光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法
【課題】光学部品点数またはコストが削減される。
【解決手段】光波面制御システム10は、入力光11cを入力すると、入力光11cの波面の位相を制御する波面制御信号14aおよび入力光11cの収差の歪を制御する収差制御信号14bに従って、位相および歪をそれぞれ制御して、出力光12aを出力する光波面制御部15と、光波面制御部15から出力光12dを入力すると、出力光12dの波面および出力光12dの収差に関する光情報を検出する検出部16と、検出部16が検出した光情報に基づき、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bを光波面制御部15に出力する制御回路部17と、を有する光波面制御システム10であれば、入力光11cの波面の制御および収差の補正を行うために、収差を補正する光学部品を別途設置する必要がなくなる。
【解決手段】光波面制御システム10は、入力光11cを入力すると、入力光11cの波面の位相を制御する波面制御信号14aおよび入力光11cの収差の歪を制御する収差制御信号14bに従って、位相および歪をそれぞれ制御して、出力光12aを出力する光波面制御部15と、光波面制御部15から出力光12dを入力すると、出力光12dの波面および出力光12dの収差に関する光情報を検出する検出部16と、検出部16が検出した光情報に基づき、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bを光波面制御部15に出力する制御回路部17と、を有する光波面制御システム10であれば、入力光11cの波面の制御および収差の補正を行うために、収差を補正する光学部品を別途設置する必要がなくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法に関し、特に入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信、光信号処理分野において、光波面の位相を制御する必要性が高まり、フェムト秒光パルスの整形や空間光ビーム形状の歪みの補正や光波面の位相を制御する光波面制御装置が利用されている。
【0003】
このように光波面の制御にマイクロミラーが用いられた光波面制御装置の場合(例えば、特許文献1参照)を例に挙げて以下に説明する。
光波面制御装置が備える複数のマイクロミラーが1次元のアレイ状に並んでおり、各マイクロミラーは独立に上下への平行移動(併進動作)および時計回り・反時計回りの回転動作が可能である。
【0004】
そして、このような光波面制御装置の光波面の位相の制御方法としては、入力光の波面の遅れや進みを、マイクロミラーの高さを変えることで調整することができる。マイクロミラーの高さが低いところでは反射により通過する光路が長くなるので、この部分の光の伝搬を遅らせ、位相を遅延させることができる。さらに、マイクロミラーの傾斜角を調整することにより、連続的な位相プロファイルを生成することが可能となる。ここで、各マイクロミラーの可変移動量が入力光の半波長以上であれば、反射による位相遅延量を2π以上とでき、任意の位相遅延を与えることが可能となる。
【0005】
近年、制御の自由度が高い2次元型の光波面制御装置の需要が拡大している。上述の光波面制御装置は1次元での光波面制御の例であるが、この光波面制御装置のマイクロミラーを2次元に並べる、もしくは1枚の薄膜ミラー形状を2次元状に制御する(例えば、非特許文献1参照)ことにより、2次元での光波面制御が可能となる。
【0006】
しかし、一般的に、光波面制御装置の表面は、1辺(若しくは直径)が数mmから数cmの正方形(若しくは円形)の大きさを有するため、集光光学系の収差の影響によって像のボケなどが発生してしまう。このため、集光光学系の収差を補正する必要があり、収差補正の非球面レンズなどの光学系を介して、入力光を光波面制御装置に入力しなくてはならなかった。
【特許文献1】米国特許第6713367号明細書
【非特許文献1】G. Vdovin and P. M. Sarro, "Flexible mirror micromachined in silicon", Applied Optics, Vol. 34, No.16, 1995, pp.2968−2972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光波面制御装置に入力光を入射する前に収差補正の非球面レンズなどの光学系を配置し、集光光学系の収差を補正すると、光学部品点数またはコストの増加に繋がるという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、光学部品点数またはコストが削減された光波面制御システムおよび光波面制御方法を提供することを目的とする。また、これらに用いられる光波面制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムが提供される。
このような光波面制御システムは、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、を有する。
【0010】
また、上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置が提供される。
このような光波面制御装置は、額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、を有する。
【0011】
また、上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法が提供される。
このような光波面制御方法は、光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、ことが要素とされる。
【発明の効果】
【0012】
上記の光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法では、光学部品およびコストを削減して、光波面の制御および収差の補正を行うようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として、実施の形態の概要を、その後に概要を踏まえた実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
まず、実施の形態の概要について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態の概要を説明する模式図である。
光波面制御システム10は、外部からの入力光11aをコリメートして入力光11bを出力する入力光学系13と、光路変更部18aを透過した入力光11cを入力して出力光12aを出力する光波面制御部15と、出力光12aが光路変更部18a,18bをそれぞれ反射および透過した後の出力光12dを検出する検出部16と、制御回路部17と、から構成されている。
【0015】
入力光学系13は、外部から入力された入力光11aを、空間をほぼ一直線に進む平行な入力光11bに調整(コリメート)する。例えば、レーザ光などの光は、実際には完全な平行光線ではなく、遠方に進むにつれて拡がってしまう。そこで、この入力光学系13を用いて、外部から入力された入力光11aを平行な入力光11bに調整し、光波面制御部15へ出力する。
【0016】
光波面制御部15は、入力光11bの一部が光路変更部18aを透過した後の入力光11cを、後に説明する制御回路部17からの波面制御信号14aおよび収差制御信号14bによって、入力光11cの波面を制御するとともに、収差の補正を行うことができる。光波面制御部15は、入力光11cを制御して出力光12aを出力する。
【0017】
検出部16は、出力光12dの波面および収差に関する光情報を検出する。そして、検出された光情報は制御回路部17へ出力される。なお、出力光12dは、出力光12bの一部が光路変更部18bを透過した光であって、出力光12bは、入力光12aの一部が光路変更部18aを反射した光である。なお、出力光12bの一部は、光路変更部18bによって反射されて、出力光12cとして外部へ出力される。
【0018】
制御回路部17は、検出部16によって検出された光情報の検出結果に基づき、入力光11cの波面を制御する必要があれば、波面を制御するための波面制御信号14aを、入力光11cに収差の影響があれば、収差を補正するための収差制御信号14bを、光波面制御部15にそれぞれ出力する。波面の制御および収差の補正の両方が必要であれば、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bの両方を出力する。
【0019】
このような構成をなす光波面制御システム10では、光路変更部18aを通過した入力光11cに対して光波面制御部15が、波面の制御および収差の補正を行って、出力光12aを出力する。出力光12aの一部であって光路変更部18aで反射された出力光12bの一部が、光路変更部18bでさらに反射され、外部へ出力光12cが出力される。同時に、光路変更部18bで透過されて検出部16cに出力光12dが入力される。検出部16cによって、出力光12dの波面および収差に関する光情報を検出する。制御回路部17は、検出された光情報に基づいて、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bを光波面制御部15へ出力し、光波面制御部15は、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bに基づいて、入力光11cの波面および収差を制御する。例えば、入力光11aが波形Aに示す波形であるとすれば、この処理を繰り返すことによって、ユーザの所望の出力光12cの波形Bが得られる。したがって、光波面制御システム10では、光波面制御部15にて、入力光11cの波面の制御および収差の補正を行うために、収差を補正する光学部品を別途設置する必要がない。このため、光波面制御システム10は、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。
【0020】
次に、第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、上述の概要を踏まえた実施の形態である。
図2は、第1の実施の形態の光波面制御システムの模式図である。
【0021】
光波面制御システム20は、外部から入力された入力光27aをコリメートするコリメート光学系21aと、集光して光27bを出力する集光光学系21bと、光27eを出力する光波面制御部30と、光27fがビームスプリッタ25aによって反射され、さらにビームスプリッタ25bを透過した後の光27iを検出する波面センサ23と、光27gがビームスプリッタ25bにて反射された後の光27hを集光して、集光した光27jを出力する集光光学系21cと、光27jを画像化する波面モニタ(図示を省略)と、制御回路24とから構成されている。
【0022】
コリメート光学系21aは、例えば、外部のレーザなどから入力された入力光27aを、空間をほぼ一直線に進む平行な光27bにコリメートして、集光光学系21bへ出力する。なお、入力光27aを出力するレーザなどとコリメート光学系21aとが一体となった光学部品を適用しても構わない。
【0023】
ビームスプリッタ25aは、光27bの一部を透過して、光27cを出力する。また、ビームスプリッタ25aは、光27fの一部を反射して、光27gを出力する。
集光光学系21bは、透過した光27cを集光して、光波面制御部30の受光口の大きさほどの光27dを出力する。また、集光光学系21bは、光27eを集光して、光27fを出力する。
【0024】
光波面制御部30は、後に説明する制御回路24からの制御信号24a,24bに従って、入力された光27dの波面を制御するとともに、収差の補正を行うことができる。光波面制御部30は、光27dを制御して光27eを出力する。なお、光波面制御部30の詳細については後述する。
【0025】
ビームスプリッタ25bは、ビームスプリッタ25aで光27fが反射された後の光27gの一部を透過させて光27iを出力する。なお、ビームスプリッタ25bは、光27gの一部を反射して光27hを出力する。
【0026】
波面センサ23は、ビームスプリッタ25bを透過した光27iを検出する。波面センサ23によって、制御された光27iの波面と収差について検出されて、この検出結果が制御回路24へ出力される。
【0027】
制御回路24は、波面センサ23の検出結果に基づき、光27dの波面を制御する必要があれば、波面を制御するための制御信号24aを、光27dに収差の影響があれば、収差を補正するための制御信号24bを、光波面制御部30にそれぞれ出力する。なお、収差を補正するための制御信号24bとしては、例えば、ゼルニケ多項式に基づいた信号が用いられる。
【0028】
集光光学系21cは、ビームスプリッタ25bに反射された光27hの一部を、波面モニタ(図示を省略)の受光口の大きさほどに集光し、光27jを出力する。
波面モニタは、入力された光27jを2次元的に画像化して表示する。
【0029】
なお、上述の各光の光路を変更させるために、ビームスプリッタ25a,25bを用いているが、その他に、ハーフミラーまたはサーキュレータでも構わない。
さらに、光波面制御システム20を構成する光波面制御部30について説明する。
【0030】
図3は、第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
光波面制御部30は、上部ガラス基板31と、ミラー基板32と、下部ガラス基板33とで構成されている。なお、図3では、それぞれ分離させて図示しているが、実際は上部ガラス基板31と、ミラー基板32と、下部ガラス基板33とが組み合わさって光波面制御部30を構成する。また、組み合わせる際は、(図3に示す場合)上部ガラス基板31を裏返してスペーサ貼付位置31dがミラー基板32のスペーサ32fと接合するようにする。
【0031】
上部ガラス基板31は、ガラス基板31aに、電極パッド31b、インジウム錫酸化膜(ITO)電極31c、スペーサ貼付位置31d、マイクロミラー電位用配線31eおよびフレキシブル基板31fにより構成されている。
【0032】
このような上部ガラス基板31は、ガラス基板31aに、透明電極のパターンを利用して、ITOを塗布して、マスク露光およびエッチングにより容易にITO電極31cを形成することができる。そして、ITO電極31cは電極パッド31bと配線(図示を省略)により接続されており、また、電極パッド31bに、外部の制御回路24から制御信号24aが入力されるフレキシブル基板31fが、貫通電極31baを介して実装されている。さらに、電極パッド31bの間を電気的に接続するマイクロミラー電位用配線31eが形成されている。また、マイクロミラー電位用配線31e上に、ミラー基板32との電気的接続を行うためのスペーサ32fが貼り付けられるスペーサ貼付位置31dが印されている。したがって、外部の制御回路24からの制御による電圧を、フレキシブル基板31fを介して電極パッド31b、そして、ITO電極31cに印加することができる。なお、上部ガラス基板31のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0033】
下部ガラス基板33は、上部ガラス基板31と同様に、ガラス基板33aに、電極パッド33b、マイクロミラー電位用配線33eおよびフレキシブル基板33fにより構成されている。なお、上部ガラス基板31と同様に、フレキシブル基板33fは貫通電極33baと接触するように実装されている。さらに、下部ガラス基板33は、上部ガラス基板31と異なり、上面に同心円状の電極33cが配置された突起部33aaが形成されている。
【0034】
このような下部ガラス基板33は、突起部33aaの面上の電極33cが電極パッド33bと配線(図示を省略)により接続されており、また、電極パッド33bに、外部の制御回路24から制御信号24bが入力されるフレキシブル基板33fが貫通電極33baを介して実装されている。さらに、電極パッド33bの間を電気的に接続するマイクロミラー電位用配線33eが形成されている。したがって、上部ガラス基板31と同様に、外部の制御回路24からの制御による電圧がフレキシブル基板33fを介して電極パッド33b、そして、電極33cに電圧を印加することができる。なお、下部ガラス基板33のサイズも、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部33aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部33aaの高さは、ミラー基板32の酸化シリコン(SiO2)層32bの積層高さと等しくする。
【0035】
ミラー基板32は、デバイス層としてシリコン(Si)基板32a、中間層としてSiO2層32bおよび支持基板層としてSi層32cにより構成されるSOI(Silicon On Insulator)構造をなしており、さらに、Si基板32aの内壁に一体的に形成されたトーションバー32eを介してマイクロミラー32dが形成されている。なお、SiO2層32bおよびSi層32cは額縁状をなしている。また、マイクロミラー32dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー32dの表面に金属膜を形成することができる。さらに、Si基板32aの枠部の面上に、スペーサ32fが形成されている。スペーサ32fは、既述の通り、上部ガラス基板31とミラー基板32との間のスペーサとして、上部ガラス基板31のマイクロミラー電位用配線31e上のスペーサ貼付位置31dに接合される。そして、スペーサ32fは、金(Au)−錫(Sn)系などのハンダバンプにより構成されており、電極パッド31bと接続されたマイクロミラー電位用配線31eからマイクロミラー32dへの電位をSi基板32aに印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、ミラー基板32のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー32dのサイズは、例えば、縦および横の長さを、0.1μmから100μm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0036】
さらに、ミラー基板32の製造方法について説明する。
図4は、第1の実施の形態の光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の製造工程の要部断面模式図である。なお、図4は、図3における破線A−A’における断面図である。
【0037】
まず、Si層32c、SiO2層32bおよびSi基板32aにより順に構成されるSOI構造を形成する(図4(A))。
続いて、このSOI構造のSi基板32aの表面にAu/クロム(Cr)にて、メタライズを行って、金属膜34を形成する(図4(B))。
【0038】
続いて、メタライズを行ったSOI構造に対し、マイクロミラー32dの形成用のパターンのマスクを用いて露光し、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を行うことにより金属膜34の一部を除去する(図4(C))。
【0039】
続いて、さらに、金属膜34をマスクとして、Si基板32aをエッチングして、マイクロミラー32dおよびトーションバー32eが形成される。(図4(D))。
続いて、Si基板32aのエッチング後、例えば、フッ化水素(HF)を用いて、SiO2層32bを溶解する。そして、Si層32cの内部をエッチングする(図4(E))。
【0040】
そして、Si基板32aの枠部の面上にスペーサ32fを形成することで、ミラー基板32が作製される。
したがって、このようなミラー基板32にスペーサ32fを介して、上部ガラス基板31を接合し、ミラー基板32に下側から、突起部33aaを嵌合させて、下部ガラス基板33を接続することで、光波面制御部30を形成することができる。
【0041】
このようにして構成される光波面制御部30について説明する。
図5は、第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の断面模式図である。なお、図5も、図3における破線A−A’における断面図である。また、各構成については、既に説明しているために、説明を省略する。
【0042】
光波面制御部30は、上部ガラス基板31が、スペーサ32fを介してミラー基板32と接続され、下部ガラス基板33が、ミラー基板32に突起部33aaを嵌合させて接合されている。なお、図5に示すマイクロミラー32d上には、金属膜34を形成した場合を示している。
【0043】
それでは、このような光波面制御部30による光の波面の制御および収差の補正について説明する。
図6は、第1の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図6では、ミラー基板32については、マイクロミラー32dのみを記載しており、スペーサ32f、スペーサ32fが形成されているSi基板32aの枠部、SiO2層32b、Si層32cおよびトーションバー32eの記載は省略している。
【0044】
まず、図6(A)に示すように、光波面制御部30に電圧を印加しない場合は、既述の通り、マイクロミラー32dが、上部ガラス基板31のガラス基板31aに形成されたITO電極31cと、下部ガラス基板33のガラス基板33a上に形成された突起部33aaの面上に形成された電極33cとで挟まれる。
【0045】
次に、図6(B)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31にて、左から2つ目のITO電極31cに電圧Vを印加する。すると、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて、上方へ引かれるように歪む。
【0046】
次に、図6(C)を参照しながら説明する。例えば、下部ガラス基板33の電極33cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dは、トーションバー32eを支点として作用し、引力を受けて、下方へ引かれるように歪む。
【0047】
このようにして、上部ガラス基板31のITO電極31cおよび/または下部ガラス基板33の電極33cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー32dが引力を受けて上方や下方へ歪む。特に、上部ガラス基板31のITO電極31cによりマイクロミラー32dを制御することによって、入力された光27dの位相に遅延を生じさせることができて、光27dの波面を制御することができる。例えば、図2に示すように、入力光27aとして2次元的に示された光26aを、光波面制御システム20に入力すると、上述のような制御が行われて、波面モニタにより、出力波として2次元的に示された光26bを得ることをできる。また、下部ガラス基板33の電極33cによりマイクロミラー32dを制御することによって、収差の補正を行うことができる。したがって、光波面制御部30は、光27dの波面の制御と収差の補正とを行うことができる。さらに、第1の実施の形態では、上部ガラス基板31には格子状に複数のITO電極31cを形成しているために、マイクロミラー32dの制御を高精度に行うことができる。
【0048】
このような構成からなる光波面制御システム20では、外部から入力された入力光27aがコリメート光学系21a、ビームスプリッタ25aおよび集光光学系21bを経た光27dについて、光波面制御部30によって光の波面の制御および収差の補正が行われる。そして、光波面制御部30によって制御された光27eが、集光光学系21b、ビームスプリッタ25a,25bを経た光27iの光情報が波面センサ23によって検出される。波面センサ23の検出結果に基づいて、光27dの波面を制御するための制御信号24aと光27dの収差を補正するための制御信号24bとを、制御回路24から光波面制御部30の上部ガラス基板31および下部ガラス基板33にそれぞれ出力する。このような光の制御を繰り返すことにより、所望の光を得ることができる。この結果、光波面制御システム20は、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、光波面制御部の下部ガラス基板の電極の形状を、第1の実施の形態と異なり、格子状に配列させた場合を例に挙げて説明する。
【0050】
図7は、第2の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の下部ガラス基板の斜視模式図である。なお、図7では、下部ガラス基板43のみを記載してあるが、光波面制御部を構成する際は、下部ガラス基板43に対して、第1の実施の形態の上部ガラス基板31およびミラー基板32を利用するものとする。
【0051】
下部ガラス基板43は、ガラス基板43aに、電極パッド43b、マイクロミラー電位用配線43eおよびフレキシブル基板43fにより構成されている。なお、フレキシブル基板43fは貫通電極43baと接触するように実装されている。そして、下部ガラス基板43は、突起部43aaが形成されており、突起部43aaの面上には、電極43cが、上部ガラス基板31のITO電極31cと同様に、格子状に複数形成されている。なお、下部ガラス基板43のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部43aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部43aaの高さは、ミラー基板32のSiO2層32bの積層高さと等しくする。
【0052】
このような構成をなす下部ガラス基板43を備える光波面制御部による光の波面の制御および収差の補正の原理について以下に説明する。
図8は、第2の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図8でも、ミラー基板32については、マイクロミラー32dのみを記載しており、スペーサ32f、スペーサ32fが形成されているSi基板32aの枠部、SiO2層32b、Si層32cおよびトーションバー32eの記載は省略している。
【0053】
まず、図8(A)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31のガラス基板31aにて、真ん中の2つのITO電極31cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて上方へ引かれるように歪む。
【0054】
次に、図8(B)を参照しながら説明する。例えば、ガラス基板31aの右から2番目のITO電極31cと、ガラス基板43aの突起部43aaの面上の左から2番目の電極43cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dは、電圧Vが印加されたITO電極31cおよび電極43cからの引力を受けて、上方および下方へ引かれるように歪む。
【0055】
このようにして、既述のように、上部ガラス基板31のITO電極31cおよび/または下部ガラス基板43の電極43cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー32dが引力を受けて上方や下方へ引かれるように歪む。特に、第2の実施の形態では、下部ガラス基板43には電極43cを格子状に複数配列させているために、第1の実施の形態よりもより高精度にマイクロミラー32dを制御することができる。このため、光波面の制御および収差の補正を高精度に行うことが可能となる。
【0056】
次に、第3の実施の形態について説明する。
第1および第2の実施の形態では、ミラー基板に上部ガラス基板および下部ガラス基板を組み合わせて光波面制御部を構成する場合を例に挙げて説明した。第3の実施の形態では、ミラー基板に上部ガラス基板のみを組み合わせる場合を例に挙げて説明する。
【0057】
図9は、第3の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
光波面制御部50は、図3で示した上部ガラス基板31と、ミラー基板52とで構成されている。なお、図9では、それぞれ分離させて図示しているが、実際は上部ガラス基板31とミラー基板52とが組み合わさることで光波面制御部50を構成する。また、組み合わせる際は、上部ガラス基板31を裏返してスペーサ貼付位置31dがミラー基板52のスペーサ52fと接合するようにする。
【0058】
上部ガラス基板31は、既述の通り、ガラス基板31aに、電極パッド31b、ITO電極31c、スペーサ貼付位置31d、マイクロミラー電位用配線31eおよび貫通電極31baを介したフレキシブル基板31fにより構成されている。
【0059】
ミラー基板52は、Si基板52a、SiO2層52bおよびSi層52cにより構成されるSOI構造をなしており、さらに、Si基板52aの内壁に一体的に形成されたトーションバー52eを介してマイクロミラー52dが形成されている。そして、ミラー基板52では、Si層52cは、図3のSi層32cと異なり、内部が除去された額縁状ではなく、層状をなしている。また、既述の通り、マイクロミラー52dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー52dの表面に金属膜を形成することができる。さらに、Si基板52aの枠部の面上に、スペーサ52fが形成されている。スペーサ52fは、既述の通り、上部ガラス基板31とミラー基板52との間のスペーサとして、上部ガラス基板31のマイクロミラー電位用配線31e上のスペーサ貼付位置31dに接合される。そして、スペーサ52fは、Au−Sn系などのハンダバンプにより構成されており、電極パッド31bと接続されたマイクロミラー電位用配線31eからマイクロミラー52dへの電位をSi基板52aに印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、ミラー基板52のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー52dのサイズは、例えば、縦および横の長さを、0.1μmから100μm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0060】
このような構成をなす光波面制御部50による光の波面の制御および収差の補正の原理について以下に説明する。
図10は、第3の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図10でも、ミラー基板52については、マイクロミラー52dのみを記載しており、スペーサ52f、スペーサ52fが形成されているSi基板52aの枠部、SiO2層52bおよびトーションバー52eの記載は省略している。
【0061】
まず、図10(A)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31のガラス基板31aにて、真ん中の2つのITO電極31cに電圧Vを印加すると、既述の通り、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて上方へ引かれるように歪む。
【0062】
次に、図10(B)を参照しながら説明する。例えば、ミラー基板52のSi層52cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー52dは、電圧Vが印加されたSi層52cからの引力を受けて下方へ引かれるように歪む。
【0063】
したがって、ミラー基板52のSi層52cを層状の形状にして、Si層52cに電圧Vを印加するようにして、マイクロミラー52dを制御することができる。このような構成にすることにより、光波面制御部50の構成要素を減らすことができて、作製のためのコストを削減して、光波面の制御および収差の補正を高精度に行うことが可能となる。
【0064】
次に、第4の実施の形態について説明する。
第1、第2および第3の実施の形態では、光波面制御部のミラー基板の形状が略正方形の場合を例に挙げて説明した。一方、第4の実施の形態では、ミラー基板のマイクロミラーを円形にした場合を例に挙げて説明する。
【0065】
図11は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の平面模式図である。
ミラー基板62は、上述のミラー基板32と同様に、Si基板62a、SiO2層(図示を省略)およびSi層(図示を省略)により構成されるSOI構造をなしている。また、Si基板62aの枠部の面上に、スペーサ62fが形成されている。スペーサ62fは、既述のスペーサ32fと同じ構成および機能を有する。さらに、ミラー基板62では、Si基板62aの内壁に一体的に形成されたトーションバー62eを介して円形のマイクロミラー62dが形成されている。また、既述の通り、マイクロミラー62dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー62dの表面に金属膜を形成することができる。なお、ミラー基板62のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー62dのサイズは、例えば、直径を、0.1μmから5mm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0066】
そして、ミラー基板62と組み合わせる上部ガラス基板および下部ガラス基板は、例えば、次のような構成にすることができる。
図12は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の、(A)は上部ガラス基板の、(B)は下部ガラス基板の平面模式図である。
【0067】
上部ガラス基板61は、既述の上部ガラス基板31と同様に、ガラス基板61aに、電極パッド61b、ITO電極61c、スペーサ貼付位置61d、マイクロミラー電位用配線61eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。但し、ミラー基板62の円形のマイクロミラー62dに重なるように、ITO電極61cの形状を、例えば、六角形にして、略円形となるように配置している。また、フレキシブル基板は貫通電極61baと接触するように実装されている。なお、上部ガラス基板61のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0068】
なお、上部ガラス基板61のITO電極61cに代わって以下のようなITO電極を用いても構わない。
図13は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の上部ガラス基板の別の平面模式図である。
【0069】
図13に示す上部ガラス基板71は、上部ガラス基板61と同様に、ガラス基板71aに、電極パッド71b、ITO電極71c、スペーサ貼付位置71d、マイクロミラー電位用配線71eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。なお、フレキシブル基板は貫通電極71baと接触するように実装されている。但し、ミラー基板62の円形のマイクロミラー62dに重なるように、同心円状のITO電極71cを配置している。なお、上部ガラス基板71のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0070】
一方、図12に示すように、下部ガラス基板63も、既述の下部ガラス基板33と同様に、ガラス基板63aに、電極パッド63b、マイクロミラー電位用配線63eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。そして、フレキシブル基板は貫通電極63baと接触するように実装されている。また、下部ガラス基板63は、突起部63aaが形成されているが、突起部63aaの面上には、上部ガラス基板61と同様に、六角形の電極63cを略円形になるように配置している。なお、下部ガラス基板63のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部63aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部63aaの高さは、上部ガラス基板61のSiO2層の積層高さと等しくする。
【0071】
このような上部ガラス基板61および下部ガラス基板63が組み合わされた光波面制御部(図示を省略)によって、上部ガラス基板61のITO電極61cおよび/または下部ガラス基板63の電極63cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー62dが引力を受けて上方や下方へ引かれるように歪む。このようにして、マイクロミラー62dの制御を高精度に行うことができる。したがって、このような構成の光波面制御部により構成される光波面制御システムでも、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。なお、第3の実施の形態の光波面制御部にて、第4の実施の形態で触れた円形のマイクロミラーを適用させても構わない。
【0072】
また、第1から第4の実施の形態の光波面制御部を用いた光波面制御システムを、様々な光学装置に組み込んで利用することができる。光通信システム分野を例に挙げると、例えば、VIPA(Virtually Imaged Phase Array)型の分散補償器によって、分散される光ごとに、上述の光波面制御システムを設置することによって、光波面が制御され、収差が補正された光を出力することが可能となる。その他、様々な光学部品とともに利用することができる。
【0073】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【0074】
(付記1) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムにおいて、
前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、
前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、
を有することを特徴とする光波面制御システム。
【0075】
(付記2) 前記入力光をコリメートして、前記光波面制御部に入力する入力光学系をさらに有することを特徴とする付記1記載の光波面制御システム。
(付記3) 光路変更部をさらに有し、
前記光路変更部を介して、前記光波面制御部からの前記出力光を前記検出部へ入力させることを特徴とする付記1または2に記載の光波面制御システム。
【0076】
(付記4) 別の光路変更部をさらに有し、
前記別の光路変更部を介して、前記光路変更部からの前記出力光を前記検出部へ入力させるとともに、外部へ出力させることを特徴とする付記3記載の光波面制御システム。
【0077】
(付記5) 前記光路変更部は、ハーフミラー、スプリッタまたはサーキュレータであることを特徴とする付記3または4に記載の光波面制御システム。
(付記6) 前記収差制御信号は、ゼルニケ多項式に基づいた信号であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0078】
(付記7) 前記出力光を検知して、2次元的に画像表示化する波面モニタをさらに有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
(付記8) 前記光波面制御部は、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように形成され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接続し、前記波面制御信号が入力される上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続し、前記収差制御信号が入力される下部ガラス基板と、
を備えることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0079】
(付記9) 前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記8記載の光波面制御システム。
【0080】
(付記10) 前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする付記8または9に記載の光波面制御システム。
(付記11) 前記マイクロミラーの形状は、円形または方形であることを特徴とする付記8乃至10のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0081】
(付記12) 前記電極は、前記透明電極とそれぞれ対向することを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
(付記13) 前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0082】
(付記14) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置において、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【0083】
(付記15) 前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記14記載の光波面制御装置。
【0084】
(付記16) 前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする付記14または15に記載の光波面制御装置。
(付記17) 前記マイクロミラーの形状は、円形または方形であることを特徴とする付記14乃至16のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0085】
(付記18) 前記電極は、前記透明電極とそれぞれ対向することを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
(付記19) 前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0086】
(付記20) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法において、
光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、
検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、
制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、
ことを特徴とする光波面制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態の概要を説明する模式図である。
【図2】第1の実施の形態の光波面制御システムの模式図である。
【図3】第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
【図4】第1の実施の形態の光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の製造工程の要部断面模式図である。
【図5】第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の断面模式図である。
【図6】第1の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図7】第2の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の下部ガラス基板の斜視模式図である。
【図8】第2の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図9】第3の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
【図10】第3の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図11】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の平面模式図である。
【図12】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の、(A)は上部ガラス基板の、(B)は下部ガラス基板の平面模式図である。
【図13】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の上部ガラス基板の別の平面模式図である。
【符号の説明】
【0088】
10 光波面制御システム
11a,11b,11c 入力光
12a,12b,12c,12d 出力光
13 入力光学系
14a 波面制御信号
14b 収差制御信号
15 光波面制御部
16 検出部
17 制御回路部
18a,18b 光路変更部
A,B 波形
【技術分野】
【0001】
本発明は光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法に関し、特に入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信、光信号処理分野において、光波面の位相を制御する必要性が高まり、フェムト秒光パルスの整形や空間光ビーム形状の歪みの補正や光波面の位相を制御する光波面制御装置が利用されている。
【0003】
このように光波面の制御にマイクロミラーが用いられた光波面制御装置の場合(例えば、特許文献1参照)を例に挙げて以下に説明する。
光波面制御装置が備える複数のマイクロミラーが1次元のアレイ状に並んでおり、各マイクロミラーは独立に上下への平行移動(併進動作)および時計回り・反時計回りの回転動作が可能である。
【0004】
そして、このような光波面制御装置の光波面の位相の制御方法としては、入力光の波面の遅れや進みを、マイクロミラーの高さを変えることで調整することができる。マイクロミラーの高さが低いところでは反射により通過する光路が長くなるので、この部分の光の伝搬を遅らせ、位相を遅延させることができる。さらに、マイクロミラーの傾斜角を調整することにより、連続的な位相プロファイルを生成することが可能となる。ここで、各マイクロミラーの可変移動量が入力光の半波長以上であれば、反射による位相遅延量を2π以上とでき、任意の位相遅延を与えることが可能となる。
【0005】
近年、制御の自由度が高い2次元型の光波面制御装置の需要が拡大している。上述の光波面制御装置は1次元での光波面制御の例であるが、この光波面制御装置のマイクロミラーを2次元に並べる、もしくは1枚の薄膜ミラー形状を2次元状に制御する(例えば、非特許文献1参照)ことにより、2次元での光波面制御が可能となる。
【0006】
しかし、一般的に、光波面制御装置の表面は、1辺(若しくは直径)が数mmから数cmの正方形(若しくは円形)の大きさを有するため、集光光学系の収差の影響によって像のボケなどが発生してしまう。このため、集光光学系の収差を補正する必要があり、収差補正の非球面レンズなどの光学系を介して、入力光を光波面制御装置に入力しなくてはならなかった。
【特許文献1】米国特許第6713367号明細書
【非特許文献1】G. Vdovin and P. M. Sarro, "Flexible mirror micromachined in silicon", Applied Optics, Vol. 34, No.16, 1995, pp.2968−2972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光波面制御装置に入力光を入射する前に収差補正の非球面レンズなどの光学系を配置し、集光光学系の収差を補正すると、光学部品点数またはコストの増加に繋がるという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、光学部品点数またはコストが削減された光波面制御システムおよび光波面制御方法を提供することを目的とする。また、これらに用いられる光波面制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムが提供される。
このような光波面制御システムは、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、を有する。
【0010】
また、上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置が提供される。
このような光波面制御装置は、額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、を有する。
【0011】
また、上記目的を達成するために、入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法が提供される。
このような光波面制御方法は、光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、ことが要素とされる。
【発明の効果】
【0012】
上記の光波面制御システム、光波面制御装置および光波面制御方法では、光学部品およびコストを削減して、光波面の制御および収差の補正を行うようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として、実施の形態の概要を、その後に概要を踏まえた実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
まず、実施の形態の概要について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態の概要を説明する模式図である。
光波面制御システム10は、外部からの入力光11aをコリメートして入力光11bを出力する入力光学系13と、光路変更部18aを透過した入力光11cを入力して出力光12aを出力する光波面制御部15と、出力光12aが光路変更部18a,18bをそれぞれ反射および透過した後の出力光12dを検出する検出部16と、制御回路部17と、から構成されている。
【0015】
入力光学系13は、外部から入力された入力光11aを、空間をほぼ一直線に進む平行な入力光11bに調整(コリメート)する。例えば、レーザ光などの光は、実際には完全な平行光線ではなく、遠方に進むにつれて拡がってしまう。そこで、この入力光学系13を用いて、外部から入力された入力光11aを平行な入力光11bに調整し、光波面制御部15へ出力する。
【0016】
光波面制御部15は、入力光11bの一部が光路変更部18aを透過した後の入力光11cを、後に説明する制御回路部17からの波面制御信号14aおよび収差制御信号14bによって、入力光11cの波面を制御するとともに、収差の補正を行うことができる。光波面制御部15は、入力光11cを制御して出力光12aを出力する。
【0017】
検出部16は、出力光12dの波面および収差に関する光情報を検出する。そして、検出された光情報は制御回路部17へ出力される。なお、出力光12dは、出力光12bの一部が光路変更部18bを透過した光であって、出力光12bは、入力光12aの一部が光路変更部18aを反射した光である。なお、出力光12bの一部は、光路変更部18bによって反射されて、出力光12cとして外部へ出力される。
【0018】
制御回路部17は、検出部16によって検出された光情報の検出結果に基づき、入力光11cの波面を制御する必要があれば、波面を制御するための波面制御信号14aを、入力光11cに収差の影響があれば、収差を補正するための収差制御信号14bを、光波面制御部15にそれぞれ出力する。波面の制御および収差の補正の両方が必要であれば、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bの両方を出力する。
【0019】
このような構成をなす光波面制御システム10では、光路変更部18aを通過した入力光11cに対して光波面制御部15が、波面の制御および収差の補正を行って、出力光12aを出力する。出力光12aの一部であって光路変更部18aで反射された出力光12bの一部が、光路変更部18bでさらに反射され、外部へ出力光12cが出力される。同時に、光路変更部18bで透過されて検出部16cに出力光12dが入力される。検出部16cによって、出力光12dの波面および収差に関する光情報を検出する。制御回路部17は、検出された光情報に基づいて、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bを光波面制御部15へ出力し、光波面制御部15は、波面制御信号14aおよび収差制御信号14bに基づいて、入力光11cの波面および収差を制御する。例えば、入力光11aが波形Aに示す波形であるとすれば、この処理を繰り返すことによって、ユーザの所望の出力光12cの波形Bが得られる。したがって、光波面制御システム10では、光波面制御部15にて、入力光11cの波面の制御および収差の補正を行うために、収差を補正する光学部品を別途設置する必要がない。このため、光波面制御システム10は、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。
【0020】
次に、第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、上述の概要を踏まえた実施の形態である。
図2は、第1の実施の形態の光波面制御システムの模式図である。
【0021】
光波面制御システム20は、外部から入力された入力光27aをコリメートするコリメート光学系21aと、集光して光27bを出力する集光光学系21bと、光27eを出力する光波面制御部30と、光27fがビームスプリッタ25aによって反射され、さらにビームスプリッタ25bを透過した後の光27iを検出する波面センサ23と、光27gがビームスプリッタ25bにて反射された後の光27hを集光して、集光した光27jを出力する集光光学系21cと、光27jを画像化する波面モニタ(図示を省略)と、制御回路24とから構成されている。
【0022】
コリメート光学系21aは、例えば、外部のレーザなどから入力された入力光27aを、空間をほぼ一直線に進む平行な光27bにコリメートして、集光光学系21bへ出力する。なお、入力光27aを出力するレーザなどとコリメート光学系21aとが一体となった光学部品を適用しても構わない。
【0023】
ビームスプリッタ25aは、光27bの一部を透過して、光27cを出力する。また、ビームスプリッタ25aは、光27fの一部を反射して、光27gを出力する。
集光光学系21bは、透過した光27cを集光して、光波面制御部30の受光口の大きさほどの光27dを出力する。また、集光光学系21bは、光27eを集光して、光27fを出力する。
【0024】
光波面制御部30は、後に説明する制御回路24からの制御信号24a,24bに従って、入力された光27dの波面を制御するとともに、収差の補正を行うことができる。光波面制御部30は、光27dを制御して光27eを出力する。なお、光波面制御部30の詳細については後述する。
【0025】
ビームスプリッタ25bは、ビームスプリッタ25aで光27fが反射された後の光27gの一部を透過させて光27iを出力する。なお、ビームスプリッタ25bは、光27gの一部を反射して光27hを出力する。
【0026】
波面センサ23は、ビームスプリッタ25bを透過した光27iを検出する。波面センサ23によって、制御された光27iの波面と収差について検出されて、この検出結果が制御回路24へ出力される。
【0027】
制御回路24は、波面センサ23の検出結果に基づき、光27dの波面を制御する必要があれば、波面を制御するための制御信号24aを、光27dに収差の影響があれば、収差を補正するための制御信号24bを、光波面制御部30にそれぞれ出力する。なお、収差を補正するための制御信号24bとしては、例えば、ゼルニケ多項式に基づいた信号が用いられる。
【0028】
集光光学系21cは、ビームスプリッタ25bに反射された光27hの一部を、波面モニタ(図示を省略)の受光口の大きさほどに集光し、光27jを出力する。
波面モニタは、入力された光27jを2次元的に画像化して表示する。
【0029】
なお、上述の各光の光路を変更させるために、ビームスプリッタ25a,25bを用いているが、その他に、ハーフミラーまたはサーキュレータでも構わない。
さらに、光波面制御システム20を構成する光波面制御部30について説明する。
【0030】
図3は、第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
光波面制御部30は、上部ガラス基板31と、ミラー基板32と、下部ガラス基板33とで構成されている。なお、図3では、それぞれ分離させて図示しているが、実際は上部ガラス基板31と、ミラー基板32と、下部ガラス基板33とが組み合わさって光波面制御部30を構成する。また、組み合わせる際は、(図3に示す場合)上部ガラス基板31を裏返してスペーサ貼付位置31dがミラー基板32のスペーサ32fと接合するようにする。
【0031】
上部ガラス基板31は、ガラス基板31aに、電極パッド31b、インジウム錫酸化膜(ITO)電極31c、スペーサ貼付位置31d、マイクロミラー電位用配線31eおよびフレキシブル基板31fにより構成されている。
【0032】
このような上部ガラス基板31は、ガラス基板31aに、透明電極のパターンを利用して、ITOを塗布して、マスク露光およびエッチングにより容易にITO電極31cを形成することができる。そして、ITO電極31cは電極パッド31bと配線(図示を省略)により接続されており、また、電極パッド31bに、外部の制御回路24から制御信号24aが入力されるフレキシブル基板31fが、貫通電極31baを介して実装されている。さらに、電極パッド31bの間を電気的に接続するマイクロミラー電位用配線31eが形成されている。また、マイクロミラー電位用配線31e上に、ミラー基板32との電気的接続を行うためのスペーサ32fが貼り付けられるスペーサ貼付位置31dが印されている。したがって、外部の制御回路24からの制御による電圧を、フレキシブル基板31fを介して電極パッド31b、そして、ITO電極31cに印加することができる。なお、上部ガラス基板31のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0033】
下部ガラス基板33は、上部ガラス基板31と同様に、ガラス基板33aに、電極パッド33b、マイクロミラー電位用配線33eおよびフレキシブル基板33fにより構成されている。なお、上部ガラス基板31と同様に、フレキシブル基板33fは貫通電極33baと接触するように実装されている。さらに、下部ガラス基板33は、上部ガラス基板31と異なり、上面に同心円状の電極33cが配置された突起部33aaが形成されている。
【0034】
このような下部ガラス基板33は、突起部33aaの面上の電極33cが電極パッド33bと配線(図示を省略)により接続されており、また、電極パッド33bに、外部の制御回路24から制御信号24bが入力されるフレキシブル基板33fが貫通電極33baを介して実装されている。さらに、電極パッド33bの間を電気的に接続するマイクロミラー電位用配線33eが形成されている。したがって、上部ガラス基板31と同様に、外部の制御回路24からの制御による電圧がフレキシブル基板33fを介して電極パッド33b、そして、電極33cに電圧を印加することができる。なお、下部ガラス基板33のサイズも、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部33aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部33aaの高さは、ミラー基板32の酸化シリコン(SiO2)層32bの積層高さと等しくする。
【0035】
ミラー基板32は、デバイス層としてシリコン(Si)基板32a、中間層としてSiO2層32bおよび支持基板層としてSi層32cにより構成されるSOI(Silicon On Insulator)構造をなしており、さらに、Si基板32aの内壁に一体的に形成されたトーションバー32eを介してマイクロミラー32dが形成されている。なお、SiO2層32bおよびSi層32cは額縁状をなしている。また、マイクロミラー32dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー32dの表面に金属膜を形成することができる。さらに、Si基板32aの枠部の面上に、スペーサ32fが形成されている。スペーサ32fは、既述の通り、上部ガラス基板31とミラー基板32との間のスペーサとして、上部ガラス基板31のマイクロミラー電位用配線31e上のスペーサ貼付位置31dに接合される。そして、スペーサ32fは、金(Au)−錫(Sn)系などのハンダバンプにより構成されており、電極パッド31bと接続されたマイクロミラー電位用配線31eからマイクロミラー32dへの電位をSi基板32aに印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、ミラー基板32のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー32dのサイズは、例えば、縦および横の長さを、0.1μmから100μm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0036】
さらに、ミラー基板32の製造方法について説明する。
図4は、第1の実施の形態の光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の製造工程の要部断面模式図である。なお、図4は、図3における破線A−A’における断面図である。
【0037】
まず、Si層32c、SiO2層32bおよびSi基板32aにより順に構成されるSOI構造を形成する(図4(A))。
続いて、このSOI構造のSi基板32aの表面にAu/クロム(Cr)にて、メタライズを行って、金属膜34を形成する(図4(B))。
【0038】
続いて、メタライズを行ったSOI構造に対し、マイクロミラー32dの形成用のパターンのマスクを用いて露光し、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を行うことにより金属膜34の一部を除去する(図4(C))。
【0039】
続いて、さらに、金属膜34をマスクとして、Si基板32aをエッチングして、マイクロミラー32dおよびトーションバー32eが形成される。(図4(D))。
続いて、Si基板32aのエッチング後、例えば、フッ化水素(HF)を用いて、SiO2層32bを溶解する。そして、Si層32cの内部をエッチングする(図4(E))。
【0040】
そして、Si基板32aの枠部の面上にスペーサ32fを形成することで、ミラー基板32が作製される。
したがって、このようなミラー基板32にスペーサ32fを介して、上部ガラス基板31を接合し、ミラー基板32に下側から、突起部33aaを嵌合させて、下部ガラス基板33を接続することで、光波面制御部30を形成することができる。
【0041】
このようにして構成される光波面制御部30について説明する。
図5は、第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の断面模式図である。なお、図5も、図3における破線A−A’における断面図である。また、各構成については、既に説明しているために、説明を省略する。
【0042】
光波面制御部30は、上部ガラス基板31が、スペーサ32fを介してミラー基板32と接続され、下部ガラス基板33が、ミラー基板32に突起部33aaを嵌合させて接合されている。なお、図5に示すマイクロミラー32d上には、金属膜34を形成した場合を示している。
【0043】
それでは、このような光波面制御部30による光の波面の制御および収差の補正について説明する。
図6は、第1の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図6では、ミラー基板32については、マイクロミラー32dのみを記載しており、スペーサ32f、スペーサ32fが形成されているSi基板32aの枠部、SiO2層32b、Si層32cおよびトーションバー32eの記載は省略している。
【0044】
まず、図6(A)に示すように、光波面制御部30に電圧を印加しない場合は、既述の通り、マイクロミラー32dが、上部ガラス基板31のガラス基板31aに形成されたITO電極31cと、下部ガラス基板33のガラス基板33a上に形成された突起部33aaの面上に形成された電極33cとで挟まれる。
【0045】
次に、図6(B)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31にて、左から2つ目のITO電極31cに電圧Vを印加する。すると、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて、上方へ引かれるように歪む。
【0046】
次に、図6(C)を参照しながら説明する。例えば、下部ガラス基板33の電極33cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dは、トーションバー32eを支点として作用し、引力を受けて、下方へ引かれるように歪む。
【0047】
このようにして、上部ガラス基板31のITO電極31cおよび/または下部ガラス基板33の電極33cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー32dが引力を受けて上方や下方へ歪む。特に、上部ガラス基板31のITO電極31cによりマイクロミラー32dを制御することによって、入力された光27dの位相に遅延を生じさせることができて、光27dの波面を制御することができる。例えば、図2に示すように、入力光27aとして2次元的に示された光26aを、光波面制御システム20に入力すると、上述のような制御が行われて、波面モニタにより、出力波として2次元的に示された光26bを得ることをできる。また、下部ガラス基板33の電極33cによりマイクロミラー32dを制御することによって、収差の補正を行うことができる。したがって、光波面制御部30は、光27dの波面の制御と収差の補正とを行うことができる。さらに、第1の実施の形態では、上部ガラス基板31には格子状に複数のITO電極31cを形成しているために、マイクロミラー32dの制御を高精度に行うことができる。
【0048】
このような構成からなる光波面制御システム20では、外部から入力された入力光27aがコリメート光学系21a、ビームスプリッタ25aおよび集光光学系21bを経た光27dについて、光波面制御部30によって光の波面の制御および収差の補正が行われる。そして、光波面制御部30によって制御された光27eが、集光光学系21b、ビームスプリッタ25a,25bを経た光27iの光情報が波面センサ23によって検出される。波面センサ23の検出結果に基づいて、光27dの波面を制御するための制御信号24aと光27dの収差を補正するための制御信号24bとを、制御回路24から光波面制御部30の上部ガラス基板31および下部ガラス基板33にそれぞれ出力する。このような光の制御を繰り返すことにより、所望の光を得ることができる。この結果、光波面制御システム20は、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、光波面制御部の下部ガラス基板の電極の形状を、第1の実施の形態と異なり、格子状に配列させた場合を例に挙げて説明する。
【0050】
図7は、第2の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の下部ガラス基板の斜視模式図である。なお、図7では、下部ガラス基板43のみを記載してあるが、光波面制御部を構成する際は、下部ガラス基板43に対して、第1の実施の形態の上部ガラス基板31およびミラー基板32を利用するものとする。
【0051】
下部ガラス基板43は、ガラス基板43aに、電極パッド43b、マイクロミラー電位用配線43eおよびフレキシブル基板43fにより構成されている。なお、フレキシブル基板43fは貫通電極43baと接触するように実装されている。そして、下部ガラス基板43は、突起部43aaが形成されており、突起部43aaの面上には、電極43cが、上部ガラス基板31のITO電極31cと同様に、格子状に複数形成されている。なお、下部ガラス基板43のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部43aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部43aaの高さは、ミラー基板32のSiO2層32bの積層高さと等しくする。
【0052】
このような構成をなす下部ガラス基板43を備える光波面制御部による光の波面の制御および収差の補正の原理について以下に説明する。
図8は、第2の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図8でも、ミラー基板32については、マイクロミラー32dのみを記載しており、スペーサ32f、スペーサ32fが形成されているSi基板32aの枠部、SiO2層32b、Si層32cおよびトーションバー32eの記載は省略している。
【0053】
まず、図8(A)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31のガラス基板31aにて、真ん中の2つのITO電極31cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて上方へ引かれるように歪む。
【0054】
次に、図8(B)を参照しながら説明する。例えば、ガラス基板31aの右から2番目のITO電極31cと、ガラス基板43aの突起部43aaの面上の左から2番目の電極43cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー32dは、電圧Vが印加されたITO電極31cおよび電極43cからの引力を受けて、上方および下方へ引かれるように歪む。
【0055】
このようにして、既述のように、上部ガラス基板31のITO電極31cおよび/または下部ガラス基板43の電極43cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー32dが引力を受けて上方や下方へ引かれるように歪む。特に、第2の実施の形態では、下部ガラス基板43には電極43cを格子状に複数配列させているために、第1の実施の形態よりもより高精度にマイクロミラー32dを制御することができる。このため、光波面の制御および収差の補正を高精度に行うことが可能となる。
【0056】
次に、第3の実施の形態について説明する。
第1および第2の実施の形態では、ミラー基板に上部ガラス基板および下部ガラス基板を組み合わせて光波面制御部を構成する場合を例に挙げて説明した。第3の実施の形態では、ミラー基板に上部ガラス基板のみを組み合わせる場合を例に挙げて説明する。
【0057】
図9は、第3の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
光波面制御部50は、図3で示した上部ガラス基板31と、ミラー基板52とで構成されている。なお、図9では、それぞれ分離させて図示しているが、実際は上部ガラス基板31とミラー基板52とが組み合わさることで光波面制御部50を構成する。また、組み合わせる際は、上部ガラス基板31を裏返してスペーサ貼付位置31dがミラー基板52のスペーサ52fと接合するようにする。
【0058】
上部ガラス基板31は、既述の通り、ガラス基板31aに、電極パッド31b、ITO電極31c、スペーサ貼付位置31d、マイクロミラー電位用配線31eおよび貫通電極31baを介したフレキシブル基板31fにより構成されている。
【0059】
ミラー基板52は、Si基板52a、SiO2層52bおよびSi層52cにより構成されるSOI構造をなしており、さらに、Si基板52aの内壁に一体的に形成されたトーションバー52eを介してマイクロミラー52dが形成されている。そして、ミラー基板52では、Si層52cは、図3のSi層32cと異なり、内部が除去された額縁状ではなく、層状をなしている。また、既述の通り、マイクロミラー52dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー52dの表面に金属膜を形成することができる。さらに、Si基板52aの枠部の面上に、スペーサ52fが形成されている。スペーサ52fは、既述の通り、上部ガラス基板31とミラー基板52との間のスペーサとして、上部ガラス基板31のマイクロミラー電位用配線31e上のスペーサ貼付位置31dに接合される。そして、スペーサ52fは、Au−Sn系などのハンダバンプにより構成されており、電極パッド31bと接続されたマイクロミラー電位用配線31eからマイクロミラー52dへの電位をSi基板52aに印加するための配線としての機能も兼ねている。なお、ミラー基板52のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー52dのサイズは、例えば、縦および横の長さを、0.1μmから100μm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0060】
このような構成をなす光波面制御部50による光の波面の制御および収差の補正の原理について以下に説明する。
図10は、第3の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。なお、図10でも、ミラー基板52については、マイクロミラー52dのみを記載しており、スペーサ52f、スペーサ52fが形成されているSi基板52aの枠部、SiO2層52bおよびトーションバー52eの記載は省略している。
【0061】
まず、図10(A)を参照しながら説明する。例えば、上部ガラス基板31のガラス基板31aにて、真ん中の2つのITO電極31cに電圧Vを印加すると、既述の通り、マイクロミラー32dの、電圧Vが印加されたITO電極31cの直下付近の領域が引力を受けて上方へ引かれるように歪む。
【0062】
次に、図10(B)を参照しながら説明する。例えば、ミラー基板52のSi層52cに電圧Vを印加すると、マイクロミラー52dは、電圧Vが印加されたSi層52cからの引力を受けて下方へ引かれるように歪む。
【0063】
したがって、ミラー基板52のSi層52cを層状の形状にして、Si層52cに電圧Vを印加するようにして、マイクロミラー52dを制御することができる。このような構成にすることにより、光波面制御部50の構成要素を減らすことができて、作製のためのコストを削減して、光波面の制御および収差の補正を高精度に行うことが可能となる。
【0064】
次に、第4の実施の形態について説明する。
第1、第2および第3の実施の形態では、光波面制御部のミラー基板の形状が略正方形の場合を例に挙げて説明した。一方、第4の実施の形態では、ミラー基板のマイクロミラーを円形にした場合を例に挙げて説明する。
【0065】
図11は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の平面模式図である。
ミラー基板62は、上述のミラー基板32と同様に、Si基板62a、SiO2層(図示を省略)およびSi層(図示を省略)により構成されるSOI構造をなしている。また、Si基板62aの枠部の面上に、スペーサ62fが形成されている。スペーサ62fは、既述のスペーサ32fと同じ構成および機能を有する。さらに、ミラー基板62では、Si基板62aの内壁に一体的に形成されたトーションバー62eを介して円形のマイクロミラー62dが形成されている。また、既述の通り、マイクロミラー62dの反射率を高めたい場合、マイクロミラー62dの表面に金属膜を形成することができる。なお、ミラー基板62のサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから3000μm、横の長さを、100μmから3000μm、厚さを、10μmから3000μmとして、マイクロミラー62dのサイズは、例えば、直径を、0.1μmから5mm、厚さを、0.1μmから500μmとする。
【0066】
そして、ミラー基板62と組み合わせる上部ガラス基板および下部ガラス基板は、例えば、次のような構成にすることができる。
図12は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の、(A)は上部ガラス基板の、(B)は下部ガラス基板の平面模式図である。
【0067】
上部ガラス基板61は、既述の上部ガラス基板31と同様に、ガラス基板61aに、電極パッド61b、ITO電極61c、スペーサ貼付位置61d、マイクロミラー電位用配線61eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。但し、ミラー基板62の円形のマイクロミラー62dに重なるように、ITO電極61cの形状を、例えば、六角形にして、略円形となるように配置している。また、フレキシブル基板は貫通電極61baと接触するように実装されている。なお、上部ガラス基板61のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0068】
なお、上部ガラス基板61のITO電極61cに代わって以下のようなITO電極を用いても構わない。
図13は、第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の上部ガラス基板の別の平面模式図である。
【0069】
図13に示す上部ガラス基板71は、上部ガラス基板61と同様に、ガラス基板71aに、電極パッド71b、ITO電極71c、スペーサ貼付位置71d、マイクロミラー電位用配線71eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。なお、フレキシブル基板は貫通電極71baと接触するように実装されている。但し、ミラー基板62の円形のマイクロミラー62dに重なるように、同心円状のITO電極71cを配置している。なお、上部ガラス基板71のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから1mmとする。
【0070】
一方、図12に示すように、下部ガラス基板63も、既述の下部ガラス基板33と同様に、ガラス基板63aに、電極パッド63b、マイクロミラー電位用配線63eおよびフレキシブル基板(図示を省略)により構成されている。そして、フレキシブル基板は貫通電極63baと接触するように実装されている。また、下部ガラス基板63は、突起部63aaが形成されているが、突起部63aaの面上には、上部ガラス基板61と同様に、六角形の電極63cを略円形になるように配置している。なお、下部ガラス基板63のサイズは、例えば、縦の長さを、5mmから50mm、横の長さを、5mmから50mm、厚さを、100μmから2000μm、突起部63aaのサイズは、例えば、縦の長さを、100μmから5mm、横の長さを、100μmから5mm、高さを、10μmから1mmとする。なお、突起部63aaの高さは、上部ガラス基板61のSiO2層の積層高さと等しくする。
【0071】
このような上部ガラス基板61および下部ガラス基板63が組み合わされた光波面制御部(図示を省略)によって、上部ガラス基板61のITO電極61cおよび/または下部ガラス基板63の電極63cに電圧Vを印加することによって、マイクロミラー62dが引力を受けて上方や下方へ引かれるように歪む。このようにして、マイクロミラー62dの制御を高精度に行うことができる。したがって、このような構成の光波面制御部により構成される光波面制御システムでも、光学部品を減らし、コストを削減した、光波面の制御および収差の補正を行うことが可能となる。なお、第3の実施の形態の光波面制御部にて、第4の実施の形態で触れた円形のマイクロミラーを適用させても構わない。
【0072】
また、第1から第4の実施の形態の光波面制御部を用いた光波面制御システムを、様々な光学装置に組み込んで利用することができる。光通信システム分野を例に挙げると、例えば、VIPA(Virtually Imaged Phase Array)型の分散補償器によって、分散される光ごとに、上述の光波面制御システムを設置することによって、光波面が制御され、収差が補正された光を出力することが可能となる。その他、様々な光学部品とともに利用することができる。
【0073】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【0074】
(付記1) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムにおいて、
前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、
前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、
を有することを特徴とする光波面制御システム。
【0075】
(付記2) 前記入力光をコリメートして、前記光波面制御部に入力する入力光学系をさらに有することを特徴とする付記1記載の光波面制御システム。
(付記3) 光路変更部をさらに有し、
前記光路変更部を介して、前記光波面制御部からの前記出力光を前記検出部へ入力させることを特徴とする付記1または2に記載の光波面制御システム。
【0076】
(付記4) 別の光路変更部をさらに有し、
前記別の光路変更部を介して、前記光路変更部からの前記出力光を前記検出部へ入力させるとともに、外部へ出力させることを特徴とする付記3記載の光波面制御システム。
【0077】
(付記5) 前記光路変更部は、ハーフミラー、スプリッタまたはサーキュレータであることを特徴とする付記3または4に記載の光波面制御システム。
(付記6) 前記収差制御信号は、ゼルニケ多項式に基づいた信号であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0078】
(付記7) 前記出力光を検知して、2次元的に画像表示化する波面モニタをさらに有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
(付記8) 前記光波面制御部は、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように形成され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接続し、前記波面制御信号が入力される上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続し、前記収差制御信号が入力される下部ガラス基板と、
を備えることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0079】
(付記9) 前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記8記載の光波面制御システム。
【0080】
(付記10) 前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする付記8または9に記載の光波面制御システム。
(付記11) 前記マイクロミラーの形状は、円形または方形であることを特徴とする付記8乃至10のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0081】
(付記12) 前記電極は、前記透明電極とそれぞれ対向することを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
(付記13) 前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【0082】
(付記14) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置において、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【0083】
(付記15) 前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする付記14記載の光波面制御装置。
【0084】
(付記16) 前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする付記14または15に記載の光波面制御装置。
(付記17) 前記マイクロミラーの形状は、円形または方形であることを特徴とする付記14乃至16のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0085】
(付記18) 前記電極は、前記透明電極とそれぞれ対向することを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
(付記19) 前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【0086】
(付記20) 入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法において、
光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、
検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、
制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、
ことを特徴とする光波面制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態の概要を説明する模式図である。
【図2】第1の実施の形態の光波面制御システムの模式図である。
【図3】第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
【図4】第1の実施の形態の光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の製造工程の要部断面模式図である。
【図5】第1の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の断面模式図である。
【図6】第1の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図7】第2の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の下部ガラス基板の斜視模式図である。
【図8】第2の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図9】第3の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の斜視模式図である。
【図10】第3の実施の形態における光波面制御部の動作原理を説明する断面模式図である。
【図11】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部のミラー基板の平面模式図である。
【図12】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の、(A)は上部ガラス基板の、(B)は下部ガラス基板の平面模式図である。
【図13】第4の実施の形態における光波面制御システムを構成する光波面制御部の上部ガラス基板の別の平面模式図である。
【符号の説明】
【0088】
10 光波面制御システム
11a,11b,11c 入力光
12a,12b,12c,12d 出力光
13 入力光学系
14a 波面制御信号
14b 収差制御信号
15 光波面制御部
16 検出部
17 制御回路部
18a,18b 光路変更部
A,B 波形
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムにおいて、
前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、
前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、
を有することを特徴とする光波面制御システム。
【請求項2】
前記入力光をコリメートして、前記光波面制御部に入力する入力光学系をさらに有することを特徴とする請求項1記載の光波面制御システム。
【請求項3】
光路変更部をさらに有し、
前記光路変更部を介して、前記光波面制御部からの前記出力光を前記検出部へ入力させることを特徴とする請求項1または2に記載の光波面制御システム。
【請求項4】
前記収差制御信号は、ゼルニケ多項式に基づいた信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【請求項5】
前記光波面制御部は、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように形成され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接続し、前記波面制御信号が入力される上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続し、前記収差制御信号が入力される下部ガラス基板と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【請求項6】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置において、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【請求項7】
前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする請求項6記載の光波面制御装置。
【請求項8】
前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする請求項6または7に記載の光波面制御装置。
【請求項9】
前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項10】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法において、
光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、
検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、
制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、
ことを特徴とする光波面制御方法。
【請求項1】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御システムにおいて、
前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力する光波面制御部と、
前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する制御回路部と、
を有することを特徴とする光波面制御システム。
【請求項2】
前記入力光をコリメートして、前記光波面制御部に入力する入力光学系をさらに有することを特徴とする請求項1記載の光波面制御システム。
【請求項3】
光路変更部をさらに有し、
前記光路変更部を介して、前記光波面制御部からの前記出力光を前記検出部へ入力させることを特徴とする請求項1または2に記載の光波面制御システム。
【請求項4】
前記収差制御信号は、ゼルニケ多項式に基づいた信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【請求項5】
前記光波面制御部は、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように形成され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接続し、前記波面制御信号が入力される上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続し、前記収差制御信号が入力される下部ガラス基板と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光波面制御システム。
【請求項6】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御装置において、
額縁状の支持基板層および額縁状の中間層が順に積層してなる底面部と、前記底面部上に形成され、内壁にトーションバーを介してマイクロミラーが一体的に形成され、枠部の上面にスペーサを備えるデバイス部とを有するミラー基板と、
複数の透明電極が、前記マイクロミラーの反射面に重なるように配置され、前記スペーサを介して前記ミラー基板と接合する上部ガラス基板と、
高さが前記中間層の積層高さと等しく、電極が形成された突起部を備え、前記突起部が前記底面部に嵌合して、前記ミラー基板と接続する下部ガラス基板と、
を有することを特徴とする光波面制御装置。
【請求項7】
前記ミラー基板は、前記支持基板層および前記デバイス部がシリコン、前記中間層が酸化シリコンによって構成されるSOI構造であることを特徴とする請求項6記載の光波面制御装置。
【請求項8】
前記透明電極は、酸化インジウム錫で構成されることを特徴とする請求項6または7に記載の光波面制御装置。
【請求項9】
前記下部ガラス基板および前記支持基板層に代わって、電圧が印加される下部基板層を前記中間層の下に備えることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の光波面制御装置。
【請求項10】
入力光の波面を制御して、波面整形された出力光を出力する光波面制御方法において、
光波面制御部が、前記入力光を入力すると、前記入力光の波面の位相を制御する波面制御信号および前記入力光の収差の歪を制御する収差制御信号に従って、前記位相および前記歪をそれぞれ制御して、前記出力光を出力し、
検出部が、前記光波面制御部から前記出力光を入力すると、前記出力光の波面および前記出力光の収差に関する光情報を検出し、
制御回路部が、前記検出部が検出した前記光情報に基づき、前記波面制御信号および前記収差制御信号を前記光波面制御部に出力する、
ことを特徴とする光波面制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−251254(P2009−251254A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98892(P2008−98892)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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