説明

光断層画像生成方法及び光断層画像生成装置

【課題】光断層画像撮像装置において、簡便に画質を向上する方法を提供する。
【解決手段】被検査物の断層像を生成する光断層画像生成方法であって、信号を取得する工程、フーリエ変換を行なう工程、及び断層画像を得る工程を含み、さらに、所定時間に取得した複数の信号を合成する工程又は所定時間に取得した複数の信号をフーリエ変換した後に合成する工程を含むことを特徴とする光断層画像生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の断層画像を生成する光断層画像生成方法及び光断層画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、低コヒーレンス光による干渉を利用した光干渉断層法(OCT: Optical Coherence Tomography)を用いる撮像装置(以下、OCT装置とも呼ぶ。)が実用化されている。これは、数マイクロメートルの深さ分解能で断層画像を取得できるため、被検査物の断層画像を高解像度に撮像することができる。
【0003】
特許文献1には、形成される画像の画質の向上を図る光画像計測装置が開示されている。この装置では、眼底の複数の断層画像を形成し、形成された画像を記憶させる。そして、そのうちの一枚の断層画像とそれに隣接する断層画像を用いて演算することにより、新たな断層画像を形成している。この結果、形成される画像の画質を向上することが可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ある程度の画質の向上が得られるが必ずしも十分ではない。特に被検査物が動く場合に断層画像間の位置が変わり、信号がなまってしまう可能性がある。そのため、さらなる画質の向上が求められる。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであり、さらなる画質の向上を図ることを目的とする。また、仮に被検査物が動いた場合であっても、その影響を抑え画質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光断層画像生成方法は、被検査物の断層像を生成する光断層画像生成方法であって、信号を取得する工程、フーリエ変換を行なう工程、及び断層像を得る工程を含み、さらに、所定時間に取得した複数の信号を合成する工程又は所定時間に取得した複数の信号をフーリエ変換した後に合成する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の光断層画像生成装置は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を測定光路を介して被検査物に導くと共に前記参照光を参照光路を介して参照ミラーに導き、前記被検査物によって反射あるいは散乱された前記測定光による戻り光と、前記参照ミラーによって反射された前記参照光と、これらの戻り光と参照光による合波光を用い、前記被検査物の断層画像を撮像する光断層画像生成装置であって、被検査物を走査する手段と撮像のタイミングを制御する手段とを有し、さらに所定時間に取得した信号を合成する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定時間に取得した複数の信号又はこれをフーリエ変換したものを合成することで、画質の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明、実施例1における信号処理工程を説明する図。
【図2】本発明、実施例1におけるマイケルソン型のOCT装置を説明する図。
【図3】本発明、実施例1におけるスキャナの経過時間に対する位置と測定タイミングの関係を説明する図。
【図4】本発明、実施例2におけるマッハツェンダ型のOCT装置を説明する図。
【図5】本発明、実施例2における信号処理工程を説明する図。
【図6】本発明、実施例3における信号処理工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光断層画像生成方法は、被検査物の断層像を生成する光断層画像生成方法であって、信号を取得する工程、フーリエ変換を行なう工程、及び断層像を得る工程を含み、さらに、所定時間に取得した複数の信号を合成する工程又は所定時間に取得した複数の信号をフーリエ変換した後に合成する工程を含むことを特徴とする。図1は所定時間に取得した複数の信号を合成する工程を含む場合である。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について説明する。本実施例においては、マイケルソン干渉計を用いた撮像装置によって断層画像を生成するが、本発明において用いることのできる撮像装置はこれに限定されることはない。また、本実施例の信号処理は、信号を取得した後に複数の信号の合成を行うことを特徴とする。
【0012】
(マイケルソン干渉計)
実施例1に係る光干渉断層撮像装置(以下、OCT装置とも言う)について図2を用いて説明する。図2は、本実施例のマイケルソン型の光学系(マイケルソン干渉計)を用いる撮像装置を説明するための模式図である。
光源201から出射した光はファイバー202、レンズ203−1を介し、ビームスプリッタ204によって測定光214と参照光213とに分割される。測定光214は、XYスキャナ208、対物レンズ205−1、205−2を介して、被検査物である眼217に入射する。そして、眼に入射した測定光は、角膜216を通り、さらに網膜218まで到達する。
【0013】
眼217の網膜218によって反射および散乱された戻り光215は、対物レンズ205−2、205−1、XYスキャナ208、ビームスプリッタ204の順で戻る。さらに、レンズ203−2を介して、分光器211に導かれる。分光器211は、レンズ、グレーティング、撮像素子などから構成される。撮像素子としては、CCDやCMOS方式のラインセンサーが用いられる。分光器211のラインセンサーで得られた信号は、コンピュータ212へ送信されてメモリに格納され、後述の処理が行われる。
【0014】
一方、参照光213は分散補償ガラス207を介し、参照ミラー209によって反射され、再度分散補償ガラス207を通り、ビームスプリッタ204へ戻る。分散補償ガラス207は、眼217および対物レンズ205−1、205−2の分散を補償するためのものである。参照ミラー209はミラー調整機構210によって参照光路の光路長を調整することができる。これら参照光213と戻り光215はビームスプリッタ204により合波される。そして、この合波光が分光器211に導かれる。なお、測定光路において、参照光路と光路長が一致するところをコヒーレンスゲートと呼ぶ。眼217の網膜218を測定する場合にはこのコヒーレンスゲートを網膜218に近くなるように参照ミラー209の位置を調整する。
【0015】
光源201は、代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)が用いられる。その波長は、例えば中心波長840nm、バンド幅50nmである。なお、バンド幅は得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため重要なパラメーターとなる。また、光源201の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。当然、被検査物の内容によっては、ハロゲンランプなどの他の光源を利用してもよい。ただし、波長は、得られる断層像の横方向の分解能に影響するため、横方向の分解能を重視する場合には短波長であることが望ましい。
【0016】
コンピュータ212は、後述の演算処理や制御を行う他、分光器211、XYスキャナ208、ミラー調整機構210、フォーカス調整機構206を制御する。当然、コンピュータ212は、データの入力、画像処理、画像表示、データの保存なども行うことができる。
【0017】
(信号処理工程)
図1を用いて、図2に示したOCT装置で実行される信号処理を説明する。工程A1からA7のうち、工程A2とA3の間に合成工程M1がある場合である。
工程A1で測定を開始する。この状態は、OCT装置が起動されていて、被検眼が配置されている。さらに測定に必要な調整が術者によって行われ、測定が開始された状態である。
【0018】
工程A2で信号を取得する。ここでは、2次元の断層像を1枚取得する場合を例にとって説明する。XYスキャナ208は、図2における眼217の光軸に垂直なX方向に移動させる。図3は、XYスキャナ208の経過時間に対する位置と撮像のタイミングの関係を示したチャートである。図3(a)はX方向にステップ状に動く場合である。ステップ数は例えば512回である。図3(b)は測定タイミングで、等間隔にステップ内で3回撮像する制御を示す。測定間隔301は、ステップ内もステップ間も等間隔になっている。従って、512×3=1536回の撮像が行われる。なお、一回の撮像で取得されるデータは、1024画素のラインセンサーであれば、1024の要素の1次元配列を得る。したがって、1536ラインあることから、最終的に1024×1536の要素の2次元配列を得る。なお、各ラインのデータは、2次元配列の各列のデータとして格納されているとする。
【0019】
ところで、図3(c)のようにX方向に連続的に動かしてもよい。連続的に動かす方がスキャナに対する負荷が少なく、スムーズに動かすことができる。測定の間隔は、等間隔であってもよいが、図3(d)のように測定間隔302、測定間隔303のように異なる間隔のものであってもよい。ここでは、合成する3回を等間隔とし、隣接する測定間隔は異なる場合である。当然これらの組み合わせは自由で、図3(c)の連続的に移動させる位置制御で、図3(b)の等間隔な撮像のタイミングを組み合わせてもよい。
【0020】
なお、X方向に連続して動かしながら撮像した信号を合成する場合には、その間に距離が大きく動くとすると、信号成分がなまってしまうこと(合成するデータが互いに打ち消しあって、本来の信号成分が失われてしまうこと)がある。そのため、移動距離304は、OCT装置の横分解能(一般的に、被測定物上での測定光のビーム径により決まる)の数倍以下であることが望ましい。具体的には、数マイクロメートルから数百マイクロメートル程度である。なお、スキャナの移動速度がわかっている場合は、この所定距離を時間に換算し、所定時間とすることができる。この、所定距離または所定時間の条件を満たしていれば、XやYなどの直線方向の動きだけでなく、サークルスキャンのように回転しながら取得したデータであってもよい。
【0021】
例えば、6mm範囲を20kHzのラインスキャナで撮影する場合は、被検査物を走査する際のスキャナの移動速度は6/1536×20k=78mm/sである。3ラインを平均するとした時の移動距離は、78×(3/20k)=12μmとなる。OCT装置の横分解能が20μmであれば、合成しても信号がなくなりにくい範囲と言える。なお、20kHzで512ラインの画像を取得するのにかかる時間は、512/20k=25.6msecである。3枚画像を取得する場合は、25.6×3=76.8msecの時間が最低かかる。3ラインの信号を取得するのにかかる時間は3/20k=0.15msecであるから、被測定物が大きく移動するような時間ではない。
【0022】
工程M1で信号を合成する。ここでは、隣接する3本のスペクトルの1次元配列を平均して、新たな1次元配列を作成する。すなわち、1024×1536の2次元配列のうち、3j、3j+1,3j+2の列(jは0〜511の整数)の1次元配列を平均する。結果として1024×512の2次元配列を得る。平均化することによって、ノイズ成分を除去することができる。
【0023】
工程A3以降のプロセスで平均する場合に比べて、データの数を減らして計算できるので、計算時間が短縮できるという効果がある。ところで、平均は重みつけ平均であっても良いが、重みが異なるとノイズの除去の効果が変わる場合がある。なお、平均する本数は図3(c)と図3(b)の制御の組み合わせであれば、3本である必要はなく、先に述べた横分解能の条件を満たす任意の整数であってもよい。また、測定のエラーが発生していると思われるようなデータであれば間引いてもよい。
【0024】
工程A3で波長波数変換をする。一般的に分光器211からのデータは波長とその波長における強度からなっている。そして、波長に対しては等間隔にサンプリングされている。まず、波長に対する強度のデータの関数を作る。次に、それぞれの波長を波数に変換し、強度のデータの関数を作る。波数は波長の逆数のため、1024の波数が等間隔になるように波数を割り当てる。そして、その波数に対応する強度データを計算する。計算する方法は、例えば補間であり、一般的な直線補間、スプライン補間などでよい。ただし、線形演算であることが望ましい。この結果、波数に対して等間隔の強度からなる1024×512要素の2次元配列を得る。
【0025】
当然、分光器211が波数に対して等間隔にサンプリングができる場合、波長波数変換による誤差が問題にならない場合はこの工程を飛ばすことができる。
工程A4でフーリエ変換をする。ここでは、波数に対して等間隔の強度データを、各列ごとに離散フーリエ変換を行う。その結果1024×512の複素数の2次元配列を得る。ただし、フーリエ変換の性質により各列のうちm行目と(1024−m)行目は強度が同じになる。したがって、0−511行を抜き出し、512×512の複素数の2次元配列を得る。
【0026】
工程A5で複素数データを実数に変換する。なお、複素数を実数に変換するのは線形演算ではない。そのため、工程A5以前に平均する場合と、工程A5以降に平均するのでは本質的に異なる。これについては実施例2で説明する。
工程A6で断層画像を得る。ここでは、512×512のうちで更に範囲を調整する。この範囲とは、例えば縦と横の長さ比を調整する。そのためには、画素を補間などによって増やしたり、減らしたりする。さらに、コントラストの調整を行う。コントラストの調整とは、一般的に画像処理で使うようなγ値の補正である。その結果、医者が判断するに適した画像にする。そして得られた断層画像を、コンピュータ212の表示画面に表示する。
【0027】
工程A7で終了をする。ここでは、OCT装置を用いた測定から画像表示までを説明したが、例えば、ネットワークを介して取得した複数フレームのデータに、上記処理を適用することによって一枚の断層画像からノイズを低減した画像を得ることもできる。
【0028】
本実施例では、所定時間で取得した信号を合成することによって、高画質の画像を得ることができる。
【0029】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、マッハツェンダ干渉計を用いた撮像装置によって断層画像を生成するが、本発明において用いることができる撮像装置はこれに限定されることはない。また、本実施例の信号処理は、フーリエ変換後に信号合成を行うことを特徴とする。
【0030】
(マッハツェンダ干渉計)
実施例2に係る光干渉断層撮像装置について図4を用いて説明する。図4は、本実施例のマッハツェンダ型の光学系を用いる撮像装置を説明するための模式図である。ここでは、実施例1との差異について説明する。
【0031】
光源201から出射した光202はファイバーカプラ401−1を介し、測定光214と参照光213とに分割される。
測定光は、サーキュレーター402−2のポート1に入り、ポート2から出て、レンズ403−2に到達する。さらに、XYスキャナ208、対物レンズ205−1、205−2、眼217の角膜216を介して網膜218に到達する。網膜で散乱および反射された戻り光215は、対物レンズ205−1、205−2、XYスキャナ208、レンズ403−2を戻って、サーキュレーター402−2のポート2に入り、ポート3を出て、ファイバーカプラ401−2に到達する。
【0032】
一方、参照光213はサーキュレーター402−1のポート1に入り、ポート2から出て、レンズ403−1、分散補償ガラス207を介し、参照ミラー209によって反射される。反射された参照光213は、分散補償ガラス207を介し、レンズ403−1、サーキュレーター402−1のポート2に戻り、ポート3から出てファイバーカプラ401−2に到達する。参照ミラー209はミラー調整機構210によって光路長を調整することができる。参照光213と戻り光215はファイバーカプラ401−2で合波され、分光器に導かれる。
【0033】
(信号処理工程)
図5を用いて、図4に示したOCT装置で実行される信号処理を説明する。図5(a)は、工程A1からA7のうち、工程A4とA5の間に合成工程M2がある場合である。図5(b)は、工程A5とA6の間に合成工程M3がある場合である。
これらの違いについて説明する。まず、工程M2の場合は、工程A4で得た複素数データを合成して、複素数データを工程A5に渡す。合成は、加算平均や重み付け平均を複素数データで行う。一方、工程M3の場合は、工程A5で計算された実数データを合成して、実数データを工程A6に渡す。合成は、加算平均や重み付け平均を実数データで行う。
【0034】
工程M2の複素数で合成する場合と、工程M3の実数で合成するのでは本質的に異なる。これについて、以下の数式を用いて説明する。ここで、虚数単位iを用いて、複素数の要素1と要素2をそれぞれ数式1−1、数式1−2で表す。
【0035】
【数1】

【0036】
【数2】

【0037】
複素数で足して実数にすると、数式2で表されるデータが得られる。
【0038】
【数3】

【0039】
実数にして足すと、数式3で表されるデータが得られる。
【0040】
【数4】

【0041】
数式2と数式3を2乗して共通部分を差し引くと、数式4の関係となる。(更に両辺を2乗すれば容易に証明できる。)
【0042】
【数5】

【0043】
すなわち、数式2の値は数式3の値以下となる。これは、ノイズの除去方法において重要である。つまり、ランダムノイズである場合、プラスとマイナスがある。複素数の状態で足すと互いの成分がキャンセルされる。従って、理論的には図5(a)と図5(b)の工程を比較すると図5(a)の方がノイズが小さくなる。一方、実数にしてから足すとキャンセルされる効果が限定される。なお、実施例1は、フーリエ変換までが線形演算なので複素数の状態で足す場合と同様の効果を得ることができる。なお、ノイズは等価であるため、重み付け平均より、平均することが望ましい。
【0044】
表1に信号雑音比(SNR)の図1の工程による処理と図5(b)の工程による処理を比較した。単位はデシベルである。スキャナの位置制御は図2(c)のように連続的に位置を変化させる場合である。また撮像のタイミングは図3(b)のように等間隔にサンプリングする場合である。撮影対象は正常眼の黄斑を中心に網膜6mm程度の範囲を測定した。ライン数は2048である。この同じ元データを用いてそれぞれ、(1)2048ラインから4ライン毎を抜き出して、512ラインの合成をしない断層像を作成した場合、(2)2048ラインから2ライン毎に抜き出して1024ラインにし、さらに隣接する2ラインを合成して512の断層像にした場合、(3)2048ラインの4ラインを合成して512ラインの断層像にした場合、である。実数に変換する前で合成した場合は、合成の本数が多くなるほどSNRが向上しているのが分かる。一方、実数に変換した後に合成した場合、SNRは概ね一定であることが分かる。ただし、処理をしない場合と実数後に平均化した場合を比べると、より滑らかな画像が得られる。なお、ここでのSNRは、各画素のうちの最大の値に対する、各行のノイズのRMS(Root Mean Square)のうち最低の値との比である。
【0045】
【表1】

【0046】
本実施例では、所定時間で取得した信号を合成することによって、高画質の画像を得ることができる。
【0047】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例の信号処理では、フーリエ変換後に、位相調整を行い、その後信号の合成を行う。
【0048】
(信号処理工程)
図6を用いて、本実施例の信号処理を説明する。工程A4とA5の間に、位相調整と合成の工程がある場合である。ここでは、実施例2との差について述べる。
工程P1で、複素数データに対して位相調整を行う。ここでは隣接する3本の配列の位相を調節する。まずデータを極座標に変換する。極座標では、振幅成分と位相成分を得ることができる。3本の一番目が3j列(jは0〜511の整数)として、それに対して、3j+1列の1次元配列の位相を調整する。(または3jと3j+1の合成結果に対して3j+2列の調整する。)まず、3j+1列の配列の位相成分を変化させた配列を新たに作る。変化は例えば0から350度まで10度刻みとすると、36通りの1次元配列ができる。
【0049】
工程M3で、合成させる。3j列の1次元配列に36通りの1次元配列をそれぞれ合成する。ここでは、単純に平均を行い、36通りの配列を新たに得ることができる。
【0050】
工程A5で、実数データを得る。合成した36通りの配列に対して、実数の配列を36通り得る。
【0051】
工程P2で、選択を行う。合成した36通りの配列において、信号が最大になる場合を選択する。実施例1、2では主にノイズの除去の効果があったが、本実施例により信号の最大化を行うことができる。また、ランダムノイズであれば、位相を調整してもランダムなのでノイズの除去の効果は変わらない。
工程P3で、合成が終了したかを判断する。すなわち、3j列から3j+2列の3本の合成を行い、新たに3jの列を作る。これが全てのjについて終了しているかどうかである。終了している場合には工程A6に進む。終了していない場合は工程P1に戻る。
本実施例のように隣り合うラインのデータを用いて高画質の画像を得ることができる。
【0052】
上述の本発明の光断層画像生成方法は、各工程を行う手順をコンピュータープログラムとし、コンピューターを用いて実行することができる。
【符号の説明】
【0053】
201 光源
202 光ファイバー
203 レンズ
204 ビームスプリッタ
205 対物レンズ
206 フォーカス調整機構
207 分散補償ガラス
208 XYスキャナ
209 参照ミラー
210 ミラー調整機構
211 分光器
212 コンピュータ
213 参照光
214 測定光
215 戻り光
216 角膜
217 眼
218 網膜
301、302、303 測定間隔
304 移動距離
401 フォトカプラ(ファイバーカプラ)
402 サーキュレーター
403 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の断層像を生成する光断層画像生成方法であって、信号を取得する工程、フーリエ変換を行なう工程、及び断層画像を得る工程を含み、さらに、所定時間に取得した複数の信号を合成する工程又は所定時間に取得した複数の信号をフーリエ変換した後に合成する工程を含むことを特徴とする光断層画像生成方法。
【請求項2】
前記所定時間は、被検査物を走査する速度と信号の取得に用いる測定光の横分解能から計算されることを特徴とする請求項1に記載の光断層画像生成方法。
【請求項3】
前記合成する工程が、複数の信号を平均する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光断層画像生成方法。
【請求項4】
前記フーリエ変換した後に合成する工程が、複素数の状態で合成するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光断層画像生成方法。
【請求項5】
前記フーリエ変換した後に合成する工程が、実数の状態で合成するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光断層画像生成方法。
【請求項6】
前記フーリエ変換した後に合成する工程を含み、位相の調整を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光断層画像生成方法。
【請求項7】
前記位相の調整が信号を最大になるように調整することを特徴とする請求項6に記載の光断層画像生成方法。
【請求項8】
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を測定光路を介して被検査物に導くと共に前記参照光を参照光路を介して参照ミラーに導き、
前記被検査物によって反射あるいは散乱された前記測定光による戻り光と、前記参照ミラーによって反射された前記参照光と、これらの戻り光と参照光による合波光を用い、前記被検査物の断層画像を生成する光断層画像生成装置であって、
被検査物を走査する手段と、撮像のタイミングを制御する手段と、を有し、
さらに所定時間に取得した信号を合成する手段を有することを特徴とする光断層画像生成装置。
【請求項9】
前記所定時間は、被検査物を走査する速度と前記測定光の横分解能から計算されることを特徴とする請求項8に記載の光断層画像生成装置。
【請求項10】
前記走査がステップ状であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光断層画像生成装置。
【請求項11】
前記撮像のタイミングが複数の間隔の組み合わせであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の光断層画像生成装置。
【請求項12】
被検査物の断層画像を取得するために、前記被検査物を走査して得られる複数の信号を取得する手順と、
前記複数の信号の内、所定時間に取得した複数の信号を合成する手順と、
前記合成した信号をフーリエ変換する手順と、
前記フーリエ変換された信号に基づき、断層画像を生成する手順とをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
被検査物の断層画像を取得するために、前記被検査物を走査して得られる複数の信号を取得する手順と、
前記取得した複数の信号をフーリエ変換する手順と、
前記フーリエ変換された複数の信号の内、所定時間に取得した複数の信号がフーリエ変換された複数の信号を合成する手順と、
前記合成された信号に基づき、断層画像を生成する手順とをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183390(P2012−183390A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148527(P2012−148527)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2009−244696(P2009−244696)の分割
【原出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】