説明

光接続部品

【課題】被覆除去時に被覆付光ファイバが座屈する虞がなく、高い信頼性と組立容易性を備える光接続部品を提供する。
【解決手段】
被覆付光ファイバ11と光学部品12とを互いに接続する光接続部品1であって、被覆付光ファイバ11の被覆14を除去可能な被覆除去部64と、被覆除去部64より前方に設けられる前方孔部61と、被覆除去部64より後方に設けられた後方孔部63と、被覆付光ファイバを把持する把持部71と、把持部71から前方へまたは後方孔部63から後方へ延出して設けられ被覆付光ファイバ11の外周を覆う保護部72と、を備え、保護部72には被覆付き光ファイバ11の外周の一部を開放する開放部72aが設けられており、開放部72aは閉塞可能に構成され、後方孔部63の後方または把持部71の前方には開放部72aが閉塞された状態で保護部72を格納する保護部格納凹部66が形成されていることを特徴とする光接続部品により上記目的が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を接続する光接続部品に関し、特に被覆除去機能を備えた光接続部品に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆付光ファイバを、簡易な接続作業で高精度に位置決めして接続することができる光接続部品が知られている(特許文献1参照)。図11に示すこの光接続部品500は、ガラスファイバの外周に被覆を備えた被覆付光ファイバ511に装着される。光接続部品500は、端部に短尺光ファイバ512を備え、この短尺光ファイバ512に通じるガラスファイバ挿入孔521を有するフェルール520と、ガラスファイバ挿入孔521に挿入された短尺光ファイバ512にガラスファイバを突き合わせた被覆付光ファイバ511を固定する固定部550と、被覆付光ファイバ511の挿入力によりこの被覆付光ファイバ511の端部から被覆を除去する被覆除去部564とを備えている。
【0003】
この光接続部品500の固定部550と被覆除去部564との間には、光ファイバ505を撓ませた状態で収容可能な撓み空間562が形成されている。すなわち、被覆付光ファイバ511を撓み空間562で撓ませた状態で収容するとともに、固定部550において被覆付光ファイバ511を固定することにより、フェルール520のガラスファイバ挿入孔521に挿入されたガラスファイバ505の先端面に、フェルール520に内蔵されている短尺光ファイバ512の接続面に向かう弾性付勢力が付与される。したがって、短尺光ファイバ512と光ファイバ505の接続状態が安定して維持される。
【0004】
このように構成した光接続部品500では、ガラスファイバの外周に被覆を備えた被覆付光ファイバ511を光接続部品500に挿入する際に、被覆除去部564によって被覆付光ファイバ511の端部から被覆が除去され、端部に露出したガラスファイバをガラスファイバ挿入孔521に挿入し、被覆付光ファイバ511を固定部550により固定する。これにより、光接続部品500に挿入する前に被覆除去作業を行う必要がなく、被覆付光ファイバ511を、被覆付光ファイバ511から被覆が除去されたコアファイバの外周を基準として高精度に位置決めして、短尺光ファイバ512に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光接続部品500において、被覆付光ファイバ511は被覆付光ファイバ511に取り付けられた被覆把持部570を把持した状態で光接続部品500に挿入される。この時、被覆付光ファイバ511は、その先端が被覆除去部564に当接するまでは無負荷状態で挿入されるが、被覆付光ファイバ511の先端が被覆除去部564に当接すると被覆付光ファイバ511に座屈荷重が加わり、図12のように固定部550の後方と被覆把持部570との間で被覆付光ファイバ511が座屈する虞があった。
【0007】
具体的には、被覆付光ファイバ511を光接続部品500に固定する際は、被覆付光ファイバ511の被覆把持部570を把持して被覆付光ファイバ511の先端を後方から光接続部品500の突き合わせ位置568まで挿入する。このとき、被覆付光ファイバ511の先端が被覆除去部564に当接して被覆が除去され、コアファイバのみが突き合わせ位置568まで挿入される。
【0008】
この被覆除去部564は突き合わせ位置568よりも後方側に設けられているので、図11のように両光ファイバ511,512を突き合わせた時に固定部550の後方付近に位置する被覆把持部570は、被覆除去の開始時には図12のように固定部550の後端よりも更に後方に離れていることになる。
【0009】
つまり、被覆除去時には固定部550と被覆把持部570との間の側方(被覆付光ファイバ511の径方向)には何ら被覆付光ファイバ511の側方への変形を遮る部材がなく、被覆付光ファイバ511は側方に自由に変形できる。したがって、この領域で被覆付光ファイバ511に座屈が生じると、被覆付光ファイバ511の先端面に圧縮応力を作用させることができないので、被覆を除去できない虞がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、確実に被覆を除去することのできる光接続部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によれば以下が提供される。
(1) 被覆付光ファイバと光学部品とを互いに接続する光接続部品であって、
前記被覆付光ファイバの前端を当接させることにより、前記被覆付光ファイバの前端から被覆を除去可能な被覆除去部と、
前記被覆除去部より前方に設けられ、前記被覆付光ファイバが前記光学部材と付き合わされる前方孔部と、
前記被覆除去部より後方に設けられた後方孔部と、
前記被覆付光ファイバを把持する把持部と、
前記把持部から前方へまたは前記後方孔部から後方へ延出して設けられ、前記被覆付光ファイバの外周を覆う保護部と、を備え、
前記保護部には、前記被覆付き光ファイバの外周の一部を前記被覆付き光ファイバの軸方向と垂直な方向に開放する開放部が設けられており、
前記開放部は、前記被覆付光ファイバの外周を覆った後に閉塞可能に構成され、
前記後方孔部の後方または前記把持部の前方には、前記開放部が閉塞された状態で前記保護部を格納する保護部格納凹部が形成されていることを特徴とする光接続部品。
(2) 前記保護部は前記把持部の前方に延出して設けられ、前記保護部は前記把持部とともに前記被覆付光ファイバに取り付けられる被覆把持部を構成し、
前記把持部は、前記把持部の外周の一部に開口する把持部ファイバ挿入溝を有し、
前記保護部の外径は前記把持部の外径よりも小さく、
前記保護部格納凹部は前記把持部よりも小径であり、
前記開放部は、前記保護部の外周に取り付けられた溝閉塞部材により開閉可能であることを特徴とする(1)に記載の光接続部品。
(3) 前記把持部は、前記把持部ファイバ挿入溝を閉塞可能な蓋部を備え、
前記溝閉塞部材は前記保護部に対して周方向に回転可能に取り付けられており、
前記溝閉塞部材は、径方向に突出する回転案内突起を備え、
前記蓋部により前記把持部ファイバ挿入溝が閉塞される際に、前記蓋部が前記回転案内突起に当接することによって前記溝閉塞部材を回動させ、前記把持部ファイバ挿入溝を閉塞することを特徴とする(2)に記載の光接続部品。
(4) 前記保護部格納凹部の内径は前記後方孔部の内径の4倍以下であることを特徴とする(2)または(3)に記載の光接続部品。
(5) 前記本体には、前記保護部格納凹部よりも後方側に前記把持部を固定する把持部固定凹部が形成されていることを特徴とする(2)から(4)のいずれか一項に記載の光接続部品。
(6) 前記回転案内突起は、前記溝閉塞部材における前記開口の近傍に設けられていることを特徴とする(2)から(5)のいずれか一項に記載の光接続部品。
(7) 前記保護部は前記把持部の前方に延出して設けられ、
前記保護部の外径は前記把持部の外径よりも小さく、
前記保護部格納凹部は前記保護部の外径と略同じ大きさであり、
前記保護部は、周方向に変形して前記開放部を閉塞可能であり、
前記開放部は、周方向に変形して前記開放部を閉塞した状態で前記本体に取り付けられていることを特徴とする(1)に記載の光接続部品。
(8) 前記後方孔部の後方に設けられた保護部格納凹部には、後方に向かって拡径するテーパ部が設けられており、
前記被覆付光ファイバを前記後方孔部に挿入するとともに、前記保護部が前記テーパ部によって周方向に変形して前記開放部が閉塞されることを特徴とする(7)に記載の光接続部品。
(9) 前記保護部格納凹部の内径は前記後方孔部の内径の4倍以下であることを特徴とする(7)または(8)に記載の光接続部品。
(10) 前記本体には、前記保護部格納凹部よりも後方側に前記把持部を固定する把持部固定凹部が形成されていることを特徴とする(7)から(9)のいずれか一項に記載の光接続部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光接続部品によれば、把持部の前方または後方孔部の後方の、被覆除去時に本体から飛び出した部分の被覆付光ファイバの外周が保護部で覆われているので、被覆付光ファイバの側方への変形が抑制され、被覆除去時に被覆付光ファイバが撓む虞がない。したがって、被覆除去時に確実に被覆を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光コネクタを示す断面図である。
【図2】図1に示す光コネクタの被覆把持部を示す斜視図である。
【図3】図1に示す光コネクタの被覆付光ファイバの断面図である。
【図4】図1に示す光コネクタの被覆除去部における被覆除去状況を表した拡大断面図である。
【図5】図1に示す光コネクタの被覆付光ファイバ挿入前の状態を示す断面図である。
【図6】図2に示す被覆把持部の正面図である。
【図7】図1に示す光コネクタの被覆除去時の状態を示す断面図である。
【図8】図1に示す光コネクタの予備撓み付与時の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る光コネクタの被覆把持部を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る光コネクタの被覆付光ファイバの挿入工程を示す断面図である。
【図11】従来の光コネクタを示す断面図である。
【図12】従来の光コネクタの被覆付光ファイバの座屈状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る光接続部品を図面を参照して説明する。
図1は光接続部品である光コネクタの実施形態の例を示す断面図である。光コネクタ1は、被覆付光ファイバ11と、光学部品としての短尺光ファイバ12とを互いに突き合わせて光接続する部品である。
【0015】
光コネクタ1は、コネクタ本体(本体)60と、コネクタ本体60の前方に設けられたフェルール20と、コネクタ本体60の後端に固定される被覆把持部(把持部)70を備えている。なお、ここでいう前方、後方とは光コネクタ1の接続方向の前方、後方であり、例えば前方とは短尺光ファイバ12が位置する図1中の左側であり、後方とは被覆付光ファイバ11が位置する図1中の右側を意味する。
【0016】
短尺光ファイバ12はフェルール20及びコネクタ本体60の中に挿通されており、被覆付光ファイバ11には被覆把持部70が取り付けられコネクタ本体60の後方から挿入されている。被覆付光ファイバ11と短尺光ファイバ12は、コネクタ本体60の中に設定された突き合わせ位置にて突き合わされて両者が光接続されている。
【0017】
フェルール20は、先端面円周縁が面取りされた円柱状に形成され、その内部に固定孔部21が同軸状に形成されている。このフェルール20には、光通信に用いられる一般のジルコニア製フェルールを用いることができる。フェルール20は、ジルコニア製であることにより、耐候性や機械強度に優れる。
【0018】
短尺光ファイバ12は、その端面が研磨され図示しない接着剤によってフェルール20内部に形成された固定孔部21に固定されている。固定孔部21に固定された短尺光ファイバ12は、フェルール20の後部から所定長導出され、コネクタ本体60の前方側に形成された後述する突き合わせ孔部32に挿入されている。
【0019】
被覆把持部(把持部)70は被覆付光ファイバ11の外周を覆うように取り付けられる部材である。この被覆把持部70は、被覆付光ファイバ11に取り付けられた状態でコネクタ本体60の後端で固定されて、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に固定する。被覆把持部70は、作業者が取り扱いやすいように大径に設定された把持部71と、把持部71よりも小径に形成され被覆付光ファイバ11の外周を覆う保護部72と、を備えた段付き円筒形状とされた一体成型品である。この被覆把持部70は被覆付光ファイバ11の先端が保護部72から延出するように被覆付光ファイバ11に取り付けられる。
【0020】
また図2に示すように、被覆把持部70の把持部71の後部には被覆付光ファイバ11の外周に設けられた外被18を収容可能な上面が開放した外被収容凹部71aが設けられており、外被収容凹部71aと保護部72との間には隔壁71bが設けられている。また、把持部71の隔壁71bには、上面に開口する把持部ファイバ挿入溝71cが設けられている。更に、保護部72の上面にも把持部ファイバ挿入溝71cと連続するように保護部ファイバ挿入溝(開放部)72aが設けられている。これら把持部ファイバ挿入溝71c及び保護部ファイバ挿入溝72aの幅は被覆付光ファイバ11の被覆径よりは大きく、外被18よりは小さく設定されており、外被18の除去された被覆付光ファイバ11のみが挿入可能とされている。
【0021】
更に被覆把持部70は、把持部ファイバ挿入溝71cの開口と外被収容凹部71aの開口とを閉塞可能な蓋部73を備えている。また、保護部72の外周には、径方向の一部に開口74aを有する溝閉塞部材74が保護部72に対して回転可能に取り付けられている。この溝閉塞部材74は、径方向に突出する回転案内突起75を備えている。この回転案内突起75は、図示の如く、蓋部73を開放した状態でその先端が把持部71の上面よりも突出されており、蓋部73が閉鎖するときにその内面と当接できるようにその突出長さが設定されている。つまり、保護部ファイバ挿入溝72aは、保護部72が被覆付光ファイバ11の外周を覆った後に蓋部73により閉塞可能とされている。
【0022】
コネクタ本体(本体)60は、被覆付光ファイバ11が挿入される挿入方向に沿って延びる本体部30と、本体部30の長手方向中央に対向して配置される撓み空間形成部40と、本体部30の長手方向後部に対向して配置される固定部50とを備えている。
【0023】
本体部30の前端面には、フェルール20を保持するフェルール保持凹部31が形成されている。このフェルール保持凹部31に短尺光ファイバ12を収容したフェルール20が固定されることで、光コネクタ1の相手側コネクタとの接続部に、一般的に光通信で使われている市販の汎用ジルコニアフェルールが流用可能とされている。
【0024】
更に本体部30の前方領域には、フェルール20の固定孔部21と共に前方孔部61を構成する突き合わせ孔部32が設けられている。この突き合わせ孔部32内に短尺光ファイバ12と被覆付光ファイバ11とが突き合わされる突き合わせ位置が設定されており、フェルール20から所定長導出された短尺光ファイバ12の後端部が突き合わせ位置まで延出されている。
【0025】
本体部30は上半分が平面状に切り欠かれた平面部を有し、この平面部には被覆付光ファイバ11の挿入方向に沿って、被覆付光ファイバ11を突き合わせ孔部32に案内するV溝33が形成されている。後方孔部63から挿入されてきた被覆付光ファイバ11は、このV溝33によって案内されて前方孔部32に導入される。
【0026】
撓み空間形成部40には本体部30と共に撓み空間62を画成する凹部41と、撓み空間形成部40の後端から連続する後方孔部63とが形成されている。光コネクタ1の後方から挿入された被覆付光ファイバ11は、後方孔部63、撓み空間62、突き合わせ孔部32を連通し、短尺光ファイバ12と突き合わせ位置にて突き合わされている。この時、被覆付光ファイバ11は図1に示すように、撓み空間62で撓んだ状態で挿入されているので、被覆付光ファイバ11に弾性復元力が作用してその先端は短尺光ファイバ12側に押圧されている。したがって短尺光ファイバ12とコアファイバ13の接続状態が安定して維持されている。なお、この突き合わせ位置には、屈折率整合グリス68が塗布されていることが好ましい。
【0027】
また、本実施形態では突き合わせ位置と撓み空間62との間で、前方孔部61を形成する本体部30と撓み空間形成部40に被覆除去部64が形成されている。この被覆除去部64は、被覆付光ファイバ11の光コネクタ1への挿入時に負荷される挿入力によって、被覆付光ファイバ11の先端から被覆14を除去するものである。また、被覆除去部64の周囲は除去された被覆14を収容できる除去被覆収容空間67が形成されている。
【0028】
コネクタ本体60の後端に設けられた固定部50は被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に固定する部位である。具体的には、固定部50及び本体部30の後端を挟むように取り付けられた固定部クランプ90によって被覆把持部70の把持部71が固定部50及び本体部30の後端に締め付けられ、被覆付光ファイバ11が光コネクタ1に固定される。
【0029】
コネクタ本体60のうち、固定部50及び本体部30の後端の互いに向かい合う内壁には段付き凹部が形成されており、図5に示すように、被覆把持部70の把持部71の外径D1とほぼ同じ内径D2を有し把持部71を格納できる把持部固定凹部(把持部格納凹部)65と、把持部71の外径D1より小径の内径D3を有し保護部72を格納できる保護部格納凹部66とが設けられている。固定部クランプ90に押圧されて把持部固定凹部65が把持部71を押圧することにより、被覆付光ファイバ11がコネクタ本体60に固定されている。また、保護部格納凹部66は、保護部ファイバ挿入溝72aが蓋部73により閉塞された状態で保護部72を格納する。
【0030】
被覆除去部64の説明に先立ち被覆付光ファイバ11の一例について説明する。図3は被覆付光ファイバの断面図である。
被覆付光ファイバ11は、例えば、中心に外径d3=125μmのコアファイバ13を有し、その外周を覆うように外径d1=250μmの被覆14が設けられている。コアファイバ13は、コアと1層以上のクラッドを有するガラスファイバであり、シングルモードファイバやマルチモードファイバ等、如何なる屈折率分布を有するガラスファイバも適用可能である。
【0031】
被覆14は、その最内層に設けられてコアファイバ13に接する外径d2の第1被覆層であるゼリー体等からなるプライマリ15と、プライマリ15の外側を覆う第2被覆層であるセカンダリ(外被)16とを有しているが、これに限らず、1層或いは2層以上の構成であっても良い。セカンダリ16の最外層には着色層17が設けられていても良い。被覆14を構成する樹脂は、ウレタンアクリレート等の紫外線硬化型樹脂であり、添加物により適宜弾性率等の物性が設定されている。例えば、コアファイバ13に接するプライマリ15は、セカンダリ16より低い弾性率(すなわち軟質)とされている。
【0032】
プライマリ15の密着度は、セカンダリ16よりも、コアファイバ13に対する方が小さく設定(コアファイバ<セカンダリ)されている。つまり、被覆14は、コアファイバ13から剥離し易くなっている。また、被覆付光ファイバ11を構成する各部材のヤング率は、荷重支持体のコアファイバ13が最も大きく、次いでセカンダリ16、プライマリ15の順で小さくなるように設定されている(プライマリ<セカンダリ<コアファイバ)。したがって、被覆付光ファイバ11は、切断端面を加圧することにより、プライマリ15を介して被覆14が剥離・破壊される。
【0033】
図4は被覆除去部64における被覆除去状況を表した拡大断面図である。
被覆除去部64は、被覆付光ファイバ11の切断端面(先端面)を押し付けることにより、コアファイバ13の先端から被覆14を剥離させて除去するよう働く。突き合わせ孔部32の内径dは、コアファイバ13の直径d3よりも大きく、被覆14の外径d1よりも小さく設定されている。また、被覆除去部64は、突き合わせ孔部32の外周を後方に突出させた錐形状に形成されている。これにより、被覆付光ファイバ11の切断端面を被覆除去部64に押し付けると、被覆除去部64の突き合わせ孔部32の周囲が被覆14の切断端面に当接するとともに、コアファイバ13には当接しないことになる。
【0034】
このような構成により、被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入する際に、被覆付光ファイバ11の先端に挿入方向の圧縮応力を作用させることができ、被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を除去することができる。被覆14が除去されたコアファイバ13の前端は突き合わせ孔部32に進入し、図1に示すように短尺光ファイバ12の後端に当接する。すなわち、突き合わせ孔部32内で短尺光ファイバ12と被覆除去されたコアファイバ13とが光接続される。光コネクタ1は、このように被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を除去できるので、現場での作業が簡易になる。また、被覆除去部64を錐形状とすることで、被覆除去を容易にするとともに剥がされた被覆14が外側へ移動しやすいようになされている。
【0035】
なお、上述の説明では被覆除去部64をコネクタ本体60に設けた例を示したが、フェルール20の後端に設けてもよいことはもちろんである。
【0036】
次に、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に装着する手順について説明する。図5は被覆付光ファイバ11挿入前の光コネクタ1の断面図、図6は被覆把持部70の正面図、図7は被覆付光ファイバ11の被覆除去時の光コネクタ1の断面図、図8は被覆付光ファイバ11に予備撓みを付与した状態の光コネクタ1の断面図である。
【0037】
まず、図5に示すように、本体部30のフェルール保持凹部31に短尺光ファイバ12が挿入されたフェルール20を固定する。なお、フェルール20から短尺光ファイバ12を所定長導出させ、この余長部分を本体部30の突き合わせ孔部32に挿入する。また、短尺光ファイバ12の挿入先端(後端)には屈折率整合グリス68を塗布しておく。
【0038】
また、撓み空間形成部40と本体部30とを挟むように蓋部クランプ80を取り付けて両者を押圧して固定する。また、固定部50と本体部30とを挟むように固定部クランプ90を取り付けて両者を押圧して固定する。なお、固定部クランプ90は、後の工程で被覆付光ファイバ11及び被覆把持部70が本体部30と固定部50との間に挿入可能なように、半クランプ状態としておく。また、この時に撓み空間62を狭める先端が二股状の撓み規制部材85を本体部30と撓み空間形成部40の凹部41との間に挿入しておく。
【0039】
また、被覆付光ファイバ11に被覆把持部70を取り付ける。作業者はまず、コネクタ本体60の長さと被覆除去長さと撓み長さとを勘案して先端から所定長の外被18を適当な外被除去手段を用いて除去する。
【0040】
次に、図6(a)に示すように蓋部73が開放され、かつ、保護部ファイバ挿入溝72aと溝閉塞部材74の開口74aとを一致させた状態で、被覆把持部70の上方から被覆付光ファイバ11を被覆把持部70内に挿入する。このとき、図2の如く被覆付光ファイバ11の外被18部分を外被収容凹部71aに収め、外被18が除去された部分が保護部72から延出するように、被覆付光ファイバ11を被覆把持部70内に挿入する。
【0041】
このように、外被収容凹部71a、把持部ファイバ挿入溝71c及び保護部ファイバ挿入溝72aのいずれもが上方に開口しているので、被覆付光ファイバ11を被覆把持部70の上方から挿入するだけでよい。したがって、被覆把持部70を容易に被覆付光ファイバ11に取り付けることができる。
【0042】
次に、被覆付光ファイバ11を被覆把持部70の所定位置まで挿入したら、図6(b)に示すように蓋部73を把持部71に被せて被覆付光ファイバ11が被覆把持部70から抜け出すことを防止する(図2参照)。本実施形態では、蓋部73に設けられた係合凹部73aを、把持部71の外周に設けられた係合凸部71dに係合させることにより、蓋部73を把持部71に対して固定する。
【0043】
この蓋部73が回動するとき、蓋部73が回転案内突起75に当接することによって、溝閉塞部材74が保護部72の外周を回動され、開口74aが保護部ファイバ挿入溝72aからずれて溝閉塞部材74が保護部ファイバ挿入溝72aを閉塞する。このように、被覆把持部70が上述の構成を備えることにより、蓋部73を閉じるという極めて簡単な動作で被覆付光ファイバ11の被覆把持部70への取付作業を完了することができる。
【0044】
次に、図7に示すように、被覆把持部70が取り付けられた被覆付光ファイバ11の把持部71を把持して、光コネクタ1の後方から被覆付光ファイバ11を挿入する。光コネクタ1の後方から挿入された被覆付光ファイバ11は、後方孔部63、撓み空間62を通過し、被覆除去部64に到達する。この時、被覆付光ファイバ11の先端面を更に被覆除去部64に押し付けて、図4で説明したように、被覆付光ファイバ11の被覆14を除去する。
【0045】
図7に示す被覆除去時には、被覆付光ファイバ11には挿入方向に圧縮応力(座屈荷重)が作用し、後方孔部63と把持部71との間で被覆付光ファイバ11が側方に変形することがある。しかし、後方孔部63の後方付近の被覆付光ファイバ11は側方に変形しても、把持部71よりも小径に形成された保護部格納凹部66の内壁に当接するので、側方への大きな変形が阻止される。また、把持部71の前方付近の被覆付光ファイバ11は、被覆把持部70の保護部72が被覆付光ファイバ11の外周を覆っているので被覆付光ファイバ11の側方への変形が阻止されている。また、保護部ファイバ挿入溝72aと溝閉塞部材74との間に空間が存在することになるが、この空間も十分に小さいので、被覆付光ファイバ11がこの空間で撓んだとしても撓み量は小さく、被覆付光ファイバ11の側方への過大な変形が阻止される。
【0046】
つまり、本実施形態に係る光コネクタ1では、被覆付光ファイバ11の被覆除去時に被覆付光ファイバ11が側方に変形しようとしても、側方に障害物としての保護部格納凹部66や保護部72が設けられており、側方への大きな変形が阻止されている。したがって、被覆除去時に被覆付光ファイバ11が側方に過大に変形することがないので、被覆付光ファイバ11の挿入方向に作用する圧縮応力が側方へ過度に逃げることを防止することができる。即ち、被覆付光ファイバ11の先端に挿入方向の圧縮応力を確実に作用させることができるので、被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を確実に除去することができる。そのため、被覆付光ファイバ11が座屈し断線する虞がないので信頼性の高い光コネクタ1を提供することができる。
【0047】
なお被覆把持部70は、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に取り付けた時に本体部30と固定部50との間で固定されるように、保護部格納凹部66の前端面から保護部72の前端との長さ(未挿入長さ)Lが、突き合わせ位置と被覆除去部64の間の距離L1と、撓み長αとを合わせた長さとなる位置に取り付けられている(L=L1+α)。このとき、被覆除去時に側方に変形した被覆付光ファイバ11の側方への変形を保護部格納凹部66の内壁が規制するように、保護部格納凹部66の挿入方向長さL2を撓み長αと同等に設定することが好ましい(L2=α)。
【0048】
また、被覆付光ファイバ11の過大な側方への変形を阻止するために、保護部格納凹部66の内径D3は後方孔部63の内径D4(被覆付光ファイバ11の被覆14の外径)の4倍以下に設定することが好ましい。なお、本実施形態では固定部50の内壁と本体部30の後端に設けた凹部により保護部格納凹部66を形成したが、本体部30の後端に設けたV溝33と固定部50の内壁に設けた凹部により保護部格納凹部66した場合は、V溝33と固定部50側の凹部に内接する仮想内接円の直径が後方孔部63の内径の4倍以下に設定することが好ましい。このようにすれば、被覆付光ファイバ11の先端に挿入と同時に被覆14を除去するのに十分な挿入方向の圧縮応力を確実に作用させることができる。
【0049】
更に被覆付光ファイバ11の挿入を続けることで、図8に示すように、被覆14が除去された被覆付光ファイバ11のうち、コアファイバ13のみが突き合わせ孔部32に挿入されて短尺光ファイバ12と光接続されるとともに、剥がされた被覆14は除去被覆収容空間67に収容される。コアファイバ13の先端が短尺光ファイバ12の後端に当接した後、更に被覆付光ファイバ11を挿入して撓み空間62内に予備撓み11Aを形成する。予備撓み11Aを所定長形成したら、本体部30と固定部50とを固定部クランプ90によって完全にクランプし、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に固定する。
【0050】
なお、本実施形態では被覆14が除去された後に予備撓み11Aが形成される例を挙げて説明したが、予備撓み11Aを形成させながら被覆14を除去するように構成してもよい。
【0051】
この後、撓み規制部材85を引き抜いて撓み空間62を拡大させ、被覆付光ファイバ11の撓み状態を緩和させて、図1に示すように被覆付光ファイバ11及び短尺光ファイバ12の光コネクタ1への装着が完了する。このように、光コネクタ1への装着状態において被覆付光ファイバ11は適度に撓んでいるため、被覆付光ファイバ11は常に短尺光ファイバ12側へ押圧されており被覆付光ファイバ11及び短尺光ファイバ12間の信号のロスが少なく、かつ、撓み状態が緩和されているので被覆付光ファイバ11の屈曲状態に起因する光信号の伝送ロスがない。したがって光の伝送効率に優れた光コネクタ1を提供することができる。
【0052】
なお、上述の実施形態では、溝閉塞部材74が回転案内突起75を備え、蓋部73が回転案内突起75と当接して溝閉塞部材74を回転させて保護部ファイバ挿入溝72aを閉塞する例を挙げて説明したが、本発明はこの形態に限られない。例えば、被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入する前に、作業者が溝閉塞部材74を手で回転させて保護部ファイバ挿入溝72aを閉塞すれば、回転案内突起75を溝閉塞部材74に設けなくてもよいことは明らかである。
【0053】
<第2実施形態>
以上の第1実施形態では、被覆付光ファイバ11に取り付けられる被覆把持部70について、保護部72に回動可能に取り付けられた溝閉塞部材74が保護部ファイバ挿入溝72aを閉塞する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0054】
図9は本発明の第2実施形態に係る光コネクタ100の被覆把持部170を示す斜視図である。第2実施形態に係る光コネクタ100は、コネクタ本体の後部及び被覆把持部のみが上述の第1実施形態と異なるので、異なる部分のみを説明し、同様の部材には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
図9に示すように、第2実施形態に係る被覆把持部170は、作業者が取り扱いやすいように大径に設定された把持部171と、把持部171よりも小径に形成され被覆付光ファイバ11の外周を覆う保護部172とを備えている。この被覆把持部170は被覆付光ファイバ11の先端が保護部172から延出するように被覆付光ファイバ11に取り付けられる。
【0056】
また、把持部171の後部には被覆付光ファイバ11の外被18を収容可能な上面が開放した外被収容凹部171aが設けられており、外被収容凹部171aと保護部172との間には隔壁171bが設けられている。また、把持部171の隔壁171bの上面に開口するように、被覆付光ファイバ11を所定位置に挿入するための把持部ファイバ挿入溝171cが把持部171に設けられている。なお、この把持部ファイバ挿入溝171cの幅は被覆付光ファイバ11の被覆径よりは大きく、外被18よりは小さく設定されており、外被18の除去された被覆付光ファイバ11のみが挿入可能とされている。
【0057】
本実施形態に係る被覆把持部170の保護部172は上面(軸方向と垂直な方向)に保護部ファイバ挿入溝172aが開口した断面U字状に形成されている。被覆付光ファイバ11の挿入時には、保護部ファイバ挿入溝172aが把持部ファイバ挿入溝171cと連続するように保護部172が配置されている。なお、U字状の保護部172は保護部ファイバ挿入溝172aの開口を開閉できるように変形が可能とされている。
【0058】
なお、保護部172は把持部171と一体的に形成しても、別体に形成してもよい。把持部171と保護部172とを樹脂等の射出成形等で一体的に形成すれば部品点数が低減されるので低コストで被覆把持部170を実現できる。また、把持部171を樹脂で形成し、保護部172を金属のプレス加工等により形成すれば、保護部172の寸法精度が向上する。
【0059】
また、被覆把持部170は外被収容凹部171a及び把持部ファイバ挿入溝171cの開口を閉塞する蓋部173を備えている。この蓋部173は、蓋部173に設けられた係合凹部173aと、把持部171に設けられた係合凸部171dとが係合することにより、把持部171に対して固定される。
【0060】
一方、被覆把持部170が挿入固定されるコネクタ本体60の後部には、被覆把持部170の外形に沿った形状の段付き凹部が形成されている。具体的には第2実施形態に係るコネクタ本体60は、被覆把持部170の把持部171の外径とほぼ同じ内径を有して固定部クランプ(不図示)により把持部171を固定する把持部固定凹部165と、被覆把持部170の保護部ファイバ挿入溝172aが閉塞された状態の保護部172の幅と略等しい保護部格納凹部166と、把持部固定凹部165と保護部格納凹部166との間に設けられ保護部格納凹部166から後方に向かって徐々に拡径するテーパ部167とを備えている(図10(a)参照)。このテーパ部167の後端は保護部172のファイバ挿入溝172aが開いた状態での保護部172の幅寸法よりも大きく開口されている。
【0061】
以上のような被覆把持部170が取り付けられた被覆付光ファイバ11の光コネクタ100への装着方法について図9及び図10を参照して説明する。図10は被覆把持部170及びコネクタ本体60の後部を示す断面図である。
【0062】
図9を参照して、作業者は、被覆把持部170の蓋部173が開放された状態で、被覆把持部170の上方から被覆付光ファイバ11を被覆把持部170内に挿入する。このとき、被覆付光ファイバ11の外被18部分が外被収容凹部171aに収められ、外被18が除去された部分が保護部172から延出するように、被覆付光ファイバ11を被覆把持部170内に挿入する。外被収容凹部171a、把持部ファイバ挿入溝171c及び保護部ファイバ挿入溝172aのいずれもが上方に開口しているので、被覆付光ファイバ11を被覆把持部170の上方から挿入するだけでよいので、被覆付光ファイバ11を容易に被覆把持部170に挿入することができる。
【0063】
次に、被覆付光ファイバ11を被覆把持部170の所定位置まで挿入したら、蓋部173の係合凹部173aを把持部171の係合凸部171dに係合させて蓋部173を把持部171に被せ、被覆付光ファイバ11が被覆把持部70から抜け出ることを防止する。
【0064】
蓋部173を固定したら、図10(a)に示すように被覆把持部170が取り付けられた被覆付光ファイバ11を後方からコネクタ本体60へ挿入する。なお、この状態では保護部172の保護部ファイバ挿入溝172aは上方に開放されている。
【0065】
図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態まで被覆付光ファイバ11を前方に挿入すると、保護部172の先端がコネクタ本体60のテーパ部167に当接して更に挿入されると、テーパ部167は前方に向かって徐々に幅が狭くなるため、保護部172はそのファイバ挿入溝172aが徐々に閉塞される。
【0066】
更に被覆付光ファイバ11が前方に挿入され、図10(c)に示すように保護部172の先端が保護部格納凹部166に到達すると、保護部ファイバ挿入溝172aは完全に閉鎖されて被覆付光ファイバ11は保護部172で保護されることになる。
【0067】
本実施形態では、図10(c)に示す状態で被覆付光ファイバ11の先端が被覆除去部64に当接するように被覆付光ファイバ11の先端から被覆把持部170までの長さが設定されている。被覆除去時には、被覆付光ファイバ11には挿入方向に圧縮応力(座屈荷重)が作用するので、後方孔部63と把持部171との間で被覆付光ファイバ11が側方に変形することがある。
【0068】
しかし、後方孔部63の後方付近の被覆付光ファイバ11は側方に変形しても、保護部172と略同じ大きさに形成された保護部格納凹部166の内壁に当接するので、側方への大きな変形が阻止される。また、把持部171の前方付近の被覆付光ファイバ11は、保護部172が被覆付光ファイバ11の外周を覆っているので被覆付光ファイバ11の側方への変形が確実に阻止される。したがって、被覆除去時に被覆付光ファイバ11が側方に過大に変形することがないので、被覆付光ファイバ11の挿入方向に作用する圧縮応力が側方へ過度に逃げることを防止することができる。即ち、被覆付光ファイバ11の先端に挿入方向の圧縮応力を確実に作用させることができるので、被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を確実に除去することができる。そのため、信頼性の高い光コネクタ100を提供することができる。
【0069】
更に被覆付光ファイバ11を前方へ挿入し、図10(d)のように保護部172が完全に保護部格納凹部166内に位置するまで挿入し、被覆付光ファイバ11の光コネクタ100への挿入が完了する。
【0070】
図10(c)から図10(d)にかけて、被覆付光ファイバ11は撓み空間62に予備撓み11Aを形成する。上述の第1実施形態と同様に、被覆14が除去された被覆付光ファイバ11の先端がフェルール20内に挿入された短尺光ファイバ12の後端に突き当った後も被覆付光ファイバ11の挿入を続けると、被覆付光ファイバ11は撓み空間62に予備撓み11Aを形成する。予備撓み11Aを形成する際もコネクタ本体60の後端と把持部171の間の被覆付光ファイバ11の側方には保護部格納凹部166の内壁が存在するので、側方への撓みが抑えられて座屈が生じる虞がない。
【0071】
なお被覆把持部170は、上述の第1実施形態と同様に、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に取り付けた時に本体部30と固定部50との間で固定されるように、保護部格納凹部166の前端面から保護部172の前端との長さ(未挿入長さ)が、突き合わせ位置と被覆除去部64の間の距離と、撓み長とを合わせた長さとなる位置に取り付けられている。このとき、被覆除去時に側方に変形した被覆付光ファイバ11の側方への変形を保護部格納凹部166の内壁が規制するように、保護部格納凹部166の挿入方向長さを撓み長と同等に設定することが好ましい。
【0072】
また、被覆付光ファイバ11の過大な側方への変形を阻止するために、保護部格納凹部166の内径D5は後方孔部63の内径(被覆付光ファイバ11の被覆14の外径)D6の4倍以下に設定することが好ましい。
【0073】
以上の工程の後、上述の第1実施形態と同様に、予備撓みを形成した後、二股状の撓み規制部材85を撓み空間62から引き抜いて、被覆付光ファイバ11の予備撓みの撓み状態を緩和させ、被覆付光ファイバ11を適度に撓ませた状態で光コネクタ100内に固定する。このように、第2実施形態に係る光コネクタ100でも、被覆付光ファイバ11は適度に撓んでいるため、短尺光ファイバ12側へ押圧されており被覆付光ファイバ11と短尺光ファイバ12の間の信号のロスが少なく、かつ、被覆付光ファイバ11の屈曲状態に起因する光信号の伝送ロスがない。したがって光の伝送効率に優れた光コネクタ100を提供することができる。
【0074】
なお、以上の例では保護部172の断面形状をU字状として説明したが、断面V字状としてもよい。また、保護部格納凹部166がファイバ挿入溝172aを閉塞できる形状であれば、保護部172の形状は長手方向に連続した形状でなくともよい。
【0075】
また、上述の例では保護部格納凹部166の後方にテーパ部167を設け、被覆付光ファイバの光コネクタ100への挿入時には、保護部172の先端をテーパ部167に当接させて保護部ファイバ挿入溝172aを閉鎖する構成を示したが、本発明はこの構成に限られることはない。例えば、被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入する前に、作業者が保護部ファイバ挿入溝172aを手で閉塞させた状態で保護部172を保護部格納凹部166に挿入し保護部172をコネクタ本体60に取り付けてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態においては、保護部72,172を把持部71,171の先端に設け、保護部格納凹部66,166を後方孔部63の後方に設けた例を説明したが、これとは逆に、保護部72,172を後方孔部63の後方に延出するように設け、保護部格納凹部66,166を把持部71,171の先端に形成してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0077】
1 光コネクタ、11 被覆付光ファイバ、12 短尺光ファイバ、20 フェルール、30 本体部、40 蓋部、50 固定部、60 コネクタ本体、61 前方孔部、62 撓み空間、63 後方孔部、64 被覆除去部、65 把持部固定凹部(把持部格納凹部)、66 保護部格納凹部、67 除去被覆収容空間、70 被覆把持部、71 把持部、71c 把持部ファイバ挿入溝、72 保護部、72a 保護部ファイバ挿入溝、74 溝閉塞部材、75 回転案内突起、80 蓋部クランプ、90 固定部クランプ、100 光コネクタ、165 把持部固定凹部、166 保護部格納凹部、167 テーパ部、170 被覆把持部、171 把持部、172 保護部、172a保護部ファイバ挿入溝、173蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆付光ファイバと光学部品とを互いに接続する光接続部品であって、
前記被覆付光ファイバの前端を当接させることにより、前記被覆付光ファイバの前端から被覆を除去可能な被覆除去部と、
前記被覆除去部より前方に設けられ、前記被覆付光ファイバが前記光学部材と付き合わされる前方孔部と、
前記被覆除去部より後方に設けられた後方孔部と、
前記被覆付光ファイバを把持する把持部と、
前記把持部から前方へまたは前記後方孔部から後方へ延出して設けられ、前記被覆付光ファイバの外周を覆う保護部と、を備え、
前記保護部には、前記被覆付き光ファイバの外周の一部を前記被覆付き光ファイバの軸方向と垂直な方向に開放する開放部が設けられており、
前記開放部は、前記保護部が前記被覆付光ファイバの外周を覆った後に閉塞可能に構成され、
前記後方孔部の後方または前記把持部の前方には、前記開放部が閉塞された状態で前記保護部を格納する保護部格納凹部が形成されていることを特徴とする光接続部品。
【請求項2】
前記保護部は前記把持部の前方に延出して設けられ、前記保護部は前記把持部とともに前記被覆付光ファイバに取り付けられる被覆把持部を構成し、
前記把持部は、前記把持部の外周の一部に開口する把持部ファイバ挿入溝を有し、
前記保護部の外径は前記把持部の外径よりも小さく、
前記保護部格納凹部は前記把持部よりも小径であり、
前記開放部は、前記保護部の外周に取り付けられた溝閉塞部材により開閉可能であることを特徴とする請求項1に記載の光接続部品。
【請求項3】
前記把持部は、前記把持部ファイバ挿入溝を閉塞可能な蓋部を備え、
前記溝閉塞部材は前記保護部に対して周方向に回転可能に取り付けられており、
前記溝閉塞部材は、径方向に突出する回転案内突起を備え、
前記蓋部により前記把持部ファイバ挿入溝が閉塞される際に、前記蓋部が前記回転案内突起に当接することによって前記溝閉塞部材を回動させ、前記把持部ファイバ挿入溝を閉塞することを特徴とする請求項2に記載の光接続部品。
【請求項4】
前記保護部格納凹部の内径は前記後方孔部の内径の4倍以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の光接続部品。
【請求項5】
前記本体には、前記保護部格納凹部よりも後方側に前記把持部を固定する把持部固定凹部が形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項6】
前記回転案内突起は、前記溝閉塞部材における前記開口の近傍に設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項7】
前記保護部は前記把持部の前方に延出して設けられ、
前記保護部の外径は前記把持部の外径よりも小さく、
前記保護部格納凹部は前記保護部の外径と略同じ大きさであり、
前記保護部は、周方向に変形して前記開放部を閉塞可能であり、
前記開放部は、周方向に変形して前記開放部を閉塞した状態で前記本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光接続部品。
【請求項8】
前記後方孔部の後方に設けられた保護部格納凹部には、後方に向かって拡径するテーパ部が設けられており、
前記被覆付光ファイバを前記後方孔部に挿入するとともに、前記保護部が前記テーパ部によって周方向に変形して前記開放部が閉塞されることを特徴とする請求項7に記載の光接続部品。
【請求項9】
前記保護部格納凹部の内径は前記後方孔部の内径の4倍以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の光接続部品。
【請求項10】
前記本体には、前記保護部格納凹部よりも後方側に前記把持部を固定する把持部固定凹部が形成されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の光接続部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−44759(P2013−44759A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180054(P2011−180054)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】