説明

光波長変換ユニット

【課題】高い光の取り出し効率を有する光波長変換ユニットを提供する。
【解決手段】光波長変換ユニット42において、光波長変換部材44は、半導体発光素子12の発光面12a上に配置される。光波長変換部材44は、半導体発光素子12から発せられ入射面44aから入射した青色光を波長変換して黄色光を発し、出射面44bから出射する。光反射層46は、光波長変換部材44の内部に光を反射すべく、光波長変換部材44の表面のうち入射面44aおよび出射面44b以外の側面44c上に設けられる。光波長変換部材44は、側面44cの平均粗さRaが0.5μm以上となるよう、粗面加工が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長変換ユニットに関し、特に、入射した光を波長変換して出射する光波長変換部材を備える光波長変換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子の用途が、車両用前照灯や一般照明など急激に拡大している。このような半導体発光素子を用いて白色光を得る場合は、青色や近紫外線、短波長可視光などの光を発する半導体発光素子の発光面に対向して、これらの光によって励起され、別の波長の光を出射する光波長変換部材が一般的に配置される。このため、半導体発光素子を含む発光装置の輝度を高めるためには、半導体発光素子自体の輝度を高めることだけでなく、光波長変換部材による光の取り出し効率を高めることも極めて重要である。ここで、光の取り出し効率を高めるため入射面または出射面を粗面とした蛍光体含有部材をLEDに対向して配置した照明装置が提案されいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−124189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献のように光波長変換部材の出射面を粗面とした場合においても、一部の光はその出射面で光波長変換部材の内部に反射する。このような光の中には、部材内部を進行して部材の側面にまで達し、側面から出射される光が存在する。しかしながら、このように出射面以外の面から光が出射すると出射面から出射する光の量が減少するため、出射面の輝度を高めることが困難となる。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高い光の取り出し効率を有する光波長変換ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光波長変換ユニットは、入射面から入射した光を波長変換して出射面から出射する光波長変換部材と、光波長変換部材の内部に光を反射すべく、光波長変換部材の表面のうち入射面および出射面を除く所定面上に設けられた光反射層と、を備える。光波長変換部材は、所定面の平均粗さRaが0.5以上である。
【0007】
発明者による研究開発の結果、このように入射面および出射面を除く所定面において、表面をこのような粗面とし、さらにその上に光反射層を設けることで、出射面から出射する光の輝度を高めることができることが判明した。したがってこの態様によれば、当該所定面からの光の出射を回避でき、光波長変換部材からの光の取り出し効率を高めることができる。
【0008】
出射面上に設けられ、光波長変換部材よりも屈折率の低い低屈折率膜をさらに備えてもよい。このように低屈折率膜を設けることで、低屈折率膜がないときに内部に反射されていた光の一部を外部に出射することが可能となる。このため、これによっても光の取り出し効率を高めることができる。
【0009】
入射面上に設けられ、光波長変換部材の励起波長の光を透過し、光波長変換部材の蛍光波長の光を反射する光学フィルタをさらに備えてもよい。この態様によれば、出射面などで内部に反射され入射面から出射される光を抑制することができる。このため、これによって出射面から出射する光の量を増やすことができ、光の取り出し効率を高めることができる。
【0010】
出射面には、高さが1μm以下の凹凸が設けられていてもよい。発明者による研究開発の結果、出射面にこのような凹凸を設けることで、所定面を粗くして光反射層を設けることと相俟って出射面の輝度が高まることが判明した。したがってこの態様によっても、光の取り出し効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い光の取り出し効率を有する光波長変換ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】比較例に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図3】実施例2に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図4】実施例3に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図5】実施例4に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図6】実施例5に係る発光モジュールの構成を示す図である。
【図7】比較例および各実施例による輝度の測定結果、およびシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について、比較例と比較しながら詳細に説明する。
【0014】
(比較例)
図1は、比較例に係る発光モジュール10の構成を示す図である。発光モジュール10は、半導体発光素子12、基板14、および光波長変換部材18を有する。
【0015】
半導体発光素子12は、フリップチップ型のLEDを用いた。半導体発光素子12は、下面14cをAuバンプ22によって基板14のパターンにボンディングし固定した。なお、半導体発光素子12はフリップチップ型に限られないことは勿論であり、例えばフェイスアップ型または垂直チップ型であってもよい。半導体発光素子12は、青色光を発するものを用いた。なお、半導体発光素子12として、近紫外線・短波長可視光を発するものを用いてもよい。
【0016】
基板14は、AlN(窒化アルミ)で形成されたものを用いた。基板14の上面にAuによって電極形状にパターンを設けた。なお、基板14の材質がAlNに限られないことは勿論であり、アルミナ、シリコン、ムライト、アルミニウム、銅などの他の材質によって形成されてもよい。半導体発光素子12は、基板14のパターン上にAuバンプ16を介して実装した。
【0017】
光波長変換部材18は、いわゆる発光セラミック、または蛍光セラミックと呼ばれるものであり、紫外光によって励起される蛍光体であるYAG(Yttrium Alminum Garnet)粉末を用いて作成されたセラミック素地を焼結することにより得ることができる。光波長変換部材18は、青色光によって励起され黄色光を発する。なお、光波長変換部材18は、蛍光体粉を透明なバインダと混合した粉体ペーストによって作製されてもよく、蛍光体粉とガラス粉とを混合して加熱することにより作製された蛍光体含有ガラス板であってもよい。
【0018】
なお、光波長変換部材18に含まれる蛍光体が、青色光によって励起され黄色光を発するものに限られないことは勿論である。例えば、半導体発光素子12が近紫外線・短波長可視光を発する場合、光波長変換部材18は、この光によって励起され黄色光を発する黄色蛍光体と、この光によって励起され青色光を発する青色蛍光体と、を含んでもよい。また、発光モジュール10から発する光は白色光に限られず、発光モジュール10は有色光を発するよう設けられてもよい。この場合、発光モジュール10が発する光の色に合わせて、光波長変換部材18に含められる蛍光体が適宜決定されてもい。
【0019】
光波長変換部材18は、入射面18aが半導体発光素子12の発光面12aと略同一形状となるようカットした。光波長変換部材18は、入射面18aを半導体発光素子12の発光面12aに接着剤を用いて固着した。これにより、半導体発光素子12が発した光は、入射面18aから光波長変換部材18の内部に入射し、出射面18bから外部へと出射する。
【0020】
比較例では、側面18cは粗面とはせず、平坦な面のままとしたまた、側面18c上には、アルミニウムの蒸着などによる光反射層も設けなかった。
【0021】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る発光モジュール40の構成を示す図である。以下、各実施例において同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。発光モジュール40は、半導体発光素子12、基板14、および光波長変換ユニット42を有する。光波長変換ユニット42は、光波長変換部材44および光反射層46を有する。
【0022】
光波長変換部材44は、側面44cに、平均粗さRaが0.5μm以上となるよう粗面加工が施されている以外は、比較例に係る光波長変換部材18と同様である。光反射層46は、光波長変換部材44の内部に光を反射できるよう側面44c上に設けられている。光反射層46は、側面44cにアルミニウムを蒸着させることにより形成した。なお、側面44cに銀を蒸着させることにより光反射層46を形成してもよい。また、光反射層46は側面44c以外の面に設けられてもよい。この場合、光反射層46は、光波長変換部材44の表面のうち入射面44aおよび出射面44bを除く所定面上に設けられる。
【0023】
(実施例2)
図3は、実施例2に係る発光モジュール60の構成を示す図である。発光モジュール60は、半導体発光素子12、基板14、光波長変換ユニット42、および低屈折率膜62を有する。低屈折率膜62は、光波長変換部材44よりも低い屈折率を有するシリコーンによって形成されている。なお、YAGである光波長変換部材44は約1.8の屈折率を有し、シリコーンである低屈折率膜62は約1.4の屈折率を有する。なお、低屈折率膜62の材質がこれに限定されないことは勿論である。低屈折率膜62は、均一な厚さを有する。低屈折率膜62は、光波長変換部材44の出射面44b上に配置した。
【0024】
(実施例3)
図4は、実施例3に係る発光モジュール80の構成を示す図である。発光モジュール80は、半導体発光素子12、基板14、および光波長変換ユニット82を有する。光波長変換ユニット82は、光波長変換部材84および光反射層46を有する。光波長変換部材84は、出射面84bに溝部84dが設けられている以外は、実施例1に係る光波長変換部材44と同様である。したがって、光波長変換部材84は、側面84cに、平均粗さRaが0.5μm以上となる粗面加工が施されている。また、光波長変換部材84の側面84c上に光反射層46が設けられている。溝部84dはV字状の溝であり、複数の溝部84dが出射面84b上に隙間無く設けられている。
【0025】
(実施例4)
図5は、実施例4に係る発光モジュール100の構成を示す図である。発光モジュール100は、半導体発光素子12、基板14、および光波長変換ユニット102を有する。光波長変換ユニット102は、光波長変換部材104および光反射層46を有する。光波長変換部材104は、出射面84bに、いわゆる「モスアイ」と言われる、高さが1μm以下の微細な凹凸部104dが設けられている。それ以外は、実施例1に係る光波長変換部材44と同様である。したがって、光波長変換部材104は、側面84cに、平均粗さRaが0.5μm以上となる粗面加工が施されている。また、光波長変換部材104の側面104c上に光反射層46が設けられている。
【0026】
(実施例5)
図6は、実施例5に係る発光モジュール120の構成を示す図である。発光モジュール120は、半導体発光素子12の発光面12aと光波長変換部材44の入射面44aとの間に光学フィルタ122が設けられた以外は、実施例3に係る発光モジュール60と同様に構成される。
【0027】
光学フィルタ122は、光波長変換部材44の入射面44aおよび半導体発光素子12の発光面12aの双方に接着などにより固着されている。光学フィルタ122は、光波長変換部材44の励起波長の光を透過し、光波長変換部材44の蛍光波長の光を反射する。光波長変換部材44は青色光によって励起され、黄色光を発する。このため、光学フィルタ122は、青色光を透過し、黄色光を反射するよう設けられている。このように光学フィルタ122を設けることで、光波長変換部材44によって黄色光に変換された光のうち半導体発光素子12に向かう光を再び出射面44bに向けて反射することが可能となる。
【0028】
図7は、比較例および各実施例による輝度の測定結果、およびシミュレーション結果を示す図である。比較例に比べ、実施例1は輝度が向上していることがわかる。このため、光波長変換部材の側面を粗面として、さらに光反射層を設けることにより光の取り出し効率が高められることが確認された。
【0029】
なお、シミュレーションでは、比較例と実施例1の構成のみ確認した。光解析ソフトウェアとして、SPEOS(登録商標)を用いた。シミュレーションでは、比較例に比べ、輝度は約2倍になり、大きな効果が確認された。今後、光波長変換部材の側面の表面粗さなどをさらに最適化することで、光波長変換部材の側面を粗面化しさらに光反射層を設けることによる実際の効果も高めることが可能と考えられる。
【0030】
実施例2−5も、実施例1からさらに輝度を高められることが確認された。このため、光波長変換部材の出射面上に低屈折率膜を設けること、光波長変換部材の出射面に溝部を設けること、光波長変換部材の出射面上に微細な凹凸部を設けること、および半導体発光素子の発光面と光波長変換部材の入射面との間に光学フィルタを設けることは、光波長変換部材の側面を粗面化して光反射層を設けることと相俟った効果があると考えられる。
【0031】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0032】
10 発光モジュール、 12 半導体発光素子、 12a 発光面、 14 基板、 16 Auバンプ、 18 光波長変換部材、 18a 入射面、 18b 出射面、 18c 側面、 40 発光モジュール、 42 光波長変換ユニット、 44 光波長変換部材、 44a 入射面、 44b 出射面、 44c 側面、 46 光反射層、 60 発光モジュール、 62 低屈折率膜、 80 発光モジュール、 82 光波長変換ユニット、 84 光波長変換部材、 84a 入射面、 84b 出射面、 84c 側面、 84d 溝部、 100 発光モジュール、 102 光波長変換ユニット、 104 光波長変換部材、 104a 入射面、 104b 出射面、 104c 側面、 104d 凹凸部、 120 発光モジュール、 122 光学フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面から入射した光を波長変換して出射面から出射する光波長変換部材と、
前記光波長変換部材の内部に光を反射すべく、前記光波長変換部材の表面のうち前記入射面および前記出射面を除く所定面上に設けられた光反射層と、
を備え、
前記光波長変換部材は、前記所定面の平均粗さRaが0.5μm以上であることを特徴とする光波長変換ユニット。
【請求項2】
前記出射面上に設けられ、前記光波長変換部材よりも屈折率の低い低屈折率膜をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光波長変換ユニット。
【請求項3】
前記入射面上に設けられ、前記光波長変換部材の励起波長の光を透過し、前記光波長変換部材の蛍光波長の光を反射する光学フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光波長変換ユニット。
【請求項4】
前記出射面には、高さが1μm以下の凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光波長変換ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate