッタの反射光は、第2の反射鏡で反射されて、可変光位相器を透過して第2のビームスプリッタに導かれる。このようにして第2のビームスプリッタに達した2つの光は偏光方向が揃い、合波されて外部出力光となる。挿入した二分の一波長板は、偏光方向を変える機能を果たしている。
【0025】
図3は、本発明の光干渉計に用いることができる透過型の可変光位相器の他の例を示している。光干渉計は、図1に示すようなマッハ・ツェンダ型を前提としている。図1で用いた可変光位相器との主たる相違点は、入力光を直交する2つの直線偏光に偏光分離する第1の偏光子26と、直交する2つの直線偏光を偏光合成する第2の偏光子28を備えている点である。これにより可変光位相器は偏波無依存型となる。光干渉計における第1及び第2のビームスプリッタはハーフミラーなどでよい。
【0026】
Aに示す例は、第1の偏光子26、第1の四分の一波長板30、可変ファラデー回転子32、第2の四分の一波長板34、第2の偏光子28を、その順に配列した構成である。第1の偏光子26は、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する。第1の四分の一波長板30は、偏光分離された2つの直線偏光をそれぞれ円偏光に変換する。この第1の四分の一波長板30は、各光路について光学軸の向きが異なる2枚を並置した構造である。可変ファラデー回転子32は、2つの円偏光をそれぞれその位相を変化させながら透過させる。第2の四分の一波長板34は、可変ファラデー回転子32を透過した2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する。この第2の四分の一波長板34も、各光路について光学軸の向きが異なる2枚を並置した構造である。第2の偏光子28は、第2の四分の一波長板34から出力する2つの直線偏光を偏光合成する。この第2の偏光子28にて偏光合成される出力光の位相が、上記可変ファラデー回転子32の回転角に応じて変化することになる。
【0027】
Bに示す例は、第1の偏光子26、第1の補償素子36、第1の四分の一波長板30、可変ファラデー回転子32、第2の四分の一波長板34、第2の補償素子38、第2の偏光子28を、その順に配列した構成である。前記Aとの相違点は、このBに示す例では、第1の偏光子26の偏光分離出光路に、該第1の偏光子26にて発生する偏波モード分散を補償する第1の補償素子(複屈折結晶)36を、また第2の偏光子28の偏光合成入光路に、該第2の偏光子28にて発生する偏波モード分散を補償する第2の補償素子(複屈折結晶)38を介在させている点である。
【0028】
偏波モード分散は偏光モード間で光の群速度が異なることにより生じるが、複屈折によって偏光の分離・合成を行う偏光子では、偏光モード(偏波成分軸方向)の違いによる光の伝播速度差によって偏波モード分散が生じる。前記Bの構成では、この偏波モード分散を、光の伝播速度が遅い偏波成分軸である遅軸と、速い偏波成分軸である速軸に対して、上記遅軸には速軸、上記速軸には遅軸がそれぞれ配されるように設置した補償素子(複屈折結晶)によって補償している。
【0029】
(第2実施例)
本発明に係る光干渉計の第2実施例を図4に示す。これは、反射型の可変光位相器を用いるマイケルソン型の例である。外部入力光を2つの光路の光に分けるビームスプリッタ50と、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した反射型の可変光位相器52と、2つに分けた他方の光路の光を折り返す反射鏡54を具備している。ここでは外部入力光として直線偏光を想定しており、ビームスプリッタとしては例えばハーフミラーを用いる。ビームスプリッタ50によって外部入力光を互いに直交する2つの光路の光に分け、該ビームスプリッタ50の反射光は反射鏡54で反射して光路を逆進し、前記ビームスプリッタ50に達する。ビームスプリッタ50の透過光は、可変光位相器52に入り、その終端で反射され折り返して前記ビームスプリッタ50に達する。このようにして、ビームスプリッタに達したこれら2つの光は、偏光方向が同じ状態で合波されて外部出力光となる。
【0030】
可変光位相器52は、入力した直線偏光を円偏光に変換する四分の一波長板60と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子62と、該可変ファラデー回転子62を透過した円偏光を反射する反射鏡64を備えている。可変ファラデー回転子62は、ファラデー素子(磁気光学結晶)と、それに外部磁界を印加する電磁石の組み合わせなどからなり、透過光のファラデー回転角を任意に変えることができる構造である。前方からの入力光は、四分の一波長板60、可変ファラデー回転子62を順次透過した後、反射鏡64で反射され、再び可変ファラデー回転子62、四分の一波長板60を逆進して出力光となる。可変ファラデー回転子62のファラデー回転角に応じて、四分の一波長板60から出力する光の位相を変化させ、出力光とする。ビームスプリッタ50は、可変光位相器52を通って折り返す光と、可変光位相器52を通らない光を重ね合わせて外部出力光とする。
【0031】
ところで、可変光位相器を備えていない通常のマイケルソン型光干渉計では、入力光の波長がλ1の場合、上側の往復光路長をL1、右側の往復光路長をL2としたとき、L1−L2=λ1×nとなるように構成されており、強め合った光が出力される。しかし、入力光の波長がλ2に変化すると、L1−L2≠λ2×nとなるため、光干渉計からは強め合った光は出力されなくなる。ここで、一方の光路に可変光位相器を挿入して光の位相を(λ2/λ1×2π×n)シフトさせると、見掛け上の光路長差をL1−L2=λ2×mとすることができ、光干渉計からは強め合った光が出力される。なお、位相は周期性を有するので、λ2/λ1×2π×nは−π〜0〜+πの位相に置き換えることができ、そのため可変光位相器の位相シフト量も−π〜0〜+πで十分となる。
【0032】
なお、図4に示す実施例において、外部入力光が直線偏光ではない場合には、偏光分離型のビームスプリッタを用いると共に、一方の光路(例えば、反射鏡で反射される光路)に四分の一波長板を挿入する。ビームスプリッタによって外部入力光を互いに直交する2つの光路の光に分け、ビームスプリッタの反射光は、四分の一波長板を透過し、反射鏡で反射して光路を逆進し、再び四分の一波長板を透過して前記ビームスプリッタに達する。ビームスプリッタの反射光は、四分の一波長板を往復する過程で偏光方向を直交した方向に変換される。ビームスプリッタの透過光は、可変光位相器に入り、その終端で反射され折り返して前記ビームスプリッタに達する。このようにして、ビームスプリッタに達したこれら2つの光は偏光方向が揃い、合波されて外部出力光となる。上記の四分の一波長板は、偏光方向を変える機能を果たしている。
【0033】
図5は、本発明の光干渉計に用いる反射型の可変光位相器の他の例を示している。光干渉計は、図4に示すようなマイケルソン型を前提としている。図4で用いた可変光位相器との相違点は、これらの可変光位相器は、入力光を直交する2つの直線偏光に偏光分離・合成する偏光子を備えている点である。これにより可変光位相器は偏波無依存型となり、そのため光干渉計におけるビームスプリッタはハーフミラーなどでよい。
【0034】
Aに示す例は、偏光子70、四分の一波長板72、可変ファラデー回転子74、反射鏡76を、その順に配列した構成である。偏光子70は、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する。四分の一波長板72は、偏光分離された2つの直線偏光をそれぞれ円偏光に変換する。この四分の一波長板72は、各光路について光学軸の向きが異なる2枚を並置した構造である。可変ファラデー回転子74は、2つの円偏光をそれぞれ位相を変化させながら透過させ、各透過光は反射鏡76に達して反射する。戻り光(2つの円偏光)は、可変ファラデー回転子74でそれぞれ位相を変化させながら透過し、四分の一波長板72で2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換し、偏光子70で2つの直線偏光を偏光合成する。この偏光子70にて偏光合成する出力光の位相が、上記可変ファラデー回転子74の回転角に応じて変化することになる。
【0035】
Bに示す例が、前記Aに示す例と異なる点は、偏光子70と四分の一波長板72との間に、補償素子(複屈折結晶)78を介在させている点である。即ち、偏光子70、補償素子78、四分の一波長板72、可変ファラデー回転子74、反射鏡76を、その順に配列した構成である。補償素子(複屈折結晶)78は、偏光子70にて発生する偏波モード分散を補償する機能を果たしている。
【0036】
図6は、本発明の光干渉計に用いる反射型の可変光位相器の他の例を示している。光干渉計は、図4に示すようなマイケルソン型を前提としている。これらの可変光位相器は、入力光を直交する2つの直線偏光に偏光分離・合成する偏光子を備えている。これにより可変光位相器は偏波無依存型となる。光干渉計におけるビームスプリッタはハーフミラーなどでよい。
【0037】
Aに示す例は、偏光子70、第1の四分の一波長板72、可変ファラデー回転子74、第2の四分の一波長板80、プリズム82を、その順に配列した構成である。偏光子70は、入力光を互いに直交する2つのの直線偏光に偏光分離する。第1の四分の一波長板72は、偏光分離された2つの直線偏光をそれぞれ円偏光に変換する。この第1の四分の一波長板72は、各光路について光学軸の向きが異なる2枚を並置した構造である。可変ファラデー回転子74は、2つの円偏光をそれぞれ位相を変化させながら透過させ、第2の四分の一波長板80は、2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する。そしてプリズム82で上段光路と下段光路を入れ替え、戻り光とする。戻り光は、第2の四分の一波長板80で直線偏光を円偏光に変換し、2つの円偏光は可変ファラデー回転子74でそれぞれ位相を変化させながら透過し、第1の四分の一波長板72で2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換し、偏光子70で2つの直線偏光を偏光合成する。この偏光子70にて偏光合成される出力光の位相が、前記可変ファラデー回転子74の回転角に応じて変化する。
【0038】
Bに示す例は、偏光子70、四分の一波長板72、可変ファラデー回転子74、レンズ84、反射鏡76を、その順に配列した構成である。偏光子70は、入力光を互いに直交する2つのの直線偏光に偏光分離する。四分の一波長板72は、偏光分離された2つの直線偏光をそれぞれ円偏光に変換する。この四分の一波長板72は、各光路について光学軸の向きが異なる2枚を並置した構造である。可変ファラデー回転子74は、2つの円偏光をそれぞれ位相を変化させながら透過させ、レンズ84で向きを変え、該レンズ84の焦点に位置する反射鏡76で反射して上段光路と下段光路を入れ替え、戻り光とする。戻り光(2つの円偏光)は、可変ファラデー回転子74でそれぞれ位相を変化させながら透過し、四分の一波長板72で2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換し、偏光子70で2つの直線偏光を偏光合成する。この偏光子70にて偏光合成される出力光の位相が、前記可変ファラデー回転子74の回転角に応じて変化する。
【0039】
これら図6のA及びBに示す構成では、往路と復路で光路を入れ替えるため、本質的に偏波モード分散が生じることはなく、補償素子を組み込む必要はなくなる。
【0040】
図4に示すように、マイケルソン型光干渉計の場合、反射型の可変光位相器を組み込むと、その内部の反射部材が利用できるため、反射鏡は1個で済む。しかし、反射型ではなく、透過型の可変光位相器を用いることも可能である。その場合は、当然のことながら、両方の光路にそれぞれ反射鏡を設けることになる。
【0041】
図7は、透過型の可変光位相器を用いるマイケルソン型光干渉計の例を示している。外部入力光を2つの光路の光に分けるビームスプリッタ50と、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した透過型の可変光位相器86と、2つに分けた両方の光路の光をそれぞれ折り返す反射鏡54,88を具備している。光源90からの光を光ファイバ92で導き、レンズ94で平行光束にして外部入力光とし、ビームスプリッタ50に入力する。該ビームスプリッタ50から得られる外部出力光は、光パワー受光器96で検出される。
【0042】
この光干渉計は、可変光位相器を構成している可変ファラデー回転子の電磁石への通電電流により、図8に示すような光強度特性を呈する。この特性から、可変光位相器によって光干渉計の光出力強度を制御できることが確認できる。このことは、可変光位相器で光の位相をシフトさせて、光の波長の変化を補償した光干渉計が実現できることを示している。
【符号の説明】
【0043】
10 第1のビームスプリッタ
12 可変光位相器
14 第2のビームスプリッタ
16,18 反射鏡
20 第1の四分の一波長板
22 可変ファラデー回転子
24 第2の四分の一波長板
50 ビームスプリッタ
52 可変光位相器
54 反射鏡
60 四分の一波長板
62 可変ファラデー回転子
64 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部入力光を2つの光路の光に分ける第1のビームスプリッタと、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した透過型の可変光位相器と、2つの光路に分けた光を再度重ね合わせる第2のビームスプリッタを具備し、前記可変光位相器は、入力した直線偏光を円偏光に変換する第1の四分の一波長板と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した円偏光を直線偏光に変換して出力する第2の四分の一波長板を備え、この第2の四分の一波長板から出力する光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる構造とし、前記第2のビームスプリッタは、2つに分けた他方の光路の光と前記可変光位相器の透過光とを重ね合わせて外部出力光とするようにしたことを特徴とする光干渉計。
【請求項2】
前記可変光位相器は、その入力側に、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する第1の偏光子を、その出力側に、互いに直交する2つの直線偏光を偏光合成して出力光とする第2の偏光子を備え、偏波無依存型とした請求項1記載の光干渉計。
【請求項3】
外部入力光を2つの光路の光に分けるビームスプリッタと、2つに分けた一方の光路に挿入されるファラデー効果を利用した反射型の可変光位相器と、2つに分けた他方の光路の光を折り返す反射鏡を具備し、前記可変光位相器は、入力した直線偏光を円偏光に変換する四分の一波長板と、その円偏光を、偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した円偏光を反射して光路を逆進させる反射体を備え、前記四分の一波長板を逆進して出力する光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる構造とし、前記ビームスプリッタは、2つに分けた他方の光路の戻り光と前記可変光位相器の戻り光とを重ね合わせて外部出力光とするようにしたことを特徴とする光干渉計。
【請求項4】
前記可変光位相器は、その入出力側に、入力光を互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離すると共に、互いに直交する2つの直線偏光を偏光合成して出力光とする偏光子を備え、偏波無依存型とした請求項3記載の光干渉計。
【請求項5】
外部から光干渉計への光入出力に光コリメータを使用する請求項1乃至4のいずれかに記載の光干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−13662(P2012−13662A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153332(P2010−153332)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】