説明

光硬化性樹脂組成物及び塗料

【課題】 作業性に十分優れる粘度を有し、塗膜表面の硬化性に優れ、十分に高い機械的強度を有する硬化塗膜を形成できると共に、十分に高い伸び率を有し基材との密着性に十分優れた硬化塗膜を形成できる光硬化性樹脂組成物及び塗料を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する光硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン化合物、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体、及び(C)光重合開始剤を含有し、ウレタン化合物が、(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物と、(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールと、(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールと、(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを、(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合し反応させて得られるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線又は電子線の照射によって硬化可能な光硬化性樹脂組成物が開発され、コーティング用塗料、接着剤、粘着剤等に利用されている。光硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物に比較して効率的な硬化が可能であることから、最近では、生産性の向上を図る目的でコーティングの用途が増加している。
【0003】
このコーティング用途では、一般に、塗膜表面の硬化性のみならず、形成した硬化塗膜の物性や外観などの特性も光硬化性樹脂組成物に要求される。さらには、ハンドリングの容易性や塗装の容易性などの作業性の観点から、より低粘度の光硬化性樹脂組成物が求められている。また、木工塗装分野においては、安価な輸入木材からなる木質系合板等が増えており、塗装部位の材質が多岐に渡っている。そのため、塗装部位(基材)との密着性に優れることも光硬化性樹脂組成物に要求される。つまり、作業性に優れ、コーティング用途として必要な特性である十分な硬化性及び塗膜強度を有していると共に、硬化塗膜が十分な伸びを有している光硬化性樹脂組成物が求められている。
【0004】
ところで、最近、塗膜の物性等の調節が容易であることから、ウレタン変性アクリレートを用いた光硬化性樹脂組成物が種々開発されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−66596号公報
【特許文献2】特開昭50−94090号公報
【特許文献3】特開昭48−25095号公報
【特許文献4】特開昭64−24817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載のものをはじめとする従来の光硬化性樹脂組成物では、作業性を考慮して光硬化性樹脂組成物の粘度を低く設定すると、硬化塗膜の伸び率が低下し、塗装部位(基材)との密着性が不十分となる。一方、硬化塗膜の伸び率を向上させる目的で樹脂の分子量を大きくすると、光硬化性樹脂組成物の粘度が増加して作業性が低下し、さらに塗膜の表面硬化性も低下してしまう。したがって、上述の特性を同時に満足させるには、従来の光硬化性樹脂組成物において更なる改善が必要とされている。
【0007】
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、作業性に十分優れる粘度を有し、塗膜表面の硬化性に優れ、十分に高い機械的強度を有する硬化塗膜を形成できると共に、十分に高い伸び率を有し基材との密着性に十分優れた硬化塗膜を形成できる光硬化性樹脂組成物及び塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を特定の割合で混合し反応させて得られるウレタン化合物を用いることにより、作業性及び硬化性に優れ、かつ、上述の特性を満足する硬化塗膜が得られることを見出した。すなわち、特定の化合物を特定の割合で混合し反応させて得られるウレタン化合物と光重合性単量体と光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物が、溶剤を用いない場合であっても十分に低い粘度を有し、かつ、塗膜表面の硬化性に優れ、さらには、形成した硬化塗膜が十分に高い機械的強度と十分に高い伸び率を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン化合物、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体、及び(C)光重合開始剤を含有し、ウレタン化合物が、(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物と、(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールと、(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールと、(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを、(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合し反応させて得られるものである。
【0010】
本発明において、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値を用いる。
【0011】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記のウレタン化合物を含有し、さらに上記の(B)成分及び(C)成分を含有することにより、作業性に十分優れる粘度を有し、塗膜表面の硬化性に優れ、十分に高い機械的強度を有する硬化塗膜を形成できると共に、十分に高い伸び率を有し基材との密着性に十分優れた硬化塗膜を形成できるものとなっている。また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、溶剤を用いない場合であっても作業性に十分優れる粘度を有しているので、無溶剤型の塗料として用いることができる。
【0012】
(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1未満であると、すなわち、数平均分子量が62以上1000以下であるポリオキシアルキレングリコールが、数平均分子量が1000を超え2500以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールよりも多いと、この場合に得られるウレタン化合物を含む光硬化性樹脂組成物は、粘度が高くなりすぎて作業性が低下する。また、形成される硬化塗膜は、可とう性が低下して脆くなり、基材との密着性も不十分となる。
【0013】
また、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1未満であると、光硬化性樹脂組成物が貯蔵中にゲル化するなど、実用上問題が生じる。一方、この当量比が1.1を超えると、形成される硬化塗膜が、十分に高い伸び率及び十分に高い機械的強度を有することができない。
【0014】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物において、上記の(b)成分は、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールを含有することが好ましい。
【化1】

式(1)中、x、y及びzは正の整数であり、下記式(I)及び(II);
0.1≦[(x+z)/y]≦1.0 …(I)
15≦(x+y+z)≦40 …(II)
を満たす。
【0015】
数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールとして、上記のような共重合系ポリエーテルポリオール化合物を用いて得られるウレタン化合物は、分子間の相互作用が低いため光硬化性樹脂組成物の粘度をより確実に低減できると共に、得られるウレタン化合物の分子量も従来のものと大きく変わらず、塗膜表面の硬化性及び基材との密着性に十分優れ、より高いレベルで伸び率と強度とを満足する硬化塗膜をより確実に形成できる。
【0016】
上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールにおいて、(x+y+z)、すなわち、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの平均付加モル数の合計が15未満であると、形成される硬化塗膜(特には、フィルム状に形成された硬化膜)の柔軟性(伸び率)が不十分となる傾向にあり、一方、(x+y+z)が40を越えると、光硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなる傾向にあり、十分な塗膜表面の硬化性及び十分な塗膜強度が得られにくくなる傾向にある。
【0017】
また、上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールにおいて、[(x+z)/y]、すなわち、プロピレンオキサイドの平均付加モル数yに対するエチレンオキサイドの平均付加モル数の合計(x+z)の比が0.1未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなる傾向にあり、一方、[(x+z)/y]が1.0を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する傾向にあり、また、形成される硬化塗膜の硬度及び強度が不十分となる傾向にある。
【0018】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物において、上記の(b)成分は、さらに下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールを含有することが好ましい。
【化2】

式(2)中、Rは、水素又はメチル基を示し、nは、正の整数である。
【0019】
(b)成分がこのようなポリオキシアルキレングリコールをさらに含有することにより、得られる光硬化性樹脂組成物の粘度をより確実に低減できると共に、塗膜表面の硬化性及び基材との密着性に十分優れ、より高いレベルで伸び率と強度とを満足する硬化塗膜をより確実に形成できる。また、上記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールを用いることにより、ウレタン化合物の分子量を大きくする場合であっても、光硬化性樹脂組成物の粘度をより低くすることが可能となり、伸び率が良好な光硬化性樹脂組成物をより確実に得ることができる。
【0020】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物において、上記の(c)成分は、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレングリコール及び/又は下記一般式(4)で表されるアルキレングリコール若しくはポリオキシアルキレングリコールを含有することが好ましい。
【化3】

式(3)中、p、q及びrは、正の整数である。
【化4】

式(4)中、Rは、水素又はメチル基を示し、mは、正の整数である。
【0021】
(c)成分が上記のようなアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールを含有することにより、得られる光硬化性樹脂組成物の粘度をより確実に低減できると共に、塗膜表面の硬化性及び基材との密着性に十分優れ、より高いレベルで伸び率と強度とを満足する硬化塗膜をより確実に形成できる。
【0022】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物において、上記(d)成分が有する水酸基のモル数MOHと(a)成分のイソシアネート化合物のモル数Mとの比MOH/Mが、3/5〜1であることが好ましい。
【0023】
上記の(MOH/M)が3/5未満であると、すなわち、(d)成分が有する水酸基の合計モル数を3とした場合にイソシアネート化合物のモル数が5を越えると、光硬化性樹脂組成物の硬化性が不十分となる傾向にあり、形成される硬化塗膜の強度が不十分となる傾向にある。さらには、光硬化性樹脂組成物の粘度が増大して作業性が低下する傾向にある。一方、(MOH/M)が1を超えると、すなわち、(d)成分が有する水酸基の合計モル数を3とした場合にイソシアネート化合物のモル数が3を下回ると、形成される硬化塗膜の伸び率が不十分となる傾向にある。
【0024】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物において、上記のウレタン化合物の数平均分子量が、1000〜4000であり、かつ、この数平均分子量に対するウレタン化合物の重量平均分子量の比が3.0以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値を用いる。
【0026】
ウレタン化合物の数平均分子量が、1000未満であると、硬化塗膜が脆くなる傾向にあり、4000を超えると、光硬化性樹脂組成物の硬化性が低下する傾向にあり、また、硬化塗膜の硬度が不十分となり、耐割れ性が低下する傾向にある。また、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が3.0を超えると、硬化塗膜の硬度が不十分となり、耐割れ性が低下する傾向にある。
【0027】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物において、(A)成分の質量Mと(B)成分の質量Mとの比M/Mが、95/5〜40/60であり、かつ、(C)成分の含有割合が、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
【0028】
上記のM/Mが、95/5を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり作業性が低下する傾向にある。一方、M/Mが、40/60未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化性、並びに、硬化塗膜の伸び率及び強度が不十分となる傾向にある。
【0029】
また、上記の(C)成分の含有割合が、1質量部未満であると、光硬化性が不十分となる傾向にあり、10質量部を超えると、形成される硬化塗膜の特性(硬度、強度、柔軟性(伸び率)等)が低下する傾向にある。
【0030】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A)成分であるウレタン化合物70質量部と、(B)成分としてのアクリロイルモルフォリン30質量部とを含有し、25℃における粘度が1500〜3500mPa・sであることが好ましい。
【0031】
このような光硬化性樹脂組成物は、溶剤を用いない場合であってもより優れた作業性を有しており、塗膜表面の硬化性及び基材との密着性に十分優れ、より高いレベルで伸び率と強度とを満足する硬化塗膜をより確実に形成できる。
【0032】
また、本発明の塗料は、上述の本発明の光硬化性樹脂組成物のいずれかを含有してなる。
【0033】
本発明の塗料は、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、作業性に十分優れる粘度を有し、塗膜表面の硬化性に優れ、十分に高い機械的強度を有する硬化塗膜を形成できると共に、十分に高い伸び率を有し基材との密着性に十分優れた硬化塗膜を形成できるものとなっている。また、本発明の塗料は、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることによって、溶剤を用いない場合であっても作業性に十分優れる粘度とすることができ、無用剤型の塗料として用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、作業性に十分優れる粘度を有し、塗膜表面の硬化性に優れ、十分に高い機械的強度を有する硬化塗膜を形成できると共に、十分に高い伸び率を有し基材との密着性に十分優れた硬化塗膜を形成できる光硬化性樹脂組成物及び塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
本実施形態において、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。また、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値を用い、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値を用いる。
【0037】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン化合物、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体、及び(C)光重合開始剤を含有し、ウレタン化合物が、(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物と、(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールと、(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールと、(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを、(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合し反応させて得られるものであることが必要である。
【0038】
(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、及び、これらの水素添加物等のジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0039】
さらには、上記の各種ジイソシアネート化合物と水とを反応させて得られるビュレット型ポリイソシアネート化合物、上記の各種ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の多価アルコールとを反応して得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、上記の各種ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化して得られる多量体等を用いることができる。
【0040】
上記のイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、下記一般式(1);
【化5】

で表される共重合系ポリエーテルポリオールが挙げられる。なお、上記式(1)中、x及びyはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の整数であり、yはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の整数であり、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドはブロック結合している。
【0042】
本実施形態においては、上記式(1)中、x、y及びzが下記式(I)及び(II);
0.1≦[(x+z)/y]≦1.0 …(I)
15≦(x+y+z)≦40 …(II)
を満たすことが好ましい。
【0043】
上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールにおいて、(x+y+z)、すなわち、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの平均付加モル数の合計が15未満であると、形成される硬化塗膜(特には、フィルム状に形成された硬化膜)の柔軟性(伸び率)が不十分となる傾向にあり、一方、(x+y+z)が40を越えると、光硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなる傾向にあり、十分な塗膜表面の硬化性及び十分な塗膜強度が得られにくくなる傾向にある。
【0044】
また、上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールにおいて、[(x+z)/y]、すなわち、プロピレンオキサイドの平均付加モル数yに対するエチレンオキサイドの平均付加モル数の合計(x+z)の比が0.1未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなる傾向にあり、一方、[(x+z)/y]が1.0を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する傾向にあり、また、形成される硬化塗膜の硬度及び強度が不十分となる傾向にある。
【0045】
また、(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールとしては、下記一般式(2);
【化6】

で表されるポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。なお、式(2)中、Rは、水素又はメチル基を示し、nは、正の整数である。
【0046】
本実施形態においては、(b)成分が、上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールと、上記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールとを含むことが好ましい。上記一般式(1)及び上記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールを併用することにより、光硬化性樹脂組成物の粘度と、塗膜の物性とのバランスを図ることがより容易にできる。
【0047】
(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコールとしては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、モノブチレングリコール、ジブチレングリコール、モノペンチレングリコール、ジペンチレングリコール、モノヘキシレングリコール、ジヘキシレングリコールなどが挙げられる。
【0048】
また、(c)数平均分子量が62以上1000以下であるポリオキシアルキレングリコールとしては、下記一般式(3);
【化7】

で表される共重合系ポリエーテルポリオールが挙げられる。なお、式(3)中、p及びrはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の整数であり、qはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の整数であり、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドはブロック結合している。
【0049】
さらに、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールのような、下記一般式(4);
【化8】

で表されるポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。なお、式(4)中、Rは、水素又はメチル基を示し、mは、−CHRCHO−の平均付加モル数を示す正の整数である。
【0050】
また、トリブチレングリコール等のポリブチレングリコール、トリペンチレングリコール等のポリペンチレングリコール、トリヘキシレングリコール等のポリヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0051】
本実施形態においては、数平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。特に、ジエチレングリコールやポリエチレングリコールを用いることで、塗膜の強靭性をより向上させることができ、側鎖を有するプロピレングリコール等を用いることで、光硬化性樹脂組成物の低粘度化をより確実に図ることができる。また、上記の(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール及びポリオキシアルキレングリコールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が2〜7であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ε−カプロラクトン単量体を開環重合させて得られるヒドロキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、本実施形態の光重合性樹脂組成物においては、塗膜表面の硬化性及び形成される硬化塗膜の硬化性に優れる観点から、上記の化合物のうち2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0054】
(A)ウレタン化合物は、上記の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を混合して、好ましくは60〜80℃で5〜12時間反応させることにより得ることができる。その際、必要に応じて有機溶媒、及びジブチル錫ジラウレート等の反応触媒を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、エステル系、ケトン系、芳香族系等の有機溶媒が挙げられる。エステル系の有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等が挙げられ、ケトン系の有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、芳香族系の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
本実施形態においては、上記の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を混合し反応させて(A)ウレタン化合物を得る際、(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合する必要がある。
【0056】
(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1未満であると、すなわち、数平均分子量が62以上1000以下であるポリオキシアルキレングリコールが、数平均分子量が1000を超え2500以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールよりも多いと、この場合に得られるウレタン化合物を含む光硬化性樹脂組成物は、粘度が高くなりすぎて作業性が低下する。また、形成される硬化塗膜は、可とう性が低下して脆くなり、基材との密着性も不十分となる。
【0057】
また、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1未満であると、光硬化性樹脂組成物が貯蔵中にゲル化するなど、実用上問題が生じる。一方、この当量比が1.1を超えると、形成される硬化塗膜が、十分に高い伸び率と十分に高い強度を有することができない。
【0058】
さらに、(A)ウレタン化合物を得る際、上記(d)成分が有する水酸基のモル数MOHと(a)成分のイソシアネート化合物のモル数Mとの比MOH/Mが、3/5〜1となるように混合することが好ましい。
【0059】
上記のMOH/Mが3/5未満であると、すなわち、(d)成分が有する水酸基のモル数を3とした場合にイソシアネート化合物のモル数が5を越えると、光硬化性樹脂組成物の硬化性が不十分となる傾向にあり、形成される硬化塗膜の強度が不十分となる傾向にある。さらには、光硬化性樹脂組成物の粘度が増大して作業性が低下する傾向にある。一方、MOH/Mが1を超えると、すなわち、(d)成分が有する水酸基OHのモル数を3とした場合にイソシアネート化合物のモル数が3を下回ると、形成される硬化塗膜の伸び率が不十分となる傾向にある。
【0060】
また、本実施形態の光硬化性樹脂組成物において、上記のウレタン化合物の数平均分子量が、1000〜4000であり、かつ、この数平均分子量に対するウレタン化合物の重量平均分子量の比(Mw/Mn)が3.0以下であることが好ましい。
【0061】
ウレタン化合物の数平均分子量が、1000未満であると、硬化塗膜が脆くなる傾向にあり、4000を超えると、光硬化性樹脂組成物の硬化性が低下する傾向にあり、また、硬化塗膜の硬度が不十分となり、耐割れ性が低下する傾向にある。
【0062】
また、上記の(Mw/Mn)が3.0を超えると、硬化塗膜の硬度が不十分となり、耐割れ性が低下する傾向にある。
【0063】
(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の反応性不飽和基を有する、単官能性又は多官能性の光重合性単量体が挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルモルフォリンなどの単官能性の(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω−ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。また、α,ω−テトラアリルビストリメチロールプロパンテトラヒドロフタレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基等を有するものを用いることもできる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、
【0064】
本実施形態の光重合性樹脂組成物においては、上記のうち、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物を用いるのが好ましい。このような光重合性単量体を含有することによって、光重合性樹脂組成物はより確実に低粘度化され、ハンドリング性が向上するなどの作業性により優れるものとなる。
【0065】
(C)光重合開始剤としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、アゾ系光重合開始剤、スルホクロリド系重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、過酸化物系光重合開始剤、o−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
【0066】
カルボニル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N’−ジメチルアセトフェノン等が挙げられる。
【0067】
スルフィド系光重合開始剤としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルアンモニウムモノスルフィド等が挙げられる。キノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等が挙げられる。アゾ系光重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビスプロパン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0068】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等が挙げられる。
【0069】
過酸化物系光重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
【0070】
上記の光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物に含まれる(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有割合については、(A)成分の質量Mと(B)成分の質量Mとの比M/Mが、95/5〜40/60であることが好ましく、90/10〜60/40であることがより好ましい。このM/Mが、95/5を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり作業性が低下する傾向にある。一方、M/Mが、40/60未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化性、並びに、硬化塗膜の伸び率及び強度が不十分となる傾向にある。
【0072】
また、(C)成分の含有割合については、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。この(C)成分の含有割合が、1質量部未満であると、光硬化性が不十分となる傾向にあり、10質量部を超えると、形成される硬化塗膜の特性(硬度、強度、柔軟性(伸び率)等)が低下する傾向にある。
【0073】
また、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体としてアクリロイルモルフォリンを用い、(A)成分であるウレタン化合物70質量部と、(B)成分としてのアクリロイルモルフォリン30質量部とを含有する場合に、25℃における粘度が1500〜3500mPa・sとすることが好ましい。なお、光硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、BH又はBL型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0074】
上記の粘度を有する光硬化性樹脂組成物は、溶剤を用いない場合であっても作業性に優れ、さらに、上述のウレタン化合物と(B)成分としてのアクリロイルモルフォリンとを上記の割合で含有することにより、塗膜表面の硬化性及び基材との密着性に十分優れ、より高いレベルで伸び率と強度とを満足する硬化塗膜をより確実に形成できるものとなっている。
【0075】
次に、本発明の塗料の実施形態について説明する。
【0076】
本実施形態の塗料は、上述の本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含んでなる。また、本実施形態の塗料には、上述の光硬化性樹脂組成物のほかに、必要に応じて、天然又は合成高分子物質、充填剤、体質顔料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、改質剤、可塑剤等を添加することができる。
【0077】
天然高分子物質としては、例えば、油脂等が挙げられ、具体的には、アマニ油、桐油、大豆油、ひまし油、エポキシ化油等が挙げられる。
【0078】
合成高分子物質としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステルウレタン樹脂、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、エポキシ末端ポリオキサゾリドン、アクリル樹脂類、アルキド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル類、飽和ポリエーテル類、セルロース誘導体等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート類等が挙げられる。
【0079】
充填剤及び体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0080】
顔料としては、例えば、亜鉛華、ベンガラ、アゾ顔料等が挙げられる。
【0081】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカルビトール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0082】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物等が挙げられる。
【0083】
可塑剤としては、例えば、2価アルコールエステル系可塑剤、その他のエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。2価アルコールエステル系可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチラート等が挙げられ、その他のエステル系可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、オレイン酸ブチル等が挙げられる。
【0084】
本実施形態の塗料に含まれる本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、塗膜表面の硬化性に優れ、十分な伸び率と機械的強度を有し基材との密着性に十分優れる硬化塗膜を形成できると共に、作業性に十分優れる粘度(十分に低い粘度)を有することができる。そのため、本実施形態の塗料は、溶剤を用いない無溶剤型塗料として使用可能である。ただし、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、上述の(A)ウレタン化合物を得るために使用される有機溶媒として例示されたものが挙げられる。
【0085】
上述の天然又は合成高分子物質、充填剤、体質顔料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、改質剤、可塑剤及び有機溶媒の配合割合は、塗料の用途によって適宜選択され、特に制限されるものではないが、これらの各成分の総量を、塗料の質量に対して0.01質量%〜50質量%とすることが好ましい。
【0086】
本実施形態の塗料を得る方法としては、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を、例えば、ペイントシェーカー法、ロールミル法、サンドミル法、ディスパーザー法、ニーダー法、高速インペラーミル法等の公知の方法を用いて塗料化する方法が挙げられる。
【0087】
本実施形態の塗料は、通常の塗装方法に従って塗装に供することができる。塗装に際しては、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー機、静電塗装機、浸漬、ロール塗装機、ハケ等を用いることができる。
【0088】
また、本実施形態の塗料は、鉄、アルミニウム等の金属素材、珪酸カルシウム板、パルプセメント板、軽量コンクリート板、石綿セメント板、モルタル等の無機建材、木材、紙、プラスチック基材等の塗装に使用でき、塗装後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を光源として塗膜に紫外線を照射することにより塗膜を硬化させることができる。また、形成される硬化塗膜は、十分に高い強度を有すると共に、十分に高い伸び率を有し上記の基材(特には、木材)との密着性に十分優れている。さらには、本実施形態の塗料は、このような優れた特性を上述の比較的安価な材料を用いて得ることができるので、コストパフォーマンスにも優れている。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
<ウレタンアクリレートの合成>
(合成例1)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)40.6質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)269.6質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(日本油脂(株)製、商品名「プロノン#102」、数平均分子量:約1000)67.7質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)23.3質量部、ジエチレングリコール(DEAL)6.8質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)81.2質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物1を得た。
【0091】
(合成例2)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)50.3質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)143.2質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、「ペポールB−064」、数平均分子量:約1000)157.8質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)28.9質量部、ジエチレングリコール(DEAL)8.4質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)100.7質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物2を得た。
【0092】
(合成例3)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)37.7質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)250.3質量部、ポリプロピレングリコール(日本油脂社製、商品名「ユニオールD−2000」、数平均分子量:約2000)97.9質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)21.7質量部、ジエチレングリコール(DEAL)6.3質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)75.4質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物3を得た。
【0093】
(合成例4)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)38.7質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)110.1質量部、ポリプロピレングリコール(日本油脂社製、商品名「ユニオールD−2000」、数平均分子量:約2000)234.4質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)22.2質量部、ジエチレングリコール(DEAL)6.5質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)75.4質量部を3時間で均一滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物4を得た。
【0094】
(合成例5)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)34.8質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)140.5質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(日本油脂(株)製、商品名「プロノン#102」、数平均分子量:約1000)77.3質量部、ポリプロピレングリコール(日本油脂社製、商品名「ユニオールD−2000」、数平均分子量:約2000)140.5質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)10.0質量部、ジエチレングリコール(DEAL)3.0質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)77.4質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物5を得た。
【0095】
(合成例6)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)32.3質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)112.4質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(日本油脂(株)製、商品名「プロノン#102」、数平均分子量:約1000)71.8質量部、ポリプロピレングリコール(日本油脂社製、商品名「ユニオールD−2000、数平均分子量:約2000)195.8質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)9.3質量部、ジエチレングリコール(DEAL)3.0質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)64.7質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物6を得た。
【0096】
(合成例7)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)25.6質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)412.5質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)51.2質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物7を得た。
【0097】
(合成例8)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)58.9質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール(東邦化学(株)製、商品名「ペポールB−124F」、数平均分子量:約2000)204.7質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)98.1質量部、ジエチレングリコール(DEAL)9.9質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)117.7質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物8を得た。
【0098】
(合成例9)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)89.5質量部、ポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、商品名「PEG400」、数平均分子量:約400)205.8質量部、ジエチレングリコール(DEAL)15.0質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)179.0質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物9を得た。
【0099】
(合成例10)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、この反応容器に2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)27.6質量部、ポリプロピレングリコール(日本油脂社製、商品名「ユニオールD−2000、数平均分子量:約2000)406.4質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部及びジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル(株)製、商品名「L101」)0.1質量部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」)55.3質量部を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約5時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、固形分が約100%のウレタンアクリレート化合物10を得た。
【0100】
合成例1〜10における各成分の配合割合をモル数で表してまとめたものを表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
(実施例1)
合成例1で得られたウレタンアクリレート化合物1と、光硬化可能な不飽和二重結合を1分子中に1個以上有する光重合性単量体として、アクリロイルモルフォリン(興人(株)製、商品名「ACMO」)を30質量%配合したものに、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)をウレタンアクリレート化合物及び光重合性単量体との合計量に対して3質量%配合して均一に混合することにより、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0103】
(実施例2)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例2で得られたウレタンアクリレート化合物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0104】
(実施例3)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例3で得られたウレタンアクリレート化合物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0105】
(実施例3)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例3で得られたウレタンアクリレート化合物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0106】
(実施例4)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例4で得られたウレタンアクリレート化合物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0107】
(実施例5)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例5で得られたウレタンアクリレート化合物5を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0108】
(実施例6)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例6で得られたウレタンアクリレート化合物6を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0109】
(比較例1)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例7で得られたウレタンアクリレート化合物7を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0110】
(比較例2)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例8で得られたウレタンアクリレート化合物8を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0111】
(比較例3)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例9で得られたウレタンアクリレート化合物9を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0112】
(比較例4)
ウレタンアクリレート化合物1の代わりに、合成例10で得られたウレタンアクリレート化合物10を用いたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0113】
<光硬化性樹脂組成物の性能評価>
(粘度)
上記の実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物の粘度は、BHもしくはBL型回転粘度計で測定した。
【0114】
(塗膜外観)
上記の実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、基材であるガラス板にアプリケータ100を用いて乾燥膜厚が約30〜50μmになるように塗装し塗膜を形成した。この塗膜の外観を目視により評価した。
【0115】
次に、上記の塗膜が形成されたガラス板に対して紫外線照射装置(6kW、80w/cm×2灯、日本電池社製)を用いて、80w/cmの高圧水銀灯を1灯、照射距離15cm、コンベア速度10m/分(UV照射量100mJ/cmに相当)の条件下で紫外線を照射して硬化塗膜が形成された評価用試験板を得た。なお、UV測定装置として、トプコン工業用UVチェッカーUV R−T35を用い、測定波長範囲を約300〜390nmとした。このようにして得られた評価用試験板の塗膜について以下の(1)〜(3)の評価を行った。
【0116】
(1)UV硬化性
塗膜表面が指触硬化に至るまでの紫外線照射量(mJ/cm)を測定した。
【0117】
(2)硬化塗膜外観
得られた硬化塗膜の外観を目視により評価した。
【0118】
(3)鉛筆硬さ
JISK5400に準拠して、塗膜表面にキズ跡が残らない鉛筆硬さを評価した。
【0119】
また、上記の実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、基材であるガラス板にアプリケータを用いて乾燥膜厚が約30〜50μmになるように塗装し、紫外線照射装置(6kW、80w/cm×2灯、日本電池株式会社製)を用いて、80w/cmの高圧水銀灯を1灯、照射距離15cm、コンベア速度10m/分(UV照射量100mJ/cmに相当)の条件下で紫外線を照射して形成した硬化塗膜を剥がし、厚さ約30〜50μmの硬化フィルムを作製した。このようにして得られた硬化フィルムについて以下の引張伸率及び引張強度の評価を行った。
【0120】
(硬化フィルムの引張伸率及び引張強度)
作製した硬化フィルムを25℃の環境温度で長さ50mm、幅10mmの短冊形に切り出して試験片とした。この試験片を、1元2元冷凍機式恒温槽(島津製作所社製)内で25℃の環境温度において、テストスパン50mmで、引張速度10mm/分で硬化フィルムが破断するまで引っ張り、破断時の伸び(mm)および強度(N)から、伸び率(%)および抗張力を以下の計算式により求めた。
伸び率(%)={[破断時の伸び(mm)]/[テストスパン(mm)]}×100
なお、テストスパンは50mmであった。
抗張力(N/cm)=[破断時の強度(N)]/(A×B)
なお、Aは硬化フィルム試験片の幅(cm)、Bは硬化フィルムの厚さ(cm)を意味する。
【0121】
評価結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
表2に示されるように、実施例1〜6の光硬化性樹脂組成物は、粘度が3500mPa・s以下と十分に低粘度であり、また、80W/cm高圧水銀灯1灯、照射距離15cm、コンベア速度25m/分の条件(1回の照射量約50mJ/cm)において4回照射(紫外線照射量約200mJ/cm)で塗膜表面が完全硬化し十分な硬化性を有しており、さらに、硬化塗膜は、破断強度が600N/cm以上、伸び率が100%以上であり十分な強度と柔軟性を有し、基材との密着性も良好であることが確認された。また、硬化塗膜の外観及び硬度についても、実用レベルを十分に満足していることが確認された。
【0124】
一方、比較例1の光硬化性樹脂組成物は、粘度が高く作業性が不十分であった。また、比較例2及び3の光硬化性樹脂組成物は、粘度が高く作業性が不十分であり、さらに、伸び率が100%未満であり基材と硬化塗膜との間に一部剥離が見られた。また、比較例4の光硬化性樹脂組成物は、粘度が3500mPa・s以下と十分に低粘度であったが、塗膜の硬化性が不十分であり、また、形成された硬化塗膜の破断強度及び伸び率も不十分であり、基材と硬化塗膜との間に一部剥離が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン化合物、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体、及び(C)光重合開始剤を含有し、
前記ウレタン化合物は、
(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物と、
(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールと、
(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールと、
(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
を、前記(c)成分のモル数に対する前記(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、前記(a)成分のイソシアネート基に対する前記(b)成分、前記(c)成分及び前記(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合し反応させて得られるものである、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)成分は、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレングリコールを含有する、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、x、y及びzは正の整数であり、下記式(I)及び(II);
0.1≦[(x+z)/y]≦1.0 …(I)
15≦(x+y+z)≦40 …(II)
を満たす。)
【請求項3】
前記(b)成分は、更に下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールを含有する、請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素又はメチル基を示し、nは、正の整数である。)
【請求項4】
前記(c)成分は、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレングリコール及び/又は下記一般式(4)で表されるアルキレングリコール若しくはポリオキシアルキレングリコールを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式(3)中、p、q及びrは、正の整数である。)
【化4】

(式(4)中、Rは、水素又はメチル基を示し、mは、正の整数である。)
【請求項5】
前記(d)成分が有する水酸基のモル数MOHと前記(a)成分のイソシアネート化合物のモル数Mとの比MOH/Mが、3/5〜1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタン化合物の数平均分子量が1000〜4000であり、かつ、当該数平均分子量に対する前記ウレタン化合物の重量平均分子量の比が3.0以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の質量Mと前記(B)成分の質量Mとの比M/Mが、95/5〜40/60であり、かつ、前記(C)成分の含有割合が、前記(A)成分と前記(B)成分との合計100質量部に対して1〜10質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ウレタン化合物70質量部と、前記(B)成分としてのアクリロイルモルフォリン30質量部とを含有し、25℃における粘度が1500〜3500mPa・sである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を含有してなる塗料。

【公開番号】特開2006−89627(P2006−89627A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277639(P2004−277639)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】