説明

光源駆動装置及び画像形成装置

【課題】高速印刷であっても安定した画像濃度を実現すること。
【解決手段】レーザダイオードの発光周期が短いと、エッジ効果により画像のエッジ部分に余計なトナーが集まり、エッジ部分が濃くなる現象が発生し、良好な画像濃度を保つことができない。そこで、レーザダイオードの発光周期が短い場合は、オーバーシュート率を低くして、光出力の立ち上がり部の波形をなまらせることによって、エッジ濃度の増加を抑える。逆に発光部の発光周期が長い場合は、オーバーシュート率を高くして、光出力の立ち上がり部をオーバーシュートさせることによって、画像のエッジをシャープに表現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源駆動装置及び画像形成装置の技術分野に属し、特に、感光体ドラムの表面に光を照射して露光を行う光源駆動装置、及びこのような光源駆動装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、露光装置に備えられたレーザダイオードから照射される光ビームを、回転多面鏡の各反射面でそれぞれ反射させて感光体ドラムの表面を露光し、感光体ドラム表面に静電潜像を形成するものが広く知られている。
【0003】
このようなレーザダイオードを用いた画像形成装置において、レーザダイオードの光出力は1ドットの再現性を決定する上で大きな要素となる。近年のプリントスピードの高速化に伴い、1ドットの印刷時間は短くなった。更に1ドットの多階調化、高解像度化も加わり、より短いパルス幅で正確な表現が要求されるようになった。特許文献1には、高速印刷を特徴とするマルチビームレーザを用いた画像形成装置において、各レーザの光出力の立ち上がりのオーバーシュート量を調整することによって、出力画像の濃度変動を防ぎ、高階調性を目指した点灯制御方法、駆動回路及び画像形成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような高速印刷を特徴とした画像形成装置において、1ドットのパルス幅が短いと、感光体ドラム上に形成された静電潜像のエッジ部分にはエッジ効果により縁端電界が生じる。この縁端電界部分には、余計なトナーが付着し、結果として画像のエッジ部分が濃くなる現象が起きていた。このようなエッジ効果の現象は、レーザダイオードの発光周期(オン/オフの周期)が長い部分では少なく、発光周期が短い部分で顕著に表れる。従って、レーザダイオードの発光周期に応じて画像濃度が不安定となり、画質低下の原因となっていた。
【0006】
図8は、発光周期とエッジ濃度の関係について示したグラフである。横軸は発光周期、縦軸はエッジ濃度を表している。グラフG1は、理想状態を示している。つまり、発光周期にかかわらずエッジ濃度は一定である。グラフG2は、エッジ効果による発光周期とエッジ濃度の関係を示しており、発光周期が短いほどエッジ濃度は濃く、発光周期が長いほどエッジ濃度は理想状態に近づく。
【0007】
グラフG3は、レーザダイオードの光出力特性と感光体ドラムの光応答性による発光周期とエッジ濃度の関係を示している。レーザダイオードに入力される画像信号を示すパルス幅が非常に短いと、レーザダイオードから十分な光量の光が出力されない。十分な光が感光体ドラムに照射されないと、エッジ濃度が薄くなってしまう。そして、発光周期が長いほどエッジ濃度は理想状態に近づく。
【0008】
グラフG4は、グラフG2とグラフG3を加算したものである。つまり、画像信号のパルス幅が非常に短いとき、エッジ濃度は薄くなり、依然パルス幅は短いながらも、ある一定のパルス幅を超えたとき、エッジ濃度はエッジ効果によって理想状態を超えた濃さになってしまう。
【0009】
特許文献1に記載された技術では、各レーザの光出力の立ち上がりのオーバーシュート量を調整することとしている。発光周期の長いレーザダイオードのオーバーシュート量を大きくすることによって、画像のエッジをシャープにする等のエッジ効果を制御することはできるが、発光周期の短いレーザダイオードについては特許文献1に記載されている方法では画像のエッジが濃くなるというエッジ効果を抑えることはできない。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、高速印刷であっても安定した画像濃度を実現する光源駆動装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の光源駆動装置は、複数の発光部を有する光源と、前記各発光部とそれぞれ電気的に接続されるものであり、前記発光部から出射される光の光出力における立ち上がり部で光強度を強くするオーバーシュート回路部と、前記立ち上がり部で光強度を弱くするスナバ回路部を有する複数の駆動手段と、を備え、前記各発光部から出射される光の光出力の立ち上がり部は、前記発光部の点灯又は消灯の周期が短いほどオーバーシュート率が高く、前記発光部の点灯又は消灯の周期が長いほどオーバーシュート率が低くなるように、前記オーバーシュート回路部及び前記スナバ回路部によって決定されているものである。
【0012】
ここで、オーバーシュート率とは、発光部から出力される光の光出力の安定値に対する光出力の立ち上がり部の値と安定値の差の割合をいう。オーバーシュート率が高いほど、光出力の立ち上がり部においてオーバーシュートが発生する。逆に、オーバーシュート率が負の値のときは光出力の立ち上がり部が安定値より低いことを示す。つまり、立ち上がり部がなまり気味の波形となる。
【0013】
発光部の点灯又は消灯の周期が短い(発光周期が短い)と、エッジ効果により画像のエッジ部分に余計なトナーが集まり、エッジ部分が濃くなる現象が発生し、良好な画像濃度を保つことができなかった。そこで、発光部の点灯又は消灯の周期が短い場合は、オーバーシュート率を低く(具体的には負の値)することにより、光出力の立ち上がり部の波形をなまらせて、エッジ濃度の増加を抑えることができる。逆に発光部の点灯又は消灯の周期が長い場合はオーバーシュート率を高くして、光出力の立ち上がり部をオーバーシュートさせて、画像のエッジをシャープに表現することができる。このように、発光周期に応じて光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を設定することにより、発光周期によって発生するエッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明の光源駆動装置は、複数の発光部を有する光源と、前記各発光部とそれぞれ電気的に接続されるものであり、前記発光部から出射される光の光出力における立ち上がり部で光強度を強くするオーバーシュート回路部と、前記立ち上がり部で光強度を弱くするスナバ回路部を有する複数の駆動手段と、入力した画像データに基づいて予め定められたスクリーンサイズの画素ブロック毎にスクリーン処理を施すスクリーン処理手段と、を備え、前記各発光部から出射される光の光出力の立ち上がり部は、前記各発光部と対応する前記スクリーン処理後の画素ブロックのスクリーンの成長度合いが高いほどオーバーシュート率が高く、スクリーンの成長度合いが低いほどオーバーシュート率が低くなるように、前記オーバーシュート回路部及び前記スナバ回路部によって決定されているものである。
【0015】
この構成によれば、スクリーンの成長度合いが低い場合は、オーバーシュート率を低く(具体的には負の値)することにより、光出力の立ち上がり部の波形をなまらせて、エッジ濃度の増加を抑えることができる。逆にスクリーンの成長度合いが高い場合はオーバーシュート率を高くして、光出力の立ち上がり部をオーバーシュートさせて、画像のエッジをシャープに表現することができる。このように、スクリーンの成長度合いに応じて光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を設定することにより、エッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光源駆動装置であって、前記オーバーシュート回路部は、リアクタンスを有して構成されるものであり、前記スナバ回路は、抵抗及びコンデンサを有して構成されるものであり、前記オーバーシュート率は、前記オーバーシュート回路部の前記リアクタンスの値、前記スナバ回路の前記抵抗及び前記コンデンサの値に応じて決定されるものである。
【0017】
この構成によれば、発光部から出射される光のオーバーシュート率を、簡単な回路構成を用いて発光部毎に個別に設定することができる。
【0018】
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1〜3の何れか一項に記載の光源駆動装置によって駆動される複数の発光部を有する光源から画像データに応じた光ビームを出射して像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を顕像化し、そのトナー像を記録紙に転写する画像形成手段と、を備える。
【0019】
この構成によれば、レーザダイオードの発光周期に応じて、又はスクリーンの成長度合いに応じて光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を設定することによって、発光周期又はスクリーンの成長度合いの違いによるエッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、レーザダイオードの発光周期に応じて、又はスクリーンの成長度合いに応じて光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を設定することにより、発光周期によるエッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プリンタの概略構成を示す模式図。
【図2】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図3】600dpiの画像データと、1ドットを4分割した2400dpiの画像データを示した図。
【図4】レーザダイオードの光出力波形の一例を示した図。
【図5】LD駆動回路の一例を示す図。
【図6】レーザダイオードの発光周期に応じてオーバーシュート率を設定したときの発光周期とエッジ濃度の関係について示したグラフ。
【図7】スクリーン処理を行ったときの画像データと各レーザダイオードから出射される光の光出力波形を示した図。
【図8】発光周期とエッジ濃度の関係について示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。尚、本実施の形態においては、画像形成装置としてカラープリンタを例に説明するが、本発明は、モノクロ又はカラー印刷が可能な複写機、ファクシミリ、各種機能を備えた複合機にも適用可能である。更に、本実施の形態においては、タンデム型カラープリンタを例に説明するが、レーザを用いた画像形成装置であれば他の印刷方式であってもよい。
【0023】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるタンデム型のプリンタ1の概略構成を示す模式図である。図1に示すプリンタ1は、記録紙Pを貯留するために機器本体11に挿脱自在とされた給紙カセット120を有する給紙部12と、この給紙部12の駆動で給紙カセット120から繰り出された記録紙Pを搬送しながら当該記録紙Pにトナー画像を転写する2次転写ローラ137と、この2次転写ローラ137でトナー画像が転写された記録紙Pに対してトナー画像の定着処理を施す定着装置14とを備え、さらに、機器本体11の上面には、定着装置14で定着処理の施された記録紙Pが排紙される排紙部15が設けられている。
【0024】
給紙部12には、給紙カセット120の図1に示す左上方位置にピックアップローラ121が設けられ、このピックアップローラ121の駆動によって給紙カセット120に貯留されている記録紙Pが1枚ずつピックアップされて2次転写ローラ137に向けて送り出される。
【0025】
画像形成部13は、ブラックのトナー像を形成する画像形成ユニット131K、シアンのトナー像を形成する画像形成ユニット131C、イエローのトナー像を形成する画像形成ユニット131Y及びマゼンタのトナー像を形成する画像形成ユニット131Mと、これら画像形成ユニット131K、131C、131Y及び131Mによってその表面にトナー像が転写される転写ベルト136と、この転写ベルト136上のトナー像を給紙カセット120から送り込まれた記録紙Pにさらに転写するための2次転写ローラ137とを備えている。以下、画像形成ユニット131K、131C、131Y及び131Mをまとめて「画像形成ユニット131」という。
【0026】
画像形成ユニット131は、上流側(図1の紙面の右側)から下流側へ向けて、画像形成ユニット131K、131C、131Y、131Mの順に順次配設されている。各画像形成ユニット131は、機器本体11内における各機器に対して所定の相対的な位置関係で位置決めされて装着されている。
【0027】
各画像形成ユニット131には、像担持体である感光体ドラム132が配され、各感光体ドラム132に対向させて帯電器134が設けられている。この帯電器134よりも感光体ドラム132の回転方向(図1の矢印方向)の下流側には、露光装置135が設けられている。この露光装置135は、帯電器134によって一様に帯電された感光体ドラム132の周面に画像データに基づく光ビームを照射するものであり、これによって各感光体ドラム132の周面に静電潜像が形成される。露光装置135は、複数のレーザダイオード(マルチレーザダイオード)と、各レーザダイオードをそれぞれ独立に駆動するLD駆動回路を有しており、LD駆動回路に含まれるオーバーシュート回路及びスナバ回路によってレーザダイオードから出力される光ビームの光出力の立ち上がりのオーバーシュート率がそれぞれ異なるように設定されている。LD駆動回路及びオーバーシュート率については、後ほど詳しく説明する。
【0028】
露光装置135よりも更に感光体ドラム132の回転方向下流側には、現像装置133が設けられている。この現像装置133のトナー容器から上記静電潜像にトナーが供給されることにより、感光体ドラム132の周面にトナー像が形成される。
【0029】
更に、各感光体ドラム132には、感光体ドラム132周面の残留トナーを除去してクリーニングするクリーニング装置20が設けられている。クリーニング装置20によって清浄化処理された感光体ドラム132の周面は、新たな帯電処理のために帯電器134へ向かうことになる。
【0030】
転写ベルト136は、各画像形成ユニット131の直上位置において、表面が感光体ドラム132の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ136aおよび従動ローラ136b間に張設されている。各感光体ドラム132の直上には、転写ベルト136を介して1次転写ローラ136cがそれぞれ設けられている。そして、駆動ローラ136aの駆動による転写ベルト136の走行速度に応じて、各画像形成ユニット131の感光体ドラム132上に形成されたそれぞれのトナー画像が、1次転写ローラ136cによって、互いに重ね合わせて転写ベルト136に転写され、転写ベルト136の表面上にカラートナー画像が形成される。
【0031】
給紙カセット120から、2次転写ローラ137及び駆動ローラ136aのニップ部に向かう記録紙搬送路には、記録紙Pを当該ニップ部に搬送するレジストローラ145が設けられている。このレジストローラ145によって、2次転写ローラ137及び駆動ローラ136aのニップ部への記録紙搬送タイミングが調整された上で、記録紙Pが当該ニップ部に搬送される。また、このニップ部では、記録紙Pに対して、2次転写ローラ137により、転写ベルト136上のカラートナー画像が転写され、記録紙P上にカラートナー画像が形成される。
【0032】
尚、従動ローラ136bの図1において右側には、転写ベルト用クリーニング装置160が設けられ、記録紙Pへのトナー像の転写処理後の転写ベルト136の表面に残留しているトナーがこの転写ベルト用クリーニング装置160によって取り除かれ、これによって清浄化した転写ベルト136が感光体ドラム132へ供給されるようになっている。
【0033】
定着装置14は、画像形成部13で記録紙Pに転写されたカラートナー画像に定着処理を施すものである。定着装置14は、通電発熱体により加熱される熱ローラ141と、この熱ローラ141に対向配置され、周面が熱ローラ141の周面に押圧当接される加圧ローラ142とを備えている。そして、画像形成部13で2次転写ローラ137により記録紙Pに転写されたカラートナー画像は、当該記録紙Pが熱ローラ141と加圧ローラ142との間を通過するときの加熱による定着処理で定着され、その後、排紙部15へ排紙される。
【0034】
図2は、プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ1は、制御部200、記憶部210、画像メモリ220、画像処理部230、画像形成部13、入力操作部240及びネットワークI/F部250を備えて構成されている。尚、図1を用いて説明した構成要素と同じものには同符号を付して、説明を省略する。
【0035】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等によって構成され、記憶部210に記憶されたプログラムを読み出して処理を実行し、各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行ってプリンタ1を統括的に制御する。記憶部210は、プリンタ1の備える種々の機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶する。画像メモリ220は、ネットワークI/F部250を介して外部装置から送信された画像データ等を一時的に記憶する。
【0036】
画像処理部230は、画像メモリ220に記憶されている画像データに対して画像補正や拡大・縮小等の画像処理を施すものであり、スムージング処理部231及びスクリーン処理部232を有する。スムージング処理部231は、画像又は文字のエッジ部分の凹凸を滑らかにする処理を行う。スクリーン処理部232は、1つの画素をマトリックス状に微小な複数の画素ブロックに分割した場合に、1つの画素の画像の濃淡を描画するブロックの位置や数によって表現する処理を行う。
【0037】
画像形成部13は、画像メモリ220に記憶された画像データに基づいてトナー像を形成する。また、画像形成部13は、マルチレーザダイオード260及びLD駆動回路270を備えた露光装置135を有する。入力操作部240は、電源キーや設定キーを有する。ネットワークI/F部250は、LANボード等の通信モジュールから構成され、ネットワークI/F部250と接続されたネットワーク(不図示)を介して外部装置と種々のデータの送受信を行う。
【0038】
次に、レーザダイオードの光出力について説明する。例えば、スムージング処理部231は、入力された600dpiの画像データにスムージング処理を施して、2400dpiの画像データを出力することとする。そして、マルチレーザダイオード260は4ビーム構成とする。図3は、600dpiの画像データと、1ドットを4分割した2400dpiの画像データを示した図である。スムージング処理部231は、600dpiの画像データを4分割し、その分割データを副走査方向の先頭から順次並べていくことによって、2400dpiの画像データを生成する。
【0039】
4ビーム構成のマルチレーザダイオード260は、1ビーム目は副走査方向の先頭のデータ、2ビーム目は2番目のデータ、3ビーム目は3番目のデータ、4ビーム目は4番目のデータに応じて光ビームを出射する。図3の場合、A段、B段及びC段の何れも1ビーム目は全て点灯パターンであり、逆に4ビーム目は短いパルス幅での点灯パターン(A段)か全て消灯パターン(B段及びC段)となっている。
【0040】
このような場合、1ビーム目は発光周期(オン/オフの周期)が長いため、レーザダイオードの光出力は、立ち上がり部のオーバーシュート率を高くすることによって、画像のエッジ濃度をシャープにすることが望ましい。逆に4ビーム目は発光周期が短いため、エッジ効果によって画像のエッジ部分の余分なトナーが集まる傾向にあるため、レーザダイオードの光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を低くすることが望ましい。
【0041】
図4は、各レーザダイオードの光出力波形の一例を示した図である。ここで、オーバーシュート率について説明する。オーバーシュート率とは、光出力の安定値に対する光出力の立ち上がり部の値と安定値の差の割合(%)をいう。図4の1ビーム目の光出力によると、仮に立ち上がり部の値aを1.2、安定値bを0.8とすると、
オーバーシュート率=(立ち上がり部の値−安定値)/安定値×100
=(1.2−0.8)/0.8×100
=50%
となる。図4の4ビーム目の場合、仮に立ち上がり部の値aを0.5、安定部bを0.8とすると、
オーバーシュート率=(0.5−0.8)/0.8×100
=−37.5%
となる。オーバーシュート率が正の場合、光出力の立ち上がり部は安定値より上昇し(つまりオーバーシュートする)、オーバーシュート率が負の場合、光出力は安定値より低い値から立ち上がる(つまり、波形がなまる)。尚、オーバーシュート率の算出方法は、上記の限りではない。
【0042】
このように、ビームの発光周期に応じてオーバーシュート率を予め設定する。そして、各レーザダイオードを駆動するLD駆動回路270は、電気的に接続されたレーザダイオードから設定されたオーバーシュート率を示す光ビームが出力されるように回路設計がなされる。このオーバーシュート率の設定とオーバーシュート率に基づいたLD駆動回路270の回路設計は、プリンタ1の開発設計段階において行われる。
【0043】
図5は、LD駆動回路270の一例を示す図である。レーザダイオードLDのアノードは電源と接続し、カソードとリアクタンスLの一端が接続している。また、レーザダイオードLDとリアクタンスLに対して並列にRCスナバ回路272が接続されている。リアクタンスLの他端とRCスナバ回路272のコンデンサは、定電流制御回路273と接続している。
【0044】
光ビームの発光周期に従って設定された各レーザダイオードLDのオーバーシュート率に応じて、リアクタンスLとRCスナバ回路272の抵抗及びコンデンサの値を設定する。例えば、オーバーシュート率を高くしたいときは(オーバーシュートさせるときは)、リアクタンスLの値を大きくし、オーバーシュート率を低くしたいときは(波形をなまらせるときは)、RCスナバ回路272の抵抗及びコンデンサの値を調整することで高周波成分が除去され、波形をなまらせることができる。
【0045】
図6はレーザダイオードの発光周期に応じてオーバーシュート率を設定したときの発光周期とエッジ濃度の関係について示したグラフである。グラフG1は、理想状態を示している。グラフG5は、エッジ効果による発光周期とエッジ濃度の関係を示しており、発光周期が短いほどエッジ濃度は濃く、発光周期が長いほどエッジ濃度は理想状態に近づく。グラフG5に示すように、レーザダイオードの発光周期に応じてオーバーシュート率を設定することによって、発光周期が短いときにエッジ濃度が過剰に濃くなる現象が低減していることが分かる。
【0046】
グラフG6は、レーザダイオードの光出力特性と感光体ドラムの光応答性による発光周期とエッジ濃度の関係を示している。図8に示す従来のグラフに示すように、レーザダイオードに入力される画像信号を示すパルス幅が非常に短いと、レーザダイオードから十分な光量の光が出力されず、従って十分な光が感光体ドラム132に照射されないため、エッジ濃度が薄くなってしまうという現象が起こっていた。しかし、グラフG6に示すように、発光周期が短いときは光出力の立ち上がり部でオーバーシュートを発生させることにより、パルス幅が短くても感光体ドラム132に十分な光が照射され、エッジ濃度が薄くなる現象を低減することができる。
【0047】
グラフG7は、グラフG5とG6を加算したものである。レーザダイオードの発光周期に応じてオーバーシュート率を設定することによって、グラフG7に示すように、発光周期によるエッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【0048】
同様なことを、スクリーン処理を行う場合についても適用することができる。図7は、スクリーン処理部232によってスクリーン処理が行われたときの画像データと各レーザダイオードから出射される光の光出力波形の一例を示した図であり、例えば8ビームのマルチレーザダイオードを用い、8×8のスクリーンサイズを使用した場合について示している。ここで、マルチレーザダイオードのビーム数は、スクリーンサイズの倍数であることが望ましい。
【0049】
図7において、1ビーム目及び8ビーム目から出射される光ビームは中間調のデータの割合が多く、スクリーンの成長度合いが低い。従って、エッジ効果によるエッジ濃度の増加を抑えるために、1ビーム目及び8ビーム目に接続されたLD駆動回路27のリアクタンスを調整して、オーバーシュート率を低く(負に)設定する。つまり、光出力波形の立ち上がり部をなまらせる。
【0050】
そして、2ビーム目及び7ビーム目、3ビーム目及び6ビーム目で、徐々にスクリーンの成長度合いが増し、4ビーム目及び5ビーム目は、最もスクリーンが成長している。従って、2ビーム目及び7ビーム目、3ビーム目及び6ビーム目の順に各ビームに接続されたLD駆動回路27の各値を調整してオーバーシュート率を高く設定し、4ビーム目及び5ビーム目ではエッジ濃度をシャープにするためにオーバーシュート率を最も高く設定する。つまり、スクリーンの成長に応じてオーバーシュート率を設定することにより、エッジ濃度の差を抑えることができる。
【0051】
以上、説明したように、レーザダイオードの発光周期に応じて、又はスクリーンの成長度合いに応じて光出力の立ち上がり部のオーバーシュート率を設定することにより、画像全体においてエッジ濃度の差を抑えることができ、より良好な画像を表現することができる。
【0052】
尚、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず適宜変形可能である。例えば、スムージング処理後又はスクリーン処理後の画像データのデータ周期やスクリーンの成長度合いに応じて、その画像データに適したオーバーシュート率であるレーザダイオードから出力されるように、処理後の画像データを各レーザダイオードに割り振る処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 プリンタ(画像形成装置)
13 画像形成部(画像形成手段)
135 露光装置(露光手段)
260 マルチレーザダイオード(光源)
270 LD駆動回路(駆動手段)
LD レーザダイオード(発光部)
L リアクタンス
272 RCスナバ回路
200 制御部
210 記憶部
220 画像メモリ
230 画像処理部
231 スムージング処理部
232 スクリーン処理部(スクリーン処理手段)
240 入力操作部
250 ネットワークI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部を有する光源と、
前記各発光部とそれぞれ電気的に接続されるものであり、前記発光部から出射される光の光出力における立ち上がり部で光強度を強くするオーバーシュート回路部と、前記立ち上がり部で光強度を弱くするスナバ回路部を有する複数の駆動手段と、
を備え、
前記各発光部から出射される光の光出力の立ち上がり部は、前記発光部の点灯又は消灯の周期が短いほどオーバーシュート率が高く、前記発光部の点灯又は消灯の周期が長いほどオーバーシュート率が低くなるように、前記オーバーシュート回路部及び前記スナバ回路部によって決定されているものである光源駆動装置。
【請求項2】
複数の発光部を有する光源と、
前記各発光部とそれぞれ電気的に接続されるものであり、前記発光部から出射される光の光出力における立ち上がり部で光強度を強くするオーバーシュート回路部と、前記立ち上がり部で光強度を弱くするスナバ回路部を有する複数の駆動手段と、
入力した画像データに基づいて予め定められたスクリーンサイズの画素ブロック毎にスクリーン処理を施すスクリーン処理手段と、
を備え、
前記各発光部から出射される光の光出力の立ち上がり部は、前記各発光部と対応する前記スクリーン処理後の画素ブロックのスクリーンの成長度合いが高いほどオーバーシュート率が高く、スクリーンの成長度合いが低いほどオーバーシュート率が低くなるように、前記オーバーシュート回路部及び前記スナバ回路部によって決定されているものである光源駆動装置。
【請求項3】
前記オーバーシュート回路部は、リアクタンスを有して構成されるものであり、
前記スナバ回路は、抵抗及びコンデンサを有して構成されるものであり、
前記オーバーシュート率は、前記オーバーシュート回路部の前記リアクタンスの値、前記スナバ回路の前記抵抗及び前記コンデンサの値に応じて決定されるものである請求項1又は2に記載の光源駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光源駆動装置によって駆動される複数の発光部を有する光源から画像データに応じた光ビームを出射して像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を顕像化し、そのトナー像を記録紙に転写する画像形成手段と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167575(P2010−167575A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9717(P2009−9717)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】