説明

光硬化性防湿絶縁塗料および防湿絶縁された電子部品の製造法

【課題】短時間処理が可能で、耐湿性および基材との接着性に優れた塗料を生成する光硬化性防湿絶縁塗料およびこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品の製造法を提供する。
【解決手段】(A)数平均分子量が300〜10,000である光硬化性末端アクリロキシポリブタジエンまたは末端メタクリロキシポリブタジエン、(B)光重合開始剤、(C)γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを含有してなる光硬化性防湿絶縁塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光硬化性防湿絶縁塗料および防湿絶縁された電子部品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実装回路板およびハイブリッドIC(integrated circuit)等の電子部品には、ガラスエポシ、紙フェノール、アルミナセラミック等の基板に配線図が印刷されてマイコン、抵抗体、コンデンサ等の各種部品が搭載されており、それらを湿気、ほこりなどから保護する目的で絶縁処理が行われている。この絶縁処理方法には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の塗料による保護コーティング処理が広く採用されている。このような実装回路板およびハイブリッドICは、過酷な環境下、特に高湿度下で使用され、例えば自動車、洗濯機等の機器に搭載されて使用されている(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−89343号公報
【特許文献2】特開平6−305778号公報
【非特許文献1】W.A Yager&S.O.Morgan;J.Phys.Chem.35 2026 (1931)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記塗料は加熱硬化性であるため、塗料を完全に硬化させて絶縁効果を得るためには、高温度処理、または長時間処理が必要であった。一方、短時間処理、例えば数秒〜数分での硬化が可能な紫外線硬化性樹脂塗料が開発されているが、まだ充分な耐湿性を有するものが得られていない。また、基材と樹脂塗料の接着性が悪く、電子部品の信頼性が低下するおそれがあった。本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、短時間処理が可能で、耐湿性および基材との接着性に優れた塗料を生成する光硬化性防湿絶縁塗料およびこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の通りである。
1.(A)数平均分子量が300〜10,000である光硬化性末端アクリロキシポリブタジエンまたは末端メタクリロキシポリブタジエン、(B)光重合開始剤、(C)γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを含有してなる光硬化性防湿絶縁塗料。
2.(A)成分100重量部に対して、(B)成分が0.01〜10重量部の範囲で含有してなる項1記載の光硬化性防湿絶縁塗料。
3.(A)成分100重量部に対して、(C)成分が1〜20重量部の範囲で含有してなる項1または2に記載の光硬化性防湿絶縁塗料。
4.項1〜3いずれかに記載の光硬化性防湿絶縁塗料を電子部品に塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品の製造法。
【発明の効果】
【0006】
短時間処理が可能で、耐湿性および基材との接着性に優れた塗料を生成する光硬化性防湿絶縁塗料およびこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品の製造法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる光硬化性の末端アクリロキシポリブタジエンまたは末端メタクリロキシポリブタジエン(A)は、末端ヒドロキシポリブタジエンをポリイソシアネートと反応させその後にヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートと反応させて得られる数平均分子量が300〜10,000のアクリル変性ポリブタジエン樹脂である。この樹脂の数平均分子量は300〜10,000、好ましくは500〜5,000とされる。数平均分子量が300未満では造膜性が悪くなり、10,000を超えると粘度が高く、作業性に劣る。この市販品としては、日本曹達株式会社製の商品名TE−2000、TEA−1000等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合せて使用できる。
【0008】
尚、数平均分子量の測定方法はGPC法で、測定機器は日立製L6000で検出器は日立製L−330 RI、カラムはGelpack GL−R420、GL−R430、GL−R440の3本、測定温度24℃、溶媒はTHFである。
【0009】
本発明に用いられる光重合開始剤(B)は、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾインチオエーテル類、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2‐エチルアントラキノンフロイン、ベンゾインエーテルミヒラーケトン系、塩化デシルノチオキサントン類等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合せて使用できる。これら(B)光重合開始剤の配合割合は、硬化速度と造膜性の点から前記(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましく、1〜5重量部の範囲がより好ましい。
【0010】
本発明に用いられる(C)γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランの配合割合は、ガラス基板との接着性から前記(A)成分100重量部に対して1〜20重量部の範囲が好ましく、5〜10重量部の範囲がより好ましい。
【0011】
本発明の光硬化性防湿絶縁塗料は、前記(A)、(B)および(C)成分を配合し、加熱溶解することによって得られる。また、本発明になる光硬化性防湿絶縁塗料には、必要に応じて架橋性単量体、重合禁止剤等を添加することができる。
【0012】
架橋性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、2−ヒドロオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロオキシプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メタクリル酸とカージュラE−10(シェル化学社製、高級脂肪酸のグリシジルエステルの商品名)の反応物等の1官能性のメタクリル酸エステル、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート等の2官能性のメタクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能性のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2‐ヒドロオキシエチルアクリレート、2‐ヒドロオキシプロピルアクリレート、アクリル酸とカージュラE−10の反応物等の1官能性のアクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能性のアクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能性のアクリル酸エステル等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合せて使用できる。
【0013】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−ターシャリーブチルカテコール、ピロガロール等のキノン類、その他一般に使用されているものが用いられる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、電子部品用ディスプレイパネル用基板等のIC周辺部やパネル貼り合せ部にディスペンサー装置等で塗布され、ランプ方式及びLED方式のUV照射装置を用い、必要量の紫外線を照射し硬化させて用いる。
【実施例】
【0015】
次に本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。「部」として表わしたものは重量部を示す。
【0016】
(実施例1)
TE−2000(日本曹達株式会社製、アクリル変性ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1,000)100部、ベンジルジメチルケタール2.5部およびγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン5部を混合攪拌して塗料Aを得た。
【0017】
(比較例1)
TE−2000(日本曹達株式会社製、アクリル変性ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1,000)100部、ベンジルジメチルケタール2.5部およびビニルトリメトキシシラン5部を混合攪拌して塗料Bを得た。
【0018】
(比較例2)
TE−2000(日本曹達株式会社製、アクリル変性ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1,000)100部、ベンジルジメチルケタール2.5部およびγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン1部を混合攪拌して塗料Cを得た。
【0019】
(比較例3)
TE−2000(日本曹達株式会社製、アクリル変性ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1,000)100部、ベンジルジメチルケタール2.5部およびγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン10部を混合攪拌して塗料Dを得た。
【0020】
(比較例4)
TE−2000(日本曹達株式会社製、アクリル変性ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1,000)100部、ベンジルジメチルケタール2.5部を混合攪拌して塗料Eを得た。
【0021】
以上で得た塗料A〜Eをガラス製試験管に入れ、室温で24時間放置後に樹脂状態を観察し、透明性(白濁の有無)を評価した。また、これらの塗料をガラス板に100μm厚みになるように塗布し、日本電池社製UV照射装置で、照射出力120mW/cmで総照射量が2400mJ/cmになるように照射して試験片を作成し、接着性(碁盤目試験)を実施した。
【0022】
また、これらの塗料をITO電極基板(L/S=40/10μm)に、100μm厚みになるように塗布し、日本電池社製UV照射装置で、照射出力120mW/cmで総照射量が2400mJ/cmになるように照射して試験片を作成し、60℃/90%RH/DC10V条件にて高温高湿バイアス試験を実施し、耐マイグレーション性(絶縁抵抗変化、腐食性)について評価を実施した。なお耐腐食性については、60℃/90%RH/DC10V/500h経過後、評価した。
【0023】
【表1】


*1 ○:透明である。 ×:白濁している。
*2 碁盤目試験方法:碁盤目の格子寸法1mm角で切り目を入れて、テープにより剥離の度合いを評価した。その判定は[残存枚数/格子数]の数値とした。
*3 ○:腐食なく良好である。 △:点状腐食が発生。 ×:線状腐食が発生し導通。
【0024】
表1から明らかなとおり、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを5部添加した組成物(実施例1)は、ビニルトリメトキシシランを5部添加した組成物(比較例1)、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを1部添加した組成物(比較例2)、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを10部添加した組成物(比較例3)、およびγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン添加していない組成物(比較例4)に比較して、ガラス基板との接着性及び、耐マイグレーション性(絶縁抵抗変化、耐腐食性)に優れている。
【0025】
本発明になる光硬化性防湿絶縁塗料は、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを添加することでガラスとの高い接着性を有し、これにより耐湿性評価においても優れた特性を示す塗料であり、この塗料によって信頼性の向上された電子部品を製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量が300〜10,000である光硬化性末端アクリロキシポリブタジエンまたは末端メタクリロキシポリブタジエン、(B)光重合開始剤、(C)γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを含有してなる光硬化性防湿絶縁塗料。
【請求項2】
(A)成分100重量部に対して、(B)成分が0.01〜10重量部の範囲で含有してなる請求項1記載の光硬化性防湿絶縁塗料。
【請求項3】
(A)成分100重量部に対して、(C)成分が1〜20重量部の範囲で含有してなる請求項1または2に記載の光硬化性防湿絶縁塗料。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の光硬化性防湿絶縁塗料を電子部品に塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品の製造法。




【公開番号】特開2007−106879(P2007−106879A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298808(P2005−298808)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】