説明

光画像計測装置、それを制御するプログラム及び光画像計測方法

【課題】被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合であっても、明瞭なOCT画像を容易に取得できる。
【解決手段】眼底観察装置1は、干渉光LCの検出結果を基に干渉光の強度分布を求める干渉強度分布演算部213と、この強度分布に基づいて被検眼Eに対する信号光LSの照射位置を決定する照射位置決定部214とを有する。照射位置決定部214は、干渉光の強度が小さい領域を避けるように、つまり被検眼E内の混濁部位を避けるように、信号光LSの照射位置を決定する。主制御部211は、決定された照射位置に向けて新たな信号光LSを照射する。演算制御装置200は、被検眼Eを経由した新たな信号光LSと、参照ミラー174を経由した新たな参照光LRとに基づく新たな干渉光LCの検出結果に基づいて眼底EfのOCT画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検眼に光ビームで照射し、その反射光を用いて被検眼の画像を形成する光画像計測装置、それを制御するプログラム及び光画像計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光源等からの光ビームを用いて被測定物体の表面形態や内部形態を表す画像を形成する光画像計測技術が注目を集めている。この光画像計測技術は、X線CT装置のような人体に対する侵襲性を持たないことから、特に医療分野における応用の展開が期待されている。
【0003】
特許文献1には、測定腕が回転式転向鏡(ガルバノミラー)により物体を走査し、参照腕に参照ミラーが設置されており、さらにその出口では、計測腕及び参照腕からの光束の干渉によって現れる光の強度が分光器で分析もされるという干渉器が利用されていて、参照腕には参照光光束位相を不連続な値で段階的に変える装置が設けられた構成の光画像計測装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の光画像計測装置は、いわゆる「フーリエドメインOCT(Fourier Domain Optical Coherence Tomography)」の手法を用いるものである。すなわち、被測定物体に対して低コヒーレンス光のビームを照射し、その反射光のスペクトル強度分布を取得し、それをフーリエ変換することにより、被測定物体の深度方向(z方向)の形態を画像化するものである。
【0005】
更に、特許文献1に記載の光画像計測装置は、光ビーム(信号光)を走査するガルバノミラーを備え、それにより被測定物体の所望の測定対象領域の画像を形成できるようになっている。なお、この光画像計測装置においては、z方向に直交する1方向(x方向)にのみ光ビームを走査するようになっているので、形成される画像は、光ビームの走査方向(x方向)に沿った深度方向(z方向)の2次元断層画像となる。
【0006】
また、特許文献2には、信号光を水平方向及び垂直方向に走査することにより水平方向の2次元断層画像を複数形成し、これら複数の断層画像に基づいて測定範囲の3次元の断層情報を取得して画像化する技術が開示されている。この3次元画像化としては、たとえば、複数の断層画像を垂直方向に並べて表示させる方法や(スタックデータなどと呼ばれる)、複数の断層画像にレンダリング処理を施して3次元画像を形成する方法などが考えられる。
【0007】
また、特許文献3には、このような光画像計測装置を眼科分野に適用した構成が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−325849号公報
【特許文献2】特開2002−139421号公報
【特許文献3】特開2003−543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光画像計測装置を眼科分野に適用した場合、次のような問題が生じることがある。まず、従来の光画像計測装置では、被検眼が核白内障や嚢下白内障を患っているときなど、被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合に、この部位を通過させて眼底に信号光を照射させていた。そのため、信号光の眼底反射光の強度が低下して十分な強度の干渉光を検出できず、ひいては、明瞭なOCT画像を取得することができなかった。また、この部位により信号光が散乱されてOCT画像の確度が低下するおそれもある。
【0010】
なお、このような部位を事前に特定し、それを避けて信号光が照射されるように被検眼と装置との位置合わせ(アライメント)をしておくことも考えられる。しかし、このような準備作業は手間が掛かるため、検者に対する負担が増大する。更に、検査が長引くことから、患者への負担も増大することになる。特に、経過観察のように同一部位を複数回に亘って計測する場合には、各計測毎にアライメントを実施しなければならず面倒であった。
【0011】
また、従来の光画像計測装置では、どのような画像が実際に取得されるか事前に把握することができなかった。そのため、アライメントが不十分な状態で計測が実施され、観察対象(たとえば視神経乳頭、黄斑部、病変部等)からずれた部位の画像が取得されてしまうことがあった。そうすると、再計測を行うなど、無駄な手間や時間が掛かることになる。
【0012】
この発明は、このような問題を解決するためになされたもので、被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合であっても、明瞭なOCT画像を容易に取得できる技術を提供することを目的とする。
【0013】
また、この発明は、アライメントが不十分な状態で計測が実施される事態を防止できる技術を提供することを更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と、前記生成された干渉光を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求める演算手段と、前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する前記信号光の照射位置を決定する決定手段と、前記決定された照射位置に向けて照射された新たな信号光と前記参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成する画像形成手段と、を備えることを特徴とする光画像計測装置である。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光画像計測装置であって、前記決定手段により決定された照射位置に前記新たな信号光を照射させるように前記被検眼と装置との相対位置を変更する変更手段を更に備える、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光画像計測装置であって、前記変更手段は、前記決定手段により決定された照射位置に前記新たな信号光が照射されるように前記被検眼を固視させるための固視標を呈示する呈示手段を含む、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光画像計測装置であって、前記呈示手段は、前記固視標を表示する固視標表示手段と、前記表示された固視標を前記被検眼の眼底に投影させる投影光学系とを含む、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光画像計測装置であって、前記決定手段は、前記演算手段により求められた干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が小さい領域を特定し、前記特定された領域以外の領域の少なくとも一部を前記照射位置とする、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光画像計測装置であって、前記決定手段は、前記演算手段により求められた干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が大きい領域を特定し、前記特定された領域の少なくとも一部を前記照射位置とする、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載の光画像計測装置であって、前記変更手段は、過去に形成された画像について前記決定手段により決定された照射位置に信号光を照射させるように前記相対位置を変更する、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光画像形成装置であって、前記画像形成手段により形成された画像を表示する表示手段と、操作手段と、を更に備え、前記変更手段は、前記操作手段により前記表示された画像が指定されたときに、当該指定された画像が形成されたときに決定された照射位置に信号光を照射させるように前記相対位置を変更する、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の光画像計測装置であって、前記変更手段は、前記決定手段により決定された照射位置の情報を記憶する記憶手段を含み、前記記憶された情報に基づいて前記相対位置を変更する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の光画像計測装置であって、前記決定手段により決定された照射位置と所定の基準位置との距離を求め、当該距離に基づく報知情報を出力する報知手段を更に備える、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の光画像計測装置であって、前記報知手段は、前記画像形成手段により形成された画像と前記求められた距離とを前記報知情報として表示する表示手段を含む、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の光画像計測装置であって、前記報知手段は、前記求められた距離が所定距離以上であるときに、当該所定距離以上であることを示す情報を前記報知情報として出力する、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項13に記載の発明は、低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と、前記生成された干渉光を検出する検出手段と、コンピュータと、を有する光画像計測装置を制御するプログラムであって、前記コンピュータを、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求める演算手段として機能させ、前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する信号光の照射位置を決定する決定手段として機能させ、前記決定された照射位置に向けて照射された新たな信号光と前記参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成する画像形成手段として機能させる、ことを特徴とする。
【0027】
また、請求項14に記載の発明は、低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成するステップと、前記生成された干渉光を検出するステップと、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求めるステップと、前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する前記信号光の照射位置を決定するステップと、新たな低コヒーレンス光に基づく新たな信号光を前記決定された照射位置に向けて照射するステップと、前記被検眼を経由した新たな信号光と、前記新たな低コヒーレンス光に基づく新たな参照光とを重畳させて新たな干渉光を生成するステップと、該生成された新たな干渉光を検出するステップと、前記新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成するステップと、を含むことを特徴とする光画像計測方法である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、検出手段による干渉光の検出結果に基づいて干渉光の強度分布を求め、この強度分布に基づいて被検眼に対する信号光の照射位置を決定でき、決定された信号光の照射位置に向けて照射された新たな信号光と参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて被検眼の画像を形成することができる。したがって、被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合であっても、当該部位を避けるように信号光の照射位置を決定することができるので、明瞭なOCT画像を容易に取得することが可能である。
【0029】
更に、この発明によれば、信号光の照射位置を決定するための計測で取得される干渉光に基づいて画像を形成することにより、どのような画像が実際に取得されるかを事前に把握することができる。したがって、アライメントが不十分な状態で計測が実施される事態を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明に係る光画像計測装置、それを制御するプログラム及び光画像計測方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
この発明は、眼科分野において使用されるものである。この発明は、実際に画像を取得する前に、被検眼に合った光ビーム(信号光)の照射位置を決定することで、明瞭なOCT画像を容易に取得することを可能にするものである。
【0032】
[装置構成]
まず、この発明に係る光画像計測装置の実施形態の構成について図1〜図6を参照しながら説明する。ここで、図1は、この発明に係る光画像計測装置としての機能を有する眼底観察装置1の全体構成の一例を表している。図2は、眼底カメラユニット1A内の走査ユニット141の構成の一例を表している。図3は、OCTユニット150の構成の一例を表している。図4は、演算制御装置200のハードウェア構成の一例を表している。図5及び図6は、眼底観察装置1の制御系の構成の一例を表している。
【0033】
[全体構成]
眼底観察装置1は、図1に示すように、眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される。眼底カメラユニット1Aは、眼底表面の2次元画像を撮影する従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有している。OCTユニット150は、光画像計測装置として機能する光学系を格納している。演算制御装置200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0034】
OCTユニット150には、接続線152の一端が取り付けられている。接続線152の他端には、接続線152を眼底カメラユニット1Aに接続するコネクタ部151が取り付けられている。接続線152の内部には光ファイバが導通されている。このように、OCTユニット150と眼底カメラユニット1Aは、接続線152を介して光学的に接続されている。
【0035】
〔眼底カメラユニットの構成〕
眼底カメラユニット1Aは、光学的に取得されるデータ(撮像装置10、12により検出されるデータ)に基づいて被検眼の眼底の表面の2次元画像を形成するために用いられる。ここで、眼底の表面の2次元画像とは、眼底の表面を撮影したカラー画像やモノクロ画像、更には蛍光画像(フルオレセイン蛍光画像、インドシアニングリーン蛍光画像等)などを表す。眼底カメラユニット1Aは、従来の眼底カメラと同様に、眼底Efを照明する照明光学系100と、この照明光の眼底反射光を撮像装置10に導く撮影光学系120とを備えている。
【0036】
なお、詳細は後述するが、撮影光学系120における撮像装置10は、近赤外領域の波長を有する照明光を検出する。また、撮影光学系120には、可視領域の波長を有する照明光を検出する撮像装置12が別途設けられている。更に、撮影光学系120は、OCTユニット150からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット150に導くように作用する。
【0037】
照明光学系100は、観察光源101、コンデンサレンズ102、撮影光源103、コンデンサレンズ104、エキサイタフィルタ105及び106、リング透光板107、ミラー108、LCD(Liquid Crystal Display)109、照明絞り110、リレーレンズ111、孔開きミラー112、対物レンズ113を含んで構成される。
【0038】
観察光源101は、たとえば約400nm〜700nmの範囲に含まれる可視領域の波長の照明光を出力する。また、撮影光源103は、たとえば約700nm〜800nmの範囲に含まれる近赤外領域の波長の照明光を出力する。撮影光源103から出力される近赤外光は、OCTユニット150で使用する光の波長よりも短く設定されている(後述)。
【0039】
また、撮影光学系120は、対物レンズ113、孔開きミラー112(の孔部112a)、撮影絞り121、バリアフィルタ122及び123、変倍レンズ124、リレーレンズ125、撮影レンズ126、ダイクロイックミラー134、フィールドレンズ(視野レンズ)128、ハーフミラー135、リレーレンズ131、ダイクロイックミラー136、撮影レンズ133、撮像装置10(撮像素子10a)、反射ミラー137、撮影レンズ138、撮影装置12(撮像素子12a)、レンズ139及びLCD140を含んで構成される。
【0040】
更に、撮影光学系120には、ダイクロイックミラー134、ハーフミラー135、ダイクロイックミラー136、反射ミラー137、撮影レンズ138、レンズ139及びLCD140が設けられている。
【0041】
ダイクロイックミラー134は、照明光学系100からの照明光の眼底反射光(約400nm〜800nmの範囲に含まれる波長を有する)を反射するとともに、OCTユニット150からの信号光LS(たとえば約800nm〜900nmの範囲に含まれる波長を有する;後述)を透過させるように構成されている。
【0042】
また、ダイクロイックミラー136は、照明光学系100からの可視領域の波長を有する照明光(観察光源101から出力される波長約400nm〜700nmの可視光)を透過させるとともに、近赤外領域の波長を有する照明光(撮影光源103から出力される波長約700nm〜800nmの近赤外光)を反射するように構成されている。
【0043】
LCD140は、被検眼Eを固視させるための固視標(内部固視標)を表示する。LCD140からの光は、レンズ139により集光された後に、ハーフミラー135により反射され、フィールドレンズ128を経由してダイクロイックミラー136に反射される。更に、この光は、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、孔開きミラー112(の孔部112a)、対物レンズ113等を経由して、被検眼Eに入射する。それにより、被検眼Eの眼底Efに内部固視標が投影される。
【0044】
内部固視標を眼底Efに投影させるためのLCD140及びこれらの光学素子は、この発明の「呈示手段」の一例である。ここで、LCD140は、固視標を表示する「固視標表示手段」の一例であり、上記の光学素子は、表示された固視標を眼底に投影する「投影光学系」の一例である。また、被検眼Eに固視標を呈示する「呈示手段」は、この発明の「変更手段」の一例である。
【0045】
撮像素子10aは、テレビカメラ等の撮像装置10に内蔵されたCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子であり、特に、近赤外領域の波長の光を検出する。つまり、撮像装置10は、近赤外光を検出する赤外線テレビカメラである。撮像装置10は、近赤外光を検出した結果として映像信号を出力する。
【0046】
タッチパネルモニタ11は、この映像信号に基づいて、眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)を表示する。また、この映像信号は演算制御装置200に送られ、ディスプレイ(後述)に眼底画像が表示される。
【0047】
なお、撮像装置10による眼底撮影時には、たとえば照明光学系100の撮影光源103から出力される近赤外領域の波長を有する照明光が用いられる。
【0048】
一方、撮像素子12aは、テレビカメラ等の撮像装置12に内蔵されたCCDやCMOS等の撮像素子であり、特に、可視領域の波長の光を検出する。つまり、撮像装置12は、可視光を検出するテレビカメラである。撮像装置12は、可視光を検出した結果として映像信号を出力する。
【0049】
タッチパネルモニタ11は、この映像信号に基づいて、眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)を表示する。また、この映像信号は演算制御装置200に送られ、ディスプレイ(後述)に眼底画像が表示される。
【0050】
なお、撮像装置12による眼底撮影時には、たとえば照明光学系100の観察光源101から出力される可視領域の波長を有する照明光が用いられる。
【0051】
眼底カメラユニット1Aには、走査ユニット141とレンズ142とが設けられている。走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される光(信号光LS;後述)の眼底Efに対する照射位置を走査するための構成を具備する。走査ユニット141は、この発明の「走査手段」の一例である。
【0052】
レンズ142は、OCTユニット150から接続線152を通じて導光された信号光LSを平行な光束にして走査ユニット141に入射させる。また、レンズ142は、走査ユニット141を経由してきた信号光LSの眼底反射光を集束させる。
【0053】
図2に、走査ユニット141の構成の一例を示す。走査ユニット141は、ガルバノミラー141A、141Bと、反射ミラー141C、141Dとを含んで構成されている。
【0054】
ガルバノミラー141A、141Bは、それぞれ回動軸141a、141bを中心に回動可能に配設された反射ミラーである。各ガルバノミラー141A、141Bは、後述の駆動機構(図5に示すミラー駆動機構241、242)によって回動軸141a、141bを中心にそれぞれ回動される。それにより、各ガルバノミラー141A、141Bの反射面(信号光LSを反射する面)の向きが変更される。
【0055】
回動軸141a、141bは、互いに直交して配設されている。図2においては、ガルバノミラー141Aの回動軸141aは、紙面に対して平行方向に配設されている。また、ガルバノミラー141Bの回動軸141bは、紙面に対して直交する方向に配設されている。
【0056】
すなわち、ガルバノミラー141Bは、図2中の両側矢印に示す方向に回動可能に構成され、ガルバノミラー141Aは、当該両側矢印に対して直交する方向に回動可能に構成されている。それにより、ガルバノミラー141A、141Bは、信号光LSの反射方向を互いに直交する方向に変更するようにそれぞれ作用する。図1、図2から分かるように、ガルバノミラー141Aを回動させると信号光LSはx方向に走査され、ガルバノミラー141Bを回動させると信号光LSはy方向に走査される。
【0057】
ガルバノミラー141A、141Bにより反射された信号光LSは、反射ミラー141C、141Dにより反射され、ガルバノミラー141Aに入射したときと同じ向きに進行するようになっている。
【0058】
なお、接続線152の内部の光ファイバ152aの端面152bは、レンズ142に対峙して配設される。端面152bから出射された信号光LSは、レンズ142に向かってビーム径を拡大しつつ進行し、レンズ142によって平行な光束とされる。逆に、眼底Efを経由した信号光LSは、レンズ142により端面152bに向けて集束されて光ファイバ152aに入射する。
【0059】
〔OCTユニットの構成〕
次に、OCTユニット150の構成について図3を参照しつつ説明する。OCTユニット150は、光学的に取得されるデータ(後述のCCD184により検出されるデータ)に基づいて眼底の断層画像を形成するための装置である。
【0060】
OCTユニット150は、従来の光画像計測装置とほぼ同様の光学系を備えている。すなわち、OCTユニット150は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成してこれを検出する。この検出結果(検出信号)は演算制御装置200に入力される。演算制御装置200は、この検出信号を解析して被検眼の断層画像を形成する。
【0061】
低コヒーレンス光源160は、低コヒーレンス光L0を出力するスーパールミネセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)や発光ダイオード(LED:Light Emitted Diode)等の広帯域光源により構成される。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長の光を含み、かつ、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する光とされる。
【0062】
低コヒーレンス光L0は、眼底カメラユニット1Aの照明光(波長約400nm〜800nm)よりも長い波長、たとえば約800nm〜900nmの範囲に含まれる波長を有する。
【0063】
低コヒーレンス光源160から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ161を通じて光カプラ162に導かれる。光ファイバ161は、たとえばシングルモードファイバないしはPMファイバ(Polarization maintaining fiber;偏波面保持ファイバ)等によって構成されている。光カプラ162は、低コヒーレンス光L0を参照光LRと信号光LSとに分割する。
【0064】
なお、光カプラ162は、光を分割する手段(スプリッタ;splitter)、及び、光を重畳する手段(カプラ;coupler)の双方として作用するものであるが、ここでは慣用的に「光カプラ」と称することにする。
【0065】
光カプラ162により生成された参照光LRは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ163により導光されてファイバ端面から出射される。更に、参照光LRは、コリメータレンズ171により平行光束とされた後に、ガラスブロック172及び濃度フィルタ173を経由し、参照ミラー174により反射される。参照ミラー174は、この発明の「参照物体」の例である。
【0066】
参照ミラー174により反射された参照光LRは、再び濃度フィルタ173及びガラスブロック172を経由し、コリメータレンズ171によって光ファイバ163のファイバ端面に集光され、光ファイバ163を通じて光カプラ162に導かれる。
【0067】
ここで、ガラスブロック172と濃度フィルタ173は、参照光LRと信号光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として、また参照光LRと信号光LSの分散特性を合わせるための分散補償手段として作用している。
【0068】
また、濃度フィルタ173は、参照光の光量を減少させる減光フィルタとしても作用し、たとえば回転型のND(Neutral Density)フィルタによって構成される。濃度フィルタ173は、モータ等の駆動装置を含んで構成される駆動機構(後述の濃度フィルタ駆動機構244;図5参照)によって回転駆動されることで、参照光LRの光量の減少量を変更させるように作用する。それにより、干渉光LCの生成に寄与する参照光LRの光量を変更させることができる。
【0069】
また、参照ミラー174は、参照光LRの進行方向(図3に示す両側矢印方向)に移動されるようになっている。それにより、被検眼Eの眼軸長やワーキングディスタンス(対物レンズ113と被検眼Eとの距離)などに応じた参照光LRの光路長を確保できる。また、参照ミラー174を移動させることにより、眼底Efの任意の深度位置の画像を取得することが可能である。なお、参照ミラー174は、モータ等の駆動装置を含んで構成される駆動機構(後述の参照ミラー駆動機構243;図5参照)によって移動される。
【0070】
一方、光カプラ162により生成された信号光LSは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ164により接続線152の端部まで導光される。接続線152の内部には光ファイバ152aが導通されている。なお、光ファイバ164と光ファイバ152aは、単一の光ファイバから形成されていてもよいし、各々の端面同士を接合するなどして一体的に形成されていてもよい。いずれにしても、光ファイバ164、152aは、眼底カメラユニット1AとOCTユニット150との間で、信号光LSを伝送可能に構成されていれば十分である。
【0071】
信号光LSは、接続線152内部を導光されて眼底カメラユニット1Aに案内される。更に、信号光LSは、レンズ142、走査ユニット141、ダイクロイックミラー134、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、撮影絞り121、孔開きミラー112の孔部112a、対物レンズ113を経由して被検眼Eに照射される。なお、信号光LSを被検眼Eに照射させるときには、バリアフィルタ122、123は、それぞれ事前に光路から退避される。
【0072】
被検眼Eに入射した信号光LSは、眼底Ef上にて結像し反射される。このとき、信号光LSは、眼底Efの表面で反射されるだけでなく、眼底Efの深部領域にも到達して屈折率境界において散乱される。したがって、眼底Efを経由した信号光LSは、眼底Efの表面形態を反映する情報と、眼底Efの深層組織の屈折率境界における後方散乱の状態を反映する情報とを含んでいる。この光を単に「信号光LSの眼底反射光」と呼ぶことがある。
【0073】
信号光LSの眼底反射光は、眼底カメラユニット1A内の上記経路を逆向きに進行して光ファイバ152aの端面152bに集光され、光ファイバ152を通じてOCTユニット150に入射し、光ファイバ164を通じて光カプラ162に戻ってくる。
【0074】
光カプラ162は、被検眼Eを経由して戻ってきた信号光LSと、参照ミラー174にて反射された参照光LRとを重畳して干渉光LCを生成する。生成された干渉光LCは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ165を通じてスペクトロメータ180に導かれる。
【0075】
なお、この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。
【0076】
なお、この発明の「干渉光生成手段」は、たとえば、光カプラ162と、信号光LSの光路上の光学部材(つまり光カプラ162と被検眼Eとの間に配置された光学部材)と、参照光LRの光路上の光学部材(つまり光カプラ162と参照ミラー174との間に配置された光学部材)とを含んで構成され、特に、光カプラ162、光ファイバ163、164及び参照ミラー174を具備する干渉計を含んで構成される。
【0077】
スペクトロメータ(分光計)180は、コリメータレンズ181、回折格子182、結像レンズ183、CCD184を含んで構成される。回折格子182は、光を透過させる透過型の回折格子であってもよいし、光を反射する反射型の回折格子であってもよい。また、CCD184に代えて、CMOS等の他の光検出素子を用いることも可能である。
【0078】
スペクトロメータ180に入射した干渉光LCは、コリメータレンズ181により平行光束とされ、回折格子182によって分光(スペクトル分解)される。分光された干渉光LCは、結像レンズ183によってCCD184の撮像面上に結像される。CCD184は、分光された干渉光LCの各スペクトルを検出して電気的な信号に変換し、この検出信号を演算制御装置200に出力する。CCD184は、この発明の「検出手段」の一例である。
【0079】
〔演算制御装置の構成〕
次に、演算制御装置200の構成について説明する。演算制御装置200は、OCTユニット150のCCD184から入力される検出信号を解析して、眼底Efの断層画像を形成する。このときの解析手法は、従来のフーリエドメインOCTの手法と同様である。
【0080】
また、演算制御装置200は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12から出力される映像信号に基づいて眼底Efの表面の形態を示す2次元画像を形成する。
【0081】
更に、演算制御装置200は、眼底カメラユニット1A及びOCTユニット150の各部を制御する。
【0082】
眼底カメラユニット1Aの制御として、演算制御装置200は、観察光源101や撮影光源103による照明光の出力制御、エキサイタフィルタ105、106やバリアフィルタ122、123の光路上への挿入/退避動作の制御、LCD140等の表示装置の動作制御、照明絞り110の移動制御(絞り値の制御)、撮影絞り121の絞り値の制御、変倍レンズ124の移動制御(倍率の制御)などを行う。更に、演算制御装置200は、ガルバノミラー141A、141Bの動作制御を行う。
【0083】
また、OCTユニット150の制御として、演算制御装置200は、低コヒーレンス光源160による低コヒーレンス光L0の出力制御、参照ミラー174の移動制御、濃度フィルタ173の回転動作(参照光LRの光量の減少量の変更動作)の制御、CCD184の蓄積時間の制御などを行う。
【0084】
このような演算制御装置200のハードウェア構成について図4を参照しつつ説明する。
【0085】
演算制御装置200は、従来のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。具体的には、演算制御装置200は、マイクロプロセッサ201、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ(HDD)204、キーボード205、マウス206、ディスプレイ207、画像形成ボード208及び通信インターフェイス(I/F)209を含んで構成される。これら各部は、バス200aにより接続されている。
【0086】
マイクロプロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等を含んで構成される。マイクロプロセッサ201は、ハードディスクドライブ204に格納された制御プログラム204aをRAM202上に展開することで、この実施形態に特徴的な動作を実行する。
【0087】
また、マイクロプロセッサ201は、前述した装置各部の制御や、各種の演算処理などを実行する。また、マイクロプロセッサ201は、キーボード205やマウス206からの操作信号を受け、その操作内容に応じて装置各部を制御する。更に、マイクロプロセッサ201は、ディスプレイ207による表示処理の制御や、通信インターフェイス209によるデータや信号の送受信処理の制御などを行う。
【0088】
キーボード205、マウス206及びディスプレイ207は、眼底観察装置1のユーザインターフェイスとして使用される。キーボード205は、たとえば文字や数字等をタイピング入力するためのデバイスとして用いられる。マウス206は、ディスプレイ207の表示画面に対する各種入力操作を行うためのデバイスとして用いられる。
【0089】
また、ディスプレイ207は、たとえばLCDやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の表示デバイスであり、眼底観察装置1により形成された眼底Efの画像などの各種の画像を表示したり、操作画面や設定画面などの各種の画面を表示したりする。
【0090】
なお、眼底観察装置1のユーザインターフェイスは、このような構成に限定されるものではなく、たとえばトラックボール、ジョイスティック、タッチパネル式のLCD、眼科検査用のコントロールパネルなどを含んでいてもよい。ユーザインターフェイスとしては、情報を表示出力する機能と、情報を入力したり装置の操作を行ったりする機能とを具備する任意の構成を採用できる。
【0091】
画像形成ボード208は、眼底Efの画像(画像データ)を形成する処理を行う専用の電子回路である。画像形成ボード208には、眼底画像形成ボード208aとOCT画像形成ボード208bとが設けられている。
【0092】
眼底画像形成ボード208aは、撮像装置10や撮像装置12からの映像信号に基づいて眼底画像の画像データを形成する専用の電子回路である。
【0093】
また、OCT画像形成ボード208bは、OCTユニット150のCCD184からの検出信号に基づいて眼底Efの断層画像の画像データを形成する専用の電子回路である。
【0094】
このような画像形成ボード208を設けることにより、眼底画像や断層画像を形成する処理の処理速度を向上させることができる。
【0095】
通信インターフェイス209は、マイクロプロセッサ201からの制御信号を、眼底カメラユニット1AやOCTユニット150に送信する。また、通信インターフェイス209は、撮像装置10、12からの映像信号や、OCTユニット150のCCD184からの検出信号を受信して、画像形成ボード208に入力する。このとき、通信インターフェイス209は、撮像装置10、12からの映像信号を眼底画像形成ボード208aに入力し、CCD184からの検出信号をOCT画像形成ボード208bに入力するようになっている。
【0096】
また、演算制御装置200がLAN(Local Area Network)やインターネット等の通信回線に接続されている場合には、LANカード等のネットワークアダプタやモデム等の通信機器を通信インターフェイス209に具備させ、この通信回線を介してデータ通信を行えるように構成できる。この場合、制御プログラム204aを格納するサーバを通信回線上に設置するとともに、演算制御装置200を当該サーバのクライアント端末として構成することにより、眼底観察装置1を動作させることができる。
【0097】
〔制御系の構成〕
次に、眼底観察装置1の制御系の構成について図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0098】
(制御部)
眼底観察装置1の制御系は、演算制御装置200の制御部210を中心に構成される。制御部210は、マイクロプロセッサ201、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ204(制御プログラム204a)、通信インターフェイス209等を含んで構成される。
【0099】
制御部210は、制御プログラム204aに基づいて動作するマイクロプロセッサ201により前述の制御を行う。制御部210には、主制御部211、記憶部212、干渉強度分布演算部213及び照射位置決定部214が設けられている。
【0100】
主制御部211は、ミラー駆動機構241、242を制御してガルバノミラー141A、141Bの位置を制御し、それにより、眼底Efに対する信号光LSの照射位置を走査させる。また、主制御部211は、LCD140を制御して内部固視標を表示させる。主制御部211は、この発明の「制御手段」の一例である。
【0101】
また、主制御部211は、低コヒーレンス光源160の点灯/消灯の制御、CCD184の制御、濃度フィルタ173を回転させるための濃度フィルタ駆動機構244の制御、参照光LRの進行方向に参照ミラー174を移動させるための参照ミラー駆動機構243の制御などを実行する。
【0102】
また、主制御部211は、眼底観察装置1により撮影される2種類の画像、すなわち眼底画像Ef′と断層画像とを、ユーザインターフェイス(UI)240の表示部240Aに表示させる。これらの画像は、それぞれ別々に表示部240Aにさせることもできるし、これらを並べて表示させることもできる。
【0103】
記憶部212は、照射位置情報212aを記憶する。照射位置情報212aは、信号光LSの照射位置を表す情報であり、照射位置決定部214により生成される。この生成処理については後述する。
【0104】
また、記憶部212には、画像形成部220により形成された画像データなど、各種のデータが記憶される。なお、記憶部212に対するデータの書き込み処理、及び、記憶部212からのデータの読み出し処理は、主制御部211が実行する。
【0105】
干渉強度分布演算部213は、CCD184による検出結果に基づいて干渉光LCの強度分布を求める。この処理についてより具体的に説明する。この処理は、眼底EfのOCT画像を取得するための準備として実行される。
【0106】
この準備作業では、まず、被検眼Eを計測位置(対物レンズ113に対峙する位置)に配置させ、通常のようにアライメントを行う。次に、主制御部211は、低コヒーレンス光源160及びミラー駆動機構241、242を制御し、被検眼Eに対して信号光LSを走査させる。CCD184は、この走査により順次に生成される干渉光LCを検出する。各検出信号は、演算制御装置200に入力され、主制御部211により干渉強度分布演算部213に入力される。
【0107】
各検出信号には、信号光LSの照射位置に対応する干渉光LCの強度(干渉強度)の情報が含まれている。干渉強度分布演算部213は、信号光LSの照射位置と干渉強度とを対応付けてマップを形成することにより干渉光の強度分布を求める。この干渉光の強度分布は、信号光LSの走査領域(たとえば後述の走査領域R)における干渉強度の分布を表す情報である。
【0108】
なお、信号光LSの照射位置は、たとえば、その位置に信号光LSを照射させるときのガルバノミラー141A、141Bの位置(反射面の向き)から求めることができる。求められた干渉光の強度分布は、照射位置決定部214に入力される。
【0109】
このように機能する干渉強度分布演算部213は、この発明の「演算手段」の一例である。
【0110】
照射位置決定部214は、干渉強度分布演算部213により求められた干渉光の強度分布に基づいて、被検眼Eに対する信号光LSの照射位置を決定する。この処理の具体例を説明する。
【0111】
照射位置決定部214は、干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が小さい領域(注目領域)を特定する。この閾値は、予め設定されたデフォルト値であってもよいし、各計測毎に設定してもよい。
【0112】
計測毎に閾値を設定する処理の例として、干渉光の強度分布を解析して強度毎(又は強度の範囲毎)のヒストグラムを作成する。このヒストグラムは、各強度(又は強度の各範囲)の頻度を表す。このヒストグラムにおける各強度の頻度に基づいて閾値を設定できる。
【0113】
また、このヒストグラムにおいて、強度が極端に小さい部分を抽出し、この部分を他の部分と区別するように閾値を設定することもできる。
【0114】
照射位置決定部214は、このようにして特定された注目領域以外の領域内に、信号光LSの照射位置を設定する。このとき、注目領域以外の領域の全体を照射位置としてもよいし、その一部のみを照射位置としてもよい。後者の場合、たとえば注目領域の近傍を避けるようにして照射位置を設定することができる。
【0115】
照射位置決定部214の他の動作態様を説明する。照射位置決定部214は、上記の例とは逆に、干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が大きい領域を特定し、この特定領域内に信号光LSの照射位置を設定する。この閾値は、上記の例と同様にして設定できる。また、特定領域の全体を照射位置としてもよいし、その一部のみを照射位置としてもよい。
【0116】
このように機能する照射位置決定部214は、この発明の「決定手段」の一例である。
【0117】
照射位置決定部214は、決定された信号光LSの照射位置の情報を主制御部211に送る。主制御部211は、この情報を照射位置情報212aとして記憶部212に記憶させる。照射位置情報212aは、たとえば、ガルバノミラー141A、141Bの位置(向き)を表す情報であってもよいし、図1に示すxy座標系における座標値であってもよい。
【0118】
(画像形成部)
画像形成部220は、撮像装置10、12からの映像信号に基づいて眼底画像Ef′の画像データを形成する。また、画像形成部220は、OCTユニット150のCCD184からの検出信号に基づいて眼底Efの断層画像の画像データを形成する。
【0119】
画像形成部220は、画像形成ボード208や通信インターフェイス209等を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像」と、それに対応する「画像データ」とを同一視することがある。
【0120】
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像の画像データに対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理などを実行する。
【0121】
また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層画像に対し、断層画像間の画素を補間する補間処理等を施すことにより、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。
【0122】
なお、3次元画像の画像データとは、3次元的に配列された複数のボクセルのそれぞれに画素値を付与して成る画像データである。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。ディスプレイ207等の表示デバイスには、この画像データに基づく擬似的な3次元画像が表示される。
【0123】
また、画像処理部230は、複数の断層画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層画像を、走査線の位置関係に基づいて配列させることにより得られる画像データである。
【0124】
以上のように動作する画像処理部230は、マイクロプロセッサ201、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ204(制御プログラム204a)等を含んで構成されている。
【0125】
なお、画像形成部220や画像処理部230は、この発明の「画像形成手段」の一例である。
【0126】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス(User Interface;UI)240には、表示部240Aと操作部240Bが設けられている。表示部240Aは、ディスプレイ207等の表示デバイスにより構成される。また、操作部240Bは、キーボード205やマウス206などの入力デバイスや操作デバイスにより構成される。
【0127】
〔信号光の走査及び画像処理について〕
信号光LSの走査は、前述のように、走査ユニット141のガルバノミラー141A、141Bの反射面の向きを変更することで行う。制御部210は、ミラー駆動機構241、242をそれぞれ制御することで、ガルバノミラー141A、141Bの反射面の向きをそれぞれ変更し、それにより信号光LSを眼底Ef上において走査する。
【0128】
ガルバノミラー141Aの反射面の向きが変更されると、信号光LSは、眼底Ef上において水平方向(図1のx方向)に走査される。一方、ガルバノミラー141Aの反射面の向きが変更されると、信号光LSは、眼底Ef上において垂直方向(図1のy方向)に走査される。また、ガルバノミラー141A、141Bの双方の反射面の向きを同時に変更させることにより、x方向とy方向とを合成した方向に信号光LSを走査することができる。すなわち、これら2つのガルバノミラー141A、141Bを制御することにより、xy平面上の任意の方向に信号光LSを走査することができる。
【0129】
図7は、眼底Efの画像を形成するための信号光LSの走査態様の一例を表している。図7(A)は、信号光LSが被検眼Eに入射する方向から眼底Efを見た(つまり図1の−z方向から+z方向を見た)ときの、信号光LSの走査態様の一例を表す。また、図7(B)は、眼底Ef上の各走査線における走査点(画像計測を行う位置)の配列態様の一例を表す。
【0130】
図7(A)に示すように、信号光LSは、あらかじめ設定された矩形の走査領域R内を走査される。走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1〜Rmが設定されている。各走査線Ri(i=1〜m)に沿って信号光LSが走査されるときに、干渉光LCの検出信号が生成されるようになっている。
【0131】
各走査線Riの方向を「主走査方向」と呼び、それに直交する方向を「副走査方向」と呼ぶ。したがって、信号光LSの主走査方向への走査は、ガルバノミラー141Aの反射面の向きを変更することにより実行される。また、副走査方向への走査は、ガルバノミラー141Bの反射面の向きを変更することによって実行される。
【0132】
各走査線Ri上には、図7(B)に示すように、複数(n個)の走査点Ri1〜Rinがあらかじめ設定されている。
【0133】
図7に示す走査を実行するために、制御部210は、まず、ガルバノミラー141A、141Bを制御し、眼底Efに対する信号光LSの入射目標を第1の走査線R1上の走査開始位置RS(走査点R11)に設定する。続いて、制御部210は、低コヒーレンス光源160を制御し、低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させて、走査開始位置RSに信号光LSを入射させる。CCD184は、この信号光LSの走査開始位置RSにおける眼底反射光に基づく干渉光LCを受光し、検出信号を制御部210に出力する。
【0134】
次に、制御部210は、ガルバノミラー141Aを制御して、信号光LSを主走査方向に走査して、その入射目標を走査点R12に設定し、低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させて走査点R12に信号光LSを入射させる。CCD184は、この信号光LSの走査点R12における眼底反射光に基づく干渉光LCを受光し、検出信号を制御部210に出力する。
【0135】
制御部210は、同様にして、信号光LSの入射目標を走査点R13、R14、・・・、R1(n−1)、R1nと順次移動させつつ、各走査点において低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させることにより、各走査点ごとの干渉光LCに対応してCCD184から出力される検出信号を取得する。
【0136】
第1の走査線R1の最後の走査点R1nにおける計測が終了したら、制御部210は、ガルバノミラー141A、141Bを同時に制御して、信号光LSの入射目標を、線換え走査rに沿って第2の走査線R2の最初の走査点R21まで移動させる。そして、この第2の走査線R2の各走査点R2j(j=1〜n)について前述の計測を行うことで、各走査点R2jに対応する検出信号をそれぞれ取得する。
【0137】
同様に、第3の走査線R3、・・・・、第m−1の走査線R(m−1)、第mの走査線Rmのそれぞれについて計測を行い、各走査点に対応する検出信号を取得する。なお、走査線Rm上の符号REは、走査点Rmnに対応する走査終了位置である。
【0138】
それにより、制御部210は、走査領域R内のm×n個の走査点Rij(i=1〜m、j=1〜n)に対応するm×n個の検出信号を取得する。以下、走査点Rijに対応する検出信号をDijと表すことがある。
【0139】
以上のような走査点の移動と低コヒーレンス光L0の出力との連動制御は、たとえば、ミラー駆動機構241、242に対する制御信号の送信タイミングと、低コヒーレンス光源160に対する制御信号の送信タイミングとを互いに同期させることによって実現できる。
【0140】
制御部210は、上述のように各ガルバノミラー141A、141Bを動作させるときに、その動作内容を示す情報として走査線Riの位置や走査点Rijの位置(xy座標系における座標)を記憶するようになっている。この記憶内容(走査位置情報)は、従来と同様に画像形成処理などにおいて用いられる。
【0141】
次に、図7に示す信号光LSの走査を実施した場合における画像処理の例を説明する。
【0142】
画像形成部220は、各走査線Ri(主走査方向)に沿った眼底Efの断層画像を形成する。また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層画像に基づいて眼底Efの3次元画像を形成する。
【0143】
画像形成部220による断層画像の形成処理は、従来と同様に、2段階の演算処理を含んで構成される。第1段階の演算処理においては、各走査点Rijに対応する検出信号Dijに基づいて、その走査点Rijにおける眼底Efの深度方向(図1に示すz方向)の画像を形成する。
【0144】
図8は、画像形成部220により形成される断層画像の態様を表している。第2段階の演算処理においては、各走査線Riについて、その上のn個の走査点Ri1〜Rinにおける深度方向の画像に基づき、この走査線Riに沿った眼底Efの断層画像Giを形成する。このとき、画像形成部220は、各走査点Ri1〜Rinの位置情報(前述の走査位置情報)を参照して各走査点Ri1〜Rinの配列及び間隔を決定して、この走査線Riを形成するようになっている。以上の処理により、副走査方向(y方向)の異なる位置におけるm個の断層画像G1〜Gmが得られる。
【0145】
次に、画像処理部230による眼底Efの3次元画像の形成処理について説明する。眼底Efの3次元画像は、上記の演算処理により得られたm個の断層画像に基づいて形成される。画像処理部230は、隣接する断層画像Gi、G(i+1)の間の画像を補間する公知の補間処理を行うなどして、眼底Efの3次元画像を形成する。
【0146】
このとき、画像処理部230は、各走査線Riの位置情報を参照して各走査線Riの配列及び間隔を決定して、この3次元画像を形成するようになっている。この3次元画像には、各走査点Rijの位置情報(前述の走査位置情報)と、深度方向の画像におけるz座標とに基づいて、3次元座標系(x、y、z)が設定される。
【0147】
また、画像処理部230は、この3次元画像に基づいて、主走査方向(x方向)以外の任意方向の断面における眼底Efの断層画像を形成することができる。断面が指定されると、画像処理部230は、この指定断面上の各走査点(及び/又は補間された深度方向の画像)の位置を特定し、各特定位置における深度方向の画像(及び/又は補間された深度方向の画像)を3次元画像から抽出し、抽出された複数の深度方向の画像を配列させることにより当該指定断面における眼底Efの断層画像を形成する。
【0148】
なお、図8に示す画像Gmjは、走査線Rm上の走査点Rmjにおける深度方向(z方向)の画像を表している。同様に、前述の第1段階の演算処理において形成される、各走査線Ri上の各走査点Rijにおける深度方向の画像を、「画像Gij」と表す。
【0149】
[使用形態]
眼底観察装置1の使用形態について説明する。図9に示すフローチャートは、この使用形態の一例を表している。
【0150】
まず、被検眼Eを所定の計測位置(対物レンズ113に対峙する位置)に配置させ、被検眼Eに対するアライメントを行う(S1)。
【0151】
アライメントが完了したら、オペレータは、操作部240Bを操作して信号光LSの照射位置を決定する動作の開始を要求する(S2)。
【0152】
この要求を受けた主制御部211は、低コヒーレンス光源160及びミラー駆動機構241、242を制御し、被検眼Eに対して信号光LSを走査させる(予備走査)。CCD184は、予備走査により順次に生成される干渉光LCを検出し、演算制御装置200に入力する。この一連の動作を「予備検出」と呼ぶことにする(S3)。
【0153】
干渉強度分布演算部213は、予備検出により得られた検出信号に基づいて、干渉光の強度分布を求める(S4)。
【0154】
続いて、照射位置決定部214は、この干渉光の強度分布に基づいて、被検眼Eに対する信号光LSの照射位置を決定する(S5)。決定された照射位置は、照射位置情報212aとして記憶部212に格納される。
【0155】
主制御部211は、LCD140を制御し、照射位置情報212aに示す照射位置に信号光LSが照射されるように被検眼Eを固視するための固視標を表示させて、この固視標を被検眼Eに呈示させる(S6)。被検眼Eは、この固視標を凝視することにより固視される。
【0156】
被検眼Eが固視された状態において、OCT画像の計測を実行する(S7)。つまり、オペレータが操作部240BによりOCT画像の計測の開始を要求すると、この要求を受けた主制御部211が、低コヒーレント光源160及びミラー駆動機構241、242を制御して信号光LSを走査しつつ計測を行い、CCD184が、照射位置情報212aに基づく信号光LSの各照射位置に対応する干渉光LCを検出するとともに各検出信号を演算制御装置200に入力する。画像形成部220や画像処理部230は、この検出信号に基づくOCT画像を形成する。以上で、この使用形態の説明を終了する。
【0157】
[作用・効果]
以上のような眼底観察装置1(光画像計測装置)の作用及び効果について説明する。
【0158】
眼底観察装置1は、CCD184による干渉光LCの検出結果に基づいて干渉光の強度分布を求め、この強度分布に基づいて被検眼Eに対する信号光LSの照射位置を決定する。そして、決定された照射位置に向けて照射された新たな信号光LSと参照ミラー174を経由した新たな参照光LRとに基づく新たな干渉光LCの検出結果に基づいて眼底EfのOCT画像を形成する。
【0159】
したがって、眼底観察装置1によれば、被検眼Eに信号光LSの強度を低減させる部位が存在する場合に、干渉光の強度分布に基づいて当該部位を避けるように信号光LSの照射位置を決定できる。
【0160】
特に、眼底観察装置1によれば、決定された照射位置に基づいて被検眼Eに固視標を呈示することにより、新たな信号光LSが当該部位を通過しないように被検眼Eを固視させることが可能である。
【0161】
以上のように作用する眼底観察装置1によれば、被検眼Eに信号光LSの強度を低減させる部位が存在する場合であっても、明瞭なOCT画像を容易に取得できる。
【0162】
また、眼底観察装置1によれば、信号光LSの照射位置を決定するための計測で取得される干渉光LCに基づいてOCT画像を形成することができる。それにより、どのような画像が実際に取得されるかを事前に把握でき、アライメントが不十分な状態で計測が実施される事態を防止することが可能である。
【0163】
[変形例]
以上に説明した構成は、この発明に係る光画像計測装置を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。
【0164】
この発明に係る変更手段は、決定された信号光の照射位置に新たな信号光を照射させるように被検眼と装置との相対位置を変更するものである。上記の実施形態では、被検眼に固視標を呈示する呈示手段が変更手段として機能している。しかし、この発明に係る光画像計測装置は、呈示手段以外の変更手段を備えていてもよい。
【0165】
たとえば、被検眼に対して装置(光学系の筐体)を移動させるステージを設けることにより、被検眼と装置との相対位置を変更することができる。なお、顎受けや額当てを移動させることにより装置に対して被検眼を移動させることも可能であるが、被検者が不快感を感じるなど被検者に負担を与えるおそれがあるので、装置側を移動させる構成の方が望ましいと考えられる。
【0166】
経過観察など、眼底Efの同一部位(たとえば視神経乳頭、黄斑部、病変部等)のOCT画像を複数回に亘って取得する場合に特に有効な変形例を説明する。
【0167】
まず、主制御部211は、過去に取得されたOCT画像を表示部240A(表示手段)に表示させる。ここで、過去に取得されたOCT画像は記憶部212に記憶されている。なお、このOCT画像は、演算制御装置200内の記憶装置に保管されている必要はなく、たとえば院内LAN等のネットワーク上の記憶装置(データベース)に保管されていてもよい。また、たとえばDVD−RAM等の記憶媒体にOCT画像を記憶させて保管し、図示しないドライブ装置によってこれを読み出すようにしてもよい。
【0168】
オペレータは、表示されたOCT画像を観察し、操作部240B(操作手段)を操作して所望のOCT画像を指定する。この指定操作は、たとえばマウス206を用いたクリック操作によって行うことができる。
【0169】
主制御部211は、指定されたOCT画像に対応する照射位置情報212aを記憶部212(記憶手段)から読み出す。なお、各照射位置情報212aは、患者ID、検査ID、画像ID等の識別情報により、予めOCT画像に関連付けられて記憶されているものとする。この関連付け処理は、たとえば主制御部211が行う。
【0170】
LCD140等の変更手段は、主制御部211による制御を受けて、この照射位置情報212aに基づいて被検眼と装置との相対位置を変更する。それにより、指定された過去のOCT画像と(ほぼ)同じ位置に信号光LSを照射できる。したがって、過去のOCT画像と(ほぼ)同じ位置におけるOCT画像を容易に取得することができる。
【0171】
たとえばOCT画像が断層画像である場合、オペレータは、過去の断層画像のうちから、注目部位が好適に描写されている断層画像を選択して指定する。このとき、オペレータは、断層画像中における注目部位の位置などに基づいて断層画像を選択できる。この変形例によれば、指定された断層画像が取得されたときと(ほぼ)同じ走査線に沿って断層画像を容易に取得することができる。
【0172】
なお、この変形例では、オペレータが指定した画像と同様の照射位置に信号光LSを照射させているが、これに限定されるものではない。たとえば、参照される過去の画像が決まっている場合などには、オペレータによる指定は不要である。この場合、この過去の画像に対応する照射位置情報に示す照射位置を自動的に設定して信号光を走査する。
【0173】
上記の実施形態では、信号光の強度を低減させる部位を避けて走査を実行できる装置について説明したが、たとえ良好な画像が得られたとしても、たとえば注目部位が画像に描写されていなかったり、注目部位の一部しか描写されていなかったりすると、その画像は診療には使えない。このような事態を回避するために、次のような例を適用することが可能である。
【0174】
照射位置決定部214により信号光LSの照射位置が決定されると、制御部210は、この決定された照射位置と所定の基準位置との距離を求める。この距離は、距離のみ(スカラー量)であってもよいし、距離及び方向(ベクトル量)であってもよい。また、基準位置は、たとえば図9のフローチャートのステップ1で実施されたアライメントにより設定された位置である。
【0175】
視神経乳頭、黄斑部、病変部等の注目部位に対してアライメントされた場合、照射位置と基準位置との距離は、注目部位に対する信号光LSの照射位置との距離に相当する。すなわち、この距離は、注目部位と、取得されるOCT画像との位置関係を表す情報である。
【0176】
制御部210は、照射位置と基準位置との距離が所定距離(たとえば事前に設定されている)以上であるか判断する。所定距離以上であると判断された場合、制御部210は、その旨のメッセージ等の報知情報を表示部240Aに表示させる。なお、報知情報は、このような視覚的な情報には限定されず、聴覚的な情報などを用いてもよい。
【0177】
オペレータは、報知情報により、注目部位から離れた位置の画像が取得されてしまうことを計測前に認識できる。それにより、実際に取得された画像に注目部位が好適に描写されていないといった不都合を回避できる。なお、制御部210と表示部240Aは、この発明の「報知手段」の一例である。
【0178】
また、制御部210は、上記のようにして求められた距離を、画像形成部220により形成されたOCT画像とともに表示部240Aに表示させることができる。オペレータは、注目部位と画像との距離を把握でき、それにより当該画像の位置が適正であるか等の判断を行うことができる。
【0179】
上記の実施形態においては、参照ミラー174の位置を変更して信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、被検眼Eに対して眼底カメラユニット1A及びOCTユニット150を一体的に移動させて信号光LSの光路長を変更することにより光路長差を変更することができる。また、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することもできる。
【0180】
上記の実施形態で説明した眼底観察装置は、フーリエドメイン型の光画像計測装置を含んで構成されているが、たとえばタイムドメイン(Time Domain)型、フルフィールド(Full Field)型、スウェプトソース(Swept Source)型などの任意の光画像計測装置に対して、この発明の構成を適用することが可能である。
【0181】
また、上記の実施形態では、眼底のOCT画像を取得する装置について説明したが、たとえば角膜等の被検眼の他の部位のOCT画像を取得可能な装置に対しても上記実施形態の構成を適用することが可能である。
【0182】
[プログラムについて]
この発明に係るプログラムについて説明する。上記の実施形態における制御プログラム204aは、この発明に係るプログラムの一例である。また、演算制御装置200は、この発明に係るコンピュータの一例である。
【0183】
この発明に係るプログラムは、前述の干渉光生成手段と検出手段、更にはコンピュータを具備する光画像計測装置を制御するプログラムであり、このコンピュータを次のように機能させるものである:(1)検出手段による検出結果に基づいて干渉光の強度分布を求める演算手段;(2)この干渉光の強度分布に基づいて被検眼に対する信号光の照射位置を決定する決定手段;(3)この信号光の照射位置に向けて照射された新たな信号光と参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて、被検眼の画像を形成する画像形成手段。
【0184】
このようなプログラムによれば、被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合であっても、干渉光の強度分布に基づいて当該部位を避けるように信号光の照射位置を決定できるので、明瞭なOCT画像を容易に取得することが可能である。
【0185】
この発明に係るプログラムは、コンピュータのドライブ装置によって読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させることができる。たとえば、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などの記憶媒体を用いることが可能である。また、ハードディスクドライブやメモリ等の記憶装置に記憶させることも可能である。更に、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送信することも可能である。
【0186】
[光画像計測方法について]
この発明に係る光画像計測方法について説明する。この光画像計測方法は、以下のステップを含んでいる:(1)低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成する;(2)生成された干渉光を検出する;(3)検出手段による検出結果に基づいて、被検眼における干渉光の強度分布を求める;(4)求められた強度分布に基づいて、被検眼に対して信号光を照射する位置を決定する;(5)新たな低コヒーレンス光に基づく新たな信号光を、決定された位置に向けて照射する;(6)被検眼を経由した新たな信号光と、新たな低コヒーレンス光に基づく新たな参照光とを重畳させて新たな干渉光を生成する;(7)生成された新たな干渉光を検出する;(8)新たな干渉光の検出結果に基づいて、被検眼の画像を形成する。
【0187】
この光画像計測方法は、たとえば、上記の実施形態に係る眼底観察装置1(光画像計測装置)によって実現される。このような光画像計測方法によれば、被検眼に信号光の強度を低減させる部位が存在する場合であっても、干渉光の強度分布に基づいて当該部位を避けるように信号光の照射位置を決定して計測を行うことができるので、明瞭なOCT画像を容易に取得することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態の全体構成の一例を表す概略構成図である。
【図2】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態における眼底カメラユニットに内蔵される走査ユニットの構成の一例を表す概略構成図である。
【図3】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態におけるOCTユニットの構成の一例を表す概略構成図である。
【図4】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態における演算制御装置のハードウェア構成の一例を表す概略ブロック図である。
【図5】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態の制御系の構成の一例を表す概略ブロック図である。
【図6】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態の制御系の構成の一例を表す概略ブロック図である。
【図7】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態による信号光の走査態様の一例を表す概略図である。図7(A)は、被検眼に対する信号光の入射側から眼底を見たときの信号光の走査態様の一例を表している。また、図7(B)は、各走査線上の走査点の配列態様の一例を表している。
【図8】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態による信号光の走査態様、及び、各走査線に沿って形成される断層画像の態様の一例を表す概略図である。
【図9】この発明に係る光画像計測装置として機能する眼底観察装置の実施形態の使用形態の一例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0189】
1 眼底観察装置(光画像計測装置)
1A 眼底カメラユニット
140 LCD
141 走査ユニット
141A、141B ガルバノミラー
150 OCTユニット
160 低コヒーレンス光源
162 光カプラ
174 参照ミラー
180 スペクトロメータ
184 CCD
200 演算制御装置
204a 制御プログラム
210 制御部
211 主制御部
212 記憶部
212a 照射位置情報
213 干渉強度分布演算部
214 照射位置決定部
220 画像形成部
230 画像処理部
240 ユーザインターフェイス
240A 表示部
240B 操作部
241、242 ミラー駆動機構
Ri(i=1〜m) 走査線
E 被検眼
Ef 眼底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と、
前記生成された干渉光を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求める演算手段と、
前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する前記信号光の照射位置を決定する決定手段と、
前記決定された照射位置に向けて照射された新たな信号光と前記参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成する画像形成手段と、
を備えることを特徴とする光画像計測装置。
【請求項2】
前記決定手段により決定された照射位置に前記新たな信号光を照射させるように前記被検眼と装置との相対位置を変更する変更手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光画像計測装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記決定手段により決定された照射位置に前記新たな信号光が照射されるように前記被検眼を固視させるための固視標を呈示する呈示手段を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の光画像計測装置。
【請求項4】
前記呈示手段は、前記固視標を表示する固視標表示手段と、前記表示された固視標を前記被検眼の眼底に投影させる投影光学系とを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の光画像計測装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記演算手段により求められた干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が小さい領域を特定し、前記特定された領域以外の領域の少なくとも一部を前記照射位置とする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記演算手段により求められた干渉光の強度分布において、所定の閾値よりも強度が大きい領域を特定し、前記特定された領域の少なくとも一部を前記照射位置とする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項7】
前記変更手段は、過去に形成された画像について前記決定手段により決定された照射位置に信号光を照射させるように前記相対位置を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項8】
前記画像形成手段により形成された画像を表示する表示手段と、
操作手段と、
を更に備え、
前記変更手段は、前記操作手段により前記表示された画像が指定されたときに、当該指定された画像が形成されたときに決定された照射位置に信号光を照射させるように前記相対位置を変更する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光画像形成装置。
【請求項9】
前記変更手段は、前記決定手段により決定された照射位置の情報を記憶する記憶手段を含み、前記記憶された情報に基づいて前記相対位置を変更する、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の光画像計測装置。
【請求項10】
前記決定手段により決定された照射位置と所定の基準位置との距離を求め、当該距離に基づく報知情報を出力する報知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光画像計測装置。
【請求項11】
前記報知手段は、前記画像形成手段により形成された画像と前記求められた距離とを前記報知情報として表示する表示手段を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の光画像計測装置。
【請求項12】
前記報知手段は、前記求められた距離が所定距離以上であるときに、当該所定距離以上であることを示す情報を前記報知情報として出力する、
ことを特徴とする請求項10に記載の光画像計測装置。
【請求項13】
低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と、
前記生成された干渉光を検出する検出手段と、
コンピュータと、
を有する光画像計測装置を制御するプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求める演算手段として機能させ、
前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する信号光の照射位置を決定する決定手段として機能させ、
前記決定された照射位置に向けて照射された新たな信号光と前記参照物体を経由した新たな参照光とに基づく新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成する画像形成手段として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
低コヒーレンス光を信号光と参照光とに分割し、被検眼を経由した前記信号光と参照物体を経由した前記参照光とを重畳させて干渉光を生成するステップと、
前記生成された干渉光を検出するステップと、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記被検眼における前記干渉光の強度分布を求めるステップと、
前記求められた強度分布に基づいて、前記被検眼に対する前記信号光の照射位置を決定するステップと、
新たな低コヒーレンス光に基づく新たな信号光を前記決定された照射位置に向けて照射するステップと、
前記被検眼を経由した新たな信号光と、前記新たな低コヒーレンス光に基づく新たな参照光とを重畳させて新たな干渉光を生成するステップと、
該生成された新たな干渉光を検出するステップと、
前記新たな干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼の画像を形成するステップと、
を含むことを特徴とする光画像計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−246158(P2008−246158A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95123(P2007−95123)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】