説明

光治療プローブ及び光治療装置

【課題】本発明は、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することができる光治療プローブ及び光治療装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ケース7と、前記ケース7内部に超音波信号を送受信する圧電素子8と、前記圧電素子8の前部に配置された音響整合層10と、前記音響整合層10の前部に配置された音響レンズ11と、前記音響レンズ11の前部に配置された導光レンズ12と、前記圧電素子8の後部に配置されたバッキング材9と、前記導光レンズ12内に光を入射可能に配置された複数の光源13とを備え、前記導光レンズ12は、前記光源13から出射した光の波長に応じて光を透過する導光体で形成され、生体の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有し、且つ、前記音響レンズ12と略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療プローブ及び光治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光治療装置は、手、関節、手首、足、足首、ひざ等の患部に光を照射することにより、筋肉・関節の慢性非感染性炎症による疼痛の緩解やリウマチを発症した関節の治療を行うもので、光源からの治療光として赤外光を直接もしくは導光路を介して患部に向けて非接触状態で照射する構成となっていた。
【0003】
特にリウマチを発症した関節の治療には、患部の深部組織まで治療光を照射させないと治療効果が顕著に現れない。このリウマチは、症状が重篤になると関節が変形し、光治療すべき深部組織の位置が分かり難くなる。また、症状の進行度合いも把握できないため、適切な治療が行えない。
【0004】
一方、患部の深部組織の位置の特定や症状の度合いを把握して光治療を行うものとして、レーザ光出射部と超音波信号を送受信する圧電素子の両方を設けた光治療プローブがある(例えば、下記特許文献1)。
これは、リウマチを発症した関節の治療を想定したものではなく、体膣内のレーザ治療を行うためのものであるが、超音波診断画像で患部を監視して光治療を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−38946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、超音波診断画像で得た光治療すべき患部の深部組織の位置の特定が困難であるため、適切な部位に光照射できず、適切な治療が行えないという課題を有していた。すなわち、超音波診断画像を撮像するためには、光治療プローブに備えられた超音波信号の送受信を介する面(特許文献1では音響整合層)と生体とを接触させる必要があるが、前記従来の構成は、光治療プローブに備えられたレーザ光出射部が、超音波信号の送受信を介する面にまで貫通したものであるため、そのレーザ光出射部に相当する超音波診断画像の分解能が悪くなる。特に超音波診断画像のレーザ光出射部に相当する部分の深さ方向に対する分解能が悪くなり、その結果、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定が困難となる。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、光治療を行う光源と超音波信号を送受信する圧電素子の両方を設けた光治療プローブにおいても、高い分解能の超音波診断画像を得ることができ、また、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することができ、その結果、適切な治療を行うことが可能な光治療プローブ及び光治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明の光治療プローブ及び光治療装置は、ケースと、前記ケース内部に超音波信号を送受信する圧電素子と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の前部に配置された音響整合層と、前記超音波信号
を生体に向けて送信する方向に対して前記音響整合層の前部に配置された音響レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響レンズの前部に配置された導光レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の後部に配置されたバッキング材と、前記導光レンズ内に光を入射可能に配置された複数の光源とを備え、前記導光レンズは、前記光源から出射した光の波長に応じて光を透過する導光体で形成され、生体の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有し、且つ、前記音響レンズと略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成したもので、これにより初期の目的を達成することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光治療プローブ及び光治療装置によれば、ケースと、前記ケース内部に超音波信号を送受信する圧電素子と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の前部に配置された音響整合層と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響整合層の前部に配置された音響レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響レンズの前部に配置された導光レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の後部に配置されたバッキング材と、前記導光レンズ内に光を入射可能に配置された複数の光源とを備え、前記導光レンズは、前記光源から出射した光の波長に応じて光を透過する導光体で形成され、生体の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有し、且つ、前記音響レンズと略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成したものであるので、高い分解能の超音波診断画像を得ることができるため、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することができる。また、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することで、患部に対して適切な位置に、適切な出力の光を照射することができるため、適切な治療を行うことが可能になる。
【0010】
また、患部と接触した光治療プローブに備えられた超音波信号の送受信を介する面から患部に対して光治療を実施する強い光が照射され、患部と接触していないプローブの光治療プローブに備えられた超音波信号の送受信を介する面に対しては強い光の照射を著しく抑制することができるため、誤って強い光が直接眼に照射されるのを防止することができ、眼にも安全な光治療を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における光治療プローブ及び光治療装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における光治療プローブの正面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における光治療プローブ前部の側断面図
【図4】本発明の実施の形態1における光治療プローブ前部の上部断面図
【図5】本発明の実施の形態1における光治療プローブの導光レンズの光照射状態を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における光治療プローブ及び光治療装置の制御ブロック図
【図7】本発明の実施の形態1における光治療プローブ及び光治療装置の動作フローチャート
【図8】本発明の実施の形態1における光治療プローブ及び光治療装置を用いて指関節を測定したBモードの超音波診断画像の模式図
【図9】本発明の実施の形態1における光治療プローブ4及び光治療装置1を用いてドプラ法により指関節を測定した超音波診断画像の模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の光治療プローブ及び光治療装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ及び光治療装置の斜視図である。
【0014】
光治療装置1は、超音波診断画像を表示する表示部2と超音波診断画像の診断及び光治療を行うための各種設定操作を行う操作部3とを備えている。また、光治療プローブ4は、電気信号の送受信を行うケーブル5と、このケーブル5と連結したコネクタ6とを備え、光治療装置1と光治療プローブ4とが接続されている。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4の正面断面図である。
【0016】
図2において、光治療プローブ4のケース7は、圧電素子8、バッキング材9、音響整合層10、音響レンズ11、導光レンズ12、光源13及び反射面16を格納している。なお、図が煩雑になるのを防ぐため、圧電素子8及び光源13それぞれと接続されたケーブル5については図示していない。
【0017】
圧電素子8は、電気信号を加えることで歪みを生じて超音波信号を発生させるものであり、逆に、超音波信号を加えると歪みを生じて電気信号に変換することができる性質を持つ。この圧電素子8は、光治療装置1からケーブル5を介して送信された電気信号を受けると歪みを生じて超音波信号を発生させ、この発生した超音波信号は生体に向けて送信される。また、圧電素子8から送信された超音波信号は生体に到達し、その生体の音響インピーダンスに応じた強さで反射される。この生体の音響インピーダンスに応じた強さで反射した超音波信号を圧電素子8が受けると歪みが生じることで電気信号に変換し、この変換した電気信号はケーブル5を介して光治療装置1へと送信される。光治療装置1が受信したこの電気信号に基づき光治療装置1内で超音波診断画像を生成して表示部2にその画像が表示される。
【0018】
バッキング材9は、超音波信号を生体に向けて送信する方向に対し、圧電素子8の後部に配置されている。圧電素子8から発生した超音波信号は、超音波信号を生体に向けて送信する方向の逆方向にも送信され、これにより不要な振動が発生してしまう。このバッキング材9は、逆方向の送信された超音波信号を吸収して不要な振動を抑制するものである。
【0019】
音響整合層10は、超音波信号を生体に向けて送信する方向に対し、圧電素子8の前部に配置されている。これは、圧電素子8と生体とでは音響インピーダンスの差が大きいため、超音波信号の多くが生体内に入ることなく反射し、圧電素子8から送信された超音波信号が効率良く生体に伝達することができなくなるのを回避するためである。この音響整合層10は、圧電素子8と生体の中間の音響インピーダンスを有する材質で構成されたものであり、これにより超音波信号を効率良く生体内に伝達することができる。
【0020】
音響レンズ11は、超音波信号を生体に向けて送信する方向に対し、音響整合層10の前部に配置されている。この音響レンズ11は、光治療プローブ4から生体へ向けて送信される超音波信号を集束する役割を果たし、例えばシリコンゴムのような生体と略同一の音響インピーダンスを有し、音響レンズ11内に伝達した超音波信号の音速が生体内に伝達した超音波信号の音速よりも遅くなるような材質で形成されている。この音響レンズ11により超音波信号を集束することで、超音波診断画像の分解能を向上することができる。
【0021】
この圧電素子8、バッキング材9、音響整合層10及び音響レンズ11の構成は、一般
的な超音波診断に用いられる超音波プローブと同じ構成である。
【0022】
導光レンズ12は、光源13から出射する光の波長に応じた光を透過する導光体で形成され、全体的に略半球の形状である。この導光レンズ12は、超音波信号を生体に向けて送信する方向に対し、音響レンズ11の前部に配置されている。この導光レンズ12の外表面には、生体と接触させる接触面14(図3参照)を有している。光源13は、略半球の形状の導光レンズ12の下方端部に複数配置され、光源13から出射した光は、導光レンズ12内に入射できるように配置されている。反射面16は、光源13から導光レンズ12に入射した光を、音響レンズ11から導光レンズ12方向に向けて反射するように、音響レンズ11と導光レンズ12との間に設けている。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4前部の側断面図である。
【0024】
音響レンズ11はシリコンゴムで形成され、圧電素子8から送信された超音波信号を集束し、導光レンズ12を介して光治療プローブ4から生体へ向けて超音波信号を送信する。
【0025】
導光レンズ12は、全体的に略半球の形状であり、生体と接触させて超音波信号の送受信及び治療光の照射を行う接触面14とその接触面14に対向する対向面15を有している。対向面15は、この対向面15と接する音響レンズ11の形状に沿った形状を有し、導光レンズ12と音響レンズ11は、密着して形成することが可能である。また、この導光レンズ12は、光源13から出射する光の波長に応じた光を透過する導光体で形成され、略半球の形状の導光レンズ12の下方端部に配置された光源13から、この端部に向けて光を照射させて導光レンズ12内部に光が入射できるように構成されている。この導光レンズ12は、生体の光の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有する材質のものを用いる必要がある。すなわち、1.4以上の屈折率を有する材質で構成されたものである。また、音響レンズ11と導光レンズ12との音響インピーダンスが大きく異なると生体内に超音波信号が到達され難くなり、高い分解能の超音波診断画像を得ることが困難になる。そのため、導光レンズ12と音響レンズ11の音響インピーダンスが近い、或いは略同一である材質である必要がある。
【0026】
従って、導光レンズ12の材質は、1.4以上の屈折率を有し、音響レンズ11と略同一の音響インピーダンスを有するシリコンゴムが最も好ましい材質であるといえる。ただし、導光レンズ12は、光源13から出射する光の波長に応じた光を透過する導光体である必要があるが、音響レンズ11は導光体である必要はない。
【0027】
光源13は、略半球の形状の導光レンズ12の下方端部から光を照射させて導光レンズ12内部に光が入射するように配置されている。また、光源13は、図4に示すようにケース7の内周縁に所定の間隔を置いて複数備え、これら光源13は、それぞれの光源13の光の主光軸が互いに対向しない非対向状態で配置されている。ここでいう主光軸とは、光源の光の最高光度を結ぶ線をいう。
【0028】
なお、光源13それぞれの光の主光軸が対向する位置の導光レンズ12の下方端部に、光量を検出するフォトダイオードのような光センサを設け、患部へ照射した光量を把握することで、治療時間の設定の指標、治療の進行の指標等とすることができるため、より好ましい構成となる。この患部へ照射した光量の把握は、導光レンズ12に患部が接触していない場合の光量と導光レンズ12に患部が接触した場合の光量とを比較し、その差分に相当する光量を、光治療に供された光量として把握することで容易に算出することができる。
【0029】
反射面16は、対向面15と音響レンズ11との間に配置され、導光レンズ12内に入射して対向面15に到達した光源13の光が音響レンズ11に吸収されないように、対向面15から接触面14に向けて光が反射するように設けてある。この反射面16は、例えば、アルミニウムのような金属を対向面15に蒸着することで形成できる。ただし、この反射面16は、圧電素子8が送受信する超音波信号の波長より厚みを薄くする必要がある。アルミニウムのような金属で構成された反射面16は、シリコンゴムで形成された音響レンズ11よりも音響インピーダンスが非常に大きい。例えば、反射面16の厚みが圧電素子8から送信された超音波信号の波長より厚い場合、この音響インピーダンスの差により超音波信号の多くが反射面16により反射してしまい、生体に超音波信号が到達しがたくなることから、高い分解能の超音波診断が得られなくなる。更に、圧電素子8から送信された超音波信号の波長より厚みが薄い反射面16を用いても、測定した超音波診断画像に虚像が現れる等の影響を与えることがある。一般的に超音波診断画像に影響を与えない反射面16の厚みは、圧電素子8から送信された超音波信号の波長の1/30以下が好ましいとされており、この反射面16の厚みは、より薄いほど超音波診断画像に与える影響は少なくなる。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4の導光レンズ12の光照射状態を示す図である。
【0031】
図5は、光の屈折率が1.49であり、光源13から出射した光の波長に応じた光を透過する導光体のシリコンゴムで形成された導光レンズ12の端部を示し、その光照射状態を示している。説明を容易にするため、導光レンズ12の形状を円筒状で示している。なお、略半球状の導光レンズ12においても、円筒状の導光レンズ12と下記に説明する光照射状態は同様である。
【0032】
光源13から出射した光は、導光レンズ12の下方端部から導光レンズ12内に入射される。導光レンズ12の接触面14に生体が接触していない場合、シリコンゴム(屈折率1.49)から空気(屈折率1.00)に出射する光の界面の臨界角17aは42.155度となる。そのため、導光レンズ12に入射した光が、図5の(a)に相当する42.155度以上の入射角で導光レンズ12内部の接触面14に到達すると、導光レンズ12の接触面14内部で全反射し、その反射した光は、導光レンズ12内部の接触面14と対向面15の反射面16とで反射を繰り返しながら図5の(a)から(b)方向へ進行する。一方、導光レンズ12内部に入射した光が、図5の(a)に相当する42.155度より小さい入射角で導光レンズ12内部の接触面14に到達すると、導光レンズ12外部に光が出射されることになる。
【0033】
それに対し、導光レンズ12の接触面14に生体が接触している場合、導光レンズ12に生体が接触した接触面14の反射状態が変化する。導光レンズ12に生体が接触した接触面14がシリコンゴム(屈折率1.49)から生体の皮膚(屈折率1.4)に出射することとなり、光の界面の臨界角は臨界角17aの42.155度から臨界角17bの69.984度に変化する。そのため、導光レンズ12内に入射した光が、図5の(b)に相当する69.984度より大きい入射角で導光レンズ12内部の接触面14に到達すると、導光レンズ12外部に光が出射されない。一方、導光レンズ12内に入射した光が、図5の(b)に相当する69.984度より小さい入射角で導光レンズ12内部の接触面14に到達すると、導光レンズ12から接触した生体に向けて光が出射される。
すなわち、図5の(a)から(b)の区間では、導光レンズ12の接触面14に生体が接触しないときは導光レンズ12内部の接触面14から外部には光が出射せず、生体が接触したときにのみ、その接触面14から光が生体に出射されることになる。従って、導光レンズ12の接触面14に生体が接触した部分の反射状態が変化することにより、生体が接触した部分のみにより多くの光が供与され、導光レンズ12の接触面14に生体が接触し
ていない部分においては、導光レンズ12外部への光の出射を著しく抑制することができるため、光治療に用いられる強い光が直接眼に照射されるのを防止することができる。
この導光レンズ12の接触面14に生体が接触した部分にのみ、導光レンズ12外部へ光を集中して光を出射させるためには、導光レンズ12は、生体の皮膚(屈折率1.4)の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有する材質でなければならない。
【0034】
また、高い分解能の超音波診断画像を得るためには、音響レンズ11と導光レンズ12との音響インピーダンスが略同一である必要があり、これら条件を満たすものであればいずれの材質でも本発明の光照射プローブの適用できるが、一般的に超音波プローブの音響レンズ11は、シリコンゴムで形成されている。従って、導光レンズ12の材質もシリコンゴムで形成し、更に生体の皮膚(屈折率1.4)の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率のものを用いることが最も簡便で好ましい構成となる。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4及び光治療装置1の制御ブロック図である。
【0036】
操作部3は、超音波診断画像による患部の特定及び光治療を行うための各種設定操作を行うものであり、制御部18と接続されている。制御部18は、光治療装置1及び光治療プローブ4を制御するものである。電気信号送信部19は、制御部18及び光治療プローブ4の圧電素子8と接続し、制御部18により操作部3で設定された情報を基に超音波信号を生体に送信するための電気信号を圧電素子8に送信するものである。この圧電素子8は、電気信号送信部19から送信された電気信号を基に生体に超音波信号を送信し、生体に到達した超音波信号は、その生体の音響インピーダンスに応じて反射される。この反射した超音波信号は、圧電素子8で受信されることで超音波診断画像を生成するための電気信号に変換される。
【0037】
電気信号受信部20は、この超音波診断画像を生成するための電気信号を受信し、画像生成部21へと送られる。画像生成部21は、電気信号受信部20から送信された電気信号を基に超音波診断画像を生成する。この生成した超音波診断画像の情報は、制御部18に送られ、この制御部18で超音波診断画像の座標変換が行われる。この座標変換により、超音波診断画像に撮像された生体等の大きさ等のスケールが算出され、その算出されたスケールは、座標軸として超音波診断画像に反映される。
【0038】
判定部22は、座標軸が反映された超音波診断画像を基に光照射すべき患部を特定するものである。この判定された情報は、判定結果表示処理部24と制御部18に送られる。判定部22で判定された患部の情報を制御部18に送信し、この制御部18は、この情報を基に光治療プローブ4に備えた複数の光源13それぞれの出力等の設定を行う。光源駆動部23は、光治療プローブ4に備えられた複数の光源13それぞれの出力等を設定した制御部18の情報を基に、複数の光源13それぞれを駆動する。この光源駆動部23により光源13それぞれから患部へ向けて光の照射が行われる。
【0039】
判定結果表示処理部24は、座標軸が反映された超音波診断画像を基に判定部22で判定された光照射すべき患部を示すものである。例えば、判定された光照射すべき患部に対し、色付けするなどして光治療すべき患部を分かりやすくするための表示処理が施される。この判定結果表示処理部24で処理された超音波診断画像は、表示部2に表示される。
【0040】
図7は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4及び光治療装置1の動作フローチャートである。
【0041】
先ず、光治療装置1の操作部3で超音波診断画像による患部の特定及び光治療を行うた
めの各種設定操作を行う(図7のS1)。ここでは、測定する患部の部位に応じた測定条件、患部へ送信する超音波信号の出力、超音波診断モードの選択(Bモード、ドプラ法等)、光源13から照射する光の出力等を設定する。次に、患部へ光治療プローブ4を接触させ(図7のS2)、操作部3で設定された情報を基に光治療装置1の電気信号送信部19から光治療プローブ4の圧電素子8に向けて超音波信号を送信するための電気信号を送信する(図7のS3)。
【0042】
この圧電素子8に送信された電気信号を圧電素子8が超音波信号に変換し、患部へ向けて超音波信号を送信する(図7のS4)。患部へ向けて送信された超音波信号は、その患部の音響インピーダンスに応じて反射され、この反射した超音波信号は、光治療プローブ4の圧電素子8で受信される(図7のS5)。この圧電素子8で受信された超音波信号は、圧電素子8により電気信号に変換され、この電気信号は電気信号受信部20で受信される(図7のS6)。
【0043】
この圧電素子8により変換された電気信号は、超音波信号を反射した患部の音響インピーダンスに対応しており、この電気信号は、電気信号受信部20を経由して画像生成部21に送信され、画像生成部21により超音波診断画像の生成を行う(図7のS7)。この超音波診断画像は、制御部18を介して判定部22へと送信される。この判定部22は、超音波診断画像から光治療すべき患部の特定を行う(図7のS8)。判定部22で患部が特定されない、または特定し難い場合は、再度図7のS2に戻り、光治療プローブ4の患部に接触させる位置を変更して患部の特定を行う。
【0044】
判定部22で患部が特定された場合、その特定した患部の大きさ、深さ等位置情報が算出される。この特定した患部の情報を基に制御部18で複数の光源13それぞれの光の出力が設定される(図7のS9)。この制御部18で設定された複数の光源13それぞれの光の出力の設定を基に光源駆動部23から複数の光源13それぞれを駆動し、複数の光源13それぞれから患部へ向けて最適な出力の光が照射され、光治療が実施される(図7のS10)。
【0045】
図8は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4及び光治療装置1を用いて指関節を測定したBモードの超音波診断画像の模式図である。
【0046】
図8は、超音波信号の振幅を輝度として表示したBモードで撮像したものである。図8(a)は正常患者の指関節、図8(b)はリウマチを発症した患者の指関節を示している。Bモードの超音波診断画像は、生体に送信された超音波信号に対し、各生体部位特有の音響インピーダンスに応じて超音波信号が反射される。すなわち、音響インピーダンスが他の生体部位の音響インピーダンスと大きく異なる生体部位は超音波信号を強く反射し、他の生体部位の音響インピーダンスと差が小さい生体部位は超音波信号が弱く反射する。超音波診断画像には、この反射の強いものほど輝度が高いものとして白色で表現される。一般的に、この反射の強さに応じて、強いものから順に高エコー輝度、中等度エコー輝度、低エコー輝度、無エコー輝度として分類される。具体的には、骨は高エコー輝度で、皮膚、靱帯、筋膜、関節包、増生滑膜、腱等は中等度エコー輝度で、脂肪、筋、神経は低エコー輝度で、軟骨、滑液、水は無エコー輝度として表現される。従って、指関節をBモードの超音波診断画像を撮像した場合、図8のように骨25は白く表示され、その他の部位は、骨と比較して黒く表示される。
【0047】
関節は、その関節周囲を外側は繊維膜、内側は滑膜から構成される関節包に包まれている。この滑膜は、互いに重なり合った2〜3層の滑膜細胞によって構成され、通常約25μmの厚みを有している。超音波診断画像においては、この滑膜26a、26bは、中等度エコー輝度として表現され骨25よりも輝度が黒く、その他の組織よりは白く表示され
るため、全体的に薄灰色で表示される。
【0048】
図8(b)に示すように、リウマチを発症した患者の指関節は、この滑膜細胞が異常に増殖する。超音波診断画像においては、図8(a)のように正常患者の指関節と比較して、顕著に厚みのある滑膜26bが観察される。この異常に増殖した滑膜細胞に対して、治療光を照射することで症状の緩和を図ることができる。
【0049】
本発明の光治療装置1及び光治療プローブ4は、測定した超音波診断画像を基にこの光治療すべき患部の特定を行い、この患部の位置、症状の進行度合いに応じて光治療を行うものである。リウマチ患者の指関節の滑膜26bを治療する場合、光治療装置1の判定部22で高エコー輝度部分を検出することで指関節の骨25を特定し、光治療プローブ4を接触する側に対して骨25近傍の上部に現れる中等度エコー輝度で表示される部分を滑膜26bとして特定する。更にこの判定部22が、特定された滑膜26b部分のうち、光治療プローブ4を当てる側から深さ方向に対する滑膜26bの厚みを測定することで、光治療すべき患部を特定し、患部の位置及び症状を把握する。そして、これらの情報を基に患部にむけて光源13から適切な出力の光を照射することで、適切な光治療を実施するものである。
【0050】
例えば、上記方法により判定部22で特定された滑膜26bの厚みが、正常患者の滑膜26aの厚み(例えば25μm)よりも大きい予め所定の閾値を設け、この閾値より大きい厚みを有する滑膜26bを光治療すべき患部として判定することで、患部の特定を行うことができる。また、患部として特定した滑膜26bの厚みを測定することでリウマチの症状の進行度合いを把握することができ、この異常に増殖した滑膜26bの深さ方向に対する位置及び光治療プローブ4の接触方向に対する位置の算出を行う。これら判定部22で判定された情報を基に制御部18は、複数の光源13それぞれの光の出力の設定を行う。すなわち、滑膜26bの厚み、滑膜26bの深さ方向及び光治療プローブ4の接触方向の位置により、複数の光源13それぞれの光の出力の設定が行われる。そして、その情報を光源駆動部23に送信し、この設定された情報を基に光源駆動部23で複数の光源13それぞれから適切な出力の光が照射され、光治療が行われる。
【0051】
なお、実施の形態1ではリウマチ患者の指関節の滑膜26bの測定及び治療について説明したが、本発明はリウマチ患者の指関節の治療に限定されず、超音波診断を行う各生体部位に応じた条件を、操作部3で設定することで実施することができる。その際は、各生体部位に応じたエコー輝度、及びそのエコー輝度の配置等を基に操作部3で設定を行う。
【0052】
図9は、本発明の実施の形態1における光治療プローブ4及び光治療装置1を用いてドプラ法により指関節を測定した超音波診断画像の模式図である。
ドプラ法で撮像した超音波診断画像は、超音波信号のドップラー効果により反射した超音波信号の周波数が変化することを利用し、物体が光治療プローブ4に近づいているのか遠ざかっているのかを判定でき、主に血流状態を把握する場合に用いられる。図9のドプラ法で撮像した超音波診断画像は、図8のBモードで撮像した超音波診断画像上に血流の流速変化を色で表現したものである。例えば、血流のような物体が光治療プローブ4に近づいている場合には赤色で、遠ざかっている場合には青色で表現される。
【0053】
図9は、図8同様、図9(a)は正常患者の指関節、図9(b)はリウマチを発症した患者の指関節を示している。リウマチを発症した患者の関節は、滑膜26bの異常な増殖に伴い、滑膜26bもしくはその近傍に通常確認できない異常な血流27が生じることが多い。従って、判定部22による図8に示したBモードの超音波診断画像の判定に加え、ドプラ法で検出されるこの異常な血流27の検出を判定部22の判定で用いることでより精度の高い判定ができる。
【0054】
以上の構成から本発明の光治療装置1及び光治療プローブ4を用いることで、光源13と超音波信号を送受信する圧電素子8とを設けた光治療プローブ4においても、高い分解能の超音波診断画像を撮像することができ、また、光治療装置1により光治療すべき深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを正確に把握することができる。そのため、光治療すべき深部組織の位置や症状の進行度合いに応じて患部に適切な光照射を行うことができるため、適切な光治療を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光治療プローブ及び光治療装置によれば、ケースと、前記ケース内部に超音波信号を送受信する圧電素子と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の前部に配置された音響整合層と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響整合層の前部に配置された音響レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響レンズの前部に配置された導光レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の後部に配置されたバッキング材と、前記導光レンズ内に光を入射可能に配置された複数の光源とを備え、前記導光レンズは、前記光源から出射した光の波長に応じて光を透過する導光体で形成され、生体の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有し、且つ、前記音響レンズと略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成したものであるので、高い分解能の超音波診断画像を得ることができるため、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することができる。また、光照射すべき患部の深部組織の位置の特定や症状の進行度合いを把握することで、患部に対して適切な位置に、適切な出力の光を照射することができるため、適切な治療を行うことが可能になる。
【0056】
このため、早期リウマチで滑膜の増殖のみ起きている患者からさらに症状の進行したリウマチ患者の関節の治療を行う光治療プローブ及び光治療装置として広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0057】
1 光治療装置
2 表示部
3 操作部
4 光治療プローブ
5 ケーブル
6 コネクタ
7 ケース
8 圧電素子
9 バッキング材
10 音響整合層
11 音響レンズ
12 導光レンズ
13 光源
14 接触面
15 対向面
16 反射面
17a、17b 臨界角
18 制御部
19 電気信号送信部
20 電気信号受信部
21 画像生成部
22 判定部
23 光源駆動部
24 判定結果表示処理部
25 骨
26a、26b 滑膜
27 異常な血流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内部に超音波信号を送受信する圧電素子と、
前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の前部に配置された音響整合層と、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響整合層の前部に配置された音響レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記音響レンズの前部に配置された導光レンズと、前記超音波信号を生体に向けて送信する方向に対して前記圧電素子の後部に配置されたバッキング材と、前記導光レンズ内に光を入射可能に配置された複数の光源とを備え、
前記導光レンズは、前記光源から出射した光の波長に応じて光を透過する導光体で形成され、生体の屈折率と比較して同一或いは高い屈折率を有し、且つ、前記音響レンズと略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成された光治療プローブ。
【請求項2】
前記導光レンズは、1.4以上の屈折率を有する材質である請求項1に記載の光治療プローブ。
【請求項3】
前記音響整合層は、前記圧電素子と前記生体との中間の音響インピーダンスを有する材質で構成された請求項1又は2に記載の光治療プローブ。
【請求項4】
前記音響レンズは、生体と略同一の音響インピーダンスを有する材質で構成された請求項1〜3のいずれか一つに記載の光治療プローブ。
【請求項5】
前記導光レンズは、生体に接触させる接触面と前記接触面に対向する対向面とを有し、前記対向面は、前記対向面と接触する前記音響レンズの面と略同一である請求項1〜4のいずれか一つに記載の光治療プローブ。
【請求項6】
前記対向面と前記音響レンズとの間には、前記対向面から前記接触面に向けて光が反射可能に形成された反射面を備えた請求項5に記載の光治療プローブ。
【請求項7】
前記反射面は、前記圧電素子から送受信される超音波信号の波長以下の厚みで形成された請求項4又は5に記載の光治療プローブ。
【請求項8】
前記複数の光源は、前記導光レンズ端部から前記導レンズ内に光を入射する請求項1〜7のいずれか一つに記載の光治療プローブ。
【請求項9】
前記複数の光源は、前記ケースの内周縁に所定の間隔を置いて配置された請求項8に記載の光治療プローブ。
【請求項10】
超音波信号を送受信する圧電素子を備えた光治療プローブと接続される光治療装置であって、
前記光治療装置及び前記光治療プローブを制御する制御部と、
前記圧電素子に電気信号を送信する電気信号送信部と、
前記圧電素子が受信した超音波信号から変換された電気信号を受信する電気信号受信部と、
前記電気信号から超音波診断画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部で生成された超音波診断画像を基に患部の特定を行う判定部と、
前記光源を駆動する光源駆動部とを備え、
前記制御部は、前記判定部で特定された患部を基に光源に供給する出力設定を行う光治療装置。
【請求項11】
前記超音波診断画像は、Bモード或いはドプラ法の少なくともいずれか一方である請求項10に記載の光治療装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記患部の大きさ及び位置情報により判定を行う請求項10又は11に記載の光治療装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記患部の大きさに対し、予め設定された所定の閾値と比較して患部の特定を行う請求項12に記載の光治療装置。
【請求項14】
前記患部は滑膜であり、前記判定部は滑膜の厚み情報及び位置情報を基に前記光源から光照射を行う滑膜を判定する請求項12又は13に記載の光治療装置。
【請求項15】
前記判定部は、前記滑膜の厚みが予め設定された閾値以上の場合には、光照射すべき患部と特定する請求項14に記載の光治療装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記判定部で特定された滑膜に対して前記滑膜の厚み及び前記滑膜の位置情報に基づき光源に供給する出力設定が行われる請求項14又は15に記載の光治療装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−200374(P2011−200374A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69635(P2010−69635)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】