説明

光触媒コーティング組成物

【課題】 塗膜の裏面側に光触媒作用を及ぼさず、光触媒機能を発揮するクリヤーなコーティング層を形成可能な光触媒コーティング組成物を提供することである。
【解決手段】 比表面積が250m2/g以上の粒子状の光触媒金属酸化物を、光触媒作用を受けずに安定した樹脂バインダに配合すると共に、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率とする光触媒コーティング組成物とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、耐汚染性や抗菌性に優れた光触媒機能を有する金属酸化物を配合した光触媒塗料が注目されている。
【0003】
また、建築物外壁や車体鋼板やテント地等の塗装に使用される塗料には、外観が良好で、雨筋汚れ等の汚れが付着し難い性質、つまり耐汚染性(環境汚染)を有していることが望まれている。
【0004】
そのために、耐汚染性や抗菌性を発現すると共に親水性に優れた光触媒機能を有する塗装材や表面処理材(以後まとめて塗料と称する)を有効に利用する方法が模索されている。一般に、光触媒機能を有する金属酸化物を塗料として配合する際には、環境汚れに対する光触媒機能を十分発揮するために、通常、親水性の樹脂バインダ(親水性ポリマー)が用いられている。
【0005】
また、光触媒機能は、激烈な酸化還元反応を励起して有機物を分解するために、塗料として配合する有機樹脂バインダをも分解し、塗膜が劣化して耐久性が劣るという問題があった。
【0006】
そのために、光触媒塗料を配合する際には、シリカゾルあるいはシリケートと称されるガラス質の無機バインダが専ら用いられており、シリカゾルあるいはシリケートを含むと共に分散安定性に優れた光触媒塗料が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、光触媒作用により分解・劣化されない難分解性結着剤を配合して光触媒粒子を固定するとした光触媒体およびその製造方法が既に出願されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−343426号公報
【特許文献2】特開平10−225640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載された光触媒塗料では、シリカゾルに配合する酸化チタンの配合割合を容積比で20〜98%が好ましく、50〜95%がより好ましいと記載されている。また、特許文献2に記載された光触媒体においても、難分解性結着剤に配合する光触媒粒子の配合量を容積比で、5〜98%、好ましくは20〜98%とすると記載されている。
【0009】
上記の例ではいずれも、光触媒機能を発揮するためには、所定量以上の光触媒粒子の配合量が必要である。
【0010】
しかし、光触媒粒子の配合量が多くなると、バインダ層からはみ出る虞が生じる。特に塗膜の裏面側に光触媒粒子がはみ出ると、裏面側の基材を侵食するいわゆる「裏反応」が発生する。そのために、この裏反応を防止するために、光触媒作用を受けないガラス質の無機バインダなどからなる保護層を設ける必要があった。つまり、光触媒塗装を行う際には、裏反応を防止するバリアーコートを設ける下塗りが必要となり、下塗りした後で光触媒塗料を塗布する上塗りを行う2工程からなる塗装工程となっていた。
【0011】
さらに、塗膜中の光触媒粒子の量が増えると、塗膜が白く濁った外観となり透明感が阻害され、クリヤーコートに用いる際には不都合であった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題点を解消するために、塗膜の裏面側に光触媒作用を及ぼさず、光触媒機能を発揮するクリヤーなコーティング層を形成可能な光触媒コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、比表面積が250m2/g以上の粒子状の光触媒金属酸化物を、光触媒作用を受けずに安定した樹脂バインダに配合すると共に、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率とした光触媒コーティング組成物であることを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、樹脂バインダ中に配合する光触媒金属酸化物の容積比率を20%未満としても、比表面積が大きい粒子状の光触媒金属酸化物を用いているので、光触媒活性を示す吸着表面積が大きくなって、光触媒反応の効果を発揮することができる。また、樹脂バインダに配合する際の容積比率が小さいので、塗膜の裏面側にはみ出す光触媒粒子をなくして、裏反応の進行を抑制することができ、塗膜が白く濁ることもなくクリヤー性を維持することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記樹脂バインダが、水溶性フッ素樹脂もしくはフッ素樹脂エマルジョンであることを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、水性塗料として容易にハケ塗りやローラ塗りが可能な光触媒コーティング組成物を得ることができる。また光触媒作用によって分解せず劣化もしないフッ素樹脂をバインダとして用いることで、所定の下地上に直接塗装して塗膜の接着性と耐磨耗性を向上させると共に、塗装後の塗膜を常温で乾燥硬化可能な光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、前記樹脂バインダが、シロキサン樹脂もしくはシロキサン樹脂とフッ素樹脂の混合物であることを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、ガラス系の耐候性のある樹脂バインダを用いているので、表面硬度が高く速硬化性を有し光触媒作用によって劣化しない光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記金属酸化物が多孔質の酸化チタンであることを特徴としている。
【0020】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、酸化チタンが多孔質であるため、さらに吸着表面積を大きくすることができ、耐汚染機能だけでなく、消臭機能も十分発揮可能な塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記したように本発明によれば、比表面積が250m2/g以上の粒子状の光触媒金属酸化物を、光触媒作用を受けずに安定した樹脂バインダに配合すると共に、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率とした光触媒コーティング組成物としているので、裏反応を抑制することができる。また、容積比率が20%未満の配合割合であっても、比表面積が非常に大きいので、光触媒反応の効果を十分発揮することができる。さらに、配合する際の容積比率が小さいので白く濁ることがなく、塗膜のクリヤー性を維持する光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る光触媒コーティング組成物の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る光触媒コーティング組成物は、細かい粒子径で比表面積が250m2/g以上の光触媒金属酸化物を、光触媒作用を受けずに安定した樹脂バインダに配合すると共に、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率としている。
【0024】
光触媒機能を有する金属酸化物としては、酸化チタンや酸化亜鉛や酸化錫等が存在しているが、特に光触媒機能が安定し、さらに、簡単に入手可能な酸化チタンが好適に使用される。前記酸化チタンは微細な粒子状のものが市販されており、これを適当な樹脂バインダと有機溶剤や水などに所定量配合し攪拌混合して、所定の光触媒塗料を製造する。
【0025】
例えば、石原産業(株)製の酸化チタンとして、X線粒径が200nmで比表面積が10m2/gのST−41、X線粒径が20nmで比表面積が50m2/gのST−21、X線粒径が7nmで比表面積が250m2/gのST−31、X線粒径が7nmで比表面積が300m2/gのST−01が一般的に知られている(石原産業(株)のホームページより抜粋)。
【0026】
上記のように、粒径を小さくして微粒子状とすることで比表面積を大きくすることができる。さらに、粒径が同じでも多孔質の酸化チタンとすることで、比表面積をさらに増加することができる。つまり、前記ST−01は、微粒子状でかつ多孔質な光触媒酸化チタンからなっている。
【0027】
また、一般に酸化チタン等の光触媒金属酸化物を分散させる樹脂バインダとしては、光触媒の反応を促進するため、また、光触媒特性の一つである超親水性を活用して塗布表面を清浄化するために、親水性樹脂バインダが採用されている。
【0028】
しかし、親水性樹脂バインダに光触媒金属酸化物を配合すると、光触媒作用による激烈な酸化還元反応でバインダ分解(バインダの自己崩壊)が生じて、耐久性が短くなるという問題がある。
【0029】
そのために前記樹脂バインダが、水溶性フッ素樹脂もしくはフッ素樹脂エマルジョンであれば、光触媒作用によって分解せず劣化もしないフッ素樹脂からなるので、バインダの自己崩壊は生じない。また、水性塗料として容易にハケ塗りやローラ塗りが可能な光触媒コーティング組成物を得ることができ、所定の下地上に直接塗装して塗膜の接着性と耐磨耗性を向上させると共に、塗装後の塗膜を常温で乾燥硬化可能な光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0030】
また、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、所定割合以下の低い配合割合とすることで、裏面側に光触媒金属酸化物をむき出しにせず、光触媒作用により下地が劣化することを防止可能であることが、本発明者らの研究によって明らかとなった。
【0031】
例えば、光触媒金属酸化物と樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して、前記光触媒金属酸化物が20%未満の配合割合であれば、塗膜の裏面側の下地が光触媒作用により劣化しないことが判った。また、光触媒作用を発揮するには少なくとも5%程度は配合しておくことが好ましく、また、塗膜の透明性を維持するためには少しでも低密度のほうがよいので、5〜18%程度の容積比率がより好ましい。この範囲の配合割合の光触媒コーティング組成物であれば、塗膜の裏面側にはみ出す光触媒粒子をなくして、裏反応の進行を抑制するので、塗膜の裏面側の下地が光触媒作用により劣化しない。
【0032】
また、容積比率20%未満の配合割合であっても、配合する光触媒金属酸化物の比表面積が非常に大きい場合には、光触媒作用を及ぼす吸着表面積が大きくなって光触媒反応の効果を十分発揮することができる。この比表面積の適当な値は、後述するように、石原産業(株)製のST−01とST−31の比表面積範囲が好ましく、250m2/g程度以上の比表面積を有する光触媒酸化チタンが好適であった。
【0033】
上記のような構成の光触媒コーティング組成物であれば、光触媒反応に安定な樹脂バインダに、所定割合以下の光触媒金属酸化物を配合しているので、配合する際の容積比率が小さくて塗膜が白く濁ることがなく、塗膜のクリヤー性を維持する光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0034】
また、前記樹脂バインダとして、シロキサン樹脂もしくはシロキサン樹脂とフッ素樹脂の混合物を用いることも可能である。この構成であれば、ガラス系の耐候性のある樹脂バインダを用いているので、表面硬度が高く速硬化性を有し光触媒作用によって劣化しない光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0035】
次に具体的な光触媒コーティング組成物の例について詳細に説明するが、本発明は下記に示す実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例A1:フッ素樹脂としてデュポン社製品のナフィオン(登録商標)を用いたナフィオンDE2021の20%溶液(和光純薬工業調製)70重量部と多孔質光触媒酸化チタンST−01(石原産業(株)製:比表面積300m2/g)4重量部とを配合してペイントシェーカーで強分散し、さらに、水を加えて100重量部としてよく攪拌し調製された本発明に係る光触媒コーティング組成物。
【0037】
この際、20%ナフィオン溶液DE2020の乾燥比重が2.2であり、酸化チタンの比重が4.2であることから、前記実施例A1の酸化チタンの配合割合は、不揮発分の容積比率で13%(20%未満の配合割合である)となる。
【0038】
比較例B1:前記光触媒酸化チタンST−01に代えて通常汎用の光触媒酸化チタンST−21(石原産業(株)製:比表面積50m2/g)26重量部と、水4重量部をデュポン社製品ナフィオンDE2021の20%溶液(和光純薬工業調製)70重量部とを配合して強分散して調製した光触媒コーティング組成物。
【0039】
この例では、光触媒酸化チタンの不揮発分中の容積比率はほぼ50%となる。
【0040】
前記の実施例A1と比較例B1とを用いて、白色塩化ビニールシート上に膜厚がほぼ2μmとなるように塗布して光触媒活性と裏反応の試験を行い、光触媒塗膜としての光触媒効果と下地に及ぼす悪影響の有無を確認した。
【0041】
光触媒活性試験として、メチレンブルー1%溶液を10g/m2塗布し乾燥させてから晴天時の太陽光に晒し、完全に脱色するまでの時間を測定する試験(光触媒活性試験1)と、水平環境中に暴露して3週間後の未塗布部分との色差ΔEを測定する試験(光触媒活
性試験2)を行った。
【0042】
また、裏反応試験として、20Wブラックライトを30cmの距離から照射し、2週間後にJISK5400に準拠した碁盤目テープ剥離試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

表1から明らかなように、本発明に係わる実施例A1と比較例B1とは、光触媒活性試験1、2で同等の光触媒活性効果を挙げている。しかし、裏反応試験で明らかに差が見られており、実施例A1では、剥がれが全く生じておらず強固な接着性を示しているが、比較例B1では残留数がゼロであり塗膜が全て剥離して、接着不良となっているので、裏反応が進行していることは明らかである。
【0044】
また、光触媒活性試験2の結果から、実施例A1と比較例B1とでは同程度の色差となっており、同様の光触媒活性を示している。この際に、白色塩化ビニールシートのままの表面の色差ΔE=6.7の試験結果から、自然環境中に暴露しておくと基材表面が汚染されて色差が大きく変化していることが明らかである。また、光触媒塗膜が形成された実施例A1、比較例B1ではΔE=2.0であるので基材表面はさほど環境の影響を受けずに汚染されていないことになる。つまり、裏反応試験の結果は、自然環境への暴露の影響ではなく、塗膜の光触媒作用によるものであることは明らかである。
【0045】
上記の結果から、本発明に係る実施例A1と比較例B1とでは、塗膜表面での光触媒効果は同等であるが、裏反応抑制効果に明らかな差が見られることが判る。
【0046】
つまり、不揮発分の容積比率で約13%の配合割合の光触媒金属酸化物含有量であれば、基材と光触媒層との密着性が低下しておらず、裏反応が生じていないことが判る。また、光触媒金属酸化物の配合割合が少ない塗膜であっても、比表面積が250m2/g以上の光触媒酸化チタンST−01(石原産業(株)製:比表面積300m2/g)を用いることで、光触媒機能を発揮するコーティング層を形成することができる。
【0047】
さらに、光触媒金属酸化物の配合割合が少ないので、塗膜厚みを薄くする(例えば、2μm以下)ことで、塗膜の透明性を維持可能となって、従来は不可能であった濃色下地にも、その色彩に変化を与えずに塗布することが可能である。
【0048】
また、裏反応が進行しないので、保護層の塗布が不要となり、上塗りだけの一度塗りでよく、塗装作業が簡単となって、施工時間を短くすることができる。
【0049】
さらに、先に示した実施例A1の光触媒酸化チタンST−01(石原産業(株)製:比表面積300m2/g)4重量部に代えて、同じく6重量部(容積比率18.3%に相当し20%未満である)としたものについても裏反応が生じていないことが判り、光触媒酸化チタンST−31(石原産業(株)製:比表面積250m2/g)6重量部(容積比率18.3%に相当)としたものについても裏反応が抑制され、光触媒作用を発揮していることが判った。
【0050】
上記の結果から、細かい粒子径で比表面積が250m2/g以上の光触媒金属酸化物を、前記光触媒金属酸化物と樹脂バインダとの不揮発分の合計容積に対して20%未満の容積比率とした光触媒コーティング組成物とすることで、裏反応を抑制すると共に光触媒作用を発揮することができる。
【0051】
また、ナフィオン(登録商標)と光触媒に加えて公知のフッ素樹脂を配合した光触媒コーティング組成物とすることで、金属や無機系下地に対する接着性が向上し、塗膜の耐摩耗性を向上することが可能である。
【0052】
前記ナフィオン(Nafion:デュポン社の登録商標)は、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンであって、親水性を発揮すると共に、光触媒作用を受けずに劣化しないバインダとなる。そのために、前記ナフィオン(登録商標)に金属酸化物である酸化チタンを配合した光触媒塗料は、ナフィオン(登録商標)自体が有する親水性に加えて、防汚染機能や消臭機能等の光触媒機能を発揮して所定の光触媒効果を有する。さらに、塗装した後の乾燥硬化時間が非常に短くてよく、塗布した塗膜が柔軟性を備えており、基材を折り曲げても塗膜が剥離しない効果を有していることが判った。
【0053】
その理由としては、フッ素樹脂を構成するC−F結合の結合エネルギーが大きくて、非常に緻密で安定した分子鎖を形成しているために、結晶化度が高く、耐薬品性、耐候性を示し、電気化学反応に対して高度に安定であり、さらには、F原子のもつ小さな原子半径と低い分極性から、分子間凝集力が低くなり、低表面張力、低摩擦係数という性質を示し外からの力に変形しやすくなるためと考えられる。(プラスチック・機能性高分子材料事典:産業調査会事典出版センター発行(2004年)の306ページ目参照)。
【0054】
上記したように、本発明によれば、光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率とした光触媒コーティング組成物としているので、塗膜の裏面側にはみ出す光触媒粒子をなくして、裏反応の進行を抑制することができる。また、不揮発分の容積比率20%未満の配合割合であっても、比表面積が250m2/g以上の微粒子状の、もしくは、微粒子状でかつ多孔質の光触媒金属酸化物を配合することで光触媒作用を及ぼす吸着表面積が大きくなって光触媒反応の効果を十分発揮することができる。さらに、配合する際の容積比率が小さいので白く濁ることがなく、塗膜のクリヤー性を維持する光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0055】
さらには、フッ素系やシリコン系の保護層の塗布が不要であるので、上塗りだけの一度塗りでよく、塗装作業が簡単で施工時間を短縮可能な光触媒コーティング組成物を得ることができる。
【0056】
このように、本発明に係る光触媒コーティング組成物は、光触媒金属酸化物の光触媒機能を維持したまま配合量を減少することができ、塗膜からはみ出る光触媒金属酸化物をなくすことが可能となって、裏反応を抑制すると共に塗膜の透明性を維持することが可能な光触媒コーティング組成物となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が250m2/g以上の粒子状の光触媒金属酸化物を、光触媒作用を受けずに安定した樹脂バインダに配合すると共に、前記光触媒金属酸化物の配合割合を、前記光触媒金属酸化物と前記樹脂バインダの不揮発分との合計容積に対して20%未満の容積比率としたことを特徴とする光触媒コーティング組成物。
【請求項2】
前記樹脂バインダが、水溶性フッ素樹脂もしくはフッ素樹脂エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒コーティング組成物。
【請求項3】
前記樹脂バインダが、シロキサン樹脂もしくはシロキサン樹脂とフッ素樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒コーティング組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物が多孔質の酸化チタンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光触媒コーティング組成物。

【公開番号】特開2009−7401(P2009−7401A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167571(P2007−167571)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(591164794)株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Fターム(参考)】