説明

光活性化抗菌性物品及び使用方法

連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素から本質的になる光活性化抗菌性物品が開示される。物品は、電子ビーム処理を用いて作製することができる。アクリジン色素によって吸収される光と組み合わせられた物品は、微生物の増殖を阻害するために用いることができる。アクリジン色素がナイロン材料上に配置された感光性ナイロン材料を用いてもよい。光源及びアクリジン色素を有する物品を含む医療用キットが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、微生物学、特に抗菌性物品及び使用方法に関する。抗菌活性は、感光剤に光を提供することによって誘導される。
【背景技術】
【0002】
感染症は、細菌、真菌、及びウイルスを含む病原性微生物の体内への侵入によって発症することが多い。長年にわたって、抗生物質、抗ウイルス剤、及び酸化剤の開発及び使用を含む、病原性微生物を殺傷又は増殖を阻害するための多くの化学及び方法が開発されてきた。多くの波長の電磁放射線放射も用いられている。病原性微生物は、酸素及び特定の感光剤の存在下で微生物を光に曝露することによって殺傷又は増殖が阻害され得ることが知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
光活性化抗菌性物品が本明細書に開示される。光活性化抗菌性物品は、連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素から本質的になる。光活性化抗菌性物品は、ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素からなる感光性ナイロン材料を用意し、感光性ナイロン材料を電子ビームで処理することによって作製することができる。
【0004】
微生物の増殖を阻害する方法も本明細書に開示される。有用な方法は、ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素から本質的になる感光性ナイロン材料を用意する工程と、感光性ナイロン材料を微生物に曝露する工程と、光源を用意する工程と、光源によって発せられる光がアクリジン色素によって吸収されるように光源を稼働させる工程とを含んでもよい。別の有用な方法は、連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素を含む光活性化抗菌性物品を用意する工程と、光活性化抗菌性物品を微生物に曝露する工程と、光源を用意する工程と、光源によって発せられる光がアクリジン色素によって吸収されるように光源を稼働させる工程とを含んでもよい。
【0005】
医療用キットも本明細書に開示される。キットは、光源と、ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素から本質的になる感光性ナイロン物品とを含んでもよい。また、キットは、光源と、連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素から本質的になる光活性化抗菌性物品とを含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一重項酸素は、微生物の殺傷において使用するために好中球及びマクロファージで生成される。スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、及びペルオキシダーゼは、ラジカル及び還元酸素種に対する防御となるが、一重項酸素に対しては有効ではない。セルコスポラ属等の幾つかの微生物は、一重項酸素に対して生来耐性であるが、グラム陽性細菌は、一般的に、グラム陰性細菌よりも一重項酸素によってより容易に殺傷される。エンベロープウイルスは、非エンベロープウイルスよりも容易に一重項酸素によって不活化される。一重項酸素に対する細菌、真菌、又はウイルスの獲得耐性について確認されている事例が1つもないことは注目に値する。
【0007】
「光動力作用」は、光の存在下における感光剤による細胞及び病原菌の破壊について説明するために用いられる用語である。酸素濃度が高く還元剤が存在しない条件下では、一重項酸素が破壊剤であると考えられる。これは、感光剤が細胞に入ることができない場合、細胞破壊の主な機序(いわゆるII型機序)である。II型機序は、例えば、照射したとき一重項酸素及びスーパーオキシドラジカルアニオン等の反応性酸素種を生じさせるローズベンガル等のキサンテン色素について、大腸菌に対する光毒性の主な手段であることが知られている。脂質二重膜を通過して、NADPH及びグルタチオン等の還元剤濃度が高い細胞内部に入ることができる感光剤の場合、いわゆるI型機序が細胞破壊を導く主な手段であることが見出されている。この機序は、最終的に、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、及びスーパーオキシドラジカルアニオン等の感光剤フリーラジカル及び反応性酸素種の形成を伴う。
【0008】
細菌及び真菌を殺傷するため及びウイルスを不活化するために遊離型の感光剤(例えば、フタロシアニン、ポルフィリン、ヒペリシン、及びローズベンガル)の利用しようとする試みが幾つか行われている。例えば、ローズベンガル及び光によるインフルエンザウイルスの光不活化は、LenardらによってPhotochemistry and Photobiology,58,527〜531(1993)に開示されている。また、国際公開第94/02022号(Raboneら)は、表面上の微生物の光動力殺傷においてローズベンガルを利用する改善された殺菌組成物を開示している。
【0009】
また、遊離型に比べて比較的固定化されている結合型の感光剤を利用しようとする試みも行われている。感光剤は、ビーズ、大分子、オリゴマー、巨大分子、及びポリマーに共有結合又はイオン結合している。例えば、米国特許第5,830,526号(Wilsonら)に開示されているように、イオン結合を用いて織布及び不織布に色素を結合させた。酸素及び光の存在下で微生物が殺傷されるように、正荷電ポリマー担体を用いてローズベンガルをイオン結合させた。ポリスチレンビーズに結合したローズベンガルによる大腸菌の光動力不活化は、BezmanらによってPhotochemistry and Photobiology,28,325〜329,(1978)に開示された。
【0010】
光活性化抗菌性物品及び物品を使用する方法が本明細書に開示される。「光活性化」とは、光動力作用を誘導する物品又は方法の能力を指す。この意味では、光活性化されるとは、感光剤が存在し、光からエネルギーを移動させて、一重項酸素、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドラジカルアニオン、感光剤ラジカル、及び感光剤の特定の環境に依存して形成され得る多くの他のラジカル等の反応性種を生じさせることを意味する。したがって、本明細書に開示される物品及び方法は、光にさらされたときに抗菌性になり得るという意味でも「光活性化」される。
【0011】
「抗菌性」とは、細菌、真菌、及びウイルス等の微生物を殺傷するか又は増殖を阻害する物品又は方法の能力を指す。「殺傷するか又は増殖を阻害する」とは、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つの細菌、少なくとも1つの真菌、又はこれらの組み合わせの存在を制限することを含む。「殺傷するか又は増殖を阻害する」とは、微生物を不活化し複製を妨げるか、又は微生物の数を減少させることも含む。異なる微生物に対して異なる用語を用いてもよい。
【0012】
光源が稼働され光を発したとき、物品が幾つかの影響を受けた微生物を殺傷するか又は増殖を阻害するように、その物品が光源に光学的に結合することができる場合、その物品は「光活性化抗菌性」であるとみなされる。様々なインキュベート及び試験方法を用いて、影響を受けた微生物のサンプル当たりのコロニー形成単位数を測定することができる。物品によって殺傷又は阻害されるコロニー形成単位数は、同一又はほぼ同一のインキュベート及び試験方法を用いる限り、物品がある場合及びない場合に、別々のサンプルを光にさらすことによって測定することができる。「光活性化抗菌性」物品は、例えば、約80〜100%又は約90〜99.99%の量、コロニー形成単位数を減少させる。
【0013】
方法は、(物品について上に記載した通り)方法が、幾つかの影響を受けた微生物を殺傷するか又は増殖を阻害するための光活性化抗菌性物品及び/又は光源の幾つかの使用を伴う場合、「光活性化抗菌性」であるとみなされる。
【0014】
影響を受ける微生物としては、DNAウイルス、RNAウイルス、RNAレトロウイルス、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、及び真菌が挙げられる。影響を受ける微生物としては、一本鎖及び二本鎖核酸ゲノムも挙げられる。影響を受ける微生物としては、オルトミクソウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、及びフィロウイルス科等のマイナス鎖1本鎖RNAゲノムが挙げられる。これらは、エンベロープウイルスである。オルトミクソウイルス科としては、インフルエンザウイルスA型、B型、及びC型が挙げられる。ラブドウイルス科としては、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルスが挙げられる。パラミクソウイルス科としては、哺乳類のパラインフルエンザウイルス(流行性耳下腺炎ウイルスを含む)及び肺炎ウイルス(ヒト及びウシの呼吸器合胞体ウイルス)が挙げられる。ブニヤウイルス科としては、朝鮮出血熱及びハンタウイルス肺症候群を引き起こすハンタウイルスが挙げられる。フィロウイルス科としては、マールブルグウイルス及びエボラウイルスが挙げられる。
【0015】
影響を受ける微生物としては、ピコルナウイルス科(非エンベロープ)、レトロウイルス科、及びトガウイルス科等のプラス鎖1本鎖RNAゲノムが挙げられる。ピコルナウイルス科としては、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、及びライノウイルスが挙げられる。レトロウイルス科としては、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が挙げられる。トガウイルス科としては、セムリキ森林ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介ウイルス、及び風疹ウイルスが挙げられる。パルボウイルス(非エンベロープ)は、一本鎖マイナス鎖DNAゲノムを有する唯一のウイルスである。このウイルスは、主としてネコ及びイヌに感染する。
【0016】
影響を受ける微生物としては、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、及びヘパドナウイルス科等の二本鎖ウイルスが挙げられる。ヘルペスウイルス科を除いて、これらウイルスは非エンベロープウイルスである。パポバウイルス科としては、いぼ及び腫瘍を引き起こすパピローマウイルスが挙げられる。アデノウイルス科としては、マストアデノウイルス及び呼吸管に感染することができる様々なウイルスが挙げられる。ヘルペスウイルス科としては、単純ヘルペス1型及び2型、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバールウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、多発性硬化症に関与していることが現在知られている抗体、及びヒトヘルペスウイルス7型が挙げられる。ポックスウイルス科としては、天然痘及び他の水痘発生ウイルスが挙げられる。ヘパドナウイルス科としては、ヒトB型肝炎ウイルスが挙げられる。
【0017】
影響を受ける微生物としては、腸球菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及び大腸菌等の細菌が挙げられる。種は、ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌、コリネバクテリウム、リステリア、ナイセリア、及び腸内細菌(エシェリキア属、サルモネラ属、及びシゲラ属を含む)であってもよい。大腸菌は、一般的に、腸内細菌科のグラム陰性桿菌である。幾つかの大腸菌は、ヒト及び他の動物の腸管でコロニーを形成する。幾つかの大腸菌は、疾患に関連している。表面及び体液もこれらの細菌で汚染される場合がある。
【0018】
影響を受ける微生物としては、カンジダ・アルビカンス等の真菌が挙げられ、これは鵞口瘡として知られている口腔の酵母感染及び外陰膣炎として知られている女性の生殖管の感染を引き起こす。
【0019】
連結基なしでナイロン材料に共有結合した感光剤から本質的になる光活性化抗菌性物品が本明細書に開示される。感光剤は、好ましくは、アクリジン色素である。本明細書で使用するとき、「本質的になる」とは、物品は2つの成分から主になるが、本発明又は本発明の機能に特に寄与しない他の成分が存在してもよいことを意味する。典型的には、これら他の成分は、アクリジン色素の全乾燥重量に対して0〜約5重量%の全量で用いることができる。
【0020】
本明細書に開示される光活性化抗菌性物品では、アクリジン色素は、連結基なしでナイロン材料に共有結合する。本明細書で使用するとき、「連結基なしで共有結合する」とは、アクリジン色素が、共有結合する色素とナイロン材料のポリアミドとの間が0又は1原子で、ポリアミド鎖又はかつての(former)ポリアミド鎖に直接結合することを意味する。アクリジン色素が0原子でナイロン材料に共有結合する場合、その色素は、介在する原子が存在することなく、ナイロン材料の主鎖又はかつての主鎖に直接結合する。アクリジン色素が1原子でナイロン材料に共有結合する場合、その原子は、炭素、酸素、又は窒素を含み得る。本明細書に開示される物品は、アクリル酸等の連結基でナイロンが官能化され、次いで、最終的にナイロンの主鎖ポリアミドのペンダント基となる反応性種で処理されているグラフト化ナイロンポリマーとは区別できる。本明細書で使用するとき、「連結基」は、1超の原子を有する基を指す。
【0021】
アクリジン色素は、抗菌活性が生じるように光源から発せられる光のエネルギーを移動させることができる。抗菌活性は、一重項酸素、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドラジカルアニオン、アミン官能化感光剤ラジカル、及びアクリジン色素の特定の環境に依存して形成され得る多くの他のラジカル等の1つ以上の反応性種の発生に起因している可能性がある。
【0022】
ナイロン材料は、ナイロンと呼ばれる任意の化学構造を含む。一般的に、ナイロンは、ペプチド結合によって連結された繰り返し単位の長いポリマー鎖を含む。ナイロンは、隣接するペプチド結合を分離する炭素原子の数に基づいて命名されることが多い。一般的なナイロンは、隣接するペプチド結合間のヘキサメチレン基を指すナイロン6−6として知られている。また、ナイロンは、重合化されているホモポリマーナイロン6又は開環ポリカプロラクタムを含み得る。
【0023】
ナイロン材料は、繊維の形態で存在してもよく、連邦取引委員会は、ナイロン繊維に関して以下の通り定義している:繊維を形成する物質が、アミド結合の85%未満が2つの脂肪族基に直接結合している(−CO−NH−)長鎖合成ポリアミドである人造繊維。
【0024】
ナイロン材料は、繊維の形態であってもよい。ナイロン材料は、不織布ナイロン材料であってもよい。
【0025】
電子ビーム処理又は照射は、約10−6トール(1.3×10−7kPa)に維持された真空チャンバ内のリペラープレートと抽出装置グリッドとの間に保持されたタングステン線フィラメントに高電圧を印加することによる電子ビームの発生を伴う。フィラメントは、大電流で加熱されて電子を生成する。電子は、リペラープレート及び抽出装置グリッドにより金属箔の薄い窓に向かって導かれ、加速される。10メートル/秒(m/秒)を超える速度で進行し、約10〜300キロ電子ボルト(keV)を有する加速電子は、真空チャンバから箔の窓を通過し、いかなる物質が配置されていても直ちに箔の窓を超えて透過する。
【0026】
電子ビーム照射は、材料の重合、架橋、グラフト化、及び硬化を含む、様々な材料を変性するために用いられている。例えば、電子ビーム照射は、フィルム基材上にコーティングされた様々な感圧性接着剤製剤を重合及び/又は架橋するため、並びに印刷インク等の様々な液体コーティングを硬化するために用いられている。電子ビーム照射は、コーティング溶液を必要とせずに、材料を変性するために用いることができる。単位質量当たりの吸収されるエネルギー量は、線量としても知られており、グレイの単位で測定され、都合よくキログレイ(kGy)として表され、1kGyは1キログラム当たり1,000ジュールに等しい。
【0027】
光活性化抗菌性物品は、ナイロン材料をアミン官能化感光剤の溶液にさらすことによって作製することができる。ナイロン材料は、浴から取り出され、濡れた状態のサンプルが電子ビーム照射にさらされる。物品は、更なる成分からなってもよいが、光活性化抗菌性物品の形成には寄与しないもののみである。更なる成分は、微量、例えば、ナイロン材料上の乾燥コーティング材料の総重量の5重量%未満存在してもよい。光活性化抗菌性物品は、感光剤とナイロンポリアミド鎖との間の反応によって作製され、この反応は、電子ビーム処理によって実施される。
【0028】
アミン官能化感光剤は、ナイロン材料に対して、所望の効果を達成するのに必要な任意の量で使用してもよい。例えば、アミン官能化感光剤は、コロニー形成単位の減少に有効な量で用いてもよく、例えば、約80〜100%の量である。アミン官能化感光剤は、アミン官能化感光剤が用いられる層又は材料の重量に対して、約0.01〜約10重量%又は約0.1〜約5重量%の量で用いてもよい。
【0029】
抗菌性色素でコーティングされたナイロン不織布ウェブの電子ビーム照射によって、ヘルスケア製品及び消費者製品で様々な用途を有する非浸出抗菌性基材が作製される。光活性化抗菌性物品の使用は、多くの有益な特性をもたらす。抗菌活性は、ウェブ上の光の量を制御することによって有効にしたり無効にしたりすることができる。また、色素は、美しい色をもたらし、市場性を高める。ナイロン、光活性化抗菌性色素、及び任意の電子ビーム照射処理の組み合わせは、非浸出特性を高めるので、濡れているとき他の表面上に色素がにじまず、かつナイロンは、長期間使用した後でさえも同量の抗菌性色素を維持する。
【0030】
光源は、任意の好適な光源を含むことができる。光源は、日光又は周囲室内照明を含んでもよい。また、代表的な光源としては、冷陰極蛍光ランプなどの線状光源、及び発光ダイオード(LED)などの点光源が挙げられる。代表的な光源には、有機発光デバイス(OLED)、白熱電球、蛍光灯、ハロゲンランプ、紫外線電球、赤外線源、近赤外線源、レーザ、又は化学光源もまた挙げられる。広くは、光源によって放出される光は、可視であっても不可視であってもよい。少なくとも1つの光源を使用することができる。例えば、1〜約10,000個の光源を使用することができる。光源は、並んだLEDを含んでもよい。光源は、LEDから発せられた光が所望の領域全体にわたって継続的又は均一に粘弾性材料を照らし出すように回路上に配置されたLEDを含むことができる。
【0031】
光源は、所望の波長、又はある範囲の波長内の1超の波長を有する光を発し得る。光源は、約400〜約700nm、具体的に約400〜約500nm、より具体的には約440〜約460nmの1つ以上の波長の光を発し得る。約440〜約460nmの波長を有する光は、アクリジン色素に対して望ましく、例えば、アクリジンイエローGは、水溶液中で約455の吸収極大を有する。
【0032】
参照することによって本明細書に組み込まれる、2009年4月16日出願の米国仮出願第61/169973号(64347US008、Shermanら)に記載されているように、光源は、粘弾性材料に光学的に結合していてもよい。参照することによって本明細書に組み込まれる、2009年6月25日出願の米国仮出願第61/220,505号(65460US002、Appeaningら)に記載されているように、光が粘弾性材料から抽出され、アクリジン色素によって吸収され得るように、粘弾性材料を光活性化抗菌性物品に対して配置してもよい。例えば、光活性化抗菌性物品は、粘弾性層上に配置されてもよく、光源は、粘弾性層の縁部に押し付けられたLEDを含んでもよい。
【0033】
光源は、任意の好適な手段によって電力供給されることができる。光源は、バッテリー、直流電源、AC−DC変換電源、交流電源、又は太陽光電池を用いて電力供給されることができる。また、光源は、歩行等の運動によって電力供給されてもよい。
【0034】
本明細書に開示される光活性化抗菌性物品は、任意の数の方法で提供することができる。光活性化抗菌性物品は、平らに置かれたシート又はストリップとして提供されるか、又は丸めてロールを形成してもよい。光活性化抗菌性物品は、例えば、単品として、又は複数個で、セットでパッケージ化してもよい。光活性化抗菌性物品は、組み立てられた形態で、すなわち、幾つかのより大きな構成体の一部として提供されてもよい。光活性化抗菌性物品は、物品に加えて光源が用意されるキットで提供されてもよい。光源及び物品は、一緒に組み立てられてもよく、又は互いに別々であり、ユーザによってある時点で組み立てられてもよい。光活性化抗菌性物品は、ユーザのニーズに従って両者を混合し対応させることができるように別々に提供することもできる。光活性化抗菌性物品は、一時的に又は永続的に組み立てられてもよい。
【0035】
微生物の増殖を阻害する方法も本明細書に開示される。有用な方法は、ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素から本質的になる感光性ナイロン材料を用意する工程と、感光性ナイロン材料を微生物に曝露する工程と、光源を用意する工程と、光源によって発せられる光がアクリジン色素によって吸収されるように光源を稼働させる工程とを含んでもよい。
【0036】
有用な方法は、連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素を含む光活性化抗菌性物品を用意する工程と、光活性化抗菌性物品を微生物に曝露する工程と、光源を用意する工程と、光源によって発せられる光がアクリジン色素によって吸収されるように光源を稼働させる工程とを含んでもよい。
【実施例1】
【0037】
サンプルの調製
8”×11”(20.3cm×27.9cm)のナイロン不織布材料をより大きなPETフィルムのシート上に置いた。次いで、アクリジンイエローGの0.05重量%水溶液をピペットでナイロン上に置き、別の同一PETフィルムシートをサンプル上に置いた。紙タオルをこの構成体の下に置き、ローラを用いてナイロン全体にわたって均一に色素溶液を押し付けた。過剰の溶液をロールプレスによって紙タオルに取り除いた。溶液が均一に分布したら、サンプルを半分に切断し、片方のPETフィルムを取り除いた。
【0038】
サンプルの片方を以下の通り電子ビーム照射に供した:電子ビーム処理機、CB−300「Electrocurtain」(Energy Sciences,Inc.)を用いた。この処理機は、幅12”(30.5cm)のPETウェブを用いて、サンプルを搬送して幅12”(30.5cm)のカーテン状電子ビームに通した。サンプル構成体をウェブにテープで貼り付け、20fpm(0.10m/s)の速度で処理機に通した。ビーム電圧は300kVに設定し、十分な電流をカソードに印加して、40kGyの線量をサンプルに送達した。PETフィルムを取り除き、電子ビーム照射されたサンプルを並べて乾燥させた。
【0039】
浸出試験
浸出試験の結果:電子ビーム処理された及び電子ビーム処理されていない、ナイロン上のアクリジンイエローGの1”×2”(2.5cm×5.1cm)のサンプルを、20mLのバイアル瓶に入れ、それぞれに5mLの蒸留水を添加した。バイアル瓶を30分間振盪器上に置き、次いで、36日間実験台上に放置した。UV−Vis分光光度計を用いて、浸出した水を色素について分析した。既知の濃度のアクリジンイエローGの希釈液もUV−Vis分光光度計で分析して、検量線を作成した。
【0040】
電子ビーム照射されたサンプルからの浸出液の濃度は0.741ppmであり、電子ビーム照射されていないサンプルからの浸出液の濃度は2.11ppmであった。電子ビーム照射されたサンプルは、ほぼ3倍の濃度低下を示す。これら濃度は、両方共、ナイロンを処理するために用いられた初期0.05重量%(500ppm)溶液に比べて非常に低かった。これは、色素が非常に強くナイロンに結合していることを示す。
【0041】
抗菌性試験
サンプルは、D/E中和培養液及び算出のための3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Platesを使用して、AATCC Method 100に従って試験した。サンプルは試験前に殺菌しなかった。各サンプル(2”×2”(5.1cm×5.1cm))を、適切な試験生物を約1〜2×10コロニー形成単位(CFU)/mL含有する懸濁液1mLと共にインキュベート(inoculated)した。サンプルを24時間28℃でインキュベートする。24時間インキュベートした後、各サンプルを滅菌ストマッカーバッグに入れ、100mLのD/E中和培養液を添加した。サンプルをSeward Model 400 Stomacher内で1分間処理する。10、10、及び最高10の連続希釈液を作製し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Platesを使用して、好気性生菌数を計数した。
【0042】
1セットのサンプルを暗条件下でインキュベートし、第2のセットを明条件下でインキュベートした。35℃±1℃で48時間インキュベートした後にサンプル当たりの全コロニー形成単位を記録し、実測数をlog/cmに変換した。24時間における未処理(対照)サンプルに対する微生物数の減少率を算出した。サンプルは、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)及び大腸菌(ATCC 11229)に対して試験された。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
電子ビーム処理された及び電子ビーム処理されていないナイロン上のアクリジンイエローGのサンプルは両方共、24時間明条件下でインキュベートしたとき、3logだけグラム陽性細菌量(黄色ブドウ球菌)を減少させた。電子ビーム処理されていないサンプルは、24時間明条件下でインキュベートしたとき、グラム陰性細菌量(大腸菌)を減少させた。一般的に、グラム陰性細菌は、殺傷するのがより困難である場合があるが、その理由は、グラム陽性細菌と比べて更に膜を有しているためである。
【0046】
更なる抗菌性試験
抗菌性試験を上記の通り実施した。各サンプルの全コロニー形成単位の増殖を、明条件下で24時間インキュベートした後に記録した。
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素から本質的になる、光活性化抗菌性物品。
【請求項2】
前記アクリジン色素がアクリジンイエローGである、請求項1に記載の光活性化抗菌性物品。
【請求項3】
前記ナイロン材料が不織布ナイロン材料である、請求項1に記載の光活性化抗菌性物品。
【請求項4】
光活性化抗菌性物品を作製する方法であって、
ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素から本質的になる感光性ナイロン材料を用意する工程と、
前記アクリジン色素が連結基なしで前記ナイロン材料に共有結合するように電子ビームを用いて前記感光性ナイロン材料を処理する工程と、を含む、方法。
【請求項5】
微生物の増殖を阻害する方法であって、
ナイロン材料上に配置されたアクリジン色素から本質的になる感光性ナイロン材料を用意する工程と、
前記感光性ナイロン材料を微生物に曝露する工程と、
光源を用意する工程と、
前記光源によって発せられる光が前記アクリジン色素によって吸収されるように前記光源を稼働させる工程と、を含む、方法。
【請求項6】
前記アクリジン色素がアクリジンイエローGである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ナイロン材料が不織布ナイロン材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
微生物の増殖を阻害する方法であって、
連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素を含む光活性化抗菌性物品を用意する工程と、
前記光活性化抗菌性物品を微生物に曝露する工程と、
光源を提供する工程と、
前記光源によって発せられる光が前記アクリジン色素によって吸収されるように前記光源を稼働させる工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記感光剤がアクリジンイエローGである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナイロン材料が不織布ナイロン材料である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
光源と、
連結基なしでナイロン材料に共有結合したアクリジン色素から本質的になる光活性化抗菌性物品と、を含む、医療用キット。

【公表番号】特表2012−532103(P2012−532103A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517672(P2012−517672)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/039580
【国際公開番号】WO2011/008441
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】