説明

光放出素子及び該素子の製造方法

キャリア、前記キャリアに配置された半導体チップ、その際、前記半導体チップは、電磁線を発生させるための活性層及び光出射面を有する、前記半導体チップの電気的な接続のための第1の及び第2のコンタクト構造、その際、前記半導体チップは、第1のコンタクト層により第1のコンタクト構造と導電接続しており、かつ第2のコンタクト層により第2のコンタクト構造と導電接続している、前記半導体チップに配置されたパッシベーション層、その際、前記パッシベーション層は、一般式(I)[式中、R1〜R16は、そのつど互いに無関係に、H、CH3、F、Cl又はBrであってよく、かつnは10〜500,000の値を有する]を有する有機ポリマーを含む、を包含する光放出素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、ドイツ連邦共和国特許出願10 2008 057 350.7の優先権を主張するものであり、その開示内容はここに参照をもって組み込まれる。
【0002】
請求項1に従った光放出素子(Strahlungsemittierendes Bauelement)が記載される。
【0003】
光放出素子の広く知れ渡った問題は、これらの素子の効果的な封止を作り出すことである。封止に用いられる材料は、一方では、例えば酸、アルカリ液、ガス及び蒸気に対して非常に良好なバリヤ作用を有するべきであり、しかし同時に、非常に薄い均一な層も形成し、かつ該素子から放出される光に対して透明であるべきである。
【0004】
本発明の実施形態の課題は、パッシベーション層を有し、該パッシベーション層が、酸、アルカリ液、ガス及び蒸気に対して非常に良好なバリヤ作用を有し、かつ同時に該素子から放出される光に対して透明である光放出素子を提供することにある。
【0005】
該課題は、請求項1に従った光放出素子によって解決される。光放出素子の更なる実施形態並びに該光放出素子の製造方法は、更なる特許請求項の主題である。
【0006】
本発明の一実施形態は、キャリア、該キャリアに配置された半導体チップ、その際、該半導体チップは、電磁線を発生させるための活性層及び光出射面(Strahlungsaustrittsflaeche)を有する、該半導体チップの電気的な接続のための第1の及び第2のコンタクト構造、第1の及び第2のコンタクト層、その際、該半導体チップは、第1のコンタクト層により第1のコンタクト構造と導電接続しており、かつ第2のコンタクト層により第2のコンタクト構造と導電接続している、該半導体チップに配置されたパッシベーション層、その際、該パッシベーション層は、一般式(I):
【化1】

[式中、R1〜R16は、そのつど互いに無関係に、H、CH3、F、Cl又はBrであってよく、かつnは10〜500,000の値を有する]を有する有機ポリマーを含むか又は該有機ポリマーから成る、を包含する光放出素子に関する。
【0007】
上記式の有機ポリマーを含むパッシベーション層は、良好な耐疎水性かつ耐化学性を有する。そのためパッシベーション層は、例えば酸、アルカリ液、ガス及び蒸気に対して良好なバリヤ作用を有する。更にパッシベーション層は、該素子から放出される光に対して透明である。パッシベーション層の更なる利点は、非常に薄くかつ均一な層が形成されることができることである。更にパッシベーション層は良好な熱安定性を有する。それは、例えば摩耗といった機械的な負荷に対して良好な耐性も有する。これらの特性によって、パッシベーション層で被せられている光放出素子の部分は環境影響から非常に良好に保護されている。
【0008】
光放出素子の更なる一実施形態において、そのつどR1、R2、R7、R8、R9、R10、R15及びR16はHである。
【0009】
本発明の更なる一実施形態において、nは100〜100,000の値を有する。
【0010】
本発明の更なる一実施形態において、そのつど、一方ではR3〜R6及び他方ではR11〜R14の1個又は2個の基はCH3、F、Cl、Brである。
【0011】
芳香族化合物上に2個の基が存在する場合、それらは好ましくは同じ基である。
【0012】
この式の有機ポリマーは、環境影響に対して特に良好なバリヤ作用を有する。同時に、特に薄くかつ均一なパッシベーション層が素子に形成されることができる。
【0013】
更なる一実施形態において、パッシベーション層は式:
【化2】

の有機ポリマーを含む。
【0014】
かかる有機ポリマーを含むパッシベーション層は、非常に良好な絶縁耐力を有し、その際、付加的に誘電率は、電場の周波数に依存しない。更に、かかる有機ポリマーを含むパッシベーション層により、特に均一な層を形成することができる。この材料により、特に良好に、小さな空間、空隙及び端部を満たすことができる。パッシベーション層はまた、特に良好には絶縁層として、該ポリマーの誘電率及び低い誘電損率に基づき適している。
【0015】
更なる一実施形態において、パッシベーション層は式:
【化3】

の有機ポリマーを含む。上記の有機ポリマーを含む。
【0016】
パッシベーション層は、非常に良好な電気的特性と同様に物理的特性も有する。それゆえパッシベーション層は、湿度及びガスに対して非常に良好なバリヤ作用を有する。かかる有機ポリマーを含むパッシベーション層は、塩素原子を含まない相応する有機ポリマーと比較して、該層が被着させられる表面により素早く付着する。
【0017】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は式:
【化4】

の有機ポリマーを含む。
【0018】
その芳香族化合物が2個の塩素原子を持つ有機ポリマーを含むパッシベーション層は、その有機ポリマーが、1個の塩素原子のみを持つか又は塩素原子を持たない芳香族化合物を含むパッシベーション層と比べてより高い熱安定性を有する。
【0019】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は、少なくとも部分領域において素子の最も外側の層となる。
【0020】
パッシベーション層の非常に良好なバリヤ特性に基づき、光放出素子を外側に向かってパッシベーション層によって、例えばガス又は蒸気又は化学腐食性媒体といった環境影響から封止することが可能である。この場合、パッシベーション層は該素子の外層となる。
【0021】
外層とは、例えば複数の重なり合って置かれた水平な層の層列の場合、少なくとも部分領域で最上層又は最下層となる層と理解されるべきである。他の層の間に配置されていて、かつ単に鉛直側面で周囲へのコンタクトを有する層は外層として理解されるべきではない。
【0022】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は光出射面上に配置されている。
【0023】
層厚は、この実施形態の場合、100nm〜2000nmの範囲にあってよく、好ましくは200nm〜1000nmの範囲にあってよい。
【0024】
パッシベーション層の透明性に基づき、これは半導体チップの光出射面に被着させられることができる。そのため半導体チップをパッシベーション層によって環境影響から封止することができる。
【0025】
該素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は光出射面上に直接配置されている。
【0026】
光出射面上に直接配置されているとは、少なくとも部分領域においてパッシベーション層と半導体層との間で更に別の中間層が存在していないことと理解されるべきである。パッシベーション層の非常に良好なバリヤ特性は、更なるバリヤ層を省くことができることを可能にする。これはパッシベーション層が非常に薄くかつ非常に均一な層として形作られることができるという特性と組み合わさって、非常に平坦な素子を実現することを可能にする。
【0027】
光放出素子の更なる一実施形態において、半導体チップの光出射面には少なくとも1つの光学素子が配置されている。
【0028】
該光学素子によって、半導体チップから放出される光を、例えば空間的に偏向することができるか又はその波長を変えることができる。
【0029】
光放出素子の更なる一実施形態において、光学素子は、変換層又はフィルタを含む。
【0030】
変換層において、半導体チップから放出される光をその波長について変えることができる。これはまた、例えば、放出される光のある一定の波長領域でのみなされることもできる。例えば、変換材料による光の吸収によって調整してもよく、該変換材料は光を、それから再び他の波長で放出する。フィルタは、例えば角度フィルタ又はエッジフィルタであってよい。
【0031】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は、半導体チップと離反した光学素子の表面の部分領域に少なくとも配置されている。
【0032】
この実施形態の場合、半導体チップのみならず、なお付加的に該半導体チップに配置された光学素子がパッシベーション層によって封止される。これによって半導体チップのみならず光学素子も環境影響から保護される。なお付加的に半導体チップと光学素子との間に調整層(Ausgleichsschicht)が配置されている実施例も考えられる。該調整層は、この場合、パッシベーション層の特別な形態を表し、そのためパッシベーション層と同じ物質を含む。これは例えば半導体チップの表面を一様にするために利用することができる。
【0033】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は、第1のコンタクト構造を電気的に第2のコンタクト構造に対して絶縁する。
【0034】
有機ポリマーの良好な電気的絶縁特性に基づき、パッシベーション層は電気的絶縁体としても使用することができる。この場合、例えば第1のコンタクト構造は、第2のコンタクト構造に対して電気的に絶縁されることができる。
【0035】
光放出素子の更なる一実施形態において、パッシベーション層は、第2のコンタクト構造を電気的に第1のコンタクト構造に対して絶縁する。
【0036】
有機ポリマーひいてはパッシベーション層も、非常に良好な電気的絶縁特性を有するのみならず、それにより非常に薄くかつ均一な層も形成されることができるので、小さなスペースも該パッシベーション層でふさぐことが可能である。更に、コンタクト層を、パッシベーション層によって形成されるベースの上にランプ様(rampenartig)に敷くことも可能である。ランプ様とは、コンタクト層を他の層の上に直接、コンタクト層と該コンタクト層が上に敷かれる層との間にスペースが形成されないように敷かれることと理解されるべきである。これにより、特に平坦な素子を実現することが可能となる。かかるコンタクトランプを有するこの実施形態の場合、コンタクトワイヤ(いわゆるボンディングワイヤ)は必要でない。
【0037】
光放出素子の更なる一実施形態において、第2のコンタクト層は、半導体チップの光出射面にフレーム状に配置されている。
【0038】
これは半導体チップに光出射面の側でも全ての側から電圧がかけられることを可能にする。そのため半導体チップは、コンタクト層が光出射面の側でのみ配置されているかのように、より均一な電源供給を有する。半導体チップにより均等に電圧をかけることによって、それは、点状にしか電圧がかけられないか又はエッジ全体にわたって電圧がかけられる半導体チップと比べて、より均質な放射を有する。半導体チップの表面上の第2のコンタクト層のフレーム状の配置によって、該半導体チップの電流拡がり(Stromaufweitung)が改善され、それによって光発生の効果が改善される。第2のコンタクト層のフレーム状のコンタクト構造は、400μm未満の側長を有するチップに特に適している。
【0039】
光放出素子の更なる一実施形態において、第2のコンタクト層は、半導体チップの光出射面上に配置されているコンタクトウェブ(Kontaktstege)を有する。
【0040】
第2のコンタクト層のこの配置も同様に、半導体チップに均等に電圧をかけることを可能にし、このことはまた半導体チップの均等な放射(Abstrahlung)につながる。この場合、コンタクトウェブは、放出される光に対して透明であってよい。この場合、第2のコンタクト層は、有利には付加的にフレーム状に半導体チップの表面に配置されており、その際、このフレームコンタクト内にコンタクトウェブが配置されており、該コンタクトウェブは、好ましくは半導体チップの表面上で交差せず、かつ特に有利には互いに並行に走る。その際、該コンタクトウェブは、部分領域においてフレームコンタクトと直に接している。
【0041】
コンタクトウェブによって、半導体チップの電流拡がりが改善され、それによってより大きなチップ寸法が可能となる。かかるコンタクト構造は、400μmより大きい側長を有するチップにとって特に好ましい。
【0042】
光放出素子の更なる一実施形態において、キャリアには第1及び第2の貫通接続部(Durchkontaktierung)が存在し、その際、第1の貫通接続部は第1のコンタクト構造と導電接続しており、かつ第2の貫通接続部は第2のコンタクト構造と導電接続している。
【0043】
これにより、第1のもしくは第2のコンタクト構造を下面から、つまり、キャリアを通して電気的に接続できることが可能になる。そのため非常に平坦な素子を実現することができる。キャリアに通ずる貫通接続部による半導体チップの接続によって、光放出素子は表面実装型に形成されていてよい。
【0044】
表面実装型素子、あるいはいわゆるSMT素子(SMT:urface ount echnology)は、それらがはんだ付け接続領域を用いて、例えばプリント基板に直接はんだ付けされることができることを特徴とする。それによって非常に細密な組み立てが可能となり、このことによって所要スペースが減る。これにより高いパッケージ密度が得られる。
【0045】
光放出素子の更なる一実施形態では、該素子は薄膜チップとして形作られている。
【0046】
更なる一実施態様の場合、半導体本体は、薄膜発光ダイオードチップである。殊に、該チップは、その裏面にキャリア基板を有する。一実施態様の場合、第1の及び第2の接続層は、少なくとも所々で半導体層列とキャリア基板との間に配置されている。
【0047】
薄膜発光ダイオードチップは、以下の特徴的な特性の少なくとも1つによって優れている:
・キャリア素子、殊にキャリア基板の方に向いた、光を発生させる半導体層列(これは殊に、光を発生させるエピタキシャル層列である)の主表面に、反射層が被着又は形成されており、該反射層は半導体層列内で発生した電磁線の少なくとも一部をこれに反射し戻す;
・薄膜発光ダイオードチップは、キャリア素子を有し、これは半導体層列がエピタキシャル成長した成長基板ではなく、後になって半導体層列に取り付けられた別個のキャリア素子である;
・半導体層列は、20μm以下の範囲、殊に10μm以下の範囲の厚さを有する;
・半導体層列は成長基板を含まない。この"成長基板を含まない"とは、場合によっては成長のために利用される成長基板が、半導体層列から取り除かれているか、又は少なくとも非常に薄くされていることを意味する。殊に、この成長基板はその時に、それ自体では又はエピタキシャル層列とのみ一緒では片持ばり式に保持することができないほど薄くされている。非常に薄くされた成長基板の残っている残留物は、殊に、そのものが成長基板の機能のために適しておらず;及び
・半導体層列は、混合構造を有する少なくとも1つの面を備えた少なくとも1つの半導体層を含み、理想的な場合にはこの混合構造により半導体層列内に近似的にエルゴード的な光分布がもたらされ、すなわち、この光分布は、可能な限りエルゴード的な確率散乱特性を有している。
【0048】
薄膜発光ダイオードチップの基本原理は、例えばI. Schnitzer等による刊行物Appl. Phys. Lett. 63 (16), 18. Oktober 1993, 2174-2176に記載されており、その開示内容はこの点に関してここに参照をもって組み込まれる。薄膜発光ダイオードチップの例は、EP0905797A2及びWO02/13281A1に記載されており、それらの開示内容はこの点に関してここに同様に参照をもって組み込まれる。
【0049】
更なる一実施形態において、素子は完全に白色に見える。本発明によるパッシベーションを用いた非常に薄くかつ透明な封止によって、該パッシベーション層による色印象の変化を回避することができる。
【0050】
パッシベーション層を用いて、例えばLEDチップといった素子を封止することができ、それらのコンタクトは中間層としてのみならず、該コンタクトが電気的な接続のために表面に存在している素子としても形成されている。
【0051】
パッシベーション層は、例えば、これがチップエッジ上に配置されている場合には、導電性基体/キャリアに対する電気的なフラッシュオーバー保護としても使用されることができる。
【0052】
そのうえパッシベーション層は、例えば半導体チップ内でミラー層のパッシベーションのために用いられることもできる。
【0053】
素子自体に加えて、該素子の製造方法も特許保護が請求される。
【0054】
光放出素子を製造するための一変法は、方法工程A)として、第1の及び第2のコンタクト構造を有するキャリアを準備する方法工程、方法工程B)として、半導体チップと第1のコンタクト構造とを第1のコンタクト層により機械的かつ導電的に接続する方法工程、方法工程C)として、半導体チップと第1のコンタクト構造とを第2のコンタクト層により機械的かつ導電的に接続する方法工程、方法工程D)として、パッシベーション層を半導体チップの少なくとも部分領域に被着させる方法工程を包含し、その際、パッシベーション層のために、一般式(I):
【化5】

[式中、R1〜R16は、そのつど互いに無関係に、H、CH3、F、Cl又はBrであってよく、かつnは10〜500,000の値を有する]を有する有機ポリマーを含む材料が使用される。
【0055】
かかる方法において、例えば、請求項1で請求されるような光放出素子を製造することができる。この方法を基にして、例えば酸、アルカリ液、ガス及び蒸気といった環境影響から非常に良好に保護されている素子を実現することができる。そのうえ、この方法によって非常に平坦な素子を実現することができる。本方法のさらなる好ましい実施態様は、光放出素子の好ましい実施態様と同様である。
【0056】
本方法のさらなる一変法において、パッシベーション層はプラズマ法で被着される。
【0057】
プラズマ法の場合、例えば、そのつどのポリマーの相応する二量体を出発物質として用いることができる。これは例えば、熱的にモノマーに分解されることができ、該モノマーから、次いでポリマーへと鎖形成が行われる。次いで重合は、該二量体の分解に必要な温度より低い温度で行われる。重合は0.05〜0.5mbarの範囲の圧力で行ってよい。次いでポリマーの縮合を、コーティングされるべき表面で直接行うことができる。
【0058】
プラズマ法によって、非常に薄くかつ非常に均一な層を被着させることができ、該層はそれにも関わらず非常に良好なバリヤ作用を有する。
【0059】
パッシベーション層の堆積は、化学気相成長法(CVD)又はプラズマ援用化学気相成長法(PECVD)によっても行ってよい。
【0060】
以下で本発明の変法を、図面及び実施例を基にして、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第2のコンタクト層がランプとして形作られている、光放出装置の一実施形態の概略的な側面図を示す
【図2】第2のコンタクト層の部分領域がコンタクトウェブとして形作られている、光放出素子の一実施形態の概略的な俯瞰図を示す
【図3】コンタクトウェブがランプ様に接続されている、光放出素子の一実施形態の概略的な俯瞰図を示す
【図4】左右対称構造を有する光放出素子のさらなる一実施形態の概略的な俯瞰図を示す
【図5】コンタクト面を除いて外側の面全体がパッシベーション層で取り囲まれている、光放出素子の一実施形態の概略的な側面図を示す
【図6】光学素子をコンバーターの形態で有する、光放出素子の一実施形態の概略的な側面図を示す
【図7a】光学素子をピラミッドフィルタの形態で有する、光放出素子の一実施形態の概略的な側面図を示す
【図7b】受動素子を有する光放出素子の一実施形態の概略的な側面図を示す
【図8】a〜dは様々の処理段階における多数の光放出素子を示す
【図9】a〜dは様々の処理段階における概略的な俯瞰図における光放出素子を示す
【0062】
図1は、光放出素子の一実施形態の概略的な側面図を示す。キャリア1には、第1のコンタクト構造4a及び第2のコンタクト構造4bが配置されている。この2つのコンタクト構造は、パッシベーション層5によって互いに電気的に絶縁されている。半導体チップ2は、第1のコンタクト層21により機械的のみならず導電的にも第1のコンタクト構造4aと接続されている。半導体チップ2は光出射面3を有する。半導体チップ2は、光出射面3で第2のコンタクト層6により導電的に第2のコンタクト構造4bと接続されている。第2のコンタクト層6は、この場合、ランプ様にパッシベーション層5の上に敷かれ、その際、パッシベーション層5は、ここでは、第2のコンタクト層6を、第1のコンタクト構造4aから電気的に絶縁する。第2のコンタクト層6と接触していない光出射面3の領域並びに半導体チップ2の側面は、パッシベーション層5で被せられている。これによって、半導体チップ2は環境影響から保護されている。パッシベーション層5は、半導体チップ2から放出される光に対して透明なので、この光は光出射面3を介してパッシベーション層5を貫いて放たれることができる。
【0063】
ボンディングワイヤなしで行うことができる半導体チップ2の接続によって、光学素子をチップに近接して半導体チップ2に配置することができる。
【0064】
キャリア1は、有利にはセラミック、シリコン又は窒化アルミニウムを含む。代替的にキャリア1は、電気的に絶縁する層、例えば誘電体をその上に有する、金属間化合物セラミック、金属又は金属合金を含んでよい。
【0065】
半導体チップ2は活性層を有し、該活性層はpn接合、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW)又は多重量子井戸構造(MQM)を光発生のために有してよい。
【0066】
半導体チップ2は、有利には、窒化化合物半導体、ホスファイト化合物半導体又はヒ素化合物半導体を基礎とする。この文脈において、"窒化化合物半導体、ホスファイト化合物半導体又はヒ素化合物半導体を基礎としている"とは、活性エピタキシャル層列又は少なくともそのうちの1つの層が、殊に、組成InxGayAl1-x-yP又はInxGayAl1-x-yN又はInxGayAl1-x-yAs(そのつど、式中で、0≦X≦1、0≦y≦1及びx+y≦1)を有するIII/V族半導体材料を含むことを意味している。
【0067】
光放出素子の半導体チップ2は成長基板を有さない。それゆえ半導体チップ2は、基板レスの半導体チップとして構成されている。基板レスの半導体チップ2によって、構造素子の構造高さが特に低くなるという利点が生じる。有利には、半導体チップ2は、100μm未満、特に有利には40μm未満の高さを有する。そのため構造素子の寸法は、ほぼエピタキシャル層列の厚さの範囲にあってよい。
【0068】
第1のコンタクト層21は、有利には、半導体チップ2の電気的な接続に用いられるのみならず、更になお光学ミラーの機能も担うことができる。これは、第1のコンタクト層21が、半導体チップ2から放出された、キャリア1の方向に向かって放出される光を、好ましくは半導体チップ2の光出射面3の方向に向かって反射し戻すことを意味する。
【0069】
有利には、第2のコンタクト層6は透明であり、かつ殊にはTCO層(TCO:透明導電性酸化物)である。特に有利には、第2のコンタクト層は、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ITO(インジウムスズ酸化物)又はZnO(亜鉛酸化物)を含む。
【0070】
有利には、第2のコンタクト層6は、50nm(50nmを含む)から300nm(300nmを含む)までの範囲の厚さを有する。半導体チップ2は、有利には、40μm未満の高さを有する。
【0071】
図2は、2の組み合わせの光放出素子の概略的な俯瞰図を示す。いずれの素子も構造的に同じであり、かつ同一キャリア1に配置されている。キャリア1には、そのつど第1のコンタクト構造4aが配置されており、該コンタクト構造4aにより半導体チップもしくは第1のコンタクト層21(これは半導体チップ2と第1のコンタクト構造4aとの間に配置されている)を接触させることができる。半導体チップ2の上面は、導電的に第2のコンタクト層6により第2のコンタクト構造4aと接続されている。第2のコンタクト層6は、ここでは、光出射面3上にコンタクトウェブ61として形作られている。これらのコンタクトウェブ61は、半導体チップ2により均等に電圧をかけることを可能にし、このことはまた半導体チップ2のより均等な放射につながる。いずれの半導体チップ2も、そのつどパッシベーション層5によってフレーム状に取り囲まれている。第2のコンタクト層6は、ここでは、図1に示されているように、ランプ様に出射面3に対してパッシベーション層5の部分領域の上で敷かれる。
【0072】
図3は、光放出素子の更なる一実施形態の概略的な俯瞰図を示す。キャリア1には、第1のコンタクト構造4a及び第2のコンタクト構造4bが配置されている。半導体チップ2の光出射面3は、第2のコンタクト層6により導電的に第2のコンタクト構造4bと接続されている。光出射面3に配置された第2のコンタクト層6の部分領域は、部分的な領域においてコンタクトウェブ61として並びに付加的にそのつどコンタクトウェブ61の外端を互いに接続するフレームとして形作られている。この実施形態の場合、半導体チップ2に均等に電圧がかけられる。半導体チップ2はパッシベーション層5により取り囲まれている。
【0073】
パッシベーション層5は、第2のコンタクト構造4bから光出射面3に向かって敷かれる第2のコンタクト層6のベースともなる。
【0074】
図4は、概略的な俯瞰図における光放出素子の一実施形態を示す。この実施形態は、それが破線に関して左右対称の構造を有することを特徴とする。第2のコンタクト層6は、ここでもまた、半導体チップ2の光出射面3にコンタクトウェブ61として形作られている。素子の左右対称構造は、半導体チップ2の特に均一な電源供給を引き起こし、このことは半導体チップの均一な放射特性につながる。
【0075】
図2、3及び4で示される実施形態以外に、そのつど、ウェブ又はコンタクト層が存在しない領域中で少なくとも光出射面3がパッシベーション層5で完全に被せられている実施形態も存在する。概略図との理由から、これは図示されていない。それゆえ半導体チップ2は、そのつど環境影響から完全に保護されている。付加的にコンタクトウェブ61にもパッシベーション層5が備え付けられていることから、光出射面3の面全体にパッシベーション層5が備え付けられている実施形態も可能である。
【0076】
図5は、概略的な側面図における光放出素子の一実施例を示す。この場合、キャリア1は、第1の貫通接触部8a及び第2の貫通接触部8bを有する。貫通接触部によって、第1のコンタクト構造4aもしくは第2のコンタクト構造4bは導電的に素子の下面から接続されることができる。第2のコンタクト層6は、この実施形態においては、該層が半導体チップ2の光出射面3でランプ様に形作られている領域にある。光出射面3は、第2のコンタクト層6により導電的に第2のコンタクト構造4bと接続されている。素子全体は、2つの貫通接触部8a及び8bの接触面並びに第2のコンタクト層6の部分領域を除いて完全にパッシベーション層5で被覆されている。そのため素子全体は環境影響から保護されている。
【0077】
図5に示される素子は、第1の及び第2の接触貫通部8a、8bによって、好ましくは表面実装型素子として形成されている。
【0078】
概略的な側面図の図6に示される実施形態は、図5に示されている実施形態と比較可能な構造を有する。図6に示される実施形態は、付加的に光学素子9を有する。光学素子9は、図6に示される実施形態の場合、変換層である。この変換層9は、例えば、変換する物質を含んでよく、それによって半導体チップ2から放たれる光、そうでなければこの光の波長領域のみがその波長に関して変化させられる。これは例えば、半導体チップ2から放たれる光が変換材料により吸収され、かつ変換材料から光(この光は変換材料により吸収された光とは異なる波長を有する)が放出されることによって行われることができる。図6で示される実施例の場合、半導体チップ2から放たれた光は光学素子9を通り抜ける。
【0079】
図7aに示される実施形態は、図5に示されている実施形態と比較可能な構造を有する。図7aに示される実施形態は、しかしながら、付加的に光学素子9を有する。光出射面3上には、調整層15が存在しており、その上には光学素子9が配置されている。調整層15は、なかでも光出射面3の表面の平坦化のために用いられることができる。光学素子9の上面、つまり、半導体チップ2と離反している面にも同様にパッシベーション層5が備え付けられている。光学素子9は、この実施例の場合、ピラミッドフィルタである。パッシベーション層5は、この場合、該層がピラミッドフィルタ上で走る領域で、均一な層厚を有してよい。このフィルタによって、半導体チップ2から放たれた光はその空間方向において偏向させられることができる。
【0080】
図7bで示される実施例は、図7aで示されている実施例に相当するが、しかしながら、付加的な受動素子100を含んでいる。この受動素子100は、第2のコンタクト構造に配置されており、かつ同様にパッシベーション層5により完全に取り囲まれている。受動素子100は、例えば、保護ダイオード又は抵抗器であってよい。
【0081】
8a〜8dの一連の図には、そのつど異なる処理段階における3つの光放出素子が示されている。図8aには、キャリア1にそのつど第1のコンタクト構造4a及び半導体チップ2が配置されており、該半導体チップ2は、機械的にも導電的にも第1のコンタクト層21により第1のコンタクト構造4aと接続されている。キャリア1全体並びに3つの素子は、それぞれ完全にパッシベーション層5で取り囲まれている。
【0082】
図8bに示される処理段階の場合、パッシベーション層5は半導体チップ2並びに第1のコンタクト構造4aの上では、第1のコンタクト層21が配置されていない部分領域で露出させられていた。パッシベーション層5の除去は、例えばRIEプラズマエッチング("反応性イオンエッチング")によってフッ素化ガス(例えばNF3、CHF3、CF4又はSF6)を用いて行われることができる。
【0083】
図8cに示される処理段階では、半導体チップ2に光学素子9が施与された。光学素子9は、この実施例の場合、変換層である。変換層の施与は、この場合、例えば、変換物質を含む波長板により行われることができる。
【0084】
変換層の厚さは、例えば20μmであってよい。しかし、例えばCeでドーピングされているYAGセラミックも使用されることができる。この場合、厚さは、例えば100μmとされる。光学素子9の施与後、光学素子9の上に再びパッシベーション層2が施与された。
【0085】
図8dで示される処理段階では、光学素子9の上を走るパッシベーション層5の部分領域が再び除去された。パッシベーション層のこの除去は、例えばRIEプラズマエッチング("反応性イオンエッチング")によってフッ素化ガスを用いて行われることができる。光学素子9を露出させることによって、放出される光の吸収を低減させることができる。
【0086】
9a〜9dの一連の図には、そのつど概略的に俯瞰図において4つの異なる処理段階での光放出素子の実施例が示されている。
【0087】
図9aは、キャリア1上にそのつど2つの光放出素子のために第1のコンタクト構造4a及び第2のコンタクト構造4bが示されているキャリア1を示す。
【0088】
図9bは、例えば図9aに示される素子から生ずることができる、第1のコンタクト構造4aの部分領域にそのつど半導体チップ2が施与された実施例を示す。半導体チップ2の施与は、例えばボンディング、はんだ付け又は接着によって行われることができる。この場合、半導体チップ2と第1のコンタクト構造4aとの間にはコンタクト層21が配置されていてよい。
【0089】
図9cで示される処理段階は、例えば、図9bに示される処理段階から、パッシベーション層5を施与することによって生ずることができる。パッシベーション層5は、この場合、そのつど半導体チップ2を包囲する。パッシベーション層5は、例えば、化学気相成長法(CVD)によって、好ましくはプラズマ援用化学気相成長法(PECVD)によって成膜させられることができる。
【0090】
図9dに示される処理段階は、図2に示される実施例に相当する。これは例えば、図9cに示されている処理段階から、任意の素子にそのつど第2のコンタクト層6を施与することによって生ずることができる。第2のコンタクト層6は、この場合、半導体チップ2でコンタクトウェブ61として形作られている部分領域にある。
【0091】
図示されていない更なる一方法工程においては、露出する光出射面3並びにコンタクトウェブ61もパッシベーション5で覆われていてもよい。それにより全体の半導体チップ2がパッシベーション層によって環境影響から保護される。
【0092】
本発明は実施例に基づいた説明によってこれらの実施例に限定されるものではなく、任意の新規な特徴並びに特徴の任意の組み合わせ、殊に特許請求の範囲における特徴の任意の組み合わせを含んでいるものを、この特徴又はこれらの組み合わせ自体が特許請求の範囲又は実施例に明示的に示されていなくても包含している。
【符号の説明】
【0093】
1 キャリア、 2 半導体チップ、 3 光出射面、 4a,4b コンタクト構造、 5 パッシベーション層、 6 第2のコンタクト層、 61 コンタクトウェブ、 21 コンタクト層、 8a,8b 接触貫通部、 9 光学素子、 15 調整層、 100 受動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出素子であって、
− キャリア(1)
− 前記キャリア(1)に配置された半導体チップ(2)、その際、前記半導体チップ(2)は、電磁線を発生させるための活性層及び光出射面(3)を有する、
− 前記半導体チップ(2)の電気的な接触のための第1の及び第2のコンタクト構造(4a、4b)、
− 第1のコンタクト層(21)及び第2のコンタクト層(6)、その際、前記半導体チップ(2)は、第1のコンタクト層(21)により第1のコンタクト構造(4a)と導電接続しており、かつ第2のコンタクト層(6)により第2のコンタクト構造(4b)と導電接続している、
− 前記半導体チップ(2)に配置されたパッシベーション層(5)、その際、前記パッシベーション層(5)は、一般式(I)
【化1】

[式中、R1〜R16は、そのつど互いに無関係に、H、CH3、F、Cl又はBrであってよく、かつnは10〜500,000の値を有する]の有機ポリマーを含む、
を包含する光放出素子。
【請求項2】
1、R2、R7、R8、R9、R10、R15及びR16が、そのつどHである、請求項1記載の光放出素子。
【請求項3】
少なくとも前記パッシベーション層(5)の部分領域が、前記素子の最も外側の層となる、請求項1又は2記載の光放出素子。
【請求項4】
前記パッシベーション層(5)が光出射面(3)に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項5】
前記半導体チップ(2)の前記光出射面(3)に少なくとも光学素子(9)が配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項6】
前記光学素子(9)が変換層又はフィルタを包含する、請求項5記載の光放出素子。
【請求項7】
前記パッシベーション層(5)が、前記半導体チップ(2)と離反した前記光学素子(9)の表面の部分領域に少なくとも配置されている、請求項5又は6記載の光放出素子。
【請求項8】
前記パッシベーション層(5)が、第1のコンタクト構造(4a)を第2のコンタクト構造(4b)に対して電気的に絶縁する、請求項1から7までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項9】
前記パッシベーション層(5)が、第2のコンタクト層(6)を第1のコンタクト構造(4a)に対して電気的に絶縁する、請求項1から8までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項10】
前記第2のコンタクト構造(6)が、前記半導体チップ(2)の光出射面(3)にランプ様に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項11】
前記第2のコンタクト層(6)が、前記半導体チップ(2)の光出射面(3)に配置されているコンタクトウェブ(61)を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項12】
前記キャリア(1)によって第1の及び第2の貫通接触部(8a、8b)が存在しており、かつ第1の貫通接触部(8a)が第1のコンタクト構造(4a)と、かつ第2の貫通接触部(8b)が第2のコンタクト構造(4b)と導電接続している、請求項1から11までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項13】
前記素子が薄膜チップとして形作られている、請求項1から12までのいずれか1項記載の光放出素子。
【請求項14】
光放出素子の製造方法であって、以下の方法工程:
A)第1の及び第2のコンタクト構造(4a、4b)を有するキャリア(1)を準備する方法工程、
B)半導体チップ(2)を第1のコンタクト層(21)により第1のコンタクト構造(4a)と機械的かつ導電的に接続する方法工程、
C)前記半導体チップ(2)を第2のコンタクト層(6)により第2のコンタクト構造(4b)と機械的かつ導電的に接続する方法工程、
D)パッシベーション層(5)を少なくとも前記半導体チップ(2)の部分領域に被着させる方法工程を有し、その際、前記パッシベーション層(5)のために、一般式(I):
【化2】

[式中、R1〜R16は、そのつど互いに無関係に、H、CH3、F、Cl又はBrであってよく、かつnは10〜500,000の値を有する]の有機ポリマーを含む材料を使用する、光放出素子の製造方法。
【請求項15】
前記パッシベーション層(5)をプラズマ法により被着させる、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2012−508971(P2012−508971A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535870(P2011−535870)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001571
【国際公開番号】WO2010/054628
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】