説明

光接続器及びその製造方法

【課題】光ファイバと導光部との間の光軸が高精度に合わされ、また、その精度を長期にわたって維持することが可能な光接続器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】レンズ部24を有し、レンズ部24に入射される入射光を所定方向へ導く導光部12と、光ファイバ32を、その端面が導光部12のレンズ部24と対向するように保持する光ファイバ保持部13とを有し、導光部12と光ファイバ保持部13とが一体成型され、導光部12と光ファイバ保持部13との連結部14に空間部41が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバが接続される光接続器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報通信技術または画像投影技術等の分野では、複数の光ファイバからの多数の波長の光を合波させる光合波器や、多重化された光信号を各波長に分けて光ファイバへ導く光分波器などの光接続器が用いられる。
例えば、基板の光ファイバ先端側に、基板と一体成形された凹面鏡を設け、凹面鏡の上方に光学素子を配置し、凹面鏡を光ファイバの光軸と光学素子の光軸との交点位置に配置した光接続装置において、光ファイバが配置される調心溝及び凹面鏡が基板の樹脂成形の際に同時に成形されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光接続器において、光ファイバの保持部と光が入出射される導光部との間では、光ファイバと導光部との間の光軸のずれを極力抑えるために、剛性が高いことが要求される。
しかし、光ファイバの保持部と導光部との間の剛性を高めるために、光ファイバの保持部と導光部との間の断面積を増やすと、例えば、成型時の熱が良好に放散されず、それにより変形が生じて光ファイバと導光部との間の光軸にずれが生じるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、光ファイバと導光部との間の光軸が高精度に合わされ、また、その精度を長期にわたって維持することが可能な光接続器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の光接続器は、レンズ部を有し、前記レンズ部に入出射される入出射光を所定方向へ導く導光部と、
光ファイバを、その端面が前記導光部の前記レンズ部と対向するように保持する光ファイバ保持部とを備え、
前記導光部と前記光ファイバ保持部とが一体成型され、
前記導光部と前記光ファイバ保持部との連結部に空間部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の光接続器において、予め成型された前記導光部をインサート成型することにより前記導光部に対して前記光ファイバ保持部が一体に成型されていることが好ましい。
【0008】
本発明の光接続器において、前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバを挟持して保持する複数部品からなることが好ましい。
【0009】
本発明の光接続器において、前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバを複数保持可能であり、前記導光部は、前記レンズ部を複数有するとともに、複数の前記光ファイバからの光を合波する、または複数の前記光ファイバに対して光を分波するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光接続器の製造方法は、レンズ部を有し、前記レンズ部に入出射される入出射光を所定方向へ導く導光部と、光ファイバを、その端面が前記導光部の前記レンズ部と対向するように保持する光ファイバ保持部とを有する光接続器の製造方法であって、
予め成型した前記導光部に対し、インサート成型によって前記光ファイバ保持部を一体成型し、前記導光部の前記レンズ部を覆うように前記導光部と前記光ファイバ保持部との間に配置した型部材を前記光ファイバ保持部の一体成型後に抜き取り、前記導光部と前記光ファイバ保持部との連結部に空間部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光接続器によれば、導光部と光ファイバ保持部とが一体成型とされ、導光部と光ファイバ保持部との連結部に空間部が形成された構造であるので、煩雑な調心作業を行うことなく、導光部のレンズ部に対して光ファイバを高い調心精度で配置させることができる。また、調心機構などが不要となるので、小型化を図りつつ耐振性及び信頼性を高めることができる。また、生産性の向上による低コスト化を図ることができる。しかも、導光部と光ファイバ保持部との連結部に形成された空間部によって冷却効率が高められるので、成型後に良好かつ迅速に放熱させることができ、成型時における熱による変形や光軸ずれをなくし、レンズ部に対する光ファイバの高い調心精度を得ることができる。また、連結部の厚さを大きくすることにより、高い剛性を得ることができ、高い調心精度を長期にわたって維持させることができる。つまり、剛性及び放熱性の両立を図ることができる。そして、本発明の光接続器を、レンズ部を複数有して光を合波する光合波器や光を分波する光分波器とした場合、複数のレンズ部において高い調心精度を得ることができ、合波または分波の精度が良好となる。
また、本発明の光接続器の製造方法によれば、剛性及び放熱性の両立が図られ、高い調心精度を長期にわたって維持させることができる光接続器を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光接続器の実施形態例を示す光合波器の斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】光合波器の平面図である。
【図4】光合波器の一部の平面図である。
【図5】光合波器の変形例を示す斜視図である。
【図6】光合波器の製造方法を示す合波部の斜視図である。
【図7】光合波器の製造方法を示す断面図である。
【図8】光合波器の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光接続器及びその製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、光接続器として、波長の異なる複数の光を合波させて多重化する画像投影装置などに用いられる光合波器を例示して説明する。
【0014】
図1から図3に示すように、光合波器(光接続器)11は、導光部12と、光ファイバ保持部13とを有している。
導光部12は、透光性を有する樹脂材料から成形されたものであり、光入射面22と、光出射面23とを有している。光入射面22には、外側へ突出する複数のレンズ部24が形成されており、これらのレンズ部24が横一列に間隔をあけて配列されている。レンズ部24を有する光入射面22と対向する面は、光入射面22に対して光出射面23側へ傾斜された反射面25とされている。また、この導光部12には、その内部に多層膜フィルタ26が設けられている。そして、この導光部12では、レンズ部24から入射した光が多層膜フィルタ26及び反射面25によって同一方向へ反射されて合波され、光出射面23から出射される。なお、図4に示すように、例えば、反射面25に複数の平行な溝25aを等間隔に設けて回折格子を形成しておき、各レンズ部24から入射される光を反射面25の一か所に集中させ、反射面25の回折格子によって入射光を同一方向へ反射させて合波させ、光出射面23から出射させるようにしても良い。
【0015】
光ファイバ保持部13には、複数の光ファイバ保持孔31が形成されており、これらの光ファイバ保持孔31が、導光部12のレンズ部24と同様に、横一列に間隔をあけて配列されている。これらの光ファイバ保持孔31には、それぞれ光ファイバ32の端部が挿入されて保持され、接着剤によって固定されている。これらの光ファイバ32は、その端面が導光部12の各レンズ部24と対向するように光ファイバ保持孔31に保持されている。
【0016】
光ファイバ保持部13は樹脂材料から成形されたものであり、導光部12と光ファイバ保持部13とが一体成型され、連結部14によって連結されている。導光部12と光ファイバ保持部13とを連結する連結部14は、その中央に空間部41を有し、これにより、一対のアーム42を有する構造とされている。
上記構造の光合波器11は、予め成型された導光部12をインサート成型することにより、導光部12に対して光ファイバ保持部13が一体に成型されている。
【0017】
上記光合波器11では、光ファイバ保持部13に保持された各光ファイバ32の端面からR(赤),G(緑),B(青)の可視光が出射される。これらの出射光は、光ファイバ32の端面と対向する各レンズ部24から導光部12内に入り、多層膜フィルタ26及び反射面25によって同一方向へ反射されて合波され、合波された光が光出射面23から出射され、画像や映像として投影される。
【0018】
このように、上記実施形態に係る光合波器11によれば、導光部12と光ファイバ保持部13とが一体成型とされ導光部12と光ファイバ保持部13との連結部14に空間部41が形成されているので、煩雑な調心作業を行うことなく、導光部12のレンズ部24に対して光ファイバ32を高い調心精度で配置させることができる。また、調心機構などが不要となるので、小型化を図りつつ耐振性及び信頼性を高めることができる。また、生産性の向上による低コスト化を図ることができる。
【0019】
また、導光部12と光ファイバ保持部13との連結部14に形成された空間部41によって冷却効率が高められるので、成型後に、良好かつ迅速に放熱させることができる。それにより成型時における熱による変形や光軸ずれをなくし、レンズ部24に対する光ファイバ32の高い調心精度を得ることができる。また、連結部14の厚さを大きくすることにより、高い剛性を得ることができ、高い調心精度を長期にわたって維持させることができる。つまり、剛性及び放熱性の両立を図ることができる。
【0020】
この光合波器11では、各レンズ部24に対して各光ファイバ32が精度良く調心されるので、合波する精度も良好である。これにより、各光ファイバ32からのR,G,Bの可視光を導光部12で合波するときの調心不良をなくし、鮮明な画像や映像を映し出すことができる。
【0021】
次に、光合波器11の変形例を説明する。
図5に示すように、この光合波器11では、光ファイバ保持部13が、複数の部品から構成されている。具体的には、光ファイバ保持部13は、保持部本体51と、この保持部本体51の上部に着脱される押え蓋52とから構成されている。
【0022】
保持部本体51には、その上面に、複数本の保持溝51aが形成されており、これらの保持溝51aに、光ファイバ32の端部が配置される。保持溝51aの幅方向の断面形状としては、円弧状あるいはV字状のいずれであっても良い。そして、これらの保持溝51aに光ファイバ32の端部を配置させた状態で、保持部本体51の上部に押え蓋52を装着すると、それぞれの保持溝51aに配置された光ファイバ32が保持部本体51と押え蓋52とによって挟持されて保持される。なお、押え蓋52にも保持溝を形成するとよい。
【0023】
このように、光ファイバ保持部13を、保持部本体51及び押え蓋52から構成し、光ファイバ32を保持部本体51と押え蓋52とによって挟持して保持する構造によれば、光ファイバ32を極めて容易に所定の位置に保持させることができ、接続作業性の向上を図ることができる。
【0024】
上記の光合波器11を製造するには、まず、図6に示すように、導光部12の部分を成型する。
次に、この導光部12をインサート成型することにより、この導光部12に対して連結部14によって一体的に設けられた光ファイバ保持部13を成型する。
光ファイバ保持部13を導光部12に一体成型する際には、図7及び図8に示すように、導光部12の光入射面22に樹脂が付着しないように、光入射面22側の空間部41となる部分に金型(型部材)61を配置させる。
【0025】
この金型61は、上金型62と下金型63とからなるものであり、上金型62は上方側から配置され、下金型63は下方側から配置される。上金型62には、導光部12の光入射面22側におけるレンズ部24の形成位置に、逃げ凹部62aが形成されている。これにより、上金型62がレンズ部24に干渉してレンズ部24を損傷させるようなことなく、上金型62を上方側から導光部12の光入射面22側に配置させることができる。
また、上金型62及び下金型63を上下方向から配置させるので、これらの上金型62及び下金型63の両側部の連結部14を構成するアーム42の厚さが上金型62や下金型63の型抜きによって制限されることがない。
【0026】
例えば、幅方向の中央部分で分割した上金型62を用い、それぞれの上金型62の分割体を両側方へ移動させて抜く場合、連結部14のアーム42は、上金型62の分割体の抜き方向を考慮して上金型62よりも下方側に形成せざるを得なくなる。これにより、連結部14のアーム42の厚さを大きくして剛性を高めることが困難となる。
【0027】
これに対して、上金型62を上方へ移動させて抜く場合では、上金型62の抜き方向を考慮することなく、連結部14のアーム42の厚さを決定することができる。つまり、連結部14のアーム42の厚さを大きくし、連結部14の剛性を高めることができる。
このように、上記の光合波器の製造方法によれば、剛性及び放熱性の両立が図られ、高い調心精度を長期にわたって維持させることができる光合波器11を容易に製造することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、光接続器として、波長の異なる複数の光信号を合波させて多重化する光合波器を例示して説明したが、本発明は、多重化された光信号を各波長に分けて光ファイバへ導く光分波器にも適用可能であり、また、その他の光ファイバと導光部との間で光信号を伝達する光接続器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
11:光合波器(光接続器)、12:導光部、13:光ファイバ保持部、14:連結部、24:レンズ部、32:光ファイバ、41:空間部、51:保持部本体(部品)、52:押え蓋(部品)、61:金型(型部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部を有し、前記レンズ部に入出射される入出射光を所定方向へ導く導光部と、
光ファイバを、その端面が前記導光部の前記レンズ部と対向するように保持する光ファイバ保持部とを備え、
前記導光部と前記光ファイバ保持部とが一体成型され、
前記導光部と前記光ファイバ保持部との連結部に空間部が形成されていることを特徴とする光接続器。
【請求項2】
請求項1に記載の光接続器であって、
予め成型された前記導光部をインサート成型することにより前記導光部に対して前記光ファイバ保持部が一体に成型されていることを特徴とする光接続器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光接続器であって、
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバを挟持して保持する複数部品からなることを特徴とする光接続器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の光接続器であって、
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバを複数保持可能であり、
前記導光部は、前記レンズ部を複数有するとともに、複数の前記光ファイバからの光を合波する、または複数の前記光ファイバに対して光を分波するものであることを特徴とする光接続器。
【請求項5】
レンズ部を有し、前記レンズ部に入出射される入出射光を所定方向へ導く導光部と、光ファイバを、その端面が前記導光部の前記レンズ部と対向するように保持する光ファイバ保持部とを有する光接続器の製造方法であって、
予め成型した前記導光部に対し、インサート成型によって前記光ファイバ保持部を一体成型し、前記導光部の前記レンズ部を覆うように前記導光部と前記光ファイバ保持部との間に配置した型部材を前記光ファイバ保持部の一体成型後に抜き取り、前記導光部と前記光ファイバ保持部との連結部に空間部を形成することを特徴とする光接続器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−164340(P2011−164340A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26548(P2010−26548)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】