説明

光情報記録媒体、光情報記録再生装置、及び光情報記録再生方法

【課題】位相共役光を得るためのミラーとその駆動部を必要とすることなく、位相共役光によって情報の再生を可能とし、かつ、記録密度を低下させない、ホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】干渉パターンが記録される記録層402と、情報の記録時に、記録層を通過した信号光4Bと参照光4Aを吸収する第1の状態と、情報の再生時に、参照光を反射過させる第2の状態と、の間で可逆的に変化可能である光吸収/反射層406と、を備え、光吸収/反射層を反射した参照光を位相共役光として生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを用いて情報を記録する光情報記録媒体、及びその媒体を用いた光情報記録再生装置、及びその媒体を用いて光情報の記録再生を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、青紫色半導体レーザを用いた、Blu−ray Disc(BD)規格により、民生用においても50GB程度の記録密度を持つ光ディスクの商品化が可能となってきた。今後は、光ディスクでも100GB〜1TBというHDD(Hard Disc Drive)容量と同程度まで大容量化が望まれる。
【0003】
しかしながら、このような超高密度を光ディスクで実現するためには、短波長化と対物レンズ高NA化による高密度化技術とは異なる新しい方式による高密度化技術が必要である。
【0004】
次世代のストレージ技術に関する研究が行われる中、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録するホログラム記録技術が注目を集めている。ホログラム記録技術とは、空間光変調器により2次元的に変調されたページデータの情報を有する信号光を、記録媒体の内部で参照光と重ね合わせ、その時に生じる干渉縞パターンによって記録媒体内に屈折率変調を生じさせることで情報を記録媒体に記録する技術である。
【0005】
情報の再生時には、記録時に用いた参照光を記録媒体に照射すると、記録媒体中に記録されているホログラムが回折格子のように作用して回折光を生じる。この回折光が記録した信号光と位相情報を含めて同一の光として再生される。
【0006】
再生された信号光は、CMOSやCCDなどの光検出器を用いて2次元的に高速に検出される。このようにホログラム記録技術は、1つのホログラムによって2次元的な情報を一気に光記録媒体に記録し、さらにこの情報を再生することを可能とするものであり、そして、記録媒体のある場所に複数のページデータを重ね書きすることができるため、大容量かつ高速な情報の記録再生を果たすことができる。
【0007】
ホログラム記録技術として、例えば特開2004−272268号公報(特許文献1)に記載されたものがある。本公報には、信号光束をレンズで光情報記録媒体に集光すると同時に、平行光束の参照光を照射して干渉させてホログラムの記録を行い、さらに参照光の光記録媒体への入射角度を変えながら異なるページデータを空間光変調器に表示して多重記録を行う、いわゆる角度多重記録方式が記載されている。
【0008】
本公報には、信号光をレンズで集光してそのビームウエストに開口(空間フィルタ)を配することにより、隣接するホログラムの間隔を短くすることができ、従来の角度多重記録方式に比べて記録密度/容量を増大させる技術が記載されている。
【0009】
さらに、他のホログラム記録技術として、例えばWO2004−102542号公報(特許文献2)がある。本公報には、1つの空間光変調器において内側の画素からの光を信号光、外側の輪帯状の画素からの光を参照光として、両光束を同じレンズで光記録媒体に集光し、レンズの焦点面付近で信号光と参照光を干渉させてホログラムを記録するシフト多重方式を用いた例が記述されている。
【0010】
ところで、光情報記録媒体に記録された情報を再生する際に、参照光の位相共役光を用いることで、記録系の信号検出用カメラなどの光学部品を再生系として用いることができることがIan Redmond:Technical Digest ODS(2006)、MA1.(非特許文献1)に記載されている。
【0011】
さらに、特開2002−170247号公報(特許文献3)には、ホログラム記録媒体が反射層を有し、参照光が反射層で反射して得られた位相共役光を用いてホログラム記録媒体に記録された情報の再生を行うホログラム記録再生方法が記載されている。
【0012】
さらに、Alan Hoskins et. al.:Technical Digest ISOM(2007)、We−J−P01(非特許文献2)には、情報の記録時に、前記信号光と前記参照光を反射せず、前記情報の再生時には、前記参照光を反射して前記位相共役光を生成する反射層が提案されている。
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【特許文献2】WO2004−102542号公報
【特許文献3】特開2002−170247号公報
【非特許文献1】Ian Redmond:Technical Digest ODS(2006)、MA1.
【非特許文献2】Alan Hoskins et. al.:Technical Digest ISOM(2007)、We−J−P01
【非特許文献3】マグネシウム・ニッケル合金薄膜を用いた調光ミラー、表面技術、Vol.56、p.882(2005)
【非特許文献4】Y.Fujita et. al.:Technical Digest ISOM(2006)、Mo−C−03
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献3に記載のホログラム記録媒体を利用した記録再生方法によれば、記録時において参照光が反射層で反射するため、記録媒体を照射する領域が広くなって記録に有する領域が拡大するという課題がある。さらに、信号光も反射層で反射されるために反射した信号光によって記録媒体にホログラムが新たに形成されるという課題がある。特許文献3記載のホログラム記録媒体は、ホログラム記録再生装置の大型化を防ぐことができる半面、この課題によって、記録媒体に対する記録密度が低下してしまうという新たな課題が生じてしまうことを、本発明者は見出した。
【0014】
また、非特許文献2は、単に位相共役系が記録媒体内に収納される可能性を示唆しているのみであって、その具体構成についてはなんらの記載されていない。
【0015】
そこで、本発明は、非特許文献1に記載の位相共役光を得るためのミラーとその駆動部を必要とすることなく、位相共役光によって情報の再生を可能とし、かつ、記録密度の低下を抑制する、具体的なホログラム記録媒体、再生記録装置および再生記録方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
既述の目的は、その一例として、ホログラフィを用いて前記情報を記録及び再生する光情報記録媒体において、情報の記録時に、信号光と参照光を反射せず、情報の再生時には、参照光を反射して位相共役光を生成する反射層を備えることによって達成されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、位相共役光を得るためのミラーとその駆動部を必要とすることなく、位相共役光によって情報の再生を可能とし、かつ、記録密度の低下抑制する、具体的なホログラム記録媒体、再生記録装置および再生記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。図1はホログラフィを利用してデジタル情報を記録および/または再生する光情報記録媒体の記録再生装置を示すブロック図である。
【0019】
光情報記録再生装置10は、ピックアップ11、位相共役光学系12、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14、及び回転モータ50を備えており、光情報記録媒体1は回転モータ50によって回転可能な構成となっている。
【0020】
ピックアップ11は、参照光と信号光を光情報記録媒体1に出射してホログラフィを利用してデジタル情報を記録媒体に記録する役割を果たす。この際、記録する情報信号はコントローラ89によって信号生成回路86を介してピックアップ11内の空間光変調器に送り込まれ、信号光は空間光変調器によって変調される。
【0021】
光情報記録媒体1に記録した情報を再生する場合は、ピックアップ11から出射された参照光の位相共役光12が光情報記録媒体内の反射層によって生成される。位相共役光とは、入力光と同一の波面を保ちながら逆方向に進む光波のことである。位相共役光によって再生される再生光をピックアップ11内の後述する光検出器によって検出し、信号処理回路85によって信号を再生する。なお、信号光がレンズを通過すると波面収差が発生し、ディスク1への信号光の集光状態が悪化するが、位相共役光を再生光として用いることにより再生信号の品質を高めることができる。
【0022】
光情報記録媒体1に照射する参照光と信号光の照射時間は、ピックアップ11内のシャッタの開閉時間をコントローラ89によってシャッタ制御回路87を介して制御することで調整できる。
【0023】
ディスクCure光学系13は、光情報記録媒体1のプリキュアおよびポストキュアに用いる光ビームを生成する役割を果たす。プリキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録する際、所望位置に参照光と信号光を照射する前に予め所定の光ビームを照射する前工程である。ポストキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録した後、該所望の位置に追記不可能とするために所定の光ビームを照射する後工程である。
【0024】
ディスク回転角度検出用光学系14は、光情報記録媒体1の回転角度を検出するために用いられる。光情報記録媒体1を所定の回転角度に調整する場合は、ディスク回転角度検出用光学系14によって回転角度に応じた信号を検出し、検出された信号を用いてコントローラ89によってディスク回転モータ制御回路88を介して光情報記録媒体1の回転角度を制御する事が出来る。
【0025】
光源駆動回路82からは所定の光源駆動電流がピックアップ11、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14内の光源に供給され、各々の光源からは所定の光量で光ビームを発光することができる。
【0026】
また、ピックアップ11、そして、ディスクCure光学系13は、光情報記録媒体1の半径方向に位置をスライドできる機構が設けられており、アクセス制御回路81を介して位置制御がおこなわれる。
【0027】
ところで、ホログラフィを利用した記録技術は、超高密度な情報を記録可能な技術であるがゆえに、例えば光情報記録媒体1の傾きや位置ずれに対する許容誤差が極めて小さくなる傾向がある。
【0028】
従って、ピックアップ11内に、例えば光情報記録媒体1の傾きや位置ずれ等、許容誤差が小さいずれ要因のずれ量を検出する機構を設けて、サーボ信号生成回路83にてサーボ制御用の信号を生成し、サーボ制御回路84を介して該ずれ量を補正するためのサーボ機構を光情報記録再生装置10内に備えても良い。
【0029】
また、ピックアップ11、ディスクCure光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14は、いくつかの光学系構成または全ての光学系構成をひとつに纏めて簡素化しても構わない。
【0030】
図2は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の光学系構成の一例を示したものである。光源301を出射した光ビームはコリメートレンズ302を透過し、シャッタ303に入射する。シャッタ303が開いている時は、光ビームはシャッタ303を通過した後、例えば2分の1波長板などで構成される光学素子304によってP偏光とS偏光の光量比が所望の比になるようになど偏光方向が制御された後、PBS(Polarization Beam Splitter)プリズム305に入射する。
【0031】
PBSプリズム305を透過した光ビームは、ビームエキスパンダ309によって光ビーム径が拡大された後、位相マスク311、リレーレンズ310、そして、PBSプリズム307を透過して空間光変調器308に入射する。
【0032】
空間光変調器308によって情報が付加された信号光ビームは、PBSプリズム307を反射し、リレーレンズ312ならびに空間フィルタ313を伝播する。その後、信号光ビームは対物レンズ325によって光情報記録媒体1に集光する。
【0033】
一方、PBSプリズム305を反射した光ビームは参照光ビームとして働き、偏光方向変換素子324によって記録時または再生時に応じて所定の偏光方向に設定された後、ミラー314ならびにミラー315を経由してガルバノミラー316に入射する。ガルバノミラー316はアクチュエータ317によって角度を調整可能のため、レンズ319とレンズ320を通過した後に情報記録媒体1に入射する参照光ビームの入射角度を、所望の角度に設定することができる。
【0034】
このように信号光ビームと参照光ビームを光情報記録媒体1において、互いに重ね合うように入射させることで、記録媒体内には干渉縞パターンが形成され、このパターンを記録媒体に書き込むことで情報を記録する。また、ガルバノミラー316によって光情報記録媒体1に入射する参照光ビームの入射角度を変化させることができるため、角度多重による記録が可能である。
【0035】
記録した情報を再生する場合は、前述したように参照光ビームを光情報記録媒体1に入射し、光情報記録媒体1を透過した光ビームを光情報記録媒体内の反射層で反射させることで、その位相共役光を生成する。
【0036】
この位相共役光によって再生された再生光ビームは、対物レンズ325、リレーレンズ312ならびに空間フィルタ313を伝播する。その後、再生光ビームはPBSプリズム307を透過して光検出器318に入射し、記録した信号を再生することができる。
【0037】
図3は、光情報記録再生装置10における記録、再生の動作フローを示したものである。図3(a)は、光情報記録再生装置10に光情報記録媒体1を挿入した後、記録または再生の準備が完了するまでの動作フローを示し、図3(b)は準備完了状態から光情報記録媒体1に情報を記録するまでの動作フロー、図3(c)は準備完了状態から光情報記録媒体1に記録した情報を再生するまでの動作フローを示したものである。
【0038】
図3(a)に示すように媒体を挿入すると、光情報記録再生装置10は、例えば挿入された媒体がホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生する媒体であるかどうかディスク判別を行う。
【0039】
ディスク判別の結果、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生する光情報記録媒体であると判断されると、光情報記録再生装置10は光情報記録媒体に設けられたコントロールデータを読み出し、例えば光情報記録媒体に関する情報や、例えば記録や再生時における各種設定条件に関する情報を取得する。
【0040】
コントロールデータの読み出し後は、コントロールデータに応じた各種調整やピックアップ11に関わる学習処理を行い、光情報記録再生装置10は、記録または再生の準備が完了する。
【0041】
準備完了状態から情報を記録するまでの動作フローは図3(b)に示すように、まず記録するデータを受信して、該データに応じた情報をピックアップ11内の空間光変調器に送り込む。
【0042】
その後、光情報記録媒体に高品質の情報を記録できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行い、シーク動作ならびにアドレス再生を繰り返しながらピックアップ11ならびにディスクCure光学系13の位置を光情報記録媒体の所定の位置に配置する。
【0043】
その後、ディスクCure光学系13から出射する光ビームを用いて所定の領域をプリキュアし、ピックアップ11から出射する参照光と信号光を用いてデータを記録する。データを記録した後は、必要に応じてデータをベリファイし、ディスクCure光学系13から出射する光ビームを用いてポストキュアを行う。
【0044】
準備完了状態から記録された情報を再生するまでの動作フローは図3(c)に示すように、光情報記録媒体から高品質の情報を再生できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行う。その後、シーク動作ならびにアドレス再生を繰り返しながらピックアップ11を光情報記録媒体の所定の位置に配置する。その後、ピックアップ11から再生光を出射し、光情報記録媒体に記録された情報を読み出す。
【0045】
図4は、反射層を有する光情報記録媒体の層構造を示す図である。(1)は光情報記録媒体へ情報を記録している状態を示し、(2)は光情報記録媒体から情報を再生している状態を示している。
【0046】
光情報記録媒体1は、光ピックアップ11側から、透明カバー層400、記録層402、光吸収/反射層406、そして保護層412と、を備えている。参照光4Aと信号光4Bとの干渉パターンは、記録層402に記録される。
【0047】
光吸収/反射層406は、情報記録時には参照光4Aと信号光4Bとを吸収し、情報再生時には参照光を反射するように物性が変換する。光吸収/反射層406は、その特性として再生時と記録時との反射率の差が大きいほど良い。
【0048】
ここで、前記反射層を形成する材料の特性としては、再生時の反射率が50%以上であることが必要とされる。この理由を以下に説明する。
【0049】
撮像素子の感度を5×10LSB/(J/m)、OnピクセルとOffピクセルとの間に7ビット以上の分解能が必要であるとすると、
/(5×10×10−6)≒26μJ/m
のエネルギーが必要である。撮像素子の画素数を1024×1024、画素のサイズを4μm×4μmとして、OnピクセルとOffピクセルの比率が1:1であるとすると、撮像素子の光が照射される面積は、
(1024×4μm)×(1024×4μm)/2=8.4×10−6
したがって、撮像素子が必要とするエネルギーは
26×8.4×10−6≒0.2nJ
となる。光源の出力を80mW、ホログラムの回折効率を0.1%、照射時間を0.1
ms、反射前までの光学系の効率を5%とすると、必要な反射率は
0.2×10−9/(80×10−3×0.001×0.1×10−3×0.05)=50%
となる。
【0050】
なお、記録時の反射率は、出願人の検討によれば、20%以下であれば問題ないことが確認できている。
【0051】
光吸収/反射層406は、例えば、回折格子状に形成されたUVレジンの表面に、ITO(酸化インジウムスズ)、エレクトロクロミック(EC)材料としてのマグネシウム・ニッケル合金、パラジウム、ITOの順にスパッタリングすることによって、構成することができる。ITOは導電性を持つため、EC材料を挟んだ2つのITOの層を電極として、EC材料に電圧を印加することで光吸収/反射層406の着色、消色状態が変化する。マグネシウム・ニッケル合金は水素吸蔵合金であり、水素を良く吸収する性質を持っている。通常、この動作温度は訳500度と高いが、パラジウムの触媒作用により、常温でも水素の吸収・放出が起こるようになる。EC材料としてのマグネシウム・ニッケル合金の特性については参考文献1に記載されている。また、EC材料としては、同じ効果が得られるのであれば、マグネシウム・ニッケル合金に他の成分を加えた改質材料を用いることもできる。さらなる詳細については、例えば非特許文献3に記載がある。
【0052】
情報記録時には光吸収/反射層406は消色状態となって、記録層402を通過した参照光4Aと信号光4Bとを吸収する。情報再生時には着色状態になって、参照光を反射させ、光吸収/反射層406を反射した参照光4Aは位相共役光4Cとなる。
【0053】
図1に符号100として示すように、光情報記録再生装置は、光情報記録媒体の反射特性を変更させるための特性変更機構として、参考文献2に記載されているような、光情報記録媒体の電極層に電圧を印加する方法に準じた電圧印加回路を備える様にすればよい。すなわち、スピンドルモータのロータ側コイルに交流電流を印加することで、ステータ側のコイルに誘導電流を発生させ、この誘導電流を整流化した電圧を光情報記録媒体の電極層に印加する構成とする。この構成により、非接触で電圧を印加することが可能であるため、安定した電圧印加が可能となる。さらなる詳細については、例えば非特許文献4に記載がある。
【0054】
参照光4Aが情報記録媒体に照射された方向に沿って、光吸収/反射層406が参照光4Aを反射して位相共役光4Cとするために、光吸収/反射層406は、図5に示すようにブレーズ形状(鋸歯形状)の反射型回析挌子を備えている。
【0055】
反射型回折格子によって生成する参照光4Aのm次回折光を位相共役光4Cとする場合は、参照光を格子の斜面に対して垂直に入射させればよく、かつ、次の(1)と(2)が成立すればよい。
α=θ・・・(1)
α:格子の法線に対する参照光及び位相共役光がそれぞれ成す角度
θ:格子の斜面の角度
P=(mλ)/(2n×sinα)・・・(2)
P:格子のピッチ
λ:参照光の波長
n:反射型回折格子を取り囲む媒質の屈折率
例えば、入射角30度の参照光に対して1次(m=1)回析光が入射光線に対して逆向きに進行するように回析されるようブレーズ格子を設計すると、
λ=0.405μm、α=30°、格子の斜面の角度θ=α=30°、n=1.5の場合、格子のピッチ(P)=0.405/2×1.5sin30°=0.27μmにすればよい。
【0056】
図6に示すように、上記反射型回折格子の層の有無は、例えばBD規格におけるBCA(Burst Cutting Area)に相当する領域にフラグを持たせて判別することにより、光情報記録再生装置の利便性を高めることができる。また、上記光吸収/反射層の着色時と消色時における、それぞれの反射率、吸収率、透過率の情報をBCAに相当する領域に持たせてレーザの光量の決定に利用することにより、光情報記録再生装置の利便性を高めることができる。
【0057】
また、上記光情報媒体に関する情報は、現行のBDドライブ等との互換性を確保するために、BD再生用レーザで読み取り可能な構成としても、もちろん構わない。
【0058】
以上説明したように、本発明に係わる光情報記録媒体によれば、前記光情報記録媒体は、前記情報の再生時に前記参照光の位相共役光を生成するための反射層を内部に備えており、情報の記録時に、信号光および参照光を該反射層によって反射させず、情報の再生時は、参照光を反射層で反射させて位相共役光を得ているために、位相共役光を得るためのミラーとその駆動部を必要とすることなく、位相共役光によって情報の再生を可能とし、かつ、記録密度を低下させない情報の記録と再生とを実現することができる。
【0059】
さらに、反射層の形状を図5に示すようにブレーズ形状の反射型回析格子になるように構成することにより、参照光と逆方向に進む位相共役光を生成でき、光情報記録媒体に対する記録密度を高くすることができる。
【0060】
なお、ここまでは主として記録媒体がディスクの場合で説明してきたが、もちろんカード型媒体やその他形状の媒体であっても構わない。
【0061】
なお、他の変形例としては、ホログラフィを用いて情報を記録する光情報記録媒体において、光情報記録媒体は、信号光と参照光とで生じる干渉パターンが記録される記録層と、情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、記録層を通過した信号光と参照光を吸収および/または透過することが可能な層とを備えた光情報記録媒体であっても良い。
【0062】
また、他の変形例としては、ホログラフィを用いて情報を記録及び再生する光情報記録媒体において、光情報記録媒体は、信号光と参照光とで生じる干渉パターンが記録される記録層と、情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、記録層を通過した信号光と参照光を吸収および/または透過する第1の状態と、情報を再生するときには、情報を記録するときに比べて、参照光を反射させて位相共役光を生成する第2の状態とに変化可能である光吸収/反射層とを備えた光情報記録媒体であっても良い。
【0063】
また、他の変形例としては、ホログラフィを用いて情報を再生する再生装置であって、該再生装置は電圧の印加量に応じて反射率の異なる層を有する記録媒体を装着可能であって、参照光を生成する光源と、光源が生成する参照光を記録媒体に照射する照射手段と、照射手段により照射され再生された再生光を処理する信号処理回路と、記録媒体への電圧の印加量を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、情報を再生するときには、記録媒体で位相共役光を得るように電圧印加量を制御する光情報再生装置であっても良いし、情報を記録するときには、信号光と参照光とで生じる干渉パターンを光情報記録媒体に記録し、情報を再生するときには、光情報記録媒体に照射された参照光を該光情報記録媒体の反射層で反射し得られた位相共役光を用いて情報を再生する光情報記録再生装置であって、信号光と参照光を生成する光源と、情報を記録するときには、該情報で信号光を空間光変調する空間光変調器と、空間変調器により変調された信号光を参照光とともに記録媒体に照射する手段と、情報を再生するときには、参照光を記録媒体に照射する照射手段と、照射により照射され再生された再生光を処理する信号処理回路と、記録媒体の反射層の特性を変更させる手段と、を備え、記録媒体の反射層の特性を変更させる手段は、情報を記録するときには、情報を再生するときに比べ、反射層で反射率を抑制させ、情報を再生するときには、情報を記録するときに比べ、反射層で反射率を向上させるように、反射層の特性を変更する光情報記録再生装置であっても良い。
【0064】
また、他の変形例としては、情報を記録するときには、信号光と参照光とで生じる干渉パターンを光情報記録媒体に記録し、情報を再生するときには、光情報記録媒体に照射された参照光を該光情報記録媒体の反射層で反射し得られた位相共役光を用いて情報を再生する光情報記録再生方法であって、信号光と参照光を生成し、情報を記録するときには、該情報で前記信号光を空間光変調し、変調された信号光を参照光とともに記録媒体に照射し、情報を再生するときには、参照光を記録媒体に照射し、参照光が照射され再生された再生光を処理し、情報を記録するときには、情報を再生するときに比べ、反射層で反射率を抑制させ、情報を再生するときには、情報を記録するときに比べ、反射層で反射率を向上させる光情報記録再生方法であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】光情報記録再生装置の実施形態に係わるブロック図である。
【図2】光情報記録再生装置内のピックアップの実施形態の構成を示す図である。
【図3】光情報記録再生装置の動作フローの実施形態を示すブロック図である。
【図4】光情報記録媒体の実施形態に係わる層構造を示す図である。
【図5】図4に係わる光情報記録媒体の光反射層の界面形状を拡大して示す図である。
【図6】光吸収/反射層の情報をBCA領域に持たせる構成を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 光情報記録媒体
10 光情報記録再生装置
11 ピックアップ
12 位相共役光学系
13 ディスクCure光学系
14 ディスク回転角度検出用光学系
50 回転モータ
81 アクセス制御回路
82 光源駆動回路
83 サーボ信号生成回路
84 サーボ制御回路
85 信号処理回路
86 信号生成回路
87 シャッタ制御回路
88 ディスク回転モータ制御回路
89 コントローラ
100 特性変更機構
301 光源
302 コリメートレンズ
303 シャッタ
304 光学素子
305 偏光ビームスプリッタ
306 信号光
307 偏光ビームスプリッタ
308 空間光変調器
309 ビームエキスパンダ
310 リレーレンズ
311 位相マスク
312 リレーレンズ
313 空間フィルタ
314 ミラー
315 ミラー
316 ガルバノミラー
317 アクチュエータ
318 光検出器
319 レンズ
320 レンズ
324 偏光方向変換素子
325 対物レンズ
400 透明カバー層
402 記録層
406 光吸収/反射層
412 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィを用いて情報を記録及び再生する光情報記録媒体において、
前記光情報記録媒体は、信号光と参照光とで生じる干渉パターンが記録される記録層と、
情報を記録するときには、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収する第1の状態と、情報を再生するときには、前記参照光を反射させて位相共役光を生成する第2の状態と、の間で可逆的に変化可能である光吸収/反射層と、
を備えた光情報記録媒体。
【請求項2】
前記光吸収/反射層は、電圧の印加の有無によって反射率が変化するエレクトロクロミック材料から構成される事を特徴とする、請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記光吸収/反射層が回析格子の形状を有することを特徴とする、請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記光吸収/反射層は、回折格子状に形成されたUVレジン上に、エレクトロクロミック層を形成することで構成されてなる、請求項3記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
前記光吸収/反射層の回折格子の形状がブレーズ形状であることを特徴とする、請求項3記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
前記光吸収/反射層を構成するエレクトロクロミック材料が、マグネシウム・ニッケル合金であることを特徴とする、請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
前記光吸収/反射層の情報再生時の反射率が50%以上である事を特徴とする、請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
ホログラフィを用いて情報を記録する光情報記録媒体において、
前記光情報記録媒体は、信号光と参照光とで生じる干渉パターンが記録される記録層と、
情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層と、
を備えた光情報記録媒体。
【請求項9】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層は、電圧の印加量に応じて反射率が変化するエレクトロクロミック材料から構成される、
請求項8記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層は、回析格子の形状である、
請求項9記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層は、回折格子状に形成されたUVレジン上に、エレクトロクロミック層を形成することで構成される、
請求項9記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層は、ブレーズ形状の回折格子である、
請求項10記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層を構成するエレクトロクロミック材料が、マグネシウム・ニッケル合金である、
請求項9記載の光情報記録媒体。
【請求項14】
前記情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過することが可能な層は、記録の際は反射率が20%以下である、
請求項8記載の光情報記録媒体。
【請求項15】
ホログラフィを用いて情報を記録及び再生する光情報記録媒体において、
前記光情報記録媒体は、信号光と参照光とで生じる干渉パターンが記録される記録層と、
情報を記録するときには、情報を再生するときに比べて、前記記録層を通過した前記信号光と前記参照光を吸収および/または透過する第1の状態と、情報を再生するときには、情報を記録するときに比べて、前記参照光を反射させて位相共役光を生成する第2の状態とに変化可能である光吸収/反射層と、
を備えた光情報記録媒体。
【請求項16】
ホロフラフィを用いて情報を再生する再生装置であって、該再生装置は電圧の印加量に応じて反射率の異なる層を有する記録媒体を装着可能であって、
参照光を生成する光源と、
前記光源が生成する参照光を記録媒体に照射する照射手段と、
前記照射手段により照射され再生された再生光を処理する信号処理回路と、
記録媒体への電圧の印加量を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、情報を再生するときには、記録媒体で位相共役光を得るように電圧印加量を制御する、
光情報再生装置。
【請求項17】
情報を記録するときには、信号光と参照光とで生じる干渉パターンを光情報記録媒体に記録し、情報を再生するときには、光情報記録媒体に照射された参照光を該光情報記録媒体の反射層で反射し得られた位相共役光を用いて情報を再生する光情報記録再生装置であって、
信号光と参照光を生成する光源と、
情報を記録するときには、該情報で前記信号光を空間光変調する空間光変調器と、
前記空間変調器により変調された信号光を参照光とともに記録媒体に照射する手段と、
情報を再生するときには、参照光を記録媒体に照射する照射手段と、
前記照射により照射され再生された再生光を処理する信号処理回路と、
記録媒体の反射層の特性を変更させる手段と、
を備え、
前記記録媒体の反射層の特性を変更させる手段は、情報を記録するときには、情報を再生するときに比べ、前記反射層で反射率を抑制させ、情報を再生するときには、情報を記録するときに比べ、前記反射層で反射率を向上させるように、前記反射層の特性を変更する、
光情報記録再生装置。
【請求項18】
情報を記録するときには、信号光と参照光とで生じる干渉パターンを光情報記録媒体に記録し、情報を再生するときには、光情報記録媒体に照射された参照光を該光情報記録媒体の反射層で反射し得られた位相共役光を用いて情報を再生する光情報記録再生方法であって、
信号光と参照光を生成し、
情報を記録するときには、該情報で前記信号光を空間光変調し、
前記変調された信号光を参照光とともに記録媒体に照射し、
情報を再生するときには、参照光を記録媒体に照射し、
前記参照光が照射され再生された再生光を処理し、
情報を記録するときには、情報を再生するときに比べ、前記反射層で反射率を抑制させ、
情報を再生するときには、情報を記録するときに比べ、前記反射層で反射率を向上させる、
光情報記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−151907(P2010−151907A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327280(P2008−327280)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(508069958)インフェーズ テクノロジィズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】