説明

光照射装置

【課題】エキシマレーザを光源として用いることなく、アモルファスシリコンの膜をムラ無くかつ安価に結晶化させることのできる光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置100は、複数の光源部14と、複数の光源部14から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズム20とを備えている。複数の光源部14は、それぞれ、発光部10及び発光部10から発せられる光を反射する楕円鏡12によって構成されている。楕円鏡12の第1焦点もしくはその近傍に発光部10が配置されており、楕円鏡12の第2焦点もしくはその近傍にプリズム20の光の入射面22が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスシリコンを加熱してポリシリコン(多結晶シリコン)や単結晶シリコンを作製するために使用される光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、ガラス基板上のシリコン膜に配線層とTFT素子を形成して作製される。従来、このシリコン膜には、大型のガラス基板に対する成膜が容易であることから、アモルファスシリコンが使われていた。しかし、アモルファスシリコンは結晶になっていないために構造にバラツキがあり、電気抵抗が大きいという難点があった。そこで、最近では、アモルファスシリコンを結晶化させたポリシリコン(多結晶シリコン)が多く使用されている。ポリシリコンは抵抗が小さく電流が流れやすいために、配線層とTFT素子を小型化することが可能であり、液晶ディスプレイの解像度を高くすることができる。また、光を通すための開口の面積を大きくすることが可能であり、液晶ディスプレイを高輝度化することが可能となる。さらに、次世代ディスプレイとして注目されている有機ELディスプレイでは、発光のためのエネルギーとして画素毎に例えば10μA以上の電流を流す必要があるが、アモルファスシリコンでは0.1μA程度の電流しか流すことができないため、ポリシリコンを使用することが必須であると考えられている。
【0003】
アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得るためには、アモルファスシリコンを融点(1410℃)に近い温度にまで加熱しなければならない。しかし、アモルファスシリコンが塗布されるガラス基板の融点はアモルファスシリコンの融点よりも低いため、アモルファスシリコンを融点に近い温度に加熱した場合、アモルファスシリコンだけでなく基板までもが溶融してしまう。そこで、現在では、アモルファスシリコンを加熱するために、アモルファスシリコンにエキシマレーザ光を照射する方法が採られている(特許文献1を参照)。アモルファスシリコンは300nmから480nmに吸収波長帯がある一方、基板の材料として用いられるガラスは300nmよりも長い波長帯の光を透過するため、波長が300nmから450nmのエキシマレーザ光を照射することでアモルファスシリコンを選択的に加熱することができる。
【0004】
以下に、エキシマレーザ光を照射することによる従来のアモルファスシリコンの結晶化方法について説明する。
図10は、従来のアモルファスシリコンの結晶化方法を示している。エキシマレーザ発生装置によって発生したエキシマレーザ光は、ホモジナイズ光学系によって数ミクロン×40cmほどの線状の照射領域とされる。この線状のエキシマレーザ光を基板上のアモルファスシリコンに照射しつつ、基板を図中のX方向に一定の速度で移動させる(1回目のスキャン)。これにより、図中の帯状の領域A1を加熱して結晶化させることができる。
【0005】
領域A1を結晶化させた後、基板を図中のY方向(X方向に直交する方向)に、エキシマレーザ光の照射領域の長さLと同じ距離だけ移動させる。そして、再びエキシマレーザ光をアモルファスシリコンに照射しつつ、基板を図中のX方向に一定の速度で移動させる(2回目のスキャン)。これにより、図中の領域A2を加熱して結晶化させることができる。
以降、同様なスキャンを必要な回数だけ繰り返すことによって、アモルファスシリコンの膜全体にエキシマレーザ光を照射することができる。これにより、アモルファスシリコンの膜全体を加熱して結晶化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−16836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアモルファスシリコンの結晶化方法には、以下のような問題があった。
(1)エキシマレーザ光の照射領域の長さLに限界があり、1回のスキャンによってアモルファスシリコンの膜にエキシマレーザ光を照射することのできる面積に限界がある。このため、大型の基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜を結晶化させるのに非常に時間がかかる。
(2)隣接する領域A1と領域A2との間に重複した領域A3が生じてしまう。この重複した領域A3では、アモルファスシリコンの膜に対してエキシマレーザ光が2回照射されるために、アモルファスシリコンの結晶化の程度にバラツキが生じてしまう。
(3)エキシマレーザ光の波形のコントロールが難しい。このため、アモルファスシリコンを結晶化させたときにスジムラが発生しやすい。
(4)エキシマレーザ発生装置が高価であり、ランニングコストが高い。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、エキシマレーザを光源として用いることなく、アモルファスシリコンの膜をムラ無くかつ安価に結晶化させることのできる光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光照射装置は、複数の光源部と、前記複数の光源部から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズムとを備えることを特徴とする。
また、本発明の光照射装置は、複数の光源部と、前記複数の光源部から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための2枚の反射ミラーとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数の光源部から出射された光を被照射物に向けて線状に照射することができる。これにより、アモルファスシリコンの膜に線状に光を照射することが可能であり、エキシマレーザを光源として用いることなくアモルファスシリコンの膜を加熱して結晶化させることができる。
【0011】
また、本発明によれば、線状に照射する光の照射領域の長さに制限がないために、大型の基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜全体に1回のスキャンによって光を照射することができる。このため、従来の方法のように複数回のスキャンを繰り返すことが不要であり、光を照射する領域に重複が生じることがなく、アモルファスシリコンの膜全体をムラ無く結晶化させることができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、高価なエキシマレーザ発生装置を用いる必要がないために、アモルファスシリコンの膜を安価に結晶化させることができる。
【0013】
本発明の光照射装置は、さらに以下の構成を有していることが好ましい。
(1)前記複数の光源部は、それぞれ、発光部及び前記発光部から発せられる光を反射する楕円鏡によって構成されており、
前記楕円鏡の第1焦点もしくはその近傍に前記発光部が配置されており、前記楕円鏡の第2焦点もしくはその近傍に前記プリズムの光の入射面が配置されている。
(2)前記複数の光源部は、前記入射面の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
(3)前記複数の光源部は、それぞれ、発光部及び前記発光部から発せられる光を反射する楕円鏡によって構成されており、
前記楕円鏡の第1焦点もしくはその近傍に前記発光部が配置されており、前記楕円鏡の第2焦点もしくはその近傍に前記2枚の反射ミラーの間に光を入射させるための光の入射口が配置されている。
(4)前記複数の光源部は、前記入射口の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
(5)前記被照射物がアモルファスシリコンである。
(6)前記発光部が超高圧水銀ランプである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エキシマレーザを光源として用いることなく、アモルファスシリコンの膜をムラ無くかつ安価に結晶化させることのできる光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る光照射装置の正面図である。
【図2】第1実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図3】図3(a)は、プリズムの出射面から出射される光の照度分布を1個の光源部毎に上下方向に分離して示したものである。図3(b)は、実際にプリズムの出射面から出射される光の照度分布を示したものである。
【図4】第2実施形態に係る光照射装置の正面図である。
【図5】第2実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図6】第3実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図7】第4実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図8】第5実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図9】第6実施形態に係る光照射装置の側面図である。
【図10】従来のアモルファスシリコンの結晶化方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る光照射装置100の正面図である。図2は、光照射装置100の側面図である。図1、図2に示すように、光照射装置100は、発光部10と発光部10から発せられた光を反射する楕円鏡12とからなる複数の光源部14と、複数の光源部14から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズム20とを備えている。
【0017】
発光部10は、例えば波長が300nm〜480nmの紫外光を発することのできる超高圧水銀ランプによって構成されている。発光部10を構成する超高圧水銀ランプの内部には、陰極及び陽極からなる2つの電極が設けられている。また、この超高圧水銀ランプの内部には、所定の水銀蒸気圧、例えば30気圧以上の水銀が封入されている。
【0018】
楕円鏡12は、その断面が略楕円形状をなすガラスの成形体によって構成されている。この楕円鏡12の内面には、不要な熱線等の波長の光を透過して除去し、必要な紫外光を前方に向かって反射することのできる反射コーティング膜が形成されている。
【0019】
発光部10は、楕円鏡12の第1焦点もしくはその近傍に配置されている。具体的には、発光部10を構成する超高圧水銀ランプの陰極と陽極との中点が、楕円鏡12の第1焦点もしくはその近傍に位置するように発光部10が配置されている。したがって、発光部10から発せられた光は、楕円鏡12の内面によって反射された後、楕円鏡12の第2焦点に向かって集光するようになっている。
【0020】
また、楕円鏡12の第2焦点もしくはその近傍には、後述する板状のプリズム20の光の入射面22が配置されている。
【0021】
なお、本明細書において「近傍」とは、楕円鏡12の第1焦点または第2焦点を中心として例えば楕円鏡12の焦点距離の1/10以内の範囲を意味する。
【0022】
複数の光源部14の前方側には、それぞれ、一枚の透明なガラス板16が設置されている。このガラス板16は、発光部10の点灯時の温度を安定させるために設置されるものである。
【0023】
ガラス板16のさらに前方側には、板状のプリズム20が設置されている。プリズム20は、厚みTが7mm、幅が2000mm、高さHが180mmの薄い板状の形状を有しており、合成石英によって形成されている。
【0024】
プリズム20の長辺側の端面は、複数の光源部14から出射された光が入射する入射面22となっている。この入射面22は、7mm×2000mmの寸法を有しており、細長い線状の形状を有している。
【0025】
プリズム20の入射面22とは反対側の端面は、プリズム20の内部に入射した光が外部に出射する出射面24となっている。この出射面24は、7mm×2000mmの寸法を有しており、細長い線状の形状を有している。なお、ここでいう「線状の形状」とは、プリズム20の出射面24の短辺の長さが、長辺の長さの1/2以下であることを意味しており、好ましくは1/10以下であり、より好ましくは1/100以下であり、特に好ましくは1/200以下である。
【0026】
本実施形態では、光照射装置100は、33個の光源部14を備えている(図1に示されているのは、そのうち4個の光源部14である)。33個の光源部14は、プリズム20の入射面22の長手方向(2000mm幅の方向)に沿って、60mm毎の間隔で設置されている。また、33個の光源部14は、光の出射方向が互いに平行となるように設置されている。
【0027】
33個の光源部14から出射された光は、プリズム20の入射面22に入射する。入射面22に入射した光は、プリズム20の内部においてその厚み方向に複数回反射を繰り返した後、出射面24から外部に出射する。
【0028】
プリズム20の出射面24から10mm下方に離れた位置には、アモルファスシリコンの膜Wがその表面に形成されたガラス製の基板が設置されている。アモルファスシリコンの膜Wが、本発明の「被照射物」に対応している。
【0029】
次に、上記のように構成された光照射装置100の作用効果について図面を参照しながら説明する。
図3(a)は、プリズム20の出射面24から出射される光の照度分布を1個の光源部14毎に上下方向に分離して示したものである。図3(b)は、実際にプリズム20の出射面24から出射される光の照度分布を示したものである。
【0030】
図3(a)に示すように、プリズム20の出射面24から出射される光は、プリズム20の厚み方向では照度が均一化されている。なぜなら、プリズム20の内部に入射した光は、プリズム20の内部において厚み方向に複数回反射を繰り返すことで照度が均一化されるからである。しかし、プリズム20の長手方向(2000mm幅の方向)では、光源部14の中心部の照度が最も高く、中心部から離れるにつれて照度が徐々に低くなっている。このため、このような光をアモルファスシリコンの膜Wに照射した場合には、中心部の結晶化のみが早く進行するために、アモルファスシリコンの膜Wを均一に結晶化させることができない。
【0031】
そこで、本実施形態の光照射装置100においては、複数個の光源部14を入射面22の長手方向に沿って等間隔に配置している。これにより、図3(b)に示すように、隣り合う光源部14から出射される光が、プリズム20の長手方向(2000mm幅の方向)において互いに重なり合うため、プリズム20の長手方向においても光の照度が均一化される。これにより、複数の光源部14から出射される光をアモルファスシリコンの膜Wに均一に照射することが可能となっている。
【0032】
本実施形態の光照射装置100によれば、複数の光源部14から出射された光をアモルファスシリコンの膜Wに線状に照射することができる。これにより、エキシマレーザを光源として用いることなくアモルファスシリコンの膜Wを加熱して結晶化させることができる。
【0033】
また、本実施形態の光照射装置100によれば、使用する光源部14の個数を増やすことによって、線状に照射される光の照射領域の長さを長くすることができる。また、使用するプリズム20の長手方向の寸法を長くすることによって、線状に照射される光の照射領域の長さを長くすることができる。したがって、光の照射領域の長さに制限がないために、大型の基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜全体に1回のスキャンによって光を照射することができる。このため、従来の方法のように複数回のスキャンを繰り返すことが不要であり、光を照射する領域に重複が生じることがなく、アモルファスシリコンの膜全体をムラ無く結晶化させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態の光照射装置100によれば、高価なエキシマレーザ発生装置を用いる必要がないために、アモルファスシリコンの膜を安価に結晶化させてポリシリコン(多結晶シリコン)を得ることができる。
【0035】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。第2実施形態の光照射装置200は、プリズム20が2枚の反射ミラー30a、30bに置き換わっている以外は第1実施形態の光照射装置100と同様な構成を有している。したがって、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図4は、第2実施形態に係る光照射装置200の正面図である。図5は、光照射装置200の側面図である。図4、図5に示すように、光照射装置200は、発光部10と発光部10から発せられた光を反射する楕円鏡12とからなる複数の光源部14と、複数の光源部14から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための2枚の反射ミラー30a、30bとを備えている。
【0037】
2枚の反射ミラー30a、30bは、ぞれぞれ、幅が2000mm、高さHが180mmの互いに同一形状を有する板状の全反射ミラーによって構成されている。2枚の反射ミラー30a、30bは、その反射面が互いに向かい合うようにして平行に配置されている。
【0038】
2枚の反射ミラー30a、30bの長辺側の端部は、複数の光源部14から出射された光が2枚の反射ミラー30a、30bの間に入射するための入射口32となっている。この入射口32は、7mm×2000mmの寸法を有しており、細長い線状の形状を有している。
【0039】
2枚の反射ミラー30a、30bの入射口32とは反対側の端部は、2枚の反射ミラー30a、30bの間に入射した光が外部に出射する出射口34となっている。この出射口34は、7mm×2000mmの寸法を有しており、細長い線状の形状を有している。
【0040】
本実施形態では、光照射装置200は、33個の光源部14を備えている(図4に示されているのは、そのうち4個の光源部14である)。33個の光源部14は、2枚の反射ミラー30a、30bの入射口32の長手方向(2000mm幅の方向)に沿って、60mm毎の間隔で設置されている。また、33個の光源部14は、光の出射方向が互いに平行となるように設置されている。
【0041】
33個の光源部14から出射された光は、2枚の反射ミラー30a、30bの入射口32に入射する。入射口32に入射した光は、2枚の反射ミラー30a、30bの間においてその厚み方向に複数回反射を繰り返した後、出射口34から外部に出射する。
【0042】
2枚の反射ミラー30a、30bの出射口34から下方に10mm離れた位置には、アモルファスシリコンの膜Wがその表面に形成されたガラス製の基板が設置されている。アモルファスシリコンの膜Wが、本発明の「被照射物」に対応している。
【0043】
次に、上記のように構成された光照射装置200の作用効果について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の光照射装置200においては、複数個の光源部14を入射口32の長手方向に沿って等間隔に配置している。これにより、図3(b)に示すように、隣り合う光源部14から出射される光が、2枚の反射ミラー30a、30bの長手方向(2000mm幅の方向)において互いに重なり合うため、2枚の反射ミラー30a、30bの長手方向においても光の照度が均一化される。これにより、複数の光源部14から出射される光をアモルファスシリコンの膜Wに均一に照射することが可能となっている。
【0044】
本実施形態の光照射装置200によれば、複数の光源部14から出射された光をアモルファスシリコンの膜Wに線状に照射することができる。これにより、エキシマレーザを光源として用いることなくアモルファスシリコンの膜Wを加熱して結晶化させることができる。
【0045】
また、本実施形態の光照射装置200によれば、使用する光源部14の個数を増やすことによって、線状に照射する光の照射領域の長さを長くすることができる。また、使用する2枚の反射ミラー30a、30bの長手方向の寸法を長くすることによって、線状に照射する光の照射領域の長さを長くすることができる。したがって、光の照射領域の長さに制限がないために、大型の基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜全体に1回のスキャンによって光を照射することができる。このため、従来の方法のように複数回のスキャンを繰り返すことが不要であり、光を照射する領域に重複が生じることがなく、アモルファスシリコンの膜全体をムラ無く結晶化させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の光照射装置200によれば、高価なエキシマレーザ発生装置を用いる必要がないために、アモルファスシリコンの膜を安価に結晶化させてポリシリコン(多結晶シリコン)を得ることができる。
【0047】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。第3実施形態の光照射装置300は、33個の光源部14からなる列が1列から3列に増加している以外は、第1実施形態の光照射装置100と同様な構成を有している。したがって、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図6は、第3実施形態に係る光照射装置300の側面図である。図6に示すように、光照射装置300は、発光部10と発光部10から発せられた光を反射する楕円鏡12とからなる複数の光源部14と、複数の光源部14から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズム20とを備えている。
【0049】
本実施形態では、光照射装置300は、33個の光源部14からなる列を3列備えている。以下では、この3つの列のことを、第1〜第3の光源部ユニット40a〜40cと呼ぶ。第1〜第3の光源部ユニット40a〜40cは、その列方向(図6の紙面を垂直に貫く方向)に互いに1/3ピッチずつ(つまり20mmずつ)ずらして配置されている。
【0050】
第1の光源部ユニット40aは、上記した第1実施形態における33個の光源部14からなる列と同一の構成を有している。したがって、第1の光源部ユニット40aから出射された光は、プリズム20の入射面22に直接的に入射する。
【0051】
第2の光源部ユニット40bは、第1の光源部ユニット40aを90度左方向に回転させた位置に配置されている。第2の光源部ユニット40bの前方側には、第2の光源部ユニット40bから出射される光の進行方向(主光線の進行方向)を下方に90度回転させることのできる反射ミラー40b1が設置されている。したがって、第2の光源部ユニット40bから出射された光は、反射ミラー40b1を介してプリズム20の入射面22に入射する。
【0052】
第3の光源部ユニット40cは、第1の光源部ユニット40aを90度右方向に回転させた位置に配置されている。第3の光源部ユニット40cの前方側には、第3の光源部ユニット40cから出射される光の進行方向(主光線の進行方向)を下方に90度回転させることのできる反射ミラー40c1が設置されている。したがって、第3の光源部ユニット40cから出射された光は、反射ミラー40c1を介してプリズム20の入射面22に入射する。
【0053】
第1〜第3の光源部ユニット40a〜40cから出射される光束は前方側に向かうにつれて集光するため、光源部14から離れるにつれて徐々に細くなる。このため、反射ミラー40b1は、第1の光源部ユニット40aまたは第3の光源部ユニット40cから出射される光と干渉することが回避されている。また、反射ミラー40c1は、第1の光源部ユニット40aまたは第2の光源部ユニット40bから出射される光と干渉することが回避されている。
【0054】
本実施形態の光照射装置300によれば、第1実施形態の光照射装置100と比較して3倍の個数(99個)の光源部14を使用することができる。このため、照射する光の照度を3倍に高めることが可能であり、基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜Wをより高速に結晶化させることができる。
【0055】
また、本実施形態の光照射装置300によれば、より多くの個数の光源部14をプリズム20の長手方向(2000mm幅の方向)に沿って設置することが可能であり、プリズム20の長手方向における光の照度をより均一化することができる。これにより、アモルファスシリコンの膜Wに線状の光をより均一に照射することができる。
【0056】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。第4実施形態の光照射装置400は、33個の光源部14からなる列が1列から3列に増加している以外は、第1実施形態の光照射装置100と同様な構成を有している。したがって、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図7は、第4実施形態に係る光照射装置400の側面図である。図7に示すように、光照射装置400は、発光部10と発光部10から発せられた光を反射する楕円鏡12とからなる複数の光源部14と、複数の光源部14から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズム20とを備えている。
【0058】
本実施形態では、光照射装置400は、33個の光源部14からなる列を3列備えている。以下では、この3つの列のことを、第1〜第3の光源部ユニット50a〜50cと呼ぶ。第1〜第3の光源部ユニット50a〜50cは、その列方向(図7の紙面を垂直に貫く方向)に互いに1/3ピッチずつ(つまり20mmずつ)ずらして配置されている。
【0059】
第1の光源部ユニット50aは、上記した第1実施形態における33個の光源部14からなる列と同一の構成を有している。したがって、第1の光源部ユニット50aから出射された光は、プリズム20の入射面22に直接的に入射する。
【0060】
第2の光源部ユニット50bは、第1の光源部ユニット50aを70度左方向に回転させた位置に配置されている。第2の光源部ユニット50bの前方側には、第2の光源部ユニット50bから出射される光の進行方向(主光線の進行方向)を下方に70度回転させることのできる反射ミラー50b1が設置されている。したがって、第2の光源部ユニット50bから出射された光は、反射ミラー50b1を介してプリズム20の入射面22に入射する。
【0061】
第3の光源部ユニット50cは、第1の光源部ユニット50aを130度左方向に回転させた位置に配置されている。第3の光源部ユニット50cの前方側には、第3の光源部ユニット50cから出射される光の進行方向(主光線の進行方向)を下方に130度回転させることのできる反射ミラー50c1が設置されている。したがって、第3の光源部ユニット50cから出射された光は、反射ミラー50c1を介してプリズム20の入射面22に入射する。
【0062】
第1〜第3の光源部ユニット50a〜50cから出射される光束は前方側に向かうにつれて集光するため、光源部14から離れるにつれて徐々に細くなる。このため、反射ミラー50b1は、第1の光源部ユニット50aまたは第3の光源部ユニット50cから出射される光と干渉することが回避されている。また、反射ミラー50c1は、第1の光源部ユニット50aまたは第2の光源部ユニット50bから出射される光と干渉することが回避されている。
【0063】
本実施形態の光照射装置400によれば、第1実施形態の光照射装置100と比較して3倍の個数(99個)の光源部14を使用することができる。このため、照射する光の照度を3倍に高めることが可能であり、基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜Wをより高速に結晶化させることができる。
【0064】
また、本実施形態の光照射装置400によれば、より多くの個数の光源部14をプリズム20の長手方向(2000mm幅の方向)に沿って設置することが可能であり、プリズム20の長手方向における光の照度をより均一化することができる。これにより、アモルファスシリコンの膜Wに線状の光をより均一に照射することができる。
【0065】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。第5実施形態の光照射装置500は、第4実施形態の光照射装置400を2つ備えて構成されている。
【0066】
図8は、第5実施形態に係る光照射装置500の側面図である。図8に示すように、光照射装置500は、2つの光照射装置400a、400bによって構成されている。この2つの光照射装置400a、400bは、中心線Zを境に左右線対称となるように配置されている。
【0067】
左側に配置された光照射装置400aは、そのプリズム20の表面が中心線Zに対して左方向に8度傾斜するようにして設置されている。
右側に配置された光照射装置400bは、そのプリズム20の表面が中心線Zに対して右方向に8度傾斜するようにして設置されている。
【0068】
2つの光照射装置400a、400bの各プリズム20の出射面24は、互いに干渉しないように配置されている。
また、2つの光照射装置400a、400bの各プリズム20は、その出射面24から出射される光の照射領域が互いに重なり合うように配置されている。
【0069】
本実施形態の光照射装置500によれば、第1実施形態の光照射装置100と比較して6倍の個数(198個)の光源部14を使用することができる。このため、照射する光の照度を6倍に高めることが可能であり、基板上に形成されたアモルファスシリコンの膜をより高速に結晶化させることができる。
【0070】
また、本実施形態の光照射装置500によれば、より多くの個数の光源部14をプリズム20の長手方向(2000mm幅の方向)に沿って設置することが可能であり、プリズム20の長手方向における光の照度をより均一化することができる。これにより、アモルファスシリコンの膜に線状の光をより均一に照射することができる。
【0071】
さらに、本実施形態の光照射装置500によれば、アモルファスシリコンの膜Wに対して斜め上方から光を照射することができる。すなわち、左側に配置された光照射装置400aからは、左斜め上方から光を照射することが可能であり、右側に配置された光照射装置400bからは、右斜め上方から光を照射することが可能である。このようにアモルファスシリコンの膜Wに対する光の照射角度を様々に変化させることによって、図8中の左右方向におけるアモルファスシリコンの膜Wの結晶化の程度を変化させることができる。これにより、例えば、得ようとするポリシリコンの結晶化条件等に合わせて、アモルファスシリコンの膜Wの結晶化の程度を自在にコントロールすることが可能である。
【0072】
<第6実施形態>
図9は、本発明の第6実施形態に係る光照射装置600の側面図である。
図9(a)に示すように、プリズム20の出射面24の短辺の長さを、入射面22の短辺の長さの1/2としてもよい。この場合、出射面24から出射される光の照射密度が約2倍になる。しかし、出射面24から出射される光の出射角度は図中の左右方向において約2倍に広がるために、被照射面の設定位置が制約を受ける。
図9(b)に示すように、プリズム20の出射面24の短辺の長さを、入射面22の短辺の長さの2倍としてもよい。この場合、出射面24から出射される光の照射密度が1/2となる。しかし、出射面24から出射される光の出射角度は図中の左右方向において約1/2に狭まるために、被照射面の設定位置の制約がゆるくなる。
このように、板状のプリズム20の入射面22及び出射面24のそれぞれの大きさを変化させることによって、出射面24から出射される光の照射密度や出射角度を調整することが可能である。これにより、例えば、得ようとするポリシリコンの結晶化条件等に合わせて、アモルファスシリコンの膜Wの結晶化の程度を自在にコントロールすることが可能である。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、発光部10として超高圧水銀ランプを用いた例を示したが、被照射物であるアモルファスシリコンを結晶化させることのできる波長の光を照射できるのであれば、これ以外のランプを用いることもできる。
(2)上記実施形態では、アモルファスシリコンの膜Wを結晶化させてポリシリコンを得る例を示したが、アモルファスシリコンの膜Wを結晶化させて単結晶シリコンを得ることもできる。例えば、アモルファスシリコンの膜Wを結晶化させて太陽電池パネル用の単結晶シリコンを得ることもできる。
(3)上記実施形態では、プリズム20もしくは2枚の反射ミラー30a、30bの長手方向に沿って33個の光源部14を設置した例を示したが、これ以外の個数の光源部14を設置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 発光部
12 楕円鏡
14 光源部
16 ガラス板
20 プリズム
22 入射面
24 出射面
30a、30b 反射ミラー
32 入射口
34 出射口
40a 第1の光源部ユニット
40b 第2の光源部ユニット
40c 第3の光源部ユニット
50a 第1の光源部ユニット
50b 第2の光源部ユニット
50c 第3の光源部ユニット
100、200、300、400、500、600 光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源部と、前記複数の光源部から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための板状のプリズムとを備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記複数の光源部は、それぞれ、発光部及び前記発光部から発せられる光を反射する楕円鏡によって構成されており、
前記楕円鏡の第1焦点もしくはその近傍に前記発光部が配置されており、前記楕円鏡の第2焦点もしくはその近傍に前記プリズムの光の入射面が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記複数の光源部は、前記入射面の長手方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
複数の光源部と、前記複数の光源部から出射された光を集光して被照射物に向けて線状に照射するための2枚の反射ミラーとを備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項5】
前記複数の光源部は、それぞれ、発光部及び前記発光部から発せられる光を反射する楕円鏡によって構成されており、
前記楕円鏡の第1焦点もしくはその近傍に前記発光部が配置されており、前記楕円鏡の第2焦点もしくはその近傍に前記2枚の反射ミラーの間に光を入射させるための光の入射口が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記複数の光源部は、前記入射口の長手方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記被照射物がアモルファスシリコンであることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記発光部が超高圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の光照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−156260(P2012−156260A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13346(P2011−13346)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【特許番号】特許第4834790号(P4834790)
【特許公報発行日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(510326555)株式会社エタンデュ目白 (2)
【Fターム(参考)】